特許第6392118号(P6392118)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392118
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】弾性積層体を形成する方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20180910BHJP
   A61F 13/496 20060101ALI20180910BHJP
   B29C 65/08 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   A61F13/15
   A61F13/496
   B29C65/08
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-518484(P2014-518484)
(86)(22)【出願日】2011年6月30日
(65)【公表番号】特表2014-520589(P2014-520589A)
(43)【公表日】2014年8月25日
(86)【国際出願番号】SE2011050878
(87)【国際公開番号】WO2013002691
(87)【国際公開日】20130103
【審査請求日】2014年6月24日
【審判番号】不服2016-14244(P2016-14244/J1)
【審判請求日】2016年9月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】506215320
【氏名又は名称】エスセーアー・ハイジーン・プロダクツ・アーベー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ペル・フロベルク
(72)【発明者】
【氏名】マッツ・キンダーダル
(72)【発明者】
【氏名】インゲ・ヴォグダール
【合議体】
【審判長】 渡邊 豊英
【審判官】 久保 克彦
【審判官】 井上 茂夫
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2004/005834(US,A1)
【文献】 国際公開第02/22343(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0095978(US,A1)
【文献】 特開2008−260131(JP,A)
【文献】 特表2009−539423(JP,A)
【文献】 特開2009−166325(JP,A)
【文献】 特開2002−90945(JP,A)
【文献】 特開2002−23311(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15
A61F13/496
B29C65/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの弾性フィルム(11)と、前記弾性フィルム(11)の各面に積層させた少なくとも2つの不織ウェブ(12、13)とを備える弾性積層体(10)を形成する方法であって、
弾性フィルム(11)を用意し、前記弾性フィルム(11)を接合ステーション(14)の方へと機械方向に送る段階と、
前記弾性フィルム(11)をその元の長さの1.5から8倍の延伸比で前記機械方向に延伸させ、それによって延伸フィルムを形成する段階と、
前記延伸フィルムと、前記少なくとも2つの不織ウェブ(12、13)とを前記接合ステーション(14)で積層させる段階と
を含む方法において、
前記弾性フィルム(11)を少なくとも2回の延伸段階で延伸させてから、前記弾性フィルム(11)を前記少なくとも2つの不織ウェブ(12、13)と積層させ、全延伸の5から25%の間の延伸が、前記接合ステーション(14)での積層の前の最後の延伸段階で行われ、前記弾性フィルム(11)が、少なくとも2個の延伸ロール(17〜20)を通過してから前記接合ステーション(14)に入り、前記最後の延伸段階が、最後の延伸ロール(20)と前記接合ステーション(14)との間で行われ
前記弾性フィルム(11)と、前記少なくとも2つの不織ウェブ(12、13)とが、熱接合または超音波溶接によって、複数の接合要素(24)を備える、ある接合パターンで積層され、
