(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カム面部には、押し上げられた前記作動片部により付勢された状態で前記段差路に平面で接触して前記操作部材が回動して開いた開状態を維持する平坦部を有する請求項6記載の平型導体用コネクタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした平型導体用コネクタについては、さらに係止凹部に対する係止部の係止を解除して、平型導体を抜去できるようにするためのロック解除機構を備えるものが知られている。前述した特許文献1はその一例であるが、そのようなロック解除機構を備えるコネクタについてはロック解除機構を設けるために、コネクタの幅、奥行き、高さが何れも大型化する傾向にある。
【0005】
以上のような従来技術を背景になされたのが本発明である。その目的はロック機構、ロック解除機構を有する平型導体用コネクタを小型化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく本発明は以下の特徴を有するものとして構成される。
【0007】
本発明は、平型導体の挿入口と嵌合室とを有するハウジングと、前記平型導体と導通接触する端子と、前記嵌合室に挿入する前記平型導体を抜け止めするロック部材と、前記平型導体を抜け止めするロック状態を解除する操作部材とを備える平型導体用コネクタについて、前記操作部材は、前記ハウジングの前記挿入口と隣接する側壁部の内部に位置する回動軸部と、前記回動軸部を介して前記ハウジングの天面壁に対して回動する操作片とを有することを特徴とする。
【0008】
本発明の平型導体用コネクタによれば、平型導体のロック部材と、ロック解除機構として機能する操作部材とを備える。そして操作部材は、ハウジングの天面壁に対して回動する操作片の回動軸部がハウジングの挿入口と隣接する側壁部の内部に位置するため、平型導体を抜け止めするロック状態で、操作片がハウジングの天面壁に沿い、回動軸部が側壁部に収まり、平型導体用コネクタの全体を小型に形成することができる。
【0009】
前記ロック部材については、前記ハウジングの背面側から前記挿入口が開口する前面側に伸長し、前記平型導体に厚み方向で係入して抜去方向で係止する係止部を有する弾性片部と、前記弾性片部から分岐して前記操作片の上方に伸長し、回動する前記操作片と接触して押し上げられるとともに前記弾性片部を引き上げて前記係止部の前記係止を解除する作動片部とを有するように構成できる。
【0010】
本発明によれば、ロック部材が弾性片部とそこから分岐する作動片部とを有し、操作片を回動させると作動片部が押し上げられ、それとともに弾性片部が引き上げられることで、平型導体に対する係止部のロック状態が解除される。このように操作部材(操作片)の回動操作をロック解除動作に転換することにより、ロック解除機構をコンパクトに形成することができ、平型導体用コネクタを小型化することができる。
【0011】
前記ロック部材については、前記背面側に前記弾性片部と前記作動片部とを片持ち梁状に支持する屈曲ばね部を有するように構成できる。
【0012】
本発明によれば、屈曲ばね部により弾性片部や弾性片部から分岐する作動片部が平型導体の板厚方向(平型導体用コネクタの高さ方向)で大きく変位するためのばね長を確保することができる。
【0013】
前記操作部材の前記回動軸部については、前記ハウジングの前後方向に沿う楕円円弧状のカム面部を有しており、前記ハウジングについては、前記カム面部を上方に変位させつつ回動させる段差路を有するように構成できる。
【0014】
