(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態にかかる反応管、その洗浄方法、および自動分析装置を説明する。
【0011】
通常の自動分析装置において、吸光度分析に用いられる光の最短波長は、ほとんどの場合340nm(約3.64eV)のUV−Aに分類される紫外線である。こうした自動分析装置で用いられる反応管は、測光の紫外線(波長340nm)を吸収することなく透過させることが要求され、その要求を満たす材質として石英ガラスが知られている。石英ガラスの透過率は、
図1に示すとおりである。
図1(a)は、OH基を含む石英ガラスの透過率を示し、
図1(b)はOH基を含まない石英ガラスの透過率を示す。いずれにおいても、測光に用いられる波長340nmの光は、可視光線と同程度に僅かしか吸収されないことが示されている。即ち、この波長での透過率は十分高い。
【0012】
一度、被検試料を収容して有機物が付着した反応管にダメージを与えずに十分に洗浄するために、本発明者らは光触媒に着目した。ここで、
図2を参照して、光触媒を用いた有機物の分解のメカニズムの一例を説明する。このメカニズムは、光触媒自体のバンドギャップ・エネルギーが酸化チタンと同等以上(3.0eV以上)であれば全く同じである。
【0013】
溶存酸素を含む水溶液が光触媒に接している状態で、光触媒を励起できる以上のエネルギーを持つ光子がその表面に照射されると、その表面に存在する光触媒が励起されて、電子(e
-)と正孔(h
+)が生じる。この電子は、光触媒表面近くに存在していた酸素分子と結びついて、スーパーオキサイドアニオン・ラジカルO
2-(O
2+e
-→O
2-)が生じ、このO
2-は正孔と結びついて個々の酸素原子に分かれる酸化反応(O
2-+h
+→2O)が起こる。この酸素原子は、電子(励起電子、またはそれ以外の光触媒結晶内の電子)と結合して原子状酸素(O
-)になる(O+e
-→O
-)と考えられている。このO
-は、更に他の酸素分子と結びついてO
3-となる(O
-+O
2→O
3-)。
【0014】
以上の反応メカニズムによって、非常に強い酸化力を持つ活性酸素(O
2-、O
-、O
3-などの総称)が生じる。この中でも、原子状酸素は、光触媒表面に付着した有機物の分解(酸化分解)を開始するにあたって最も重要な働きをすると考えられている。こうして生じた活性酸素が有機物と反応することで分解され、H
2OやCO
2が生成される。
【0015】
従って、光触媒の層を表面に有する反応管に有機物が付着した状態において、溶存酸素が豊富な水溶液中で、その光触媒を励起するのに十分なエネルギーを持つ光子を光触媒表面に照射することによって、光触媒表面近傍に付着していた有機物が分解される。これは、洗浄効果の促進を意味し、しかも従来の洗浄時に必要とされた過酷な条件(高圧の洗浄水ジェット、高温蒸気、強力超音波などへの曝露)が不要となる。
【0016】
酸化チタンTiO
2は、上述したようなメカニズムによって有機物を分解できる最も代表的な光触媒として知られており、そのバンドギャップ・エネルギーは結晶構造にもよるが、3.0〜3.2eV程度である。上述したように、自動分析装置において吸光度を測定するために使用される最短の波長は340nm(3.64eV)であるため、仮に反応管の表面に酸化チタンを含む光触媒層がコーティングされた場合、この波長340nmの光はこの光触媒層でも吸収されてしまうことになる。
【0017】
波長340nm(3.64eV)の光で吸光度を測定するための反応管では、光触媒層がコーティングされていても、この波長の光を吸収せずに透過することが求められる。3.64eVより大きなバンドギャップ・エネルギーを有する光触媒であれば、こうした反応管の表面に所望の光触媒層をコーティングするために利用できることになる。このような太陽光に含まれる波長より短い波長で励起される光触媒は“ワイドバンドギャップ・エネルギーを有する光触媒”と呼ばれており、本発明に適用可能な光触媒の必要条件を満たしている。
