(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも、ジエンエラストマーと、50phr超の量の補強充填剤と、5と25phrとの間の量の、1と50μmとの間の重量メジアン径を有するナトリウムまたはカリウムの炭酸塩または炭酸水素塩の微小粒子と、2と20phrとの間の量の、その融点が60℃と220℃との間であり、クエン酸を含む、カルボン酸を含み、炭酸(水素)塩とカルボン酸との合計含有量が15phrを超える、熱膨張性ゴム組成物。
ジエンエラストマーが、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、およびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
カルボン酸が、パルミチン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、ベヘン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、安息香酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、グリコール酸、α−ケトグルタル酸、サリチル酸、フタル酸、クエン酸、およびこれらの酸の混合物からなる群から選択される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本説明において、特記しない限り、示されるすべての百分率(%)は重量%である。略語「phr」は、100重量部のエラストマー(いくつかのエラストマーが存在するなら全エラストマー)当たりの重量部を表す。
さらに、表現「aとbとの間」によって表される区間の任意の値は、「a」を超えかつ「b」未満の(すなわち、限界値aおよびbを除外した)範囲の値を意味し、一方、表現「aからb」によって表される区間の任意の値は、「a」から「b」まで拡がる(すなわち、限界値aおよびbを完全に含む)範囲の値を意味する。
したがって、本発明のタイヤは、そのトレッドが、未加硫段階で、道路表面に直接的に接触させることを意図した少なくともその一部(半径方向に最も外側の部分)に、熱膨張性ゴム組成物を含むという本質的特徴を有し、該ゴム組成物は、
・(少なくとも1種、すなわち1種以上の)ジエンエラストマー;
・(少なくとも1種、すなわち1種以上の)補強充填剤50phr超;
・1と50μmとの間の重量メジアン径を有する(少なくとも1種、すなわち1種以上の)ナトリウムまたはカリウムの炭酸塩または炭酸水素塩の微小粒子 5と25phrとの間;
・その融点が60℃と220℃との間である(少なくとも1種、すなわち1種以上)のカルボン酸 2と20phrとの間;
を少なくとも含み、
・炭酸(水素)塩とカルボン酸との合計含有量は10phrを超える。
【0008】
前記の種々の成分を、以下で詳細に説明する。
4.1.ジエンエラストマー
「ジエン」型のエラストマー(またはゴム、この2つの用語は同義である)は、ジエンモノマー(2つの共役または非共役炭素−炭素二重結合を有するモノマー)から少なくとも部分的には由来するエラストマー(すなわち、ホモポリマーまたはコポリマー)を意味すると理解すべきであることを思い起こされたい。
【0009】
ジエンエラストマーは、公知の方式で2つの範疇:「本質的に不飽和」であると言われるもの、および「本質的に飽和」であると言われるものに分類される。ブチルゴム、および例えばEPDM型のジエン/α−オレフィンコポリマーも、本質的には飽和のジエンエラストマーの範疇に包含され、ジエン由来単位の含有量は、少ないか極めて少なく、常に15%(モル%)未満である。対照的に、表現「本質的に不飽和のジエンエラストマー」は、共役ジエンモノマーから少なくとも部分的には由来するジエンエラストマーを意味すると理解され、ジエン(共役ジエン)由来単位の含有量は、15%(モル%)を超える。「本質的に不飽和」のジエンエラストマーの範疇において、表現「高度不飽和ジエンエラストマー」は、ジエン(共役ジエン)由来単位の含有量が50%を超えるジエンエラストマーをとりわけ意味すると理解される。
【0010】
高度不飽和型の少なくとも1種のジエンエラストマー、とりわけ、天然ゴム(NR)、合成ポリイソプレン(IR)、ポリブタジエン(BR)、ブタジエンコポリマー、イソプレンコポリマー、およびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択されるジエンエラストマーを使用することが好ましい。このようなコポリマーは、より好ましくは、ブタジエン/スチレンコポリマー(SBR)、イソプレン/ブタジエンコポリマー(BIR)、イソプレン/スチレンコポリマー(SIR)、イソプレン/ブタジエン/スチレンコポリマー(SBIR)、およびこのようなコポリマーの混合物からなる群から選択される。
【0011】
