特許第6391987号(P6391987)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6391987
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】曲がり管及びその製法
(51)【国際特許分類】
   F16L 43/00 20060101AFI20180910BHJP
   F16L 11/12 20060101ALI20180910BHJP
   F16L 11/06 20060101ALI20180910BHJP
   B29C 35/02 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   F16L43/00
   F16L11/12 L
   F16L11/06
   B29C35/02
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2014-102891(P2014-102891)
(22)【出願日】2014年5月16日
(65)【公開番号】特開2015-218815(P2015-218815A)
(43)【公開日】2015年12月7日
【審査請求日】2017年4月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000177900
【氏名又は名称】山下ゴム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089509
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 清光
(72)【発明者】
【氏名】酒井 信
(72)【発明者】
【氏名】吉田 晴幸
(72)【発明者】
【氏名】小林 正人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 久
(72)【発明者】
【氏名】阿部 寛之
【審査官】 藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第98/015769(WO,A1)
【文献】 特開平08−261383(JP,A)
【文献】 特開2003−113985(JP,A)
【文献】 特開2007−292300(JP,A)
【文献】 実開昭59−180091(JP,U)
【文献】 実開昭59−186588(JP,U)
【文献】 実開平06−041935(JP,U)
【文献】 特開平09−271857(JP,A)
【文献】 特開平11−319958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 43/00
F16L 9/00−11/26
B29C 35/00−35/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長さ方向中間部に曲がり部(20)を有し、この曲がり部におけるアール半径方向断面を扁平形状にするとともに、前記曲がり部に連続する非曲がり部(30・32)を備えた曲がり管において、
前記扁平形状が縦長扁平形状をなすとともに、
前記曲がり管がゴムホースであり、
この曲がり管の横断面にて、前記曲がり部(20)の周長と非曲がり部(30・32)の周長とが同一であることを特徴とする曲がり管。
【請求項2】
前記非曲がり部(30・32)の横断面を真円形状とし、長さ方向へ、非曲がり部(30)−曲がり部(20)−非曲がり部(32)と連続変化させたことを特徴とする請求項1に記載した曲がり管。
【請求項3】
前記曲がり部(20)の断面形状が、縦長楕円形状もしくは他の縦長非円形形状からなるものとしたことを特徴とする請求項1〜2のいずれか1項に記載した曲がり管。
【請求項4】
前記曲がり部(20)のアール半径方向断面形状が縦方向で非対称をなすことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載した曲がり管。
【請求項5】
前記曲がり部(20)のアール半径方向断面形状が横方向で非対称をなすことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載した曲がり管。
【請求項6】
前記非曲がり部(30・32)が真円形状の断面部を備え、前記曲がり部(20)における内側アール(24)が前記真円形状の断面部における内径Dの2倍以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載した曲がり管。
【請求項7】
長さ方向中間部にマンドレル曲がり部(42)を有するマンドレル(40)を用いて上記請求項1〜6のいずれかに記載したゴムホースの曲がり管を製造する方法において、
前記マンドレル(40)は、長さ方向にて前記マンドレル曲がり部(42)を挟んで、マンドレル第1ストレート部(47)及びマンドレル第2ストレート部(48)を有し
前記マンドレル曲がり部(42)、アール半径方向断面において縦長扁平形状をとし、かつ前記マンドレル曲がり部(42)の周長を前記マンドレル第1ストレート部(47)及びマンドレル第2ストレート部(48)の周長と同一にするとともに、
前記マンドレル(40)に、ゴム素材からなる未加硫管(50)を被せ、この状態で加硫することにより、前記マンドレル(40)の形状と同様の曲がり管形状をなすゴムホースに成形することを特徴とする曲がり管の製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ラジエータホースのような長さ方向中間部に曲がり部を有する曲がり管及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の曲がり管及びその製法に関する一般的なモデルとして、マンドレルにて曲管状に成形されるゴム製のラジエータホースについて、図14〜16により説明する。
図14は、中間部を略90°曲げたホース110の平面図である。このホース110は、長さ方向において、中間部の曲がり部120と、その両側へ接続するストレート部130及び132を備える。
