特許第6392020号(P6392020)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392020
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】ボルト組立体及びその浸炭方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 8/20 20060101AFI20180910BHJP
   F16C 3/22 20060101ALI20180910BHJP
   F02B 75/04 20060101ALI20180910BHJP
   F02B 75/32 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   C23C8/20
   F16C3/22
   F02B75/04
   F02B75/32 A
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-155638(P2014-155638)
(22)【出願日】2014年7月31日
(65)【公開番号】特開2016-33234(P2016-33234A)
(43)【公開日】2016年3月10日
【審査請求日】2017年7月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000144485
【氏名又は名称】株式会社サンノハシ
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(72)【発明者】
【氏名】田辺 孝司
(72)【発明者】
【氏名】大熊 悟
(72)【発明者】
【氏名】及川 豊
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−295022(JP,A)
【文献】 実開平01−087153(JP,U)
【文献】 特開2005−290412(JP,A)
【文献】 特開2007−170452(JP,A)
【文献】 特開2006−046125(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0060705(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 8/00 − 12/00
C21D 1/00
C21D 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定ボルトにより固定される第1分割部材と第2分割部材とを有するボルト組立体の表面に浸炭処理を施す浸炭工程を有するボルト組立体の浸炭方法において、
上記第1分割部材と第2分割部材には、上記固定ボルトの軸部が挿通するボルト孔が貫通形成され、
一方の第1分割部材には、上記固定ボルトの頭部が着座する平坦な座面が設けられるとともに、他方の第2分割部材のボルト孔の内周には、上記固定ボルトの軸部の外周に形成された雄ねじ部に螺合する雌ねじ部が形成され、
かつ、上記第1分割部材には、上記ボルト孔の周囲に、上記座面からボルト孔へ向けて縮径するように円錐形状に傾斜もしくは湾曲するテーパ面が形成され、
上記浸炭工程では、上記固定ボルトに代えて浸炭用治具を用いて上記第1分割部材と第2分割部材とを固定した状態で浸炭処理を行い、
上記浸炭用治具は、上記座面にも浸炭処理が施されるように、上記座面に当接することなく上記ボルト孔を塞ぐように構成されていることを特徴とするボルト組立体の浸炭方法。
【請求項2】
上記浸炭用治具は、上記ボルト孔を挿通する軸部と、この軸部の一端に設けられ、上記座面に当接することなくテーパ面に着座するように、上記テーパ面に対応して傾斜する傾斜面部と、を有することを特徴とする請求項1に記載のボルト組立体の浸炭方法。
【請求項3】
上記傾斜面部は、上記ボルト孔寄りの位置で上記テーパ面に着座するように、上記座面に対する傾斜角度がテーパ面よりも大きく設定されていることを特徴とする請求項2に記載のボルト組立体の浸炭方法。
【請求項4】
上記傾斜面部は、上記座面寄りの位置で上記テーパ面に着座するように、上記座面に対する傾斜角度がテーパ面よりも小さく設定されていることを特徴とする請求項2に記載のボルト組立体の浸炭方法。
【請求項5】
上記ボルト組立体が、複リンク式ピストン−クランク機構に用いられ、クランクピンに回転可能に取り付けられるロアーリンクであり、
上記複リンク式ピストン−クランク機構は、
上記ロアーリンクとピストンとを連結するアッパーリンクと、
