特許第6392138号(P6392138)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392138
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】内視鏡乾燥保管装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/00 20060101AFI20180910BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   A61B1/00 654
   G02B23/24 Z
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-28051(P2015-28051)
(22)【出願日】2015年2月16日
(65)【公開番号】特開2016-150064(P2016-150064A)
(43)【公開日】2016年8月22日
【審査請求日】2017年12月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】395013348
【氏名又は名称】株式会社アスカメディカル
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】林 延弘
(72)【発明者】
【氏名】小西 幸敏
(72)【発明者】
【氏名】細川 智之
(72)【発明者】
【氏名】松浪 欣也
【審査官】 森川 能匡
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2012/0139398(US,A1)
【文献】 登録実用新案第3180286(JP,U)
【文献】 特開昭62−253024(JP,A)
【文献】 特開2013−070764(JP,A)
【文献】 特開2007−313113(JP,A)
【文献】 特開2008−301875(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00− 1/32
G02B 23/24−23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の内視鏡が収容される収容室を有する保管庫と、
前記収容室内に設けられ、下端が前記保管庫の底部に支持され、上端が前記保管庫の上部に支持された筒状のシャフト部と、
前記シャフト部の内部へ向けて空気を送る送風部と、
前記シャフト部に設けられ、前記シャフト部の内部に連通する複数の連通孔を有し、各連通孔それぞれから前記複数の内視鏡それぞれの管路に送風管を介して空気を供給する空気供給部と、を備える内視鏡乾燥保管装置。
【請求項2】
前記シャフト部に設けられ、前記複数の内視鏡を支持する支持部を更に備える請求項1に記載の内視鏡乾燥保管装置。
【請求項3】
前記支持部及び前記空気供給部は、前記シャフト部の軸周り方向へ回転可能に構成されている請求項2に記載の内視鏡乾燥保管装置。
【請求項4】
前記シャフト部は、前記支持部及び前記空気供給部とともに前記シャフト部の軸周り方向へ回転可能に前記保管庫の上部及び下部に支持されている請求項3に記載の内視鏡乾燥保管装置。
【請求項5】
前記保管庫の上部又は底部に設けられ、空気流入口から流入した空気を溜める空気室を有し、空気流出口を通じて前記空気室と前記シャフト部の内部とを連通する空気バッファ部を更に備える請求項1から4のいずれかに記載の内視鏡乾燥保管装置。
【請求項6】
前記送風部は、前記空気バッファ部に空気を送りこむ送風機を含む請求項5に記載の内視鏡乾燥保管装置。
【請求項7】
前記空気バッファ部は、前記保管庫の上部に設けられており、前記シャフト部の下端は閉塞されている請求項5又は6に記載の内視鏡乾燥保管装置。
【請求項8】
前記空気バッファ部は、前記シャフト部の軸方向のサイズよりも前記軸方向に交差する水平方向のサイズが大きい扁平な直方体形状であり、
前記シャフト部は、前記バッファ部の下面を貫通されて、前記シャフト部の上端が前記空気室に配置されている請求項7に記載の内視鏡乾燥保管装置。
【請求項9】
