特許第6391912号(P6391912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東芝メディカルシステムズ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6391912-超音波診断装置 図000002
  • 特許6391912-超音波診断装置 図000003
  • 特許6391912-超音波診断装置 図000004
  • 特許6391912-超音波診断装置 図000005
  • 特許6391912-超音波診断装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391912
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】超音波診断装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/06 20060101AFI20180910BHJP
【FI】
   A61B8/06
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-36021(P2013-36021)
(22)【出願日】2013年2月26日
(65)【公開番号】特開2014-161554(P2014-161554A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年12月25日
【審判番号】不服2017-9855(P2017-9855/J1)
【審判請求日】2017年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(72)【発明者】
【氏名】滝本 雅夫
【合議体】
【審判長】 福島 浩司
【審判官】 東松 修太郎
【審判官】 ▲高▼見 重雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−27454(JP,A)
【文献】 特表2005−500888(JP,A)
【文献】 特開平2−309934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Bモードデータ、カラードプラデータ、ドプラスペクトラムデータを生成するデータ処理部と、
前記データ処理部で生成された前記Bモードデータ、前記カラードプラデータ、前記ドプラスペクトラムデータに基づく画像を表示する表示部と、システム制御部とを備え、
前記システム制御部は、前記Bモードデータ、前記カラードプラデータ、前記ドプラスペクトラムデータの順、あるいは、前記Bモードデータ、前記ドプラスペクトラムデータの順でデータの生成が遷移した場合は、エリアシングが起きているか否かを判定し、前記エリアシングが起きていると判定した場合、前記Bモードデータの生成が終了した後の所定の時間内に生成された前記カラードプラデータあるいは前記ドプラスペクトラムデータに基づいて、前記表示部に表示される前記ドプラスペクトラムデータに基づく画像の表示態様を変更し、前記エリアシングが起きていないと判定した場合、前記表示態様を変更せず、
前記所定の時間は、前記ドプラスペクトラムデータの生成に遷移したときから開始される時間であり、
前記Bモードデータ、前記カラードプラデータ、前記ドプラスペクトラムデータの順、あるいは、前記Bモードデータ、前記ドプラスペクトラムデータの順でデータの生成が遷移していない場合は、エリアシングが起きているか否かの判定を行うことなく、前記表示態様を変更しないことを特徴とする、
超音波診断装置。
【請求項2】
患者の心拍を計測するECGユニットを備え、
前記所定の時間は、前記ECGユニットによって計測された前記患者の心拍における少なくとも1心拍分の時間である請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記システム制御部は、Scale、拡大率・縮小率のうち少なくとも一つを調整することで前記表示部に表示される前記ドプラスペクトラムデータに基づく画像の前記表示態様を変更する請求項1または請求項2に記載の超音波診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波のドプラ効果を利用して患者の血流情報を得る、所謂、超音波ドプラ法によって患者の血流情報を画像表示する技術がある。この技術において、患者の血流情報は、縦軸が血流速度、横軸が時間といったドプラスペクトラム画像として表示される。