(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
図1は、実施の形態に係るヒンジを備える収容庫の一例を示す斜視図である。
図1は、ヒンジの一部が分解された状態を図示している。収容庫1は、例えば細胞や生体組織等の生体由来材料、薬剤、食品等の収容に用いられる。収容庫1には、例えば、インキュベータ、冷凍庫、冷蔵庫、恒温庫及び滅菌庫等が含まれる。収容庫1は、筐体2と、扉4と、ヒンジ10とを備える。筐体2は、内部に収容室を有する。収容室は、開口を介して外部と連通される。扉4は、収容室の開口を塞ぐ。収容庫1の構造は公知であるため、その詳細な説明は省略する。
【0014】
ヒンジ10は、第1ヒンジ部材20と、第2ヒンジ部材40と、第1カバー70と、第2カバー80とを備える。第1ヒンジ部材20と第2ヒンジ部材40とは、互いに回動可能に連結される。そして、第1ヒンジ部材20は、筐体2の側面の前縁部にビス等の固定具90で固定され、第2ヒンジ部材40は、扉4の側面にビス等の固定具92で固定される。これにより、扉4が筐体2に対して開閉可能に連結される。続いて、第1カバー70がビス等の固定具94により第1ヒンジ部材20に固定され、第2カバー80がビス等の固定具96により第2ヒンジ部材40に固定される。ヒンジ10の数、固定位置等は特に限定されない。
【0015】
ヒンジ10の構造について詳細に説明する。
図2は、ヒンジの一例を示す部分分解斜視図である。
図3は、ヒンジの一例を示す平面図である。
図4は、
図3におけるA−A線に沿った断面図である。
図4では、固定具90,92の図示を省略している。
【0016】
ヒンジ10は、第1ヒンジ部材20と、第2ヒンジ部材40と、ヒンジピン60と、第1カバー70と、第2カバー80とを備える。
【0017】
第1ヒンジ部材20は、第1ベース部22と、第1ナックル部24とを含む。第1ベース部22は、平板状の形状を有し、その一側に第1ナックル部24が配置される。本実施の形態では、第1ベース部22は略矩形状であり、その一辺から第1ナックル部24が延出している。第1ベース部22は、一方の主表面側から他方の主表面側へ貫通する貫通孔26を有する。本実施の形態では、2つの貫通孔26が、ヒンジピン60の軸方向Axに沿って所定の間隔をあけて配置されている。第1ヒンジ部材20は、第1ベース部22の一方の主表面が固定対象、本実施の形態では筐体2の表面に当接され、貫通孔26に固定具90が挿通されることで、固定対象に固定される。第1ヒンジ部材20の固定状態の安定性を向上させる上で、2つの貫通孔26は、軸方向Axにおける第1ベース部22の中心を挟んで配置されることが好ましい。また、第1ベース部22は、第1カバー70を固定するための固定具94が挿通される貫通孔30を有する。貫通孔30は、軸方向Axにおける第1ベース部22の中央部、すなわち2つの貫通孔26の間に設けられる。
【0018】
第1ナックル部24は、略筒状であり、ピン孔28を有する。ピン孔28は、軸方向Axに対して平行に延在する中心軸を有する。ピン孔28の径、すなわち第1ナックル部24の内径は、ヒンジピン60の外径よりも僅かに大きく形成される。このため、ピン孔28とヒンジピン60との間には僅かなクリアランスY1が生じる。第1ナックル部24は、軸方向Axに所定の間隔をあけて、複数、本実施の形態では2つ設けられる。2つの第1ナックル部24は、軸方向Axにおける第1ベース部22の中央部を挟んで配置される。第1ベース部22と、ピン孔28を有する第1ナックル部24とを含む第1ヒンジ部材20は、例えば、平板状の金属部材の一辺に曲げ加工が施されることで形成することができる。あるいは、第1ヒンジ部材20は、所定の金属のダイカスト成形により形成することもできる。
【0019】
