(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1種または複数種のPEG結合体化脂質、1種または複数種の脂質、1種または複数種の安定化剤、ならびに1種または複数種の治療剤、予防剤、および/もしくは診断剤を含む、130nm〜300nmの間の平均直径を有する粘液透過性リポソームナノ粒子を含む、治療剤、予防剤、および/もしくは診断剤を必要な患者の粘膜表面に投与するための組成物であって、該1種または複数種のPEG結合体化脂質の濃度は、該PEG結合体化脂質、該脂質および該安定化剤の合計の>10モル%〜約30モル%であり、該安定化剤の濃度は、該PEG結合体化脂質、該脂質および該安定化剤の合計の約5モル%〜約70モル%であり、ここで該粒子のうちの少なくとも50%は、2時間で、新たに集められ、未希釈のヒトCVM中で移動性があり、該粒子のうちの少なくとも30%は、15時間で、新たに集められ、未希釈のヒトCVM中で移動性がある、組成物。
前記1種または複数種の脂質は、脂肪酸、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、サッカロ脂質、およびポリケチド(ケトアシルサブユニットの縮合に由来する);ならびにステロール脂質およびプレノール脂質(イソプレンサブユニットの縮合に由来する)からなる群より選択される、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
前記安定化剤の濃度は、約10モル%〜約40モル%、好ましくは、約20モル%〜約40モル%、より好ましくは、約30モル%〜約40モル%である、請求項1〜9のいずれか1項に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
「リポソーム」とは、本明細書で使用される場合、水性の区画を囲んでいる脂質二重層を有する小胞もしくは粒子をいう。
【0017】
「ナノ粒子」とは、本明細書で使用される場合、一般に、平均直径 約1nmから最大で約1ミクロン(しかし、1ミクロンを含まない)、好ましくは、約5nm〜約500nm、最も好ましくは、約5nm〜約300nmを有する任意の形状の粒子をいう。いくつかの実施形態において、上記粒子は、平均直径 約100nm〜約300nm、好ましくは、約100nm〜約250nm、より好ましくは、約100nm〜約200nmを有する。球形を有するナノ粒子は、一般に「ナノスフェア」といわれる。
【0018】
「平均粒度」とは、本明細書で使用される場合、一般に、粒子の集団中の粒子の統計的平均粒度(直径)をいう。本質的に球状の粒子の直径は、物理的もしくは流体力学的直径といわれ得る。非球状粒子の直径は、優先的に流体力学的直径をいい得る。本明細書で使用される場合、非球状粒子の直径は、上記粒子の表面上の2点間の最大直線距離をいい得る。平均粒度は、当該分野で公知の方法(例えば、動的光散乱法)を使用して測定され得る。
【0019】
「単分散」および「均一なサイズ分布」とは、本明細書で交換可能に使用され、上記粒子が同じかほぼ同じ直径もしくは空気力学的直径を有する、複数のリポソームナノ粒子もしくはマイクロ粒子を説明する。本明細書で使用される場合、単分散分布とは、上記分布の75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、86%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%以上が、質量中央径もしくは空気力学的直径の85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、もしくは10%%以内にある粒子分布をいう。
【0020】
「移動性がある」とは、本明細書で使用される場合、20秒動画の中でその半径(約100nm)の少なくとも10倍を超える距離を移動する(これは、約0.1μm
2/秒に対応する)粒子を意味する。
【0021】
「親水性」とは、本明細書で使用される場合、水と容易に相互作用する極性の強い基を有する物質をいう。
【0022】
「親油性」とは、脂質に対する親和性を有する化合物に言及する。
【0023】
「両親媒性」とは、親水性および親油性(疎水性)の性質を併せ持つ分子をいう。
【0024】
「疎水性」とは、本明細書で使用される場合、水に対する親和性を欠いており;水に反発して吸収されず、同様に水に溶解もせず混ざり合いもしない傾向にある物質をいう。
【0025】
「薬学的に受容可能な」とは、本明細書で使用される場合、妥当な医学的判断の範囲内で、過剰な毒性、刺激、アレルギー応答、または他の問題もしくは合併症なしに、当局(例えば、食品医薬品局)のガイドラインに従って、合理的な利益/リスク比に釣り合っている、ヒトおよび動物の組織と接触した状態で使用するために適している化合物、材料、組成物、および/もしくは投与形態をいう。
【0026】
「生体適合性」とは、本明細書で使用される場合、一般に、任意の代謝産物もしくはその分解生成物とともに、レシピエントに対して一般に非毒性であり、レシピエントにいかなる重大な有害効果も引き起こさない物質に言及する。概して、生体適合性物質は、患者に投与される場合に、重大な炎症応答も免疫応答も誘発しない物質である。
【0027】
「分子量」とは、本明細書で使用される場合、一般に、別段特定されなければ、バルクポリマーの相対平均鎖長に言及する。実際には、分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)もしくは毛細管粘度測定法(capillary viscometry)を含む種々の方法を使用して概算もしくは特徴付けられ得る。GPC分子量は、数平均分子量(Mn)とは対照的に、重量平均分子量(Mw)として報告される。毛細管粘度測定法は、固有粘度が、濃度、温度、および溶媒条件の特定のセットを使用して、希釈ポリマー溶液から決定されるので、分子量の概算を提供する。
【0028】
「粘液」とは、本明細書で使用される場合、呼吸器、鼻、頸膣、消化管、直腸、視覚および聴覚のシステムを含む、種々の器官/組織の上皮表面を保護する、主にムチン糖タンパク質および他の材料を含む粘弾性の天然物質をいう。「痰」とは、本明細書で使用される場合、ムチン糖タンパク質に加えて死細胞から放出される種々の高分子(例えば、DNA、アクチンおよび他の細胞デブリ)からなる非常に粘弾性の粘液分泌物をいう。「痰」は、一般に、閉塞性肺疾患(喘息、COPDおよびCFが挙げられるが、これらに限定されない)に罹患した患者の病的な気道に存在する。「CF粘液」および「CF痰」とは、本明細書で使用される場合、それぞれ、嚢胞性線維症に罹患している患者の粘液および痰をいう。いくつかの実施形態において、上記粘液は、非排卵性ヒト頸膣粘液(CVM)である。
【0029】
「粘液分解剤」とは、本明細書で使用される場合、患者に投与される場合、粘液クリアランスの速度を増大させる物質をいう。粘液分解剤は、当該分野で公知である。例えば、Hanes, J. et al. Gene Delivery to the Lung. in Pharmaceutical Inhalation Aerosol Technology, Marcel Dekker, Inc., New York: 489−539 (2003)を参照のこと。粘液分解剤の例としては、ムチンに存在するジスルフィド結合およびスルフヒドリル結合を開裂するN−アセチルシステイン(NAC)が挙げられる。他の粘液分解剤としては、ヨモギ、ブロメライン、パパイン、クレロデンドルム、アセチルシステイン、ブロムヘキシン、カルボシステイン、エプラジノン、メスナ、アンブロキソール、ソブレロール、ドミオドール、デヌホゾール、レトステイン、ステプロニン、チオプロニン、ゲルゾリン、サイモシンβ4、ネルテネキシン、エルドステイン、および種々のDNase(rhDNaseが挙げられる)が挙げられる。
【0030】
用語「界面活性剤」とは、本明細書で使用される場合、液体の表面張力を低下させる薬剤をいう。
【0031】
用語「治療剤」とは、疾患もしくは障害を予防するかもしくは処置するために投与され得る薬剤をいう。治療剤は、核酸、核酸アナログ、低分子、ペプチド摸倣物、タンパク質、ペプチド、炭水化物もしくは糖、脂質、または界面活性剤、あるいはこれらの組み合わせであり得る。
【0032】
疾患、障害もしくは状態を用語「処置する」、または上記疾患、障害および/もしくは状態に対する素因となり得るが、それらを有するとは未だ診断されていない動物に起こらないように予防する;上記疾患、障害もしくは状態を阻害する(例えば、その進行を妨げる);ならびに上記疾患、障害、もしくは状態を軽減する(例えば、上記疾患、障害および/もしくは状態の退縮を引き起こす)。上記疾患もしくは状態を処置することは、その根底にある病態生理が影響されていないとしても、上記特定の疾患もしくは状態の少なくとも1つの症状を改善すること(例えば、鎮痛剤が疼痛の原因を処置しないとしても、このような薬剤の投与によって被験体の疼痛を処置すること)を含む。
【0033】
用語「標的化部分」とは、本明細書で使用される場合、特定の場所へもしくは特定の場所から離れて位置する部分に言及する。上記部分は、例えば、タンパク質、核酸、核酸アナログ、炭水化物、もしくは低分子であり得る。この実体は、例えば、治療用化合物(例えば、低分子)、もしくは診断実体(例えば、検出可能な標識)であり得る。上記場所は、組織、特定の細胞タイプ、もしくは細胞内区画であり得る。一実施形態において、上記標的化部分は、活性な実体の局在化を指向する。上記活性な実体は、低分子、タンパク質、ポリマー、もしくは金属であり得る。上記活性な実体は、治療目的、予防目的、もしくは診断目的に有用であり得る。
【0034】
用語「治療上有効な量」とは、本明細書で記載される粒子の中におよび/もしくはその上に組みこまれた場合、任意の医学的処置に適用可能な、合理的な利益/リスク比においていくらかの所望の効果を生じる治療剤の量をいう。上記有効な量は、処置されている疾患もしくは状態、投与されている特定の標的化構築物、被験体のサイズ、または上記疾患もしくは状態の重篤度のような要因に依存して変動し得る。当業者は、過度な実験を必要とすることなく、特定の化合物の有効な量を経験的に決定し得る。
【0035】
用語「組みこまれる」および「被包される」とは、活性薬剤を、組みこむこと、処方すること、もしくはさもなければ、所望の適用においてこのような薬剤の放出(例えば、徐放)を可能にする組成物の中におよび/またはその上に含むことをいう。上記用語は、治療剤もしくは他の物質がポリマーマトリクスの中に組みこまれる(例えば:このようなポリマーのモノマーに(共有結合、イオン結合、もしくは他の結合相互作用によって)結合される、物理的混合、上記薬剤をポリマーの被覆層中に包むこと、上記ポリマーの中に組みこまれる、ポリマーマトリクス全体に分布する、ポリマーマトリクスの表面に(共有結合もしくは他の結合相互作用によって)付加される、ポリマーマトリクス内部に被包されるなどのことを含む)任意の様式を企図する。用語「共に組みこむこと(co−incorporation)」もしくは「共に被包すること(co−encapsulation)」とは、治療剤もしくは他の材料と、少なくとも1種の他の治療剤もしくは他の材料とを、本組成物の中に組みこむことをいう。
【0036】
(II.粘液透過性リポソーム粒子)
粘液透過性リポソーム粒子が、本明細書で記載される。リポソームは、脂質二重層を含む合成小胞もしくは粒子である。リポソームは、薬物送達に使用され得る。リポソームの主なタイプは、多層小胞(MLV)、小さな単層小胞(SUV)、大きな単層小胞(LUV)、および渦巻状小胞である。
【0037】
リポソームは、静脈内投与のためのステルスリポソームを調製するために、peg化、例えば、PEG結合体化脂質から調製されてきた。上記PEGは、血中循環時間を延ばし、単核球によるファゴサイトシステムの取り込みを低下させる(すなわち、ステルスリポソーム)。このようなリポソームは、代表的には、約3〜7モル% PEG結合体化脂質を含む。対照的に、本明細書で記載されるリポソームは、粘液透過性である。PEG結合体化脂質の顕著に高い濃度が、粘液透過性の特性を付与するために必要であることが見いだされた。PEG結合体化脂質の濃度は、代表的には、少なくとも約8もしくは約10モル%、例えば、約8もしくは約10から約30モル%まで、好ましくは、約8もしくは約10モル%から約20モル%までである。
(A.脂質)
【0038】
本明細書で記載されるリポソームは、1種または複数種の脂質成分を含む。脂質は、脂肪、ワックス、ステロール、脂溶性ビタミン(例えば、ビタミンA、D、E、およびK)、モノグリセリド、ジグリセリド、トリグリセリド、リン脂質などを含む、天然に存在するか、合成であるか、または半合成である分子である。
【0039】
脂質は、疎水性もしくは両親媒性の低分子として広く定義され得る;いくらかの脂質の両親媒性の性質は、上記脂質が小胞、リポソーム、もしくは膜のような構造を、水性環境中で形成することを可能にする。生物学的脂質は、完全に、もしくは部分的に、生化学的サブユニットもしくは「構築ブロック」の2つの異なるタイプ:ケトアシル基およびイソプレン基から生じる。
【0040】
このアプローチを使用すると、脂質は、8つのカテゴリーに分けられ得る:脂肪酸、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、サッカロ脂質、およびポリケチド(ケトアシルサブユニットの縮合に由来する);ならびにステロール脂質およびプレノール脂質(イソプレンサブユニットの縮合に由来する)。
【0041】
上記脂質の濃度は、約25〜99モル%、好ましくは、約25〜約95モル%、より好ましくは、約20〜約90モル%、最も好ましくは、約20〜約80モル%である。いくつかの実施形態において、上記濃度は、約40〜約70モル%、好ましくは、約40〜約60モル%であり得る。
【0042】
(1.脂肪酸)
