特許第6392056号(P6392056)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6392056スパウト付きパウチ容器およびスパウト付きパウチ容器包装体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392056
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】スパウト付きパウチ容器およびスパウト付きパウチ容器包装体
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/38 20060101AFI20180910BHJP
   B65D 75/58 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   B65D33/38
   B65D75/58
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-197470(P2014-197470)
(22)【出願日】2014年9月26日
(65)【公開番号】特開2016-68962(P2016-68962A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年6月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000238005
【氏名又は名称】株式会社フジシールインターナショナル
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 將仁
(72)【発明者】
【氏名】大出 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 真司
【審査官】 長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−046082(JP,A)
【文献】 特開2005−067677(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第00741087(EP,A1)
【文献】 特開平09−142533(JP,A)
【文献】 国際公開第93/016928(WO,A1)
【文献】 実開平07−026348(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 33/38
B65D 75/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚以上のシート材を折り畳んで周縁をヒートシールすることにより形成されるスパウト付きパウチ容器であって、
少なくとも、貫通孔が形成された天ガセットと、両側縁が互いにヒートシールされるとともに各々の上縁が前記天ガセットの周縁にそれぞれヒートシールされる胴部一方面および胴部他方面と、筒部とフランジ部とを有して前記天ガセットの貫通孔に容器内側から筒部が挿入された状態でフランジ部の上面に前記天ガセットがヒートシールされるスパウトと、を備え、
前記天ガセットの貫通孔の周縁には容器外側へ向かって隆起し、前記スパウトのフランジ部の厚みの少なくとも一部を収容できる高さを有する凸状部が膨出して形成されており、前記凸状部は前記天ガセットにおいて前記フランジ部の外周を取り囲むように前記フランジ部よりも大きく形成されている、スパウト付きパウチ容器。
【請求項2】
請求項1に記載のスパウト付きパウチ容器において、
前記スパウトは、前記フランジ部に含まれる平行な2辺部が前記天ガセットの両側周縁のヒートシール部に沿って装着されている、スパウト付きパウチ容器。
【請求項3】
請求項1または2に記載のスパウト付きパウチ容器と、前記スパウト付きパウチ容器に封入された内容物と、を備えるスパウト付きパウチ容器包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパウト付きパウチ容器およびスパウト付きパウチ容器包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1にスパウト付きパウチ容器の製造装置が記載されている。この製造装置では、連続的に送出される1枚のシート材を折り畳んでパウチ容器中間体とし、このパウチ容器中間体の天シート部(パウチ容器の天ガセットになる部分)に形成された貫通孔にスパウトを装着し、その後、パウチ容器中間体に所定形状のヒータ又はシールバーを押し当ててヒートシール部を形成し、そして、シート材をヒートシール部において所定間隔で切断することによりスパウト付きパウチ容器が製造されることが記載されている。