第2ヒンジ部材40は、第1ヒンジ部材20と同様の構造を有する。すなわち、第2ヒンジ部材40は、第2ベース部42と、第2ナックル部44とを含む。第2ベース部42は、平板状の形状を有し、その一側に第2ナックル部44が配置される。本実施の形態では、第2ベース部42は略矩形状であり、その一辺から第2ナックル部44が延出している。第2ベース部42は、一方の主表面側から他方の主表面側へ貫通する貫通孔46を有する。本実施の形態では、2つの貫通孔46が、軸方向Axに沿って所定の間隔をあけて配置されている。第2ヒンジ部材40は、第2ベース部42の一方の主表面が固定対象、本実施の形態では扉4の表面に当接され、貫通孔46に固定具92が挿通されることで、固定対象に固定される。第2ヒンジ部材40の固定状態の安定性を向上させる上で、2つの貫通孔46は、軸方向Axにおける第2ベース部42の中心を挟んで配置されることが好ましい。また、第2ベース部42は、第2カバー80を固定するための固定具96が挿通される貫通孔50を有する。貫通孔50は、軸方向Axにおける第2ベース部42の中央部、すなわち2つの貫通孔46の間に設けられる。
【0020】
第2ナックル部44は、略筒状であり、ピン孔を有する。第2ナックル部44が有するピン孔は、第1ナックル部24が有するピン孔28と同様の構造を有するため、その図示を省略する。ピン孔は、軸方向Axに対して平行に延在する中心軸を有する。第2ナックル部44のピン孔の径、すなわち第2ナックル部44の内径は、ヒンジピン60の外径よりも僅かに大きく形成される。このため、第2ナックル部44のピン孔とヒンジピン60との間には僅かなクリアランスが生じる。図示は省略するが、便宜上以下ではこのクリアランスを「クリアランスY2」と称する。クリアランスY2の大きさは、第1ナックル部24のクリアランスY1の大きさと同一であっても異なってもよい。クリアランスY1,Y2は、ピン孔内でのヒンジピン60の位置によって大きさが変化し得る。クリアランスY1,Y2の最大値は、ピン孔の内径とヒンジピン60の外径との差の値である。第2ナックル部44は、軸方向Axに所定の間隔をあけて、複数、本実施の形態では3つ設けられる。第2ヒンジ部材40は、第1ヒンジ部材20と同様に、平板状の金属部材の一辺に曲げ加工を施すことで形成することができる。あるいは、第2ヒンジ部材40は、所定の金属のダイカスト成形により形成することもできる。
【0021】
第2ナックル部44と第1ナックル部24とは、互いが噛み合う位置で、第1ベース部22あるいは第2ベース部42から突出している。本実施の形態では、3つの第2ナックル部44と2つの第1ナックル部24とは、隣り合う第2ナックル部44の間に1つの第1ナックル部24が挟まれるように、互いの位置関係が定められている。第1ヒンジ部材20と第2ヒンジ部材40とは、第1ナックル部24と第2ナックル部44とが軸方向Axで交互に並び、互いに隣接して嵌め合わされ、それぞれのピン孔の中心軸が同一直線上に位置するように、配置される。
【0022】
ヒンジピン60は、第1ナックル部24のピン孔28及び第2ナックル部44のピン孔の各中心軸が同一直線上に並んだ状態で、各ピン孔に挿通される。第1ナックル部24のピン孔28及び第2ナックル部44のピン孔と、ヒンジピン60との間には、僅かなクリアランスY1,Y2が生じている。これにより、第1ヒンジ部材20及び第2ヒンジ部材40は、ヒンジピン60を回動中心として相対的に回動可能に連結される。第1ヒンジ部材20と第2ヒンジ部材40とがヒンジピン60により連結された状態で、第1ナックル部24と第2ナックル部44との連結部Bを挟んで第1ベース部22と第2ベース部42とが配置される。すなわち、軸方向Axに対して直交する方向で、第1ベース部22、連結部B及び第2ベース部42がこの順に並ぶ。
【0023】
第1カバー70は、開口72を有する底の浅い筐体であり、第1ベース部22を被覆する。これにより、第1ヒンジ部材20を筐体2に固定する固定具90や、固定具90が挿通される貫通孔26等を隠蔽することができる。第1カバー70は、収容庫1に固定された第1ヒンジ部材20に取り付けられた状態で、筐体内部に第1ベース部22を収容し、開口72が収容庫1の表面で塞がれる。第1カバー70は、例えば、ABS等の樹脂で形成することができる。