しかし、計測する位置や患者によって血流速度は異なるため、波形全体を表示させるためには血流速度の計測レンジ(Scale)や血流速度0の基準線(Baseline)などを調整する必要がある。従来技術では、オペレータが超音波診断装置に設けられた自動調整ボタンを押下することでScaleやBaselineの自動調整が行われ、波形全体が表示される。この技術では、例えば、ボタンを押下した時点までに計測された血流速度の最大値あるいは最小値に基づいて波形の最大振幅を推定し、ScaleやBaselineの調整を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4538091号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記の従来技術では、オペレータがわざわざ自動調整ボタンを押下しなければならないため、オペレータにとって手間である。また、オペレータが、早く波形全体を確認したいと思うあまり、血流速度の本当の最大値と最小値が計測される前、具体的には1心拍分の時間も待たずに自動調整ボタンを押下してしまった場合、当該自動調整ボタンを押下した時点までの血流速度の最大値あるいは最小値に基づいてScale、Baselineの調整が行われてしまうため、波形全体が表示されないこともある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、簡便且つ的確にドプラスペクトラムの波形全体の表示が可能な超音波診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、実施形態の超音波診断装置は、Bモードデータ、カラードプラデータ、ドプラスペクトラムデータを生成するデータ処理部と、前記データ処理部で生成された前記Bモードデータ、前記カラードプラデータ、前記ドプラスペクトラムデータに基づく画像を表示する表示部と、前記Bモードデータ、前記カラードプラデータ、前記ドプラスペクトラムデータの順、あるいは、前記Bモードデータ、前記ドプラスペクトラムデータの順でデータの生成が遷移した場合、前記Bモードデータの生成が終了した後の所定の時間内に生成された前記カラードプラデータあるいは前記ドプラスペクトラムデータから、前記表示部に表示される前記ドプラスペクトラムデータに基づく画像におけるScale、Baseline、拡大率・縮小率のうち少なくとも一つを調整するシステム制御部と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態におけるブロック図。
図2】実施形態におけるフロー図。
図3】エリアシングが起きていない場合のドプラスペクトラム画像の概略図。
図4】エリアシングが起きている場合のドプラスペクトラム画像の概略図。
図5】Baselineの調整が成されたドプラスペクトラム画像の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0009】
まず、本実施形態における超音波診断装置の構成を図1のブロック図を用いて説明する。
【0010】
本実施形態における超音波診断装置は、システム制御部1、送信部2、基準信号発生部3、超音波プローブ4、受信部5、データ処理部10、データ記憶部11、ECG(Electrocardiograph)ユニット13、表示部14、入力部15を備える。データ処理部10は、Bモードデータ生成部6、ドプラ信号検出部7、カラードプラデータ生成部8、ドプラスペクトラムデータ生成部9を備える
システム制御部1は、入力部15を介したオペレータからBモードデータの生成を指示された場合、Bモードデータ生成用の制御データを作成し、作成したBモードデータ生成用の制御データを送信部2へ転送する。この場合、システム制御部1は、受信部5に対してエコー信号をBモードデータ生成部に供給するように指示する。
【0011】
システム制御部1は、入力部15を介したオペレータからカラードプラデータの生成を指示された場合、カラードプラデータ生成用の制御データを作成し、作成したカラードプラデータ生成用の制御データを送信部2へ転送する。この場合、システム制御部1は、受信部5に対してエコー信号をドプラ信号検出部7に供給するように指示し、ドプラ信号検出部7に対して検出したドプラ信号をカラードプラデータ生成部8に供給するように指示する。
【0012】
システム制御部1は、入力部15を介したオペレータからドプラスペクトラムデータの生成を指示された場合、ドプラスペクトラムデータ生成用の制御データを作成し、作成したドプラスペクトラムデータ生成用の制御データを送信部2へ転送する。この場合、システム制御部1は、受信部5に対してエコー信号をドプラ信号処理部7に供給するように指示し、ドプラ信号検出部7に対して検出したドプラ信号をドプラスペクトラムデータ生成部9に供給するように指示する。なお、本実施形態では、パルスドプラ法によってサンプリングを行うことでドプラスペクトラムデータを生成する場合について説明するが、連続波ドプラ法によってサンプリングを行う形態でも良い。