【0003】
上記スパウト付きパウチ容器の天ガセットには、筒部とフランジ部とを有するスパウトが装着され、容器内側に位置するスパウトのフランジ部に天ガセットの内面がヒートシールされた構成となっている。この状態で、スパウトの筒部から容器に内容物が充填されたのち、例えばねじ式の有底筒状のキャップがスパウトの筒部外周に取り付けられることでパウチ容器が密封される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−46082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなスパウト付きパウチ容器を構成するシール材には、可撓性を有する複層の樹脂フィルム材が用いられることが多い。しかしながら、安定して内容物を充填し、或いは注出するためには、スパウトが装着された天シート部、特にスパウト装着部近傍の剛性を高める必要が生じ得る。
【0006】
これに対処するためには、天シート部にヒートシールされているスパウトのフランジ部の剛性を高くし、フランジ部の高い剛性によって天シート部全体の剛性を担保することが考えられる。
【0007】
スパウトのフランジ部の剛性を高めるための一手法として、フランジ部をより厚く形成するのが簡易である。しかしながら、そうした場合、上記特許文献1に記載されるように1枚のシート材から天ガセットを構成する天シート部と容器胴部の一方側面シート部とがつながっているため、シールユニットにおいて天シート部の周縁と容器胴部の他方側面シート部の上縁とをヒートシールするとき、スパウトのフランジ部の厚みが増したことで天シート部が引っ張られた状態で容器胴部の他方側面シート部にヒートシールされることがある。また、個々のパウチ容器に切断されるまで各パウチ容器の天シート部はシート材の長手方向に連なっているため、天シート部周縁をヒートシールするときにはシート材の長手方向にも引っ張り力が作用することになる。そのため、天シート部に引張応力が残留することによってヒートシール部が波打った状態となり、パウチ容器の外観が見映えの良くないものになるという新たな課題が生じる。
【0008】
本発明の目的は、スパウト付きパウチ容器およびスパウト付きパウチ容器包装体において、スパウトのフランジ部が厚くなった場合でも天ガセット周縁のヒートシール部を美麗に形成することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様であるスパウト付きパウチ容器は、1枚以上のシート材を折り畳んで周縁をヒートシールすることにより形成されるスパウト付きパウチ容器であって、少なくとも、貫通孔が形成された天ガセットと、両側縁が互いにヒートシールされるとともに各々の上縁が前記天ガセットの周縁にそれぞれヒートシールされる胴部一方面および胴部他方面と、筒部とフランジ部とを有して前記天ガセットの貫通孔に容器内側から筒部が挿入された状態でフランジ部の上面に前記天ガセットがヒートシールされるスパウトと、を備え、前記天ガセットの貫通孔の周縁には容器外側へ向かって隆起し、前記スパウトのフランジ部の厚みの少なくとも一部を収容できる高さを有する凸状部が膨出して形成されており、前記凸状部は前記天ガセットにおいて前記フランジ部の外周を取り囲むように前記フランジ部よりも大きく形成されているものである。
【0010】
本発明に係るスパウト付きパウチ容器において、前記スパウトのフランジ部に含まれる平行な2辺部が前記天ガセットの両側縁のヒートシール部に沿う向きに装着されているのが好ましい。
【0011】
本発明の別の態様であるスパウト付きパウチ容器包装体は、前記いずれかの構成のスパウト付きパウチ容器と、前記スパウト付きパウチ容器に封入された内容物とを備えるものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るスパウト付きパウチ容器およびスパウト付きパウチ容器包装体によれば、天ガセットを構成する天シート部に形成されたスパウト挿入用の貫通孔の周縁に凸状部が形成され、この凸状部によってスパウトのフランジ部の厚みの少なくとも一部を吸収することができる。したがって、天シート部の周縁が胴部他方面の上縁にヒートシールされるときに天シート部に作用する引っ張り力を緩和でき、その結果、天ガセット周縁のヒートシール部を美麗に仕上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態のスパウト付きパウチ容器の斜視図である。
