特許第6392008号(P6392008)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6392008インサート成形型及びインサート成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392008
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】インサート成形型及びインサート成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/12 20060101AFI20180910BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20180910BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20180910BHJP
   H01M 2/10 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   B29C33/12
   B29C45/26
   B29C45/14
   H01M2/10 Y
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-134567(P2014-134567)
(22)【出願日】2014年6月30日
(65)【公開番号】特開2016-10934(P2016-10934A)
(43)【公開日】2016年1月21日
【審査請求日】2017年5月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】オートモーティブエナジーサプライ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】とこしえ特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岡 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】松村 直則
(72)【発明者】
【氏名】上野 純一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤木 隆
(72)【発明者】
【氏名】轟木 直人
(72)【発明者】
【氏名】松本 善三
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 雅一
【審査官】 越本 秀幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−310288(JP,A)
【文献】 特開昭63−089316(JP,A)
【文献】 特開2002−124276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00−33/76
B29C 45/00−45/84
H01M 2/10
H01M 8/0271
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外装部材で収容された発電要素を有する電池本体と、前記電池本体と固定される固定部を有するスペーサと、を備えた単電池の前記固定部に溶融樹脂材料を射出成形するためのインサート成形型であって、
前記インサート成形型の一方の型は、
前記射出成型時に前記電池本体がセットされる第1の部位と、
前記射出成形時に前記スペーサがセットされる第2の部位と、
前記第1の部位及び前記第2の部位の間に形成され、前記射出成型時に前記スペーサに対向する対向面を有する凸部と、を有し、
前記対向面は、前記凸部の先端に向かうに従って前記第1の部位側に傾斜する第1の傾斜部を含み、
前記第1の傾斜部は、前記一方の型に前記電池本体及び前記スペーサをセットする際に、前記スペーサを前記第2の部位へ誘導する、
ことを特徴とするインサート成形型。
【請求項2】
外装部材で収容された発電要素を有する電池本体と、前記電池本体と固定される固定部を有するスペーサと、を備えた単電池の前記固定部に溶融樹脂材料を射出成形するためのインサート成形方法であって、
一方の型が、
前記射出成型時に前記電池本体がセットされる第1の部位と、
前記射出成形時に前記スペーサがセットされる第2の部位と、
前記第1の部位及び前記第2の部位の間に形成され、前記射出成型時に前記スペーサに対向する対向面を有する凸部と、を有し、
前記対向面は、前記凸部の先端に向かうに従って前記第1の部位側に傾斜する第1の傾斜部を含むインサート成形型を準備する第1の工程と、