この例では、曲がり部120及びストレート部130、132は、図中に(a)、(b)として回転断面で示すように、それぞれ内径Dとする真円形状をなし、曲がり部120は略90°湾曲したアール形状をなしている。なお、図中に(c)で示した断面は、後述する特許文献1において採用されている横長楕円形状(横長扁平形状)の曲がり部断面に相当するものである。
【0003】
ここで、本願における諸用語を定義する。アール形状部をなす円弧の曲率円をアール円C、このアール円Cの中心をアール中心CO、アール円Cの半径をアール半径CRとする。アール半径の数値はそのままアール形状部の大きさを示すアールの値となる(例えば、アール半径が40mmの場合、アール形状部のアールは40であり、R40として表記される)。
なお、アールが小さいことは、曲率が大きいことと同義であり、アールが小さいほど(曲率が大きいほど)アール形状部の曲げがきつくなる。
また、ホースの中心軸線をHC、中心軸線HC上の点をホースの中心HO、ホースを中心軸線HCの直交方向に切った断面を横断面、このうち特に曲がり部をアール半径方向に沿って切った断面をアール半径方向断面とする。
さらに、ホースをアール円Cに直交する方向から示す状態を平面視とし、この平面視において、曲がり部のうち、アール中心CO側を内側、反対側を外側という。内側と外側の間になるホースの外周面を側面とする。
また、アール半径方向断面において、アール半径方向を縦方向、これに直交する方向を横方向とし、アール半径方向断面形状について、ホースの中心HOを通る縦方向の長さと横方向の長さが異なる形状を扁平形状という。特に、横方向の長さの方が長い形状を横長扁平形状、縦方向の長さの方が長い形状を縦長扁平形状という。
さらに、アール中心COとホースの中心HOを通る直線を縦方向中心線L1、これと直交して中心HOを通る直線を横方向中心線L2とする(図2参照)。
これらの各記号は、後述する実施形態においても共通に用いるものとする。
また、図面を参照した説明における上下・左右の各方向は、対象とする図面における上下・左右の各方向を意味するものとする。
【0004】
図15は、加硫成形終了時における曲がり部120の断面を示す。ホース110は、直管状をなす未加硫ホースを、ホース110と同様の曲がり形状をなすマンドレル140に被せて、所定温度に加熱して加硫することにより、マンドレル140と同様形状の曲がり管となる。
このとき、マンドレル140の曲がり部142は、ホース110における曲がり部120の内周部とほぼ同じ曲率になっており、その内側アール部144のアールがある程度きついと、未加硫ホースをマンドレル140に被せたとき、曲がり部120の内側アール部124が、マンドレルの内側アール部144から離れ、内側アール部124と内側アール部144の間に空間180が形成される。
すると、内側アール部124には、矢示f1のようにその長さ方向中央へ向かって圧縮されているので、内側アール部124はf1方向の圧縮力により、空間180内へ向かって座屈変形する。この座屈変形によって、内側アール部124にしわ等の不規則形状からなる外観不良部190が発生し易くなる。
【0005】
空間180が形成される理由は、内側アール部124が曲げによる自己の復元弾性により、マンドレルの内側アール部144から離れてアール中心CO方向へ向かう、f3方向の復元力を受け、この力により内側アール部124がマンドレルの内側アール部144から離れる傾向を持っているからである。しかも、復元力はホースの内側アール部124のアールが小さくなるほど増大するので、空間180が形成され易くなる。
なお、曲がり部120の外側アール部126は、矢示f2のように引っ張られ、マンドレルの外側アール部146へ密着されるため、外側には外観不良部190が発生しにくい。
また、このような曲がり部内側における外観不良部190の発生を抑制するため、曲がり部を横長扁平形状(図14の(c)参照)にするとともに、ホース内周の周長を長さ方向へ次第に増大させたものがある(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5013912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のように、曲がり部を横長扁平形状にして、かつ長さ方向へ周長を増大させれば、内側アール部分124を周方向へ引っ張ることによって、マンドレルの内側アール部144へ密着させることができるため、しわ等の発生をある程度阻止することができる。しかし、このような横長扁平形状にしても内側アール部124におけるアールの大きさによっては、しわ等の発生を阻止できないことがある。
図16は曲がり部を横長扁平形状にする成形の原理を説明するためのものであり、(A)は真円状をなす未加硫ホースの内周に相当する基準内周円160と、マンドレルの曲がり部142(図15)におけるアール半径方向断面の外周に相当する曲がり部内周形状170を重ねた図である。曲がり部内周形状170は横長扁平形状をしている。
未加硫ホースをマンドレルの曲がり部142に被せると、曲がり部内周形状170は横長扁平形状をしているので、その左右方向端部170aが基準内周円160を左右方向へ押し広げる。このため、基準内周円160の左右部160aは、左右方向端部170a側へ引っ張られ、上部160b及び下部160cは、曲がり部内周形状170の上部170b及び下部170cへ押しつけられる。
【0008】
(B)は未加硫ホースの装着状態であり、(A)の基準内周円160は160Aとして示すように、上部160b及び下部160cが接近する方向につぶされ、曲がり部内周形状170と同様の横長扁平形状をなし、その周囲に密着し、基準内周円160の上部160b及び下部160cは曲がり部内周形状170の上部170b及び下部170cへ密着している(図示の基準内周円160Aは、説明の便宜上、曲がり部内周形状170と重ねた状態とせず、若干離してある)。