図2図1のスパウト付きパウチ容器の(a)上面図、(b)正面図、および(c)図2(b)のX−X断面図である。
図3】スパウトのフランジ部の変形例を示す図である。
図4】スパウトのフランジ部の別の変形例を示す図である。
図5】本実施形態のスパウト付きパウチ容器を製造する製造装置の全体構成を示す正面図である。
図6】罫線形成ユニット、凸状部形成ユニット、および、パンチングユニットの処理内容を示す、シート材の平面図である。
図7】凸状部形成ユニットにおける処理内容を示す図である。
図8】パンチングユニットの処理内容を示す図である。
図9】折り畳みユニットおよびスパウト装着ユニットの処理内容を示す図である。
図10】解除機構の一例を示す図である。
図11】第1シールユニットに設けられた加熱機構の正面図である。
図12】第1シールユニットを通過したシート材の上面図および側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る実施形態について添付図面を参照しながら詳細に説明する。この説明において、具体的な形状、材料、数値、方向等は、本発明の理解を容易にするための例示であって、用途、目的、仕様等にあわせて適宜変更することができる。また、以下において複数の実施形態や変形例などが含まれる場合、それらの特徴部分を適宜に組み合わせて用いることは当初から想定されている。
【0015】
以下においては、本実施形態のスパウト付きパウチ容器が胴部前面と胴部後面との間の下部に底ガセットが設けられた自立型のパウチ容器である例について説明するが、これに限定されるものではなく、本発明は底ガセットを有しない非自立型のスパウト付きパウチ容器に適用されてもよい。
【0016】
図1は本実施形態のパウチ容器SPの斜視図であり、図2図1に示すパウチ容器SPの(a)上面図、(b)正面図、および(c)図2(b)のX−X断面図である。図1および図2図5および図12も同様)において、ハッチングを施した箇所は、シート材同士が熱により接合されたヒートシール部である。
【0017】
図1に示すように、本実施形態のスパウト付きパウチ容器SPは、自立型の容器(いわゆるスタンディングパウチ)である。パウチ容器SPは、シート材を袋状に貼り合わせて形成される容器で、液体や粉体など様々な内容物の収容に用いられる。このパウチ容器SPに用いられるシート材としては、片面にヒートシール性を備え、適度な可撓性を備えているのであれば、その材質や肉厚は特に限定されない。したがって、例えば、ヒートシール性に富むポリエチレンやエチレン−プロピレン共重合体などからなる内層と、印刷性やガス遮蔽性に富むポリアミドやポリエステルなどからなる外層と、を積層した複合フィルムなどを用いることができる。なお、この材質は、あくまで一例であり、パウチ容器SPとして要求される強度や、パウチ容器SP内に収容する内容物の性質などに応じて、適宜、異なる材質、肉厚のシート材が選択されてもよい。
【0018】
パウチ容器SPは、互いに対向する胴部前面(胴部一方面)P1および胴部後面(胴部他方面)P2と、胴部前面P1および胴部後面P2の上縁に接合された天ガセットP4、胴部前面P1および胴部後面P2の下縁に接合された底ガセットP3、および、天ガセットP4の略中央に接合されたスパウトQを備えている。
【0019】
スパウトQは、円筒状の筒部Q1および円環板状のフランジ部Q2を備える。筒部Q1およびフランジ部Q2は、樹脂一体成形によって形成されている。筒部Q1は、内容物の充填および取り出し口となる部分である。パウチ容器SPに内容物が充填された後に、例えばねじ式のキャップによってスパウトQが密封される。これにより、内容物が封入されたスパウト付きパウチ容器包装体となる。フランジ部Q2は、スパウトQをパウチ容器SPに固定する部分である。筒部Q1が天ガセットP4の貫通孔に挿入された状態で、フランジ部Q2の上面に天ガセットP4の内面がヒートシールされている。なお、このスパウトQのフランジ部Q2と天ガセットP4とのヒートシール部を、以下では「スパウトシール部Sa」と呼ぶ。
【0020】
本実施形態のパウチ容器SPでは、図2(c)に示されるスパウトQのフランジ部Q2の厚みtが例えば2〜5mm程度と、従来比で厚く形成されている。これにより、フランジ部Q2の剛性が高くなり、天ガセットP4の剛性も高くなる。よって、例えば内容物を注出するときに内容物の重量が天ガセットP4にかかったとしても天ガセットP4の形状が歪みにくくなり、安定して注出することが可能になる。
【0021】