エラストマーは、例えば、ブロック、統計的(statistical)、逐次(sequential)、またはミクロ逐次重合エラストマーでよく、かつ分散液または溶液中で調製することができ、それらのエラストマーを、カップリング剤および/または星状分枝化剤(star-branching agent)または官能化剤を用いて、カップリングおよび/または星状に分枝させるか、あるいは官能化することができる。例えば、カーボンブラックへカップリングさせるには、C−Sn結合を含む官能基、または例えばベンゾフェノンなどのアミノ化官能基を挙げることができ;シリカなどの補強用無機充填剤へカップリングさせるには、シラノール官能基、またはシラノール末端を有するポリシロキサン官能基(例えば、US6013718に記載のような)、アルコキシシラン基(例えば、US5977238に記載のような)、カルボキシル基(例えば、US6815437またはUS2006/0089445に記載のような)、あるいはポリエーテル基(例えば、US6503973に記載のような)を挙げることができる。このような官能化エラストマーのその他の例としては、エポキシ化型のエラストマー(SBR、BR、NRまたはIRなど)も挙げることができる。
【0012】
次のものが好ましくは適している:ポリブタジエン、とりわけ1,2−単位の含有量が4%と80%との間であるもの、またはシス−1,4−単位の含有量が80%を超えるもの;ポリイソプレン;ブタジエン/スチレンコポリマー、とりわけスチレンの含有量が重量で5%と50%との間、より詳細には20%と40%との間であり、ブタジエン部分の1,2−結合の含有量が4%と65%との間であり、かつ、トランス−1,4−結合の含有量が20%と80%との間であるもの;ブタジエン/イソプレンコポリマー、特にイソプレンの含有量が重量で5%と90%との間であり、かつ−40℃から−80℃のガラス転移温度(「Tg」、ASTM D3418−82により測定)を有するもの;あるいはイソプレン/スチレンコポリマー、特にスチレンの含有量が重量で5%と50%との間であり、かつ−25℃と−50℃との間のTgを有するもの。
ブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーの場合、スチレン含有量が重量で5%と50%との間、より詳細には10%と40%との間であり;イソプレン含有量が重量で15%と60%との間、より詳細には20%と50%との間であり;ブタジエン含有量が重量で5%と50%との間、より詳細には20%と40%との間であり、ブタジエン部分の1,2−単位の含有量が4%と85%との間であり、ブタジエン部分のトランス−1,4−単位の含有量が6%と80%との間であり;イソプレン部分の1,2−+3,4−単位の含有量が5%と70%との間であり、イソプレン部分のトランス−1,4−単位の含有量が10%と50%との間であり;かつより一般的には、任意のブタジエン/スチレン/イソプレンコポリマーが−20℃と−70℃との間のTgを有するものが、とりわけ適している。
【0013】
本発明のとりわけ好ましい実施形態によれば、ジエンエラストマーは、天然ゴム、合成ポリイソプレン、シス−1,4−結合の含有量が90%を超えるポリブタジエン、ブタジエン/スチレンコポリマー、およびこれらのエラストマーの混合物からなる群から選択される。
より詳細でかつ好ましい実施形態によれば、熱膨張性ゴム組成物は天然ゴムまたは合成ポリイソプレン 50から100phrを含み;前記天然ゴムまたは合成ポリイソプレンを、とりわけ、シス−1,4−結合の含有量が90%を超えるポリブタジエン最大50phrとのブレンド(混合物)として使用することが可能である。
【0014】
別のとりわけ好ましい実施形態によれば、熱膨張性ゴム組成物は、シス−1,4−結合の含有量が90%を超えるポリブタジエン 50から100phrを含み;前記ポリブタジエンを、とりわけ、天然ゴムまたは合成ポリイソプレン最大50phrのとのブレンドとして使用することが可能である。
ジエンエラストマー以外の合成エラストマー、またはエラストマー以外のポリマー、例えば、熱可塑性ポリマーでさえ、少量であれば、本発明によるトレッドのジエンエラストマーと組み合わせることができる。
4.2.充填剤
ゴム組成物を補強するその能力が公知である任意の充填剤、例えば、カーボンブラックなどの有機充填剤、または公知の方式でカップリング剤と組み合わされるシリカなどの無機充填剤を使用することができる。
このような充填剤は、好ましくはナノ粒子からなり、該ナノ粒子の(重量)平均サイズは、マイクロメートル未満、一般には500nm未満、通常的には20nmと200nmとの間、とりわけより好ましくは20nmと150nmとの間である。
【0015】
好ましくは、補強充填剤(特に、シリカ、カーボンブラック、またはシリカとカーボンブラックの混合物)の合計含有量は、50と150phrとの間である。50phr以上の含有量は、良好な機械的強度を増進し;150phrを超えると、ゴム組成物の剛性が過剰となるリスクが存在する。これらの理由により、補強充填剤の合計含有量は、より好ましくは、70から120phrの範囲内である。
【0016】
カーボンブラックとして適しているのは、例えば、タイヤに通常的に使用されるすべてのカーボンブラック(「タイヤ級」ブラック)、例えば、N115、N134、N234、N326、N330、N339、N347またはN375ブラックなどの100、200または300シリーズ(ASTM級)のカーボンブラックである。カーボンブラックは、例えば、ジエンエラストマー、とりわけイソプレンエラストマー中にマスターバッチの形態で既に組み込まれていてもよい(例えば、WO97/36724またはWO99/16600を参照されたい)。
カーボンブラック以外の有機充填剤の例としては、WO−A−2006/069792、WO−A−2006/069793、WO−A−2008/003434、およびWO−A−2008/003435に記載のような官能化ポリビニル有機充填剤を挙げることができる。