このとき、上部160b及び下部160cは、曲がり部内周形状170の左右方向端部170aに引っ張られて強く曲がり部内周形状170の上部170b及び下部170cへ押しつけられることになる。
【0009】
ところで、基準内周円160の下部160cは、左右部160aへ向かってf4方向へ引っ張られることで曲がり部内周形状170の下部170cへ押しつけられているだけであるから、別の力が働けば、f3のように図の下方へ移動し、仮想線160Bに示すように変形して曲がり部内周形状170の下部170cから離れ、下部170cとの間に空間180を形成する。このf3方向の力が、前記した内側アール部124における復元力である。
そこで、マンドレルの内側アール部144を小さくして、ホースの内側アール部124を所定よりも小さくすると、ホースの内側アール部124における復元力が増大し、この力が図16の(B)においてf3方向に作用し、下部160cを下部170cへ押しつけている引っ張り力に勝り、下部160cが下部170cから離れる。
ここで、曲がり部内周形状170の下部170cは、マンドレルの曲がり部142における内側アール部144に相当する。また、基準内周円160の下部160cは、ホースの曲がり部120における内側アール部124に相当する。
したがって、ホースの内側アール部124が、マンドレルの内側アール部144から離れて空間180を形成し、その後における外観不良部190の発生につながることになる。
また、ホースの曲がり部120の断面を横長扁平形状にしても、内側アール部124のアールを所定よりも小さくすると、空間180を不可避的に発生させることになる。
【0010】
このような空間180が発生することになる所定のアールは、従来、内径Dの2倍程度が限界とされ、アールを内径Dの2倍以下にすると、空間180が発生し、その結果、外観不良部190を発生するおそれがあるため、アールを内径Dの2倍より大きくせざるを得なかった。
しかし、曲がり部のアールが大きいと、それだけ配置スペースを大きくとらなければならない。したがって、コンパクトな配置のために小アール化することが求められるようになった。しかも、このようなアールを小さくする要請は強く、例えば、自動車のラジエータホースに用いる場合には、ラジエータ回りにおけるエンジン周辺部品との干渉を避けて、ラジエータ及び周辺部品をエンジンルーム内へ密にレイアウトすることにより車体のコンパクト化を実現するために要求されている。
したがって、外観を損なうことなく、これまで実現できなかった内径の2倍以下となるような小アールの曲がり部を有するホース等の曲がり管及びその製法の実現が望まれていた。
また、特許文献1におけるように、内周の周長を長さ方向へ漸増させると、未加硫ホースをマンドレルへより強く密着させることができるため、ある程度の小アール化が可能になると考えられる。しかし、このように周長を変化させると、未加硫ホースを長さ方向で徐々に拡径するようになるので、肉厚が長さ方向で変化することになり、長さ方向の強度変化が大きくなって耐久性を低下させやすくなってしまう。したがって、長さ方向へ周長を変化させずに、小アール化を実現することも望まれることになった。
本願は、これらの要請の実現を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため請求項1に係る発明は、長さ方向中間部に曲がり部(20)を有し、この曲がり部におけるアール半径方向断面を扁平形状にするとともに、前記曲がり部に連続する非曲がり部(30・32)を備えた曲がり管において、
前記扁平形状が縦長扁平形状をなすとともに、
前記曲がり管がゴムホースであり、
この曲がり管の横断面にて、前記曲がり部(20)の周長と非曲がり部(30・32)の周長とが同一であることを特徴とする。
【0013】
請求項に係る発明は上記請求項において、前記非曲がり部(30・32)の横断面を真円形状とし、長さ方向へ、非曲がり部(30)−曲がり部(20)−非曲がり部(32)と連続変化させたことを特徴とする。
【0014】
請求項に係る発明は上記請求項1〜のいずれか1項において、前記曲がり部(20)の断面形状が、縦長楕円形状もしくは他の縦長非円形形状からなるものとしたことを特徴とする。
【0015】
請求項に係る発明は上記請求項1〜のいずれか1項において、前記曲がり部(20)のアール半径方向断面形状が縦方向で非対称をなすことを特徴とする。
【0016】
請求項に係る発明は上記請求項1〜のいずれか1項において、前記曲がり部(20)のアール半径方向断面形状が横方向で非対称をなすことを特徴とする。
【0017】
請求項に係る発明は上記請求項1〜のいずれか1項において、前記非曲がり部(30・32)が真円形状の断面部を備え、前記曲がり部(20)における内側アール(24)が、前記真円形状の断面部における内径Dの2倍以下であることを特徴とする。
【0018】
請求項に係る発明は、長さ方向中間部にマンドレル曲がり部(42)を有するマンドレル(40)を用いて上記請求項1〜6のいずれかに記載したゴムホースの曲がり管を製造する方法において、
前記マンドレル(40)は、長さ方向にて前記マンドレル曲がり部(42)を挟んで、マンドレル第1ストレート部(47)及びマンドレル第2ストレート部(48)を有し
前記マンドレル曲がり部(42)、アール半径方向断面において縦長扁平形状をとし、かつ前記マンドレル曲がり部(42)の周長を前記マンドレル第1ストレート部(47)及びマンドレル第2ストレート部(48)の周長と同一にするとともに、
前記マンドレル(40)に、ゴム素材からなる未加硫管(50)を被せ、この状態で加硫することにより、前記マンドレル(40)の形状と同様の曲がり管形状をなすゴムホースに成形することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1の発明によれば、曲がり部を有するゴムホースにおいて、曲がり部のアール半径方向断面が、縦長扁平形状をなすため、曲がり部内側のアールを所定より小さくしても、曲がり部の内側における、しわ等の外観不良部が発生しにくくなる。
【0020】
