(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391937
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】誘導加熱ホットトップを用いた真空又は大気鋳造
(51)【国際特許分類】
B22C 9/08 20060101AFI20180910BHJP
B22D 23/00 20060101ALI20180910BHJP
B22D 21/04 20060101ALI20180910BHJP
B22D 21/00 20060101ALI20180910BHJP
B22D 21/06 20060101ALI20180910BHJP
B22D 7/10 20060101ALI20180910BHJP
B22C 9/24 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
B22C9/08 H
B22D23/00 B
B22D21/04 A
B22D21/00 A
B22D21/06
B22D7/10 Z
B22C9/08 Z
B22C9/24 C
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-13909(P2014-13909)
(22)【出願日】2014年1月29日
(65)【公開番号】特開2014-205192(P2014-205192A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2016年12月26日
(31)【優先権主張番号】13/815,503
(32)【優先日】2013年3月7日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505243272
【氏名又は名称】ハウメット コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Howmet Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】特許業務法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラッセル ジー.ボークト
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー アール.ハンスリッツ
【審査官】
藤長 千香子
(56)【参考文献】
【文献】
特表2002−514508(JP,A)
【文献】
特開平10−277702(JP,A)
【文献】
特開平09−314310(JP,A)
【文献】
特開昭52−033143(JP,A)
【文献】
特開2002−331352(JP,A)
【文献】
米国特許第05592984(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 5/00−9/30
B22D 1/00−5/04
B22D 21/00−23/06
B22D 25/00−25/08
B22D 7/00−9/00
B22D 27/00−27/20
B22D 18/00−18/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属材料の鋳造方法において、
鋳造チャンバにて溶融金属材料が入るるつぼの近くの固定位置に誘導コイルを設ける工程であって、前記鋳造チャンバにおいて、前記溶融金属材料は、前記るつぼから鋳造がなされるモールドへと注入されて、前記誘導コイルは、前記るつぼの近くにある開口と、前記モールドの溶融物リザーバのみに沿って延びるコイル高さとを有している、工程と、
前記鋳造チャンバの外側で予熱された前記モールドを、前記鋳造チャンバの中へと移動させることで、前記誘導コイルが前記溶融物リザーバのみに沿って延びて、前記溶融物リザーバに局所的に隣接するように、前記予熱モールドの前記溶融物リザーバのみを前記誘導コイルのコイル開口に配置する工程と、
1又は複数のモールドキャビティを含む前記予熱モールドの領域を、前記鋳造チャンバ中にて前記誘導コイルの下側及び外側に、且つ前記誘導コイルから離間して配置されたままにする工程と、
前記コイル開口を通して前記鋳造物チャンバへと、前記鋳造チャンバ内の前記るつぼから前記溶融金属材料を注入することで、前記溶融物リザーバと、前記1又は複数のモールドキャビティに前記溶融金属材料を供給するゲートとを介して、前記予熱モールドに前記溶融金属材料を導入して、前記1又は複数のモールドキャビティを前記溶融金属材料で完全に満たすと共に、前記溶融物リザーバと前記ゲート内に余剰溶融金属材料を与える工程と、
前記モールドが前記鋳造チャンバ内にある間、前記溶融金属材料が前記予熱モールドの前記1又は複数のモールドキャビティ内で凝固する際に、前記鋳造チャンバ内にて前記溶融物リザーバのみに沿って延びて、前記溶融物リザーバに局所的に隣接して配置された前記誘導コイルを、前記溶融物リザーバ内に含まれる金属材料との誘導カップリングを最大にするようにして励磁して、前記溶融物リザーバ内の溶融金属材料を局所的に加熱し、溶融状態で維持する工程と、
を含む鋳造方法。
【請求項2】
