特許第6391946号(P6391946)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391946
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】薬液容器
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/05 20060101AFI20180910BHJP
   A61J 1/20 20060101ALI20180910BHJP
   B65D 39/04 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   A61J1/05 313M
   A61J1/20 314C
   B65D39/04
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-42833(P2014-42833)
(22)【出願日】2014年3月5日
(65)【公開番号】特開2015-167626(P2015-167626A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2016年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109543
【氏名又は名称】テルモ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(72)【発明者】
【氏名】早川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】小山 美雪
(72)【発明者】
【氏名】百貫 祐亮
【審査官】 増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/033141(WO,A1)
【文献】 特開平11−047274(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/102796(WO,A1)
【文献】 特開2012−019829(JP,A)
【文献】 特開平07−059865(JP,A)
【文献】 特開平08−230928(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/05
A61J 1/20
B65D 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有し且つ薬液を収容するためのバイアルと、
前記バイアル内に保持されると共に一端が前記バイアルの内部に開放され且つ他端が前記バイアルの前記開口部内で前記バイアルの外部へ向かって尖り且つ先端に針穴が形成された針先部を形成する薬液移送管と、
前記バイアルに収容された薬液と共に前記薬液移送管が封入されるように前記バイアルの前記開口部を閉じる栓部材と
を備え、
前記栓部材は、シリンジの先端部を挿入するための前記バイアルの外部へ向かって開放された凹部と、前記凹部の底部を閉じるように前記凹部内に形成されたドーム形状の肉薄部とを有し、
前記薬液移送管の前記針先部は、前記ドーム形状の肉薄部の内側に挿入されて前記肉薄部により覆われた状態で前記凹部内に突出し、
前記栓部材の外側から前記シリンジの前記先端部を前記薬液移送管の前記針先部に向けて押し込むことで、前記針先部が前記栓部材の前記肉薄部を貫通して前記シリンジの前記先端部内に挿入され、この状態で前記バイアルに収容された薬液が前記薬液移送管の内部および前記針穴を介して前記シリンジ内に移送されることを特徴とする薬液容器。
【請求項2】
前記バイアルの前記開口部と前記栓部材の間に挟まれることにより前記バイアルの前記開口部内に保持される移送管保持部材をさらに備え、
前記薬液移送管は、前記移送管保持部材に固定されている請求項1に記載の薬液容器。
【請求項3】
前記薬液移送管の前記一端は、前記バイアルの前記開口部の近傍に位置している請求項2に記載の薬液容器。
【請求項4】
前記薬液移送管の前記一端は、前記バイアルの底部の近傍に位置している請求項2に記載の薬液容器。
【請求項5】
前記移送管保持部材は、複数のリブにより前記薬液移送管を保持し、