また、曲がり管の横断面において、非曲がり部の周長と、曲がり部の周長を同一にしたので、長さ方向で肉厚が均一になり、長さ方向の強度を一定にできる。このため、外観不良部の発生を抑えながら小アールを実現できるとともに、耐久性を向上させることができる。
【0021】
請求項の発明によれば、曲がり管の横断面にて、非曲がり部を真円形状とし、長さ方向へ、非曲がり部−曲がり部−非曲がり部と連続変形させ、曲がり部の横断面のみを縦長扁平形状とし、他の部分を真円形状断面としたので、しわ等の外観不良部の発生を防止できる。
【0022】
請求項の発明によれば、曲がり部の断面形状を、縦長楕円形状もしくは他の縦長非円形形状からなるものとしたので、曲がり部の断面形状設計における自由度が高くなる。
【0023】
請求項の発明によれば、曲がり部の内側または外側を部分的に変形させて、断面形状を縦方向で非対称にすることができるため、周辺部材との逃げ部を設けることなどが可能になるので、曲がり部の断面形状設計における自由度が高くなる。
【0024】
請求項の発明によれば、曲がり部の側面を変形させて、断面形状を横方向で非対称にすることができるため、周辺部材との逃げ部を設けることなどが可能になるので、曲がり部の断面形状設計における自由度が高くなる。
【0025】
請求項の発明によれば、曲がり部における内側アールが、非曲がり部における曲がり管の内径Dの2倍以下にしても、曲がり部の内側における外観不良部の発生を抑えることができる。このため、従来では実現できなかった、非曲がり部における曲がり管内径Dの2倍以下という小アールを可能にした。
【0026】
請求項の発明によれば、マンドレルの曲がり部におけるアール半径方向断面を縦長扁平形状にしたので、マンドレルにゴム素材からなる未加硫管を被せて曲げるとき、所定のアールより小さく曲げても、座屈させずに曲げることができる。
したがって、曲がり部内側のアールを所定より小さくしたゴムホースを、曲がり部の内側における、しわ等の外観不良部の発生を抑制しつつ成形できる。
また、マンドレルに、マンドレル曲がり部を挟んで第1ストレート部と第2ストレート部を設け、マンドレル曲がり部の周長を、第1ストレート部及び第2ストレート部の周長と同じにしたので、ゴムホースは長さ方向全長で肉厚が均一になり、耐久性を向上させることができる。さらに、曲がり形状のマンドレルに対する抜き差しが容易になり、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】ホースの平面図(回転断面併記)
図2図1の2−2線断面図
図3図1の3−3線断面図
図4】ホースの製法を示す図
図5図4の5−5線断面図
図6図4の6−6線断面図
図7】未加硫ホースをマンドレルへ装着した状態の要部断面図
図8】曲がり部の成形原理を説明する図
図9】曲がり部の変形例を示す図
図10】第2実施形態に係る曲がり部形状を示す図
図11】第3実施形態に係る曲がり部形状を示す図
図12】第4実施形態に係る曲がり部形状を示す図
図13】第5実施形態に係る曲がり部形状を示す図
図14】従来例に係るホースの平面図
図15】従来例のホース製造における要部断面図
図16】従来例における曲がり部の成形原理を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づいて、自動車のラジエータ用ホースとして形成された実施形態を説明する。
図1〜9は第1実施形態に係り、図1はホース10の平面図、図2はその2−2線断面図、図3は同3−3線断面図である。
【0029】
これらの図において、ホース10は適宜なゴム素材より加硫成形されたゴムホースであり、中間部に略90°曲げられた曲がり部20を有する。曲がり部20を挟む長さ方向両側は非曲がり部である直管状の第1ストレート部30及び第2ストレート部32をなす。便宜的に長さ方向両端部のうち、第2ストレート部32側を始端34、第1ストレート部30側を終端36とする。
【0030】
ホース10の肉厚内には、補強布12が一体化されている(図2及び3参照)。補強布12はホース10の全長にわたって連続して設けられている。
ホース10は、第1ストレート部30−曲がり部20−第2ストレート部32と連続し、横断面形状は、回転断面を(a)(b)(c)として示してある。横断面形状はアール止まり14にて変化する。なお、補強布12は無くても良い。
【0031】
曲がり部20における曲がり部内側22及び曲がり部外側23、はそれぞれアール形状をなし、曲がり部内側22の外周面における内側アール部24は、アール円Cの円弧であり、このアール円Cのアール半径はCRである。すなわち、内側アール部24のアールはCR(数値)となる。ここで、アールは内径Dの2倍以下に設定されている。なお、具体的には、D=30mm、CR=40mm、内側アール部24のアールはR40となっている。このアールはほぼ4/3Dに相当し、この太さのホースにおいては著しく小さなものになっている。また、曲がり部内側22の内周アール25は、肉厚分だけ大きくなっている。
【0032】
曲がり部20の曲がり部外側23における外周のアールである外側アール部26は、内側アール部24のアールよりも、曲がり部の縦長方向外径(長径)程度大きくなっている。曲がり部外側23の内周アール27は、外側アール部26よりも肉厚分だけ小さくなっている。
【0033】
曲がり部20のアール半径方向断面(横断面)は、図2に示すように、アール円Cの半径
方向へ長い縦長の楕円形状をなす。その内周側の楕円形状は、長半径aが縦方向となり、短半径bが横方向となる、縦方向へ突出した縦長扁平形状となっている。
【0034】
長半径aは、アール半径方向断面において、ホースの中心HOとアール中心COを結ぶ縦方向中心線L1に重なっている。短半径bは縦方向中心線L1に直交してホースの中心HOを通る横方向中心線L2に重なっている。第1ストレート部30(第2ストレート部32)の内径をD、半径をrとしたとき、a>r>bとなっている。縦方向への突出量をdとすれば、d=a−rになっている。
なお、肉厚が一定であるから、外周側も相似形の縦長楕円形状をなしている。
【0035】