脂肪酸、もしくは脂肪酸残基は、それらが脂質の一部を形成する場合、合成して調製され得るか、または脂肪酸合成といわれるプロセスにおいて、アセチル−CoAプライマーをマロニル−CoA基もしくはメチルマロニル−CoA基で鎖伸長することによって天然に合成され得る多様な分子グループである。脂肪酸は、カルボン酸基で終わる炭化水素鎖から作製される;この配置は、極性の親水性末端および水に不溶性の非極性の疎水性末端を有する分子を与える。上記炭素鎖(代表的には、4〜24炭素長の間)は、飽和であっても不飽和であってもよく、酸素、ハロゲン、窒素、および硫黄を含む官能基に結合され得る。二重結合が存在する場合、シスもしくはトランスといった幾何異性のいずれかの可能性があり、このことは、分子の配置に顕著に影響を及ぼす。シスの二重結合は、脂肪酸鎖を曲げ、鎖の中の二重結合をより多くする効果がある。最も天然に存在する脂肪酸は、シス配置のものであるが、トランス形態は、いくらかの天然のおよび部分的に水素付加した脂肪および油に存在する。上記脂肪酸カテゴリーの中の他の主要な脂質のクラスは、脂肪エスエルおよび脂肪アミドである。
【0043】
(2.グリセロ脂質)
糖脂質は、主に、一置換、二置換および三置換されたグリセロールから構成され、最も周知のものは、トリグリセリドといわれるグリセロールの脂肪酸トリエステルである。語句「トリアシルグリセロール」は、ときおり「トリグリセリド」と同義語として使用されるが、後者の脂質は、ヒドロキシル基を含まない。これら化合物において、グリセロールの3個のヒドロキシル基は、各々エステル化され、代表的には、異なる脂肪酸によってエステル化される。
【0044】
グリセロ脂質のさらなるサブクラスは、グリコシルグリセロールによって代表され、これは、グリコシド結合によってグリセロールに結合された1個または複数個の糖残基の存在によって特徴付けられる。このカテゴリーにある構造の例は、植物の膜および哺乳動物精子細胞由来のセミノリピドに見いだされるジガラクトシルジアシルグリセロールである。
【0045】
(3.グリセロリン脂質)
グリセロリン脂質(通常、リン脂質といわれる)は、自然界に遍在し、細胞の脂質二重層の重要な成分であり、代謝および細胞シグナル伝達にも関与している。大部分のリン脂質は、ジグリセリド、ホスフェート基、および単純な有機分子(例えば、コリン)を含む;この規則の1つの例外は、スフィンゴミエリンであり、これは、グリセロールの代わりにスフィンゴシンに由来する。
【0046】
上記リン脂質分子の構造は、一般に、疎水性テールおよび親水性ヘッドからなる。上記「ヘッド」は、水に引きつけられる一方で、上記疎水性「テール」は、水に反発し、凝集する力が働く。上記親水性ヘッドは、負に荷電したホスフェート基を含み、他の極性基を含み得る。上記疎水性テールは、通常、長い脂肪酸の炭化水素鎖からなる。水の中に入れられる場合、リン脂質は、上記リン脂質の特定の性質に依存して、種々の構造を形成する。脂質二重層は、疎水性テールが互いに対して一列に並ぶ場合に起こり、水に面した両側に親水性ヘッドの膜を形成する。
【0047】
グリセロリン脂質は、真核生物および真正細菌中のグリセロール骨格のsn−3位、または古細菌の場合にはsn−1位にある上記極性のヘッド基の性質に基づいて、異なるクラスにさらに分けられ得る。生物学的膜の中で見いだされるグリセロリン脂質の例は、ホスファチジルコリン(PC、GPChoもしくはレシチンとしても公知)、ホスファチジルエタノールアミン(PEもしくはGPEtn)およびホスファチジルセリン(PSもしくはGPSer)である。
【0048】
真核生物において、リン脂質は、一般に、2つのタイプに分類される:ジアシルグリセリドおよびスフィンゴ脂質(phosphingolipid)。ジアシルグリセリドの例としては、ホスファチジン酸(ホスファチデート)(PA)、ホスファチジルエタノールアミン(ケファリン)(PE)、ホスファチジルコリン(レシチン)(PC)、ホスファチジルセリン(PS)、およびホスホイノシチド(例えば、ホスファチジルイノシトール(PI)、ホスファチジルイノシトールホスフェート(PIP)、ホスファチジルイノシトールビスホスフェート(PIP2)およびホスファチジルイノシトールトリホスフェート(PIP3))が挙げられるが、これらに限定されない。スフィンゴ脂質(phospingolipid)の例としては、セラミドホスホリルコリン(スフィンゴミエリン)(SPH)、セラミドホスホリルエタノールアミン(スフィンゴミエリン)(Cer−PE)、およびセラミドホスホリル脂質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
使用され得る他のリン脂質は、以下の表1に示される。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表1-4】
【0050】
いくつかの実施形態において、上記脂質成分は、1種または複数種のリン脂質である。いくつかの実施形態において、上記脂質は、ホスファチジルコリン(PC、例えば、卵PCもしくは水素付加ダイズPC)であるかもしくはこれを含む。上記リン脂質の濃度は、約25〜99モル%、好ましくは、約25〜約95モル%、より好ましくは、約20〜約90モル%、最も好ましくは、約20〜約80モル%である。いくつかの実施形態において、上記濃度は、約40〜約70モル%、好ましくは、約40〜約60モル%であり得る。
【0051】
(4.スフィンゴ脂質)
スフィンゴ脂質は、共通の構造特徴であるスフィンゴイド塩基骨格(これは、アミノ酸であるセリンおよび長鎖脂肪アシルCoAからデノボ合成され、その後セラミド、ホスホスフィンゴ脂質、スフィンゴ糖脂質および他の化合物へと変換される)を共有する複雑な化合物ファミリーである。哺乳動物の主要なスフィンゴイド塩基は、一般に、スフィンゴシンといわれる。セラミド(N−アシル−スフィンゴイド塩基)は、アミド結合した脂肪酸を有するスフィンゴイド塩基誘導体の主要なサブクラスである。上記脂肪酸は、代表的には、鎖長16〜26炭素原子を有する飽和もしくはモノ不飽和である。
【0052】
哺乳動物の主要なホスホスフィンゴ脂質は、スフィンゴミエリン(セラミドホスホコリン)であるのに対して、昆虫は、主にセラミドホスホエタノールアミンを含み、真菌は、フィトセラミドホスホイノシトールおよびマンノース含有ヘッド基を有する。上記スフィンゴ糖脂質は、スフィンゴイド塩基へのグリコシド結合によって連結された1個または複数個の糖残基から構成される多様な分子ファミリーである。これらの例は、単純なおよび複雑なスフィンゴ糖脂質(例えば、セレブロシドおよびガングリオシド)である。
【0053】
(5.ステロール脂質)
ステロール脂質(例えば、コレステロールおよびその誘導体)は、グリセロリン脂質およびスフィンゴミエリンとともに、膜脂質の重要な成分である。ステロイドは、同じ融合した4個の環のコア構造に全て由来する。ステロールの他の例は、胆汁酸およびそれらの接合体である。植物の等価物は、フィトステロール(例えば、β−シトステロール、スチグマステロール、およびブラシカステロール)である。
【0054】
(6.プレノール脂質)
プレノール脂質は、5炭素ユニット前駆体であるイソペンテニルジホスフェートおよびジメチルアリルジホスフェートから合成される。単純なイソプレノイド(直鎖状アルコール、ジホスフェートなど)は、C5ユニットの連続付加によって形成され、これらテルペンユニットの数に応じて分類される。40個より多くの炭素を含む構造は、ポリテルペンとして公知である。カロテノイドは、抗酸化物としておよびビタミンAの前駆体として機能する重要な単純イソプレノイドである。別の生物学的に重要な分子クラスは、キノンおよびヒドロキノンによって例示され、これらは、非イソプレノイド起源のキノノイドコアに結合されたイソプレノイドテールを含む。ビタミンEおよびビタミンK、ならびにユビキノンは、このクラスの例である。原核生物は、酸素に結合された末端イソプレノイドユニットが不飽和のままであるポリプレノール(いわゆるバクトプレノール)を合成するのに対して、動物のポリプレノール(ドリコール)では、末端イソプレノイドは還元されている。
【0055】
(7.サッカロ脂質)
サッカロ脂質は、脂肪酸が糖骨格に直接結合され、膜二重層と適合性の構造を形成する化合物を説明する。上記サッカロ脂質において、モノサッカリドは、糖脂質およびグリセロリン脂質に存在するグリセロール骨格の代わりに使用される。最もよく知られているサッカロ脂質は、グラム陰性細菌中のリポポリサッカリドのリピドA成分のアシル化グルコサミン前駆体である。代表的なリピドA分子は、グルコサミンのジサッカリドであり、これは、7個もの脂肪−アシル鎖で誘導体化されている。
【0056】
(B.PEG結合体化脂質)
上記リポソームはまた、PEG結合体化脂質を含む。上記脂質は、PEG自体もしくはPEGを含むコポリマー(例えば、商品名PLURONICで入手可能なPEO−PPOコポリマー)に結合体化され得る。他の物質(例えば、ポリマー、界面活性剤、核酸、タンパク質など)は、上記材料が粘液を通過して拡散を増強するかもしくは促進することを条件として、PEGの代わりにもしくは組み合わせて使用され得る。
【0057】
上記PEG結合体化脂質は、上記で考察される脂質のうちのいずれかのpeg化形態であり得る。いくつかの実施形態において、上記PEG結合体化脂質は、PEG結合体化リン脂質である。特定の実施形態において、上記PEG結合体化リン脂質は、PEG−ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)である。上記リポソーム中の上記PEG結合体化脂質の濃度は、少なくとも約10モル%、例えば、約10〜約30モル%、好ましくは、約10モル%〜約20モル%である。
【0058】
PEGの分子量は、種々であり得る。いくつかの実施形態において、上記PEGの分子量は、約500ダルトン〜約10,000ダルトン、好ましくは、約500ダルトン〜約5,000ダルトン、より好ましくは、約1,000ダルトン〜約5,000ダルトン、最も好ましくは、約2,000ダルトン〜約4,000ダルトンである。特定の実施形態において、上記PEGの分子量は、約2000ダルトンである。
【0059】
(C.安定化剤)
上記リポソームはまた、1種または複数種の安定化剤を含み得る。安定化剤は、小胞不安定化および/もしくはオプソニン化ならびに被包された薬剤もしくは薬物の付随した放出を低減または妨げる、上記リポソーム中の成分もしくはさらなる成分である。例えば、安定化剤(例えば、コレステロールおよび他の材料)は、上記脂質二重層の機械的強度を増強する。他の材料としては、上記の脂質のうちの1種または複数種が挙げられる。
【0060】
上記安定化剤の濃度は、少なくとも約5モル%、好ましくは、少なくとも約10モル%、より好ましくは、少なくとも約20モル%、最も好ましくは、少なくとも約30モル%である。いくつかの実施形態において、上記安定化剤の濃度は、約5モル%〜約50モル%である。特定の実施形態において、上記安定化剤の濃度は、約25、50、もしくは70モル%である。より特定の実施形態において、約25モル%である。
【0061】
いくつかの実施形態において、上記安定化剤は、コレステロールであり、上記の濃度で存在する。他の適切な安定化剤としては、ガングリオシドG
M1が挙げられる。他の実施形態において、上記安定化剤は、上記安定化剤は、上記PEG結合体化脂質であり得るので、さらなる安定化剤は、必要とされない。
【0062】
(D.リポソームナノ粒子の特性)
(1.ポリエチレングリコール(PEG)の表面密度)
ナノ粒子上のポリ(エチレングリコール)(PEG)の表面密度は、インビボでのそれらの成功裏の適用を決定するにあたって重要なパラメーターである。粘膜表面への薬物の送達の制御は、その保護的な粘液層の存在から困難であり、上記粘液透過性リポソーム粒子は、改善された薬物分布、粘膜表面での保持および効力において有望さを示す。生分解性リポソームナノ粒子上のPEGの密な被覆は、粘液成分とリポソームナノ粒子との間の接着性相互作用が大いに低下されることから、粘液を通過する迅速な透過を可能にし得る。
【0063】
PEG結合体化脂質の濃度は、PEG結合体化脂質のモル%を参照しながら上記で考察される。PEGの量はまた、表面密度の観点から記載され得る。核磁気共鳴(NMR)法は、本明細書で記載されるPEG含有リポソームナノ粒子上の表面PEG密度を、定量的におよび定性的に、両方で評価するために使用され得る(PEGピークは、代表的には、約3.65ppmで観察される)。いくつかの実施形態において、PEG表面密度は、peg化脂質および非peg化脂質の混合物から粒子を調製することによって制御され得る。例えば、リポソームナノ粒子上のPEGの表面密度は、PEG結合体化脂質および非PEG結合体化脂質の混合物から粒子を調製することによって、正確に制御され得る。定量的
1H核磁気共鳴(NMR)法は、リポソームナノ粒子上の表面PEG密度を測定するために使用され得る。ヒト粘液中での複数の粒子の追跡ならびにマウス腟におけるムチン結合および組織分布の研究から、PEG密度閾値が存在し、それは、上記リポソームナノ粒子が粘液を透過するにあたって有効であるために約10〜20モル%であることが明らかにされた。この密度閾値は、上記粒子を調製するために使用される脂質、粒度、および/もしくはPEGの分子量を含む種々の要因に依存して変動し得る。
【0064】
上記被覆の密度は、表面改変材料および上記粒子の組成を含む種々の要因に基づいて変動し得る。一実施形態において、表面改変材料(例えば、PEG)の密度は、
1H NMRによって測定される場合、少なくとも0.1、0.2、0.5、0.8、1、2、5、8、10、15、20、25、40、50、60、75、80、90、もしくは100鎖/nm
2である。上記範囲は、0.1〜100ユニット/nm
2の全ての値を含む。特定の実施形態において、上記表面改変材料(例えば、PEG)の密度は、約1〜約25鎖/nm
2、約1〜約20鎖/nm
2、約5〜約20鎖/nm
2、約5〜約18鎖/nm
2、約5〜約15鎖/nm
2、もしくは約10〜約15鎖/nm
2である。上記表面改変材料(例えば、PEG)の濃度はまた、変動し得る。特定の実施形態において、上記表面改変材料(例えば、PEG)の密度は、上記表面改変材料(例えば、PEG)が長いブラシ状の配置をとるような密度である。他の実施形態において、上記表面改変部分の質量は、上記粒子の質量のうちの少なくとも1/10,000、1/7500、1/5000、1/4000、1/3400、1/2500、1/2000、1/1500、1/1000、1/750、1/500、1/250、1/200、1/150、1/100、1/75、1/50、1/25、1/20、1/5、1/2、もしくは9/10である。上記の範囲は、1/10,000〜9/10の全ての値を含む。