前記栓部材は、前記バイアルに収容された薬液を前記シリンジ内に移送する際に、前記バイアルの内部が陰圧にならないように、前記栓部材と前記移送管保持部材の前記複数のリブ間の空隙を介して前記薬液容器の外部と前記バイアルの内部とを通気させる請求項2〜4のいずれか一項に記載の薬液容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、薬液容器に係り、特に、シリンジに充填して使用される薬液を収容する容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、注射針を用いて患者の体内に投与される薬液は、アンプルまたはバイアル等の容器に収容・保管され、アンプルの頭部を折ってシリンジの先端部に取り付けられた注射針をアンプル内に挿入する、あるいは、シリンジの先端部に取り付けられた注射針をバイアルのゴム栓に刺し通して、吸引することにより、容器からシリンジへと移送されていた。
このため、注射針の外周部への薬液の付着を余儀なくされ、投与の際に、医師または看護士の手が薬液に接触するおそれがあった。
ところが、抗癌剤等、強い毒性を有する薬液に対しては、薬液への接触を回避しつつ投与を行うことが要求される。
【0003】
例えば、特許文献1には、薬剤が収容されたバイアルの口部に円筒状のホルダを取り付け、ホルダ内にスライド可能に保持された両頭針を配置し、両頭針をバイアルに向けてスライドさせることで両頭針の一方の針先をバイアルのゴム栓に刺し通すと共に、他方の針先で溶解液容器と接続することにより、バイアルと溶解液容器とを両頭針を介して連通させ、薬液の調製を行う薬剤容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−316175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の薬剤容器では、薬剤に触れることなく、バイアル内の薬剤を薬液に調製することができる。
しかしながら、調製された薬液をシリンジに充填する際には、シリンジの先端部に取り付けられた注射針を用いて薬液を吸引する必要があり、薬液に手が接触するおそれがあった。
【0006】
この発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、薬液に接触することなく容易にシリンジ内へ薬液を移送することができる薬液容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る薬液容器は、開口部を有し且つ薬液を収容するためのバイアルと、バイアル内に保持されると共に一端がバイアルの内部に開放され且つ他端がバイアルの開口部内でバイアルの外部へ向かって尖り且つ先端に針穴が形成された針先部を形成する薬液移送管と、バイアルに収容された薬液と共に薬液移送管が封入されるようにバイアルの開口部を閉じる栓部材とを備え、栓部材は、シリンジの先端部を挿入するためのバイアルの外部へ向かって開放された凹部と、凹部の底部を閉じるように凹部内に形成されたドーム形状の肉薄部とを有し、薬液移送管の針先部は、ドーム形状の肉薄部の内側に挿入されて肉薄部により覆われた状態で凹部内に突出し、栓部材の外側からシリンジの先端部を薬液移送管の針先部に向けて押し込むことで、針先部が栓部材の肉薄部を貫通してシリンジの先端部内に挿入され、この状態でバイアルに収容された薬液が薬液移送管の内部および針穴を介してシリンジ内に移送されるものである。
【0009】
また、バイアルの開口部と栓部材の間に挟まれることによりバイアルの開口部内に保持される移送管保持部材をさらに備え、薬液移送管は、移送管保持部材に固定されているように構成することができる。
この場合、薬液移送管の前記一端は、バイアルの開口部の近傍に位置していてもよく、あるいは、バイアルの底部の近傍に位置していてもよい。