前記誘導コイルが励磁されて、前記溶融物リザーバ内と前記溶融物リザーバに隣接する前記ゲート内の前記溶融金属材料が局所的に加熱され、前記1又は複数のモールドキャビティ内にあって、前記溶融物が凝固する前記モールドの領域は、誘導加熱されない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記溶融物リザーバは、前記1又は複数のモールドキャビティの上方に配置されるモールド注入カップである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記誘導コイルは、前記1又は複数のモールドキャビティ内の前記溶融金属材料が凝固するまで、励磁される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記溶融金属材料が、前記予熱モールドに導入される前に、前記モールドは、20μmHg未満の圧力まで排気された上側真空鋳造チャンバ内に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記モールドは、大気中に配置される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記予熱モールドに前記溶融金属材料を導入する前に、前記予熱モールドを下側チャンバから前記上側真空鋳造チャンバ内の前記誘導コイルの下側へと移動させて、前記溶融物リザーバの周りに、前記誘導コイルを局所的に配置させる工程を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記溶融物リザーバに残っており、凝固した材料を再利用して、別の鋳造物を作製する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
複数のリザーバと、各々のリザーバに個別に隣接する誘導コイルとを設ける工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
酸素反応合金元素を含む溶融超合金を真空鋳造する方法において、
上側真空鋳造チャンバにて前記溶融超合金が入るるつぼの下方にある前記上側真空鋳造チャンバ内の固定位置に誘導コイルを設ける工程であって、前記誘導コイルは、前記るつぼの近くにある開口と、鋳造がなされるモールドの注入カップのみに沿って延びるコイル高さとを有している、工程と、
前記真空鋳造チャンバの外側にて予熱された前記モールドを、下側チャンバから前記上側真空鋳造チャンバへと移動させて、前記誘導コイルが前記注入カップのみに沿って延びて、前記注入カップに局所的に隣接するように、前記誘導コイルの前記コイル開口に前記予熱モールドの前記注入カップのみを配置する工程と、
1又は複数のモールドキャビティを含む前記予熱モールドの領域を、前記上側真空鋳造チャンバ中にて前記誘導コイルの下側及び外側に、且つ前記誘導コイルから離間して配置されたままにする工程と、
前記コイル開口を通して前記注入カップへと、前記上側真空鋳造チャンバにて前記るつぼから前記溶融超合金を注入することで、前記注入カップと、前記1又は複数の溶融キャビティに前記溶融超合金を供給するゲートとを介して、前記上側真空鋳造チャンバ内の前記予熱モールドに溶融超合金溶融物を導入して、前記1又は複数のモールドキャビティを溶融超合金で完全に満たすと共に、前記溶融注入カップと前記ゲート内に余剰溶融超合金を残しておく工程と、
前記モールドが前記上側真空鋳造チャンバ内にある間、前記溶融超合金が、真空下で、前記予熱モールドの前記1又は複数のモールドキャビティ内で凝固する際に、前記上側真空鋳造チャンバ内にて前記注入カップのみに沿って延びて、前記注入カップに局所的に隣接して配置された前記誘導コイルを、前記注入カップ内に含まれる金属材料との誘導カップリングを最大にして励磁して、前記注入カップ内の溶融超合金を局所的に加熱し、溶融状態で維持する工程と、
を含む真空鋳造方法。
【請求項11】
超合金は、酸化反応するハフニウム、ジルコニウム、チタニウム、及び/又はアルミニウムを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記モールド内の超合金溶融物を凝固させて、収縮欠陥がない等軸粒鋳造部品を形成する工程を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
酸化物スケールを存在させることなく超合金溶融物を凝固させる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記誘導コイルが励磁されて、前記注入カップと前記注入カップに隣接する前記ゲートとが局所的に加熱され、前記1又は複数のモールドキャビティ内にある前記モールドの領域は、誘導加熱されない、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記誘導コイルは、前記1又は複数のモールドキャビティ内の溶融超合金が前記上側真空鋳造チャンバ内にて凝固するまで励磁される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記予熱モールドに溶融超合金が導入される前に、前記上側真空鋳造チャンバは、20μmHg未満の圧力に排気される、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記下側チャンバから前記上側真空鋳造チャンバ内の前記誘導コイルの下側へと前記予熱モールドを移動させて、前記予熱モールドに溶融超合金を導入する前に、前記誘導コイルを前記注入カップの周りに局所的に配置する工程を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記1又は複数のモールドキャビティは、鋳造ブレード又は鋳造翼を作製するために、ガスタービンブレード又は翼の形状を有している、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