【0024】
第1カバー70は、平面視で略矩形状であり、連結部Bと対向する面74に凸部76を有する。また、第1カバー70は、外主表面側から筐体内部側へ貫通する貫通孔78を有する。本実施の形態では、第1カバー70は、軸方向Axにおける中央部に1つの貫通孔78を有する。第1カバー70は、貫通孔78及び第1ベース部22の貫通孔30とに固定具94が挿通されることで、第1ベース部22に固定される。すなわち、第1カバー70は、第1ヒンジ部材20に一点固定される。
【0025】
第1カバー70が第1ベース部22に固定された状態で、凸部76は、第1カバー70が取り付けられる第1ヒンジ部材20の第1ナックル部24に当接する。凸部76が第1ナックル部24に当接することで、第1カバー70の面74と連結部Bとの間にクリアランスXが生じる。したがって、第1カバー70と第2ヒンジ部材40の第2ナックル部44とを、クリアランスXの分だけ離間させることができる。また、第1カバー70は、凸部76が第1ナックル部24に当接しているため、固定具94を回動軸とした位置ずれが抑制される。これにより、第1カバー70と第2ヒンジ部材40の第2ナックル部44との接触を回避することができるため、第1カバー70と第2ナックル部44とが擦れて第1カバー70が摩耗することを抑制することができる。
【0026】
また、凸部76は、第1カバー70と第2ナックル部44との間のクリアランスXが、第1ナックル部24のピン孔28とヒンジピン60との間のクリアランスY1と第2ナックル部44のピン孔とヒンジピン60との間のクリアランスY2との合計より大きくなるように、好ましくはクリアランスY1,Y2それぞれの最大値の合計より大きくなるように、設けられる。これにより、第1ヒンジ部材20と第2ヒンジ部材40とが近接する方向の力が発生しても、第1カバー70と第2ナックル部44との接触をより確実に抑制することができる。
【0027】
本実施の形態では、第1カバー70は2つの凸部76を有する。2つの凸部76は、一方の凸部76が一方の第1ナックル部24に当接し、他方の凸部76が他方の第1ナックル部24に当接するように配置される。したがって、2つの凸部76は、軸方向Axにおける第1カバー70の中央部を挟んで、すなわち軸方向Axで貫通孔78、言い換えれば第1カバー70の固定点を挟んで配置される。これにより、第1カバー70の位置ずれをより確実に抑制することができる。また、ヒンジ10が使用されている状況で、作業者が第1カバー70に触れた場合や物が落下して第1カバー70にぶつかった場合等、外部から第1カバー70に力がかかった場合であっても、第1カバー70と第2ナックル部44との接触をより確実に抑制することができる。
【0028】
また、一方の凸部76は、第1カバー70の鉛直方向の中央部よりも鉛直方向下方に位置している。扉4にかかる重力によって、通常、連結部Bにおける鉛直方向上方側には第1ヒンジ部材20と第2ヒンジ部材40とが離間する方向の力が発生しやすく、連結部Bにおける鉛直方向下方側には第1ヒンジ部材20と第2ヒンジ部材40とが近接する方向の力が発生しやすい。このため、鉛直方向上方側よりも鉛直方向下方側の方が、第2ナックル部44と第1カバー70とが接触しやすい。これに対し、少なくとも1つの凸部76を、第1カバー70の鉛直方向中央部よりも鉛直方向下方に配置することで、第1カバー70と第2ナックル部44との接触をより確実に抑制することができる。また、他方の凸部76は、第1カバー70の鉛直方向の中央部よりも鉛直方向上方に位置している。
【0029】
第2カバー80は、第1カバー70と同様の構造を有する。すなわち、第2カバー80は、開口82を有する底の浅い筐体であり、第2ベース部42を被覆する。これにより、第2ヒンジ部材40を扉4に固定する固定具92や、固定具92が挿通される貫通孔46等を隠蔽することができる。第2カバー80は、収容庫1に固定された第2ヒンジ部材40に取り付けられた状態で、筐体内部に第2ベース部42を収容し、開口82が収容庫1の表面で塞がれる。第2カバー80は、例えば、ABS等の樹脂で形成することができる。