前記第1の部位に前記電池本体をセットすると共に、前記第2の部位に前記スペーサをセットする工程を含む第2の工程と、
前記固定部に対応する位置にキャビティを形成するための前記インサート成形型の他方の型を、前記一方の型にセットする第3の工程と、
前記キャビティ内に樹脂部材を注入する第4の工程と、を有することを特徴とするインサート成形方法。
【請求項3】
請求項2に記載のインサート成形方法であって、
前記スペーサは、前記第1の傾斜部に対向し、前記第1の傾斜部に沿って傾斜する第2の傾斜部を有することを特徴とするインサート成形方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のインサート成形方法であって、
前記第2の工程は、前記第2の部位にセットされた前記スペーサを前記対向面に接触させる接触工程をさらに含むことを特徴とするインサート成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インサート成形型及びインサート成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電池本体の外周部とスペーサとの重畳部を包含する範囲に、弾性樹脂部がインサート成形により形成された薄型電池が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−124144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の薄型電池の弾性樹脂部を形成する際は、電池本体とスペーサとを固定した状態でそれらをインサート成形型にセットする。この際、インサート成形型に対して電池本体及びスペーサの位置がずれていた場合には、当該電池本体及びスペーサをインサート成形型に容易にセットすることができないため、成形時の作業性が低下する場合がある。また、インサート成形型に対して電池本体及びスペーサの位置がずれた状態で、当該電池本体及びスペーサをインサート成形型に強制的にセットしようとすると、当該電池本体又はスペーサが破損し、歩留まりの低下を招く場合がある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、成形時の作業性の向上を図ると共に、歩留まりの低下を抑制することができるインサート成形型及びインサート成形方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、インサート成形型の一方の型が、樹脂部材の射出成型時において電池本体がセットされる第1の部位及びスペーサがセットされる第2の部位の間に形成された凸部を備える。そして、当該凸部は樹脂部材の射出成型時にスペーサに対向する対向面を有し、当該対向面は凸部の先端に向かうに従って第1の部位側に傾斜する第1の傾斜部を含む。第1の傾斜部は、一方の型に電池本体及びスペーサをセットする際に、スペーサを第2の部位へ誘導することによって上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、インサート成形型の一方の型に単電池をセットする際、第1の傾斜部によって、当該単電池のスペーサは第2の部位にセットされるよう誘導される。これにより、インサート成形型への単電池のセットが容易となるため、成形時の作業性の向上を図ることができると共に、歩留まりの低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の実施形態におけるインサート成形型を用いて製造される二次電池を示す斜視図である。
図2図2は、二次電池の構成を示す分解斜視図である。
図3図3図2のIII-III線に沿った断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態におけるインサート成形型の下型を示す平面図である。
図5図5は、図4のV-V線に沿った断面図である。
図6図6は、本発明の実施形態におけるインサート成形方法を説明するための断面図である。
図7図7は、本発明の実施形態におけるインサート成形方法を説明するための断面図である。
図8図8は、本発明の実施形態におけるインサート成形方法を説明するための断面図である。
図9図9は、本発明の実施形態におけるインサート成形方法を説明するための断面図である。
図10図10は、本発明の実施形態におけるインサート成形方法を説明するための断面図である。
図11図11は、本発明の実施形態におけるインサート成形型及び二次電池の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0010】