第1ストレート部30の横断面は、図3に示すように真円状をなし、その内径はDである。この内径は曲がり部20と反対側の第2ストレート部32においても同じである。すなわち、ホース10は曲がり部20を除く長さ方向全体が単一の内径をなす真円状断面になっている。
図中の直線L3、L4は中心HOを通る直交2軸であり、それぞれ図2のL1及びL2に対応し、L3は図の上下方向へ延びる縦方向中心線であり、L4は図の左右方向へ延びる横方向中心線である。
【0036】
曲がり部20並びに第1ストレート部30及び第2ストレート部32の内周における周長はそれぞれLであり、アール止まり14部分を含めて同一である。すなわち、曲がり部20のアール半径方向断面(図2)及び第1ストレート部30(第2ストレート部32)の横断面(図3)におけるそれぞれの内周の長さが周長Lである。なお、図2及び図3にて符号Lはホースの内周面を指示しているが、このLは周長を意味するものとする。断面における周長Lについての表記は他の図においても同様とする。また、本実施形態においては、ホース10の全長においてほぼ肉厚が一定のため、外周においても各部の周長が同一である。
【0037】
さらに、ホース10の横断面形状は、アール止まり14にて真円から楕円もしくは楕円から真円へと変化するが、この断面形状変化は徐々に変化して、アール止まり14を挟んで曲がり部20と第1ストレート部30及び第2ストレート部32が滑らかに連続するようになっており、この変化部においても周長Lは同一に保たれている。したがって、ホース10は通路断面積が全長にわたって一定になっている。
【0038】
次に、このホース10の製法を説明する。
図4に示すように、曲がり管形状のマンドレル40に、未加硫で断面が真円状の未加硫ホース50(本願における未加硫管に相当する)を被せ、未加硫ホース50をマンドレル40の曲がり形状に沿わせて曲げた状態で、所定温度に加熱することにより、未加硫ホース50を加硫させてマンドレル40と同形状に固定された曲がり管のホースを成形する。
【0039】
マンドレル40は、金属製の丸棒からなり、長さ方向中間部が略90°曲がったマンドレル曲がり部42をなす。43はアール止まりである。アール止まり43を境にしてマンドレル40は長さ方向において、断面が、真円−縦長楕円−真円と変化する。
マンドレル曲がり部42におけるマンドレル内側アール部44は、ホース10の曲がり部20における曲がり部内側22の内周アール25(図1)と同程度のアール形状をなす。また、マンドレル曲がり部42のマンドレル外側アール部46も、ホース10の曲がり部20における曲がり部外側23の内周アール27(図1)と同程度のアール形状をなす。
【0040】
なお、マンドレル40は後述するようにホース10を同軸上に外装して成形するので、ホース10の一部符号、HC、HO、a、b、r並びにCO、L1・L2・L3・L4を、そのままマンドレル40についても使用するものとする。なお、マンドレルのアール円は内周アール25に対するものとなるので、内側アール部24のアール円と区別するためCaとし、そのアール半径もCRaとする。
【0041】
マンドレル曲がり部42を挟む長さ方向の一端側はマンドレル第1ストレート部47をなし、その先端47aは、未加硫ホース50の挿入を容易にするため曲面状に形成されている。マンドレル第1ストレート部47の反対側はマンドレル第2ストレート部48をなし、その端部には取付部49が突出形成され、これを図示しない枠部材へ取付けることにより、マンドレル40が枠部材へ支持される。
【0042】
マンドレル曲がり部42の横断面は図5に示すように、縦長の楕円形状をなし、その外周は、曲がり部20の内周と一致する。すなわち、マンドレル曲がり部42のアール半径方向断面における周長はLである。
マンドレル内側アール部44及びマンドレル外側アール部46は、半径rの同心円に対して、それぞれd程度内側及び外側へ張り出している。半径rの円は、マンドレル第1ストレート部47及びマンドレル第2ストレート部48の横断面における外周となる円である。この半径rは第1ストレート部30及び第2ストレート部32の内径でもある。
【0043】
マンドレル第1ストレート部47及びマンドレル第2ストレート部48の断面は、それぞれ図6に示すように真円状をなし、その外周は、第1ストレート部30及び第2ストレート部32の各内周と一致する。すなわち外径がD、半径がrとなる。なお、図6はマンドレル第1ストレート部47の断面を示すが、マンドレル第2ストレート部48の断面も同じである。
また、マンドレル曲がり部42とマンドレル第1ストレート部47及びマンドレル第2ストレート部48における各外周の周長は同じであり、ホース10の内周の周長Lと一致する。
【0044】
図7は、未加硫ホース50をマンドレル40へ被せた状態を示す。図7に示すように、未加硫ホース50の一端部59aを先端47aに被せて押し込むことにより、マンドレル40が未加硫ホース50の内側へ挿入され、未加硫ホース50はマンドレル曲がり部42に合わせて曲がり、長さ方向中間部が未加硫ホース曲がり部52をなす。未加硫ホース曲がり部52を挟む長さ方向両側は、マンドレル第1ストレート部47及びマンドレル第2ストレート部48に沿う、未加硫ホース第1ストレート部57及び未加硫ホース第2ストレート部58をなす。未加硫ホース第1ストレート部57の端部である他端部59bは先端47a近傍に位置する。
【0045】
未加硫ホース曲がり部52の横断面は、回転断面(a)に示すように、縦長の楕円形状をなし、未加硫ホース内側アール部54及び未加硫ホース外側アール部56は、共にマンドレル曲がり部42のマンドレル内側アール部44及びマンドレル外側アール部46に密着している。
特に、マンドレル曲がり部42におけるマンドレル内側アール部44がアール中心CO方向へ張り出していることにより、未加硫ホース内側アール部54は、マンドレル内側アール部44の押しつけにより引っ張られるため、マンドレル内側アール部44側へ強く密着され、この密着が維持される。
【0046】