胴部前面P1および胴部後面P2は、その両側縁が互いに接合され、サイドシール部Ssが形成されている。天ガセットP4は、上面視略八角形をしており、その中央にはスパウトQの挿通を許容する貫通孔が形成されている。この天ガセットP4の周縁は、胴部前面P1および胴部後面P2の上縁に接合され、トップシール部Stを形成している。
【0022】
底ガセットP3は、内側に二つ折りにされた状態で、胴部前面P1および胴部後面P2の下部に挟持される部位である。この底ガセットP3の周縁は、胴部前面P1および胴部後面P2の下縁に接合され、略舟形のボトムシール部Sbを形成する。また、この底ガセットP3には、二つ折りにした状態で相互に一致する略半円状の切欠部cが形成されている。かかる切欠部cが形成されることにより、当該箇所において、胴部前面P1および胴部後面P2が、直接、接触することが可能となる。そして、この切欠部c、換言すれば、胴部前面P1および胴部後面P2の接触部を介して、胴部前面P1および胴部後面P2の下部の両側縁が接合される。
【0023】
図1および図2に示すように、天ガセットP4においてスパウト装着用の貫通孔の周縁には、パウチ容器SPの外側(図2中では上側)に隆起した凸状部Rが形成されている。凸状部Rは、フランジ部Q2の外周を取り囲むように形成されている。本実施形態では、円形のフランジ部Q2を取り囲む略楕円状の外形輪郭を有して形成されている。また、凸状部Rの容器外側への突出高さは、フランジ部Q2の厚みtの少なくとも一部を吸収できる程度に形成されている。凸状部Rの高さは、図2中の天ガセットP4における凸状部形領域以外の部位からの突出寸法に相当し、上記フランジ部Q2の厚みtと同等程度に形成されるのが好ましい。
【0024】
ここで、スパウトQのフランジ部Q2の形状および構造、ならびに、凸状部Rの形状については、種々の変形が可能である。上記ではスパウトQのフランジ部Q2が図3(a)に示すように円環状の板部として形成される例について説明したが、これに限定されるものではなく、フランジ部Q2の剛性を高めるために他の形状としてよい。例えば、図3(b)に示すようにフランジ部Q2の外周縁から突出する円環状の壁部を有する形状としてもよい。
【0025】
また、フランジ部Q2の輪郭形状は、図1および図2に示すような円形状に限定されるものではなく、他の形状であってもよい。例えば、フランジ部Q2は、図4(a)に示すように角部をR面(またはC面)とした四角形状であってもよいし、図4(b)に示すような角部をR面(またはC面)とした六角形状等の多角形状であってもよいし、あるいは、楕円形状等の他の形状であってもよい。このようにフランジ部Q2が平行な2辺部を含む角形形状である場合、上記平行な2辺部が天ガセットP4の両側周縁に形成される胴部前面P1および胴部後面P2とのヒートシール部であるトップシール部Stに沿って装着されているのが好ましい。これにより、パウチ容器SPの開封時に天ガセットP4の上からフランジ部Q2を指で掴みやすくすることができる。
【0026】
さらに、フランジ部Q2の周囲に形成される凸状部Rは、フランジ部Q2と相似形状であってもよいし、異なる形状であってもよい。例えば、図4(a)に示すように、四角形のフランジ部Q2の周囲を取り囲む略四角形状の凸状部Rが形成されてもよいし、あるいは、図4(b)に示すように略六角形をなすフランジ部Q2の周囲にトラック状または楕円状の凸状部Rが形成されてもよい。
【0027】
上記のような構成を備える本実施形態のスパウト付きパウチ容器SPによれば、各パウチ容器が連なった状態で製造されるときに天ガセットP4を構成することとなる天シート部に形成された凸状部Rによって、スパウトQのフランジ部Q2の厚みの少なくとも一部を吸収することができる。したがって、パウチ容器SPの製造過程において天シート部の周縁が胴部後面P2の上縁にヒートシールされるときに天シート部に作用する引っ張り力を緩和でき、その結果、スパウトQのフランジ部Q2が厚くなった場合でも天ガセットP4の周縁のトップシール部Stを美麗に仕上げることができる。
【0028】
次に、図5図12を参照して、上記スパウト付きパウチ容器SPの製造装置1について説明する。図5に示すように、製造装置1には、パウチ容器SPの材料となるシート材Mをロール状に巻回したシートロールSRがセットされており、図示しない送出機構により、シート材Mが連続的に送出される。
【0029】
送出されたシート材Mには、罫線形成ユニット10、凸状部形成ユニット12、パンチングユニット14、折り畳みユニット16、スパウト装着ユニット18、第1シールユニット20、切除ユニット22、第2シールユニット24により、順次、所定の処理が施される。そして、複数の処理が施されたシート材Mは、最終的には、切断ユニット26により所定幅間隔で切断され、分離した個々のパウチ容器SPとして出力される。