図1は本実施形態におけるインサート成形型を用いて製造される二次電池を示す斜視図であり、図2は本実施形態における二次電池の構成を示す分解斜視図であり、図3図2のIII-III線に沿った断面図であり、図4は本実施形態におけるインサート成形型の下型を示す平面図である。
【0011】
本実施形態におけるインサート成形型2を用いて製造される二次電池1は、単電池10と、当該単電池の外周に設けられた弾性樹脂部13と、を備えている。単電池10は、薄型扁平状の電池本体11と、スペーサ12と、を有している。本実施形態におけるインサート成形型2は、二次電池1を構成する単電池10の外周部分に弾性樹脂部13をインサート成形(射出成形)により形成するための成形型である。
【0012】
電池本体11は、一対のラミネートフィルム製外装部材111の内部に発電要素112が収容されており、当該収容部分の外周部113において、一対の外装部材111が封止されている。図1及び図2においては外装部材111の一方のみを示し、発電要素112は図3に示す。外装部材111を構成するラミネートフィルムは、図3の引き出し断面図Aに示すように、例えば三層構造とされ、二次電池1の内側から外側に向かって順に、内側樹脂層111a、中間金属層111b及び外側樹脂層111cとすることができる。
【0013】
内側樹脂層111aを構成する材料としては、ポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン又はアイオノマー等の耐電解液性及び熱融着性に優れた樹脂フィルムを例示することができる。中間金属層111bを構成する材料としては、アルミニウム等の金属箔を例示することができる。また、外側樹脂層111cを構成する材料としては、ポリアミド系樹脂又はポリエステル系樹脂等の電気絶縁性に優れた樹脂フィルムを例示することができる。
【0014】
このように、一対の外装部材111は何れも、たとえばアルミニウム箔等からなる中間金属層111bの一方の面(二次電池1の内側面)をポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、又はアイオノマー等の樹脂でラミネートし、他方の面(二次電池1の外側面)をポリアミド系樹脂又はポリエステル系樹脂でラミネートした、樹脂−金属薄膜ラミネート材等の可撓性を有する材料で形成されている。
【0015】
一対の外装部材111が内側及び外側樹脂層111a、111cに加えて中間金属層111bを具備することにより、外装部材111自体の強度向上を図ることができる。また、外装部材111の内側樹脂層111aを、たとえばポリエチレン、変性ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、又はアイオノマー等の樹脂で構成することにより、金属製の極端子114,負極端子115との良好な融着性を確保することができる。
【0016】
なお、本発明における外装部材111は、上述した三層構造にのみ限定されず、内側又は外側樹脂層111a、111cのいずれか一層構造であってもよい。また、内側又は外側樹脂層111a、111cのいずれか一方と中間金属層111bとの二層構造であってもよい。さらに、必要に応じて四層以上の構造であってもよい。
【0017】
一対の外装部材111のそれぞれは、発電要素112が収容できるように矩形状平板を浅い椀型(皿型)に成形した形状とされ、内部に発電要素112と電解液を入れたのち、それぞれの外周部113を重ね合わせ、当該外周部113の全周が熱融着や接着剤により接合されている。
【0018】
本例の二次電池1は、リチウムイオン二次電池であり、図3に示すように、正極板112aと負極板112bとの間にセパレータ112cを積層して構成された発電要素112を有している。本例の発電要素112は、3枚の正極板112aと、5枚のセパレータ112cと、3枚の負極板112bと、特に図示しない電解質とから構成されている。なお、本発明に係る二次電池1はリチウムイオン二次電池に限定されず、例えば、ニッケル−カドミウム電池等のアルカリ蓄電池や鉛蓄電池等の他の電池であってもよい。
【0019】
発電要素112を構成する正極板112aは、正極端子114まで伸びている正極側集電体112dと、正極側集電体112dの一部の両主面にそれぞれ形成された正極層112e,112fとを有する。なお、本例では正極板112aと正極側集電体112dとが一枚の導電体で形成されているが、正極板112aと正極側集電体112dとを別の部材で構成し、これらを接合してもよい。
【0020】