【0065】
(2.粘液を透過する能力)
本明細書で記載されるリポソームナノ粒子は、粘液(例えば、非排卵性ヒト頸膣粘液(CVM))を通過する増強された輸送を示す。いくつかの実施形態において、上記リポソームナノ粒子は、特定の絶対拡散率で、粘液(例えば、ヒト頸膣粘液)を通過して移動する。特定の実施形態において、上記粒子は、1秒のタイムスケールで少なくとも1×10
4、2×10
4、5×10
4、1×10
3、2×10
3、5×10
3、1×10
2、2×10
2、4×10
2、5×10
2、6×10
2、8×10
2、1×10
1、2×10
1、5×10
1、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、もしくは0.1μm
2/sの拡散率で移動し得る。対照的に、非透過性粒子は、少なくとも約1×10
−4μm
2/sの拡散率を有する。
【0066】
上記粒子が粘液を通過して拡散する能力はまた、視覚検査によって定性的に評価され得る。いくつかの実施形態において、PEGの濃度は、約10モル%であり、上記粒子のうちの少なくとも50%、60%、70%、80%、もしくは90%が、2時間で非排卵性CVM中で移動性があり、上記粒子のうちの少なくとも30%、40%、50%、60%、もしくは70%が、15時間で非排卵性CVM中で移動性がある。上記粒子は、ほとんどもしくは全く凝集を示さない。他の実施形態において、PEG結合体化脂質の濃度は、約20%であり、上記粒子のうちの少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、96%、98%、もしくは99%が、2時間で非排卵性CVMの中で移動性があり、上記粒子のうちの少なくとも約80%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、もしくは99%が、15時間で、非排卵性CVMの中で移動性がある。上記粒子は、ほとんどもしくは全く凝集なく、十分に分散される。
【0067】
特定の実施形態において、上記粒子は、蛍光標識アビジンの吸着を阻害する表面改変薬剤を含み、ここで上記粒子は、平均最大蛍光強度によって計算される場合、上記表面改変薬剤を欠いている対応する粒子によって吸着される蛍光標識アビジンの量のうちの99%未満、95%未満、90%未満、70%未満、50%未満、40%未満、30%未満、20%未満、15%未満、10%未満、8%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.1%未満、0.05%未満、もしくは0.01%未満を吸着する。
【0068】
特定の実施形態において、上記粒子は、上記粒子のζ電位に影響を及ぼす表面改変薬剤を含み、ここで上記粒子のζ電位は、−100mv〜10mvの間、−50mv〜10mvの間、−25mv〜10mvの間、−20mv〜5mvの間、−10mv〜10mvの間、−10mv〜5mvの間、−5mv〜5mvの間、もしくはさらに−2mv〜2mvの間である。
【0069】
(3.安定性)
上記粘液透過性リポソームナノ粒子は、物理的におよび化学的に安定している。「物理的に安定」とは、本明細書で使用される場合、粒度および/もしくは多分散性が長期間にわたって一定なままであることを意味する。
【0070】
いくつかの実施形態において、「物理的に安定」とは、上記粒子の平均直径の変化が、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、16時間、20時間、24時間、30時間、36時間、もしくは48時間にわたって10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、もしくは1%未満であることを意味する。特定の実施形態において、上記粒子の平均直径の変化は、48時間後に、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、もしくは2%未満である。
【0071】
他の実施形態において、「物理的に安定」とは、上記粒子の多分散性の変化が、2時間、4時間、6時間、8時間、12時間、16時間、20時間、24時間、30時間、36時間、もしくは48時間にわたって、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、もしくは1%未満であることを意味する。特定の実施形態において、上記粒子の多分散性の変化は、48時間後に、10%未満、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、もしくは1%である。
【0072】
上記粒子は、好ましくは、粘液に導入される場合、ほとんどもしくは全く凝集を示さず、十分に分散したままである。
【0073】
(E.治療剤、予防剤、および/もしくは診断剤)
(1.治療剤)
いくつかの実施形態において、上記粒子は、1種または複数種の治療剤をその中に被包するか、その中に分散させているか、そして/または表面で共有結合もしくは非共有結合的に会合している。上記治療剤は、低分子、タンパク質、ポリサッカリドもしくはサッカリド、核酸分子、および/または脂質であり得る。いくつかの実施形態において、上記薬剤は、親水性もしくは水溶性である。
【0074】
(i.低分子治療剤)
低分子治療剤の例示的クラスとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:鎮痛剤、抗炎症薬、解熱薬、抗鬱薬、抗癲癇薬、抗精神薬、神経保護剤、抗増殖薬(例えば、抗癌剤、抗感染剤(例えば、抗菌剤および抗真菌剤))、抗ヒスタミン薬、抗片頭痛薬、抗ムスカリン薬、抗不安薬、鎮静剤、催眠薬、抗精神病薬、気管支拡張薬、抗喘息薬、心血管薬、コルチコステロイド、ドパミン作動薬、電解質、胃腸薬、筋弛緩薬、栄養剤、ビタミン、副交感神経興奮薬(parasympathomimetics)、刺激剤、食欲抑制薬および抗ナルコレプシー薬(anti−narcoleptic)。機能性食品(Nutraceuticals)もまた、組み込まれ得る。これらは、ビタミン、栄養補助食品(例えば、カルシウムもしくはビオチン)、または天然の成分(例えば、植物抽出物もしくは植物ホルモン)であり得る。
【0075】
一実施形態において、上記リポソームは、抗腫瘍剤を含む。抗腫瘍剤のクラスとしては、脈管形成インヒビター、DNA挿入剤/架橋剤、DNA合成インヒビター、DNA−RNA転写調節因子、酵素インヒビター、遺伝子調節因子、微小管インヒビター、および他の抗腫瘍剤が挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
血管新生インヒビターの例としては、アンギオスタチンK1−3、DL−α−ジフルオロメチル−オルニチン、エンドスタチン、フマギリン、ゲニステイン、ミノサイクリン、スタウロスポリン、(±)−サリドマイド、レブリミド、ならびにこれらのアナログおよび誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0077】
DNAインカレータ/架橋剤の例としては、ブレオマイシン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シス−ジアンミン白金(II)ジクロリド(シスプラチン)、メルファラン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、これらのアナログおよび誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0078】
DNA−RNA転写調節因子の例としては、アクチノマイシンD、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ホモハリントニン、イダルビシン、ならびにこれらのアナログおよび誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0079】
酵素インヒビターの例としては、S(+)−カンプトテシン、クルクミン、(−)−デグエリン、5,6−ジクロロベンズイミダゾール1−β−D−リボフラノシド、エトポシド、ホルメスタン、ホストリエシン、ヒスピジン、2−イミノ−1−イミダゾリジン酢酸(シクロクレアチン)、メビノリン、トリコスタチンA、チルホスチンAG 34、チルホスチンAG 879、ならびにこれらのアナログおよび誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
遺伝子調節因子の例としては、5−アザ−2’−デオキシシチジン、5−アザシチジン、コレカルシフェロール(ビタミンD3)、ヒドロキシタモキシフェン、メラトニン、ミフェプリストン、ラロキシフェン、全てのトランス−レチナール(ビタミンAアルデヒド)、レチノイン酸、全てのトランス(ビタミンA酸)、9−シス−レチノイン酸、13−シス−レチノイン酸、レチノール(ビタミンA)、タモキシフェン、トログリタゾン、ならびにこれらのアナログおよび誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
微小管インヒビターの例としては、コルヒチン、ドラスタチン15、ノコダゾール、パクリタキセル、ドセタキセル、ポドフィロトキシン、リゾキシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン(ナベルビン)、ならびにこれらのアナログおよび誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
他の抗腫瘍剤の例としては、17−(アリルアミノ)−17−デメトキシゲルダナマイシン、4−アミノ−1,8−ナフタルイミド、アピゲニン、ブレフェルジンA、シメチジン、ジクロロメチレン−ジホスホン酸、リュープロリド(リュープロレリン)、黄体形成ホルモン放出ホルモン、ピフィスリン−α、ラパマイシン、性ホルモン結合グロブリン、タプシガルギン、尿中トリプシンインヒビターフラグメント(ビクニン)、ならびにこれらのアナログおよび誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
(ii.核酸)
いくつかの実施形態において、上記薬剤は、1種または複数種の核酸である。上記核酸は、内因性核酸配列を変化させ得るか、修正し得るか、または置換し得る。上記核酸は、癌を処置するために、肺機能に影響を及ぼす他の肺疾患および代謝疾患における遺伝子、上記遺伝子が鼻送達を介して脳に達するパーキンソンおよびALSの処置のためのもののような遺伝子の中の欠損を修正するために、使用され得る。
【0084】
遺伝子治療は、疾患発生の原因である欠損遺伝子を修正するための技術である。研究者らは、欠陥のある遺伝子を修正するためにいくつかのアプローチのうちの1つを使用し得る:正常な遺伝子は、非機能的遺伝子を置換するためにゲノム内の非特異的位置へと挿入され得る。異常な遺伝子は、相同組換えを介して正常な遺伝子とスワッピングされ得る。上記異常な遺伝子は、上記遺伝子をその正常な機能へと戻す選択的復帰変異を介して修復され得る。特定の遺伝子の調節(遺伝子がオンにされるかもしくはオフにされる程度)は、変化させられ得る。
【0085】
上記核酸は、DNA、RNA、化学的に改変された核酸、もしくはこれらの組み合わせであり得る。例えば、核酸半減期の安定性および酵素による開裂への耐性を増大させるための方法は、当該分野で公知であり、核酸塩基、糖、もしくはポリヌクレオチドの結合に対する1または複数の改変もしくは置換を含み得る。上記核酸は、所望の使用に適合するように目的に合わせて作られる特性を含めるために、カスタム合成され得る。一般的な改変としては、ロックされた核酸(locked nucleic acid)(LNA)、ロックされていない核酸(unlocked nucleic acid)(UNA)、モルホリノ、ペプチド核酸(PNA)、ホスホロチオエート結合、ホスホノアセテート結合、プロピンアナログ、2’−O−メチルRNA、5−Me−dC、2’−5’結合ホスホジエステル結合、キメラ結合(ホスホロチオエートとホスホジエステル結合および改変体の混合)、脂質とペプチドとの結合体、ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0086】
いくつかの実施形態において、上記核酸は、ヌクレオチド間結合改変(例えば、アキラルおよび荷電していないサブユニット間結合を有するホスフェートアナログ)(例えば、Sterchak, E. P. et al., Organic Chem., 52:4202, (1987))、またはアキラルサブユニット間結合を有する荷電していないモルホリノベースのポリマー(例えば、米国特許第5,034,506号を参照のこと)を含む。いくつかのヌクレオチド間結合アナログは、モルホリデート、アセタール、およびポリアミド結合複素環を含む。他の骨格および結合の改変としては、ホスホロチオエート、ペプチド核酸、トリシクロ−DNA、デコイオリゴヌクレオチド、リボザイム、スピーゲルマー(spiegelmer)(L核酸を含み、高い結合親和性を有するアプタマー)、もしくはCpGオリゴマーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
ホスホロチオエート(もしくはS−オリゴ)は、非架橋酸素のうちの1つが硫黄によって置換されている正常DNAのバリアントである。上記ヌクレオチド間結合の硫化は、エンドヌクレアーゼおよびエキソヌクレアーゼ(5’から3’および3’から5’のDNA POL 1エキソヌクレアーゼ、ヌクレアーゼS1およびP1、RNase、血清ヌクレアーゼならびにヘビ毒ホスホジエステラーゼが挙げられる)の作用を劇的に低下させる。さらに、上記脂質二重層を横断する電位が増大する。これら重要な改善に起因して、ホスホロチオエートは、細胞調節において増大しつつある適用が見いだされた。ホスホロチオエートは、2つの主要な経路によって:ホスホン酸水素(hydrogen phosphonate)に対する、二硫化炭素中の元素状態の硫黄の溶液の作用によって、または亜リン酸トリエステルを、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)もしくは3H−1,2−ベンゾジチオール−3−オン1,1−ジオキシド(BDTD)のいずれかで硫化するためのより近年の方法によって、作製される。後者の方法は、大部分の有機溶媒中で元素状態の硫黄が不溶性であること、および二硫化炭素の毒性という問題を回避する。上記TETD法およびBDTD法はまた、より高い純度のホスホロチオエートが得られる。
