(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
機械接点式遮断器、半導体遮断器、転流装置を備えて、前記機械接点式遮断器は、少なくとも1つの高耐電圧接点と、少なくとも1つの電流遮断接点とが直列に接続される機械接点と、円筒状の圧力容器と、前記圧力容器に接続するブッシングと、を備え、前記圧力容器は、前記機械接点を内部に封入し、かつ接地電位と等電位であり、前記ブッシングは、前記機械接点の両端から導体を前記圧力容器の外部に引き出し、それぞれの前記導体を直流送電系統と接続し、前記半導体遮断器は、半導体モジュールと、モジュール支持板と、絶縁支柱と、を備え、前記半導体モジュールは、自励式半導体素子を2個以上一列に積層して直列接続した半導体スタックと、前記半導体スタックの付属回路と、絶縁支持部とを有し、前記絶縁支持部は、前記半導体スタック及び前記付属回路を、前記モジュール支持板に対して電気的に絶縁すると共に、前記モジュール支持板に対して機械的に接続し、前記絶縁支柱は、前記モジュール支持板を機械的に支持または固定し、前記半導体遮断器は、前記機械接点式遮断器に対して並列に接続され、前記転流装置は、前記機械接点式遮断器の前記高耐電圧接点、前記電流遮断接点のうち少なくとも前記高耐電圧接点に対して並列に接続され、前記半導体遮断器に対して直列に接続される直流電流遮断装置の制御方法であって、
前記直流送電系統に事故電流が発生したときは、前記高耐電圧接点と、前記電流遮断接点を開路して、前記半導体遮断器の前記自励式半導体素子を通電状態にして、前記転流装置によって前記電流遮断接点に流れる電流を一時的にゼロとすることで、前記事故電流を前記機械接点式遮断器から前記半導体遮断器へと転流させ、前記事故電流の転流後に前記半導体遮断器の前記自励式半導体素子を遮断状態とすることで、前記直流送電系統の前記事故電流を遮断する
ことを特徴とする直流電流遮断装置の制御方法。
【背景技術】
【0002】
直流送電は交流送電に比べて送電効率が高い。また、長距離送電や海中送電などでは、直流送電は設備コストが交流送電に比べて有利になる。このため、直流送電は、二つの拠点間での送電に利用されてきた。近年、発電電力のうち再生可能エネルギーを用いた発電電力の比率を向上させ、より大きな電力を再生可能エネルギーでまかなうために、洋上風力発電や砂漠地帯での太陽光発電などを用いて、主要な電力消費地である都市部から遠く離れた場所で大規模な発電を行い、長距離送電する方法が検討されている。それに伴い、複数の電力の供給地点と需要地点とを接続した直流送電網の構築が計画されている。
【0003】
三つ以上の拠点間を接続した送電網を構築する際には、送電網で事故が発生した場合に、事故点を健全な系統から迅速に遮断可能な装置が必要となる。一般的に、交流電流系統においては機械接点式遮断器が用いられている。これは、交流電流によって発生する電流ゼロ点において接点を開極し、絶縁性媒体を接点間のアーク電流に吹き付けることで事故電流を遮断するものである。対して直流送電系統においては、事故電流には電流ゼロ点が発生しないため、従来の機械接点式遮断器では事故電流を迅速に遮断するのは難しいとされてきた。
【0004】
そこで、単独で直流電流を遮断可能な半導体遮断器として、IGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ:Insulated Gate Bipolar Transistor)などの、自己消弧能力をもつ複数の自励式半導体素子を用いた半導体遮断器が提案されている。しかし、送電する電力の全てが複数の自励式半導体素子を常時通過するため大きな導通損失が発生し、通常運転時の送電効率の低下を招いてしまう。
【0005】
この問題を解決するために、機械接点式断路器と補助半導体遮断器とを直列に接続した回路に、もう一つの半導体遮断器を並列に接続するハイブリッド遮断器が提案されている。このハイブリッド遮断器において、定常送電時は機械接点式断路器と補助半導体遮断器とが導通状態になっており、上記のもう一つの半導体遮断器が遮断状態になっている。よって送電電流は機械接点式断路器と補助半導体遮断器とを流れる。
【0006】