さらに、移送管保持部材は、複数のリブにより薬液移送管を保持し、栓部材は、バイアルに収容された薬液をシリンジ内に移送する際に、バイアルの内部が陰圧にならないように、栓部材と移送管保持部材の複数のリブ間の空隙を介して薬液容器の外部とバイアルの内部とを通気させることもできる。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、一端がバイアルの内部に開放され且つ他端がバイアルの開口部内でバイアルの外部へ向かう針先部を形成する薬液移送管と、バイアルに収容された薬液と共に薬液移送管が封入されるようにバイアルの開口部を閉じる栓部材とを備えているので、栓部材の外側からシリンジの先端部を薬液移送管の針先部に向けて押し込むことで、薬液に接触することなく容易にシリンジ内へ薬液を移送することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の実施の形態1に係る薬液容器を示す断面図である。
図2】実施の形態1の薬液容器に用いられたバイアルを示す断面図である。
図3】実施の形態1の薬液容器に用いられた栓部材を示し、(A)は斜視図、(B)は断面図である。
図4】実施の形態1の薬液容器に用いられた薬液移送管および移送管保持部材を示し、(A)は上方から見た斜視図、(B)は断面図、(C)は下方から見た部分斜視図である。
図5】実施の形態1に係る薬液容器の組み立て図である。
図6】実施の形態1の薬液容器からシリンジへ薬液を移送する方法を段階的に示す断面図である。
図7】実施の形態2に係る薬液容器を示す断面図である。
図8】実施の形態2の薬液容器に用いられた薬液移送管および移送管保持部材を示す斜視図である。
図9】実施の形態2の薬液容器からシリンジへ薬液を移送する方法を段階的に示す断面図である。
図10】注射針ロック機構付きのシリンジの先端部を示す断面図である。
図11】実施の形態3に係る薬液容器を示す断面図である。
図12図10に示したシリンジの先端部を実施の形態3の薬液容器に押し込んだ状態を示す断面図である。
図13】実施の形態4における移送管保持部材を下方から見た部分斜視図である。
図14】実施の形態5に係る薬液容器を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
実施の形態1
図1に実施の形態1に係る薬液容器1の構成を示す。薬液容器1は、薬液Mを収容するバイアル2を有し、バイアル2の開口部2aに栓部材3が取り付けられ、バイアル2の開口部2aと栓部材3の間に挟まれるように移送管保持部材4が配置されている。
図2に示されるように、バイアル2は、ガラス、樹脂等からなる瓶形状の容器で、開口部2aの外周に沿って形成された環状のフランジ2bを有している。
【0013】
栓部材3は、バイアル2の開口部2aに嵌り込んで開口部2aを閉じるもので、ゴム、樹脂等の弾性を有する材料から形成され、図3(A)および(B)に示されるように、バイアル2の開口部2a内に挿入される栓本体部3aと、栓本体部3aの上端の外周に沿って形成された環状のフランジ3bを有している。また、栓本体部3aには、上方に向かって開放された凹部3cが形成されると共に、凹部3c内に肉薄部3dが形成されている。肉薄部3dは、凹部3cの下端において栓本体部3aに連結され、凹部3cの下端から上端へと延びるドーム形状を有しており、この肉薄部3dにより凹部3cの底部が閉じられている。
【0014】
移送管保持部材4は、バイアル2の開口部2aと栓部材3の間に挟まれることによりバイアル2の開口部2a内に保持されるもので、図4(A)〜(C)に示されるように、バイアル2の開口部2a内に挿入される円筒部4aと、円筒部4aの下端を覆う底部4bと、円筒部4aの上端の外周に沿って形成された環状のフランジ4cを有している。
このような移送管保持部材4の底部4bの中心から上方に向かって延びる薬液移送管5が、移送管保持部材4と一体に形成されている。薬液移送管5は、移送管保持部材4の底部4bに連結された下端が下方に向かって開放されると共に上端が上方に向かって尖った針先部5aを形成しており、針先部5aの先端に図示しない針穴が形成されている。
移送管保持部材4および薬液移送管5は、バイアル2に収容される薬液Mとの間で変質および反応するおそれのない材料で形成されることが望ましく、例えばステンレス、樹脂、ガラス等を用いて形成することができる。さらに、移送管保持部材4および薬液移送管5の表面を、栓部材3の形成材料であるゴム等でコーティングすることもできる。
【0015】
そして、図5に示されるように、薬液Mが収容されたバイアル2の開口部2a内に移送管保持部材4の円筒部4aおよび底部4bを挿入すると共に、移送管保持部材4の円筒部4a内に栓部材3の栓本体部3aを挿入することにより、移送管保持部材4をバイアル2の開口部2aと栓部材3の間に挟み込み、順次重ねられたバイアル2のフランジ2bと移送管保持部材4のフランジ4cと栓部材3のフランジ3bをアルミキャップ6で包んで互いに固定することで、薬液容器1が組み立てられる。