未加硫ホース第1ストレート部57の横断面は、回転断面(b)に示すように、真円状をなして、マンドレル第1ストレート部47の外周へ密着している。未加硫ホース第2ストレート部58も同様である。
【0047】
この状態で未加硫ホース50を加熱すると、未加硫ホース曲がり部52並びに未加硫ホース第1ストレート部57及び未加硫ホース第2ストレート部58が、マンドレル曲がり部42並びにマンドレル第1ストレート部47及びマンドレル第2ストレート部48へそれぞれ密着した状態で加硫され、未加硫ホース曲がり部52はホース10の曲がり部20、未加硫ホース第1ストレート部57は第1ストレート部30、未加硫ホース第2ストレート部58は第2ストレート部32となる。
【0048】
また、未加硫ホース内側アール部54及び未加硫ホース外側アール部56はそれぞれ内側アール部24及び外側アール部26になる。さらに未加硫ホースのマンドレル内側アール部44へ接触する部分が内周アール25、マンドレル外側アール部46へ接触する部分が内周アール27になる。また、一端部59aは始端34、他端部59bは終端36になる。未加硫ホース50各部に対応するホース各部の符号を()付きで添えてある。
【0049】
加硫後、ホース10の曲がり部内側22における内周アール25は、マンドレル内側アール部44に沿って密着状態で形成され、内側アール部24は、所定の小アール(2D以下、例えばR40など)になる。その結果、曲がり部内側22にしわ等の外観不良部が生じないホース10が得られる。
また、曲がり部外側23における内周アール27は、マンドレル曲がり部42におけるマンドレル外側アール部46に沿って形成され、外側アール部26は、所定のアールになる。
【0050】
また、マンドレル40は長さ方向全体において外周の周長がLと同一であるから、ホース10の内周における周長はLと同一になり、曲がり部20、第1ストレート部30及び第2ストレート部32の各部における内周の周長はそれぞれLになる。
【0051】
次に、図8により曲がり部の成形原理を説明する。この図は図16の(A)に示したものと同様に、基準内周円60と曲がり部内周形状70を重ねたものである。
基準内周円60は、マンドレル第1ストレート部47及びマンドレル第2ストレート部48の断面における真円状の外周を示し、半径rである。
【0052】
曲がり部内周形状70は、楕円形状をなす縦長非円形形状のマンドレル曲がり部42におけるアール半径方向断面の外周を概略的に示し、縦方向中心線L1に沿う長半径aと、横方向中心線L2に沿う短半径bを有する縦長楕円形状をなしている。基準内周円60と曲がり部内周形状70の周長は、(L)として示してあり、それぞれ同一である。
【0053】
この曲がり部内周形状70の縦方向中心線L1との交点を内側突部72及び外側突部74とし、基準内周円60の縦方向中心線L1との交点を内側端部44a及び外側端部46aとすると、内側突部72が基準内周円60の内側端部44aよりも内側へ突出している(突出量dとする)。また、外側突部74も基準内周円60の外側端部46aより外側へdだけ突出している。
【0054】
内側突部72と外側突部74はそれぞれ、ホースの中心HOとの間に長半径aに相当する寸法があり、内側突部72はマンドレル内側アール部44上の点であり、未加硫ホース内側アール部54と重なるので、「(54)」を添えて表示する。同様に、外側突部74はマンドレル外側アール部46上の点であり、未加硫ホース外側アール部56と重なるので、「(56)」を添えて表示する。
【0055】
未加硫ホース50を被せたとき、未加硫ホース曲がり部52は曲がり部内周形状70と同じ形状になるように変形する。このとき、未加硫ホース内側アール部54と未加硫ホース外側アール部56は、内側突部72及び外側突部74により、基準内周円60の内側端部44a及び外側端部46aを寸法dだけ内側及び外側へ押し出される。このため、未加硫ホース内側アール部54及び未加硫ホース外側アール部56はそれぞれマンドレル内側アール部44及びマンドレル外側アール部46へ強く密着される。
【0056】
この状態で、未加硫ホース内側アール部54は、マンドレルの内側へ突出するマンドレル内側アール部44によって内側(アール中心CO方向)へ押し出されて積極的に引っ張られるため、その弾力でマンドレル内側アール部44へ強く押し付けられて密着を維持し、未加硫ホース内側アール部54の復元力でもマンドレル内側アール部44から離れなくなる。
【0057】
したがって、未加硫ホース内側アール部54とマンドレル内側アール部44との間に空間(図15の符号180参照)が生じないため、未加硫ホース内側アール部54に座屈等が生じない。また、この密着状態のままで加硫されるため、外観不良部が生じなくなる。
しかも、この密着状態は、マンドレル内側アール部44のアールを小さくしても維持されるから、従来の限界であったアールが2Dより小さな小アール(内径Dの2倍以下)、特に、D=30mmのときにおけるR40のような小アールが可能になる。
【0058】
なお、未加硫ホース外側アール部56は、外側突部74のような特別に突出する部分を設けなくても、本来、装着時における材料自体の引っ張りによってマンドレル外側アール部46側へ密着されるようになっているため、しわ等が発生しにくい部分である。しかし、マンドレル外側アール部46を寸法dで外側へ突出させることにより、さらに強く密着され、しわ等の発生がより確実に阻止される。
【0059】
また、基準内周円60と曲がり部内周形状70は周長が同一であるから、曲がり部内周形状70は未加硫ホース内側アール部54及び未加硫ホース外側アール部56が内外へ押し出されて縦方向へ伸ばされるため、基準内周円60の横方向中心線L2との交点である左右部分は中心HO方向へ引っ張られる。このため、未加硫ホース曲がり部52の側面は、曲がり部内周形状70の横方向中心線L2との交点及びその近傍部となるマンドレル曲がり部42の側面へ密着するので、ホースの曲がり部20側面においても、しわ等の発生を阻止する。
【0060】
