(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391917
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】発光素子表示装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05B 33/04 20060101AFI20180910BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20180910BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20180910BHJP
H05B 33/26 20060101ALI20180910BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20180910BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
H05B33/04
H05B33/14 A
H05B33/10
H05B33/26
H01L27/32
G09F9/30 349C
G09F9/30 365
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-139743(P2013-139743)
(22)【出願日】2013年7月3日
(65)【公開番号】特開2015-15089(P2015-15089A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古家 政光
【審査官】
中山 佳美
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−295911(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50−51/56
H01L 27/32
H05B 33/00−33/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁表面を有する基板と、
前記絶縁表面上に形成され、発光領域をそれぞれ有する画素がマトリクス状に配置されると共に、有機絶縁材料からなる有機絶縁層を有する表示領域と、
前記表示領域の周囲にあり、金属配線もしくは薄膜トランジスタを用いた回路が配置され、前記有機絶縁層を有する周辺回路領域と、
前記表示領域と前記周辺回路領域との間に形成された遮断領域と、を備え、
前記発光領域は、
互いに積層された2つの電極に挟持された、発光層を含む有機層を有し、
前記遮断領域は、
前記表示領域を覆い、前記2つの電極のうち、前記絶縁表面から遠い側に設けられた一方であり、前記表示領域から連続して形成された電極層を有し、前記電極層と、前記基板との間に含まれる層が無機材料の層のみで構成され、前記有機絶縁層が除去された第1遮断領域と、
前記第1遮断領域と前記表示領域との間に位置し、前記第1遮断領域を構成する前記無機材料の層及び前記有機層のみで構成され、前記有機絶縁層が除去された第2遮断領域と、を有し、
前記第1遮断領域は、前記第2遮断領域と前記周辺回路領域との間に、前記第2遮断領域と前記周辺回路領域に隣り合って形成されており、
前記無機材料の内、前記第1遮断領域を含む、前記有機絶縁層が除去された領域内で前記電極層と接する層は絶縁層であることを特徴とする発光素子表示装置。
【請求項2】
絶縁表面を有する基板と、
前記絶縁表面上に形成され、発光領域をそれぞれ有する画素がマトリクス状に配置されると共に、有機絶縁材料からなる有機絶縁層を有する表示領域と、
前記表示領域の周囲にあり、金属配線もしくは薄膜トランジスタを用いた回路が配置され、前記有機絶縁層を有する周辺回路領域と、
前記表示領域と前記周辺回路領域との間に、前記表示領域と前記周辺回路領域に隣り合って形成される遮断領域と、
を備え、
前記発光領域は、
互いに積層された2つの電極に挟持された、発光層を含む有機層を有し、
前記遮断領域において、前記有機絶縁層は、その底に無機絶縁層のみを露出する開口部を有し、
前記表示領域における前記有機絶縁層と、前記周辺回路領域における前記有機絶縁層とは、前記開口部を介して不連続であり、
前記2つの電極の内、前記絶縁表面から遠い側に設けられた電極層は、前記表示領域から前記遮断領域まで連続して形成され、
前記電極層は、前記遮断領域を覆うと共に、前記遮断領域よりも前記基板の端部に近い側で前記表示領域を囲むように端部を有し、
前記有機層は、前記遮断領域であって、前記開口部に重畳すると共に、前記電極層の端部よりも前記表示領域に近い側で前記表示領域を囲むように端部を有し、
前記遮断領域の前記開口部内において、前記有機層の端部よりも前記基板の端部に近い側で前記電極層と接する層は、前記無機絶縁層であることを特徴とする、発光素子表示装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の発光素子表示装置であって、