このとき、移送管保持部材4の底部4bから上方に向かって延びる薬液移送管5が栓部材3のドーム形状の肉薄部3dの内側に挿入され、薬液移送管5の針先部5aが栓部材3の肉薄部3dで覆われた状態で栓部材3の凹部3c内に突出し、薬液移送管5は栓部材3により薬液Mと共にバイアル2の内部に封入された状態となる。
【0016】
次に、この実施の形態1の薬液容器1からシリンジへ薬液Mを移送する方法について説明する。
まず、図6(A)に示されるように、薬液容器1の直上にシリンジ7を位置させ、薬液容器1の栓部材3の肉薄部3dで覆われている薬液移送管5の針先部5aに向けてシリンジ7の外筒7aの先端部7bを押し込むと、図6(B)に示されるように、薬液移送管5の針先部5aが栓部材3の肉薄部3dを貫通して栓部材3による封入状態が解除され、針先部5aがシリンジ7の外筒7aの先端部7b内に挿入される。これにより、バイアル2の内部は、薬液移送管5の針先部5aの針穴を介してシリンジ7の外筒7aの内部と連通することとなる。
【0017】
そこで、図6(C)に示されるように、薬液移送管5の針先部5aがシリンジ7の外筒7aの先端部7b内に挿入された状態を維持したまま、薬液容器1とシリンジ7の位置を逆転させて薬液容器1をシリンジ7よりも上方に位置させ、この状態で、シリンジ7の押し子7cを外筒7aに対して後退させることで、バイアル2に収容されていた薬液Mが薬液移送管5を介してシリンジ7の外筒7a内へと移送される。
このようにして所要量の薬液Mがシリンジ7の外筒7a内に充填されると、押し子7cの後退を停止した後、再び薬液容器1とシリンジ7の位置を逆転させて薬液容器1をシリンジ7よりも下方に位置させ、薬液容器1からシリンジ7の外筒7aの先端部7bを引き抜き、この外筒7aの先端部7bに注射針を装着して、薬液Mの投与を実施することができる。
【0018】
以上説明したように、実施の形態1の薬液容器1によれば、栓部材3の外側から肉薄部3dで覆われている薬液移送管5の針先部5aに向けて、シリンジ7の外筒7aの先端部7bを押し込むことで、薬液Mと薬液移送管5の封入状態が解除されると同時に薬液移送管5の針先部5aがシリンジ7の外筒7aの先端部7bに挿入されるので、シリンジ7に針を装着させることなく、また、薬液Mに接触することなく容易にシリンジ7の外筒7a内へ薬液Mを移送することが可能となる。このため、強い毒性を有する薬液の使用に際しても、安全性を確保することができる。
【0019】
また、薬液移送管5の針先部5aが栓部材3の凹部3c内に配置され且つ肉薄部3dで覆われているので、薬液容器1をハンドリングする際に誤って指または手を栓部材3に押しつけても、薬液移送管5の針先部5aが刺さるおそれを低減することができる。
なお、薬液移送管5は、移送管保持部材4と一体に形成されていたが、これに限るものではなく、移送管保持部材4と薬液移送管5とをそれぞれ別部品として製造し、薬液移送管5を移送管保持部材4に固定することもできる。この場合、移送管保持部材4と薬液移送管5の形成材料は、互いに異なっていてもよい。
【0020】
実施の形態2
図7に、実施の形態2に係る薬液容器11を示す。この薬液容器11は、図1に示した実施の形態1の薬液容器1において、移送管保持部材4により保持されている薬液移送管5の代わりに薬液移送管15を移送管保持部材4に保持させたものであり、その他の部材は、実施の形態1の薬液容器1と同様である。すなわち、薬液Mを収容するバイアル2の開口部2aに栓部材3が取り付けられ、バイアル2の開口部2aと栓部材3の間に挟まれるように移送管保持部材4が配置され、移送管保持部材4により薬液移送管15が保持されている。
【0021】
薬液移送管15は、移送管保持部材4の底部4bを貫通するように移送管保持部材4に保持されており、薬液移送管15の上側部分は、実施の形態1の薬液容器1で用いられた薬液移送管5と同様に、移送管保持部材4の底部4bの中心から上方に向かって延び、上端が上方に向かって尖った針先部15aを形成し、針先部15aが栓部材3のドーム形状の肉薄部3dで覆われた状態で栓部材3の凹部3c内に突出している。一方、薬液移送管15の下側部分は、移送管保持部材4の底部4bの中心から下方に向かって延び、下端がバイアル2の底部の近傍に位置し、バイアル2に収容されている薬液Mの中で開放されている。