【0013】
システム制御部1は、データ記憶部11に記憶されたBモードデータに基づく画像(Bモード画像)、データ記憶部11に記憶されたカラードプラデータに基づく画像(カラードプラ画像、カラーバー)、データ記憶部11に記憶されたドプラスペクトラムデータに基づく画像(ドプラスペクトラム画像)を表示部14に表示させる。
【0014】
システム制御部1は、基準信号発生部3が発生させる基準信号の繰り返し周波数(Pulse Repetition Frequency:PRF)を設定する。
【0015】
システム制御部1は、Bモードデータ、カラードプラデータ、ドプラスペクトラムデータの順、あるいは、Bモードデータ、ドプラスペクトラムデータの順でデータの生成が遷移した場合で、尚且つ、表示部14に表示されたドプラスペクトラム画像が「エリアシング」を起こしている場合、エリアシングが生じないようなPRFに設定するように基準信号発生部3に対して指示する。なお、エリアシングとは、標本化定理に基づくドプラ信号の周波数成分の折り返し現象であり、ドプラ信号がPRFの大きさの1/2より大きい周波数成分を有するときに発生する。エリアシングが生じないPRFの設定については後述する。
【0016】
システム制御部1は、所定の入力画面を表示部14に表示させる。またシステム制御部1は、カラードプラデータを生成する範囲やドプラスペクトラムデータを生成する位置を指定するためのカーソルやマーカを表示させる。
【0017】
基準信号発生部3は、システム制御部1の設定に基づくタイミングで基準信号を発する。以降、ある時点で基準信号が発せられ次の基準信号が発せられるまでの時間を1レートとする。
【0018】
送信部2は図示しないメモリを備え、システム制御部1から受信した制御データをメモリに記憶する。送信部2は、基準信号発生部3が基準信号を発生させることでレートを開始させると、メモリから当該レートに係る制御データを読み出し、読み出した制御データに従って、後述する超音波プローブ4が備えている振動子に駆動パルスを供給する。
【0019】
超音波プローブ4は、例えば、一次元に配列された複数の振動子を有するリニア型の超音波プローブである。なお、超音波プローブ4は、コンベックス型でセクタ型であっても良い。各振動子は、送信部2から駆動パルスが供給されると振動し、送信部2が読み出した制御データに基づいて送信ビームを発生させる。各振動子は、患者の体内組織にて反射することで生じた反射波を受信し、エコー信号を発生させる。超音波プローブ4は、各エコー信号を受信部5へ供給する。
【0020】
受信部5は超音波プローブ4から供給されたエコー信号の信号強度を図示しないアンプで増幅させ、制御データに基づく整相加算処理を行なう。受信部5はシステム制御部1からの指示に従って、整相加算処理が行なわれたエコー信号をBモードデータ生成部6、ドプラ信号処理部7のいずれかに供給する。
【0021】
Bモードデータ生成部6は、受信部5からレート単位で供給されたエコー信号に包絡線検波処理や対数圧縮処理などの処理を施すことにより、エコーの振幅強度に対応した受信信号を生成する。Bモードデータ生成部6は、当該受信信号に基づいてBモードデータを生成する。Bモードデータ生成部6は、生成したBモードデータをデータ記憶部11に送信する。
【0022】
ドプラ信号検出部7は、受信部5から供給されたエコー信号からドプラ信号を検出する。ドプラ信号検出部7は、システム制御部1が入力部15を介したオペレータからカラードプラデータの生成を指示された場合、検出したドプラ信号をカラードプラデータ生成部8に供給する。一方で、ドプラ信号処理部7は、入力部15を介したオペレータからドプラスペクトラムデータの生成を指示された場合、検出したドプラ信号をドプラスペクトラムデータ生成部8に供給する。
【0023】
カラードプラデータ生成部8は、ドプラ信号検出部7から供給されたドプラ信号に基づいてカラードプラデータを生成する。ここで、カラードプラデータとは、例えば、Bモード画像と同じ断面において入力部15を介したオペレータによって指定された範囲内の血流速度の分布を計測したデータである。カラードプラデータ生成部8は、生成したカラードプラデータをデータ記憶部11に送信する。
【0024】