【0018】
このワイドバンドギャップ・エネルギーを有する光触媒の中で、生体安全性が確認されている物質として酸化ジルコニウムがある。酸化ジルコニウムのバンドギャップ・エネルギーは5.0eVで、励起波長は約248nmに相当する。この波長近傍における石英ガラスの透過率は85〜90%程度であり(
図1)、波長248nmの光で励起される酸化ジルコニウムは、測光時に用いられる波長340nmの光を殆ど吸収しないため、この波長では吸光度測定に全く影響しない。
【0019】
本発明者らは、上述の知見に基づいて自動分析装置用反応管の少なくとも内壁に、酸化ジルコニウム層を含有する光触媒層を形成するという本発明をなすに至ったものである。
【0020】
340nmでの測定に使われる反応管は、通常、石英ガラス製であり、製作時にその透過側面などにダメージを与えない穏やかなプロセスによって、酸化ジルコニウムを含む光触媒層を形成することが必要である。適切な成膜プロセスとして、例えば、200℃以下の低温プロセスであるゾル−ゲル法が挙げられる。具体的には、以下のように調製された前駆物質溶液を用いて、石英ガラス製の反応管本体の表面に、ゾル−ゲル法によって酸化ジルコニウム層を含む光触媒層を形成することが可能である。
【0021】
例えば、先ず1重量パーセントのポリ(ビニルブチラール)PVBを添加し、テトラプロピルジルコネートZr(OEt)
4:酢酸AcOH:アセチルアセトンを1:2:1のモル比で混合後、加熱濃縮し、テトラプロピルジルコネートのエタノール溶液(0.3moldm
-3)を調製する。次に、必要量のテトラプロピルジルコネートを採取し、エタノールで希釈して、テトラプロピルジルコネート濃度が適切な値(約0.15moldm
-3)になるように調整する。
【0022】
この希釈溶液にアセチルアセトン、および酢酸を順次加える。但し、このときのアセチルアセトンの量はテトラプロピルジルコネートと等モル、酢酸の量はテトラプロピルジルコネートのモル数の2倍にしておく。最後に必要量の1重量パーセントのポリ(ビニルブチラール)のエタノール溶液を加える。
【0023】
この混合溶液を60〜70℃に加熱攪拌し、テトラプロピルジルコネートの濃度が0.3moldm
-3になるように加熱濃縮して、ジルコニアコーティングに使う前駆物質溶液を作成する。なお、テトラプロピルジルコネートは蒸発がないことを前提に、予め濃度を算出しておく。
【0024】
ジルコニアコーティングをディップコーティング法で行う場合、以下のような手法が挙げられる。即ち、反応管を上記の前駆物質溶液に浸漬後、例えば2.1mm・s
-1程度の速度で引き上げる。次に、大気中に静置し、乾燥器内に載置して加熱処理を行なう。加熱条件は、例えば150〜250℃、0.5〜1.5時間の間とすることが望ましい。以上の前駆物質溶液を使った浸漬、乾燥、加熱処理の操作を1サイクルとして、必要なサイクル数だけコーティングを繰り返すことで、必要な厚みを持つ酸化ジルコニウムを含む光触媒層が反応管表面に形成される。
【0025】
酸化ジルコニウムを含む光触媒層の厚さは特に限定される必要はなく、5μm程度であれば光触媒層として実用上必要十分な効果が得られる。過剰に厚い光触媒層は、形成するためのプロセスが煩雑になり、また光触媒層としての効果が格別高められるわけでもないことから、光触媒層の厚さは最大でも20μm程度までとすることが望ましい。
【0026】
酸化ジルコニウムを含む光触媒層は、形成場所として、少なくとも被検試料や試薬が接する反応管の内壁に形成されていれば、所望の効果を得ることができる。酸化ジルコニウムを含む光触媒層が反応管の外壁にも存在する場合には、水温調節された脱気水61を満たした恒温槽60の中を移動する際に付着した有機物等の汚れも、恒温槽稼働中に受動的に溶け込んだ溶存酸素、及び反応管洗浄の際に恒温槽60の紫外線透過窓60aと60bを通して照射される紫外線により、内壁の洗浄と同時に外壁に付着した有機物も酸化分解されるといった利点がある。(