前記接合要素(24)の少なくともいくつかのところで、またはその近傍で、前記弾性フィルム(11)に孔(25)が形成され、前記弾性フィルムが延伸の結果として破断することによって前記孔が生じることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記弾性フィルム(11)が、少なくとも3個の延伸ロール(17〜20)を通過してから前記接合ステーション(14)に入ることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記弾性フィルム(11)が、少なくとも3回の段階で延伸されてから前記接合ステーション(14)に入ることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項4】
隣接する延伸ロール(17〜20)間の自由長(a)が、10から150mmの間であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記弾性積層体(10)の坪量が、40から100g/mの間であり、前記弾性フィルム(11)の坪量が、20から60g/mの間であることを特徴とする、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの弾性フィルムと、少なくとも2つの不織ウェブとを備える弾性積層体を形成する方法に関する。弾性フィルムと不織ウェブとは、弾性フィルムを延伸させた状態で保持しながら積層される。
【背景技術】
【0002】
弾性積層体材料は通常、吸収性物品、特にパンツ式おむつ、生理用パンツ、失禁用パンツなどのパンツ様吸収性物品に組み込まれている。かかる物品は、パンツ形シャシに配置された吸収性ユニットを備え、パンツと同様に着用される。弾性積層体材料は、パンツ様吸収性物品の前部および/または後部の本体パネルの一部として、かつ/または弾性側部パネルとして組み込むことができる。
【0003】
弾性フィルムを少なくとも1つの不織層に接合する間、弾性フィルムを機械方向(MD)に延伸させた状態にしておくと、不織層は、弛緩状態で、接合箇所間でギャザーを寄せることができ、したがってこの積層体材料は、前記機械方向に弾性的に延伸可能となる。融着によるかかる接合、例えば熱接合または超音波溶接によって実現される接合によって、接合箇所、またはそこに隣接する箇所でフィルムに孔が形成されることになり得る。こうした孔の形成によって、弾性フィルムおよび積層体に通気性が生じることになり、これは有利であり、吸収性物品の着用者がより快適になる。
【0004】
WO2008/026106には、吸収性物品に組み込むのに適した、通気性のある弾性積層体が開示されている。この積層体は、弾性フィルムと不織ウェブとを備え、不織ウェブは、フィルムを延伸させた状態のまま、複数の接合箇所で融着することによって一体に接合されている。融着と同時に、不織ウェブのポリマー材料が実質的に軟化することなく、接合箇所でフィルムに孔が形成される。
【0005】
WO2009/138887には、不織外面に積層させた多層弾性フィルムから潜在弾性複合材を形成する方法が開示されている。この弾性多層フィルムは、1.5から7.0の延伸比で機械方向に延伸され、それによって延伸弾性フィルムを形成している。この延伸弾性フィルムは、少なくとも10%の弛緩率に達するまで弛緩され、その後弛緩状態で不織ウェブの外面に積層される。
【0006】
米国特許出願公開第2010/0139846号には、高ロフト性エラストマ基材を接合する方法が開示されており、この文献では、高ロフト性エラストマ基材が、延伸状態で接合ステーションに導入される。
【0007】
国際出願PCT/SE2010/050986には、少なくとも1つの弾性フィルム層と、少なくとも1つの不織層とを備える弾性積層体が開示されている。弾性フィルムと不織層とは、フィルムと不織層とがそこで一体に融着される複数の接合要素を備える、ある接合パターンで一体に接合されている。この弾性フィルムは、接合中、延伸状態で保持される。接合要素近傍で、延伸の結果フィルムが破断することによって、弾性フィルムに孔が形成される。これらの孔によって、フィルムに通気性が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO2008/026106
【特許文献2】WO2009/138887
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/0139846号