前記支持部は、前記空気供給部よりも上側に設けられ前記複数の内視鏡それぞれの操作部を支持する第1支持部と、前記空気供給部よりも下側に設けられ前記複数の内視鏡それぞれの接続部を支持する第2支持部を含む請求項2から4のいずれかに記載の内視鏡乾燥保管装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄後の内視鏡を保管するとともに内視鏡が備える管路を乾燥させることが可能な内視鏡乾燥保管装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の体内を観察する際に用いられる医療用機器として、内視鏡が知られている。内視鏡は、体内に挿入される挿入部と、内視鏡を操作するための操作部とを有している。使用後の内視鏡は、血液や粘液などが付着しているため、速やかに洗浄及び消毒してから、乾燥させ、その後、次の使用時まで保管する必要がある。従来、洗浄・消毒後の内視鏡を乾燥させる装置として、特許文献1又は特許文献2に記載されている内視鏡乾燥装置が知られている。これらの内視鏡乾燥装置は、挿入部内の管路にエアーを送風させることにより、内視鏡の外面だけでなく、乾燥しにくい挿入部内の管路を乾燥させるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−41332号公報
【特許文献2】特開2013−70764号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の内視鏡乾燥装置は、保管ケース内に複数の内視鏡を保管して乾燥させる場合、複数の内視鏡それぞれにエアーを圧送させるためのエアー圧送機構を内視鏡の数に応じて複数設ける必要がある(例えば特許文献2参照)。この場合、エアーを内視鏡の挿入部の管路に送るための多数のエアーチューブが必要となる。この場合、多数のエアーチューブが保管ケース内に露出された状態で設けられるため、保管ケース内が煩雑になる。保管ケース内を整然とするために、従来の内視鏡乾燥装置では、エアーチューブを含むエアー圧送機構が一列に並べられて配置されており、各エアー圧送機構ごとに内視鏡が吊り下げられるように構成されている。しかし、このような構成では、保管ケースが大型化するという問題がある。また、多数のエアーチューブが採用されたことによりエアーの送風経路長が長くなると、エアーの圧送時の流路抵抗が大きくなり、その流路抵抗による送風効率が低下することになる。この送風効率の低下を補うために、容量の大きい送風機を適用すると、送風機の大型化に伴い保管ケースも大型化するという問題が生じる。
【0005】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の内視鏡を乾燥させるとともに、乾燥状態を保ったまま複数の内視鏡を保管することができるコンパクトな内視鏡乾燥保管装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の内視鏡乾燥保管装置は、複数の内視鏡が収容される収容室を有する保管庫と、前記収容室内に設けられ、下端が前記保管庫の底部に支持され、上端が前記保管庫の上部に支持された筒状のシャフト部と、前記シャフト部の内部へ向けて空気を送る送風部と、前記シャフト部に設けられ、前記シャフト部の内部に連通する複数の連通孔を有し、各連通孔それぞれから前記複数の内視鏡それぞれの管路に送風管を介して空気を供給する空気供給部と、を備える。
【0007】
このように構成されているため、送風部によってシャフト部の内部に空気が送り込まれると、その空気はシャフト部の内部を通って空気供給部の連通孔から外部の収容室へ向けて流出される。これらの連通孔それぞれに送風管の一方端が連結され、各送風管の他方端は内視鏡の各チャンネルに連結される。なお、各チャンネルは、内視鏡の挿入部内の管路に鉗子を挿入したり、挿入部の先端にエアーを供給したりする用途に用いられるものである。或いは、挿入部の先端から体液を吸引して排出するための排出口として用いられるものである。或いは、内視鏡の接続部からユニバーサルケーブルを介して挿入部の先端に至る管路に給水するための給水口として用いられるものである。これにより、収容室に収容された複数の内視鏡それぞれの前記管路に対して、空気供給部から送風管を介して空気が供給される。この構成において、1本のシャフト部は、空気供給部までの共通の空気経路の役割を担うことになる。そのため、送風部から複数の内視鏡それぞれまで個別に空気管を引き回す必要がなくなり、空気管の本数又は長さを省減することができる。また、空気管の本数又は長さが省減したことにより、空気管に邪魔されることなく収容室の内部空間に内視鏡をまとめて収容することが可能となる。例えば、複数の内視鏡をシャフト部の軸周りに所定角度間隔で配置することができる。これにより、従来の一列配置の内視鏡乾燥装置に比べて、収容室の大きさを小さくすることができ、装置をコンパクトにすることが可能になる。
【0008】
本発明の内視鏡乾燥保管装置は、前記シャフト部に設けられ、前記複数の内視鏡を支持する支持部を更に備える。
【0009】
これにより、複数の内視鏡をシャフト部の周辺にまとめて収容することができる。その結果、内視鏡乾燥保管装置をシャフト部を中心にコンパクトな形状にすることができる。
【0010】