【0030】
続いて、各ユニットでの処理内容について説明する。図6は、罫線形成ユニット10、凸状部形成ユニット12およびパンチングユニット14の処理内容を示す図である。罫線形成ユニット10は、送出されてきたシート材Mに、複数本の罫線L1〜L8を連続的に形成するユニットである。この罫線は、下流での折り畳み作業を容易にするために形成されるもので、例えば、シート材Mに細幅のローラを当接させることで形成できる。
【0031】
本実施形態では、シート材Mの幅方向に間隔を空けて、8本の罫線L1〜L8を形成している。後述する折り畳みユニット16等では、この罫線L1〜L8に沿って、シート材Mが折り曲げられる。なお、シート材Mのうち、一端から第1罫線L1までの範囲が、最終的に天ガセットP4を構成する。以下では、この天ガセットP4を構成する部分を、「天シート部p4」と呼ぶ。同様に、最終的に胴部前面P1を構成する第1罫線L1から第四罫線L4までの範囲を「前シート部p1」、最終的に底ガセットP3を構成する第四罫線L4から第六罫線L6までの範囲を「底シート部p3」、最終的に胴部後面P2を構成する第六罫線L6からシート材Mの他端までの範囲を「後シート部p2」と呼ぶ。
【0032】
なお、製造装置1では、シート材の折り畳み処理を容易にするためにシート材に罫線を形成する例を示したが、折り畳み処理が容易にできる場合は罫線の形成を全て又は部分的に省略しても良い。具体的には、例えば、本実施形態における罫線L3、L7の形成を省略することができ、それにより、パウチ容器の胴部の美観を向上させることができる。
【0033】
凸状部形成ユニット12は、天ガセットP4を構成することとなる天シート部p4のスパウト孔形成予定位置を含む領域に凸状部Rを形成するユニットである。凸状部形成ユニット12は、図7に示すように、上方に配置された凸状の雄型K1と凹状の雌型K2とでシート材Mを挟持することで、シート材Mが局部的に引き伸ばされて図の紙面奥側へ突出した凸状部Rを形成することができる。
【0034】
パンチングユニット14は、天シート部p4にスパウト孔Hを形成するとともに、底シート部p3に一対の接合孔hを形成するユニットである。パンチングユニット14は、図8に示すように、シート材Mにおいて既に形成された凸状部Rの略中央に例えば円柱状のパンチK3を打ち込むことによって、スパウト孔Hを形成する。このスパウト孔Hは、天シート部p4にパウチ容器幅W相当の間隔を空けて順次形成される。一対の接合孔hは、最終的に切欠部cを形成する孔である。この一対の接合孔hは、底シート部p3のうち第五罫線(底シートを二つ折りする際の折目線)を挟んで対称な位置であって、スパウト孔Hに対して、搬送方向にパウチ容器幅Wの半分程度の距離(1/2W)ずれた位置に形成される。
【0035】
図9は、折り畳みユニット16およびスパウト装着ユニット18の処理内容を示す図である。折り畳みユニット16は、上流側から送られてきたシート材Mを、罫線L1〜L8に沿って、シート材Mの幅方向に折り曲げる。具体的には、第五罫線L5に沿って内側に二つ折りにされた底シート部p3が、互いに対向する前シート部p1および後シート部p2の下部に挟持されるように折り曲げる。また、第1罫線L1、第2罫線L2、第八罫線L8に沿っても折り曲げ、前後シート部p1,p2の上部と、天シート部p4と、が重なるように折り曲げる。ここで、図9は、前後シート部p1,p2の上部に天シート部p4を重ねた後、当該天シート部p4が略水平となるように展開した状態を図示している。また、天シート部p4に形成された凸状部Rは、前後シート部p1,p2の上部に重なるように折り曲げられると、上方(すなわち容器外側)へ隆起または膨出した隆起部として現れる。
【0036】
スパウト装着ユニット18は、天シート部p4に形成されたスパウト孔Hに、スパウトQの筒部Q1を挿入するとともに、当該筒部Q1の端部から外側に張り出したフランジ部Q2を天シート部p4にヒートシールする。すなわち、スパウト装着ユニット18は、スパウト孔Hが形成された天シート部p4を略水平姿勢にした後、筒部Q1が外側に突出し、かつ、フランジ部Q2が天シート部p4の凸状部Rの内面に当たるように、スパウトQをスパウト孔Hに挿入する。そして、図9に示すように展開した天シート部p4を前後シート部p1,p2の上部と重なるように折り曲げた後、フランジ部Q2を天シート部p4におけるスパウト孔Hの周縁にヒートシールし、スパウトQをシート材Mに装着する。
【0037】