【特許文献4】国際出願PCT/SE2010/050986
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
接合が制御された形で行われることになるように、弾性フィルムを不織ウェブに接合する前に弾性フィルムを延伸させる工程が制御される、弾性積層体を製造する方法がなおも求められている。こうした制御は、延伸弾性フィルムが、融着によってある接合パターンで不織ウェブに接合され、接合要素のところで、またはその近傍でフィルムに孔が形成される場合、特に重要となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、少なくとも1つの弾性フィルムと、少なくとも2つの不織ウェブとを備える弾性積層体を形成する方法であって、
弾性フィルムを用意し、その弾性フィルムを接合ステーションの方へと機械方向に送る段階と、
前記弾性フィルムをその元の長さの1.5から8倍の延伸比で機械方向に延伸させ、それによって延伸フィルムを形成する段階と、
延伸フィルムと、少なくとも2つの不織ウェブとを積層させる段階と
を含み、
前記弾性フィルムを少なくとも2回の延伸段階で延伸させてから、前記弾性フィルムを前記少なくとも2つの不織ウェブと積層させ、全延伸の5から25%の間の延伸が、積層前の最後の延伸段階で行われる、方法が提供される。
【0011】
弾性フィルムと、少なくとも2つの不織ウェブとは、熱接合または超音波溶接によって、複数の接合要素を備える、ある接合パターンで積層させることができる。
【0012】
接合要素の少なくともいくつかのところで、またはその近傍で、弾性フィルムに孔を形成することができ、前記孔は、延伸の結果弾性フィルムが破断することによって生じる。
【0013】
弾性フィルムは、少なくとも2個の延伸ロールを通過してから接合ステーションに入ることができ、最後の延伸段階は、最後の延伸ロールと接合ステーションとの間で行われる。
【0014】
弾性フィルムは、少なくとも3個の延伸ロールを通過してから接合ステーションに入ることができる。
【0015】
弾性フィルムは、少なくとも3回の段階で延伸させてから接合ステーションに入ることができる。
【0016】
隣接する延伸ロール間の自由長は、10から150mmの間でよい。
【0017】
積層体の秤量は、40から100g/m2の間でよく、弾性フィルムの坪量は、20から60g/m2の間でよい。
【0018】
定義
用語「機械方向」または「MD」とは、材料、本発明の場合は弾性積層体が作製される方向を指す。用語「機械横断方向」または「CD」とは、機械方向に垂直な方向を指す。
【0019】
用語「弾性」または「エラストマ」とは、延伸力を加えると少なくとも一方向、例えばMD方向に延伸可能であり、延伸力を解放すると収縮する、すなわちその元の寸法に戻る材料を指す。弾性材料とは、材料に30%の伸びを施した後の弛緩後に10%未満の永久伸びを有する材料として定義される。30%の伸びとは、サンプルの最初の長さよりも30%長い長さへの伸びを意味する。材料は、以下の「弾性試験」で説明するように、引張り試験機Lloyd LRXで試験する。
【0020】
用語「延伸比」とは、延伸させたフィルムの長さを延伸前の長さで割ったものとして定義される。
【0021】
いくつかの実施形態を示す添付の図面を参照しながら、本発明について以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態による、弾性積層体を形成する方法を示す概略図である。
図2】弾性積層体を接合する接合パターンの一例を示す概略図である。
図3】弾性本体パネルを有するパンツ型吸収性物品の一例を示す図である。
図4】弾性側部パネルを有するパンツ型吸収性物品の別の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明による弾性積層体材料10は、少なくとも1つの弾性フィルム11と、その弾性フィルム層を間に有する少なくとも2つの繊維不織層12、13とを備える。適切な不織材料および弾性フィルムが、弾性積層体の使用目的に応じて選択される。吸収性物品に使用するのに適した材料を以下に示す。
【0024】