また、事故発生時においては、補助半導体遮断器が遮断状態とされ、同時に機械接点式断路器には開極指令が与えられる。このように補助半導体遮断器が遮断状態となることで、機械接点式断路器と補助半導体遮断器との経路に流れる事故電流が、上記のもう一つの半導体遮断器へと転流される。そして機械接点式断路器の開極動作が完了し、定常通電経路の耐電圧を確保した後に、上記のもう一つの半導体遮断器を遮断することで、事故電流の遮断が完了する。
【0007】
このようなハイブリッド遮断器は、定常通電時における導通損失が補助半導体遮断器の導通損失だけであるため、定常通電経路を、上記のように単独で直流電流を遮断可能な半導体遮断器のみとした構成に比べて導通損失を低減することが出来る。しかしながら補助半導体遮断器の通電損失は未だ発生してしまうため、従来のような、定常通電経路が機械接点のみで構成される機械接点式遮断器に比べると、ハイブリッド遮断器は、導通損失が大きい。
【0008】
そこで、半導体遮断器と、ハーフブリッジ回路で構成される転流回路とを直列に接続した回路に、機械接点式遮断器を並列に接続する直流電流遮断装置が提案されている。
この直流電流遮断装置において、定常送電時は機械接点式断路器が導通状態になっており、半導体遮断器および転流回路が遮断状態になっている。よって、定常送電時における送電電流は機械接点式断路器のみを流れる。
【0009】
また、事故発生時においては、機械接点式遮断器に開極指令が与えられ、半導体遮断器が導通状態とされ、転流回路に転流指令が与えられる。すると、転流回路は、機械接点式遮断器に流れる事故電流とは逆の方向に電流を流して機械接点式遮断器の電流にゼロ点を生成し、この機械接点式遮断器が開極することで、事故電流が機械接点式遮断器から半導体遮断器および転流回路へと転流する。事故電流転流後、半導体遮断器が遮断されることで事故電流の遮断が完了する。
【0010】
このような直流電流遮断装置は、定常通電経路が機械接点式遮断器のみで構成されるため、導通損失を大幅に低減することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態について図面を用いて説明する。
(第1の実施形態)
[1−1.構成]
まず、第1の実施形態における直流電流遮断装置の構成について、
図1〜6を参照して説明する。
図1、
図2は、本実施形態の直流電流遮断装置の全体構成を示す図である。具体的には、
図1は、第1の実施形態における直流電流送電装置の全体構成の一例を示す正面図であり、
図2は、第1の実施形態における直流電流送電装置の全体構成の一例を示す側面図である。
図3は、第1の実施形態における直流電流送電装置の機械接点式遮断器の部分拡大図の断面図である。
図4は、第1の実施形態における直流電流送電装置の半導体モジュールの構成例を示す断面図である。
図5は、第1の実施形態における直流電流送電装置の転流回路、半導体遮断器、機械接点式遮断器の接続関係の一例を示す回路図である。
【0018】
第1の実施形態における直流電流遮断装置1は、機械接点式遮断器2と、半導体遮断器3と、転流装置4とを備える。
図1、
図2、
図5に示すように、機械接点式遮断器2は、半導体遮断器3と転流装置4との直列回路に対して並列に電気的に接続されており、かつ直流送電線20、21と電気的に接続され、定常状態において電力融通電流を通電する。
【0019】
(機械接点式遮断器2)
機械接点式遮断器2は、圧力容器5と、操作機構7と、ブッシング(bushing)8を有する。圧力容器5は機械接点6を内部に封入する。
圧力容器5は、円筒状の金属タンク9と、電流遮断装置を設置するための基礎14に金属タンク9を支持するための固定脚10と、金属タンク9から導体11を延出するための2つの開口部12と、操作機構7に接続するための接続部13とを備える。金属タンク9は、固定脚10により基礎14に固定され、電気的には接地電位と等電位になっている。
【0020】
導体11を延出する開口部12にはブッシング8が接続されている。また、操作機構7との接続部13には図示しないシール部が設けられている。よって、圧力容器5の内部は密封状態にある。
このような圧力容器5の金属タンク9の内部には絶縁性媒体15が充填されている。この絶縁性媒体15は、例えば、六フッ化硫黄ガス(SF6ガス)、二酸化炭素、窒素、乾燥空気、またはそれらの混合ガス、絶縁油等であることができる。第1の実施形態では金属タンク9の内部には絶縁性媒体15としてSF6ガスが充填されている。
【0021】