前記支持部及び前記空気供給部は、前記シャフト部の軸周り方向へ回転可能に構成されている。
【0011】
このように支持部がシャフト部の軸周り方向へ回転可能であるため、支持部に支持された複数の内視鏡をシャフト部の軸周りに回転させることができる。これにより、ユーザーは、複数の内視鏡から所望する内視鏡を容易に取り出すことができる。また、支持部に内視鏡を支持させる場合は、支持部を回転させることにより、ユーザーは所望する支持位置に内視鏡を支持させることができる。また、前記支持部及び前記空気供給部をともに回転させることができるため、前記支持部が回転されても、前記支持部に支持された内視鏡と前記空気供給部との間に接続された送風管が捩れることが無い。
【0012】
前記シャフト部は、前記支持部及び前記空気供給部とともに前記シャフト部の軸周り方向へ回転可能に前記保管庫の上部及び下部に支持されている。
【0013】
これにより、前記支持部及び前記空気供給部をシャフト部に固定させるだけで、前記支持部及び前記空気供給部のうちの一方を回転させることにより、前記支持部及び前記空気供給部それぞれを同じ方向へ回転させることが可能になる。
【0014】
本発明の内視鏡乾燥保管装置は、前記保管庫の上部又は底部に設けられ、空気流入口から流入した空気を溜める空気室を有し、空気流出口を通じて前記空気室と前記シャフト部の内部とを連通する空気バッファ部を更に備える。この場合、前記送風部は、前記空気バッファ部に空気を送りこむ送風機を含むことが好ましい。
【0015】
これにより、送風部から圧送されてくる空気の風圧が安定せずに脈動していた場合でも、前記空気室によってその脈動が抑制される。その結果、空気が内視鏡の挿入部の管路に圧送された場合でも、脈動の影響を受けずに挿入部が収容室内で安定して収容される。また、送風部としてファンやコンプレッサーなどの電動の送風機が用いられる場合は、電源電圧が不安定な環境であって安定した風圧の空気を送風できない場合でも、安定した空気の圧送が可能になる。
【0016】
前記空気バッファ部は、前記保管庫の上部に設けられており、前記シャフト部の下端は閉塞されている。
【0017】
これにより、シャフト部の上端と空気バッファ部との気密な連結機構を簡素な構造で実現することができる。
【0018】
前記空気バッファ部は、前記シャフト部の軸方向のサイズよりも前記軸方向に交差する水平方向のサイズが大きい扁平な直方体形状であり、前記シャフト部は、前記バッファ部の下面を貫通されて、前記シャフト部の上端が前記空気室に配置されている。
【0019】
これにより、シャフト部の内部と空気バッファ部との空気の連通が具体的に実現可能となる。また、空気バッファ部を扁平な直方体形状とすることにより、上下方向にサイズアップさせることなく十分な大きさの空気室を確保することができる。
【0020】
前記支持部は、前記空気供給部よりも上側に設けられ前記複数の内視鏡それぞれの操作部を支持する第1支持部と、前記空気供給部よりも下側に設けられ前記複数の内視鏡それぞれの接続部を支持する第2支持部を含む。
【0021】
これにより、内視鏡の操作部を第1支持部に支持させ、内視鏡の接続部を第2支持部に支持させることができ、複数の内視鏡を支持部で支持させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、複数の内視鏡を乾燥して保管可能な内視鏡乾燥保管装置を従来製品に比べて小型化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の実施形態に係る内視鏡乾燥保管装置の外観を示す図である。
図2図2は、内視鏡乾燥保管装置の正面側の内部構成を示す図である。
図3図3は、内視鏡乾燥保管装置の左側面側の内部構成を示す図である。
図4図4は、内視鏡乾燥保管装置の内部構成を模式的に示す図である。
図5図5は、内視鏡乾燥保管装置の内部構成を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る内視鏡の乾燥保管装置10について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0025】
図1乃至図3を参照して、本発明の内視鏡乾燥保管装置の一実施形態に係る乾燥保管装置10の構成について説明する。ここで、図1は、乾燥保管装置10の三面図であり、(A)に正面図が示されており、(B)に左側面図が示されており、(C)に上面図が示されている。なお、以下の実施形態では、説明の便宜上、各図に示される上下方向D1、左右方向D2、前後方向D3を用いて説明する。
【0026】