図1に示す方法では、層11、12、および13は、接合ステーション14で複数の接合要素を備える、ある接合パターンで一体に接合され、これらの複数の接合要素で、弾性フィルム11と、不織ウェブ12および13とが一体に融着される。接合技術は、熱点接合(thermal point bonding)、超音波接合などでよい。熱点接合は、2つのロール間で形成されるニップを利用するものであり、ロールの少なくとも一方にパターンが付けられている。ロールの一方、または両方を加熱する。超音波接合は、超音波ホーン15と、パターン付きロール16との間で形成される接合ニップを利用するものである。両技術とも、それ自体は当技術分野で周知であり、パターン付きロール16は、ある接合パターンでフィルムを不織層に接合する複数の隆起接合要素を備え、この接合パターンは隆起接合要素によって形成される。
【0025】
弾性フィルム11は、接合中、延伸状態にあり、前記延伸は、積層体の機械方向(MD)に行われる。延伸の程度は、その元の長さの少なくとも1.5倍、好ましくはその元の長さの3から8倍の範囲でなければならない。この延伸は、以下でより詳細に説明するように、少なくとも2回の延伸段階で行われる。
【0026】
フィルム11の弛緩後、不織層12、13は接合箇所間でギャザーを寄せることができ、したがって積層体材料10は前記機械方向に弾性的に延伸可能となる。
【0027】
弾性フィルム11は、数個の延伸ロール17、18、19、および20を通過してから、超音波ホーン15と、パターン付きロール16とで形成される接合ステーション14で不織層12および13に積層される。延伸ロールの個数は、図1に示す実施形態では4個である。延伸ロールの個数は2個以上でなければならず、3個、4個、5個、または6個以上でもよい。延伸ロールは、平滑な高摩擦表面、例えばポリマーコーティングを有する。適切な高摩擦ポリマーコーティングの一例は、PlasmaCoat 30301/4001F-12である。
【0028】
弾性フィルム11は、2個以上の延伸ロール間、例えばロール17と18との間で、ロール18をロール17よりも高い周速度で運転することによって延伸させる。本発明によれば、弾性フィルム11は、少なくとも2回の延伸段階で延伸させる。最後の延伸段階は、最後の延伸ロール20と接合ステーション14との間で行われる。弾性フィルムの全延伸の5から25%の間の延伸が、この最後の延伸段階で行われる。したがって、弾性フィルムの全延伸の75から95%の間の延伸が、延伸ロール17〜20の間の1回または複数回の段階で行われる。
【0029】
弾性フィルム11の、パターン付きロール16に対する抱き角を調節するために、ガイドロール21が最後の延伸ロール20と接合ステーション14との間に配置されている。不織ウェブ12および13用にガイドロール22および23がやはり、接合ステーション14の前に設けられている。
【0030】
弾性フィルム11のいわゆる「ネッキング」が最小限に抑えられることが望ましく、この「ネッキング」とは、延伸中の幅方向(CD)におけるフィルムの収縮を指す。ネッキングは、延伸ロール17〜20間の間隔を最小限にすることによって防止または低減される。隣接する延伸ロール間の間隔は、ロール間の自由長「a」、すなわちフィルムが1つのロールから離れる点と、フィルムが次のロールと接触する点との間の間隔として測定することができる。この自由長「a」は、フィルムのネッキングを最小限に抑えるには、10から150mmの間でよい。
【0031】
不織ウェブ12、13と弾性フィルム11とがそこで一体に接合される、接合パターンの接合要素24をどのように選択するかに応じて、接合要素24の少なくともいくつかの近傍で弾性フィルムに孔25を形成することができる。この様子を図2に示す。これらの孔25は、延伸の結果弾性フィルムが破断することによって形成されている。これらの孔25は、それぞれの接合要素24の領域の外側に位置することができ、接合要素近傍の領域においてフィルムに張力が加わるため形成される。「近傍で」とは、孔がそれぞれの接合要素の周辺から延在することを意味する。これらの孔は、実質的にMD方向に延在し、それぞれの接合要素24の前方かつ/または後方に位置することができる。これらの孔によって、弾性積層体10に通気性が得られる。
【0032】
このことは、国際出願PCT/SE2010/050986にさらに詳細に記載されており、この文献には、フィルムに孔が形成されることになる接合パターンの例が示されている。
【0033】