図8に示されるように、薬液移送管15の下側部分が、移送管保持部材4よりも下方まで延びている。
【0022】
このような実施の形態2に係る薬液容器11からシリンジへ薬液Mを移送する方法について説明する。
実施の形態1の薬液容器1の場合と同様に、まず、図9(A)に示されるように、栓部材3の肉薄部3dで覆われている薬液移送管15の針先部15aに向けて上方からシリンジ7の外筒7aの先端部7bを押し込むと、薬液移送管15の針先部15aが栓部材3の肉薄部3dを貫通して栓部材3による封入状態が解除され、針先部15aがシリンジ7の外筒7aの先端部7b内に挿入される。これにより、バイアル2の内部は、薬液移送管15の針先部15aの針穴を介してシリンジ7の外筒7aの内部と連通することとなる。
【0023】
このとき、薬液移送管15の下端は、バイアル2の底部の近傍に位置し、薬液Mの中で開放されているので、図9(B)に示されるように、シリンジ7と薬液容器11の位置を逆転させることなく、シリンジ7を薬液容器11の上方に位置させたまま、シリンジ7の押し子7cを外筒7aに対して後退させることで、バイアル2に収容されていた薬液Mが薬液移送管15を介してシリンジ7の外筒7a内へと移送される。
このようにして所要量の薬液Mがシリンジ7の外筒7a内に充填されると、押し子7cの後退を停止した後、薬液容器11からシリンジ7の外筒7aの先端部7bを引き抜き、この外筒7aの先端部7bに注射針を装着して、薬液Mの投与を実施することができる。
【0024】
以上説明したように、実施の形態2の薬液容器11によれば、実施の形態1と同様に、栓部材3の外側から肉薄部3dで覆われている薬液移送管15の針先部15aに向けて、シリンジ7の外筒7aの先端部7bを押し込むことで、薬液Mと薬液移送管15の封入状態が解除されると同時に薬液移送管15の針先部15aがシリンジ7の外筒7aの先端部7bに挿入されるので、シリンジ7に針を装着させることなく、また、薬液Mに接触することなく容易にシリンジ7の外筒7a内へ薬液Mを移送することが可能となる。
さらに、この実施の形態2では、薬液移送管15の下端がバイアル2の底部の近傍に位置し、バイアル2に収容されている薬液Mの中で開放されているため、シリンジ7を薬液容器11よりも上方に位置させたまま、シリンジ7の外筒7a内へ薬液Mを移送することができ、操作性が向上する。
【0025】
実施の形態3
図10に、注射針ロック機構付きのシリンジ17を示す。外筒17aの先端部17bの外側に注射針ロック機構Lが形成されている。
このような注射針ロック機構付きのシリンジ17に対しても、同様にして、薬液Mの移送を行うことができる。
【0026】
図11に示される実施の形態3の薬液容器21は、図1に示した実施の形態1の薬液容器1において、栓部材3の代わりに栓部材13を用いたものであり、その他の部材は、実施の形態1の薬液容器1と同様である。すなわち、薬液Mを収容するバイアル2の開口部2aに栓部材13が取り付けられ、バイアル2の開口部2aと栓部材13の間に挟まれるように移送管保持部材4が配置され、移送管保持部材4により薬液移送管5が保持されている。
栓部材13は、実施の形態1における栓部材3の凹部3cよりも大きな凹部13cを有しており、この凹部13c内にドーム形状の肉薄部13dが配置されている。凹部13cは、図10に示したシリンジ17の注射針ロック機構Lが挿入可能な径を有している。
【0027】
この実施の形態3に係る薬液容器21からシリンジ17へ薬液Mを移送する方法は、実施の形態1の薬液容器1の場合と同様である。すなわち、栓部材13の肉薄部13dで覆われている薬液移送管5の針先部5aに向けて上方からシリンジ17の外筒17aの先端部17bを押し込むと、図12に示されるように、外筒17aの先端部17bと共に注射針ロック機構Lが栓部材13の凹部13c内に挿入され、薬液移送管5の針先部5aが栓部材13の肉薄部13dを貫通してシリンジ17の外筒17aの先端部17b内に挿入される。