乾燥保管装置10は、洗浄後の複数の内視鏡90を保管するとともに内視鏡90の挿入部93の内部やユニバーサルケーブル95の内部を乾燥させることが可能な装置である。図1に示されるように、乾燥保管装置10は、外枠又は内部フレームを構成する筐体11を有する。筐体11に乾燥保管装置10を構成する各構成要素が収容される。筐体11は、例えば板金で構成されており、上下方向D1の長さが左右方向D及び前後方向D3の長さよりも長い直方体形の箱状に形成されている。筐体11は、床などに自立した状態で設置されるものであり、その底面11Aには床設置用の4つの脚部12が取り付けられている。
【0027】
筐体11の正面には開口部が形成されている。前記開口部は、筐体11の正面において右寄りに形成されている。筐体11は、前記開口部を開閉するための扉13を有する。扉13は、筐体11の正面の右端部を回動支点として回動するように、筐体11に取り付けられている。筐体11の正面の左側には、操作器などを取り付けるための取付面14が設けられている。取付面14に、操作スイッチ17や表示灯18などが取り付けられている。
【0028】
図2及び図3は、乾燥保管装置10の内部構成を示す図であり、図2は乾燥保管装置10を正面側からみたときの図であり、図3は乾燥保管装置10を左側面側から見たときの図である。なお、図2及び図3では、説明の便宜上、筐体11が仮想線(二点鎖線)で示されている。
【0029】
図2に示されるように、乾燥保管装置10は、保管庫21を備える。保管庫21は、複数の内視鏡90が収容可能な第1収容室31(本発明の収容室)を有する。第1収容室31は、筐体11に固定された複数の板部材によって区画形成されている。具体的には、筐体11には、左隔壁33、後隔壁34、天板35、底板36が設けられており、筐体11の右側面、左隔壁33、後隔壁34、天板35、底板36、扉13によって囲まれた空間が第1収容室31である。つまり、保管庫21は、筐体11の右側面、左隔壁33、後隔壁34、天板35、底板36により構成されている。左隔壁33、後隔壁34、及び、天板35は、板金で構成されている。左隔壁33は、筐体11の内部空間を左右方向D2に仕切り分ける板部材である。天板35の左方側は左隔壁33の上端と連結されている。図3に示されるように、後隔壁34は、筐体11の内部空間を前後方向D3に仕切り分ける板部材である。天板35は、筐体11の上面11Bから下方へ所定の間隙を隔てた位置に設けられており、第1収容室31の天面を構成している。底板36は、筐体11の底面11Aに設けられている。
【0030】
乾燥保管装置10は、保管庫21の他に、シャフト部41、送風機42(本発明の送風部)、空気供給部43、支持部44、空気バッファ部48、エアフィルター49、フック部50等を有する。
【0031】
図2及び図3に示されるように、シャフト部41は、第1収容室31に設けられている。シャフト部41は、筒形状(例えば円筒形状)の長い金属管であり、内部が空洞である。乾燥保管装置10において、シャフト部41は、筐体11の支柱の役割も担っている。第1収容室31において、シャフト部41は、第1収容室31の概ね中央位置で上下方向D1へ延出している。シャフト部41の下端41Aは、保管庫21の底部を構成する底板36に支持されている。シャフト部41の上端41Bは、保管庫21の上部を構成する天板35に支持されている。本実施形態では、シャフト部41は、シャフト部41の軸周り方向D4(図5参照)に回転可能に支持されている。具体的には、底板36にベアリングなどの軸受け54が設けられており、その軸受け54にシャフト部41の下端41Aが回転可能に支持されている。シャフト部41の下端41Aは閉塞されており、そのため、後述するようにシャフト部41の内部に空気が圧送されても、下端41Aから空気が漏れ出ない。また、天板35には、シャフト部41の上端41Bが挿通されて支持される軸穴55が形成されており、その軸穴55に上端41Bが挿通されて回転可能に支持されている。
【0032】
図4は、乾燥保管装置10の内部構成を模式的に示す図である。説明の便宜上、図4では、乾燥保管装置10の構成要素の一部の図示が省略されている。図4に示されるように、空気バッファ部48は、保管庫21の上部に設けられている。具体的には、空気バッファ部48は、天板35の上面と筐体11の上面11Bとの間の間隙に配置されている。空気バッファ部48は、板金や樹脂などの部材によって直方体形状に形成された空気タンクであり、内部に空気室48Aを有する。空気室48Aは、後述の空気流入口57から流入した空気を溜める機能、又は、流入した空気流を緩慢にさせる機能を有する。本実施形態では、空気バッファ部48は、シャフト部41の軸方向(上下方向D1)のサイズよりも水平方向(上下方向D1に直交する方向)のサイズが大きい扁平な形状に形成されている。
【0033】