最後の延伸段階が、最後の延伸ロールと接合ステーションとの間で行われる、2段階以上で弾性フィルムを延伸させる上述の方法によって、弾性フィルムは、接合直前まで広がった状態(open up)となり、その結果接合の制御が向上し、作製される弾性積層体の特性が改善される。フィルムは、延伸中、反応性がより高くなり、したがって接合中に「広がった状態」になる。このことは、接合中にフィルムに孔が形成される場合、特に重要となり、多段階延伸によって、孔の形成の制御が改善され、したがって積層体の通気性の制御が改善されることになる。
【0034】
この弾性積層体は、吸収性物品に使用することができる。用語「吸収性物品」とは、着用者の肌に接して配置され、尿、便、および月経液などの身体からの滲出物を吸収する製品を指す。かかる吸収性物品は使い捨てであることが多く、これは使用後に、洗濯またはその他の形で、吸収性物品として再生または再利用することが意図されない物品を意味する。弾性積層体を備える吸収性物品は、好ましくはパンツ式おむつ、生理用パンツ、または失禁用パンツなどのパンツ型吸収性物品である。
【0035】
図3は、幼児、もしくは失禁症の成人、または生理用パンツ向けのパンツ型吸収性物品26の実施形態を示す。前記パンツ物品は通常、前部パネル28、後部パネル29、股部分30、および弾性腰部バンド31を含むシャシ27を備える。吸収性コア33を備えるコア領域32が、この物品の少なくとも股部分30に配置され、前部パネル28および後部パネル29まである距離で延在している。股部分30は、本明細書では着用者の両脚間の股部に着用されることになる、物品の狭い部分として画定されている。さらなる実施形態(図示せず)では、前部パネルと後部パネルとは互いに分離しており、吸収性コアを備えるコア領域が、前部パネルと後部パネルとの間の間隙をつないでいる。
【0036】
コア領域32は、吸収性コア33の下にある液体不浸透性バックシート34と、吸収性コアの着用者に面する側にある液体浸透性トップシート(図示せず)とをさらに備える。吸収性コア、バックシート、およびトップシートは、吸収性物品に一般に使用されている材料のものでよい。
【0037】
この物品は、長手方向yおよび横方向xを有する。
【0038】
本発明の一実施形態によれば、吸収性コア33の表面積は、物品を平坦な状態で測定した場合に、この物品の全表面積の30%未満、好ましくは20%未満に相当する。用語「平坦な状態」とは、本明細書では、脇縫い目が開かれ、張力のかかるいずれの弾性部材も張力が解除された、張力のかかっていない開いた状態を意味する。
【0039】
弾性積層体10は、コア領域32および全シャシ領域27を含めて、物品全体を覆うことができる。しかし、好ましい実施形態によれば、物品の股部分30の大部分には弾性ウェブ材料10がない。「大部分」とは、本明細書では、少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%を指す。シャシ領域の腰部領域にもやはり、弾性積層体10がなくともよく、別個の弾性腰部バンド31を備えることができる。弾性腰部バンド31は、不織材料などの材料層間に収縮可能に取り付けられた、弾性糸などの弾性部材35によって伸縮性を持たせた不織材料を備える。かかる弾性部材35はまた、物品の脚開口部の周囲に配置してもよい。超音波溶接37、接着ストリング(glue string)などによって、弾性積層体10を弾性腰部バンド31に接合する。
【0040】
物品の股部分にある液体不浸透性バックシート34の、衣服に面する側に不織材料を配置することができる。不織材料は、超音波溶接37、接着ストリングなどによって弾性積層体10に接合される。
【0041】
弾性積層体10は、好ましくは外側カバーシート材料としてだけでなく、シャシ27の前部領域28の少なくとも大部分を覆う内側カバーシート材料として配置され、この前部領域28は、使用時に、腰部領域を除いて着用者の腹部に接してあてがわれることになる。「大部分」とは、本明細書では、シャシの前部領域の表面積の少なくとも50%、好ましくは表面積の少なくとも75%を指す。弾性積層体10は、外側カバーシート材料としてだけでなく、シャシ27の前部領域28および後部領域29の両方を覆う内側カバーシート材料として配置されることがさらに好ましい。したがって、追加のバックシートまたはトップシート材料が必要でなく、この弾性ウェブ材料が、シャシ27のこれらの部分の単体構成要素を成す。上記で示したように平坦な状態で見たときに、物品の全表面積の少なくとも20%、好ましくは少なくとも25%、より好ましくは少なくとも30%、および最も好ましくは少なくとも40%において、弾性積層体10はシャシの単体構成要素を成す。