複数のリザーバと、各々のリザーバに個別に隣接する誘導コイルとを設ける工程を含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予熱モールド内の溶融金属材料の真空又は大気鋳造に関しており、改善された鋳造部品を形成するものである。溶融金属材料には、例えば、ニッケル又はコバルトベース超合金、ステンレススチールなどが挙げられる。
【背景技術】
【0002】
ニッケルベース又はコバルトベース超合金は、真空又は大気中において、インベストメントモールドにて鋳造され、その後、移動させられて、大気中で冷却される。発熱材料ホットトップ(exothermic material hot topping)が、モールド注入カップに適用されて、凝固収縮欠陥が起こらない等軸粒鋳造ガスタービンブレード(equiaxed grain cast gas turbine blades)が作製される。例えば、タービンブレード等の鋳造において、従来の技術者は、モールドが超合金材料で満たされた後、凝固が生じる際に、インベストメントモールドの注入カップ内に残っている溶融超合金のリザーバに、アルミニウム含有粉末材料等の放熱材料を配置して、溶融状態を維持することで、鋳造ブレードにおける凝固収縮に対応している。そのような発熱材料を用いた大気中での鋳造処理には、幾つかの理由から不都合があった。それらの理由には、モールド注入カップ内の溶融超合金と接触した発熱材料が激しい反応(閃光と発火)を生じることに加えて、閉じ込め領域(containment area)から煙と蒸気を安全に取り除く必要があることが含まれるが、これらに限定されない。熱い鋳造物を大気に曝すことはまた、先端が下向きに(tip-down orientation)鋳造された場合に、ブレードの根元などの鋳造ブレードの最後の凝固領域にて、表面スケールとして、望ましくないハフニウム酸化物の形成を促進させる。それに加えて、発熱材料との反応によって、注入カップに残った超合金の汚染が起こって、汚染された注入カップの材料が、元の材料に戻されて(リサイクルされて)、他の部品の鋳造で再び使用することができない程度にまで及んでしまう。
【0003】
発熱材料の使用は、米国特許第6,446,698号に記載されており、当該特許では、改良モールドが、溶融金属又は合金を鋳造するために用いられている。特に、モールドは、モールド注入カップとモールドキャビティ上のリザーバとの間に、破壊可能な拡張部を有するように改良されており、拡張部を介して、拡張部発熱材料が導入されて、リザーバ内において、溶融金属又は合金の表面に配置される。
【0004】
米国特許第3,841,384号は、発熱材料を用いない鋳造プロセスを記載している。当該特許では、上下に別れた誘導コイル(upper/lower split induction coil)が用いられており、鋳造がなされるモールドの頂部に配置されたるつぼを加熱する。複数のコイルの1つを励磁して、るつぼを最初に加熱し、そこに充填された固体金属又は合金を溶融し、その後、両コイルを励磁して、るつぼ内の溶融物を過熱すると共に、るつぼから溶融金属又は合金を受け取って鋳造するモールドを予熱する。
【0005】
米国特許第5,592,984号、第6,019,158号、及び第6,640,877号は、発熱部材を用いない鋳造方法を記載している。当該方法では、溶融金属で満たされた後、鋳造チャンバを加圧すること、又はモールド上に加圧キャップを設けることによって、予熱モールド内での溶融金属又は合金の凝固による収縮欠陥が減される。モールド全体が、鋳造の前に予熱されて、更なるモールド加熱はなされない。
【0006】
米国特許第4,832,112号は、発熱材料を用いないMX鋳造プロセスを開示している。当該特許では、制御された低温過熱がなされた溶融金属又は合金が、モールドに入れられて、電磁撹拌が施されて、ほとんど加熱することなく、モールド内の溶融金属又は合金中に乱流が誘起される。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、収縮欠陥がない鋳造部品を形成するために、発熱材料を用いないで、真空下又は大気中で、溶融金属材料を鋳造する方法と装置を提供するものである。
【0008】
図示された実施形態において、本発明の方法及び装置は、溶融金属材料(溶融物)を、予熱モールドに投入するものであって、予熱モールドは、注入カップなどの溶融物リザーバと、1又は複数のモールドキャビティに溶融物を供給するゲートとを備える。余剰溶融物は、注入カップ等の溶融物リザーバと、1又は複数のモールドキャビティに凝固中に供給するためのゲートとに与えられる。誘導コイルが、溶融物リザーバに局所的に隣接して配置され、予熱モールドの1又は複数のモールドチャンバ内において、溶融金属材料が凝固する際に、溶融物リザーバの余剰溶融物を局所的に加熱するように励磁されて、その溶融状態を維持する。余剰溶融金属材料は、モールドキャビティ内で凝固が進行している際に、必要に応じて、収縮欠陥を取り除くために供給される。