【0030】
第2カバー80は、平面視で略矩形状であり、連結部Bと対向する面84に凸部86を有する。また、第2カバー80は、外主表面側から筐体内部側へ貫通する貫通孔88を有する。本実施の形態では、第2カバー80は、軸方向Axにおける中央部に1つの貫通孔88を有する。第2カバー80は、貫通孔88及び第2ベース部42の貫通孔50とに固定具96が挿通されることで、第2ベース部42に固定される。すなわち、第2カバー80は、第2ヒンジ部材40に一点固定される。
【0031】
第2カバー80が第2ベース部42に固定された状態で、凸部86は、第2カバー80が取り付けられる第2ヒンジ部材40の第2ナックル部44に当接する。凸部86が第2ナックル部44に当接することで、第2カバー80の面84と連結部Bとの間にクリアランスXが生じる。したがって、第2カバー80と第1ヒンジ部材20の第1ナックル部24とを、クリアランスXの分だけ離間させることができる。また、第2カバー80は、凸部86が第2ナックル部44に当接しているため、固定具96を回動軸とした位置ずれが抑制される。これにより、第2カバー80と第1ヒンジ部材20の第1ナックル部24との接触を回避することができるため、第2カバー80と第1ナックル部24とが擦れて第2カバー80が摩耗することを抑制することができる。
【0032】
また、凸部86は、第2カバー80と第1ナックル部24との間のクリアランスXが、第1ナックル部24のピン孔28とヒンジピン60との間のクリアランスY1と第2ナックル部44のピン孔とヒンジピン60との間のクリアランスY2との合計より大きくなるように設けられる。これにより、第1ヒンジ部材20と第2ヒンジ部材40とが近接する方向の力が発生しても、第2カバー80と第1ナックル部24との接触をより確実に抑制することができる。なお、本実施の形態では、第2カバー80と第1ナックル部24との間のクリアランスXの大きさは、第1カバー70と第2ナックル部44との間のクリアランスXの大きさと同一であるが、2つのクリアランスXの大きさは異なってもよい。
【0033】
本実施の形態では、第2カバー80は2つの凸部86を有する。2つの凸部86は、一方の凸部86が3つの第2ナックル部44のうち一方の外側の第2ナックル部44に当接し、他方の凸部86が他方の外側の第2ナックル部44に当接するように配置される。したがって、2つの凸部86は、軸方向Axにおける第2カバー80の中央部を挟んで、すなわち軸方向Axで貫通孔88、言い換えれば第2カバー80の固定点を挟んで配置される。これにより、第2カバー80の位置ずれをより確実に抑制することができる。また、ヒンジ10が使用されている状況で、作業者が第2カバー80に触れた場合や物が落下して第2カバー80にぶつかった場合等、外部から第2カバー80に力がかかった場合であっても、第2カバー80と第1ナックル部24との接触をより確実に抑制することができる。
【0034】
また、一方の凸部86は、第2カバー80の鉛直方向の中央部よりも鉛直方向下方に位置している。上述した理由により、連結部Bの鉛直方向上方側よりも鉛直方向下方側の方が、第1ナックル部24と第2カバー80とが接触しやすい。このため、少なくとも1つの凸部86を、第2カバー80の鉛直方向中央部よりも鉛直方向下方に配置することで、第2カバー80と第1ナックル部24との接触をより確実に抑制することができる。また、他方の凸部86は、第2カバー80の鉛直方向の中央部よりも鉛直方向上方に位置している。
【0035】
本実施の形態のヒンジ10において、第1ヒンジ部材20、第2ヒンジ部材40、第1カバー70及び第2カバー80は、軸方向Axに対して直交するそれぞれの中心線を対称軸とした略線対称の形状を有する。これにより、ヒンジ10を設ける位置が筐体2及び扉4の左右どちら側であっても、ヒンジ10を設計変更することなく用いることができる。第1カバー70及び第2カバー80の凸部は、軸方向Axに対して直交するカバーの中心線を対称軸として略線対称の位置に配置されていなくても、軸方向Axに対して直交し且つカバーの固定点を通る線を挟んで両側の位置に、好ましくは当該線を対称軸として略線対称の位置に配置することで、上述した効果を得ることができる。