本発明によれば、楕円円弧状のカム面部が段差路を上方に変位しつつ回動することで、回動軸部が上方に変位する。操作部材の回動によって回動軸部の高さ位置が上昇するため、操作片と接触するロック部材の作動片部をより高く押し上げることができ、弾性片部もより高く引き上げられる。係止部によるロック状態を解除するために必要な作動片部と弾性片部の上方への変位量を確保するには、例えば楕円円弧状のカム面部を有する回動軸部の縦横比を大きくして、ロック状態では大きく横長であり、ロック解除状態で大きく縦長となるように回動軸部を形成することが考えられる。しかしながらこれではロック状態で回動軸部が大きく横長となるため、それを収容する平型導体用コネクタは奥行き方向(ハウジングの前後方向)で大型化してしまう。しかしながら、操作部材の回動により段差路の高さの分、回動軸部を介してロック部材が上方に変位する本発明によれば、回動軸部の縦横比を大きくしなくても、ロック部材を大きく上方に変位させることができ、平型導体用コネクタをハウジングの前後方向で小型化することができる。
【0015】
前記カム面部については、押し上げられた前記作動片部により付勢された状態で前記段差路に平面で接触して前記操作部材が回動して開いた開状態を維持する平坦部を有するように構成できる。
【0016】
本発明によれば、操作部材が回動して開いた開状態を維持することができ、開状態の操作部材を片手で抑えておく必要がないので、片手でロック解除操作と平型導体の抜去操作を行うことができる。
【0017】
前記操作部材については、前記操作片から前記ハウジングの内部に伸長し、先端側に前記回動軸部を有する回動支持部を有するように構成できる。
【0018】
本発明によれば、回動軸部を有する回動支持部がハウジングの内部に伸長するので、回動軸部がハウジングの内部に位置しており、平型導体用コネクタを低背化することができる。
【0019】
前記回動支持部については、前記ロック部材の前記作動片部を挿通するガイド孔を有するように構成できる。
【0020】
本発明によれば、ガイド孔に作動片部が挿通されているので、操作部材を回動させるとそのガイド孔が作動片部の板面に沿って移動するので、操作部材の回動をガイドすることができる。
【0021】
前記本発明については、前記操作部材と前記ロック部材が金属材でなり、前記ロック部材が、基板に接地接続される基板接続部を有するように構成できる。
【0022】
本発明によれば、平型導体用コネクタに帯電する静電気を金属材でなる操作部材とロック部材の基板接続部を介して基板の接地接続用の接点に逃がすことができ、平型導体用コネクタの接続信頼性を高めることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の平型導体用コネクタによれば、ロック機構とロック解除機構を備えながらも、全体として小型化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の平型導体用コネクタの一実施形態について図面を参照しつつ説明する。以下の説明では平型導体用コネクタを単に「コネクタ」と称して説明する。また、この明細書、特許請求の範囲では、説明の便宜上、平型導体用コネクタの幅方向をX方向、奥行き方向(前後方向)をY方向、高さ方向(上下方向)をZ方向として説明するが、それらは平型導体用コネクタの実装方法や使用方法を限定するものではない。
【0026】
コネクタ1は、ハウジング2、複数の端子3、操作部材4、「ロック部材」としての複数のロック端子5を備えている。コネクタ1は、FPCやFFC等の平型導体Fと基板Pの回路とを導通接続する。またこのコネクタ1は、高さが約1mmの低背コネクタとして形成されている。
【0027】
〔ハウジング2〕
ハウジング2は、樹脂成形体で形成され、ハウジング2の底面を形成する底壁部6と、底壁部6の上に形成された平型導体Fとの接続部7と、左右の側壁部8と、接続部7と左右の側壁部8との間にそれぞれ形成された凹部9とを有している。ハウジング2の前面には、平型導体Fを挿入する挿入口11が開口している。
【0028】