ドプラスペクトラムデータ生成部9は、ドプラ信号生成部7から供給されたドプラ信号に基づくドプラスペクトラムデータを生成する。ここでドプラスペクトラムデータとは、例えば、Bモード画像の断面において入力部15を介したオペレータによって指定された位置の血流速度の時間経過を計測したデータである。ドプラスペクトラム生成部9は、生成したドプラスペクトラムデータをデータ記憶部11に送信する。
【0025】
データ記憶部11は、例えば図示しないハードディスクなどの記憶手段を備えており、Bモードデータ生成部6から受信したBモードデータ、カラードプラ生成部8から受信したカラードプラデータ、ドプラスペクトラムデータ生成部9から受信したドプラスペクトラムデータを記憶する。データ記憶部11は、システム制御部1からの指示に従って、Bモードデータ、カラードプラデータ、ドプラスペクトラムデータを表示部14に表示させる。
【0026】
ECGユニット13は、患者の心拍をカウントし、心拍の様子を逐次システム制御部1に通知する。
【0027】
表示部14は、システム制御部1からの指示に従って、Bモードデータ、カラードプラデータ、ドプラスペクトラムデータを画像として表示する。表示部14は、システム制御部1からの指示に従って、所定の入力画面を表示する。また、表示部14は、システム制御部1からの指示に従って、カラードプラデータを生成する範囲やドプラスペクトラムデータを生成する位置を指定するためのカーソルやマーカを表示する。
【0028】
入力部15は、例えば、マウスやキーボードなどの入力手段を備えており、オペレータは、表示部14に表示されたカーソルやマーカをマウスやキーボードで操作し、カラードプラデータを生成する範囲やドプラスペクトラムデータを生成する位置を指定する。
【0029】
次に、本実施形態における超音波診断装置の動作を図2のフロー図を用いて説明する。
【0030】
ステップS1において、オペレータは診断を開始する。
【0031】
ステップS2において、オペレータはBモードデータの生成を、入力部15を介してシステム制御部1に指示する。システム制御部1は、入力部15を介したオペレータからBモードデータの生成を指示されると、Bモードデータ生成用の制御データを生成し、生成したBモードデータ生成用の制御データを送信部2へ転送する。送信部2は、システム制御部1から転送されたBモードデータ生成用の制御データをメモリに記憶する。メモリがBモードデータ生成用の制御データを全て記憶すると、基準信号発生部3は、システム制御部1によって設定されたPRFの基準信号を発する。送信部2は、基準信号発生部3が基準信号を発生させることでレートが開始されると、メモリから当該レートに係る制御データを読み出し、読み出した制御データに従って、超音波プローブ4の振動子に駆動パルスを供給する。各振動子は、送信部2から駆動パルスが供給されると振動し、当該レートに係る制御データに基づいた送信ビームを発生させる。各振動子は、患者の体内組織にて反射することで生じた反射波を受信し、エコー信号を発生させる。超音波プローブ4は、各エコー信号を受信部5へ供給する。システム制御部1は、受信部5に対してエコー信号をBモードデータ生成部に供給するように指示する。受信部5は超音波プローブ4から供給されたエコー信号の信号強度を図示しないアンプで増幅させ、制御データに基づく整相加算処理を行なう。受信部5はシステム制御部1からの指示に従って、整相加算処理が行なわれたエコー信号をBモードデータ生成部6に供給する。Bモードデータ生成部6は、受信部5から供給されたエコー信号に対して包絡線検波処理や対数圧縮処理などの処理を施すことにより、エコーの振幅強度に対応した受信信号を生成する。以上のプロセスは送信部2のメモリが記憶している全てのBモードデータ生成用の制御データについて完了するまで実施され、Bモードデータ生成部6は、ここで得られた全ての受信信号に基づいてBモードデータを生成する。Bモードデータ生成部6は、生成したBモードデータをデータ記憶部11に送信する。データ記憶部11は、Bモードデータ生成部6から受信したBモードデータを記憶する。システム制御部1は、データ記憶部11に記憶されたBモードデータに基づいて、Bモード画像を表示部14に表示させる。表示部14はBモード画像を表示する。
【0032】