【0088】
ペプチド核酸(PNA)は、オリゴヌクレオチドのホスフェート骨格がN−(2−アミノエチル)−グリシンユニットを反復することによってその全体において置換され、ホスホジエステル結合がペプチド結合によって置換されている分子である。種々の複素環式塩基が、メチレンカルボニル結合によって上記骨格に連結される。PNAは、オリゴヌクレオチドに類似である複素環式塩基の間隔を維持するが、アキラルであり、中性に荷電した分子である。ペプチド核酸は、代表的には、ペプチド核酸モノマーから構成される。上記複素環式塩基は、標準の塩基(ウラシル、チミン、シトシン、アデニンおよびグアニン)のうちのいずれか、または以下で記載される改変複素環式塩基のうちのいずれかであり得る。PNAはまた、1種または複数種のペプチドもしくはアミノ酸バリアントおよび改変体を有し得る。従って、PNAの骨格成分は、ペプチド結合であり得るか、または代わりに非ペプチド結合であり得る。例としては、アセチルキャップ、アミノスペーサー(例えば、8−アミノ−3,6−ジオキサオクタン酸(本明細書でO−リンカーといわれる))などが挙げられる。PNAの化学的アセンブリのための方法は、周知である。
【0089】
いくつかの実施形態において、上記核酸は、1種または複数種の化学的に改変された複素環式塩基を含み、上記化学的に改変された複素環式塩基としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:イノシン、5−(1−プロピニル)ウラシル(pU)、5−(1−プロピニル)シトシン(pC)、5−メチルシトシン、8−オキソ−アデニン、シュードシトシン、シュードイソシトシン、5および2−アミノ−5−(2’−デオキシ−β−D−リボフラノシル)ピリジン(2−アミノピリジン)、ならびに種々のピロロピリミジンおよびピラゾロピリミジン誘導体、4−アセチルシトシン、8−ヒドロキシ−N−6−メチルアデノシン、アジリジニルシトシン、5−(カルボキシヒドロキシルメチル)ウラシル、5−ブロモウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチル−2−チオウラシル、5−カルボキシメチルアミノメチルウラシル、ジヒドロウラシル、N6−イソペンテニルアデニン、1−メチルアデニン、1−メチルシュードウラシル、1−メチルグアニン、1−メチルイノシン、2,2−ジメチルグアニン、2−メチルアデニン、2−メチルグアニン、3−メチルシトシン、N6−メチルアデニン、7−メチルグアニン、5−メチルアミノメチルウラシル、5−メトキシ−アミノメチル−2−チオウラシル、β−D−マンノシルキューオシン、5’−メトキシカルボニルメチルウラシル、5−メトキシウラシル、2−メチルチオ−N6−イソペンテニルアデニン、ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル−5−オキシ酢酸、オキシブトキソシン、シュードウラシル、キューオシン、2−チオシトシン、5−メチル−2−チオウラシル、2−チオウラシル、4−チオウラシル、5−メチルウラシル、N−ウラシル−5−オキシ酢酸メチルエステル、2,6−ジアミノプリン、ならびに2’−改変アナログ(例えば、O−メチル、アミノ−、およびフルオロ改変アナログが挙げられるが、これらに限定されない)。2’−フルオロ(2’−F)ピリミジンで改変された阻害性RNAは、インビトロで有利な特性を有するようである。
【0090】
いくつかの実施形態において、上記核酸は、1種または複数種の糖部分改変を含み、上記糖部分改変としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:2’−O−アミノエトキシ、2’−O−アミノエチル(2’−OAE)、2’−O−メトキシ、2’−O−メチル、2−グアニドエチル(2’−OGE)、2’−O,4’−C−メチレン(LNA)、2’−O−(メトキシエチル)(2’−OME)および2’−O−(N−(メチル)アセトアミド)(2’−OMA)。
【0091】
遺伝子治療の方法は、代表的には、細胞の遺伝子型を変化させる核酸分子の細胞への導入に依存する。上記核酸分子の導入は、遺伝子組み換えを介して、内因性遺伝子を修正し得るか、置換し得るか、またはさもなければ変化させ得る。方法は、欠損遺伝子、異種遺伝子、もしくは小さな核酸分子(例えば、オリゴヌクレオチド)の置換コピー全体の導入を含み得る。このアプローチは、代表的には、上記細胞に上記置換遺伝子を導入するための送達システム(例えば、遺伝子操作されたウイルスベクター)を要する。
【0092】
遺伝的配列、ならびに適切な転写および翻訳制御エレメントを含む発現ベクターを構築するための方法は、当該分野で周知である。これらの方法は、インビトロの組換えDNA技術、合成技術、およびインビボの遺伝子組換えを含む。発現ベクターは、一般に、調節配列(挿入されるコード配列の翻訳および/もしくは転写に必要なエレメント)を含む。例えば、上記コード配列は、好ましくは、所望の遺伝子産物の発現を制御する一助となるプロモーターおよび/もしくはエンハンサーに作動可能に連結される。生物工学において使用されるプロモーターは、遺伝子発現の制御の意図されるタイプに従って種々のタイプのものである。それらは、一般に、構成的プロモーター、組織特異的もしくは発生段階特異的プロモーター、誘導性プロモーター、および合成プロモーターに分けられ得る。
【0093】
ウイルスベクターは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、ポリオウイルス、AIDSウイルス、神経栄養性ウイルス(neuronal trophic virus)、シンドビスウイルスおよび他のRNAウイルス(HIV骨格を有するこれらウイルスを含む)を含む。ベクターとして使用するのに適切にするこれらウイルスの特性を共有する任意のウイルスファミリーもまた有用である。代表的には、ウイルスベクターは、非構造的初期遺伝子、構造的後期遺伝子、RNAポリメラーゼIII転写物、複製およびキャプシド形成に必要な逆方向末端反復(inverted terminal repeat)、ならびに上記ウイルスゲノムの転写および複製を制御するためのプロモーターを含む。ベクターとして操作される場合、ウイルスは、代表的には、上記初期遺伝子のうちの1つまたは複数が除去され、遺伝子、または遺伝子/プロモーターカセットが、上記除去されるウイルスDNAの代わりに上記ウイルスゲノムの中に挿入される。
【0094】
標的組換え(例えば、相同組換え(HR))を介する遺伝子標的化は、遺伝子修正のための別のストラテジーである。標的遺伝子座での遺伝子修正は、上記標的遺伝子に相同なドナーDNAフラグメントによって媒介され得る(Hu, et al., Mol. Biotech., 29:197−210 (2005); Olsen, et al., J. Gene Med., 7:1534−1544 (2005))。標的化組換えの1つの方法は、配列特異的様式において二重鎖DNA中のホモプリン/ホモピリミジン部位に第3の鎖として結合する三重鎖形成オリゴヌクレオチド(TFO)を使用することを含む。三重鎖形成オリゴヌクレオチドは、2本鎖もしくは1本鎖いずれかの核酸と相互作用し得る。三重鎖分子が標的領域と相互作用する場合、三重鎖といわれる構造が形成され、その中では、DNAの3本の鎖があり、ワトソン−クリックおよびフーグスティーン塩基対合の両方に依存する複合体を形成している。三重鎖分子は、それらが高い親和性および特異性で標的領域と結合し得るので好ましい。上記三重鎖形成分子は、10
−6、10
−8、10
−10、もしくは10
−12未満のKdで上記標的分子と結合することが好ましい。三重鎖形成オリゴヌクレオチド(TFO)およびペプチド核酸(PNA)を使用する標的化遺伝子治療のための方法は、米国特許出願公開第20070219122号に記載され、感染性疾患(例えば、HIV)を処置するためのそれらの使用は、米国特許出願公開第2008050920号に記載されている。上記三重鎖形成分子はまた、テールクランプ(tail clamp)ペプチド核酸(tcPNAs)(例えば、米国特許出願公開第2011/0262406号に記載されるもの)であり得る。
【0095】
2つの二重鎖形成分子(例えば、偽相補性(pseudocomplementary)オリゴヌクレオチドの対)はまた、染色体部位においてドナーオリゴヌクレオチドとの組換えを誘導し得る。標的化遺伝子治療における偽相補性オリゴヌクレオチドの使用は、米国特許出願公開第2011/0262406号に記載されている。
【0096】
(2.診断剤)
例示的な診断用材料としては、常磁性分子、蛍光化合物、磁性分子、および放射性核種が挙げられる。適切な診断剤としては、x線画像化剤および造影剤が挙げられるが、これらに限定されない。放射性核種はまた、画像化剤として使用され得る。他の適切な造影剤の例としては、放射線不透過性であるガスもしくはガス放出化合物が挙げられる。リポソームは、投与される粒子の位置を決定するために有用な薬剤をさらに含み得る。この目的に有用な薬剤としては、蛍光タグ、放射性核種および造影剤が挙げられる。
【0097】
(3.CEST剤)
CEST剤は、MRIの間にプロトンを周囲の水と急速に交換し得る薬剤である。適切なCEST剤の例としては、L−アルギニン、バルビツール酸、5位の水素を有機基で置換したバルビツール酸の多くのアナログ、グリコーゲン、グルコース、ミオイノシトール、グルタミン酸、クレアチンおよび多くのポリカチオン性ペプチド(例えば、ポリ−L−リジン)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、上記薬剤は、少なくとも2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0以上の水からのオフセットを提供する。特定の実施形態において、上記オフセットは、約5.0ppmである。いくつかの実施形態において、上記薬剤は、L−アルギニン、ポリ−L−リジン、もしくはバルビツール酸である。特定の実施形態において、上記薬剤は、バルビツール酸である。
【0098】
(III.薬学的処方物)
上記1種または複数種の治療剤、予防剤、および/もしくは診断剤がリポソームナノ粒子内に被包されるか、そして/または上記リポソームの表面と会合されるそれら実施形態に関して、薬物装填%は、約1重量%〜約80重量%、約1重量%〜約50重量%、好ましくは、約1重量%〜約40重量%、より好ましくは、約1重量%〜約20重量%、最も好ましくは、約1重量%〜約10重量%である。上記の範囲は、1%から80%までの全ての値を含む。上記薬剤が上記粒子の表面と会合されるそれら実施形態に関して、装填%は、薬物の量が被包の方法によって制限されないので、より高くてもよい。いくつかの実施形態において、送達される薬剤は、リポソーム内に被包され、上記粒子の表面と会合されてもよい。
【0099】
本明細書で記載される処方物は、粘膜表面への投与のために適した薬学的キャリア中に有効量のリポソーム(「MPP」)を含み、ここで上記薬学的キャリアは、低張性であるように調節される。当業者は、処置される所望の組織がいったん同定されたら、本明細書で記載される好ましい張度範囲に基づいて、薬学的キャリアの張度を慣習的に調節し得る。
【0100】
張度は、「有効な重量オスモル濃度」であり、膜を横断する浸透力を発揮する能力を有する溶質濃度の合計に等しい。多くの種々の材料が張度を調節するために使用され得る。例えば、USP 29−NF 24は、「等張化」剤として分類した5つの賦形剤を列挙している(デキストロース、グリセリン;塩化カリウム;マンニトール;および塩化ナトリウムを含む)。例えば、United States Pharmacopeia Convention, Inc. United States Pharmacopeia 29−National Formulary 24. Rockville MD: U.S. Pharmacopeia Convention, Inc.; 2005: 3261; Day, A. Dextrose. In: Rowe RC, Sheskey PJ and Owen SC, eds. Handbook of Pharmaceutical Excipients. 5th ed. Washington DC: American Pharmaceutical Association; 2005: 231−233; Price JC. Glycerin. In: Rowe RC, Sheskey PJ and Owen SC, eds. Handbook of Pharmaceutical Excipients. 5th ed. Washington DC: American Pharmaceutical Association; 2005: 301−303; Price JC. Glycerin. In: Rowe RC, Sheskey PJ and Owen SC, eds. Handbook of Pharmaceutical Excipients. 5th ed. Washington DC: American Pharmaceutical Association; 2005: 301−303; Armstrong NA. Mannitol. In: Rowe RC, Sheskey PJ and Owen SC, eds. Handbook of Pharmaceutical Excipients. 5th ed. Washington DC: American Pharmaceutical Association; 2005: 449−453; Owen SC. Sodium Chloride. In: Rowe RC, Sheskey PJ and Owen SC, eds. Handbook of Pharmaceutical Excipients. 5th ed. Washington DC: American Pharmaceutical Association; 2005: 671−674を参照のこと。マンニトールは、FDA Inactive Ingredients Database(IP、IM、IV、およびSC注射;注入;バッカル、経口および舌下錠、散剤およびカプセル剤;眼用の調製物;局所溶液)に含まれ、UKで認可された経口および非経口医薬に含まれ、そしてCanadian Natural Health Products Ingredients Databaseに含まれる、欧州で食品添加物としての使用が認められたGRAS列挙成分の一例である。5.07% w/v 水性溶液は、血清と等浸透圧である。