機関本体に回転可能に支持されるコントロールシャフトと、
このコントロールシャフトと上記ロアーリンクとを連結するコントロールリンクと、を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のボルト組立体の浸炭方法。
【請求項6】
固定ボルトにより固定される第1分割部材と第2分割部材とを有するボルト組立体において、
上記第1分割部材と第2分割部材には、上記固定ボルトの軸部が挿通するボルト孔が貫通形成され、
一方の第1分割部材には、上記固定ボルトの頭部が着座する平坦な座面が設けられる一方、他方の第2分割部材のボルト孔の内周には、上記固定ボルトの軸部の外周に形成された雄ねじ部が螺合する雌ねじ部が形成され、
かつ、上記第1分割部材には、上記ボルト孔の周囲に、上記座面からボルト孔へ向けて縮径するように円錐形状に傾斜もしくは湾曲するテーパ面が形成され、
上記ボルト孔を除き、上記座面を含めた第1分割部材の表面に、浸炭処理が施された浸炭層が形成されていることを特徴とするボルト組立体。
【請求項7】
上記ボルト組立体が、複リンク式ピストン−クランク機構に用いられ、クランクピンに回転可能に取り付けられるロアーリンクであり、
上記複リンク式ピストン−クランク機構は、
上記ロアーリンクとピストンとを連結するアッパーリンクと、
機関本体に回転可能に支持されるコントロールシャフトと、
このコントロールシャフトと上記ロアーリンクとを連結するコントロールリンクと、を有することを特徴とする請求項6に記載のボルト組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一対の第1分割部材と第2分割部材とを固定ボルトにより固定したボルト組立体に関し、特に、このボルト組立体の表面に浸炭処理を施す技術に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の複リンク式ピストン−クランク機構は、特許文献1に記載されているように、クランクシャフトのクランピンに回転可能に取り付けられるロアーリンクと、このロアーリンクとピストンとを連結するアッパーリンクと、機関本体に回転可能に支持されるコントロールシャフトと、このコントロールシャフトと上記ロアーリンクとを連結するコントロールリンクと、を有している。
【0003】
ロアーリンクは、クランクピンに後から組付可能なように、一対の第1分割部材と第2分割部材とをクランクピンを挟んで固定ボルトにより締結・固定するボルト組立体として構成されている。
【0004】
この種のボルト組立体では、一般的に、一方の第1分割部材に固定ボルトの頭部が着座する座面が設けられ、他方の第2分割部材のボルト孔には、固定ボルトの軸部の外周に形成された雄ねじ部に螺合する雌ねじ部が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−67758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ボルト組立体としてのロアーリンクには、内燃機関の運転中に燃焼荷重や慣性荷重が繰り返し作用するために、疲労強度や座面強度を確保するために、その表面に炭素を添加する浸炭処理(その後の焼き入れ、焼き戻し工程も含む)を行なうことが望ましい。浸炭処理が施された浸炭層では、その表面硬さが向上して、疲労強度が向上するとともに、固定ボルトの頭部が着座する第1分割部材の座面では、その座屈強度が向上する。
【0007】
一方、第2分割部材のボルト孔の内周に形成された雌ねじ部に浸炭処理が施されると、ねじ噛み合い部分のピッチの変形を招いたり、硬度の増加に伴い靱性が低下することで、ねじ噛み合い部分の耐久性や信頼性が低下することが懸念される。従って、雌ねじ部が形成されたボルト孔には、浸炭処理を施さない、つまり防炭処理を行なうことが望ましい。
【0008】
このような防炭処理として、予め固定ボルトにより一対の分割部材を締結・固定し、この固定ボルトによりボルト孔を塞いだ状態で浸炭処理を行なうことで、ボルト孔を防炭することが考えられる。
【0009】