このように、本実施形態のホース及び製法によれば、外観不良部の発生を抑えながら、従来の限界であった小アール(内径Dの2倍以下)を実現できるようになった。このため、エンジンルーム内へコンパクトに配置でき、ラジエータ及び周辺部品のレイアウトを容易にして、エンジンルームをコンパクトにすることができる。特に、D=30mmのときにおけるR40のような小アールにすると、エンジンルームを可及的にコンパクト化することができる。
【0061】
また、曲がり部20のアール半径方向断面形状を、縦長楕円形状もしくはその他の縦長非円形形状としたので、曲がり部20の形状を周辺部材等を考慮して種々の縦長非円形形状にすることができ、曲がり部20の断面形状設計における自由度が高くなる。
【0062】
さらに、ホース10の横断面形状として、非曲がり部である第1ストレート部30及び第2ストレート部32を真円形状とし、長さ方向へ、断面真円形状の第1ストレート部30−断面縦長楕円形状の曲がり部20−断面真円形状の第2ストレート部32と連続変化させたので、曲がり部20の横断面のみを縦長扁平形状とし、他の部分を単純な真円形状断面として、全体を単純形状にすることができる。
【0063】
また、曲がり部20と第1ストレート部30及び第2ストレート部32における内周の周長がそれぞれLと同一であるため、曲がり部20において内外方向へ引っ張られても、部分的に薄くなることはなく、長さ方向全長で肉厚が均一になる。このため、曲がり部20の強度が低下することはなく、耐久性を向上させることができる。
【0064】
さらに、曲がり部20のアール半径方向断面を、縦長扁平形状である縦長楕円形状にしたので、長さ方向へ周長を増大させず同一にできる。このため、外観不良部の発生を抑えながら、同時に耐久性を向上させることができる。そのうえ、曲がり部20を含む周長を長さ方向で一定にすることにより、曲がり形状のマンドレルに対する抜き差しが容易になり、作業性が向上する。しかも、曲がり部20における通路断面積の変化を抑制して、高圧流体等のホースとして好適なものとすることもできる。
【0065】
特許文献1のように、横長扁平形状にするとともに、長さ方向で周長を漸増させるように変化させた場合は、未加硫ホースを長さ方向で徐々に拡径するようになるので、肉厚が長さ方向で変化することになり、長さ方向の強度変化が大きくなって耐久性を低下させやすくなる。したがって、長さ方向へ周長を漸増させることで、外観不良部の発生を抑えながら曲がり部をある程度小アールにできたとしても、耐久性が低下しやすい。
また、長さ方向で通路断面積が変化するため、流速や圧力が変化するため、流体のホースとして好ましくないことになる。
【0066】
図9は、曲がり部の扁平率を若干変更した変形例を図8と同様にして示す図であり、長半径aをより大きくし、短半径bをより小さくして、扁平率を大きくしたものである。このようにしても縦長楕円形状にした効果は同じであり、加硫成形時においてマンドレル内側アール部44による押し出しが多くなり、内側アール部24のマンドレル内側アール部44に対する密着をより強くする。このため、内側アール部24をより小アールにすることが可能になる。
【0067】
周長を同一にする限り、扁平率は任意に設定でき、扁平率を大きくすれば左右方向を薄くでき、周辺部品との関係で左右方向における配置スペースの確保が容易になり、レイアウトの自由度を大きくできる。
【0068】
なお、図9・10の例は、縦方向中心線L1を挟んで左右方向(図の左右方向)、及び横方向中心線L2を挟んで内外方向(図の上下方向)でいずれも対称になる例である。以下の、図12も同様である。
また、曲がり部20のアール半径方向断面における、非円形の縦長扁平形状は種々可能である。以下、これを曲がり部内周形状によって説明する。以下の各例において、基準内周円60並びに縦方向中心線L1及び横方向中心線L2は図8及び9と同じである。
【0069】
図10は第2実施形態であり、曲がり部内周形状を曲がり部内周形状70に代えて縦長長円形状の70Aにした例である。縦方向中心線L1上における、中心HOと内側突部72A及び外側突部74A間の寸法をa、横方向中心線L2上における、中心HOから左右の辺までの寸法をbとし、これらを曲がり部内周形状70の長半径a及び短半径bに相当させ、寸法a>寸法bとしてある。
【0070】
このようにしても、寸法aが基準内周円60の半径rよりも長い限り、同様の効果(しわ等の発生抑止)を期待できる。また、縦長長円形状を採用することにより、寸法aを長くすることが容易になる。そのうえ、マンドレルの曲がり部外周が70Aに相当し、未加硫ホースの内周が基準内周円60に相当するから、マンドレルへ未加硫ホースを装着する際に接触部が少なくなるため、抵抗が少なくなって作業性を向上させることができる。
なお、周長は曲がり部20とそれ以外の部分で同一である(以下の各例も同様)。また、a>rの条件は、少なくとも内側突部72側で充足されればよい。
【0071】
図11は、第3実施形態であり、曲がり部内周形状を三角形にした例である。(A)は曲がり部内周形状70Bを逆三角形状とした例であり、3辺(71a・71b・71c)と3頂点(73a・73b・73c)を有する二等辺三角形をなし、その1頂点73aを縦方向中心線L1上にて中心HOより内側(図の下側)へ突出させ、他の2頂点73b・73cを中心HOの上方かつ基準内周円60の外側にて縦方向中心線L1から図の左右方向へそれぞれ離して配置したものである。各頂点は基準内周円60の外側に配置され、頂点73aは内側突部72Bとなる。外側突部74Bは、水平の底辺71aにおける左右両端である頂点73b・73cとなる。このようにすると、未加硫ホース50との接触を3頂点(73a・73b・73c)からなる3点とするため、装着作業を容易にすることができる。
【0072】
図11の(B)は、同(A)と同様の略逆三角形状をなす曲がり部内周形状70Bを同(A)と同様に配置するものであるが、底辺71aをアール形状にしてある。この例では、外側突部74Bが底辺71aの中間部となるため、底辺71a全体が未加硫ホース外側アール部56(図7参照)相当部へ密着でき、引っ張りを強く受ける未加硫ホース外側アール部56の局部的な変形を抑制できる。
【0073】