図3参照)
酸化ジルコニウムを含む光触媒層を少なくとも内壁に有する本実施形態の反応管の洗浄方法の一例を説明する。
反応管14は、石英ガラスからなる反応管本体14aと、この内壁に設けられた酸化ジルコニウムを含む光触媒層8とを含む。純水タンク2には、溶存酸素を含有する未脱気のイオン交換水が収容されている。自動分析装置において被検試料の吸光度の測定に用いられた後、反応管14内には、ノズル3を介してイオン交換水が供給される。光照射によって活性酸素を発生させるために、水中には酸素が存在することが必要であり、例えばエアレーションにより再通気させた脱気イオン交換水を使うか、または未脱気のイオン交換水が用いられる。
【0027】
この溶存酸素を含むイオン交換水を反応管14に供給するノズル3は、矢印A方向に上下移動可能であり、反応管14は、水温調節され且つ受動的に溶存酸素を含む脱気水で満たされた恒温槽60を紙面に直交するB方向に水平移動可能なように配置されている。紫外線透過窓60aおよび60bを通して十分な紫外線が反応管14に照射されるように、紫外線ランプ4の後方には、凹面鏡5が配置されている。
【0028】
更に、紫外線が出来るだけ分散しないようにするため、紫外線ランプ4と反応管14との間にはレンズ6が配置されている。更に反応管14を介して凹面鏡と対向するように、平面鏡7が配置されている。紫外線ランプ4としては、少なくともピーク波長が250±5nm以下のものを用いることが望ましい。例えば、紫外線低圧水銀ランプ(フィリップス社製、TUVシリーズ)が利用可能である。こうした紫外線低圧水銀ランプは、通常、殺菌ランプとして用いられ、
図4に示すような253.7nmにピークを持つ分光エネルギー分布を示す。こうした紫外線低圧水銀ランプのUV−C維持率は、
図5に示すとおりであり、3000時間後においても低下することはない。
【0029】
紫外線ランプ4からの光は、レンズ6と透過窓60aとを介して反応管14に照射され、一旦反応管14を透過した紫外線は、透過窓60bと反射鏡7とを介して再度照射される。反応管14内には溶存酸素を含有するイオン交換水が収容されているため、反応管本体14aの内壁に設けられた酸化ジルコニウムを含む光触媒層8では光触媒反応が起こる。すなわち、
図2を参照して説明したようなメカニズムによって活性酸素が発生し、活性酸素の強い酸化力によって内壁に残留付着していた有機物が分解される。その結果、過酷な条件を利用しなくても洗浄効果が促進され、短時間、且つ高効率に反応管を十分に洗浄することが可能となる。
【0030】
なお、光触媒層を通過する紫外線の強度が高いほど(即ち紫外線の単位面積当たりの光子数が多いほど)酸化反応が起こる確率が高くなるので、一部は確かに減衰、散乱されるが、反応管14を一度透過した残った紫外線は平面鏡7により再度反射されて、レンズ6を介して反応管14に再照射される。
【0031】
本実施形態に関わる反応管が用いられる自動分析装置の一例を
図6に示す。
図6は自動分析装置の全体構成を示す斜視図である。この自動分析装置は、被検試料の各種成分と反応する試薬を納めた複数の試薬ボトルを収納した試薬ラック11を設置できる試薬庫12および13と、円周上に複数の反応管14を配置した反応ディスク15と、被検試料が納められた被検試料容器27がセットされるディスクサンプラ16とを有している。ここで反応管14は、上述したように少なくとも内壁に酸化ジルコニウムを含む触媒層が形成された石英セルである。
【0032】
試薬庫12,13、反応ディスク15およびディスクサンプラ16は、それぞれ駆動装置により回動される。測定に必要な試薬は、試薬庫12あるいは試薬庫13の試薬ラック11に収納されている試薬ボトル17から、それぞれ分注アーム18あるいは分注アーム19を用いて反応ディスク15上の反応管14に分注される。
【0033】