前記電極層上に、前記表示領域を覆うように形成された封止膜をさらに有し、
前記封止膜は、平面視で前記遮断領域を覆うと共に、その端部が前記遮断領域よりも前記基板の端部に近い側に位置する、ことを特徴とする発光素子表示装置。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の発光素子表示装置であって、
前記有機層は、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層のいずれかを含んでいる、ことを特徴とする発光素子表示装置。
【請求項5】
請求項1に記載の発光素子表示装置であって、
前記第2遮断領域は、前記表示領域を囲み、
前記第1遮断領域は、前記第2遮断領域及び前記表示領域を囲む、ことを特徴とする発光素子表示装置。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の発光素子表示装置であって、
前記遮断領域における、前記電極層と前記絶縁表面との間の距離は、前記表示領域における、前記電極層と前記絶縁表面との間の距離よりも短い、ことを特徴とする発光素子表示装置。
【請求項7】
絶縁基板上にTFT(Thin Film Transistor)を含む回路を表示領域及び表示領域の周囲の周辺回路領域に形成するTFT回路形成工程と、
前記表示領域内の各画素において前記回路と電気的に接続された電極、及び前記電極の周囲に形成される有機絶縁膜を形成する電極・有機絶縁膜形成工程と、
前記有機絶縁膜を、前記表示領域を囲むように開口して遮断領域を形成する遮断領域形成工程と、
前記周辺回路領域を覆い、前記表示領域上に開口を有する蒸着マスクを用いて、少なくとも前記表示領域上に、互いに積層された2つの電極に挟持された、発光層を含む有機層を蒸着する有機層形成工程と、
少なくとも前記有機層を覆い、前記絶縁基板の全面を封止するための封止膜を形成する封止膜形成工程と、を有し、
前記遮断領域形成工程において、前記有機絶縁膜を開口した領域には、無機絶縁材料のみが露出し、
前記遮断領域形成工程において、
前記表示領域を覆い、前記2つの電極のうち、前記絶縁表面から遠い側に設けられた一方であり、前記表示領域から連続して形成された電極層を有し、前記電極層と、前記基板との間に含まれる層が無機材料の層のみで構成される第1遮断領域と、
前記第1遮断領域から連続すると共に、前記第1遮断領域と前記表示領域との間に位置し、前記第1遮断領域を構成する前記無機材料の層及び前記有機層のみで構成される第2遮断領域と、
を形成し、
前記有機層形成工程において、前記蒸着マスクの内側端が、平面視で前記第1遮断領域と前記第2遮断領域との境界に重畳する領域に位置し、前記有機層の端部が、平面視で前記遮断領域よりも前記基板の端部に近い領域には形成されないように前記有機層を形成し、
前記遮断領域形成工程において、前記第1遮断領域が前記第2遮断領域と前記周辺領域に隣り合うように形成され、前記電極層は、前記第1遮断領域を含む、前記有機絶縁層が除去された領域内で、絶縁層と接するように形成される、ことを特徴とする発光素子表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子表示装置
及びその製造方法に関し、より詳しくは、各画素に配置された自発光体である発光素子に発光させて表示を行う発光素子表示装置
及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機発光ダイオード(OLED:Organic Light Emitting Diode)と呼ばれる自発光体を用いた画像表示装置(以下、「有機EL(Electro-luminescent)表示装置」という。)が実用化されている。この有機EL表示装置は、従来の液晶表示装置と比較して、自発光体を用いているため、視認性、応答速度の点で優れているだけでなく、バックライトのような補助照明装置を要しないため、更なる薄型化が可能となっている。
【0003】
このような有機EL素子は、水分を吸収すると劣化するため、有機ELパネルでは、発光層が形成されたTFT(Thin Film Transistor)基板上に封止ガラス基板を樹脂で貼付けて密封するなどの対策が施されている。
【0004】
特許文献1及び特許文献2は、水分が、表示領域の外側周囲から有機膜を通して表示領域に達する侵入経路に鑑み、有機膜が表示領域と表示領域の外側周囲の領域との間で分断される構造について開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−335267号公報
【特許文献2】特開2008−047515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