機械接点6は、高耐電圧接点であるガス接点17と、電流遮断接点である真空バルブ18とで構成されている。これらのガス接点17および真空バルブ18は、圧力容器5中の、絶縁性媒体15が充填された金属タンク9中に封入され、図示しない絶縁物で金属タンク9内部に固定されており、圧力容器5とは電気的に絶縁されている。
【0022】
また、ガス接点17と真空バルブ18は、導体16を介して直列に電気的に接続されている。対して、ガス接点17と真空バルブ18とを電気的に接続してなる機械接点6の真空バルブ18側の端部は、1つ目の摺動接点19および、この摺動接点19と電気的に接続される導体11を介して1つ目の開口部12へ導出され、ブッシング8先端の端子51と電気的に接続される。また、機械接点6のガス接点17側の端部は、2つ目の摺動接点19および、この摺動接点19と電気的に接続される導体11を介して2つ目の開口部12へ導出され、ブッシング8の先端の端子52と電気的に接続される。
【0023】
この端子51は、半導体遮断器3と転流装置4を直列に電気的に接続した回路の転流装置4側の端子53と電気的に接続され、この端子53は、端子53用の導体38を介して直流送電線20と電気的に接続される。また、端子52は、半導体遮断器3と転流装置4を直列に電気的に接続した回路の半導体遮断器3側の端子54と電気的に接続され、この端子54は、端子54用の導体38を介して直流送電線21と電気的に接続される。
【0024】
さらに、ガス接点17は、絶縁性材料である1つ目の絶縁ロッド22および金属材料でなる1つ目のシールロッド23を介して、圧力容器5内部の気密性を保ちつつ、圧力容器5外部の1つ目の操作機構7と接続されている。また、真空バルブ18は、2つ目の絶縁ロッド22および2つ目のシールロッド23を介して、圧力容器5内部の気密性を保ちつつ、圧力容器5外部の2つ目の操作機構7と接続されている。
【0025】
操作機構7は、圧力容器5の一端の接続部13および他端の接続部13のそれぞれに固定され、操作機構7内部の図示しない駆動装置がシールロッド23と接続されている。この駆動装置は、ガス接点17における導体16側の固定接点24に対してガス接点17内の可動接点25を接触または開離させるように駆動し、また、真空バルブ18における導体16側の固定接点24に対して真空バルブ18内の可動接点25を接触または開離させるように駆動することで、ガス接点17および真空バルブ18の開閉操作を行う。
【0026】
ブッシング8の一端は、機械接点式遮断器2の設置面である基礎14の垂直方向に対して、このブッシング8における軸方向に沿った角度を傾斜させるように圧力容器5に固定される。このブッシング8は、遮断時における他の部位との絶縁距離を確保可能な範囲で、半導体遮断器3の方にブッシング8上端が近付くように配置される。
【0027】
(半導体遮断器3)
図2などに示すように、半導体遮断器3は、半導体モジュール26と、モジュール支持板27と、避雷器ユニット28と、絶縁支柱29、30を有する。
また、
図4に示すように、半導体モジュール26は、半導体スタック31と、半導体スタック31の付属回路32と、収納容器33と、絶縁支持部34とを有する。
【0028】
半導体スタック31は、IGBTやIEGT(注入促進形絶縁ゲートトランジスタ:Injection Enhanced Gate Transistor)などの自励式半導体素子(以下、IGBT35とする)を2個以上直列接続して構成されている。これらのIGBT35を一列に積層して両端を圧縮することで、各IGBT35の接続部の接触抵抗を低減する。
また、半導体スタック31には付属回路32が接続される。この付属回路32は、IGBT35の通電方向に対して逆方向に電流を通過させるダイオードと、各IGBT35の間の電圧分布を均一化するスナバ回路と、IGBT35へのスイッチング指令を出力するゲートユニットとを含む。
【0029】
これら半導体スタック31および付属回路32は、絶縁物である収納容器33に納められる。また、複数直列に接続した半導体スタック31を1つの半導体スタックとみなした場合の、この半導体スタックの両端の端子36と、収納容器33の両端に接続された端子37との間を半導体モジュール26内部用の圧縮ばね状の導体38によって電気的に接続することで、半導体スタック31を圧縮してIGBT35間の接触抵抗を低減しつつ、端子36と端子37とを導通させる。