接続部7は、複数の端子3を配置した天面壁7aと底壁部6との間に形成される部分であり、その内部には導通接続室10が形成されている。接続部7の天面壁7aには、Y方向に伸長する複数の端子収容溝7bがX方向で並べて形成されている。各端子3の接点部3aは、端子収容溝7bの内部でZ方向に変位することができる。各端子収容溝7bの下には、底壁部6に形成した端子固定部7cが形成されている。各端子3はハウジング固定部3bが端子固定部7cに圧入されることで固定されている。各端子3は、ハウジング2の背面側で端子固定部7cから端子収容溝7bに屈曲する湾曲ばね部3cを有しており、その上端から端子収容溝7bの内部をハウジング2の前方に向けて弾性片(図示略)が伸長しており、その弾性片の先端側に導通接続室10に突出する接点部3aが形成されている。
【0029】
平型導体Fの嵌合室12は、このような導通接続室10と、天面壁7aによって覆われていない左右の凹部9とを含むものとして形成される。即ち平型導体Fが挿入される部分として形成される。したがって挿入口11は、導通接続室10と左右の凹部9とを合わせたX方向の開口幅を有するように形成されている。そして挿入口11よりもX方向で外側のハウジング2の部分が左右の側壁部8となる。
【0030】
左右の側壁部8は、ハウジング2のY方向に沿って形成されている。側壁部8の挿入口11側には、嵌合室12と隣接する段差路13が形成されている。段差路13は、後述する操作部材4の回動軸部4jのカム面部4nが回動する部分である。段差路13は、
図9で示すように、ハウジング2の前面側に位置する底面部13aと傾斜面部13bと上面部13cを有しており、底面部13aと上面部13cはいずれも傾斜のない平面として形成されている。底面部13aの前側には回動軸部4jが当接する当接面部13dが形成されている。
【0031】
また、左右の側壁部8には、嵌合室12に向けて突出するガイド突起14が形成されている。ガイド突起14には、挿入口11を形成する側壁部8の前側内壁面8aのY方向に沿う延長上位置に形成されたガイド面14aを有している。ガイド面14aは、挿入口11から挿入された平型導体Fの後方への移動をガイドする。また、対向する左右の側壁部8のガイド面14aの間に平型導体Fが挿入されて位置決めされることで、平型導体Fの接点(図示略)と各端子3の接点部3aとがX方向で位置ずれせずに正しく導通接触できる。ガイド面14aの前側には、誘導傾斜面14bが形成されている。FFCやFPC等の平型導体Fには柔軟性があり、挿入口11に真っ直ぐに挿入されても途中で先端側が斜めに向いてしまうことがある。こうした場合でも平型導体Fの先端F2が誘導傾斜面14bに当接することで、挿入の途中でも挿入方向を正しく矯正することができる。
【0032】
さらに、左右の側壁部8には、ハウジング2の背面側に凹部9に向けて突出する保持突起15が形成されている。保持突起15には、後述する操作部材4の背面側の側縁に側壁部8に向けて突出する保持ばね片4cが押圧接触する。これにより操作部材4がX方向で動かないように固定することができる。また、操作部材4が回動しないように保持することができる。
【0033】
左右の凹部9は、後述する操作部材4の回動支持片4bとロック端子5を変位可能に収容する収容空間として形成されている。
図1で示す操作部材4の閉状態、即ち平型導体Fのロック状態では、回動支持片4bは後述する傾斜部4eの基端側を除き高さ方向で凹部9の上に突出せずに凹部9の内側に収容される。また、ロック端子5も後述する作動片部5eを除き、ロック状態で凹部9の上に突出することなく収容される。底壁部6にはロック端子固定部9aが形成され、ここにロック端子5が固定される。このように基板Pと対向する底壁部6に対してロック端子5を固定するハウジング構造を採用することで、Z方向におけるロック端子5の突出高さを抑えてコネクタ1を低背化することができる。
【0034】
〔操作部材4〕
操作部材4は、例えば