空気バッファ部48の下面には、図示しない貫通穴が形成されている。この貫通穴は、軸穴55に対応する位置、つまり、シャフト部41の軸方向の延長線と空気バッファ部48の下面とが交差する位置に形成されている。前記貫通穴は、軸穴55と概ね同じサイズに形成されている。軸穴55に挿通されたシャフト部41は、前記貫通穴を更に挿通されて、上端41Bが空気室48Aに配置される。
【0034】
空気バッファ部48は、空気室48A内の空気をシャフト部41の内部に流出させるための空気流出口58を有する。空気流出口58は、空気室48Aに配置されたシャフト部41の上端41Bの開口である。シャフト部41の上端41Bが空気室48Aに配置されることで、空気流出口58を通じて空気室48Aとシャフト部41の内部とが連通する。これにより、空気室48A内の空気が空気流出口58を通じてシャフト部41の内部に流出可能となる。
【0035】
図4に示されるように、空気バッファ部48の左端部48Bは、天板35から左側へ突出している。詳細には、空気バッファ部48の左端部48Bは、左隔壁33を越えて左側へ突出している。左端部48Bの下面に空気流入口57が設けられている。空気流入口57は、例えば、管継手が左端部48Bの下面に取り付けられることにより実現可能である。この空気流入口57を通じて、後述の送風機42から吹き出される空気が空気室48Aに送り込まれる。
【0036】
図2に示されるように、左隔壁33と筐体11の左側面との間に、所定の機器を設置するための第2収容室62が形成されている。第2収容室62は、筐体11の底面11A、上面11B、筐体11の左側面、筐体11の後背面、及び左隔壁33によって囲まれた空間である。第2収容室62に、エアフィルター49や図示しない制御ユニットが設けられている。また、図3に示されるように、後隔壁34と筐体11の後背面との間に、所定の機器を設置するための第3収容室63が形成されている。第3収容室63は、筐体11の底面11A、上面11A、筐体11の後背面、及び左右側面によって囲まれた空間である。第3収容室63に、送風機42が設けられている。
【0037】
送風機42は、シャフト部41の内部に空気を送るものであり、例えば、入力された電力に応じた回転力を生成して羽根を回転させて空気を吹き出する軸流送風機などである。送風機42は、第3収容室63の下方に配置されており、具体的には、筐体11の底板36に固定されている。送風機42は、吸気口42A及び排気口42Bを有している。吸気口42Aから第3収容室63内の空気が吸入されて、その空気が排気口42Bから吹き出される。排気口42Bには、空気管64が接続されている。空気管64の他方端は、第3収容室63に引き回されて、エアフィルター49に接続されている。これにより、送風機42から吹き出された空気は、空気管64を通ってエアフィルター49の流入口49Aに送り込まれる。なお、図4に示されるように、吸気口42A及び排気口42Bは、第3収容室63に送風機42が設置された状態で、第2収容室62に向けられており、詳細には、吸気口42Aの先端は第2収容室62に至っている。そのため、主に、第2収容室62内の空気が送風機42によって吸気口42Aから吸入される。
【0038】
エアフィルター49は、上下方向D1において送風機42よりも上方の位置に配置されている。エアフィルター49は、空気中からゴミや塵埃などを捕集して取り除き、清浄な空気にするものである。ゴミや塵埃などを空気中から除去する手段としては、種々の手段を適用することができる。エアフィルター49として、例えば、ケミカルフィルターや、HEPAフィルター、ULPAフィルター、電気集塵器などが適用可能である。流入口49Aから流入した空気は、エアフィルター49を通過する際に清浄化されてから流出口49Bから流出される。流出口49Bには、空気管65が接続されている。空気管65の他方端は、空気バッファ部48の空気流入口57に接続されている。これにより、エアフィルター49から流出した空気は、空気管65を通って空気バッファ部48の空気室48A内に送り込まれる。なお、空気管64,65は、例えば、樹脂製のチューブや金属管などである。
【0039】
なお、図3及び図4に示されるように、後隔壁34の上部には換気ダクト82が設けられている。また、後隔壁34の下部には換気用の排気口83が形成されており、その第2収容室62側には換気ブロア84が設けられている。また、換気ブロア84の吸気口には、図示しないエアフィルターが設けられている。このため、第1収容室31内の空気は、換気ブロア84によって第1収容室31から第3収容室63に移動し、第3収容室63を上方へ向けて吹き出され、そして、換気ダクト82から第1収容室31に移動可能となる。つまり、第1収容室31内の空気は、換気ブロア84によって第1収容室31と第3収容室63との間を循環されつつ、前記エアフィルターによって粉塵などが除去される。