しかしながら、この場合には、固定ボルトの頭部が第1分割部材の座面に着座した状態で浸炭処理が行なわれることとなるために、座面に浸炭のガスが入らず、浸炭処理が行なわれない。このため、本来の目的である浸炭処理による座面強度の向上効果が得られない。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、ねじ噛み合い部分を有するボルト孔の浸炭を防止して、ねじ噛み合い部分のピッチの変形や硬度の増加に伴う靱性の低下を抑制しつつ、固定ボルトの頭部が着座する第1分割部材の座面には浸炭処理を施して、座面強度を向上することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、固定ボルトにより固定される第1分割部材と第2分割部材とを有するボルト組立体についてのものであり、特に、このボルト組立体の表面に浸炭処理を施す技術に関する。上記第1分割部材と第2分割部材には、上記固定ボルトの軸部が挿通するボルト孔が貫通形成される。一方の第1分割部材には、上記固定ボルトの頭部が着座する平坦な座面が設けられるとともに、他方の第2分割部材のボルト孔の内周には、上記固定ボルトの軸部の外周に形成された雄ねじ部に螺合する雌ねじ部が形成されている。
【0012】
また、上記第1分割部材には、上記ボルト孔の周囲に、上記座面からボルト孔へ向けて縮径するように円錐形状に傾斜もしくは湾曲するテーパ面が形成され、上記浸炭工程では、上記固定ボルトに代えて浸炭用治具を用いて上記第1分割部材と第2分割部材とを固定した状態で浸炭処理が行なわれる。そして、上記浸炭用治具は、上記座面にも浸炭処理が施されるように、上記座面に当接することなく上記ボルト孔を塞ぐように構成されている。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、浸炭工程では、浸炭用治具が座面に当接することなくボルト孔を塞ぐように構成されているために、ねじ噛み合い部分を有するボルト孔の浸炭を防止して、ねじ噛み合い部分のピッチの変形や硬度の増加に伴う靱性の低下を抑制しつつ、固定ボルトの頭部が着座することとなる第1分割部材の座面には浸炭処理を施して、座面強度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1実施例に係るボルト組立体の一例としてのロアーリンクを有する内燃機関の複リンク式ピストン−クランク機構を示す断面図。
図2図1のロアーリンクの近傍を拡大して示す断面図。
図3図2のロアーリンクの固定ボルトの締結部分を拡大して示す断面図。
図4】浸炭工程において浸炭用治具をボルト孔に嵌合した態様を示す断面図。
図5】本発明の第2実施例に係る浸炭用治具の着座部分を示す説明図。
図6】本発明の第3実施例に係る浸炭用治具の着座部分を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図示実施例により本発明を説明する。図1は、本発明に係るリンク機構の一例としての内燃機関の複リンク式ピストン−クランク機構を示す断面図である。
【0016】
この複リンク式ピストン−クランク機構は、内燃機関のピストン11とクランクシャフト12のクランクピン13とを複数のリンク部品で連結するものであって、基本的な構造は上記の特開2012−67758等にも記載のように公知であるので、ここでは簡単に説明する。
【0017】
この複リンク式ピストン−クランク機構は、クランクピン13に回転可能に取り付けられるロアーリンク14と、このロアーリンク14とピストン11とを連結するアッパーリンク15と、機関本体としてのシリンダーブロック10に回転可能に支持されるコントロールシャフト16と、このコントロールシャフト16とロアーリンク14とを連結するコントロールリンク17と、を有している。
【0018】
ピストン11とアッパーリンク15の上端とはピストンピン18により相対回転可能に連結されており、アッパーリンク15の下端とロアーリンク14とは第1連結ピン19により相対回転可能に連結されており、コントロールリンク17の上端とロアーリンク14とは第2連結ピン20により相対回転可能に連結されており、コントロールリンク17の下端はコントロールシャフト16に偏心して設けられた偏心軸部16Aに相対回転可能に取り付けられている。
【0019】
また、図示していないが、コントロールシャフト16の回転位置を変更可能なモータや油圧アクチュエータ等のアクチュエータを設け、このアクチュエータによりコントロールシャフト16の回転位置を変更することによって、ピストン11の上死点位置及び下死点位置を含むピストン11のストローク特性を変化させ、ひいては機関圧縮比を変更することが可能である。アクチュエータの動作は図示せぬ制御部によって機関運転状態に応じて制御される。
【0020】
図2は、本発明の第1実施例に係るボルト組立体としてのロアーリンク14を示す断面図である。ロアーリンク14は、クランクシャフト12のクランクピン13に後から組み付けることができるように、クランクピン13を挟んで一対の固定ボルト21により締結・固定される一対の第1分割部材22と第2分割部材23とを有するボルト組立体として構成されており、各分割部材22,23には、クランクピン13を回転可能に支持する軸受面24の半分がそれぞれ半割形状に形成されている。