図6で示すように、操作片4aと、操作片4aの前縁から前方に突出する「回動支持部」としての左右の回動支持片4bと、操作片4aの左右の側縁から外方に突出する保持ばね片4cとを有しており、その全体が導電性の金属材料にて形成されている。
【0035】
操作片4aは、平板状に形成されており、Y方向ではハウジング2の背面からはみ出るように形成されている。このはみ出す部分が操作部4dであり、ここに指を引っかけて操作部材4を上に持ち上げるように回動させる。操作片4aはロック状態においてハウジング2の接続部7の天面壁7aに沿って位置する。
【0036】
回動支持片4bは、操作片4aと繋がる基端側から先端側にかけてハウジング2の凹部9に入り込む傾斜部4eを有する。傾斜部4eの下端には後述するロック端子5の作動片部5eと接触する湾曲当接縁4fを有する平板片状の先端部4gが形成されている。また、回動支持片4bには、その長手方向に伸長するスリット状のガイド孔4hが形成されており、ここに前述の作動片部5eが挿入される。
【0037】
先端部4gの外側の側縁には下向きに曲がる屈曲部4iを介して板状の回動軸部4jが形成されている。回動軸部4jはハウジング2の挿入口11と隣接する側壁部8の内部に位置している。このため、平型導体Fのロック状態では、操作片4aがハウジング2の天面壁7aに沿い、回動軸部4jが側壁部8に収まるため、コネクタ1の全体を小型化することができる。
【0038】
回動軸部4jには、屈曲部4iに繋がる回動基部4kと、回動基部4kの前方に突出する回動端部4mが形成されている。回動軸部4jの外周面には楕円円弧状のカム面部4nが形成されている。このカム面部4nには、回動基部4kの外周面にあたる第1曲面部4n1と、第1平坦部4n2と、第2曲面部4n3と、第2平坦部4n4と、第3曲面部4n5が形成されている。これらのカム面部4nの働きについては後述する。
【0039】
〔ロック端子5〕
ロック端子5は、例えば
図7で示すように基板接続部5a、ハウジング固定部5b、屈曲ばね部5c、弾性片部5d、作動片部5eを有しており、全体が導電性の金属材料にて形成されている。
【0040】
基板接続部5aは、基板Pの回路の接地接続用の接点に半田付けされる。
【0041】
ハウジング固定部5bは、例えば
図8で示すように、ハウジング2の底壁部6に形成されたロック端子固定部9aに圧入して固定される。このようにロック端子5のハウジング固定部5bを、底壁部6(ロック端子固定部9a)に固定することで、後述する大きな屈曲ばね部5cを有するにもかかわらず、ロック端子5の高さを抑えることができ、コネクタ1を低背化することができる。
【0042】
屈曲ばね部5cは、ハウジング2の背面側に位置しており、そこから前面側に片持ち梁状に伸長する弾性片部5dと作動片部5eとを弾性支持する部分である。屈曲ばね部5cはハウジング2の凹部9の高さ(天面壁7a)よりも低く、天面壁7aの高さに近接する高さで、ハウジング固定部5bから大きく立ち上がり前方に屈曲する円弧状に形成されている。こうした大きな円弧状に屈曲する形状とすることで、弾性片部5dや作動片部5eが平型導体Fの板厚方向(コネクタ1の高さ方向)で大きく変位するためのばね長を確保することができ、また大きく変位する際の応力を緩和して屈曲ばね部5cのへたりや折れや塑性変形を防止している。
【0043】
また、円弧状に屈曲する屈曲ばね部5cは、Z方向における円弧の頂点から斜め下方に向かう下向きの屈曲部分を有しており、その端部から前方に弾性片部5dが伸長している。これにより弾性片部5dのZ方向における配置を、凹部9と操作部材4との間の収容空間の略中央に位置させることができ、操作部材4と弾性片部5dとの間に弾性片部5dが上方に変位するための隙間を形成することができる。したがって、弾性片部5dを屈曲ばね部5cの円弧の頂点から前方に伸長させる場合と比較して、コネクタ1を低背化することができる。
【0044】