【0009】
本発明の例示的な実施形態では、予熱モールドと誘導コイルは、真空チャンバ中又は大気中において相対的に移動させられて、溶融金属材料を予熱モールドに導入する前に、誘導コイルが、溶融物リザーバの周りへ局所的に配置される。誘導コイルが励磁されて、溶融物リザーバ内の余剰溶融金属材料を局所的に加熱して、溶融状態を維持する。1又は複数のモールドキャビティ内にあるモールド領域は、ほとんど加熱されない。
【0010】
本発明の特定の例示的な実施形態は、酸素反応性合金元素(合金類(alloyant))(例えば、ハフニウム、ジルコニウム、チタニウム、アルミニウム等)を含む溶融超合金を真空鋳造することを含んでいる。0.020mmHg未満にされた真空チャンバ内に存在する予熱セラミックインベストメントモールドのモールド注入カップ(又は、他のリザーバ)とゲートとに、溶融超合金を導入して、モールドキャビティ内を超合金で満たし、予熱モールドのモールドキャビティ内において真空下で超合金が凝固する際に、モールド注入カップ(又は他のリザーバ)の周りに局所的に配置された誘導コイルを励磁して、溶融物リザーバ内にある余剰溶融超合金を局所的に加熱し、溶融状態で維持することで、収縮欠陥がなく、ハフニウム又は他の反応元素の酸化スケールが存在しない等軸粒超合金鋳造部品を製造する。モールドキャビティは、本発明の特定の実施形態に従って、ガスタービン、ブレード、翼部、又は別の構成要素の形状とすることができる。
【0011】
更に別の実施形態において、本発明は、溶融金属材料を真空鋳造する装置を提供するものであり、当該装置は、予熱モールドを受け入れる真空鋳造チャンバを備えている。熱モールドは、溶融物リザーバと、モールドキャビティに連通して、モールドキャビティをリザーバからの溶融金属材料で満たすためのゲートとを有する。当該装置は、更に、溶融物リザーバに局所的に隣接して配置され、電源によって励磁される誘導コイルを備えており、予熱モールドのモールドチャンバ内において、溶融金属材料が真空下で凝固する際に、溶融物リザーバ内で余剰溶融金属材料を局所的に加熱して、余剰溶融金属材料を溶融状態で維持する。本発明の特定の実施形態において、真空鋳造チャンバとモールド予熱チャンバとの間のバルブが開いている場合、真空鋳造チャンバは、モールド予熱チャンバと連通する。溶融注入カップ(又は他のリザーバ)周辺に、局所的に誘導コイルを配置するために、誘導コイル及び予熱モールドは、相対的に移動可能である。溶融金属又は合金用のフィルタが、随意選択的に、注入カップ、リザーバ、及び/又はゲートに設けられてよい。
【0012】
更なる例示的な実施形態では、これに限定されるものではないが、ステンレススチールの鋳造に有用であり、本発明の方法と装置は、溶融金属材料(溶融物)を、周囲空気(大気)中の予熱モールド内に導入する。モールドは、注入カップなどの溶融物リザーバと、1又は複数のモールドキャビティに溶融物を供給するゲートとを備える。余剰溶融物が、例えば、注入カップ等の溶融物リザーバと、1又は複数のモールドキャビティに凝固中に供給するゲートとに供給される。誘導コイルが、溶融物リザーバに、局所的に隣接して配置され、予熱モールドの1又は複数のモールドチャンバ内において、溶融金属材料が大気中で凝固される際に、溶融物リザーバ内の余剰溶融物を局所的に加熱するように励磁されて、溶融状態を維持する。モールドチャンバ内の大気中で凝固が進行する際に、余剰溶融金属材料が、必要に応じて、収縮欠陥を取り除くために供給される。
【0013】
本発明を実施する利点は、モールド注入カップの溶融物上に配置される既に使用済みの発熱材料に関する激しい反応(閃光と発火)の発生を避けることと、凝固後にモールド注入カップ内に残っている凝固金属材料の汚染を避けて、その金属材料を再利用できるようにすることと、鋳造部品の収縮欠陥を避けることと、特定の超合金が鋳造される場合にて、鋳造部品の最後の凝固領域において、望まない反応元素の酸化物が表面スケールとして形成するのを避けることである。
【0014】
本発明のこれら及び他の利点は、以下の図面と共に以下の詳細な説明から、当業者にとって、非常に容易に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、本発明の例示的な実施形態による真空鋳造装置の概略斜視図である。
【
図2】
図2は、モールド注入カップ(溶融物リザーバ)内の余剰溶融金属材料を局所的に熱するための真空誘導加熱ホットトップ用誘導コイル(VIHTコイル)を有する真空鋳造チャンバの拡大概略斜視図である。
【
図3】
図3は、注入カップと、ゲートによって連通されるデュアルモールドキャビティ領域とを有するセラミック製インベストメントシェルモールドの上部領域の概略斜視図である。
【
図4】
図4は、モールド配置用固定具、即ちスタンドに配置された予熱モールドの斜視図であって、
図1の下側モールド受入チャンバと上側真空鋳造チャンバとの間にてエレベータで運ばれる。
【
図5】
図5は、誘導コイル支持フレームと、当該支持フレームに装着されたVIHTコイルの概略斜視図である。
【
図6】