【0021】
また、ロアーリンク14は、第1連結ピン19が回転可能に貫通するアッパーリンク15のピンボス部25を両側から挟み込むように、第1連結ピン19が圧入により固定される薄板状の第1ピンボス部26が二股形状に形成されている。なお、図2の断面図では一方の第1ピンボス部26のみが描かれている。この二股形状の第1ピンボス部26の間にアッパーリンク15のピンボス部25を配置した上で、第1連結ピン19を、ロアーリンク14の第1ピンボス部26に圧入により固定しつつ、アッパーリンク15のピンボス部25に回転可能に貫通させることで、アッパーリンク15とロアーリンク14とが相対回転可能に連結される。
【0022】
同様に、第2連結ピン20が回転可能に貫通するコントロールリンク17のピンボス部27を両側から挟み込むように、第2連結ピン20が圧入により固定される薄板状の第2ピンボス部28が二股形状に形成されている。なお、図2の断面図では一方の第2ピンボス部28のみが描かれている。この二股形状の第2ピンボス部28の間にコントロールリンク17のピンボス部27を配置した上で、第2連結ピン20を、一対の第2ピンボス部28に圧入により固定しつつ、コントロールリンク17のピンボス部27に回転可能に貫通させることで、コントロールリンク17とロアーリンク14とが相対回転可能に連結される。
【0023】
なお、一方の分割部材に荷重や応力が集中することのないように、第1分割部材22と第2分割部材23のうち、一方の第2分割部材23に第1ピンボス部26、他方の第1分割部材22に第2ピンボス部28が設けられている。
【0024】
次に、固定ボルト21による締結部分の構造について、図2及び図3を参照して詳細に説明する。なお、固定ボルト21は2本あるが、基本的に両者の構造は同じであるために、ここではアッパーリンク15寄り(図2の右側)の固定ボルト21の固定構造を例にとって説明する。ここで、本明細書においては便宜上、一対の分割部材22,23のうち、固定ボルト21の頭部33が着座する方を「第1分割部材」と呼び、固定ボルト21の軸部31の雄ねじ部32が螺合する方を「第2分割部材」と呼んでいる。従って、他方のコントロールリンク17側の固定ボルト21の締結構造に着目した場合には、以下の説明とは第1分割部材と第2分割部材の関係が逆になる。
【0025】
固定ボルト21は、外周に雄ねじ部32が形成された軸部31と、この軸部31の一端に設けられ、軸部31よりも大径な頭部33と、を有している。第1分割部材22には、固定ボルト21の頭部33の平坦な裏面34が着座する平坦な座面35が設けられるとともに、固定ボルト21の軸部31が貫通する第1ボルト孔36が貫通形成されている。第1ボルト孔36は、一端が座面35に開口し、他端が第1分割部材22と第2分割部材23の合わせ面37に開口している。
【0026】
第2分割部材23には、固定ボルト21の軸部31が挿通する第2ボルト孔38が貫通形成されている。この第2ボルト孔38の内周には、固定ボルト21の軸部31の外周に形成された雄ねじ部32に螺合する雌ねじ部39が形成されている。第2ボルト孔38の一端は両分割部材22,23の合わせ面37に開口し、他端は二股形状をなす一対の第1ピンボス部26同士を繋ぐ底面40に開口している。
【0027】
つまり、固定ボルト21は、燃焼荷重や慣性荷重等を勘案して、二股形状のピンボス部26,28側が軸部31の先端側となるように締結される構造となっており、この関係で、合わせ面37から底面40までの距離が比較的短くなっている。従って、ねじ締結部分の強度・剛性を確保するように、第2ボルト孔38がピンボス部26(28)の底面40にまで貫通する構造とし、雌ねじ部39が形成される第2ボルト孔38の長さを十分に確保するようにしている。
【0028】
そして、図3に示すように、第1分割部材22には、第1ボルト孔36の周囲に、平坦面をなす座面35から第1ボルト孔36へ向けて縮径するように円錐形状に傾斜あるいは湾曲するテーパ面41が形成されている。
【0029】
浸炭工程では、例えば、真空引きしたケース内にロアーリンク14を配置し、このケース内に浸炭用のガスを注入・加熱して行なわれる。その後、焼き入れ・焼き戻しにより硬化を行ない、図3及び図4の太い実線で示すように、高硬度な浸炭層42がロアーリンク14の表面に形成される。
【0030】