【0036】
なお、面74の一部が連結部Bから遠ざかる方向に凹み、残った部分が凸部76であると捉えることもできる。また、凸部76は、軸方向Axに対して直交する方向から見て、軸方向Axの幅が第1ナックル部24の延在範囲内に収まる大きさを有する。すなわち、第1カバー70は、連結部Bと対向する面に、第1ナックル部24の少なくとも一部に当接する領域(すなわち凸部76)と、少なくとも第2ナックル部44の延在範囲全体と重なり、第1ナックル部24と当接する領域よりも凹んだ領域とを有する。
【0037】
第2カバー80についても同様に、面84の一部が連結部Bから遠ざかる方向に凹み、残った部分が凸部86であると捉えることもできる。また、凸部86は、軸方向Axに対して直交する方向から見て、軸方向Axの幅が第2ナックル部44の延在範囲内に収まる大きさを有する。すなわち、第2カバー80は、連結部Bと対向する面に、第2ナックル部44の少なくとも一部に当接する領域(すなわち凸部86)と、少なくとも第1ナックル部24の延在範囲全体と重なり、第2ナックル部44と当接する領域よりも凹んだ領域とを有する。
【0038】
以上説明したように、本実施の形態に係るヒンジ10では、第1ベース部22に固定される第1カバー70が第1ナックル部24に当接する凸部76を有し、第2ベース部42に固定される第2カバー80が第2ナックル部44に当接する凸部86を有する。これにより、第1カバー70と第2ヒンジ部材40の第2ナックル部44とを、クリアランスXだけ離間させることができる。また、第2カバー80と第1ヒンジ部材20の第1ナックル部24とを、クリアランスXだけ離間させることができる。このため、カバーと、このカバーが取り付けられたヒンジ部材とは反対のヒンジ部材のナックル部との接触を抑制することができ、この結果、カバーの摩耗を抑制することができる。
【0039】
また、第1カバー70は、第1ヒンジ部材20に一点固定されるとともに、2つの凸部76が軸方向Axにおいて第1カバー70の固定点を挟んで配置される。同様に、第2カバー80は、第2ヒンジ部材40に一点固定されるとともに、2つの凸部86が軸方向Axにおいて第2カバー80の固定点を挟んで配置される。これにより、カバーがヒンジ部材に対して一点固定される場合であっても、固定点を回動中心としたカバーの位置ずれを抑制することができる。このため、カバーと、このカバーが取り付けられたヒンジ部材とは反対のヒンジ部材のナックル部との接触を抑制することができ、この結果、カバーの摩耗を抑制することができる。また、ヒンジ10が使用されている状況で、作業者が第2カバー80に触れた場合や物が落下して第2カバー80にぶつかった場合等、外部から第2カバー80に力がかかった場合であっても、第1カバー70と第2ナックル部44との接触、及び第2カバー80と第1ナックル部24との接触をより確実に抑制することができる。
【0040】
また、カバーの凸部は、カバーをヒンジ部材に取り付ける際のカバーの位置決めにも用いることができる。このため、ヒンジ10の組み立て工程を簡略化することができる。さらに、凸部によってクリアランスXを一定に保つことができるため、ヒンジ10の外観上の見栄えを向上させることができる。
【0041】
また、本実施の形態に係る収容庫1では、カバーの摩耗を抑制することができるヒンジ10によって、筐体2と扉4とが連結されている。これにより、収容庫1に収容される物品がカバーの摩耗粉で汚染されることを抑制することができるため、収容庫1の収容性能をより高めることができる。