ステップS3において、オペレータは入力部15を介して、表示部14に表示されたBモード画像の中からカラードプラデータを生成する範囲を指定し、システム制御部1に対してカラードプラデータの生成を指示する。システム制御部1は、入力部15を介したオペレータからカラードプラデータの生成を指示されると、カラードプラデータ生成用の制御データを生成し、生成したカラードプラデータ生成用の制御データを送信部2へ転送する。送信部2は、システム制御部1から転送されたカラードプラデータ生成用の制御データをメモリに記憶する。メモリがカラードプラデータ生成用の制御データを全て記憶すると、基準信号発生部3は、システム制御部1によって設定されたPRFの基準信号を発する。送信部2は、基準信号発生部3が基準信号を発生させることでレートが開始されると、メモリから当該レートに係る制御データを読み出し、読み出した制御データに従って、超音波プローブ4の振動子に駆動パルスを供給する。各振動子は、送信部2から駆動パルスが供給されると振動し、当該レートに係る制御データに基づいた送信ビームを発生させる。各振動子は、患者の体内組織にて反射することで生じた反射波を受信し、エコー信号を発生させる。超音波プローブ4は、各エコー信号を受信部5へ供給する。受信部5は超音波プローブ4から供給されたエコー信号の信号強度を図示しないアンプで増幅させ、制御データに基づく整相加算処理を行なう。システム制御部1は、受信部5に対してエコー信号をドプラ信号検出7に供給するように指示する。受信部5はシステム制御部1からの指示に従って、整相加算処理が行なわれたエコー信号をドプラ信号処理部7に供給する。ドプラ信号検出部7は、受信部5から供給されたエコー信号からドプラ信号を検出する。ドプラ信号検出部7は、ここではシステム制御部1が入力部15を介したオペレータからカラードプラデータの生成を指示されているので、検出したドプラ信号をカラードプラデータ生成部8に供給する。以上のプロセスは送信部2のメモリが記憶している全てのカラードプラデータ生成用の制御データについて完了するまで実施され、カラードプラデータ生成部8は、ここで得られた全ての受信信号に基づいてカラードプラデータを生成する。カラードプラデータ生成部8は、生成したカラードプラデータをデータ記憶部11に送信する。データ記憶部11は、カラードプラデータ生成部8から受信したカラードプラデータを記憶する。システム制御部1は、データ記憶部11に記憶されたカラードプラデータに基づいて、カラードプラ画像およびカラーバーを表示部14に表示させる。表示部14はカラードプラ画像およびカラーバーを表示する。
【0033】
ステップS4において、オペレータは入力部15を介して、表示部14に表示されたBモード画像の中からドプラスペクトラムデータを生成する位置を指定し、システム制御部1に対してドプラスペクトラムデータの生成を指示する。なお、ドプラスペクトラムデータを生成する位置は、例えば表示部14に表示されたレンジゲートマーカの位置をオペレータが入力部15を介して移動させ、ドプラスペクトラムデータ生成する位置に当該レンジゲートマーカを合わせることで指定される。でシステム制御部1は、入力部15を介したオペレータからドプラスペクトラムデータの生成を指示されると、上記指定された位置に係るドプラスペクトラムデータ生成用の制御データを生成し、生成したドプラスペクトラムデータ生成用の制御データを送信部2へ転送する。送信部2は、システム制御部1から転送されたドプラスペクトラムデータ生成用の制御データをメモリに記憶する。メモリがドプラスペクトラムデータ生成用の制御データを全て記憶すると、基準信号発生部3は、システム制御部1によって設定されたPRFの基準信号を発する。送信部2は、基準信号発生部3が基準信号を発生させることでレートが開始されると、メモリから当該レートに係る制御データを読み出し、読み出した制御データに従って、超音波プローブ4の振動子に駆動パルスを供給する。各振動子は、送信部2から駆動パルスが供給されると振動し、当該レートに係る制御データに基づいた送信ビームを発生させる。各振動子は、患者の体内組織にて反射することで生じた反射波を受信し、エコー信号を発生させる。超音波プローブ4は、各エコー信号を受信部5へ供給する。受信部5は超音波プローブ4から供給されたエコー信号の信号強度を図示しないアンプで増幅させ、制御データに基づく整相加算処理を行なう。システム制御部1は、受信部5に対してエコー信号をドプラ信号検出7に供給するように指示する。受信部5はシステム制御部1からの指示に従って、整相加算処理が行なわれたエコー信号をドプラ信号処理部7に供給する。ドプラ信号検出部7は、受信部5から供給されたエコー信号からドプラ信号を検出する。ドプラ信号検出部7は、ここではシステム制御部1が入力部15を介したオペレータからドプラスペクトラムデータの生成を指示されているので、検出したドプラ信号をドプラスペクトラムデータ生成部9に供給する。以上のプロセスは送信部2のメモリが記憶している全てのドプラスペクトラムデータ生成用の制御データについて完了するまで実施され、ドプラスペクトラムデータ生成部9は、ここで得られた全ての受信信号に基づいてドプラスペクトラムデータを生成する。ドプラスペクトラムデータ生成部9は、生成したドプラスペクトラムデータをデータ記憶部11に送信する。データ記憶部11は、ドプラスペクトラムデータ生成部9から受信したドプラスペクトラムデータを記憶する。システム制御部1は、データ記憶部11に記憶されたドプラスペクトラムデータに基づいて、ドプラスペクトラム画像を表示部14に表示させる。表示部14はドプラスペクトラム画像を表示する。