ここで本実施例では、浸炭工程の際、固定ボルト21に代えて浸炭用治具43を用いて第1分割部材22と第2分割部材23とを固定した状態で浸炭処理を行うようにしている。この浸炭用治具43は、上記の固定ボルト21と同様に、頭部45と軸部44とを有するボルト形状をなしている。この治具の軸部44は、固定ボルト21の軸部31よりも細く、かつ長く設定されており、第1ボルト孔36及び第2ボルト孔38を貫通して、ピンボス部26の底面40より突き出しており、この軸部44の先端部にナット(図示省略)が締結される。この治具の軸部31の外周には、ナットの内周に形成された雌ねじ部に螺合する雄ねじ部46が形成されている。
【0031】
なお、このようにナットを用いる構造に代えて、治具の軸部44を固定ボルト21の軸部31と同じ太さ(径方向寸法)とし、その先端側で第2ボルト孔38の雌ねじ部39に螺合・締結する構成としても良い。
【0032】
治具の頭部45は、座面35にも浸炭処理が施されるように、座面35に当接することなく、第1分割部材22のテーパ面41に着座するように構成されている。具体的には、治具の頭部45は、軸部44の裏面側が第1分割部材22に形成されたテーパ面41と同様に円錐形状に傾斜する傾斜面部47として構成されている。従って、この浸炭用治具43を締結した際、図4に示すように、傾斜面部47が座面35と接触することなくテーパ面41に着座して強く接触することとなる。この結果、テーパ面41及びボルト孔36,38が浸炭用治具43により密閉状態に塞がれた状態となって、浸炭処理が行なわれることがない。一方、座面35は浸炭用治具43により塞がれることなく露出した状態となるために、浸炭処理が行なわれ、図3及び図4の太い実線で示すように、座面35にも浸炭層42が形成されることとなる。
【0033】
以上のように本実施例では、浸炭処理の際に固定ボルト21に代えて専用の浸炭用治具43を用いるこで、雌ねじ部39が形成されるボルト孔36,38の浸炭を防ぎながら、強度が要求される座面35には浸炭処理を施して、浸炭層42を形成することが可能となり、ねじ噛み合い部分の靱性の低下を防ぎつつ、座面35の強度を向上することができる。なお、浸炭用治具43は何度も使い回しが可能であるために、製造コストの増加は最小限に抑制される。
【0034】
図5は、この発明の第2実施例に係る浸炭用治具43の固定構造を示す説明図である。なお、以下の第2,第3実施例では、基本的な構造は上記第1実施例と同様であるため、ここでは異なる部分についてのみ説明する。
【0035】
テーパ面41と傾斜面部47との傾斜角度を等しく設定すると、寸法のばらつき等に起因して、テーパ面41と傾斜面部47との実際の着座位置がボルト孔36寄りの位置から座面35寄りの位置の間でばらつくおそれがあり、ひいてはボルト孔36,38の密封性を阻害するおそれがある。
【0036】
そこで、図5の第2実施例では、浸炭用治具43の傾斜面部47Aが、最もボルト孔寄り(図の下側寄り)の位置でテーパ面41Aに着座するように、座面35(軸部の軸方向に直交する方向)に対する傾斜面部47Aの傾斜角度を、テーパ面41Aの傾斜角度よりも大きく設定している。これによって、傾斜面部47Aが常に最もボルト孔寄りの位置でテーパ面41に安定して着座することとなり、ボルト孔36,38を確実に密封することができる。
【0037】
図5の第3実施例では、浸炭用治具43の傾斜面部47Bが、最も座面寄り(図の上側寄り)の位置でテーパ面41Bに着座するように、座面35(軸部の軸方向に直交する方向)に対する傾斜面部47Bの傾斜角度を、テーパ面41Bよりも小さく設定している。これによって、傾斜面部47Bが常に最も座面寄りの位置で安定してテーパ面41Bに着座することとなり、ボルト孔36,38を確実に密封することができる。
【0038】
以上のように本発明を具体的な実施例に基づいて説明してきたが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の変形・変更を含むものである。例えば、上記実施例では傾斜面部をボルト状の軸部と一体の頭部に設けているが、軸部の先端に締結されるナット側に傾斜面部を設ける構造としても良い。
【符号の説明】
【0039】
11…ピストン
12…クランクシャフト
13…クランクピン
14…ロアーリンク
15…アッパーリンク
16…コントロールシャフト
17…コントロールリンク
19…第1連結ピン
20…第2連結ピン
21…固定ボルト
22…第1分割部材
23…第2分割部材
33…頭部
31…軸部
32…雄ねじ部
36…第1ボルト孔
38…第2ボルト孔
39…雌ねじ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6