正極板112aの正極側集電体112dは、たとえばアルミニウム箔、アルミニウム合金箔、銅箔、又は、ニッケル箔等の電気化学的に安定した金属箔から構成されている。また正極板112aの正極層112e,112fは、たとえば、ニッケル酸リチウム(LiNiO2)、マンガン酸リチウム(LiMnO2)又はコバルト酸リチウム(LiCoO2)等のリチウム複合酸化物や、カルコゲン(S、Se、Te)化物等の正極活物質と、カーボンブラック等の導電剤と、ポリ四フッ化エチレンの水性ディスパージョン等の接着剤と、溶剤とを混合したものを、正極集電112dの両主面に塗布し、乾燥及び圧延することにより形成されている。
【0021】
発電要素112を構成する負極板112bは、負極端子115まで伸びている負極側集電体112gと、当該負極側集電体112gの一部の両主面にそれぞれ形成された負極層112h,112iとを有する。なお、本例では負極板112bと負極側集電体112gとが一枚の導電体で形成されているが、負極板112bと負極側集電体112gとを別の部材で構成し、これらを接合してもよい。
【0022】
負極板112bの負極側集電体112gは、たとえばニッケル箔、銅箔、ステンレス箔、又は、鉄箔等の電気化学的に安定した金属箔から構成されている。また、負極板112bの負極層112h,112iは、たとえば非晶質炭素、難黒鉛化炭素、易黒鉛化炭素、又は、黒鉛等のような上記の正極活物質のリチウムイオンを吸蔵及び放出する負極活物質に、有機物焼成体の前駆体材料としてのスチレンブタジエンゴム樹脂粉末の水性ディスパージョンを混合し、乾燥させた後に粉砕することで、炭素粒子表面に炭化したスチレンブタジエンゴムを担持させたものを主材料とし、これにアクリル樹脂エマルジョン等の結着剤をさらに混合し、この混合物を負極集電112gの両主面に塗布し、乾燥及び圧延させることにより形成されている。
【0023】
正極板112aと負極板112bとの間に積層されるセパレータ112cは、正極板112aと負極板112bとの短絡を防止するものであり、電解質を保持する機能を備えてもよい。セパレータ112cは、たとえばポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン等から構成される微多孔性膜であり、過電流が流れると、その発熱によって層の空孔が閉塞され電流を遮断する機能をも有する。ただし、セパレータ112cは、ポリオレフィン等の単層膜にのみ限られず、ポリエチレン膜を挟んでポリプロピレン膜を積層した三層構造や、ポリオレフィン微多孔膜と有機不織布等を積層したものも用いることができる。このようにセパレータ112cを複層化することで、過電流の防止機能、電解質保持機能及びセパレータ112cの形状維持(剛性向上)機能等の諸機能を付与することができる。
【0024】
以上の発電要素112は、セパレータ112cを介して正極板112aと負極板112bとが交互に積層されてなる。そして、3枚の正極板112aは、正極側集電体112dを介して、金属箔製の正極端子114にそれぞれ接続される一方で、3枚の負極板112bは、負極側集電体112gを介して、同様に金属箔製の負極端子115にそれぞれ接続されている。
【0025】
図1に示すように、発電要素112の正極板112a及び負極板112bのそれぞれから外装部材111の外部へ正極端子114と負極端子115とが導出されている。本例の二次電池1では、外装部材111の一辺(図2の手前の短辺)の外周部113aから正極端子114と負極端子115とが並んで導出されている。正極端子114及び負極端子115は正極タブ114及び負極タブ115とも称される。
【0026】
本例の二次電池1は、外装部材111の一つの辺の外周部から正極端子114と負極端子115とが並んで導出されているものである。そのため、図3には発電要素112の正極板112aから正極端子114に至る断面図を図示し、発電要素112の負極板112bから負極端子115に至る断面を省略するが、負極板112b及び負極端子115も図3の断面図に示す正極板112a及び正極端子114と同様の構造とされている。ただし、発電要素112の端部から正極端子114及び負極端子115に至る間の正極板112a(正極側集電体112d)及び負極板112b(負極側集電体112g)は、平面視において互いに接触することがないように半分以下に切り欠かれている。
【0027】