【0042】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更などのさらなる変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれる。上述した実施の形態への変形の追加によって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態、及び変形それぞれの効果をあわせもつ。
【0043】
上述した実施の形態では、第1ヒンジ部材20は2つの第1ナックル部24を有する。しかしながら、第1ナックル部24の数は限定されず、1つあるいは3つ以上であってもよい。また、第2ヒンジ部材40についても同様に、その数は限定されず、2つ以下あるいは4つ以上であってもよい。また、凸部76,86の数、形状も限定されない。したがって、ヒンジ10は、例えば、以下の構造であってもよい。
【0044】
図5は、変形例に係るヒンジの一例を示す平面図である。以下、変形例に係るヒンジについて実施の形態と異なる構成を中心に説明する。実施の形態と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は適宜省略する。
【0045】
変形例に係るヒンジ10では、第1ヒンジ部材20(
図2参照)が1つの第1ナックル部24を有し、第1カバー70が1つの凸部76を有する。第1ナックル部24は、軸方向Axにおける第1ヒンジ部材20の中心部に配置される。凸部76は、軸方向Axにおける第1カバー70の中心部、すなわち固定具94から軸方向Ax両側に広がるように延在する。したがって、凸部76は、その一部と他部が、軸方向Axにおいて第1カバー70の固定点を挟んで配置される。前記「一部」とは、例えば凸部76の一方の端部を意味し、前記「他部」とは、同じ凸部における他方の端部を意味する。また、凸部76の一部、すなわち凸部76の一方の端部は、第1カバー70の鉛直方向の中央部よりも鉛直方向下方に位置し、凸部76の他部、すなわち凸部76の他方の端部は、当該中央部よりも鉛直方向上方に位置する。
【0046】
また、第2ヒンジ部材40(
図2参照)が2つの第2ナックル部44を有し、第2カバー80が2つの凸部86を有する。2つの第2ナックル部44は、軸方向Axで第1ヒンジ部材20を挟んで配置される。2つの凸部86は、一方の凸部86が一方の第2ナックル部44に、他方の凸部86が他方の第2ナックル部44に当接する。したがって、一方の凸部86と他方の凸部86が、軸方向Axにおいて第2カバー80の固定点を挟んで配置される。また、一方の凸部86は、第2カバー80の鉛直方向の中央部よりも鉛直方向下方に位置し、他方の凸部86は、当該中央部よりも鉛直方向上方に位置している。このような変形例に係るヒンジ10であっても、上述した実施の形態に係るヒンジ10と同様の効果を奏することができる。
【0047】
上述した実施の形態及び変形例では、ヒンジ10は第1カバー70及び第2カバー80の両方を備えるが、いずれか一方のカバーのみを備えてもよい。すなわち、ヒンジ10は、第1ベース部22を被覆する第1カバー70及び第2ベース部42を被覆する第2カバー80の少なくとも一方を備える。
【0048】
また、上述した実施の形態及び変形例では、第1ヒンジ部材20及び第2ヒンジ部材40の両方が凸部を有するカバーで覆われているが、第1ベース部22及び第2ベース部42の一方のみが凸部を有するカバーで覆われ、他方のベース部は従来公知の、凸部を有しないカバーで覆われてもよい。すなわち、ヒンジ10は、第1カバー70のみを備える場合は第1カバー70が凸部76を有し、第2カバー80のみを備える場合は第2カバー80が凸部86を有し、第1カバー70及び第2カバー80を備える場合は、第1カバー70及び第2カバー80の少なくとも一方が凸部を有する。一方のカバーのみが凸部を有する場合であっても、当該一方のカバーについては摩耗粉の発生を抑制することができるため、汚染の原因を減少させることができる。
【0049】
また、上述した実施の形態及び変形例では、第1カバー70及び第2カバー80は、軸方向Axに対して直交する方向の長さが異なるが、第1カバー70と第2カバー80とは同一形状であってもよい。