【0042】
シャシ27の前部パネルおよび後部パネル28および29を覆う外側カバーシートは、弾性積層体材料10を備え、この材料10は物品の少なくとも横x方向に弾性である。x方向における弾性は、以下で具体的に述べる弾性試験によって測定した場合に、少なくとも30%、好ましくは少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%でなければならない。物品の横x方向は、本明細書では上述の弾性積層体のMD方向に対応する。
【0043】
パンツ型吸収性物品の前部パネル28および/または後部パネル29として使用される弾性積層体では、この積層体は少なくとも3つの層、すなわち第1および第2の外側不織層12、13を備え、これらの層は、内側弾性フィルム層11とともに、例えば指の爪によって穴が開くのを防止するように、弾性積層体10に高い破れ耐性をもたらすように選択される。これらの層はまた、積層体に柔軟で布のような風合いをもたらす。適切な材料の例として、カードウェブ、およびスパンボンド材料がある。繊維材料層の坪量は、10から35g/m2の間、好ましくは12から30g/m2の間、より好ましくは13から25g/m2の間でなければならない。繊維材料に使用するのに適したポリマーの例として、ポリエチレン、ポリエステル、ポリプロピレン、ならびに他のポリオレフィンホモポリマーおよびコポリマーがある。天然繊維、例えば綿もやはり、求められる特性をもたらす限り、使用することができる。ポリマーの混合体は、不織層により高い可撓性を与える一助となり得、それによって不織材料が最大荷重でより高い伸びを生じることができる。ポリエチレンポリマーとポリプロピレンポリマーとの混合体により、この点で良好な結果が得られることが判明している。様々なポリマーからなる繊維の混合体もやはり、使用可能である。不織層12、13は、積層体の引張り強さが、その使用目的に十分となるように選択しなければならない。
【0044】
弾性フィルム11は、好ましくは20から80g/m2の間、好ましくは20から60g/m2の間の坪量を有する。弾性フィルム11は、天然ポリマーでも合成ポリマーでも、適切ないかなる弾性ポリマーのものでもよい。弾性フィルムに適した材料のいくつかの例として、低結晶性ポリエチレン、メタロセン触媒低結晶性ポリエチレン、エチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリウレタン、ポリイソプレン、ブタジエン-スチレンコポリマー、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)などのスチレンブロックコポリマー、またはスチレン/エチレン-ブタジエン/スチレンブロックコポリマーがある。これらのポリマーの混合物、ならびに他の変性エラストマ材料、または非エラストマ材料もやはり使用することができる。適切な弾性フィルムの一例は、PE-SEBS-PEからなる3層エラストマフィルムである。
【0045】
弾性積層体10の全坪量は、好ましくは40から100g/m2の間、より好ましくは90g/m2以下である。
【0046】
本発明による弾性積層体は、パンツ型吸収性物品に、物品の前部パネルおよび後部パネルの少なくとも一方の、脇縫い目間全体にわたって弾性積層体を延在させて使用することを主な目的としているが、この弾性積層体はまた、例えば吸収性物品の弾性側部パネルを形成するために使用してもよい。図4は、弾性側部パネル38を備えるパンツ型吸収性物品を示す。この物品は、前部本体パネル39、および後部本体パネル40、ならびに股部分41をさらに備える。前部および後部の本体パネル、ならびに股部分は一般に、液体不浸透性バックシート、液体浸透性トップシート、およびバックシートとトップシートとの間に配置された吸収性コア42で構成される。吸収性コア、バックシート、およびトップシートは、吸収性物品に通常使用される材料のものでよい。バックシートは、フィルム層に積層させた不織材料層をさらに備えることができ、その場合、フィルムバックシートだけで通常得られる風合いよりも布に近く、衣服のような風合いが得られる。
【0047】
より快適で、かつ体型に沿ったフィット感が確実となるように、弾性的に延伸可能な側部パネル38が設けられている。この弾性側部パネル38、または少なくともその一部は、本発明による弾性積層体10を備えることができる。脚周りおよび腰周りでのフィット感を高めるために、脚部弾性領域、および腰部弾性領域をそれぞれ設けてもよい。