そこで、薬液移送管5の針先部5aがシリンジ17の外筒17aの先端部17b内に挿入された状態を維持したまま、薬液容器21とシリンジ17の位置を逆転させて薬液容器21をシリンジ17よりも上方に位置させ、シリンジ17の押し子17cを外筒17aに対して後退させることで、バイアル2に収容されていた薬液Mが薬液移送管5を介してシリンジ17の外筒17a内へと移送される。
【0028】
この実施の形態3の薬液容器21は、注射針ロック機構付きのシリンジ17だけでなく、図6(A)に示したような、注射針ロック機構を有しないシリンジ7に対しても、同様にして、薬液Mの移送を行うことが可能となる。栓部材13の外側から肉薄部13dで覆われている薬液移送管5の針先部5aに向けて、シリンジ7の外筒7aの先端部7bを押し込み、薬液移送管5の針先部5aがシリンジ7の外筒7aの先端部7bに挿入された状態で薬液Mの移送を行えばよい。
なお、上述した実施の形態2と同様に、実施の形態3の薬液容器21において、薬液移送管5の代わりに、下端がバイアル2の底部の近傍に位置し且つバイアル2に収容されている薬液Mの中で開放されている薬液移送管を使用することもできる。
【0029】
実施の形態4
上述した実施の形態1〜3においては、図4(C)に示したように、移送管保持部材4が平板状の底部4bを有していたが、これに限るものではなく、例えば、図13に示される移送管保持部材14のように、複数のリブRにより薬液移送管5を保持する底部14bとすることもできる。
このような底部14bを有する移送管保持部材14を使用すると共に、栓部材3または13として、ガス透過性を有する材料から形成されたものを用いることにより、薬液Mを移送する際に、栓部材3または13と移送管保持部材14の底部14bの複数のリブR間の空隙を介して薬液容器の外部とバイアル2の内部とを通気させることができ、バイアル2の内部が陰圧になることを解消して円滑に薬液Mの移送を行うことが可能となる。
【0030】
実施の形態5
上述した実施の形態1〜4においては、バイアル2から独立した部材である薬液移送管5または15が移送管保持部材4または14を介してバイアル2の内部に保持されていたが、これに限るものではなく、例えば、図14に示される薬液容器31のように、薬液移送管35が一体に形成されたバイアル32を使用することもできる。
バイアル32の底面32bに薬液移送管35の下端部が一体に連結され、薬液移送管35がバイアル32の底面32bから開口部32aに向かって直立する状態で、バイアル32の内部に保持されている。
【0031】
バイアル32の開口部32aには、実施の形態1〜4で用いられた移送管保持部材4または14を介することなく、栓部材3の栓本体部3aが直接挿入されている。薬液移送管35の上端には、針先部35aが形成され、この針先部35aが栓部材3のドーム形状の肉薄部3dで覆われた状態で栓部材3の凹部3c内に突出している。また、薬液移送管35の下端近傍の外周部には、バイアル32内の薬液Mを薬液移送管35の内部に導入するための薬液導入口35bが開口しており、この薬液導入口35bを介して、薬液移送管35の下端がバイアル2に収容されている薬液Mの中で開放されている。
【0032】
このように薬液移送管35が一体に形成されたバイアル32は、例えば、樹脂、ガラス等を用いて製造することができる。
この実施の形態5の薬液容器31によっても、実施の形態1と同様に、シリンジに針を装着させることなく、また、薬液Mに接触することなく容易にシリンジの外筒内へ薬液Mを移送することが可能となる。
さらに、薬液移送管35の下端近傍に薬液導入口35bが開口しているため、実施の形態2と同様に、シリンジを薬液容器31よりも上方に位置させたまま、シリンジの外筒内へ薬液Mを移送することができ、操作性が向上する。
【符号の説明】
【0033】
1 11,21,31 薬液容器、2,32 バイアル、2a,32a 開口部、2b フランジ、3,13 栓部材、3a 栓本体部、3b フランジ、3c,13c 凹部、3d,13d 肉薄部、4,14 移送管保持部材、5,15,35 薬液移送管、5a,15a,35a 針先部、6 アルミキャップ、7,17 シリンジ、7a,17a 外筒、7b,17b 先端部、7c,17c 押し子、32b 底面、35b 薬液導入口、M 薬液、L 注射針ロック機構、R リブ。
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