【0040】
図4に示されるように、空気供給部43、支持部44、及びフック部50は、シャフト部41に設けられている。
【0041】
支持部44は、複数の内視鏡90を支持することが可能に構成されている。支持部44は、支持部44は、第1支持部44Aと、第2支持部44Bとにより構成されている。第1支持部44Aと第2支持部44Bは、それぞれ、シャフト部41に固定されており、第1支持部44Aは、第2支持部44Bよりも上側で固定されている。第1支持部44Aと第2支持部44Bとの間に、空気供給部43が設けられている。
【0042】
第1支持部44Aは、空気供給部43よりも上側に設けられている。第1支持部44Aによって、内視鏡90それぞれの操作部91が支持される。本実施形態では、第1支持部44Aは、4つの内視鏡90それぞれの操作部91を支持可能に構成されている。第2支持部44Bは、空気供給部43よりも下側に設けられている。第2支持部44Bによって、内視鏡90それぞれの接続部92や挿入部93が支持される。また、第2支持部44Bは、4つの内視鏡90それぞれの接続部92又は挿入部93を支持可能に構成されている。
【0043】
ここで、内視鏡90は、人間の体内を観察する際に用いられる医療用機器の一つであり、光源装置などに接続される接続部92と、内視鏡90を操作するための操作部91と、体内に挿入される挿入部93とを備えている。接続部92と操作部91とは、ユニバーサルケーブル95によって互いに接続されている。操作部91には、鉗子チャンネル(鉗子口)、送気チャンネル(送気口)、及び吸引チャンネル(吸引口)が設けられている。各チャンネルは、挿入部93内の管路に連通している。前記鉗子チャンネルから鉗子などの処置具が挿入されて、挿入部93の先端に前記処置具が配置される。また、前記送気チャンネルから必要に応じて処置中にエアーが供給されて、挿入部の先端の開口から吹き出される。また、挿入部93の先端の開口から体液などが吸引されて前記吸引チャンネルから排出される。接続部92には、副送水チャンネル(副送水口)が設けられている。副送水チャンネルからユニバーサルケーブル95を経て挿入部93の先端まで管路が形成されている。前記副送水チャンネルから必要に応じて処置中に水が供給されて、挿入部の先端の開口から吐出される。なお、内視鏡90は従来周知の構成を有するものであり、ここでの詳細な説明は省略する。
【0044】
図5に示されるように、第1支持部44Aは、POMなどの合成樹脂で構成されたものであり、4つの支持片71を有する。4つの支持片71は、シャフト部41から水平方向(軸に直交する方向)へ突出しており、各支持片71はシャフト部41の軸周りに90°間隔に設けられている。第1支持部44Aは、例えば、一枚の板状の樹脂板を切削加工することにより得られる。第1支持部44Aの中央にシャフト部41が挿通される貫通穴(不図示)が形成されており、その貫通穴にシャフト部41が嵌め込まれている。第1支持部44Aは、シャフト部41に対して回転しないようにシャフト部41にビスなどの固定具によって固定されている。これにより、シャフト部41が回転すると、シャフト部41の回転に伴い第1支持部44Aも同じ方向へ回転する。4つの支持片71それぞれには、操作部91を挟み込むようにして支持する支持溝71Aが形成されている。支持溝71Aは、支持片71の端部から切り込まれた上下方向D1に貫通する貫通溝である。支持溝71Aは、支持片71の端部側が細いスリットであり、支持片71の内部側が前記スリットの幅よりも大きい外径の丸溝である。前記スリットに操作部91の被支持部が挿入されると、前記スリットが挿入に応じて広げられる。そして、前記被支持部が前記丸溝に到達すると、広げられていた前記スリットが狭められる。これにより、前記丸溝によって操作部91の被支持部が適度の力で挟み持たれる。その結果、操作部91が安定して第1支持部44Aに支持される。なお、支持片71は4つに限られず、少なくとも2つ以上の支持片71が設けられていればよい。
【0045】
第2支持部44Bは、POMなどの合成樹脂で構成されたものであり、4つの支持アーム75を有する。4つの支持アーム75は、シャフト部41から水平方向(軸に直交する方向)へ突出しており、各支持アーム75はシャフト部41の軸周りに90°間隔に設けられている。第2支持部44Bは、概ね十字形状に形成されており、その中央にシャフト部41が挿通される貫通穴(不図示)が形成されている。前記貫通穴にシャフト部41が嵌め込まれている。第2支持部44Bは、シャフト部41に対して回転しないようにシャフト部41にビスなどの固定具によって固定されている。各支持アーム75の先端には、上下方向D1に貫通する丸溝75Aが形成されている。丸溝75Aには、支持アーム75の端部に至るスリットが形成されている。