【0101】
最小限に低張性の処方物(好ましくは、20〜220mOsm/kgの範囲)は、上皮毒性の最小限のリスクで、膣表面全体へのMPPの迅速かつ均一な送達を提供する。血漿(一般に、約300mOsm/kgで等張性と考えられる)のものより高い重量オスモル濃度を有するビヒクルが結腸中の分布に改善をもたらすように、結腸中ではより高い重量オスモル濃度が存在する。結腸中の低張性ビヒクルでの改善された結腸分布のための範囲は、約20mOsm/kg〜450mOsm/kgである。
【0102】
(A.肺処方物)
患者への活性薬剤の肺投与のための薬学的処方物および方法は、当該分野で公知である。
【0103】
気道は、大気と血流との間でのガス交換に関与する構造である。上記気道は、中咽頭および喉頭を含む上気道、続いて、気管、続いて気管支および細気管支へと続く分岐点を含む下気道を包含する。上気道および下気道は、誘導気道(conducting airways)といわれる。次いで、終末細気管支は、呼吸細気管支へと分かれ、次いで、最終的な呼吸ゾーンである肺胞もしくは肺深部(ここでガス交換が起こる)へとつながる。
【0104】
処方物は、乾燥粉末処方物および液体処方物に分けられ得る。乾燥粉末および液体処方物の両方が、エアロゾル処方物を形成するために使用され得る。用語エアロゾルは、本明細書で使用される場合、粒子の微細な霧状物の任意の調製に言及し、これは、プロペラントを使用して生成されようがそうでなかろうが、溶液もしくは懸濁物中にあり得る。
【0105】
(1.乾燥粉末処方物)
乾燥粉末処方物は、肺投与に適したリポソームキャリアを含む固体処方物へと微細に分割される。乾燥粉末処方物は、最低でも、肺投与に適した1または複数のリポソームキャリアを含む。このような乾燥粉末処方物は、空気もしくは適切なプロペラント以外のいかなるキャリアの利益もなく、患者への肺吸入を介して投与され得る。
【0106】
他の実施形態において、上記乾燥粉末処方物は、薬学的に受容可能なキャリアと組み合わせて1種または複数種のリポソーム遺伝子キャリアを含む。これらの実施形態において、上記リポソーム遺伝子キャリアおよび薬学的キャリアは、肺への送達のためのナノ粒子もしくはマイクロ粒子へと形成され得る。
【0107】
上記薬学的キャリアは、増量剤(bulking agent)または脂質もしくは界面活性剤を含み得る。天然の界面活性剤(例えば、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC))は、最も好ましい。合成および動物由来の肺界面活性剤としては、以下が挙げられる:Exosurf(DPPCとヘキサデカノールおよび展着剤(spreading agent)として添加されるチロキサポールとの混合物)、Pumactant(人工肺拡張化合物(Artificial Lung Expanding Compound)もしくはALEC)(DPPCおよびPGの混合物)、KL−4(DPPC、パルミトイル−オレオイルホスファチジルグリセロール、およびパルミチン酸から構成され、SP−Bの構造的特徴を摸倣する21アミノ酸の合成ペプチドと組み合わされる)、Venticute(DPPC、PG、パルミチン酸および組換えSP−C)、Alveofact(ウシ肺洗浄液から抽出される)、Curosurf(切り刻んだブタ肺由来の材料から抽出される)、Infasurf(仔牛肺洗浄液から抽出される)、およびSurvanta(さらなるDPPC、パルミチン酸およびトリパルミチンとともに、切り刻んだウシ肺から抽出される)。Exosurf、Curosurf、Infasurf、およびSurvantaは、米国での使用について現在FDAが承認している界面活性剤である。
【0108】
上記薬学的キャリアはまた、1種または複数種の安定化剤または分散剤を含み得る。上記薬学的キャリアはまた、1種または複数種のpH調節剤もしくは緩衝剤を含み得る。適切な緩衝剤としては、有機酸および塩基から調製される有機塩(例えば、クエン酸ナトリウムもしくはアスコルビン酸ナトリウム)が挙げられる。上記薬学的キャリアはまた、1種または複数種の塩(例えば、塩化ナトリウムもしくは塩化カリウム)を含み得る。
【0109】
乾燥粉末処方物は、代表的には、1種または複数種のリポソームキャリアと1種または複数種の薬学的に受容可能なキャリアとをブレンドすることによって調製される。必要に応じて、さらなる活性薬剤が、以下で考察されるように上記混合物の中に組みこまれ得る。次いで、上記混合物は、当該分野で公知の技術(例えば、凍結乾燥、噴霧乾燥、凝塊形成、噴霧被覆、コアセルベーション、低温キャスティング、粉砕(例えば、空気摩擦製粉(ジェットミリング)、ボールミリング)、高圧ホモジナイゼーション、および/または超臨界流体結晶化)を使用して、肺投与に適した粒子へと形成される。
【0110】
適切な粒子形成法は、上記処方物にとって望ましい所望の粒度、粒度分布、および粒子形態に基づいて選択され得る。いくらかの場合、上記粒子形成法は、肺投与にとって所望の粒度、粒度分布を有する粒子集団を生じるように選択される。あるいは、上記粒子形成法は、一定の粒子集団(そこから、上記肺投与にとって所望の粒度、粒度分布を有する粒子集団が、例えば、ふるい分けによって単離される)を生じ得る。
【0111】
粒子形態が肺への粒子の透過深度に影響を及ぼすことは、当該分野で公知である。よって、乾燥粉末処方物は、肺の所望の領域へ上記1種または複数種の活性薬剤の送達を達成するために、適切な空気力学的質量中央径(MMAD)、タップ密度、および表面の粗さを有する粒子へと加工処理される。例えば、肺深部への送達に好ましい粒子形態は、当該分野で公知であり、例えば、米国特許第7,052,678号(Vanbever, et al.)に記載される。
【0112】
約5ミクロンより大きな空気力学的質量中央径(MMAD)を有する粒子は、一般に、肺に達しない;代わりに、それらは、喉の後ろ側に接触(impact)して膨潤する傾向にある。直径 約3〜約5ミクロンを有する粒子は、上部から中部肺領域(誘導気道)に達するには十分小さいが、肺胞に達するには大きすぎると思われる。より小さな粒子(すなわち、約0.5〜約3ミクロン)は、肺胞領域に効率的に達し得る。約0.5ミクロンより小さい直径を有する粒子はまた、沈降によって肺胞領域に堆積し得る。
【0113】
肺胞領域への送達を達成するために有効な、正確な粒度範囲は、送達される粒子のタップ密度を含む、いくつかの要因に依存する。概して、タップ密度が低下するにつれて、肺の肺胞領域に効率的に達し得る粒子のMMADは、増大する。従って、低タップ密度を有する粒子の場合、直径 約3〜約5ミクロン、約5〜約7ミクロン、もしくは約7〜約9.5ミクロンを有する粒子は、肺に効率的に送達され得る。肺内の最大の堆積に好ましい空気力学的直径は、計算され得る。例えば、米国特許第7,052,678号(Vanbever, et al.)を参照のこと。
【0114】
マイクロ粒子は、それらの表面が粘液耐性であるとしても、粘液を通過して拡散できない。しかし、粘液透過性粒子は、肺上部に接触し、その後、上記リポソームを放出するためにマイクロ粒子中に被包され得る。いくらかの場合に、上記粒子は、形状が球形もしくは卵形である。上記粒子は、滑らかなもしくは粗い表面テクスチャーを有し得る。上記粒子はまた、肺の中で1種または複数種の活性薬剤の放出を制御するために、ポリマーもしくは他の適した材料で被覆され得る。
【0115】
乾燥粉末処方物は、当該分野で公知の適切な方法を使用して、乾燥粉末として投与され得る。あるいは、上記乾燥粉末処方物は、以下で記載される液体処方物中に懸濁され得、液体処方物の送達のために、当該分野で公知の方法を使用して、肺に投与され得る。
【0116】
(2.液体処方物)
液体処方物は、液体薬学的キャリア中に懸濁された1種または複数種のリポソームキャリアを含む。適切な液体キャリアとしては、水、生理食塩水、ならびに塩および/もしくは緩衝剤を含む他の生理学的に受容可能な水性溶液(例えば、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、リンゲル液、および等張性塩化ナトリウム)、または動物もしくはヒトへの投与に受容可能な任意の他の水性溶液(これは、望ましい低張度へと調節される)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0117】
好ましくは、液体処方物は、生理学的流体に対して等張性であり、ほぼ同じpH(例えば、約pH4.0〜約pH7.4、より好ましくは、約pH6.0〜pH7.0の範囲)である。上記液体の薬学的キャリアは、1種または複数種の生理学的に適合性の緩衝液(例えば、リン酸緩衝液)を含み得る。当業者は、肺投与のための水性溶液に関して適切な生理食塩水含有量およびpHを容易に決定し得る。
【0118】
液体処方物は、1種または複数種の懸濁剤(例えば、セルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム、もしくはレシチン)を含み得る。液体処方物はまた、1種または複数種の保存剤(例えば、p−ヒドロキシ安息香酸エチルもしくはp−ヒドロキシ安息香酸n−プロピル)を含み得る。
【0119】
いくつかの場合において、上記液体処方物は、低毒性の有機(すなわち、非水性)クラス3残留溶媒(例えば、エタノール、アセトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン(tetrahydofuran)、エチルエーテル、およびプロパノール)である1種または複数種の溶媒を含み得る。これら溶媒は、上記処方物を容易にエアロゾル化するその能力に基づいて選択され得る。上記液体処方物に含まれる任意のこのような溶媒は、上記液体処方物に存在する上記1種または複数種の活性薬剤と有害に反応するべきではない。上記溶媒は、上記溶液もしくは懸濁物のエアロゾルの形成を可能にするために十分に揮発性であるべきである。さらなる溶媒もしくはエアロゾル化薬剤(例えば、フレオン、アルコール、グリコール、ポリグリコール、もしくは脂肪酸)はまた、揮発性を増大させるために、および/または上記溶液もしくは懸濁物のエアロゾル化挙動を変化させるために望ましい場合、上記液体処方物中に含まれ得る。
【0120】
液体処方物はまた、微量のポリマー、界面活性剤、もしくは当業者に周知の他の賦形剤を含み得る。この状況において、「微量」とは、肺での上記1種または複数種の活性薬剤の取り込みに有害に影響を及ぼし得る賦形剤が存在しないことを意味する。
【0121】
(3.エアロゾル処方物)
上記の乾燥粉末および液体処方物は、肺投与のためのエアロゾル処方物を形成するために使用され得る。気道への治療剤の送達のためのエアロゾルは、当該分野で公知である。用語エアロゾルは、本明細書で使用される場合、ガスの中に懸濁された固体もしくは液体の粒子の微細な霧状物の任意の調製物をいう。いくらかの場合、上記ガスは、プロペラントであり得る;しかし、これは、必要とされない。エアロゾルは、超音波処理もしくは高圧処理を含め、多くの標準的技術を使用して生成され得る。
【0122】
いくらかの場合、デバイスは、上記処方物を肺に投与するために使用される。適切なデバイスとしては、乾燥粉末吸入器、加圧用量計量式吸入器、ネブライザ、および電気流体力学的エアロゾルデバイスが挙げられるが、これらに限定されない。吸入は、患者の鼻および/もしくは口を通して起こり得る。投与は、吸入しながら上記処方物を自己投与することによって、もしくは人工呼吸装置を介して人工呼吸装置を付けている患者へ上記処方物を投与することによって、起こり得る。
【0123】
(B.局所および眼用の処方物)
局所もしくは経腸の処方物は、当該分野で公知の技術を使用して、水性組成物として調製され得る。代表的には、このような組成物は、溶液もしくは懸濁物;注射前に再構成媒体を添加する際の、溶液もしくは懸濁物を調製するために適した固体形態;エマルジョン(例えば、油中水型(w/o)エマルジョン、水中油型(o/w)エマルジョン、およびこれらのマイクロエマルジョン、リポソーム、エマルソーム(emulsome)、スプレー、ゲル、クリーム剤もしくは軟膏剤として調製され得る。
【0124】
キャリアは、例えば、水、エタノール、1種または複数種のポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコール)、油(例えば、植物性油(例えば、ラッカセイ油、コーン油、胡麻油など))、およびこれらの組み合わせを含む、溶媒もしくは分散媒であり得る。例えば、被覆(例えば、レシチン)の使用によって、分散物の場合には必要とされる粒度の維持によって、および/または界面活性剤の使用によって、適切な流動性が維持され得る。多くの場合、張度を調節するために、薬剤(例えば、糖もしくは塩化ナトリウム)を含むことは、好ましい。
【0125】
遊離酸もしくは塩基またはその薬学的に受容可能な塩としての上記活性化合物の溶液および分散物は、1種または複数種の薬学的に受容可能な賦形剤(界面活性剤、分散剤、乳化剤、pH調節剤、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない)と適切に混合された、水もしくは別の溶媒、または分散媒の中で調製され得る。
【0126】