絶縁支持部34は、収納容器33下部に機械的に接続され、この絶縁支持部34を含む半導体モジュール26と、この半導体モジュール26を支持するモジュール支持板27との絶縁距離を保持しつつ、半導体モジュール26をモジュール支持板27に固定する。
【0030】
また、複数の半導体モジュール26のそれぞれにおける収納容器33の端子37の間を半導体モジュール26間接続用の導体38で電気的に接続することで、複数の半導体モジュール26のそれぞれは直列に接続される。これら複数直列に接続した半導体モジュール26を1つのモジュールとみなした場合の、このモジュールの両端の端子37の片側は、転流回路モジュール40との接続用の導体38を介して転流回路モジュール40と電気的に接続される。端子37のもう片側は、機械接点式遮断器2との接続用の導体38および端子54を介して機械接点式遮断器2のガス接点17側と電気的に接続される。
【0031】
第1の実施形態では、半導体モジュール26の半導体スタック31および付属回路32を収納容器33に収めた上で、絶縁支持部34を介してモジュール支持板27に固定すると説明したが、半導体スタック31および付属回路32を収納容器33内に納めずに、絶縁支持部34を介してモジュール支持板27に直接固定してもよい。
【0032】
モジュール支持板27は、FRP(繊維強化プラスチック:Fiber Reinforced Plastic)製の複数の絶縁支柱29に機械的に固定される。これにより、それぞれのモジュール支持板27間の絶縁距離や、モジュール支持板27と、このモジュール支持板27が支持する半導体モジュール26との絶縁距離を保持している。また、最下部の半導体モジュール26を支持するモジュール支持板27と、基礎14との間は、碍子製の複数の絶縁支柱30で機械的に支持される。これにより、最下部のモジュール支持板27と基礎14との絶縁距離を保持している。
【0033】
図1、
図2に示すように、第1の実施形態では、4つの半導体モジュール26を縦方向に積層しているが、この積層する数は1個または複数でよく、特に個数を限定するものではない。また、第1の実施形態では1つのモジュール支持板27で1つの半導体モジュール26を支持しているが、1つのモジュール支持板27で2つ以上の半導体モジュール26を支持してもよい。
【0034】
図1に示すように、半導体遮断器3の避雷器ユニット28は、複数の避雷器39と、避雷器ユニット28用の絶縁支柱30とで構成されている。避雷器39は、避雷器ユニット28用の絶縁支柱30上に軸方向に複数積層して設置され、それぞれ直列に接続される。また、避雷器39は半導体モジュール26に対して、避雷器ユニット28用の導体38を介してそれぞれ並列に接続される。
【0035】
絶縁支柱29、30は、複数の部材を電気的に絶縁しつつ、機械的に接続するために使用される。第1の実施形態では、FRP製の絶縁支柱29と碍子製の絶縁支柱30を使用しているが、どちらか一方または他の材料のものを用いてもよい。
【0036】
(転流装置4)
図1、
図2に示すように、転流装置4は、転流回路モジュール40と、この転流回路モジュール40用のモジュール支持板27を有し、このモジュール支持板27は、半導体遮断器3で説明した絶縁支柱29に機械的に固定される。また、
図1、2に示すように、絶縁支柱29の上端部には、転流回路モジュール40の上部を覆うモジュール支持板27を機械的に固定してもよい。つまり、第1の実施形態では、半導体遮断器3と転流装置4とで絶縁支柱29を共有して、この絶縁支柱を半導体遮断器3と転流装置4とに跨る1つの構造体として構成する。
【0037】
図6は、第1の実施形態における直流電流送電装置の転流回路モジュールの断面図の構成例を示す図である。
図6に示すように、転流回路モジュール40は、ハーフブリッジ回路(以下、Hブリッジ回路41という)と、転流回路モジュール40用の収納容器33と、転流回路モジュール40用の絶縁支持部34とを有する。
【0038】
図7は、第1の実施形態における直流電流送電装置のハーフブリッジ回路の回路構成例を示す図である。
図7に示すように、Hブリッジ回路41は、自励式半導体素子(以下、IGBT42とする)を2個直列に接続した2つのレグと、コンデンサ43とが並列に接続された構成となっており、インバータとして機能する。また、Hブリッジ回路41のIGBT42には、IGBT42の通電方向に対して逆方向に電流を通過させるダイオード49が並列に接続されている。