丸溝75Aに接続部92の被支持部92Aが挿入可能である。ユーザーは、丸溝75Aの前記スリットにユニバーサルケーブル95を挿通させ、その後に被支持部92Aを丸溝75Aに対して上方から下方に挿入する。このとき、前記スリットが挿入に応じて広げられることにより、丸溝75Aによって接続部92の被支持部92Aが適度の力で挟み持たれる。その結果、接続部92が安定して第2支持部44Bに支持される。第2支持部44Bは、接続部92の副送水チャンネルが第2支持部44Bよりも上側に位置するように、被支持部92Aを支持する。そのため、内視鏡90の接続部92を第2支持部44Bに支持させた状態で、前記副送水チャンネルから後述のチューブ継手80までのエアーチューブ79の接続が容易になる。なお、支持アーム75は4つに限られず、支持片71と同数設けられていればよい。
【0046】
本実施形態では、図5に示されるように、第1支持部44Aの4つの支持片71それぞれに対して、各支持アーム75が軸周り方向D4へ45°ずれた位置に配置されるように、第2支持部44Bがシャフト部41に固定されている。具体的には、支持片71の支持溝71Aと支持アーム75の丸溝75Aとが、平面視で軸周り方向D4へ45°ずらされた状態で、第1支持部44A及び第2支持部44Bがシャフト部41に固定されている。このため、図4に示されるように、第1支持部44Aに操作部91が支持され、第2支持部44Bに接続部92が支持されても、操作部91と接続部92とが干渉しない。これにより、第1収容室31に無駄なスペースを生じさせずに、4つの内視鏡90をシャフト部41側に集約させた状態で第1支持部44A及び第2支持部44Bに支持することができる。なお、支持片71の支持溝71Aと支持アーム75の丸溝75Aとのずれ角は任意であり、前記45°に限られない。前記ずれ角は、操作部91と接続部92とが互いに干渉しないようにずらされていればよく、好ましくは、15°以上45°以下の範囲内であればよい。
【0047】
空気供給部43は、第1支持部44Aと第2支持部44Bとの間に設けられている。空気供給部43は、シャフト部41の内部に連通する複数の連通孔(不図示)を有し、前記連通孔それぞれから内視鏡90へエアーチューブ79(本発明の送風管)を介して空気を供給する。空気供給部43は、内部が空洞の扁平な直方体形状に形成されている。空気供給部43の中央に貫通穴が形成されており、前記貫通穴にシャフト部41が挿通されている。前記貫通穴とシャフト部41との間の隙間には図示しないシール部材が設けられており、空気の漏れが防止されている。空気供給部43の内部に位置するシャフト部41の外面には、空気供給部43の内部に空気を流出させる貫通孔が形成されている。この貫通孔を通じてシャフト部41の内部の空気が空気供給部43の内部に流出される。前記複数の連通孔は、空気供給部43の4つの側面に形成されている。4つの側面それぞれに2つの連通孔が形成されており、全部で8つの連通孔が形成されている。各連通孔それぞれにチューブ継手80が接続されている。チューブ継手80は、前記連通孔を開閉するバルブを備えていてもよい。エアーチューブ79の一方端はチューブ継手80に接続されており、他方端は操作部91の各チャンネルや接続部92の副送水チャンネルに接続されている。なお、エアーチューブ79の他方端は、4本に分岐されており、それぞれの分岐路が鉗子チャンネル、送気チャンネル、吸引チャンネル、副送水チャンネルに接続されている。上述したエアーチューブ79の分岐数は単なる一例であり、例えば、前記鉗子チャンネルへの分岐路が更に分岐されて、副送水チャンネルに接続されていてもよい。
【0048】
図3に示されるように、フック部50は、第2支持部44Bの下側に設けられている。フック部50は、内視鏡90の挿入部93を引っ掛けたり、内視鏡90とともに乾燥させる機材を引っ掛けたりする用途に使用される。本実施形態では、シャフト部41の上下方向D1に隔てて2つのフック部50が設けられている。フック部50は、水平姿勢とシャフト部41に沿って鉛直方向に延びる鉛直姿勢とに回動可能な4つの回動アーム51を有する。回動アーム51は、棒状の部材であり、外周面に滑り止め用の複数の浅い溝が形成されたものである。図3では、回動アーム51が前記水平姿勢にされた状態が示されている。回動アーム51は、前記水平姿勢にされた状態でその姿勢を保持するように支持される。前記水平姿勢で回動アーム51は挿入部93や他の機材を引っ掛けることができる。回動アーム51それぞれは、シャフト部41に個別に回動可能に支持されている。図3の矢印方向へ回動アーム51が持ち上げられると、回動アーム51は前記鉛直姿勢になり、シャフト部41に沿うように折りたたまれる。
【0049】