弾性片部5dは、屈曲ばね部5cに繋がる基端側からハウジング2の前面側に伸長するばね片として形成されている。弾性片部5dの先端には、
図1で示すように平型導体Fに設けられる係止凹部F1に対して厚み方向(Z方向)で係入し、平型導体Fの嵌合室12からの抜去方向で係止凹部F1と係止する「係止部」としての係止爪5fが形成されている。係止爪5fには、湾曲縁5gが形成されており、嵌合室12に挿入される平型導体Fの先端F2が当接して上方に押し上げられる。円弧形状の湾曲縁5gとすることで、平型導体Fの挿入力を低減することができる。係止爪5fには、垂直に形成されている係止縁5hが形成されており、前述した平型導体Fの係止凹部F1は抜去方向でこの係止縁5hと当接して抜け止めされる。
【0045】
作動片部5eは、弾性片部5dから分岐してガイド孔4hを通じて回動支持片4bの上方に立ち上がる縦片部5iと、縦片部5iからハウジング2の前面側に伸長する当接片5jとを有している。
【0046】
当接片5jの下縁には、縦片部5iと繋がる基端側で板幅が広く、先端側にかけて板幅が狭くなるように傾斜する傾斜縁5kが形成されている。これは操作部材4を回動操作する際に、湾曲当接縁4fによる強い押圧力を受けても、当接片5jが根元から折れたり塑性変形したりすることが無いようにするためである。また、傾斜縁5kは、操作部材4を回動操作する際に、湾曲当接縁4fとの摺動接触による押し上げがスムーズとなるように形成されている。
【0047】
さらに、傾斜縁5kは、操作部材4の閉状態において、常時、湾曲当接縁4fと押圧接触している。これによって導電性の操作部材4、ロック端子5が常時導通可能に接続されることになり、コネクタ1に帯電する静電気を操作部材4とロック端子5の基板接続部5aを介して基板Pの接地接続用の接点に逃がすことができ、コネクタ1の接続信頼性を高めている。
【0048】
以上のように構成されるコネクタ1は、各端子3とロック端子5の基板接続部5aが基板Pに半田付けされることで、基板Pと導通接続される。
【0049】
〔コネクタ1の使用方法〕
次に、コネクタ1の使用方法を説明する。使用方法として、平型導体Fの接続方法と、平型導体Fの抜去方法を説明する。
【0050】
〔平型導体Fの接続方法〕
図1で示すように平型導体Fの先端側の側縁には係止凹部F1が形成されている。この平型導体Fを、操作部材4が閉状態となっているコネクタ1の挿入口11に差し込む。挿入口11のX方向の開口幅は平型導体Fの先端F2の幅よりも僅かに大きく、挿入口11のZ方向の開口高さは平型導体Fの厚みよりも僅かに大きい。したがって挿入口11は、挿入口11側においてZ方向で相互に対向する底壁部6及び天面壁7aと、X方向で相互に対向する左右の側壁部8の内壁面とによって、平型導体Fを真っ直ぐに差し込ませるようにガイドすることができる。
【0051】
平型導体Fの挿入を続けると、平型導体Fの先端F2が端子3の接点部3aに接触した後、ロック端子5の係止爪5fの湾曲縁5gと接触する。このため平型導体Fの先端F2が端子3に接触するタイミングとロック端子5と接触するタイミングとに時間差が生じる配置構造であるため、それらが同時に接触する配置構造とする場合と比べて、平型導体Fの挿入力を低減することができる。
【0052】
平型導体Fの先端F2は、接触した係止爪5fを上方に押し上げる。このとき湾曲縁5gは円弧形状であるため、平型導体Fの挿入力を低減することができる。また、弾性片部5dに形成された係止爪5fは、屈曲ばね部5cによって弾性支持されているため、屈曲ばね部5cと弾性片部5dのばねによって、上方に柔らかく変位することができる。特に屈曲ばね部5cはハウジング2の背面側に位置し、弾性片部5dはハウジング2の背面側から前面側に向けて凹部9を伸長する長さを有するものとして形成されているため、ばね長を長く確保されており、柔らかく変位させることができる。
【0053】