図6は、誘導コイル支持フレームと、予熱モールドの複数の注入カップに熱を加えるために、当該支持フレームに装着された複数のVIHTコイルの概略斜視図である。
【
図7】
図7は、モールド注入カップにある溶融金属用フィルタの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明における例示的なある実施形態は、鋳造部品の収縮欠陥及び鋳造部品上の望まない酸化物表面スケールを減少させる又は排除する条件で、真空鋳造チャンバ中の予熱モールド内での溶融金属材料を真空鋳造することに関するものである。さらに、この真空鋳造方法は、凝固後に、モールド注入カップ(又は他のリザーバ)内に残っている凝固した金属材料の汚染を避けるために行われ、他の鋳造部品の鋳造において、それを元の状態に戻して再利用することができる。
【0017】
図1乃至
図5は、本発明の例示的な実施形態に従った、金属材料の真空溶融と鋳造をするための装置を示す。真空溶融及び鋳造できる金属材料は、これらに限定されるものではないが、金属、合金、金属間化合物やその他の金属材料を含んでいる。本発明を説明するものであって、限定するものではないが、本発明の方法と装置は、例えば、タービンブレード、タービンノズル、タービンブランケットやその他の構成要素のような、ガスタービン構成部材の製造に用いられるタイプのニッケルベース超合金(又は、コバルトベース超合金)の真空溶融と真空鋳造に関して説明されている。このようなニッケルベースの超合金及びコバルトベースの超合金は、よく知られており、Mar−M 247及びRene80を含んでいるが、これらに限定されない。本発明は、特に、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、チタニウム(Ti)、アルミニウムなどの酸素反応合金元素を含むニッケルベース又はコバルトベースの超合金の真空鋳造に役立つ。これらは、大気中で鋳造される場合に、鋳造部品の最後に凝固する領域(last-to-solidify)又はその他の領域上に、望ましくない酸化物スケール(酸化ハフニウム)を形成する。
【0018】
例示の装置は、上側真空鋳造チャンバ(10)と、下側モールド受入チャンバ(12)とを備えており、それらは、移動自在(例えば、スライド自在)なバルブ(14)によって、互いに連通している。バルブ(14)は、中間チャンバ壁Wにあって、チャンバ(10)(12)の間を移動するモールドMが通る開口OPを開閉する。予熱モールドMが、モールド受入チャンバ(12)から、鋳造用の真空鋳造チャンバ(10)に移動する場合、バルブ(14)が開かれて、予熱モールドMがエレベータ(50)によって上昇して、真空鋳造チャンバ(10)に入る。ニッケルベース又はコバルトベース超合金が、溶融されており、上側真空鋳造チャンバ(10)内の予熱モールドにて鋳造される場合、上側真空鋳造チャンバ(10)は、例えば、約0.020mmHg未満、好ましくは0.001mmHg未満の真空状態(亜大気圧)で維持される。下側モールド受入チャンバ(12)は、通常、予熱モールドがチャンバ(12)に入れられると、チャンバ(10)と同じ真空レベルに維持される。
【0019】
通常、モールドMは、ガス、電気、又はその他の方式で焚かれる、別個の外部モールド予熱炉(図示せず)内で予熱される。予熱モールドMは、その後、予熱炉からモールド受入チャンバ(12)へと移動する。モールドMは、周囲の大気雰囲気と通じる気密封止ドア(32)を通ってチャンバ(12)へと、手動又はロボット制御で移動させられる。予熱モールドMは、チャンバ(12)内にて、
図4のリフト又はエレベータ(50)上にあるモールド配置固定部、つまりスタンド(72)に配置される。エレベータ(50)は、チャンバ(12)の内側又は外側に配置されるラム(51)及びラムアクチュエータ(53)を介して昇降する。ラムアクチュエータ(53)は、油圧、電気、又は他のモーターである。ドア(32)が閉じられて、気密封止された後、通常、1又は複数の適切な真空ポンプ(61)によって、チャンバ(12)内に相対的な真空状態が達成される。
【0020】
下側モールド受入チャンバ(12)は、随意選択的に、従来の電気抵抗発熱コイル、又は、他の加熱装置を含んでおり、チャンバ(10)内において、鋳造するために適切な上昇温度までモールドMを予熱するか、追加的に予熱してもよい。
【0021】
上側真空鋳造チャンバ(10)は、
図1に示されているように、セラミック溶融るつぼライナー(30b)の周りに、1又は複数の誘導コイル(30a)を有する誘導加熱溶融るつぼ、電気抵抗溶融るつぼ、又は他の適切な溶融るつぼのような溶融るつぼ(30)を備えており、ニッケルベース又はコバルトベース超合金の固体装入物(solid charge)を溶融して、るつぼ(30)から、モールドMの注入カップPCに、溶融物を排出(注入)する。これは、るつぼシャフト(31)と、そのシャフト(31)に接続された適切なロータリモータ(60)の回転とによって、るつぼを回動させることでなされる。シャフト(31)は、るつぼ支持棚(33)に連結しており、るつぼ支持棚(33)と共に回転するように、るつぼ支持棚(33)には、るつぼ(30)が固定されている。
【0022】
るつぼ(30)は、随意選択的に、モールドMの注入カップPCに連通する下側溶融放出開口(図示せず)を備えてよい。下側溶融放出開口は、セラミック製ストッパーロッド又はその他の適切なバルブによって閉じられて、下方にある予熱モールドMの注入カップPC(又は他のリザーバ)への溶融物の放出を制御する。