【0034】
ステップS5において、システム制御部1は、Bモードデータを経由した切替であるか否かを確認する。言い換えれば、システム制御部1は、Bモードデータ、カラードプラデータ、ドプラスペクトラムデータの順、あるいは、Bモードデータ、ドプラスペクトラムデータの順でデータの生成が遷移したか否かを判断する。Bモードデータ、カラードプラデータ、ドプラスペクトラムデータの順、あるいは、Bモードデータ、ドプラスペクトラムデータの順でデータの生成が遷移している場合、ステップS6に移行する。一方で、Bモードデータ、カラードプラデータ、ドプラスペクトラムデータの順、あるいは、Bモードデータ、ドプラスペクトラムデータの順でデータの生成が遷移していない場合、ステップS8に移行する。
【0035】
ステップS6において、システム制御部1は、表示部14に表示されているドプラスペクトラム画像のScaleが適当であるか否かを判断する。本実施形態において、Scaleが適当であるか否かの判断は、例えばECGユニット13によってカウントされた1心拍分の時間内のドプラスペクトラムデータにエリアシングが起きているか否かを基準とする。
【0036】
図3はエリアシングが起きていない場合のドプラスペクトラム画像101aとBaseline102aの概略図である。また、図4はエリアシングが起きている場合のドプラスペクトラム画像101bとBaseline102bの概略図である。図3に示すように、ドプラスペクトラムデータにおける血流速度の最大値と最小値は、1心拍分の時間Tを周期として繰り返し観測される。これはエリアシングが起きている場合も同様に言える。したがって、エリアシングが起きているか否かを判断するには、少なくとも1心拍分のドプラスペクトラムデータがあれば良い。図3図4に示すように、実際にエリアシングが起きているか否かは、例えば、1心拍分のドプラスペクトラムデータの中に、Scaleの最大値付近の値が急にScaleの最小値付近の値に変化している、あるいはScaleの最小値付近の値が急にScaleの最大値付近の値に変化しているデータがあるか否かで判断できる。上記のようにScaleの最大値付近の値が急にScaleの最小値付近の値に変化している、あるいはScaleの最小値付近の値が急にScaleの最大値付近の値に変化しているデータがある場合、ドプラスペクトラムデータはエリアシングを起こしている。
【0037】
システム制御部1は、上記のような判断によってエリアシングが起きていると判断した場合、即ち、表示部14に表示されているドプラスペクトラム画像のScaleが適当でないと判断した場合、フローとしてはステップS7に移行する。一方で、システム制御部1は、上記のような判断によってエリアシングが起きていないと判断した場合、即ち、表示部14に表示されているドプラスペクトラム画像のScaleが適当であると判断した場合、フローとしてはステップS8に移行する。
【0038】
ステップS7において、システム制御部1はScaleを調整する。まず、システム制御部1は、エリアシングを起こしているドプラスペクトラムデータを用いて、仮にPRFが十分に大きくエリアシングが起きていなかったと仮定したときの血流速度の最大値(推定最大血流速度)と最小値(推定最小血流速度)を推定する。システム制御部1は、推定最大血流速度と推定最小血流速度に基づいて、基準信号発生部3が発生させる基準信号のPRFを設定する。例えば、システム制御部1は、推定最大血流速度と推定最小血流速度のうち絶対値が大きい方の血流速度に対応するドプラ信号の周波数成分がPRFの1/2の大きさより小さくなるようにPRFの大きさを調整する。システム制御部1は、PRFの大きさを調整すると、ステップS4において指定された位置についての新たなドプラスペクトラムデータの生成を開始する。ステップS4のときと同様に、システム制御部1は、新たなドプラスペクトラムデータ生成用の制御データを生成し、生成した新たなドプラスペクトラムデータ生成用の制御データを送信部2へ転送する。送信部2は、システム制御部1から転送された新たなドプラスペクトラムデータ生成用の制御データをメモリに記憶する。メモリが新たなドプラスペクトラムデータ生成用の制御データを全て記憶すると、基準信号発生部3は、ステップS7においてシステム制御部1によって設定されたPRFの基準信号を発する。