以下、図4を参照して、乾燥保管装置10における空気の流れについて説明する。送風機42から所定の圧力で空気が送り出される(圧送される)と、その空気は空気管64を通ってエアフィルター49に至り、その後、空気管65を通って空気バッファ部48に流入する。空気バッファ部48は、空気管64,65よりも広い空気室48Aを有するため、空気室48Aに流入して空気は、空気管64,65を通過する際に乱れた空気流が安定される。また、送風機42から圧送されてくる空気の風圧が安定せずに脈動していた場合でも、空気室48Aによってその脈動が抑制される。
【0050】
空気室48Aに流入した空気は、空気流出口58からシャフト部41の内部に流入し、シャフト部41の内部を通って空気供給部43に送り込まれる。シャフト部41から空気供給部43に空気が流入すると、その空気がチューブ継手80からエアーチューブ79を経て内視鏡90の各チャンネルに送り込まれる。エアーチューブ79から前記チャンネルに送り込まれた空気は、挿入部93内の管路やユニバーサルケーブル95内の管路に供給され、その管路を通って挿入部93の先端の開口から第1収容室31内に排出される。第1収容室31内に排出された空気は、換気ブロア84によって排気口83から第3収容室63に移動し、換気ブロア84に吸気されて再び第3収容室63を上方へ吹き出される。そして、換気ダクト82から第1収容室31に環流される。
【0051】
このように乾燥保管装置10が構成されているため、シャフト部41から空気供給部43を経てエアーチューブ79に空気が供給される。この構成において、一本のシャフト部41は、空気供給部43までの空気経路の役割を担うことになる。そのため、シャフト部41の上流側から空気経路を複数に分岐させてエアーチューブなどにより各内視鏡90に空気を供給する場合に比べて、複数の内視鏡90それぞれまで個別に長いエアーチューブを引き回す必要がなくなる。これにより、エアーチューブの本数又は長さを省減することができる。また、エアーチューブの本数又は長さが省減したことにより、エアーチューブに邪魔されることなく第1収容室31に内視鏡90をまとめて収容することが可能となる。
【0052】
また、上述の実施形態では、支持部44が設けられているため、複数の内視鏡90をシャフト部41の軸周りに所定角度間隔でまとめて配置することができる。これにより、従来の一列配置の内視鏡乾燥装置に比べて、第1収容室31の大きさを小さくすることができ、シャフト部41を中心に乾燥保管装置10をコンパクトにすることが可能になる。
【0053】
また、支持部44及び空気供給部43は、シャフト部41の軸周り方向D4へ回転可能であるため、支持部44に支持された複数の内視鏡90をシャフト部41の軸周りD4に回転させることができる。これにより、ユーザーは、複数の内視鏡90から所望する内視鏡90を容易に取り出すことができる。また、支持部44に内視鏡90を支持させる場合は、支持部44を回転させることにより、ユーザーは所望する支持位置に内視鏡90を支持させることができる。また、支持部44及び空気供給部43をともに回転させることができるため、支持部44が回転されても、支持部44に支持された内視鏡90と空気供給部43との間に接続されたエアーチューブ79が捩れることが無い。
【0054】
また、空気バッファ部48が設けられているため、送風機42から圧送されてくる空気の風圧が安定せずに脈動していた場合でも、空気室48Aによってその脈動が抑制される。前記脈動がある場合、脈動する空気によって内視鏡90の挿入部93が動くことにより、隣接する挿入部93同士が接触する場合がある。しかし、本実施形態では、前記脈動が抑制されるため、脈動の影響を受けずに挿入部93が第1収容室31内で安定して収容される。
【0055】
また、支持部44は第1支持部44Aと第2支持部44Bを有するため、内視鏡90の操作部91と接続部92とを干渉させることなく安定して支持することができる。
【0056】
なお、上述の実施形態では、空気バッファ部48を保管庫21の上部に設ける例について説明したが、空気バッファ部48は保管庫21の下部に設けてもよい。この場合、シャフト部41の上端41Bを閉塞し、下端41Aから送風機42の空気を圧送する。
【0057】
また、シャフト部41が保管庫21の上部と下部とによって回転可能な例について説明したが、シャフト部41が回転せずに、支持部44や空気供給部43がともにシャフト部41に対して回転可能に構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0058】
10:乾燥保管装置
11:筐体
21:保管庫
31:第1収容室
41:シャフト部
42:送風機
43:空気供給部
44:支持部
48:空気バッファ部
90:内視鏡
図1
図2
図3
図4
図5