【0023】
溶融される固体装入物は、金属インゴット、棒、又はその他の固体ストック、或いは、予め合金化されたインゴット、棒、又はその他の固体のストックであってよい。または、固体装入物は、合金の各基本金属成分及び/又は非金属成分を適切に配合したものであってよい。固体装入物は、ドア(17)を介して、別個の固体装入物用受入チャンバ(16)に導入される。チャンバ(16)は、チャンバ(10)上に配置されており、バルブ(14)により開閉されるチャンバ(10)(12)の間の開口OPと同様な有弁開口(valved opening)OP2によって、チャンバ(10)と連通する。溶融される固体装入物がチャンバ(16)内に配置されて、ドア(17)が閉じられた後、チャンバ(16)は、1又は複数の適切な真空ポンプ(65)によって排気され、溶融される固体装入物は、チャンバ(16)にある昇降機又はその他の移送装置によって、チャンバ(16)から、排気されたチャンバ(10)内のるつぼ(30)に降ろされる。
【0024】
るつぼ(30)は、可動ドア(32)に取り付けられており、可動ドア(32)は、周囲の大気雰囲気に開かれて、チャンバ(12)内のエレベータ(50)に予熱モールドMを配置できるようにされている。ドア(32)は、チャンバ(10)(12)の壁又は壁部を構成する気密封止閉位置に移動でき、それにより、真空ポンプ(61)によって、所望の真空レベルが、チャンバ(10)(12)内に達成される。例示の目的であって、これらに限定されるものではないが、ニッケルベース又はコバルト超合金の真空溶融又は鋳造において、20ミクロン−Hg(μm−Hg)未満の真空レベルが、通常、チャンバ(10)(12)内で達成される。
【0025】
ドア(32)が閉じられて、真空気密にされると、るつぼ(30)は、真空導入ホットトップ用誘導コイル(VIHTコイル)(40)の上方に配置される。VIHTコイル(40)は、1又は複数の支持プレート(41)に取り付けられており、これら支持プレート(41)はまた、第1クロスサポートフレーム(42)に支持されている。当該クロスフレーム(42)はまた、第2支持フレーム(44)の上側レールに調節可能に取り付けられている。第2支持フレーム(44)には、調節孔(45)が備えられており、るつぼ(30)からモールドMに注ぎ込まれる溶融流の位置に対して、VIHTコイル(40)の位置を初期調整できる。第2フレーム(44)は、モールド予熱チャンバ(12)と真空鋳造チャンバ(10)との間に配置された中間壁Wに取り付けられている。
【0026】
VIHTコイル(40)は、水冷銅製中空コイルを備えている。当該コイルの内面は、セラミックグラウト材で塗られており、るつぼ(30)から放出される溶融流の熱から中空コイルが保護される。セラミックグラウト材には、例えば、ジルコン、アルミナ、シリカ、又はそれらの混合物などがある。このため、コイル(40)は、
図5の矢印で示されているように、冷却水導管に接続するのに適した器具Fを含んでいる。
【0027】
図2にて、ラインLとして模式的に示されている電力ワイヤによって、電力が、外部電源S、例えば、誘導真空導入電源からコイル(40)に供給される。外部電源Sは、真空鋳造チャンバ(10)に隣接する外壁面又は他の適切な位置に取り付けられている。
【0028】
図1乃至
図4において、モールドMは、注入カップPC(溶融物リザーバ)を有するセラミック製インベストメントモールドとして示されており、注入カップPCは、ゲートGによって、モールドのモールドキャビティ形成モールド領域R1、R2の夫々にあるデュアルモールドキャビティMC1、MC2に連通する。モールドキャビティMC1、MC2(概略的に示されている)は、鋳造されるガスタービンエンジンブレードの形状をしているが、モールドキャビティは、作製される鋳造部品に応じた任意の形状にすることができる。セラミック製インベストメントシェルモールドは、周知のロストワックスインベストメントモールディングプロセスによって、一体成形される。しかしながら、本発明にて、これらに限定されないが、機械耐熱金属製又はセラミック製モールド、つまり、予め形成されたセラミックモールドを含むその他のタイプのモールドを使用することが想定される。
【0029】
さらに、
図1乃至
図4の実施形態は、溶融物リザーバとして機能する一体型上側注入カップPCを有しているモールドMを示しているが、本発明では、一体型溶融物リザーバを有する、或いは、モールドとは別個の溶融物リザーバを有する他のタイプのモールドが含められてよい。別個の溶融物リザーバはさらに、モールドキャビティに連通して、鋳造部品の収縮欠陥を排除するために、凝固中にモールドキャビティに供給する余剰溶融物を与える。
【0030】
図3乃至
図4では、予熱モールドMのモールド注入カップPCは、モールド位置決め固定具、即ちスタンド(72)の位置決め管(71)に最初に配置されるものとして図示されている。スタンド(72)は、チャンバ(12)内にてエレベータ(50)に固定されている。次に、エレベータ(50)が上昇して、
図1及び
図2に示された真空チャンバ(10)内の鋳造位置に、予熱モールドを配置する。
【0031】