適切な界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性、または非イオン性の表面活性剤であり得る。適切なアニオン性界面活性剤としては、カルボキシレート、スルホネートおよびスルフェートイオンを含むものが挙げられるが、これらに限定されない。アニオン性界面活性剤の例としては、長鎖アルキルスルホネートおよびアルキルアリールスルホネートのナトリウム、カリウム、アンモニウム(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム);スルホコハク酸ジアルキルナトリウム(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム);スルホコハク酸ジアルキルナトリウム(例えば、ビス−(2−エチルチオキシル)−スルホコハク酸ナトリウム);ならびに硫酸アルキル(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、四級アンモニウム化合物(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、臭化セトリモニウム、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロリド、ポリオキシエチレンおよびココナツアミン(coconut amine)が挙げられるが、これらに限定されない。非イオン性界面活性剤の例としては、エチレングリコールモノステアレート、プロピレングリコールミリステート、グリセリルモノステアレート、グリセリルステアレート、ポリグリセリル−4−オレエート、ソルビタンアシレート、スクロースアシレート、PEG−150ラウレート、PEG−400モノラウレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリソルベート、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、PEG−1000セチルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリプロピレングリコールブチルエーテル、ポロキサマー(登録商標)401、ステアロイルモノイソプロパノールアミド、およびポリオキシエチレン水素付加獣脂アミド(tallow amide)が挙げられる。両性の界面活性剤の例としては、N−ドデシル−−アラニンナトリウム、N−ラウリル−−イミノジプロピオン酸ナトリウム、ミリストアンホアセテート(myristoamphoacetate)、ラウリルベタインおよびラウリルスルホベタインが挙げられる。
【0127】
上記処方物は、微生物の増殖を妨げるために保存剤を含み得る。適切な保存剤としては、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、およびチメロサールが挙げられるが、これらに限定されない。上記処方物はまた、上記活性薬剤の分解を妨げるために、抗酸化剤を含み得る。
【0128】
上記処方物は、代表的には、再構成の際に投与のためにpH 3〜8へと緩衝化される。適切な緩衝液としては、リン酸緩衝液、酢酸緩衝液、およびクエン酸緩衝液が挙げられるが、これらに限定されない。
【0129】
水溶性ポリマーは、しばしば、薬学的処方物で使用される。適切な水溶性ポリマーとしては、ポリビニルピロリドン、デキストラン、カルボキシメチルセルロース、およびポリエチレングリコールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
滅菌溶液が、適切な溶媒もしくは分散媒中の必要な量の活性化合物と、必要な場合、上記に列挙された賦形剤のうちの1種または複数種とを組み込み、続いて、濾過滅菌することによって、調製され得る。一般には、分散物は、上記種々の滅菌した活性成分を、基本的な分散媒および上記に列挙されたものからの必要とされる他の成分を含む滅菌ビヒクルの中に組みこむことによって調製される。滅菌注射用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製法は、上記活性成分および任意のさらなる所望の成分の粉末を、事前に滅菌濾過したその溶液から得られる、真空乾燥および凍結乾燥技術である。上記粉末は、上記粒子が本質的に多孔性であるような様式で調製され得る。これは、上記粒子の溶解を増大させ得る。多孔性粒子を作製するための方法は、当該分野で周知である。
【0131】
眼投与のための薬学的処方物は、好ましくは、1種または複数種のポリマー−薬物結合体から形成される粒子の滅菌水性溶液もしくは懸濁物の形態にある。受容可能な溶媒としては、例えば、水、リンゲル液、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、および等張性塩化ナトリウム溶液(これは、次いで、所望の低張度に調節される)が挙げられる。上記処方物はまた、非毒性の、非経口的に受容可能な希釈剤もしくは溶媒(例えば、1,3−ブタンジオール)中の、滅菌溶液、分散物、もしくはエマルジョンであり得る。
【0132】
いくつかの例において、上記処方物は、液体もしくは半固体形態(例えば、溶液(点眼剤)、懸濁物、ゲル、クリーム剤もしくは軟膏剤)で販売もしくはパッケージされる。あるいは、眼投与のための処方物は、例えば、適切な液体処方物の凍結乾燥によって得られる固体として詰められ得る。上記固体は、投与前に、適切なキャリアもしくは希釈剤で再構成され得る。
【0133】
眼投与のための溶液、懸濁物、もしくはエマルジョンは、眼への投与に適したpHを維持するために必要な有効量の緩衝剤で緩衝化され得る。適切な緩衝剤は、当業者に周知であり、有用な緩衝液のいくつかの例は、酢酸緩衝液、ホウ酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、およびリン酸緩衝液である。眼投与のための溶液、懸濁物、もしくはエマルジョンはまた、上記処方物の等張性範囲を調節するために、1種または複数種の等張化剤を含み得る。適切な等張化剤は、当該分野で周知であり、いくつかの例としては、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム、および他の電解質が挙げられる。
【0134】
眼投与のための溶液、懸濁物、もしくはエマルジョンはまた、眼用調製物の細菌汚染を妨げるために、1種または複数種の保存剤を含み得る。適切な保存剤は、当該分野で公知であり、ポリヘキサメチレンビグアニジン(PHMB)、塩化ベンザルコニウム(BAK)、安定化オキシクロロ錯体(他には、Purite(登録商標)としても公知)、酢酸フェニル水銀、クロロブタノール、ソルビン酸、クロルヘキシジン、ベンジルアルコール、パラベン、チメロサール、およびこれらの混合物が挙げられる。
【0135】
眼投与のための溶液、懸濁物、もしくはエマルジョンはまた、当該分野で公知の1種または複数種の賦形剤(例えば、分散剤、湿潤剤、および懸濁剤)を含み得る。
【0136】
なお他の実施形態において、上記リポソームは、粘膜への局所投与のために処方される。局所投与に適した投与形態としては、クリーム剤、軟膏剤、膏薬、スプレー、ゲル、ローション剤、およびエマルジョンが挙げられる。その組成物は、1種または複数種の化学的浸透増強剤、膜透過剤(membrane permeability agent)、膜輸送剤(membrane transport agent)、皮膚軟化薬、界面活性剤、安定化剤、およびこれらの組み合わせを含み得る。
【0137】
いくつかの実施形態において、上記リポソームは、液体処方物(例えば、溶液もしくは懸濁物)、半固体処方物(例えば、ゲル、ローション剤もしくは軟膏剤)、または固体処方物として投与され得る。「ゲル」は、分散相が連続相と組み合わされて、半固体材料(例えば、ゼリー)を生じるコロイドである。
【0138】
いくつかの実施形態において、上記リポソームは、溶液および懸濁物を含む液体(例えば、点眼剤)または粘膜(例えば、眼もしくは腟もしくは直腸)への局所適用のための半固体処方物(例えば、軟膏剤もしくはローション剤)として処方される。
【0139】
上記処方物は、1種または複数種の賦形剤(例えば、皮膚軟化薬、界面活性剤、および乳化剤)を含み得る。
【0140】
「皮膚軟化薬」とは、皮膚を柔らかくするかもしくは滑らかにする外用剤(externally applied agent)であり、一般に、当該分野で公知であり、解説(例えば、「Handbook of Pharmaceutical Excipients」, 4
th Ed., Pharmaceutical Press, 2003)に収載されている。これらとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:アーモンド油、ヒマシ油、イナゴマメ抽出物、セトステアロイルアルコール(cetostearoyl alcohol)、セチルアルコール、セチルエステルワックス、コレステロール、綿実油、シクロメチコン、エチレングリコールパルミトステアレート、グリセリン、グリセリンモノステアレート、グリセリルモノオレエート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、ラノリン、レシチン、軽いミネラルオイル(light mineral oil)、中鎖トリグリセリド、ミネラルオイルおよびラノリンアルコール、ワセリン、ワセリン及びラノリンアルコール、ダイズ油、デンプン、ステアリルアルコール、ひまわり油、キシリトールおよびこれらの組み合わせ。一実施形態において、上記皮膚軟化薬は、エチルヘキシルステアレートおよびエチルヘキシルパルミテートである。
【0141】
「界面活性剤」は、表面張力を低下させ、それによって、生成物の乳化特性、発泡特性、分散特性、拡散特性(spreading property)および湿潤特性を増大させる表面活性薬剤である。適切な非イオン性界面活性剤としては、乳化ワックス、グリセリルモノオレエート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリソルベート、ソルビタンエステル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、シクロデキストリン、グリセリンモノステアレート、ポロキサマー、ポビドンおよびこれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態において、上記非イオン性界面活性剤は、ステアリルアルコールである。
【0142】
「乳化剤」は、ある脂質の別の脂質中での懸濁を促進し、油および水の安定な混合物、またはエマルジョンの形成を促進する表面活性物質である。一般の乳化剤は、金属石鹸、特定の動物性および植物性の油、ならびに種々の極性化合物である。適切な乳化剤としては、アカシア、アニオン性乳化ワックス、ステアリン酸カルシウム、カルボマー、セトステアリルアルコール、セチルアルコール、コレステロール、ジエタノールアミン、エチレングリコールパルミトステアレート、グリセリンモノステアレート、グリセリルモノオレエート、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ラノリン、加水ラノリンアルコール(hydrous, lanolin alcohol)、レシチン、中鎖トリグリセリド、メチルセルロース、ミネラルオイルおよびラノリンアルコール、第一リン酸ナトリウム、モノエタノールアミン、非イオン性乳化ワックス、オレイン酸、ポロキサマー、ポロキサマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンステアレート、プロピレングリコールアルギネート、自己乳化グリセリルモノステアレート、無水クエン酸ナトリウム(sodium citrate dehydrate)、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステル、ステアリン酸、ひまわり油、トラガカント、トリエタノールアミン、キサンタンガムおよびこれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態において、上記乳化剤は、グリセロールステアレートである。
【0143】
浸透増強剤の適切なクラスは、当該分野で公知であり、脂肪アルコール、脂肪酸エステル、脂肪酸、脂肪アルコールエーテル、アミノ酸、リン脂質、レシチン、コール酸塩、酵素、アミンおよびアミド、複合体化剤(complexing agent)(リポソーム、シクロデキストリン、改変セルロース、およびジイミド)、大環状物質(macrocyclics)(例えば、大環状ラクトン、ケトン、ならびに無水物および環式尿素)、界面活性剤、N−メチルピロリドンおよびこれらの誘導体、DMSOおよび関連化合物、イオン性化合物、アゾン(azone)および関連化合物、ならびに溶媒(例えば、アルコール、ケトン、アミド、ポリオール(例えば、グリコール))が挙げられるが、これらに限定されない。これらクラスの例は、当該分野で公知である。
【0144】
「油」は、少なくとも95% wtの親油性物質を含む組成物である。親油性物質の例としては、天然に存在するおよび合成の油、脂肪、脂肪酸、レシチン、トリグリセリドおよびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0145】
「連続相」とは、固体が懸濁もしくはされるかもしくは別の液体の液滴が分散される液体をいい、ときおり、外部相といわれる。これはまた、固体もしくは流体の粒子が分布するコロイドの流体相をいう。上記連続相が水(もしくは別の親水性溶媒)である場合、水溶性もしくは親水性薬物が、連続相に溶解する(分散されるのとは対照的に)。多相処方物(例えば、エマルジョン)では、上記不連続(discreet)相は、連続相に懸濁もしくは分散される。
【0146】
「エマルジョン」は、均質に一緒にブレンドされた非混和性の成分の混合物を含む組成物である。特定の実施形態において、上記非混和性成分としては、親油性成分および水性成分が挙げられる。エマルジョンは、ある液体の集まり全体に小さな小滴で分布した第2の液体の調製物である。上記分散した液体は、不連続相であり、分散媒は、連続相である。油が分散される液体であり、水性溶液が連続相である場合、それは水中油型エマルジョンとして公知であるのに対して、水もしくは水性溶液が分散相であり、油もしくは油性物質が連続相である場合、それは油中水型エマルジョンとして公知である。上記油相および水相のいずれかもしくは両方が、1種または複数種の界面活性剤、乳化剤、エマルジョン安定化剤、緩衝化剤、および他の賦形剤を含み得る。好ましい賦形剤としては、界面活性剤、特に、非イオン性界面活性剤;乳化剤、特に、乳化ワックス;および液体の不揮発性非水性材料、特に、グリコール(例えば、プロピレングリコール)が挙げられる。上記油相は、他の油状の薬学的に認められた賦形剤を含み得る。例えば、ヒドロキシル化ヒマシ油もしくは胡麻油のような材料は、界面活性剤もしくは乳化剤として油相中で使用され得る。