【0039】
図6に示すように、第1の実施形態において、Hブリッジ回路41は2個直列に接続されて収納容器33に収められる。また、Hブリッジ回路41を2個直列に接続した回路の両端の端子44と、収納容器33の両端に接続された端子37との間を導体45によって電気的に接続することで、端子44と端子37とを導通させる。転流回路モジュール40用の絶縁支持部34は、転流回路モジュール40用の収納容器33の下部に機械的に接続されている。これにより、転流回路モジュール40と、転流回路モジュール40用のモジュール支持板27との絶縁距離を保持しつつ、転流回路モジュール40をモジュール支持板27に固定する。
【0040】
また、
図1、
図2に示すように、転流回路モジュール40は、転流回路モジュール40用の収納容器33の端子37の片側が、機械接点式遮断器2への接続用の導体38を介して機械接点式遮断器2の真空バルブ18側と電気的に接続され、端子37のもう片側が、半導体遮断器3への接続用の導体38を介して半導体遮断器3に電気的に接続される。
【0041】
第1の実施形態では、Hブリッジ回路41は、転流回路モジュール40用の収納容器33に収めた上で、絶縁支持部34を介してモジュール支持板27に固定したが、Hブリッジ回路41は、収納容器33内に納めずに絶縁支持部34を介してモジュール支持板27に直接固定されてもよい。
【0042】
図1、
図2に示すように、転流回路モジュール40を固定するモジュール支持板27は、半導体遮断器3の絶縁支柱29に機械的に固定される。これにより、モジュール支持板27間の絶縁距離や、モジュール支持板27と転流回路モジュール40との絶縁距離を保持している。
【0043】
(建屋への設置)
保守性や、汚損による絶縁性能の低下防止などを考慮して、
図1、
図2に示すように、上記の構成を有する直流電流遮断装置1は、建屋46内に設置され、機械接点式遮断器2のブッシング8上端、半導体遮断器3、転流装置4などの高電圧部と、建屋壁面47との絶縁距離を十分保持する位置に配置される。
【0044】
また、機械接点式遮断器2は、半導体遮断器3の側面のうち面積がより広い側面側に、この側面と圧力容器5の軸方向とが平行になるように配置される。また、機械接点式遮断器2は、この機械接点式遮断器2と半導体遮断器3との距離が絶縁距離を保持可能な範囲で近づけるように設置される。
【0045】
また、
図1に示すように、直流電流遮断装置1と接続される直流送電線20、21は、建屋壁面47に固定されたブッシング48を介して、建屋壁面47との絶縁距離を保持しつつ、建屋46の外部へと導出される。
【0046】
[1−2.作用]
以上のような、第1の実施形態の直流電流遮断装置の作用を説明する。
直流送電線20または21において事故が発生する前の定常状態では、直流送電線20、機械接点式遮断器2、直流送電線21の経路で電流が流れ、直流電力が送電される。この電流は、抵抗が非常に小さい機械接点6のみを通過するため、導通損失が非常に小さく、高効率に送電することができる。
【0047】
直流送電線21において事故が発生すると、直流電流遮断装置1の図示しない制御装置は、電流の増大で事故が発生したことを検知し、機械接点式遮断器2の操作機構7に、真空バルブ18と、ガス接点17を開路する指令を与え、半導体遮断器3の付属回路32に、IGBT35をオン(通電状態に)する指令を与える。
【0048】
機械接点式遮断器2の操作機構7に、真空バルブ18とガス接点17とを開路する指令が与えられると、同時に図示しない制御装置によって、転流装置4の付属回路32に、Hブリッジ回路41がコンデンサ43の電荷を放電する指令が与えられる。すると、転流装置4、半導体遮断器3、機械接点式遮断器2、直流送電線20の経路で電流が流される。この電流は事故電流と逆方向に流れるため、機械接点式遮断器2の電流にゼロ点が発生し、真空バルブ18によって機械接点式遮断器2の電流が遮断される。
【0049】
すると、事故電流は、直流送電線20、転流装置4、半導体遮断器3、直流送電線21の経路へと転流するので、機械接点式遮断器2のガス接点17が開路動作を完了し、事故遮断時の過渡回復電圧に対して十分な耐電圧を確保した後に、図示しない制御装置が、直流電流遮断装置1の半導体遮断器3の付属回路32に、IGBT35をオフ(遮断状態に)する指令を与えることで、半導体遮断器3の電流を遮断する。