電池本体11は平面視において長方形とされているので、一対の外装部材111を接合して内部を封止する外周部113を、図2に示すように外周部113a〜113dと称する。なお、電池本体11の外形形状は長方形にのみ限定されず、正方形や他の多角形に形成することも可能である。また、正極端子114と負極端子115の導出位置は、本例のように一つの外周部113aから導出させること以外にも、対向する外周部113aと113bや113cと113dのそれぞれから導出させてもよい。また、長辺の外周部113c,113dから導出させてもよい。
【0028】
以上のように構成された電池本体11は単体で使用に供することもできるが、他の一または複数の二次電池と接続して組み合わせ、所望の出力、容量の二次電池(以下、電池モジュールともいう)として使用に供することもできる。さらに、こうした電池モジュールを複数接続して組み合わせ(以下、組電池ともいう)、この組電池を電気自動車やハイブリッド自動車などの車両に搭載して、走行駆動用電源として用いることもできる。
【0029】
複数の電池本体11を接続して電池モジュールを構成する場合には、複数の電池本体11の主面同士を積み重ねて電池ケース内に収容することが行われる。この場合に、電池本体11の外周部113aから導出された正極端子114及び負極端子115と、この電池本体11に積層された電池本体11の外周部113aから導出された正極端子114及び負極端子115との絶縁性を確保するとともに、これら正極端子114及び負極端子115を直列及び/又は並列に接続するためのバスバを配置したり、電圧検出用センサのコネクタを配置したりするために、絶縁性材料から構成されたスペーサ12が用いられる。
【0030】
本例のスペーサ12は、図1及び図2に示すように、電池本体11同士を積層した際に、当該電池本体11の互いの外周部113a,113aの間に配置され、電池本体11を、電池モジュールのケースや自動車の車体など所定の設置位置に対して固定するための固定用貫通孔121を有している。
【0031】
また、図2に示すように、スペーサ12における固定用貫通孔121の近傍には、突起部120が形成されている。突起部120は、スペーサ12の両端であって固定用貫通孔121の周囲の任意箇所に形成されている。スペーサ12が取り付けられる電池本体11の外周部113には、図2に示すように、スペーサ12の突起部120と対応する位置に貫通孔1131が形成されており、当該スペーサ12の突起部120が貫通孔1131に挿入した状態で当該突起部120の先端にカシメ処理が施される。電池本体11の外周部113a、113bに沿った方向における貫通孔1131の径は、突起部120の径と略等しくなっている。一方、電池本体11に対してスペーサ12が接近又は離反する方向(外周部113a、113bに対して垂直方向)における貫通孔1131の径は、突起部120の径よりも僅かに大きくなっている(図6参照)。これにより、スペーサ12の突起部120が貫通孔1131に挿入されると、外周部113a、113bに沿った方向におけるスペーサ12の電池本体11に対する位置が規定されると共に、当該スペーサ12は電池本体11に対して僅かに接近又は離反可能な状態となる。
【0032】
スペーサ12は、ポリブチレンテレフタレート(PBT)やポリプロピレン(PP)などの剛性を有する絶縁性樹脂材料から構成され、電池本体11の外周部113aの長さ以上の長さを有する長尺状に形成されている。そして、その両端のそれぞれに鞘状の通孔からなる固定用貫通孔121が形成されている。なお、スペーサ12の長さは装着される外周部113a以上の長さとすることが望ましいが、これは外力の印加に対してこれをスペーサ12全体で受け止め、電池本体11に対して局所的な応力が作用しないようにする趣旨である。したがって、スペーサ12の長さは装着される外周部113aの長さに極力近い寸法であればよい。
【0033】
また、上述したPBTやPP製のスペーサ12の機械的強度(折り曲げ強度又は座屈強度などの剛性)は、電池本体11に収容された発電要素112を構成する電極板(上述した正極板112a及び負極板112b)の機械的強度より大きくすることが望ましい。車載された二次電池1等に対しスペーサ12に著しく過大な外力が作用すると、スペーサ12と発電要素112とが接触して両者ともに潰れようとする際に、スペーサ12の方をより潰れ難くすることで二次電池1の保持安定性を確保するためである。
【0034】
本例の二次電池1では、図2に示すように、電池本体11の図中下側の外周部113においてスペーサ12が取り付けられていない辺113c、113d(長辺側の外周部)および当該辺113c、113dの端部に位置する角部を覆うように弾性樹脂部13が設けられている。この弾性樹脂部13は、弾性樹脂のインサート成形により形成されている。弾性樹脂部13を構成する材料としては、加硫ゴム、熱硬化性樹脂エラストマ、熱可塑性樹脂エラストマ、ポリアミド系樹脂(ホットメルトグレード)などの弾性樹脂材料を例示することができる。なお、外周部113の全周に弾性樹脂部13を形成してもよい。