平型導体Fを挿入する手元の抵抗が緩くなる操作感が得られると、係止爪5fが平型導体Fに乗り上がったことになる。そしてそのまま平型導体Fを挿入し続けると、係止爪5fが平型導体Fの係止凹部F1に落ち込むように係入する。これによって平型導体Fがロック状態となる。このようにコネクタ1は、操作部材4を回動操作しなくても平型導体Fを挿入するだけで嵌合接続することができる自動ロック機能を備えている。したがってコネクタ1であれば、容易に平型導体Fを導通接続することができる。
【0054】
コネクタ1は、平型導体Fのロック状態では、平型導体Fを嵌合室12から引き抜こうとしても、係止凹部F1が係止縁5hに対して抜去方向で係止して、平型導体Fが抜け止めされることになる。こうした平型導体Fのロック状態では、仮に平型導体Fを抜去方向に引っ張ることで係止爪5fが上方に変位することがあっても、係止爪5fや縦片部5iが操作部材4の先端部4gと接触して上方に押圧しても、先端部4gに回動支点となる回動軸部4jが近接して設けられているため、操作片4aが回動してしまうことはない。このように係止爪5fが係止凹部F1から脱離するような上方への変位は抑制されて、操作部材4の閉状態と平型導体Fのロック状態を維持することができる。また、操作部材4は、ハウジング2の側壁部8の保持突起15と押圧接触する保持ばね片4cのばね力によっても保持されて回動が抑制されるので、これによってもロック状態を維持することができる。
【0055】
また、平型導体Fのロック状態では、操作部材4とロック端子5が導電性の金属片で形成されており、操作部材4の先端部4gの湾曲当接縁4fとロック端子5の傾斜縁5kとが常時接触している。このためコネクタ1に帯電する静電気を操作部材4とロック端子5の基板接続部5aを介して基板Pの回路の接地接続用の接点に逃がすことができ、これによってコネクタ1の接続信頼性が高められている。
【0056】
〔平型導体Fの抜去方法〕
平型導体Fを取り外すには、ハウジング2の背面の後方に突出する操作部4dに指を引っ掛けて、閉状態にある操作部材4を上方に回動させる(
図10、
図11)。操作部材4を回動させるには、保持ばね片4cのばね力を超える力で引き上げる必要がある。そして操作部材4の回動軸部4jは、カム面部4nの第1曲面部4n1が段差路13の上面部13cと傾斜面部13bとの境界にある角縁13eとX方向で線接触している。したがって、保持ばね片4cが保持突起15から外れて操作部材4が回動し始めると、その角縁13eでの線接触による少ない接触面積でスムーズに操作部材4を回動させて傾倒させることができる。
【0057】
平型導体Fの閉状態では、回動軸部4jのカム面部4nの第2平坦部4n4がハウジング2の当接面部13dと平面同士で突き当たっている。しかしながら、前述のように操作部材4が回動し始めると、カム面部4nの第3曲面部4n5が当接面部13dと突き当たりながら、回動端部4mが段差路13の底面部13aに向けて落ち込むように回動する(
図10、
図11)。
【0058】
さらに操作部材4を回動操作すると、底面部13aに向けて落ち込んでいる回動軸部4jは、第3曲面部4n5が当接面部13dと摺動しながら下方に変位し、第2曲面部4n3が段差路13の傾斜面部13bを摺動しながら登るようにして回動する。そして第2曲面部4n3が角縁13eを超えると、第2平坦部4n4が段差路13の上面部13cと平面で接触するとともに、操作部材4の先端部4gの板面が平面でハウジング2の凹部9に位置する天面壁7aのZ方向に沿う内壁面に対して接触することで、操作部材4の回動が停止する(
図2、
図12、
図13)。これによって操作部材4が開状態となり、平型導体Fのロック解除状態となる。即ち、ロック端子5の係止爪5fが平型導体Fの厚み方向で変位して係止凹部F1の上方に抜け出し、平型導体Fを嵌合室12から抜去方向へ引き抜くことが可能となる。
【0059】