TFT基板では、表面に表示領域及び周辺回路領域の全面を覆うように封止膜が形成されるが、封止膜形成の前の工程において異物が付着している場合には、その部分を十分に覆うことができないため、外部からの水分の侵入経路となる恐れがある。特に、封止膜形成の前の工程である蒸着工程においては、蒸着マスクに付着した異物が、蒸着工程の際にTFT基板側に転写される恐れがあり、このような場合には封止膜による封止が不十分となることが考えられる。
【0007】
本発明は、上述の事情を鑑みてしたものであり、水分侵入による表示不良を抑制し、長
期間品質を維持することのできる
発光素子表示装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発光素子表示装置は、自ら発光する発光領域をそれぞれ有する画素がマトリクス状に配置されると共に、有機絶縁材料からなる有機絶縁層を有する表示領域と、前記表示領域の周囲にあり、金属配線もしくは薄膜トランジスタを用いた回路が配置され、前記有機絶縁層を有する周辺回路領域と、前記表示領域と前記周辺回路領域との間に形成された遮断領域と、を備え、前記遮断領域は、前記表示領域を覆い、前記発光領域を発光させるための2つの電極のうちの一方であり、前記表示領域から連続して形成された電極層を有し、前記電極層から基材である絶縁基板までが無機材料の層のみで構成される第1遮断領域と、前記第1遮断領域を構成する複数の層及び発光有機層のみで構成される第2遮断領域と、を有する発光素子表示装置である。
【0009】
ここで、発光有機層は、2つの電極の間に形成された層のうちの少なくとも1つの層を意味し、具体的には、発光を担う発光層の他、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層等も含まれる。
【0010】
また、本発明の発光素子表示装置において、前記発光有機層は、有機発光材料により形成された前記表示領域を覆う発光層であってもよい。
【0011】
また、本発明の発光素子表示装置において、前記発光有機層は、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層のいずれかを含んでいてもよい。
【0012】
本発明の発光素子表示装置製造方法は、絶縁基板上にTFT(Thin Film Transistor)を含む回路を表示領域及び表示領域の周囲の周辺回路領域に形成するTFT回路形成工程と、前記表示領域内の各画素において前記回路と電気的に接続された電極、及び前記電極の周囲に形成される有機絶縁膜を形成する電極・有機絶縁膜形成工程と、前記周辺回路領域を覆い、前記周辺回路領域のみに接するマスク領域を有する蒸着マスクを用いて発光有機層を蒸着する発光有機層形成工程と、少なくとも前記発光有機層を覆い、前記絶縁基板の全面を封止するための封止膜を形成する封止膜形成工程と、を有する発光素子表示装置製造方法である。
【0013】
また、本発明の発光素子表示装置製造方法における前記発光有機層形成工程において、前記蒸着マスクの内側端が遮断領域内に配置されている、こととしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る有機EL表示装置を概略的に示す図である。
【
図2】有機EL表示装置のTFT基板の構成を示す平面図である。
【
図3】
図2のIII−III線における断面を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る有機EL表示装置の製造工程を示すフローチャートである。
【
図5】
図4のTFT基板製造工程の詳細について示すフローチャートである。
【
図6】
図5の発光有機層形成工程及びカソード・封止膜形成工程について詳細に説明するための図である。
【
図7】比較例1に係るTFT基板の発光有機層形成工程及びカソード・封止膜形成工程について説明する図である。
【
図8】比較例2に係るTFT基板の発光有機層形成工程及びカソード・封止膜形成工程について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、図面において、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0016】
図1には、本発明の実施形態に係る有機EL表示装置100が概略的に示されている。この図に示されるように、有機EL表示装置100は、上フレーム110及び下フレーム120に挟まれるように固定された有機ELパネル200から構成されている。有機ELパネル200は、後述するTFT基板300と透明樹脂によりTFT基板300に接着された不図示の封止基板とにより構成されている。
【0017】
図2は、TFT基板300の構成を示す平面図である。この図に示されるように、TFT基板300は、それぞれにアノード電極359(後述)が配置され、階調値に基づいて発光する画素310がマトリクス状に配置された表示領域320と、表示領域320の周囲に配置され、画素回路を駆動するための各種信号生成回路やカソード電極357(後述)に対して電位を印加する回路などが形成された周辺回路領域340と、表示領域320及び周辺回路領域340の間に形成された遮断領域330とを有している。また、TFT基板300上には、表示領域320の各画素310に階調値に対応する発光を行わせるための制御を行う駆動IC(Integrated Circuit)350が配置されている。