【0035】
図2に示す範囲H1に形成される弾性樹脂部13は、図1及び図2に示すように、電池本体11の外周部113aにおいてスペーサ12が固定される固定部12a(図7参照)に対応する位置に設けられている。そして、スペーサ12の固定用貫通孔121に印加された車両振動のような外力が、スペーサ12から電池本体11の外周部113aに伝達する際に、弾性樹脂部13自体に緩衝力を発生させ、電池本体11に伝達する外力を軽減することができる。
【0036】
なお、範囲H1に形成される弾性樹脂部13の硬度は、電池本体11の外装部材111を構成する外側樹脂層111cの硬度より小さいことが望ましい。この場合には、スペーサ12に印加された外力を当該弾性樹脂部13が効果的に吸収することができる。弾性樹脂部13の硬度の設定は、当該弾性樹脂部13を構成する樹脂材料の種類やグレード等を適宜選択することによって行うことができる。
【0037】
また、本実施形態の二次電池1では、電池本体11の図2中上側の外周部113に、弾性樹脂部13と同様の形状及び機能を有する弾性樹脂部14が設けられている。この弾性樹脂部14は、上述の弾性樹脂部13と同様の材料から構成されており、カシメ処理が施された突起部120はこの弾性樹脂部14によって被覆されている。なお、弾性樹脂部13と弾性樹脂部14とを、単電池10の外周部(図2の113c、113dに相当する部分)で繋がり当該外周部を覆う一体形状として形成してもよい。
【0038】
本実施形態におけるインサート成形型2は、下型21と、当該下型21と組み合わさることによって所定のキャビティが形成される上型22と、から構成されている。
【0039】
インサート成形型2の下型21は、図4に示すように、射出成形時に単電池10の電池本体11がセットされる第1の部位211と、射出成形時に単電池10のスペーサ12がセットされる第2の部位212と、を有している。第1の部位211は電池本体11に対応する三次元形状(本例では平面視において長方形状)となっており、第2の部位212はスペーサ12に対応する三次元形状となっている。本実施形態の二次電池1は、電池本体11において対向する二辺(図2の113a、113bに相当する辺)にスペーサ12が取り付けられている。これに従い、インサート成形型2の下型21における第2の部位212も、第1の部位211において対向する二辺211a、211bに沿ってそれぞれ配置されている。
【0040】
また、第1の部位211の長辺211cの外側には、成形する弾性樹脂部13の形状に対応する形状のキャビティを形成するための凹部213が形成されている。また、第1の部位211の長辺211cの略中央部には、断面半円形状の溝部213bが形成されている。第1の部位211の長辺211dの外側にも同様に、凹部213及び溝部213bが形成されている。特に図示しないが、インサート成形型2の上型22にも、下型21の溝部213bに対応する断面半円形状の溝部が形成されており、これらの溝部によって、成形時に溶融樹脂部材を凹部213に注入するためのスプールが構成される。
【0041】
第2の部位212には、スペーサ12の固定用貫通孔121に対応する位置にロケートピン214が設けられている。このロケートピン214は、図5に示すように、スペーサ12の固定用貫通孔121に挿入可能な径を有しており、弾性樹脂部13の成形時には、当該ロケートピン214にスペーサ12の固定用貫通孔121が挿入されることにより、下型21上での単電池10の凡その位置が規定される。本実施形態では、電池本体11に固定される2つのスペーサ12が、2つの固定用貫通孔121をそれぞれ有しているため、合計4つのロケートピン214がインサート成形型2の下型21に設けられている。
【0042】
本実施形態におけるインサート成形型2の下型21には、成形時に第2の部位212にセットされたスペーサ12を、第1の部位211側に向かって押圧するための押圧シリンダ215が設けられている。この押圧シリンダ215は、例えば、エアシリンダ、油圧シリンダ、又はモータによる駆動機構を有しており、当該機構によってロッド部215aが第1の部位211側に向かって移動することによりスペーサ12は押圧される。本実施形態における押圧シリンダ215は、図4に示すように、ロケートピン214と対応する位置に合計4つ配置されているが、押圧シリンダ215の数及び配置は特にこれに限定されない。例えば、第2の部位212の略中央部に対応する位置に押圧シリンダ215が配置されていてもよい。
【0043】