【0048】
試験方法
弾性試験
この方法は、負荷除荷サイクルを繰り返したときに弾性材料がどのように振る舞うかを測定するものである。サンプルを所定の伸びまで延伸させ、0から前記所定の伸びまでの間で周期的な運動を実施する。所望の負荷除荷力が記録される。弛緩した材料の永久伸び、すなわち残留伸びを測定する。
【0049】
周期的な運動を実施することができ、プリンタ/プロッタ、またはソフトウェアによる表示を装備した引張り試験機Lloyd LRXを使用する。サンプルは、幅が25.4mm、長さが引張り試験機のクランプ間の間隔よりも好ましくは50mm長い長さに切断することによって準備する。
【0050】
引張り試験機は、その装置の使用説明書に従って較正する。試験(負荷除荷力)に必要となるパラメータを以下のように調節する。
・クロスヘッド速度:500mm/分
・クランプ間隔:50mm
・予荷重:0.05N
【0051】
サンプルを50%RH±5%RH、かつ23℃±1℃で少なくとも4時間に条件設定し、マークに従ってサンプルをクランプに配置し、サンプルが中心に合っているか、クランプに垂直に固締されているか確認する。引張り試験機を始動させ、0から所定の伸び、すなわち最大に規定された第1の荷重に等しい伸びまでの間で3サイクル実施する。最後のサイクルの前に、サンプルを1分間弛緩させ、その後0.1Nの力が検出されるまでサンプルを延伸させ、その伸びを読み取ることによって永久伸びを測定する。
【0052】
弾性材料とは、材料に30%の伸びを施した後の弛緩後に10%未満の永久伸びを有する材料として定義される。30%の伸びとは、サンプルの最初の長さよりも30%長い長さへの伸びを意味する。したがって、少なくとも30%の弾性を有する材料とは、上記の引張り試験機で30%の伸びを加えた後の弛緩後に、10%未満の永久伸びを有しなければならない材料として定義される。少なくとも50%の弾性を有する材料とは、上記の引張り試験機で50%の伸びを加えた後の弛緩後に、10%未満の永久伸びを有しなければならない材料として定義される。
【0053】
非弾性材料は、30%の伸びを施した後の弛緩後に10%超の永久伸びを有する。
【0054】
実施例
弾性フィルムと、弾性フィルムの各面に積層させた2つの不織層とを備える弾性積層体を作製した。弾性フィルムは、Berry Plasticsの、スチレンベースのコア層、およびポリオレフィンスキン層を有する30gsmの多層フィルムであった。不織層の一方は、Freudenbergの、コードLS4516(白)、グラメジ16gsm、繊度(titre)1.6〜1.8dtexのポリプロピレンスパンボンド不織層であり、不織層の他方は、Freudenbergの、コードLutrasil0519XF、グラメジ19gsm、繊度1.6〜1.8dtexのポリプロピレンスパンボンド不織層であった。
【0055】
弾性フィルムと不織層とを、超音波溶接によって、弾性フィルムと不織ウェブとがそこで一体に融着される複数の接合要素を備える、ある接合パターンで積層させた。この接合パターンは、PCT/SE2010/050986に規定されたものであった。この弾性フィルムを、2回の延伸段階で、その元の長さの4.5倍の延伸比で機械方向に延伸させ、延伸の12%は、上述のように、積層直前の最後の延伸段階で行われた。延伸させたフィルムと不織ウェブとを、フィルムを延伸させた状態で積層させた。上述のように、延伸の結果弾性フィルムが破断することによって、接合要素近傍でフィルムに孔が形成された。作製された弾性積層体は、200Paで12[m3/m2・分]超の平均通気性で通気性が得られた。
【符号の説明】
【0056】
10 弾性積層体
11 弾性フィルム
12、13 不織ウェブ(繊維不織層)
14 接合ステーション
15 超音波ホーン
16 パターン付きロール
17、18、19、20 延伸ロール
21、22、23 ガイドロール
24 接合要素
25 孔
26 パンツ型吸収性物品
27 シャシ
28 前部パネル
29 後部パネル
30 股部分
31 弾性腰部バンド
32 コア領域
33 吸収性コア
34 液体不浸透性バックシート
35 弾性部材
37 超音波溶接
38 弾性側部パネル
39 前部本体パネル
40 後部本体パネル
41 股部分
42 吸収性コア
図1
図2
図3
図4