【0050】
半導体遮断器3の電流を遮断すると、この半導体遮断器3の両端には定格電圧の1.5倍以上である高い過渡回復電圧が発生して、この電圧が、半導体遮断器3に対して並列に接続した避雷器39の制限電圧を超過する。このため、事故電流は、直流送電線20、避雷器39、直流送電線21の経路へ転流する。この事故電流は、避雷器39を通って流れ続ける。また、この事故電流は、直流送電線20、21や、この直流送電線20、21に電気的に接続されている図示しないリアクトルに蓄積されたエネルギーが、避雷器39で消費され、最終的に事故電流がゼロになる。
以上の動作を以て、直流電流遮断装置1は事故電流の遮断を完了する。
【0051】
[1−3.効果]
以上のような第1の実施形態の直流電流遮断装置の効果は以下の通りである。
(1)定常状態では、電力融通電流が、抵抗が非常に小さい機械接点式遮断器2だけを流れる。このため、導通損失がほとんど発生しなくなり、高効率な直流電流遮断装置1を提供できる。
【0052】
(2)ブッシング8を基礎14の平板方向に対して垂直に配置する場合、機械接点式遮断器2内の圧力容器5と、建屋46内の建屋壁面47との間は、ブッシング8上端と建屋壁面47との間の絶縁距離以上離す必要がある。
【0053】
これに対し、第1の実施形態のように、ブッシング8を基礎14の垂直方向に対して傾斜させ、半導体遮断器3の方にブッシング8上端が近付くように配置することで、半導体遮断器3の方にブッシング8上端を近づけた距離分だけ、圧力容器5と建屋壁面47との間の距離を短縮することができ、建屋46の規模を縮小することが可能となり、コストダウンの効果が生ずる。
【0054】
(3)第1の実施形態では、機械接点式遮断器2を、半導体遮断器3の側面のうち面積がより広い側面側に、この側面と圧力容器5の軸方向とが平行になるように配置し、かつ機械接点式遮断器2と半導体遮断器3との距離を、絶縁距離を保持可能な範囲で近づけるように設置する。これにより、圧力容器5と建屋壁面47との間の距離を短縮することができ、建屋46の規模を縮小することが可能となり、コストダウンの効果が生ずる。
【0055】
(4)第1の実施形態では、複数の半導体モジュール26を積層して配置し、更に半導体遮断器3と転流装置4とで絶縁支柱29を共有して1つの構造体として構成することで直流電流遮断装置1の設置面積を小さくすることができる。
【0056】
よって、直流電流遮断装置1を設置する基礎14の建築費を抑えることができ、かつ建屋46の規模を縮小することが可能となるため、コストダウンの効果を生ずる。
【0057】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
[2−1.構成]
第2の実施形態の直流電流遮断装置の構成について、
図8〜11を参照して説明する。
図8、
図9は、第2の実施形態における直流電流遮断装置の全体構成を示す図である。具体的には、
図8は、第2の実施形態における直流電流遮断装置の全体構成の一例を示す正面図であり、
図9は、第2の実施形態における直流電流遮断装置の全体構成の一例を示す側面図である。
図10は、第2の実施形態における直流電流送電装置の転流回路、半導体遮断器、機械接点式遮断器の接続関係の一例を示す回路図である。
図11は、第2の実施形態における直流電流遮断装置の機械接点式遮断器の部分拡大図の断面図である。
【0058】
第2の実施形態の大半の構成は、第1の実施形態の構成と同じである。よって、第1の実施形態と異なる点のみを説明し、第1の実施形態と同じ部分については同じ符号を付して詳細な説明は省略する。
【0059】
第2の実施形態は、第1の実施形態と比較すると、転流装置4の接続位置が異なり、かつ転流調整リアクトル55を有する点で異なる。
図8、9、10に示すように、転流調整リアクトル55は、並列に接続された機械接点式遮断器2と半導体遮断器3の接続点のうち、真空バルブ(電流遮断接点)18側の接続点である、端子51と端子56との間に接続される。端子56は、半導体遮断器3および転流調整リアクトル55の接続点である。また、転流装置4の転流回路モジュール40は、端子57と端子56との間に電気的に接続される。端子57は、機械接点式遮断器2のガス接点17および真空バルブ18の接続点を、ブッシング8を介して引き出した端子である。
