【実施例1】
【0012】
図1は、実施例1に係る直流電源部10、入力保護装置120を備えた電力変換装置100、電動機50及び制御部60の構成図である。
【0013】
直流電源部10は、直流電源E1、直流電源E2及びスイッチSW1などを有して構成される。
【0014】
直流電源には、P(Positive:正)相、及び接地相Cが設けられており、各相間に所定の電圧が出力される。図示した例では、C相―P相間(以下、C―P間と称する。)にそれぞれ直流電圧+E(V)が供給された場合を示す。
【0015】
電力変換装置100は、入力BUS部110、入力保護装置120、インバータ部130などを有して構成される。電力変換装置100が複数用いられる場合は、これらを一体に構成したユニットが盤(ラック)に組み込み又は取り外し可能な形態にして用いられる。上記電力変換装置100をユニットにして盤に組み込んだ状態をスタックユニットと称する場合がある。
【0016】
入力BUS部110は、入力側断路BUS15a・15b・15c及びヒューズ16a・16b・16cを有して構成される。本実施例ではこの構成を用いているが、必ずしもこの構成に特定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲で、変形された構成も実施例として採用される場合がある。
【0017】
インバータ部130の出力電圧Vは、出力端子133に出力される。出力端子133は、出力BUS(出力側断路BUS)18に接続される。
【0018】
出力BUS18は、負荷としての電動機50の電源供給端子に接続され、電動機50を起動するのに必要な電力が供給される。
【0019】
制御部60は、ゲート制御端子61を備えている。
【0020】
制御部60は、PWM(Pulse Width Modulation)変調方式に基づくゲートパターンを生成し、当該ゲートパターンをゲート制御端子61に出力する。
【0021】
ゲート制御端子61は、インバータ部130のゲート入力端子134に接続されており、上記ゲートパターンは、ゲート信号62としてインバータ部130を構成するスイッチング素子(Q1〜Q4、スイッチング手段)のゲート端子に入力される。
【0022】
インバータ部130は、当該インバータ部130を構成するスイッチング素子(Q1〜Q4)のゲート端子に入力されたゲートパターンに基づいて、当該インバータ部130に供給された直流電圧をオン/オフ制御し、所望の出力電圧Vを生成する。
【0023】
電動機50は、上記インバータ部130から出力された出力電圧Vの供給を受け、起動する。
【0024】
図2は、本実施例に係る入力保護装置120の構成図である。本実施例では、2個の直流電源E1及びE2に対し、2個の入力保護部120a・120b、電流検出器127、GATE制御部128及び直流電源出力端子129a〜129c等が設けられている。
【0025】
入力保護部120aは、スイッチSW2、電圧検出器121、スイッチング素子(スイッチング手段)Q10及びダイオードD10、リアクトル123、ダイオードD11、並びにGATE1(122)などで構成されている。
【0026】
直流電源E1の+端子(P相)は、スイッチSW2の一端に接続されており、直流電源E1から出力された直流電圧+E(V)は、スイッチSW2の一端に供給される。
【0027】
スイッチSW2の他端は、スイッチング素子Q10のコレクタに接続され、スイッチング素子Q10のエミッタは、リアクトル123の一端に接続される。
【0028】
リアクトル123の他端は、ダイオードD11のアノードに接続され、ダイオードD11のカソードは、電力変換装置130に直流電力を供給する電路上の直流電源出力端子129aに接続され、ダイオードD11は、電力変換装置130に直流電力を供給する電路に対して順方向に配置される。なお、スイッチSW2は、遮断器又は電磁継電器などで構成される。
【0029】
後述するダイオードD13のカソードも同様に電力変換装置130に直流電力を供給する電路上の直流電源出力端子129aに接続され、ダイオードD13は、電力変換装置130に直流電圧を供給する電路に対して順方向に接続される。このダイオードD13によって順方向に直流電力が供給される。
【0030】
ダイオードD11及びD13は、当該電路に対してOR回路(論理和算出手段)を形成しており、何れか一方に供給された直流電圧は当該電路を経て電力変換装置130に供給される。
【0031】
従って、スイッチSW2が閉、かつ、スイッチング素子Q10がオン状態の場合、直流電源E1から出力された直流電圧は、上記電路に出力される。また、スイッチSW3が閉、かつ、スイッチング素子Q11がオン状態の場合、直流電源E2から出力された直流電圧は、同様に上記電路に出力される。
【0032】
上記スイッチング素子Q10は、直流電源E1から電力変換装置130に直流電力を供給する電路の電流をオン/オフ制御する。なお、スイッチング素子Q10は、さらに、当該電路間の電流を制御する。
【0033】
直流電源出力端子129aには、入力保護部120aで保護された直流電源が出力される。直流電源出力端子129aは、直流電源出力端子129bに接続される。直流出力端子129bは、電力変換装置130の直流電源入力端子131に接続される。
【0034】
スイッチング素子(スイッチング手段)Q10は、オン時、一方の直流電源E1を直流電源出力端子129aに出力し、オフ時、当該直流電源E1が直流電源出力端子129aに出力されるのを遮断する。
【0035】
スイッチング素子Q10には、逆並列にダイオード(還流ダイオード)D10が接続されている。これは、スイッチング素子Q10のエミッタ端子には、リアクトル123が接続されており、スイッチング素子Q10オフ時に、逆起電力によるサージ電流が流れて負荷(電力変換装置130)に供給する直流電圧に影響するのを防止するために当該サージ電流を電源側に還流する。