スパウトQが装着されたシート材Mは、その後、第1シールユニット20に送出される。第1シールユニット20は、送出されてきたシート材Mに対して、ヒートシール処理を施し、ボトムシール部Sb、サイドシール部Ss、トップシール部Stを形成する部位である。この第1シールユニット20は、折り畳み解除機構や、接着機構、冷却機構などを備えている。
【0038】
折り畳み解除機構は、シート材Mを、底シート部p3の折り畳みを解除して広げた折り畳み解除状態にする機構である。折り畳み解除機構としては、例えば、図10に示すように、平面状の上面を備えた板材28を用いてもよい。この場合、シート材Mの先端が、底シート部p3が当該板材28の上面に接するように底シート部p3を広げた状態でシート材Mをセットしておけば、後続するシート材Mも自然と、当該板材28付近で折り畳み解除される。かかる折り畳み解除機構により、シート材Mは、正面視において、略I字状形状となる。
【0039】
折り畳み解除されたシート材Mは、その状態で加熱機構へと送出される。加熱機構は、シート材Mの各部を挟持加圧しつつ、加熱することでシート材Mをヒートシールする機構である。図11は、この加熱機構の正面図である。
【0040】
加熱機構は、上下に対向配置されたトップブロック30およびボトムブロック34と、当該トップブロック30およびボトムブロック34の間において左右に対向配置された一対のサイドブロック32と、これら複数のブロックを移動させる移動機構と、を備えている。
【0041】
加熱機構では、次のようにしてヒートシール処理が行われる。折り畳み解除された状態で送出されてきたシート材Mは、図11に示すように、正面視略I字状となっている。このとき、トップブロック30およびボトムブロック34は、いずれも、このシート材Mから離間した位置で待機している。また、サイドブロック32は、前シート部p1および後シート部p2から離間しつつも、その対向距離が底シート部p3や天シート部p4の幅以下となる位置で待機している。したがって、この状態において、底シート部p3および天シート部p4の先端は、僅かに、サイドブロック32の底面および上面に重なっている。
【0042】
続いて、トップブロック30を下降させ、天シート部p4および前後シート部p1,p2の上縁を、サイドブロック32の上面に押し当てる。この押し当てにより、シート材Mの高さ位置が規定位置に調整される。
【0043】
続いて、一対のサイドブロック32を、互いに近接する方向に移動させ、当該一対のサイドブロック32で前後シート部p1,p2を挟持加圧する。そして、その状態で、側面に設けられた突起48の加熱を開始する。この加熱により、シート材Mのうち、当該突起48に接触する部分、すなわち、サイドシール部Ssに相当する部分がヒートシールされる。
【0044】
その後、ボトムブロック34を上昇させ、サイドブロック32の底面と協働して、底シート部p3の周縁および前後シート部p1,p2の下縁を挟持加圧させる。また、トップブロック30も、さらに、下降させ、サイドブロック32の上面と協働して天シート部p4の周縁および前後シート部p1,p2の上縁を挟持加圧させる。そして、その状態になれば、ボトムブロック34およびトップブロック30の突起40,56の加熱も開始する。この加熱により、シート材Mのうち、これら突起40,56に接触する部分、すなわち、トップシール部Stに相当する部分およびボトムシール部Sbに相当する部分がヒートシールされる。
【0045】
そして、一定時間の加熱ができれば、図11に示すように、全てのブロックをシート材Mから離間させ、当該シート材Mを第1シールユニット20から冷却装置へ送出する。冷却装置で冷却された後、シート材Mの底シート部p3は、再び、二つに折り畳まれる。
【0046】
図12は、第1シールユニット20を通過したシート材Mの上面図および側面図である。この図12に示すように、第1シールユニット20を通過したシート材Mは、トップシール部St、サイドシール部Ss、ボトムシール部Sbが形成された状態となる。
【0047】
上記のように第1シールユニット20においてトップシール部Stが形成されるとき、パウチ容器SPの天ガセットP4(図1参照)となる天シート部p4は前シート部p1とつながった状態にあり、かつ、シート材Mは個々のパウチ容器SPに切断されるまでは天シート部p4がシート材Mの長手方向につながった状態になっている。そのため、天シート部p4に凸状部Rが形成されていない場合、スパウトQのフランジ部Q2に厚みtがある分、天シート部p4がトップシール部Stの位置からスパウトQの装着位置へ向かう方向に引っ張り力が作用する。その結果、パウチ容器SPとして切断形成されたときに、天ガセットP4に引張応力が残留することによってトップシール部Stが波打った状態となり、パウチ容器SPの外観が悪くなることがある。