送信部2は、基準信号発生部3が基準信号を発生させることでレートが開始されると、メモリから当該レートに係る制御データを読み出し、読み出した制御データに従って、超音波プローブ4の振動子に駆動パルスを供給する。各振動子は、送信部2から駆動パルスが供給されると振動し、当該レートに係る制御データに基づいた送信ビームを発生させる。各振動子は、患者の体内組織にて反射することで生じた反射波を受信し、エコー信号を発生させる。超音波プローブ4は、各エコー信号を受信部5へ供給する。受信部5は超音波プローブ4から供給されたエコー信号の信号強度を図示しないアンプで増幅させ、制御データに基づく整相加算処理を行なう。システム制御部1は、受信部5に対してエコー信号をドプラ信号検出7に供給するように指示する。受信部5はシステム制御部1からの指示に従って、整相加算処理が行なわれたエコー信号をドプラ信号処理部7に供給する。ドプラ信号検出部7は、受信部5から供給されたエコー信号からドプラ信号を検出する。ドプラ信号検出部7は、ここではシステム制御部1が入力部15を介したオペレータからドプラスペクトラムデータの生成を指示されているので、検出したドプラ信号をドプラスペクトラムデータ生成部9に供給する。以上のプロセスは送信部2のメモリが記憶している全ての新たなドプラスペクトラムデータ生成用の制御データについて完了するまで実施され、ドプラスペクトラムデータ生成部9は、ここで得られた全ての受信信号に基づいて新たなドプラスペクトラムデータを生成する。ドプラスペクトラムデータ生成部9は、生成した新たなドプラスペクトラムデータをデータ記憶部11に送信する。データ記憶部11は、ドプラスペクトラムデータ生成部9から受信した新たなドプラスペクトラムデータを記憶する。システム制御部1は、データ記憶部11に記憶された新たなドプラスペクトラムデータに基づいて、新たなドプラスペクトラム画像を表示部14に表示させる。表示部14は新たなドプラスペクトラム画像を表示し、フローとしてはステップS8に移行する。なお、表示部14に表示される新たなドプラスペクトラム画像は、図3に示すように、波形全体がエリアシングなしに表示された画像である。
【0039】
ステップS8において、オペレータはScaleの調整が行われた新たなドプラスペクトラム画像を参照し、診断を継続する。
【0040】
ステップS9において、オペレータは、例えば患者に押し当てている超音波プローブ4の位置がずれてしまった場合、略同じ計測位置で再度ドプラスペクトラムデータを生成するか否かを判断する。オペレータが略同じ計測位置で再度ドプラスペクトラムデータを生成すると判断した場合、フローとしてはステップS3に移行する。なお、ここでステップS3に移行した場合、Bモードデータ、カラードプラデータ、ドプラスペクトラムデータの順、あるいは、Bモードデータ、ドプラスペクトラムデータの順でデータの生成が遷移していないため、システム制御部1によるScaleの調整は行われない。なお、ここでScaleの調整が必要ないのは、略同じ計測位置で血流速度を計測しても血流速度の最大値と最小値は大きく変化しないからである。一方、オペレータが略同じ位置で再度ドプラスペクトラムデータを生成しないと判断した場合、フローとしてはステップS10に移行する。
【0041】
ステップS10において、オペレータは、計測位置を大きく変えてドプラスペクトラムデータを生成するか否かを判断する。オペレータが計測位置を大きく変えてドプラスペクトラムデータを生成すると判断した場合、フローとしてはステップS2に移行する。この場合、Bモードデータ、カラードプラデータ、ドプラスペクトラムデータの順、あるいは、Bモードデータ、ドプラスペクトラムデータの順でデータの生成が遷移したことになるため、ステップS6においてScaleが不適当だった場合は、システム制御部1によるScaleの調整が行われることになる。なお、ここでScaleの調整が必要になるのは、計測位置が大きく変わると血流速度の最大値と最小値が大きく変化してしまうからである。一方、オペレータが計測位置を大きく変えてドプラスペクトラムデータを生成すると判断しない場合、フローとしてはステップS11に移行する。
【0042】
ステップS11において、オペレータは診断を終了する。
【0043】
以上で説明したように、本実施形態における超音波診断装置は、1心拍分の時間において計測した血流速度に基づいて、オペレータが何の操作も行うことなく、適切なScaleでのエリアシングのないドプラスペクトラムを表示部に表示させる。これによって、従来技術のようにオペレータがボタンを押下しなくとも良くなるため、オペレータの手間が解消される。また、オペレータは、1心拍分の時間待つだけで、適切なScaleでのエリアシングのないドプラスペクトラムを得られるので、従来技術のようにオペレータが、早く波形全体を確認したいと思うあまり焦ってボタンを押下してしまい、結果として適性でない波形が表示されることも無くなる。