図7に示されているように、溶融金属用フィルタ(60)が注入カップPCに配置されてよく、モールドキャビティMC1、MC2に入る前に、溶融流動物から、ドロスや他の汚染物質を取り除くことができる。
図7において、フィルタ(60)は、ロックタブ(61)を備えており、それらは、注入カップPCのスロットSLに個々に入って係合して、所定の位置にフィルタを固定する。代わりに又は更に、フィルタが、モールドのゲートGに配置されてもよい。本発明の利点は、フィルタ(60)が注入カップに存在しないかのように、コイル(40)の電磁場が、フィルタ(60)の存在に影響されず、凝固収縮がもたらされ続けることである。このことは、発熱材料を適用する前にあらゆるフィルタを取り除かれなければならなかった、鋳造後に発熱ホットトップを用いる従来の手順とは対照的である。
【0032】
本発明の方法の例示的な実施形態を実施する場合、モールドMは、別個のモールド予熱炉にて予熱されるが、モールドMは注入カップの下側の位置にて保持される。モールドMが、外部の予熱炉で予熱されて、所望の(周囲温度を超える(superambient))鋳造温度に上昇した後で、予熱されたモールドは、逆さまにされて、チャンバ(12)内のエレベータ(50)にあるモールド位置決め固定具、即ちスタンド(72)の位置決め管(71)に配置される。ドア(32)が閉鎖されて、気密封止される。
【0033】
次に、チャンバ(12)は、通常、チャンバ(10)と同じ真空レベルになるまで排気され、バルブ(14)が開けられて、固定具、即ちスタンド(72)にある予熱モールドMが、エレベータ(50)を用いて上昇して鋳造位置に達する。鋳造位置では、注入カップPCが、VIHTコイル(40)の内にて居所的に隣接して、るつぼ(30)の下方に位置しており、注入カップPCは、るつぼ(30)からの注入溶融流を受け取ることができる。
【0034】
予熱モールドMが鋳造位置に上昇する前又は後にて、るつぼ(30)内の固体装入物は、チャンバ(10)内において、真空下で溶融することができる。通常、チャンバ(10)内にて、るつぼ(30)の固体装入物を真空下で溶融することと並行して、モールドMは、チャンバ(10)(12)の外側で予熱されて、チャンバ(12)内のエレベータ(50)上の固定具、即ちスタンド(72)に運ばれる。
【0035】
次に、るつぼ(30)が回転して、注入カップPC(溶融物リザーバ)と、真空チャンバ(10)にある予熱モールドMのゲートGとに超合金溶融物を導入して(注いで)、注入カップPC及びゲートGを介してモールドキャビティMC1、MC2を超合金溶融物で満たす。超合金溶融物が予熱モールドMに導入されて、モールドキャビティMC1、MC2が、超合金溶融物で完全に満たされると共に、溶融物リザーバとしての注入カップ内と、モールドキャビティ上にあるゲートG内とに余剰超合金溶融物が残される。
【0036】
モールドが満たされた直後において、チャンバ(10)内の予熱モールドMのモールドキャビティMC1、MC2にて、超合金溶融物が真空下で凝固する際に、溶融状態を維持する必要があれば、VIHTコイル(40)が、電源Sによって励磁されて、注入カップPC内と隣接するゲートG内とに残っている超合金溶融物を局所的に加熱する。コイル(40)の電磁場は、注入カップに残っている余剰超合金溶融物にカップリングして、モールドキャビティ内にあるモールド領域R1、R2をほとんど加熱することなく、注入カップ内及び隣接するゲート内の余剰溶融物を局所的に加熱する。通常、モールドキャビティMC1、MC2内で、超合金溶融物が完全に凝固するまで、コイル(40)が励磁される。その後、電力を減らすことで、リザーバ(注入カップ)内の合金を、真空炉から取り除く前に凝固させる。
【0037】
コイル(40)の内径と高さ(コイル巻数)に加えて、モールド注入カップPCに対するVIHTコイル(40)の空間とコイルの通電レベルとは、モールド注入カップPCの大きさと、その中の余剰超合金溶融物の量とに依存しており、コイルの電磁場は、注入カップ内の余剰超合金溶融物とカップリングして、超合金溶融物がモールドキャビティ内で凝固する際に、局所的に余剰超合金溶融物を加熱する。
【0038】
誘導コイル(40)は、溶融合金からコイルへの距離をできるだけ短くすることによって、注入カップPC内の余剰超合金とのカップリングを最大にするように設計される。その距離は、通常2〜4インチの範囲であるが、特定の構成要素の形状に依存して上下してもよい。更に、最小のエネルギーが用いられて、注入カップPC内で合金を溶融状態で維持する。このエネルギーは処理中に変更されてよく、注入カップ内の合金を凝固させて、注入カップに残っている合金の酸化及び窒化を最小にする。このことは、それが再利用に適していることを確かなものとする。また、注入カップの合金を凝固する時間を、鋳造の凝固の終わりに合わせることは有利であり、時間通りに、鋳造チャンバ(10)及び下側チャンバ(12)からモールドを取り出して、装填される別のモールドが、サイクルタイムに影響を及ぼすことなく、時間通りに注がれることを可能にする。
【0039】
超合金溶融物が、時間経過により、モールドキャビティMC1、MC2内において、真空下で凝固して、収縮欠陥がなく、且つ酸化スケールが存在しない、等軸粒の超合金鋳造部品を製造する。酸化物スケールは、ある種のニッケルベース超合金に存在するハフニウムのような、超合金の反応元素の酸化に由来する。必要に応じて、超合金溶融物が予熱モールドM内に注がれた後、アルゴン等の不活性熱伝導冷却ガスを、所定の間、チャンバ(10)に注ぎ込むことによって、チャンバ(10)内の凝固レートを上昇させることができる。