【0018】
図3は、
図2のIII−III線における断面を示す図である。この図に示されるようにTFT基板300は、絶縁基板であるガラス基板351に、無機絶縁膜352及び353内で、例えばLTPS(Low-Temperature Poly Silicon)により形成された画素回路361及び周辺回路362と、主に画素回路361及び周辺回路362が形成された領域を平坦化させるための有機絶縁膜である有機平坦化膜355と、有機平坦化膜355のスルーホールに成膜されたアノード電極359等の導電膜の端部を覆うように形成された有機絶縁膜である有機バンク356と、アノード電極359のガラス基板351側に配置され、発光した光を反射させるための反射膜360と、発光を担う発光層、及び/又は正孔注入・輸送層や電子注入・輸送層等からなる発光有機層358と、アノード電極359に対向する電極であるカソード電極357と、TFT基板300の全面を覆うように成膜される封止膜354と、を有している。
【0019】
ここで、遮断領域330は、表示領域320と周辺回路領域340との間で水分の行き来を遮断するための領域であり、カソード電極357からガラス基板351までの無機材料のみで構成される第1遮断領域331と、第1遮断領域331の各層を含むと共に、発光有機層358を有する第2遮断領域332と、を有している。外部から侵入する水分は、有機膜を介して進行するため、無機材料のみで構成される領域を設けることで、例えば、周辺回路領域340において侵入した水分が表示領域320に侵入することを防ぐことができる。
【0020】
以下、本実施形態に係る構成の製造方法について説明しつつ、本実施形態に係る構成の優位な点について述べる。
【0021】
図4は、本発明の実施形態に係る有機EL表示装置100の製造工程を示すフローチャートである。このフローチャートに示されるように、有機EL表示装置100の製造工程では、まず、TFT基板製造工程S100においてTFT基板300を製造し、引き続き、封止基板製造工程S200において封止基板を製造する。次にTFT基板・封止基板接着工程S300において、製造されたTFT基板300及び封止基板を透明樹脂で接着し、最後に上下フレーム取付工程S400において、COGやFPC等の外部部材(図示せず)を実装し、上フレーム110及び下フレーム120を取付ける。これらの工程により有機EL表示装置100が完成する。
【0022】
図5は、
図4のTFT基板製造工程S100の詳細について示すフローチャートである。このフローチャートに示されるように、TFT基板製造工程S100は、まずTFT回路形成工程S110において、例えばLTPS等によりトランジスタ回路を形成する。次にアノード・有機バンク形成工程S120において、アノード電極359及び有機バンク356等を形成し、引き続き、発光有機層形成工程S130において、発光有機層358を蒸着により形成する。最後に、カソード・封止膜形成工程S140において、表示領域320を覆うと共に周辺回路領域340まで延びるカソード電極357を形成の後、基板の全面を覆う封止膜354を形成して、TFT基板300が完成する。
【0023】
図6は、
図5の発光有機層形成工程S130及びカソード・封止膜形成工程S140について詳細に説明するための図である。上述したように発光有機層358は、いわゆる蒸着により成膜される。蒸着は、蒸着マスク410を使用して、TFT基板300の成膜しない部分を覆い、成膜する材料を蒸着マスク410で覆われていない部分に付着させることにより行われる。本実施形態では、周辺回路領域340には接触するが、表示領域320には接触しない蒸着マスク410を用いる。
図6では、本実施形態の優位な点について説明するために、蒸着マスク410の接触する周辺回路領域340に対応する部分に異物411がある場合について説明する。まずマスク装着工程S131において、TFT基板300に蒸着マスク410を装着する。ここで、蒸着マスク410の内側端は、蒸着工程の回り込みによる付着も考慮し、発光有機層358が遮断領域330内に形成されるように、遮断領域330に配置されている。次に、蒸着工程S132において発光有機層358を蒸着する。この工程において蒸着マスク410から周辺回路領域340に異物411が転写されることとする。最後に、カソード・封止膜形成工程S140において、カソード電極357及び封止膜354が形成されるが、異物411が付着している部分には、封止膜354が適切に形成されないため、水分の侵入経路となり得る。
【0024】
しかしながら、本実施形態のTFT基板300では、第1遮断領域331においてカソード電極357からガラス基板351までが無機材料のみで構成されているため、周辺回路領域340に侵入した水分は、図の矢印で示されるように、第1遮断領域331において遮断され、表示領域320への水分の侵入を防ぐことができる。したがって、表示不良を抑制し、長期間品質を維持することのできる有機EL表示装置とすることができる。