【0036】
GATE1(122)の出力信号は、スイッチング素子Q10のゲート端子に接続され、当該スイッチング素子Q10をオン/オフ制御する。
【0037】
電圧検出回路121は、直流電源E1の電圧を監視する。直流電源E1の電圧が許容値を超えて変化した場合には、電圧の急変信号が、GATE制御部128に送信される。
【0038】
入力保護部120bは、入力保護部120a同様に構成されている。
【0039】
直流電源E2の+端子は、スイッチSW3の一端に接続されており、直流電源E2から出力された直流電圧+E(V)は、スイッチSW3の一端に供給される。
【0040】
スイッチSW3の他端は、スイッチング素子Q11のコレクタに接続され、スイッチング素子Q11のエミッタはリアクトル126の一端に接続され、当該リアクトル126の他端は、ダイオードD13のアノードに接続される。なお、スイッチSW3は、遮断器又は電磁継電器などで構成される。
【0041】
当該ダイオードD13のカソードは、直流電源出力端子129aに接続される。
【0042】
スイッチング素子Q11は、オン時、一方の直流電源E2を直流電源出力端子129aに出力し、オフ時、一方の直流電源E2が直流電源出力端子129aに出力されるのを遮断する。
【0043】
スイッチング素子Q11には、逆並列にダイオード(還流ダイオード)D12が接続されている。これは、スイッチング素子Q11のエミッタ端子には、リアクトル126が接続されており、スイッチング素子Q11オフ時に、逆起電力によるサージ電流が流れて負荷(電力変換装置130)に供給する直流電圧に影響するのを防止するために当該サージ電流を電源側に還流する。
【0044】
GATE2(125)の出力信号は、スイッチング素子Q11のゲート端子に接続され、当該スイッチング素子Q11をオン/オフ制御する。
【0045】
電圧検出回路(電圧監視手段)124は、直流電源E2の電圧を監視する。直流電源E2の電圧が許容値を超えて変化した場合には、電圧の急変信号が、GATE制御部128に送信される。
【0046】
電流検出器(電流監視手段)127は、直流電源E1又はE2からの電流を監視する。
【0047】
GATE制御部128は、電圧検出回路(直流電圧監視手段)121からの電圧急変信号による過電流検出信号を受信した場合には、上記スイッチSW2又はGATE1(122)を制御することができる。
【0048】
また、GATE制御部128は、電圧検出回路124からの電圧急変信号による過電流検出信号を受信した場合には、上記スイッチSW3又はGATE2(125)を制御することができる。
【0049】
さらに、GATE制御部128は、電流検出器127が過電流を検出した場合には、上記スイッチSW3又はGATE2(125)を制御することができる。
【0050】
次に、上述した構成部品・装置を用いた本実施例に係る入力保護装置の動作を説明する。
【0051】
(1)電圧急変時
電圧検出回路(電圧監視手段)121は、直流電源E1の電圧を監視する。この監視の結果、電圧の上昇を検知した場合、電圧上昇の変化量が許容範囲を超えた場合、
a.当該電圧の変化量の大きさによってGATE1(122)を制御し、電流を絞る。
【0052】
b.当該電圧の変化量の大きさによってGATE1(122)にオフ信号を送信し、GATE2(125)にオン信号を送信する。この結果、スイッチング素子Q10はオンからオフに変更され、同時に、スイッチング素子Q11はオフからオンに変更され、電力変換装置130に供給する直流電源は直流電源E1から直流電源E2に変更される。
【0053】
(2)電流急変時
電流検出器(電流監視手段)127は、電流を監視する。この監視の結果、過電流を検知した場合、
a.GATE制御部128は、使用されている直流電源(例えば直流電源E1)のGATE1(122)を制御し、電流を絞る。
【0054】
b.過電流の変化が速い場合は、電流の変化を抑えるためにリアクトル123、126を設け、電流変化を抑えると共に、当該電流検出器127で検出した過電流に基づき、電力変換装置130が過電流を検出する前に直流電源E1から直流電源E2に切り替える。
【0055】
(3)初期充電回路
電力変換装置を投入する際、GATE制御部128は、使用されている直流電源(直流電源E1)のGATE1(122)を制御し、所定の時間、電流を絞った(電流を制限した)状態で電力変換装置130に電力を供給する。このようにすることにより、電力変換装置130の入力部に設けられた平滑コンデンサ(図示しない)に対する初期充電電流を制限した状態で電力変換装置130に電力を供給することができる。
【0056】
上記所定の時間が経過した場合には、当該所定の時間経過後、GATE1(122)の制御による電流制限は解除し、当該電力変換装置130に電力を供給する。
【0057】
(4)スイッチSW2、SW3
GATE制御部128は、上記(1)電圧急変時及び(2)電流急変時には、スイッチSW2又はスイッチSW3をオン/オフ制御し、電圧急変時又は電流急変時に異常状態を示す直流電源E1又はE2の電圧を電力変換装置130に供給しないようにする。
【0058】
以上説明したように、本発明によれば、電圧又は電流の急変など異常が発生した場合であっても、電力変換装置へ供給する長躯流電源の過電圧又は過電流を防止することができる。また、電力変換装置で当該直流電源の過電圧又は過電流を検出する前に本発明に係る電力変換装置の保護装置が当該過電圧又は過電流を事前に検出し、適切な処理を行うことにより、電力変換装置の継続稼働を可能にする電力変換装置の保護装置を提供することができる。