【0040】
超合金溶融物が、モールド内で完全に凝固して、合金の凝固温度を下回る数百度に冷却されると、バルブ(14)が開かれて、モールドエレベータ(50)を用いて、鋳造溶融物がチャンバ(12)へと下方に移動される。それは、チャンバ(12)内にて大気温度まで冷却されるか、又は、チャンバ(12)の外側に取り出されて、大気中で冷却される。
【0041】
モールドMが、複数の注入カップ又はその他のリザーバを備えており、それらが、ガスタービンエンジン翼よりも大きな鋳造に用いられることがある場合、
図6に示されているように、複数のVIHTコイル(40)(40')(40'')が、支持プレート(41')の支持部(42')(44')に配置されてよい。コイル(40)(40')(40'')の設計と動作は、単一のVIHTコイル(40)について上述したものと同じ特徴を含んでいる。
【0042】
本発明を実施する利点は、モールド注入カップ内の溶融物上にある使用済みの発熱材料に関した激しい反応(閃光と発火)の発生を避けること、凝固後にモールド注入カップに残る凝固した金属材料の汚染を避けて、再利用できるようにすること、鋳造部品の収縮欠陥を防ぐこと、特定の超合金が鋳造される場合に、鋳造部品の最後の凝固領域の表面スケールに、反応元素の酸化物の望まれない形成を避けることである。
【0043】
以下の実施例は、更に具体的な説明を提供するものであり、本発明を限定するものではない。
【0044】
<実施例>
長さが26インチであり、重量が23ポンドである等軸粒ガスタービンブレードが、上述しており、
図1乃至
図5で示したものと同様な装置を用いて、Mar−M247ニッケルベース超合金で真空鋳造された。
【0045】
モールド予熱温度は、2200°Fであった。超合金注入温度は、2705°Fであり、るつぼでの溶融サイクルの時間は、約25分であった。モールドへの超合金溶融物注入時間は、約10秒であった。
【0046】
VIHTコイルの内径は、8インチであり、コイルの巻数は4であった。VIHTコイルの内面には、アルミナ、シリカ、ジルコングラウトのセラミック層で覆われた。セラミック層は、手で塗布され、又は、マンドレルを用いて形成された。VIHTコイルの内面は、注入カップの最大径から、0.5インチ離れていた。モールドに溶融合金を注ぎ込んだ後直ちに、VIHTコイルは、90kwの電力レベルで10分間励磁された。次に、注入カップ内の合金が凝固するまで、0kwまで段階的に電力を減少させた。VIHTサイクルの総時間は、約20分であった。注入カップ内の合金が凝固した後、モールドは、下側溶融チャンバ(12)まで降されて、取り出されて、大気中で冷却された。真空鋳造チャンバ内の真空レベルは、注入時で15μm−Hgとされた。
【0047】
鋳造ブレードは、等軸粒微細構造を有しており、鋳造ブレードの最後の凝固の根元領域での、収縮欠陥とハフニウムの酸化物スケールは存在していなかった。更に、注入カップ内で凝固された超合金は閉じており(closed)、酸化物汚染がなく、元の状態に戻して、他の部品の鋳造に再利用することができる。
【0048】
<大気鋳造>
本発明の例示的な別の実施形態は、これに限定されないが、大気中で、ステンレススチール(又は、他の金属若しくは合金)を鋳造することに利用できる。ステンレススチールには、これらに限定されないが、フェライト系、オーステナイト系、PH(析出硬化)ステンレス鋼が含まれる。その方法と装置は、溶融金属材料(溶融物)を、周囲空気(大気)中にて予熱モールドに導入するものであり、モールドは、1又は複数のモールドキャビティに溶融物を供給する注入カップなどの溶融物リザーバと、ゲートとを備える。余剰溶融物は、注入カップ等の溶融物リザーバと、凝固中に1又は複数のモールドキャビティに供給するゲートとに与えられる。コイル(40)のような誘導コイルが、溶融物リザーバに、局所的に隣接して配置され、予熱モールドの1又は複数のモールドキャビティにおいて、溶融金属材料が大気中で凝固される際に、局所的に溶融物リザーバの余剰溶融物を加熱するように励磁されて、溶融状態を維持する。モールドチャンバ内にて大気中で凝固が進行する際に、余剰溶融金属材料が必要に応じて供給されて、収縮欠陥が取り除かれる。
【0049】
例えば、予熱モールドでステンレススチール溶融物を鋳造するために、上記の一連のステップ中、上記のチャンバ(10)(12)は単に、周囲空気(大気圧)に通じたままにされてよい。又は、チャンバ(10)(12)が省かれてよく、予熱モールドは移動して、
図5の符号(40)で示されている型のVIHTコイル内にその注入カップを配置し、モールド注入カップの上方に配置されており、ステンレススチール溶融物を含んでいる
図1及び
図2にて符号(30)で示された型のるつぼを用いて、大気中で鋳造されてよい。VIHTコイルは、
図5に示されたものと同様の支持プレートと支持体で支持される。
【0050】
本発明について、特定の実施形態に関して上述したように説明されているが、発明を限定することを意図するものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲で規定される。