【0025】
なお、上述の発光有機層358は何層で形成されていてもよいが、発光有機層358は、複数層で構成されることが一般的であり、この場合には、上述の蒸着マスク410を使用した蒸着工程が複数回繰り返される。また、この複数層は、発光を担う発光層でもよいし、正孔注入層、正孔輸送層や電子注入層、電子輸送層等であってもよい。特に、表示領域320において白色等の単一色で全面が発光する有機EL表示装置の場合には、発光層を発光有機層358とすることができるが、各画素毎にRGBの発光層を別々に形成する有機EL表示装置の場合には、正孔注入層、正孔輸送層や電子注入層、電子輸送層等のうち各画素共通に成膜される共通層を発光有機層358としてもよい。
【0026】
図7は、比較例1に係るTFT基板の発光有機層形成工程及びカソード・封止膜形成工程について説明する図である。比較例1の発光有機層形成工程及びカソード・封止膜形成工程では、
図6と同様に、マスク装着工程S231、蒸着工程S232及びカソード・封止膜形成工程S240を有しているが、蒸着マスク510が用いられる点において異なっている。蒸着マスク510のマスク部分は、周辺回路領域340から表示領域320に入る部分にまで延びている。このため、蒸着工程S232において形成される発光有機層358は表示領域320内に収まるように形成される。また、蒸着マスク510のマスク部分は、周辺回路領域340と共に表示領域320にも接することが考えられるため、周辺回路領域340において転写される異物411の他に表示領域320において転写される異物511について考慮する必要がある。異物511を考慮すると、カソード・封止膜形成工程S240において、周辺回路領域340の他に表示領域320においても、異物511が転写されることにより、封止膜354が適切に形成されない部分が出現することとなる。したがって、ここから水分の侵入経路となる恐れがある。
図6において説明したように、周辺回路領域340からの水分侵入経路は、遮断領域330の存在により、表示領域320への侵入を防ぐことができるが、表示領域320における水分の侵入経路はそのまま発光有機層358の劣化につながってしまい、表示不良の原因となる。
【0027】
図8は、比較例2に係るTFT基板の発光有機層形成工程及びカソード・封止膜形成工程について説明する図である。比較例2の発光有機層形成工程及びカソード・封止膜形成工程では、
図6と同様に、マスク装着工程S331、蒸着工程S332及びカソード・封止膜形成工程S340を有しているが、蒸着マスク610が用いられる点において異なっている。比較例2に用いられる蒸着マスク610のマスク部分は、周辺回路領域340で留まる幅となっているため、蒸着工程S332において形成される発光有機層358は遮断領域330を超えて周辺回路領域340まで延びて形成される。蒸着マスク610のマスク部分は、
図6の場合と同様に周辺回路領域340にのみに接するため、
図6と同様、異物411についてのみ考慮する。異物411が周辺回路領域340に付着している場合には、カソード・封止膜形成工程S340において、周辺回路領域340に封止膜354が適切に形成されず、ここから水分の侵入経路となる恐れがある。ここで、発光有機層358は、遮断領域330を超えて形成されているため、周辺回路領域340の水分侵入経路から水分が侵入した場合には、水分は遮断領域330において遮断されず、発光有機層358を経由して、表示領域320の発光有機層358を劣化させ、表示不良の原因となる。
【0028】
以上説明したように、上述の実施形態においては、TFT基板300の遮断領域330が第1遮断領域331及び第2遮断領域332を有していることにより、周辺回路領域340に水分侵入経路が発生したとしても表示領域320への水分の侵入を防ぐことができると共に、水分侵入経路の原因となる発光有機層形成工程において、蒸着マスクから表示領域320への異物の転写を防ぐことができるため、表示領域320の封止膜354を適切に形成し、表示領域320における水分の侵入を防ぐことができる。従って、本実施形態の有機EL表示装置は、表示領域の外側周囲からの水分侵入による表示不良を抑制し、長期間品質を維持することができる。
【0029】
上述の実施形態は、有機発光材料を用いる発光素子表示装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0030】
100 有機EL表示装置、110 上フレーム、120 下フレーム、200 有機ELパネル、300 TFT基板、310 画素、320 表示領域、330 遮断領域、340 周辺回路領域、351 ガラス基板、352 無機絶縁膜、354 封止膜、355 有機平坦化膜、356 有機バンク、357 カソード電極、358 発光有機層、359 アノード電極、360 反射膜、361 画素回路、362 周辺回路、410,510,610 蒸着マスク、411,511 異物。