操作部材4の開状態では、操作部材4の湾曲当接縁4fがロック端子5の作動片部5eの押圧力を受けており、その押圧力によって第2平坦部4n4が段差路13の上面部13cと平面で接触しているので、操作部材4の開状態を安定して維持することができる。つまり、操作者が開状態となった操作部材4を抑える必要がないので、操作者はロック解除操作と平型導体Fの抜去操作を片手で行うことができる。
【0060】
また、操作部材4が開く過程では、前述のように回動軸部4j(回動端部4m)が段差路13の底面部13aに一旦落ち込んだ後、それよりも高い位置にある上面部13cに変位する。即ち、楕円円弧状のカム面部4nが段差路13を上方に変位しつつ回動することで、回動軸部4jが上方に変位する。このように回動軸部4jの高さ位置が上昇するため、操作部材4の湾曲当接縁4fと接触するロック端子5の作動片部5eをより高く押し上げることができ、弾性片部5dもより高い位置に引き上げることができる。ここで、係止爪5fによる平型導体Fに対するロック状態を解除するために必要な作動片部5eと弾性片部5dの上方への変位量を確保するには、例えば楕円円弧状のカム面部4nを有する回動軸部4jの縦横比を大きくして、ロック状態では大きく横長であり、ロック解除状態で大きく縦長となるように回動軸部を形成することが考えられる。しかしながらこれではロック状態で横長の回動軸部を収容するためコネクタ1がY方向で大型化してしまう。これに対して操作部材4の回動により段差路13の上面部13cと底面部13aの高低差の分、ロック端子5の作動片部5eと弾性片部5dが上方に変位する本発明によれば、回動軸部4jの縦横比を大きくしなくても、ロック端子5の作動片部5eと弾性片部5dを大きく上方に変位させることができる。こうしたロック解除機構によってコネクタ1を小型化することができる。
【0061】
ところで、操作部材4の閉状態では、ロック端子5の作動片部5eの当接片5jの傾斜縁5kや縦片部5iが、操作部材4の回動支持片4bの先端部4gやその湾曲当接縁4fに対して押圧接触している。ここから操作部材4を回動させるには、屈曲ばね部5cを回動支点として作動片部5eと弾性片部5dを上方に変位させなければならない。つまり、操作部材4を回動させる過程では、常時、作動片部5eの傾斜縁5kが湾曲当接縁4fに対して斜めに押圧接触し、回動端部4mやカム面部4nがハウジング2の当接面部13dや段差路13に対して常に押しつけられている。したがって、操作部材4は、カム面部4nが段差路13に沿って移動して、回動軸部4jが変位することでなされる回動動作を確実に行うことができる。
【0062】
以上のように、コネクタ1では、ロック端子5が弾性片部5dとそこから分岐する作動片部5eとを有し、操作片4aを回動させると作動片部5eが押し上げられ、それとともに弾性片部5dが引き上げられることで、平型導体Fに対する係止爪5fのロック状態が解除される。このように操作部材4(操作片4a)の回動操作をロック解除動作に転換することにより、ロック解除機構をコンパクトに形成することができ、コネクタ1を小型化することができる。
【0063】
前記実施形態のコネクタ1については、様々な変形例による実施が可能である。その一例として、操作部材4は合成樹脂の成形体にて構成することができる。また操作部材4については、保持ばね片4cを設ける例を示したが、ロック端子5の作動片部5eの押圧接触によって操作部材4がX方向、Z方向でがたつきがなければ、設けなくてもよい。
【解決手段】コネクタ1は、平型導体Fのロック端子5と、ロック解除機構として機能する操作部材4とを備える。操作部材4は、ハウジング2の天面壁7aに対して回動する操作片4aの回動軸部4jがハウジング2の挿入口11と隣接する側壁部8の内部に位置する。このため、平型導体Fを抜け止めするロック状態で、操作片4aがハウジング2の天面壁7aに沿い、回動軸部4jが側壁部8に収まり、コネクタ1の全体を小型に形成することができる。