なお、ガス接点17および真空バルブ18の接続点は、圧力容器5の開口部58へ導出され、この開口部58に接続されたブッシング8先端の端子57と電気的に接続される。
【0060】
[2−2.作用]
以上のような第2の実施形態の直流電流遮断装置の作用を説明する。
直流送電線20または21において事故が発生する前の定常状態では、直流送電線20、機械接点式遮断器2、直流送電線21の経路で電流が流れ、直流電力を送電する。この電流は、抵抗が非常に小さい機械接点6のみを通過するため、導通損失が非常に小さく、高効率に送電することができる。
【0061】
直流送電線21において事故が発生すると、直流電流遮断装置1の図示しない制御装置は、電流が増大することで事故が発生したことを検知し、機械接点式遮断器2の操作機構7に、真空バルブ18とガス接点17とを開路する指令を与え、半導体遮断器3の付属回路32に、IGBT35をオン(通電状態に)する指令を与える。
【0062】
直流電流遮断装置1の図示しない制御装置が機械接点式遮断器2の操作機構7に開路指令を与えると、同時に、図示しない制御装置によって、転流装置4の付属回路32に、Hブリッジ回路41がコンデンサ43の電荷を放電する指令が与えられる。すると、転流調整リアクトル55、転流装置4、機械接点式遮断器2の真空バルブ18の経路で電流が流れる。この電流は事故電流と逆方向に流れるため、機械接点式遮断器2の真空バルブ18の電流にゼロ点が発生し、上記のように真空バルブ18が開路することによって、この真空バルブ18に流れる電流が遮断される。すると、事故電流は直流送電線20、転流調整リアクトル55、転流装置4、機械接点式遮断器2のガス接点17、直流送電線21の経路へと転流する。
【0063】
次に、直流電流遮断装置1の図示しない制御装置が、転流装置4の付属回路32に、Hブリッジ回路41を構成する4個のIGBT42のゲートをブロックする指令を与える。すると、事故電流を直流送電線20、転流調整リアクトル55、半導体遮断器3、直流送電線21の経路へと転流する。これにより機械接点式遮断器2に事故電流が流れなくなるため、機械接点式遮断器2のガス接点17が開路動作を完了し、事故遮断時の過渡回復電圧に対して十分な耐電圧を確保した後に、図示しない制御装置が、直流電流遮断装置1の半導体遮断器3の付属回路32に、IGBT35をオフ(遮断状態に)する指令を与えることで、半導体遮断器3の電流を遮断する。
その後の動作は、第1の実施形態と同様である。
【0064】
[2−3.効果]
以上のような、第2実施形態における直流電流遮断装置は、第1の実施形態と同様の効果を有する。
【0065】
[その他の実施形態]
本明細書においては、本発明に係る複数の実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。具体的には、第1または第2の実施形態を組み合わせたものも包含される。以上のような実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の範囲を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0066】
例えば、以下のような態様も発明の範囲に含まれる。
(1)第1、第2の実施形態では、直流電流遮断装置1に対して電界緩和用のシールドを取り付けていなかったが、半導体遮断器3や避雷器39、ブッシング8などの電界集中部に対して電界緩和用のシールドを取り付けてもよい。
【0067】
(2)第1、第2の実施形態では、機械接点式遮断器2は1つの圧力容器5にガス接点17と真空バルブ18を封入し、これらを圧力容器5内部で直列に接続したが、別個の圧力容器5にガス接点17と真空バルブ18とをそれぞれ封入してもよい。その際、ガス接点17および真空バルブ18は、別個の圧力容器5に接続されたブッシング8を介して直列に接続してもよい。もしくは、別個の圧力容器5の間を金属タンク9によって接続し、ガス接点17および真空バルブ18を導体16によって直列に接続してもよい。
【0068】
第2の実施形態において、別個の圧力容器5の間を金属タンク9によって接続する場合は、別個の圧力容器5の間を接続する金属タンク9にブッシング8を接続し、そのブッシング8から、ガス接点17および真空バルブ18の接続点を導出してもよい。