【0147】
エマルジョンは、ある液体の集まり全体に小さな小滴で分散した第2の液体の調製物である。上記分散した液体は、不連続相であり、分散媒は、連続相である。油が分散される液体であり、水性溶液が連続相である場合、それは水中油型エマルジョンとして公知であるのに対して、水もしくは水性溶液が分散相であり、油もしくは油性物質が連続相である場合、それは油中水型エマルジョンとして公知である。上記油相は、少なくとも一部はプロペラント(例えば、HFAプロペラント)からなり得る。上記油相および上記水相のいずれかもしくは両方が、1種または複数種の界面活性剤、乳化剤、エマルジョン安定化剤、緩衝化剤、および他の賦形剤を含み得る。好ましい賦形剤としては、界面活性剤、特に、非イオン性界面活性剤;乳化剤、特に、乳化ワックス;および液体の不揮発性非水性材料、特に、グリコール(例えば、プロピレングリコール)が挙げられる。上記油相は、他の油状の薬学的に認められた賦形剤を含み得る。例えば、ヒドロキシル化ヒマシ油もしくは胡麻油のような材料は、界面活性剤もしくは乳化剤として油相中で使用され得る。
【0148】
エマルジョンのサブセットは、自己乳化系である。これら薬物送達システムは、代表的には、界面活性剤および親油性液体(例えば、油もしくは他の水非混和性の液体)の混合物に分散もしくは溶解した薬物から構成されるカプセル剤(硬質殻もしくは軟質殻)である。上記カプセル剤が水性環境に曝され、外側のゼラチン殻が溶解する場合、上記水性媒体と上記カプセル内容物との間の接触は、非常に小さなエマルジョン液滴を直ぐに生成する。これらは、代表的には、ミセルもしくはリポソームのサイズ範囲にある。代表的には、エマルジョン処方プロセスの場合のように、上記エマルジョンを生成するために混合する力は必要とされない。
【0149】
「ローション剤」は、低粘度から中程度の粘度の液体処方物である。ローション剤は、懸濁剤および分散剤の使用を介して分散媒中に溶解した状態にある微細に粉末化した物質を含み得る。あるいは、ローション剤は、ビヒクルと非混和性でありかつ通常は乳化剤もしくは他の適切な安定化剤によって分散される分散相液体物質を有し得る。一実施形態において、上記ローション剤は、100〜1000センチストークスの間の粘度を有するエマルジョンの形態にある。ローション剤の流動性は、広い表面積にわたって迅速かつ均一な適用を可能にする。ローション剤は、代表的には、皮膚で乾燥して、皮膚表面にそれらの医療成分の薄い被覆を残すことが意図される。
【0150】
「クリーム剤」は、「水中油型」もしくは「油中水型」いずれかの粘性の液体もしくは半固体のエマルジョンである。クリーム剤は、乳化剤および/もしくは他の安定化剤を含み得る。一実施形態において、上記処方物は、1000センチストークスより大きい、代表的には、20,000〜50,000センチストークスの範囲の粘性を有するクリーム剤の形態にある。クリーム剤はしばしば、軟膏剤より好ましい。なぜならそれらは、一般に、より拡げやすく除去しやすいからである。
【0151】
クリーム剤とローション剤との間の差異は、その粘性である。それは、種々の油の量/使用、ならびに上記処方物を調製するために使用される水のパーセンテージに依存する。クリーム剤は、代表的には、皮膚に対する所望の効果に依存して、ローション剤より濃く(thicker)、種々の用途を有し得、しばしば、より種々の油/バターを使用し得る。クリーム処方物では、水ベースのパーセンテージは、約60〜75%であり、油ベースは、全体のうちの約20〜30%であり、他のパーセンテージは、合計100%に対して乳化剤、保存剤および添加剤である。
【0152】
「軟膏剤」は、軟膏基剤および必要に応じて1種または複数種の活性薬剤を含む半固体の調製物である。適切な軟膏基剤の例としては、炭化水素基剤(例えば、ワセリン、白色ワセリン、黄色軟膏、およびミネラルオイル);吸収基剤(absorption base)(親水性ワセリン、無水ラノリン、ラノリン、およびコールドクリーム);水で除去可能な基剤(例えば、親水性軟膏剤)、および水溶性基剤(例えば、ポリエチレングリコール軟膏剤)が挙げられる。ペースト剤は、代表的には、それらがより大きなパーセンテージの固体を含むという点で、軟膏剤とは異なる。ペースト剤は、代表的には、同じ成分で調整された軟膏剤より吸収性かつ油分が少ない(less greasy)。
【0153】
「ゲル」は、液体ビヒクルに溶解もしくは懸濁された増粘剤もしくはポリマー材料の作用によって半固体にされている、液体ビヒクル中の低分子もしくは高分子の分散物を含む半固体系である。上記液体は、親油性成分、水性成分もしくはその両方を含み得る。いくらかのエマルジョンは、ゲルであり得るか、またはさもなければゲル成分を含み得る。しかし、いくらかのゲルは、エマルジョンではない。なぜならそれらは、非混和性成分の均質化されたブレンドを含まないからである。適切なゲル化剤としては、改変セルロース(例えば、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロース);カルボポールホモポリマーおよびコポリマー;ならびにこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。上記液体ビヒクルにおける適切な溶媒としては、ジグリコールモノエチルエーテル;アルキレングリコール(alklene glycol)(例えば、プロピレングリコール);ジメチルイソソルビド;アルコール(例えば、イソプロピルアルコールおよびエタノール)が挙げられるが、これらに限定されない。上記溶媒は、代表的には、それらが上記薬物を溶解する能力に対して選択される。他の添加剤は、上記処方物の皮膚感覚および/もしくは柔らかさを改善し、これもまた、組み込まれ得る。このような添加剤の例としては、イソプロピルミリステート、酢酸エチル、C
12−C
15アルキルベンゾエート、ミネラルオイル、スクアラン、シクロメチコン、カプリン/カプリルトリグリセリド、およびこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0154】
発泡物は、ガスのプロペラントもしくはガス放出成分と組み合わせたエマルジョンからなる。
【0155】
緩衝剤は、組成物のpHを制御するために使用される。好ましくは、上記緩衝剤は、上記組成物を、pH約4からpH約7.5へ、より好ましくは、pH約4からpH約7へ、および最も好ましくは、pH約5からpH約7へと緩衝化する。
(D.腸内処方物)
【0156】
適切な経口投与形態としては、錠剤、カプセル剤、溶液、懸濁物、シロップ剤およびロゼンジが挙げられる。錠剤は、圧縮もしくは当該分野で周知の成形技術を使用して、作製され得る。ゼラチンもしくは非ゼラチンカプセルは、硬質もしくは軟質のカプセル殻として調製され得、それは、当該分野で周知の技術を使用して、液体、固体、および半固体の充填材料を被包し得る。処方物は、1種または複数種の薬学的に受容可能な賦形剤(希釈剤、保存剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、膨潤剤、充填剤、安定化剤、およびこれらの組み合わせが挙げられる)を使用して調製され得る。
【0157】
賦形剤(可塑剤、顔料、着色剤、安定化剤、および流動促進剤(glidant)が挙げられる)はまた、経口投与のための被覆組成物を形成するためにも使用され得る。遅延型放出投与処方物(Delayed release dosage formulation)は、「Pharmaceutical dosage form tablets」, eds. Liberman et. al. (New York, Marcel Dekker, Inc., 1989)、「Remington − The science and practice of pharmacy」, 20th ed., Lippincott Williams & Wilkins, Baltimore, MD, 2000、および「Pharmaceutical dosage forms and drug delivery systems」, 6th Edition, Ansel et al., (Media, PA: Williams and Wilkins, 1995)のような標準的な参考文献に記載されるように、調製され得る。これら参考文献は、錠剤およびカプセル剤、ならびに錠剤、カプセル剤、および顆粒の遅延型放出投与形態を調製するための賦形剤、材料、装置、およびプロセスに関する情報を提供する。
【0158】
上記リポソームは、例えば、上記粒子がいったん胃の酸性環境を通過したら、放出を遅らせるように被覆され得る。適切な被覆材料の例としては、セルロースポリマー(例えば、セルロースアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートおよびヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート);ポリビニルアセテートフタレート、アクリル酸ポリマーおよびコポリマー、ならびに商品名EUDRAGIT(登録商標)(Roth Pharma, Westerstadt, Germany)で市販されているメタクリル樹脂、ゼイン、シェラック、およびポリサッカリドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0159】
希釈剤(「充填剤」ともいわれる)は、代表的には、実際のサイズが錠剤の圧縮またはビーズおよび顆粒の形成を提供するように、固体投与形態のかさを増大させるために必要である。適切な希釈剤としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:リン酸二カルシウム二水和物、硫酸カルシウム、ラクトース、スクロース、マンニトール、ソルビトール、セルロース、微結晶性セルロース、カオリン、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、加水分解デンプン、α化デンプン、二酸化シリコーン(silicone dioxide)、酸化チタン、ケイ酸マグネシウムアルミニウムおよび粉末化糖。
【0160】
結合剤は、固体投与処方物に粘着性質を付与するために使用され、従って、錠剤またはビーズもしくは顆粒が、投与形態の形成後に無傷なままであることを確実にする。適切な結合剤材料としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:デンプン、α化デンプン、ゼラチン、糖(スクロース、グルコース、デキストロース、ラクトースおよびソルビトールが挙げられる)、ポリエチレングリコール、ワックス、天然および合成のガム(例えば、アカシア、トラガカント)、アルギン酸ナトリウム、セルロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、およびビーガム(veegum)が挙げられる)、ならびに合成ポリマー(例えば、アクリル酸とメタクリル酸とのコポリマー、メタクリル酸コポリマー、メチルメタクリレートコポリマー、アミノアルキルメタクリレートコポリマー、ポリアクリル酸/ポリメタクリル酸およびポリビニルピロリドン。
【0161】
滑沢剤は、錠剤製造を促進するために使用される。適切な滑沢剤の例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、グリセロールベヘネート、ポリエチレングリコール、タルク、およびミネラルオイルが挙げられるが、これらに限定されない。
【0162】
崩壊剤は、投与後に投与形態の崩壊もしくは「分解」を促進するために使用され、一般に、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルデンプンナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、α化デンプン、クレイ(clay)、セルロース、アルギニン、ガムもしくは架橋ポリマー(例えば、架橋PVP(GAF Chemical CorpのPolyplasdone(登録商標) XL)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0163】
安定化剤は、薬物分解反応(例を挙げると、酸化反応が挙げられる)を阻害するかもしくは遅らせるために使用される。適切な安定化剤としては、抗酸化剤、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT);アスコルビン酸、その塩およびエステル;ビタミンE、トコフェロールおよびその塩;亜硫酸塩(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム);システインおよびその誘導体;クエン酸;没食子酸プロピル、ならびにブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0164】
(IV.粘液透過性リポソーム粒子を作製するための方法)
本明細書で記載されるリポソームは、当該分野で公知の種々の技術によって調製され得る。選択される方法は、(1)捕捉される材料の物理化学的特徴およびリポソーム成分の物理化学的特徴;(2)脂質小胞が分散される媒体の性質;(3)捕捉される物質の有効濃度およびその潜在的な毒性;(4)小胞の適用/送達の間に関わるさらなるプロセス;(5)意図される適用に関する小胞の最適なサイズ、多分散性および保存期間;ならびに(6)バッチ間の再現性および安全かつ効率的なリポソーム生成物の大規模生成の可能性、のような種々の要因に依存する。
【0165】
リポソームおよびナノリポソームの形成は、自然発生的なプロセスではない。脂質小胞は、リン脂質(例えば、レシチン)が水の中に入れられ、その結果としていったん十分なエネルギーが供給されれば、1つの二重層もしくは一連の二重層(各々は水分子によって分離される)を形成する場合に形成される。リポソームは、ホスファチジルコリンリッチなリン脂質を水の中で超音波処理することによって作り出され得る。低剪断速度は、多層リポソームを作りだし、これは、たまねぎのように多くの層を有する。
【0166】