また、ディスクサンプラ16上に配置されている被検試料容器27に納められた被検試料は、サンプリングアーム20のサンプリングプローブ26により、反応ディスク15上の反応管14に分注される。被検試料と試薬とが分注された反応管14は、反応ディスク15の回動により撹拌位置まで移動し、撹拌機構21により被検試料と試薬とが撹拌され混合液(反応液)が形成される。その後、測光機構23は、測光位置まで移動した反応管14に対して光を照射して反応管14内の反応液の吸光度変化を測定することにより、被検試料の成分分析を行なう。ここで、吸光度を測定するために利用される光の波長は最短の場合で340nmである。すでに説明したように、この波長の紫外線は酸化チタンには吸収されるが、酸化ジルコニウムには吸収されない波長領域であるため、酸化ジルコニウムでコーティングされた石英セルは吸光度測定に全く影響しない。吸光度測定が終了すると、反応管14内の反応液は廃棄され、その後、反応管14は洗浄機構22により洗浄される。
【0034】
次に、洗浄機構22について詳細に説明する。
図7は、当該自動分析装置における前記洗浄機構22を含む洗浄系のブロック図である。この
図7において、自動分析装置の洗浄系は、アルカリ性洗剤の原液が納められたアルカリ洗剤ボトル30と、酸性洗剤の原液が納められた酸性洗剤ボトル31と、このアルカリ洗剤ボトル30に納められたアルカリ性洗剤の原液と未脱気のイオン交換水とを混合してアルカリ性洗剤水を形成すると共に、酸性洗剤ボトル31に納められた酸性洗剤の原液と未脱気のイオン交換水とを混合して酸性洗剤水を形成する洗剤ポンプ32とを有する。
【0035】
第1の洗浄ノズル35および第4の洗浄ノズル38による洗浄には、未脱気のイオン交換水が用いられる。但し、最後の第5の洗浄ノズル39で使われる洗浄では、次の測定中に反応管に気泡を持ち込まないようにするため、脱気されたイオン交換水を用いる必要がある。この脱気されたイオン交換水は、別系統の洗浄用ベローズポンプや電磁バルブ(図示せず)を経由して、第5の洗浄ノズル39に供給される。
【0036】
この洗浄系は、制御部(図示せず)の通電により、アルカリ性洗剤の原液,酸性洗剤の原液および洗剤ポンプ32で形成されたアルカリ性洗剤水や酸性洗剤水の流れを制御する電磁バルブ33,34を有している。なお、この
図7に示す各電磁バルブ33,34等に付されている「NO(ノーマルオープン)」の記号は、その電磁バルブが、非通電時には開状態となっており、通電時に閉状態となる電磁バルブであることを示し、「NC(ノーマルクローズ)」の記号は、その電磁バルブが、非通電時には閉状態となっており、通電時に開状態となる電磁バルブであることを示し、「COM(共通孔)」の記号は、その電磁バルブが共通バルブであることを示している。
【0037】
洗浄機構22は、反応管14に対して高濃度水の吐出および吸引を行なう第1の洗浄ノズルユニット35と、反応管14に対してアルカリ性洗剤水の吐出および吸引を行なう第2の洗浄ノズルユニット36と、反応管14に対して酸性洗剤水の吐出および吸引を行なう第3の洗浄ノズルユニット37と、反応管14に対して未脱気のイオン交換水の吐出および吸引を行なう第4の洗浄ノズルユニット38と、反応管14に対して脱気されたイオン交換水の吐出および吸引を行なう第4の洗浄ノズルユニット38と、反応管14内の残水の吸引を行なうサクションノズルユニット40と、残水が吸引された反応管14内を乾燥させる乾燥ノズルユニット41によって構成されている。各ノズルユニット35〜41は、それぞれ上下機構35a〜41aを有しており、制御部は、この上下機構35a〜41aを介して各ノズルユニット35〜41の上昇および下降を制御する。
【0038】