【0048】
これに対し、本実施形態では、天シート部p4に形成された凸状部RにスパウトQのフランジ部Q2が厚み方向の全て又は一部が収容される。そのため、天シート部p4に上記のような引っ張り力が作用するのを緩和または解消できる。その結果、スパウトQのフランジ部Q2が厚くなった場合でも天ガセットP4の周縁のトップシール部Stを美麗に仕上げることができる。
【0049】
第1シールユニット20から送出されて冷却されたシート材Mは、続いて、切除ユニット22(図5参照)に送られる。切除ユニット22では、天ガセットP4に相当する部分が略八角形になるように、不要部分が切除される。具体的には、図12において、太線で囲まれた略三角形部分nが切除される。その後、このシート材Mは、底シート部p3が折り畳まれた状態で、第2シールユニット24(図5参照)に送られる。
【0050】
第2シールユニット24では、接合孔h付近が、ヒータを内蔵したブロック体で挟持されつつ加熱される。そして、これにより、当該接合孔hを介して前シート部p1と後シート部p2とがヒートシールされる。第2シールユニット24を通過すれば、最後に、シート材Mは、切断ユニット26(図5参照)に送られる。切断ユニット26では、連続したシート材Mを、パウチ容器SPおける胴部の側縁に相当する位置、より具体的には、サイドシール部Ssの中央位置(図12において一点鎖線で示した位置)において切断する。この切断により、互いに分離した個別のパウチ容器SPが形成される。


【0051】
以上のようにして製造装置1によって本実施形態のパウチ容器SPが製造される。
【0052】
上述したように、製造装置1によれば、スパウトQのフランジ部Q2が厚くなった場合でも天ガセットP4の周縁のトップシール部Stが波打つことなく美麗に仕上げられたパウチ容器SPを製造することができる。
【0053】
なお、上記の製造装置1においては、シート材Mの天シート部p4に先に凸状部Rを形成した後にスパウト孔Hを穿設する例について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、スパウト孔Hを先に形成してからその周縁部に凸状部Rを形成するように、凸状部形成ユニット12とパンチングユニット14とを入れ替えてもよい。あるいは、1つのユニットで凸状部Rおよびスパウト孔Hの形成を一工程で同時に行ってもよい。これにより、製造装置および製造方法を簡素化することができ、装置を小型化できるとともにコスト低減を図ることができる。
【0054】
また、上記の製造装置1においては、パウチ容器SPの天ガセットP4と胴部前面P1とが1枚の連続したシート材で形成される場合について説明したが、これに限定されるものではなく、天ガセットP4が胴部前面P1および胴部後面P2の何れからも分離した別のシート材によって形成される場合にも本発明を適用することができる。この場合、天ガセットは容器分離前までは長手方向に連なっているため、天ガセットの周縁にヒートシールするときに作用する長手方向の引っ張り力が少なくとも発生することから、この場合にも天シート部に凸状部が形成されることで、この長手方向の引っ張り力を緩和して、天ガセット周縁のヒートシール部を美麗に仕上げる効果が見込める。
【符号の説明】
【0055】
1 スパウト付きパウチ容器の製造装置、10 罫線形成ユニット、12 凸状部形成ユニット、14 パンチングユニット、16 折り畳みユニット、18 スパウト装着ユニット、20 第1シールユニット、22 切除ユニット、24 第2シールユニット、26 切断ユニット、28 板材、30 トップブロック、32 サイドブロック、34 ボトムブロック、40,48,50,52,56 突起、42 逃がし孔、c 切欠部、H スパウト孔、h 接合孔、K1 雄型、K2 雌型、K3 パンチ、L1〜L8 罫線、M シート材、n 略三角形部分、p1 前シート部、P1 胴部前面(胴部一方面)、p2 後シート部、P2 胴部後面、P3 底ガセット、p3 底シート部、P4 天ガセット、p4 天シート部、Q スパウト、Q1 筒部、Q2 フランジ部、R 凸状部、Sa スパウトシール部、Sb ボトムシール部、SP スパウト付きパウチ容器、SR シートロール、Ss サイドシール部、St トップシール部、W パウチ容器幅。
図1
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図12