また、本実施形態におけるインサート成形型2の下型21には、第1の部位211と第2の部位212との間に凸部216が形成されている。本実施形態の凸部216は、図4に示すように、第1の部位211の短辺211a、211bの両端部と対応する位置に合計4か所形成されている。なお、例えば、第1の部位211の短辺211a、211bの略中央部と対応する位置にそれぞれ凸部216が形成されていてもよく、短辺211a、211bの全域と対応するように凸部216が形成されていてもよい。
【0044】
凸部216の断面形状は、図5に示すように、第1の部位211と第2の部位212との間において、下型21にセットされた単電池10の外周部113に向かって突出するように形成されている。この凸部216は、成形時においてスペーサ12の電池本体11側の側面123に対向する対向面216aを有している。この対向面216aは、下型21に対して鉛直方向に形成された鉛直部216bと、当該鉛直部216bの上方に形成された傾斜部216cと、を含んでいる。
【0045】
鉛直部216bは、成形時においてスペーサ12の電池本体11側の側面123と接触する。なお、本実施形態では、図5に示すように、鉛直部216bに沿って凹部213(図2の範囲H1を形成する部分)が設けられている。
【0046】
傾斜部216cは、凸部216の先端部216dに向かうに従って第1の部位211側に傾斜している。本実施形態における傾斜部216cは平面状であるが、特にこれに限定されない。例えば、傾斜部216cが曲面状であってもよく、平面状の部分と曲面状の部分とが混在していてもよい。本例における傾斜部216cが、本発明の第1の傾斜部の一例に相当する。
【0047】
凸部216の先端部216dは、成形時において単電池10の外周部113に対向する。なお、凸部216の高さは、特に限定されないが、成形時における単電池10の外周部113の位置と同等の高さであることが成形性向上の観点から好ましい。
【0048】
インサート成形型2の上型22は、詳細は特に図示しないが、下型21と同様に、射出成形時に単電池10の電池本体11と対応する部分(下型21における第1の部位211に相当する部分)及びスペーサ12に対応する部分(下型21における第2の部位212に相当する部分)を有している。また、上型22には、弾性樹脂部14を形成するための凹部213aが形成されている(図10参照)。上型22には、上述したように、下型21に形成された溝部213bに対応する位置に溝部が形成されており、上型22及び下型21の当該溝部によって、凹部213aに溶融樹脂が注入するためのスプールが構成される。
【0049】
次に、本実施形態における二次電池1の製造方法について説明する。図6図10は本実施形態におけるインサート成形方法を説明するための断面図である。
【0050】
最初にラミネートフィルム製外装部材111の内部に発電要素112を収容して電解液を充填し、外装部材111の外周部113を封止する。これにより電池本体11を得る。次いで、図6に示すように、突起部120を有するスペーサ12を用意し、当該突起部120を外装部材111の外周部113に形成された貫通孔1131に挿入する。続いて、図7に示すように、電池本体11及びスペーサ12を支持台30に載置した状態で、所定温度に加熱された溶着チップ31を突起部120の先端に押し当てることにより、当該突起部120の先端にカシメ処理を施す。このカシメ処理により、二次電池1の電池本体11とスペーサ12とが仮固定された単電池10を得る。
【0051】
続いて、図4に示すインサート成形型2の下型21を準備し(第1の工程)、当該下型21に単電池10をセットする。具体的には、第1の部位211に単電池10の電池本体11をセットすると共に、第2の部位212に単電池10のスペーサ12をセットし、スペーサ12の固定用貫通孔121に下型21のロケートピン214が挿入されるようにする(第2の工程)。この際、図8に示すように、貫通孔1131の径が突起部120の径よりも僅かに大きいことにより、電池本体11に対して接近又は離反する方向にスペーサ12は可動な状態となっている。このため、単電池10のセット時にスペーサ12の角部124が凸部216の傾斜部216cに接触した場合には、当該スペーサ12は、傾斜部216cに沿ってスライドしながら電池本体11から僅かに離反する(図8中の矢印参照)。
【0052】