第1の洗浄ノズルユニット35および第4の洗浄ノズルユニット38は、分岐管42aと電磁バルブ43aとを介して、該各ノズルユニット35,38に未脱気のイオン交換水を供給するための洗浄用ベローズポンプ44aに接続され、第5の洗浄ノズルユニット39は、別系統の分岐管42bと電磁バルブ43bとを介して未脱気のイオン交換水を供給するための別系統の洗浄用ベローズポンプ44bに接続される。また、第1の洗浄ノズルユニット35は、高濃度廃液用ベローズポンプ45,46に接続されており、洗浄用ベローズポンプ44を介して反応管14内に吐出された高濃度水の廃液は、この高濃度廃液用ベローズポンプ45,46により吸引されて廃液される。
【0039】
第4,第5の洗浄ノズルユニット38,39は、それぞれ分岐管47,48を介して真空ポンプ49,50(VP)に接続されており、反応管14内に吐出された純水の廃液は洗浄用ベローズポンプ44を介して、この真空ポンプ49,50により吸引・廃液される。
【0040】
第2の洗浄ノズルユニット36は、分岐管51および電磁バルブ33を介して前記洗剤ポンプ32に接続されると共に、分岐管48を介して真空ポンプ50に接続されており、反応管14内に吐出されたアルカリ性洗剤水は、洗剤ポンプ32を介して真空ポンプ50により吸引・廃液される。
【0041】
同様に、第3の洗浄ノズルユニット37は、分岐管51及び電磁バルブ34を介して前記洗剤ポンプ32に接続されると共に、分岐管48を介して真空ポンプ50に接続されており、反応管14内に吐出された酸性洗剤水は、洗剤ポンプ32を介して真空ポンプ50により吸引・廃液される。
【0042】
サクションノズルユニット40は、分岐管48を介して真空ポンプ50に接続されており、反応管14内の残水はこの真空ポンプ50により吸引・廃液される。
【0043】
そして、乾燥ノズルユニット41は、電磁バルブ52を介して真空ポンプ53に接続されると共に真空ポンプ54に接続されており、該各真空ポンプ53,54により反応管14内は乾燥される。
【0044】
各反応管14は、この第1の洗浄ノズルユニット35から乾燥ノズルユニット41までの間を順に移動させられることで、「高濃度水の吸引」→「未脱気のイオン交換水の吐出・吸引」→「アルカリ性洗剤水の吐出」→「アルカリ性洗剤水の吸引」→「酸性洗剤水の吐出」→「酸性洗剤水の吸引」→「第1回目の未脱気のイオン交換水の吐出」→「第1回目の未脱気のイオン交換水の吸引」→「第2回目脱気されたイオン交換水の吐出」→「第2回目の脱気されたイオン交換水の吸引」→「残水の吸引」→「乾燥」の順に各洗浄工程が施される。
【0045】
これらの工程のうち、「高濃度水の吸引」→「未脱気のイオン交換水の吐出・吸引」→「アルカリ性洗剤水の吐出」→「アルカリ性洗剤水の吸引」→「酸性洗剤水の吐出」→「酸性洗剤水の吸引」→「第1回目の未脱気のイオン交換水の吐出」→「第1回目の未脱気のイオン交換水の吸引」の工程の間だけは、
図3で示したように、恒温槽の紫外線透過窓60aと60bと紫外線ランプ4と凹面鏡とレンズ6と平面鏡7で構成された紫外線照射ユニットにより、反応管14にはピーク波長が250nm±5nm以下の紫外線が照射される。
【0046】
未脱気のイオン交換水が吐出された際には、
図2を用いて説明したようなメカニズムにより反応管内壁近傍に活性酸素が発生し、その強い酸化力によって反応管内壁表面の有機物が分解される。また、アルカリ性洗剤水や酸性洗剤水が吐出された際にも、同様に活性酸素が発生し、洗剤で除去できなかった有機物が更に分解される。なお、各工程の間には、反応管の内壁は空気に接触するタイミングがあるが、この場合には空気中の酸素が直接に光触媒反応に使われ、同様に活性酸素が発生して有機物が分解される。
【0047】
光触媒による有機物の酸化反応をともなう洗浄は、第5の洗浄ノズルによる洗浄工程直前まで行なわれる。光触媒作用によって洗浄効果が高められるので、洗浄に要する時間を短縮できることが容易に予想される。しかも、従来の洗浄方法にみられるような過酷な洗浄条件を伴わないので、反応管の透過側面は何等損傷を受けないし、ヒートショック等によって寿命が短くなることもない。
【0048】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。