なお、図11の例は、横方向中心線L2に対して内外方向(縦方向)で非対称になり、縦方向中心線L1を挟んで左右方向(横方向)で対称になる例である。
このように曲がり部のアール半径方向断面形状を縦方向で非対称にすると、内側(図の下側)又は外側(図の上側)に、周辺部材との逃げ部などの変形部を設けることなどが可能になるので、曲がり部の断面形状設計における自由度が高くなる。
【0074】
図12は、第4実施形態であり、曲がり部内周形状を4角形以上の多角形とした例である。
図12の(A)は、曲がり部内周形状70Cを縦長の略長方形とした例であり、曲がり部内周形状70Cは4辺(75a・75b・75c・75d)と4頂点(75e・75f・75g・75h)を有している。上辺75aと下辺75cを水平にし、左右の辺75bと75dをそれぞれ図の上下方向に向けて配置し互いに平行させてある。
内側突部72Cは下辺75cにおける左右の頂点75f・75gとなり、外側突部74Cは、上辺75aにおける左右の頂点75e・75hとなる。
【0075】
このようにすると、未加硫ホース50へ4点で接触することができ、未加硫ホースとの接触部を少なくすることができる。なお、曲がり部内周形状70Cを4辺形状とした場合は、長方形に限らず、例えば、上辺75aよりも下辺75cを短くした倒立台形形状としてもよい。
【0076】
図12の(B)は、6角形の曲がり部内周形状70Dとした例であり、6辺(77a・77b・77c・77d・77e・77f)と6頂点(78a・78b・78c・78d・78e・78f)を有する。短い上辺77aと下辺77dを水平に配置し、中心HOより上側で左右に対向する一対の長い辺77bと77fを下方へ向かって外開き状に傾斜して配置し、中心HOよりも下側で左右に対向する一対の長い辺77cと77eを上方へ向かって外開き状に傾斜して配置し、辺77bと77cが接続する頂点78bと、辺77fと77eが接続する頂点78eをそれぞれ、横方向中心線L2上にて、縦方向中心線L1を挟んで左右に配置してある。
【0077】
このようにすると、未加硫ホース50へ各頂点による6点で接触させることができる。しかも、曲がり部の形成に重要となる部分は、比較的接近している2頂点78c及び78dからなる内側突部72Dと、同様に比較的接近している2頂点78a及び78fからなる外側突部74Dの4点支持にすることができる。
【0078】
図12の(C)は、曲がり部内周形状70Eを同70Dと同じく6角形にしてあるが、全頂点を基準内周円60の外へ出すとともに、内側突部72Eを1頂点78dとし、外側突部74Eを対向する1頂点78aとした例である。また、上側の辺77a・77fと下側の辺77c・77dをそれぞれ傾斜させてある。
【0079】
このようにすると、未加硫ホース50へ各頂点による6点で接触することになるが、曲がり部の形成に重要となる部分は、1つの頂点78dからなる内側突部72Eと、同様に1つの頂点78aからなる外側突部74Eとなるので、アール半径方向への突出を大きくして、しわ等の発生をより少なくさせることができる。
なお、多角形の曲がり部内周形状はこれらに限らず、5角形でも、さらには7角形以上でも可能である。
【0080】
図13は、第5実施形態であり、図の上下・左右いずれの方向へも非対称の不定形で縦長非円形形状の曲がり部内周形状70Fにした例である。
この場合でも、内側突部72Fが基準内周円60より図の下方へ突出している。外側突部74Fは円弧状部79aの頂点部である。円弧状部79aと内側突部72Fをつなぐ左辺部は、直線部79bとアール部79cからなり、右辺部は直線部79dからなる。
内側突部72Fと外側突部74Fは図の上下で非対称に配置され、図の左右でもそれぞれずれている。
【0081】
このようにしても、内側突部72Fにより、しわ等の発生を防ぐことができる。但し、内側突部72Fはできるだけアール円の半径方向である、縦方向中心線L1に接近させることが好ましい。また、曲がり部内周形状70Fの形状は任意の不定形にできるが、左辺(79b・79c)及び右辺(79d)並びに円弧状部79aの各形状は、直線もしくは基準内周円60の径方向外方へ凸に湾曲する形状とすることが好ましく、径方向内方へ凹入しないようにすることが好ましい。
【0082】
また、アール半径方向断面形状を横方向で非対称にすることにより、曲がり部の側面を変形させて、周辺部材との逃げ部などを設けることなどが可能になるので、曲がり部の断面形状設計における自由度が高くなる。しかも、縦方向及び横方向それぞれを非対称にすれば、さらに自由度が高くなる。
【0083】
なお、本願発明における曲がり部の断面形状は、縦長非円形形状であればよく、縦長非円形形状としては、楕円(図8・9)、長円(図10)、多角形(図11〜12)のみならず、図13のような不定形も可能である。また、曲がり部は、アール半径方向において、少なくとも内側部分がアール中心方向へ突出していれば足り、図8における内側突部72のように、ホースの中心HOからの長さが基準内周円60の半径rよりも長く、基準内周円60よりもdだけ内側へ突出するような部分が存在すればよく、上記各実施形態以外にも種々の形状が可能である。外側突部74(74A・74B・74C・74D・74E・74F)は、基準内周円60の中に入っていてもよい。
さらに、第1ストレート部30及び第2ストレート部32の断面形状は、真円形状に限らず種々の非円形形状が可能である。
また、曲がり管は、ホースやこれよりも細いチューブ等の管状体を含み、その用途もラジエータホースに限らず種々の流体輸送に適用可能である。
【符号の説明】
【0084】
10:ホース、20:曲がり部、22:内側部分、23:外側部分、24:内側アール部、30:ストレート部、40:マンドレル、42:曲がり部、44:内側アール部、46:外側アール部、50:未加硫ホース、52:曲がり部、54:内側アール部、56:外側アール部、60:基準内周円、70:楕円(曲がり部内周形状)、180:空間、190:外観不良部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16