次いで、図9に示すように、押圧シリンダ215のロット部215aが単電池10の電池本体11側に向かって移動する。これにより、単電池10のスペーサ12は、電池本体11側に向かって僅かに移動する。そして、当該スペーサ12の側面123が凸部216の鉛直部216bに接触し(接触工程)、インサート成形型2の下型21に対するスペーサ12及び電池本体11の位置が厳密に規定される。下型21に設けられた4つの押圧シリンダ215が同様に作動することにより、4つの凸部216の鉛直部216bにスペーサ12の側面123がそれぞれ接触して単電池10の位置が規定される。
【0053】
続いて、インサート成形型2の上型22を下型21にセットし、所定の押圧力で押圧して型締めする(図10参照)。これにより、弾性樹脂部13を形成するためのキャビティC1が形成されると共に、弾性樹脂部14を形成するためのキャビティC2が形成される(第3の工程)。
【0054】
次いで、溶融した樹脂材料をインサート成形型2のスプールからキャビティC1、C2に注入する(第4の工程)。そして、当該樹脂材料が冷却した後、インサート成形型2から電池本体11及びスペーサ12を離型することによって、二次電池1を得ることができる。弾性樹脂部14は、図10に示すように、突起部120を覆うように形成されると共に、貫通孔1131内にも形成される。この弾性樹脂部14及び弾性樹脂部13によって、電池本体11とスペーサ12とは互いに固定される。
【0055】
次に、本実施形態におけるインサート成形型2及び当該インサート成形型2を用いたインサート成形方法の作用について説明する。
【0056】
本実施形態では、インサート成形型2の下型21における第1の部位211と第2の部位212との間に凸部216が形成されている。そして、凸部の対向面216aは、当該凸部216の先端部216dに向かうに従って第1の部位211側に傾斜する傾斜部216cを含んでいる。
【0057】
このため、単電池10をインサート成形型2の下型21にセットする際、当該単電池10がずれていた場合であっても、スペーサ12の角部124は凸部216の傾斜部216cに接触すると共に、当該傾斜部216cに沿ってスペーサ12がスライドすることにより、スペーサ12は第2の部位212に誘導される(図8中の矢印参照)。これにより、当該単電池10の下型21へのセットが容易となるため、インサート成形時の作業性の向上を図ることができる。また、インサート成形型2の下型21に対して単電池10がずれた状態のまま、当該単電池が下型21及び上型22の間に強制的にセットされることを防ぐことができるため、単電池10又はスペーサ12の破損及び歩留まりの低下を抑制することができる。
【0058】
また、本実施形態では、インサート成形型2の下型21に単電池10がセットされた後、当該単電池10のスペーサ12を押圧シリンダ215が押圧し、スペーサ12の側面123を凸部216の対向面216aにおける鉛直部216bに接触させる。これにより、インサート成形型2の下型21にセットされる単電池10の位置の精度向上を図ることができる。
【0059】
なお、以上に説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0060】
例えば、図11に示すように、インサート成形型2に形成された凸部216の対向面216aが傾斜部216cのみを有していると共に、スペーサ12の側面123が凸部216の傾斜部216cに沿って傾斜する傾斜部123aを有していてもよい。本例における傾斜部123aが、本発明の第2の傾斜部の一例に相当する。
【0061】
この場合においても、単電池10をインサート成形型2の下型21にセットする際の作業性の向上を図ることができると共に、単電池10又はスペーサ12の破損及び歩留まりの低下を抑制することができる。また、押圧シリンダ215がスペーサ12を押圧してスペーサ12の傾斜部123aを凸部216の傾斜部216cに接触させることにより、インサート成形型2の下型21にセットされる単電池10の位置の精度向上を図ることができる。
【符号の説明】
【0062】
1・・・二次電池
10・・・単電池
11・・・電池本体
111・・・外装部材
112・・・発電要素
113・・・外周部
12・・・スペーサ
12a・・・固定部
120・・・突起部
121・・・固定用貫通孔
123・・・側面
123a・・・傾斜部
13、14・・・弾性樹脂部
2・・・インサート成形型
21・・・下型
211・・・第1の部位
212・・・第2の部位1
213、213a・・・凹部
214・・・ロケートピン
215・・・押圧シリンダ
215a・・・ロッド
216・・・凸部
216a・・・対向面
216b・・・鉛直部
216c・・・傾斜部
216d・・・先端部
22・・・上型
C1、C2・・・キャビティ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11