【0044】
本実施形態はScaleを1心拍分の時間において計測した血流速度に基づいて自動調整する場合について説明したが、Scaleの自動調製の代わりに、あるいはScaleの自動調整に加えて、Baselineについても同様に自動調整を行っても良い。
【0045】
図5は、Baselineの調整によって表示部14に適正に表示された場合のドプラスペクトラム画像101cとBaseline102cの概略図である。Baselineが適当な場合とは、例えば、図5に示すように、血流速度の最大値から縦軸目盛りの上限値までの差L1と、血流速度の最小値から縦軸目盛りの下限値までの差L2とが等しい場合のことである。このようにBaselineについて自動調整させるために、例えばシステム制御部1が、Bモードデータ、カラードプラデータ、ドプラスペクトラムデータの順、あるいは、Bモードデータ、ドプラスペクトラムデータの順でデータの生成が行われた場合で、尚且つ、ドプラスペクトラムデータがエリアシングを起こしていない場合、ECGユニット13によってカウントされた1心拍分の時間内のドプラスペクトラムデータにおける血流速度の最大値と最小値を求め、その最大値と最小値に基づいてL1とL2が等しくなるようにBaselineを調整した状態でドプラスペクトラム画像を表示部14に表示させる。なお、L1とL2の大きさは、表示部14に表示される縦軸の目盛りの上限値と下限値の差の1/2以下の大きさになる調整することが好ましい。これによって、波形がドプラスペクトラム画像の中央に表示されることになるため、オペレータは波形全体をより観察しやすくなる。上記Baselineの自動調整は、例えば、Baselineが不適当な位置にある状態でも波形全体を表示させるために、あえて波形をドプラスペクトラム画像の上下で折り返して表示させる表示上の操作を行っている場合においても適用できる。
【0046】
また、エリアシングが起こらないようにPRFを予め大きく設定する場合、表示部14におけるドプラスペクトラム画像の表示の拡大率・縮小率を自動調整することによってドプラスペクトラム画像の波形全体を表示させても良い。この場合、システム制御部1が、ECGユニット13によってカウントされた1心拍分の時間内のドプラスペクトラムデータの最大血流速度と最小血流速度を求め、図5に示すように波形の上部と下部に適度な余白が生まれるようにドプラスペクトラム画像を拡大あるいは縮小して表示部14に表示させる。これによって、新たにドプラスペクトラムデータを生成する必要が無くなるので、診断時間の短縮が期待できる。
【0047】
更に、カラードプラデータ、ドプラスペクトラムデータの順で各データを生成する場合、システム制御部1がカラードプラデータにおける血流速度の最大値と最小値を求め、その最大値と最小値に基づいてScaleやBaseline、上記縮小の調整を行って表示部14に表示させても良い。なおここでの血流速度の最大値と最小値は、例えば、ドプラスペクトラムデータを生成する位置、即ち、レンジゲートマーカの位置におけるカラードプラデータの最大値と最小値でも良いし、ドプラスペクトラムデータを生成する位置の周辺の複数位置におけるカラードプラデータの中から求めた最大値と最小値でも良い。これによって、カラードプラデータの生成からドプラスペクトラムデータの生成に移行したときに、始めから適正な表示のドプラスペクトラム画像を得ることができる。
【0048】
また、本実施形態で説明したScaleやBaselineの自動調整機能に加えて、従来技術のようにオペレータが自動調整ボタンを押下することで自動調整が行われても良い。これによって、よりオペレータが望むドプラスペクトラム画像を表示させることができる。
【0049】
以上、本発明の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0050】
1・・・システム制御部
2・・・送信部
3・・・基準信号発生部
4・・・超音波プローブ
5・・・受信部
6・・・Bモードデータ生成部
7・・・ドプラ信号検出部
8・・・カラードプラデータ生成部
9・・・ドプラスペクトラムデータ生成部
10・・・データ処理部
11・・・データ記憶部
13・・・ECGユニット
14・・・表示部
15・・・入力部
101a、101b、101c・・・ドプラスペクトラム画像
102a、102b、102c・・・Baseline
図1
図2
図3
図4
図5