連続した高剪断超音波処理は、より小さな単層リポソームを形成する傾向にある。この技術では、上記リポソーム内容物は、水相の内容物と同じである。超音波処理は、一般に、「おおざっぱな(gross)」調製法と考えられる。なぜならそれは、被包される予定の薬物の構造にダメージを与え得るからである。より新たな方法(例えば、押し出し法およびMozafari法)が、動物(例えば、ヒト)で使用するための材料を生成するために使用される。
【0167】
いくつかの実施形態において、リポソーム粒子は、従来の薄膜水和法および押出法を使用して調製される。上記脂質、PEG結合体化脂質、および安定化剤(存在する場合)は、所定のモル比で有機溶媒(例えば、クロロホルム)に溶解される。少量の標識脂質(例えば、ローダミン標識PE(Rho−PE))を、上記混合物に添加して、蛍光顕微鏡を介して上記リポソーム粒子の可視化を可能にし得る。上記混合物は、上記有機溶媒をエバポレートするために減圧雰囲気でロータリーエバポレーターの中に入れられる。得られた脂質フィルムを、多層小胞(MLV)を形成するためにウォーターバス超音波発生器を使用してかき混ぜると同時に、例えば、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で水和する。上記懸濁物をその後、孔サイズ400nmおよび200nmを有するポリカーボネートフィルタを通して押し出して、単層小胞(LUV、すなわち、単一の二重層膜を有するリポソーム)を生成する。
【0168】
(IV.粘液透過性リポソーム粒子を使用するための方法)
本明細書で記載される粘液透過性リポソームナノ粒子は、種々の治療剤、予防剤、および/もしくは診断剤を送達するために使用され得る。いくつかの実施形態において、上記薬剤は、親水性もしくは水溶性(例えば、親水性低分子薬物、モノクローナル抗体および他のタンパク質由来生成物)である。これら薬剤は、粒子コアが疎水性の性質であることに起因して、ポリマーナノ粒子へと装填するのは困難である。この疎水性コアは、粒子形成を促進するために必要である。対照的に、本明細書で記載される脂質ベースのMPPは、親水性物質および疎水性物質で容易に装填され得る。粒子が処方される場合、脂質が二重層膜へと自己アセンブリして、疎水性装填物のために親油性殻を形成し、その中心に親水性装填物とともに水性溶液を捕捉する。
【0169】
本明細書で記載される薬物が装填された脂質ベースの粒子は、ヒト頸膣粘液(CVM)の中で迅速に拡散し一体化(integral)したままであり得る。上記脂質ベースのMPPは、粘液バリアを適時に横断して、粘液による凝集もしくは除去を回避すると予測され、従って、より均質に分布し得、より長期間とどまり得、粘膜組織における疾患(例えば、子宮頸癌および性行為感染症(STD))ならびに結腸、鼻、肺および眼の疾患のより有効な処置を提供し得る。
【0170】
本明細書で記載される粒子はまた、動物における上記粒子の時間経過保持および空間分布を評価するための改善された方法を提供するために使用され得る。動物に投与されたナノキャリアの上記時間経過保持および空間分布を評価するための以前の方法は、大部分が、上記キャリアを蛍光標識し、観察および定量化のために動物を解剖することを要した。対照的に、CEST MRI造影剤を上記脂質ベースのMPPの中に被包することによって、上記キャリアを、経時的に生きている動物でCEST MRIツールを使用してモニターした。
【0171】
(A.化学交換飽和移動法(CEST))
化学交換飽和移動法(CEST)は、交換可能なプロトンを有する造影剤の間接的検出を可能にする磁気共鳴画像化法(MRI)コントラスト増強技術である。交換可能なプロトンを有する造影剤(L−アルギニン、バルビツール酸、5位の水素を有機基で置換したバルビツール酸の多くのアナログ、グリコーゲン、グルコース、ミオイノシトール、グルタミン酸、クレアチンおよび多くのポリカチオン性ペプチドが挙げられるが、これらに限定されない)は、潜在的なインビボCEST剤として同定された。外因性の薬剤(例えば、診断剤もしくは造影剤)はまた、インビボ画像化のために使用され得る。CEST技術は、多くの不可欠の特徴(例えば、MRコントラストを介して薬剤およびそれらの環境変化(例えば、pH、代謝など)の複数の「色」の同時検出の可能性)を有する。
【0172】
CESTは、核磁気共鳴法(NMR)が種々の分子上のプロトンから生じる種々のシグナルを分解する能力を活用する。周りの水分子の交換である特定のプロトンシグナル(特定の分子もしくはCEST剤と関連する)を選択的に飽和することによって、周りのバルク水分子からのMRIシグナルもまた、減衰される。RF飽和パルスありおよびなしで得られた画像から、上記CEST剤の位置が明らかにされる。化学交換は、交換が、バルク水シグナルを効率的飽和するのに十分早いが、上記交換可能なプロトン共鳴と水プロトン共鳴との間のケミカルシフト差があるように十分に遅い中間領域(regime)になければならない。従って、上記CEST効果の規模は、交換速度および交換可能なプロトンの数の両方に依存する。
【0173】
CESTは、慣例的な分子画像化技術を超える3つの大きな利点を有する:(1)画像コントラストが高周波(radio−frequency)(RF)パルスで制御され、随意にオン/オフできる;(2)造影剤が目的の分子に送達され、これと特異的に反応する必要性を排除して、目的の分子を、いくらかの場合には、直接検出できる;(3)CEST技術の変法(PARACESTとして公知)は、慣例的分子画像化技術より遙かに感受性であり得、ナノモル濃度を検出できるはずである。PARACESTは、代表的には、バルク水と常磁性ランタニド錯体に結合した水との間の水交換に依存する。上記ランタニドイオン結合水共鳴の飽和は、水交換を介してバルク水シグナルの減衰をもたらす。上記結合した水分子の大きな常磁性ケミカルシフトは、中間交換領域になお残って、それによって、バルク水シグナルの遙かに効率的な飽和および遙かにより高いCEST感度を提供しながら、バルク水との遙かにより早い交換速度を許容することを可能にする。
【0174】
CESTは、本明細書で記載される粘液透過性リポソーム粒子から所望の部位での薬物送達をモニターするために使用され得る。例えば、CESTは、反磁性CEST造影剤および本明細書で記載されるリポソーム粒子内の薬物を共に被包することによって、子宮頸部腫瘍の局所処置のためのリポソームの腟への薬物送達をモニターするために使用され得る。PEG被覆リポソームを用いたインビトロおよびインビボでの画像は、以前の設計より水から周波数オフセット(5ppmで)を示す。CESTおよびpeg化リポソームナノ粒子の統合は、前臨床研究においてこれら粒子の性能をインビボで評価するために、非侵襲性かつ定量的な方法を提供する。
【実施例】
【0175】
(実施例1.粘液透過性リポソーム粒子の調製)
リポソーム粒子を、従来の薄膜水和法および押出法を使用して調製した。ホスファチジルコリン(PC、例えば、卵PCもしくは水素付加ダイズPC)、PEG−ホスファチジルエタノールアミン(PEG−PE)およびコレステロール(CHOL)の混合物12mgを、所定のモル比でクロロホルムに溶解した。少量のローダミン標識PE(Rho−PE)を上記混合物に添加して、上記リポソーム粒子の蛍光顕微鏡を介した可視化を可能にした。上記混合物を、減圧雰囲気のロータリーエバポレーターの中に入れて、有機溶媒をエバポレートした。得られた脂質フィルムを、ウォーターバス超音波発生器を使用してかき混ぜながらリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で水和して、多層小胞(MLV)を形成した。その後、その懸濁物を、孔サイズ400nmおよび200nmを有するポリカーボネートフィルタを通して押し出して、単層小胞(LUV、すなわち、単一の二重層膜を有するリポソーム)を生成した。
【0176】
CEST剤(バルビツール酸(BA))を装填するために、上記脂質薄膜を、25mg/mL BAを含むPBS緩衝液で水和し、その後、超音波処理を介してアニーリング(annealing)および撹拌した。薬物(ドキソルビシン(DOX))を装填するために、上記MLV懸濁物を、2mg/mL DOXを含むPBS緩衝液と混合し、その後、超音波処理し、押し出した。
【0177】
薄膜水和法および押出法を使用したが、リポソーム粒子は、当該分野で公知の他の方法を使用して調製され得、上記リポソーム粒子の組成が変化しない限りにおいて、類似の特性を示すはずである。
【0178】
リポソーム粒子の組成のスキームは、
図1に示される。
【0179】
(実施例2.リポソーム粒子の特徴付け)
リポソーム粒子のサイズおよびζ電位を、それぞれ、動的光散乱法およびレーザードップラー電気泳動を使用して測定した。データを表2に示す。
【表2】
【0180】
試験した全ての組成のリポソーム粒子のサイズは、130〜230nmの範囲に及び、ヒトCVMのメッシュ寸法(>500nmであると概算される)を十分下回っていた。PEG結合体化脂質の比をより高くすると、リポソームミセルの形成に恐らく起因して、上記粒子のサイズが低下した。高比率のコレステロールを、上記リポソーム粒子の安定性を高めるために使用した。
【0181】
(実施例3.粘液透過性リポソーム粒子の安定性)
種々の組成のリポソーム粒子の安定性を試験するために、本発明者らは、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)中、37℃で上記粒子をインキュベートし、
図2に示されるように、サイズおよび多分散性の経時的変化をモニターした。上記粒子のサイズおよび多分散性指数(PDI)は、48時間にわたって全ての実験群に関して一定であった。しかし、PEGなしのリポソーム粒子のPDIは、他の実験群より一貫して高かった。このことは、PEG化したものと比較して、それらの品質がより不十分であり安定性がより弱いことを示す。
【0182】
(実施例4.粘液中のリポソーム粒子の拡散率および安定性)
ヒトCVMサンプル中での、種々の組成を有するリポソーム粒子の拡散率を評価した。0.6μlの希釈したリポソーム粒子を、20μlの新たに集めた未希釈ヒトCVMに添加した。サンプルを、室温でおよび種々の時点で貯蔵し、20秒の動画を取得して、上記粒子の軌跡を記録した。上記リポソーム粒子の移動度および安定性の定量的観察を、表3にまとめる。
【表3】
【0183】
いかなるPEG被覆もないリポソーム粒子は、強力に固定され、粘液によってひどく凝集した。PEG−PEを組み込むと、粘液中での上記粒子の拡散および安定性が促進された。PEG−PEの割合が高いほど、より多くのリポソーム粒子が自由に拡散し、粘液の中により均質に分散した。具体的には、10%もしくは20% PEGを有するリポソーム粒子は、大部分が移動性があり、粘液の中で、粒子が上記粘液層に透過して下にある上皮に達するのに十分長い少なくとも15時間にわたって無傷なままであった。「移動性がある」とは、20秒の動画の中で、その半径(約100nm)の10倍より長い距離を移動した(0.1μm
2/秒に対応する)粒子として定義した。
【0184】
代表的には、PEG化リポソーム粒子(例えば、静脈内注射のためのステルスリポソーム)は、約3〜7モル% PEG結合体化脂質分子から構成される。しかし、粒子がヒト粘液を透過することを可能にするために、高比率のPEG(すなわち、10〜20mol%)が必要であることが分かった。
【0185】
(実施例5.化学交換飽和移動法(CEST)に関する粘液透過性リポソーム粒子の評価)
(動物の準備)
C57BL/6マウスの右側腹部に、腫瘍接種の4日前に、皮下注射でDepo−Provera(3mg/マウス)を与えた。次いで、ルシフェラーゼ発現C3.34細胞を、マウスの膣内腔に移植し、腫瘍の成長をモニターするために、生体発光画像化を使用した。
【0186】
(CEST画像化)
マウスを、イソフルランを使用して麻酔し、11.7T水平ボアBruker Biospecスキャナに置き、20μlのBA/ DOX PEG化リポソームの腟内投与前後で画像化した。
【0187】
CEST画像を、2セットの飽和画像、B0マッピングに関して水飽和シフト参照(water saturation shift referencing)(WASSR)6セットおよびコントラストを特徴付けるためのCESTデータセットを集めることによって取得した。CEST画像に関して: tsat=3秒、B1=4.7uT、TR=5秒で、オフセットは、脂肪抑制パルス(fat suppression pulse)で−6から+6ppmまで(0.3ppmきざみ)増大した。取得パラメーターは、以下のとおりであった: TR=5.0秒、有効TE=21.6ms、RAREファクター=8。上記CEST画像を、上記リポソーム投与後30分ごとに最大2時間まで獲得した。
【0188】
(データ分析)
CESTコントラストを用いて特注Matlabスクリプトを使用して処理したMR画像は、Δω=5ppmで磁化移動比(magnetization transfer ratio)(NHに関して、pMTRasym%=(S−Δω−SΔω)/S0×100%)プロトンであった。
【0189】
図3は、子宮頸部腫瘍の粒子ベースの治療を画像化するためのリポソームナノ粒子を設計する原理を表したものである。
【0190】
種々のリポソーム粒子のインビトロCEST画像化の結果を、
図4に示す。0%、5%、10%および20% PEGで被覆したこれらリポソームの上記インビトロCESTコントラストは、5ppmで、それぞれ53%、27%、25%および23%であった。これら粒子は、上記のようにサイズおよびPDIにおいて有意な変化もなく、インビトロで2日間にわたって安定であった。
【0191】
図4Aは、30モル%、50モル%、および70モル% コレステロールを含むリポソーム粒子のCESTコントラストの最適化を示す。>10% PEGおよび50モル%のコレステロールを有するリポソームは安定であり、高いCESTコントラストを有する。上記CESTリポソームは、局所投与後のMRIを使用して可視化でき、それらの分布は、2時間にわたって追跡できた。上記リポソームを、腟腔の開口部近く(ROI1)に配置したところ、腟内部の遠位領域(ROI2)にとどまっているようであった。ROI1およびROI2におけるコントラストは、投与直後および最初の60分間にわたって増大した。興味深いことに、ROI2におけるコントラストは、投与後90分でのROI1におけるものより遙かに高く、投与前のものより高かった。このことは、リポソームが少なくとも2時間にわたって腟内部に保持され得ることを示した。