ここで、「補強用無機充填剤」は、カーボンブラックとは対照的に、「白色充填剤」、「透明充填剤」、あるいは「非黒色充填剤」としても知られ、その色およびその起源(天然または合成)がなんであれ、中間カップリング剤以外の手段を用いることなくその充填剤単独でタイヤの製造を意図したゴム組成物を補強する能力がある、換言すれば、その補強的役割において通常のタイヤ級カーボンブラックにとって代わる能力がある、任意の無機または鉱物性充填剤を意味すると理解されたい。このような充填剤は、公知の方式で、一般に、その表面にヒドロキシル(−OH)基が存在することによって特徴付けられる。
【0017】
シリカ型の鉱物性充填剤、特にシリカ(SiO
2)は、補強用無機充填剤としてとりわけ適している。使用されるシリカは、当業者に公知の任意の補強用シリカ、とりわけ、450m
2/g未満、好ましくは30から400m
2/g、とりわけ60と300m
2/gとの間のBET表面積およびCTAB比表面積の双方を示す、任意の沈降またはヒュームドシリカでよい。高分散性沈降シリカ(HDS)としては、例えば、EvonikからのUltrasil 7000およびUltrasil 7005シリカ、RhodiaからのZeosil 1165MP、1135MPおよび1115MPシリカ、PPGからのHi−Sil EZ150Gシリカ、またはHuberからのZeopol 8715、8745および8755シリカが挙げられる。
【0018】
別のとりわけ好ましい実施形態によれば、主な充填剤として、補強用無機充填剤、とりわけシリカが、70から120phrの範囲内の含有量で使用され、この補強用無機充填剤に、有利にはカーボンブラックを最大15phr、とりわけ1から10phrの範囲内の少量の含有量で添加することができる。
補強用無機充填剤をジエンエラストマーにカップリングさせるために、無機充填剤(その粒子の表面)とジエンエラストマーとの間の化学的および/または物理的性質の十分な接合を提供することを意図して、少なくとも二官能性のカップリング剤(または結合剤)が公知の方式で使用される。とりわけ、少なくとも二官能性のオルガノシランまたはポリオルガノシロキサンが使用される。
【0019】
とりわけ、例えばWO03/002648(またはUS2005/016651)およびWO03/002649(またはUS2005/016650)に記載のような、それらの特定の構造に応じて「対称性」または「非対称性」と呼ばれるシランポリスルフィドが使用される。
【0020】
以下の定義に限定されるものではないが、とりわけ適切なのは、次の一般式:
(I) Z−A−Sx−A−Z
に該当するシランポリスルフィドであり、式中、
・xは、2から8の(好ましくは2〜5)の整数であり;
・Aは、同一または異なって、2価の炭化水素基(好ましくは、C
1−C
18アルキレン基またはC
6−C
12アリーレン基、より好ましくはC
1−C
10とりわけC
1−C
4のアルキレン、特にプロピレン)であり;
・Zは、同一または異なって、下記の3つの式:
【0022】
[式中、
・R
1基は、置換または非置換であり、互いに同一であるかまたは異なって、C
1−C
18アルキル、C
5−C
18シクロアルキル、またはC
6−C
18アリール基(好ましくは、C
1−C
6アルキル、シクロヘキシルまたはフェニル基、とりわけC
1−C
4アルキル基、より詳細にはメチルおよび/またはエチル)を表し、
・R
2基は、置換または非置換であり、互いに同一であるかまたは異なって、C
1−C
18アルコキシルまたはC
5−C
18シクロアルコキシル基(好ましくは、C
1−C
8アルコキシルおよびC
5−C
8シクロアルコキシルから選択される基、より好ましくはC
1−C
4アルコキシル、とりわけメトキシルおよびエトキシルから選択される基)を表す]の1つに該当する。
【0023】
前記の式(I)に該当するアルコキシシランポリスルフィドの混合物、とりわけ通常的な市販混合物の場合、「x」の平均値は、好ましくは2と5との間の分数、より好ましくはほぼ4である。しかし、本発明は、例えば、アルコキシシランジスルフィド(x=2)を用いて有利に実施することもできる。
より詳細には、シランポリスルフィドの例としては、ビス((C
1−C
4)アルコキシル(C
1−C
4)アルキルシリル(C
1−C
4)アルキル)ポリスルフィド(とりわけ、ジスルフィド、トリスルフィドまたはテトラスルフィド)、例えば、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)またはビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドなどが挙げられる。数あるこれらの化合物の中でも、とりわけ、TESPTと略記される式[(C
2H
5O)
3Si(CH
2)
3S
2]
2のビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、またはTESPDと略記される式[(C
2H
5O)
3Si(CH
2)
3S]
2のビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドが使用される。また、好ましい例としては、ビス(モノ(C
1−C
4)アルコキシルジ(C
1−C
4)アルキルシリルプロピル)ポリスルフィド(とりわけ、ジスルフィド、トリスルフィドまたはテトラスルフィド)、より詳細には前に言及した特許出願WO02/083782(またはUS7217751)に記載されるようなビス(モノエトキシジメチルシリルプロピル)テトラスルフィドが挙げられる。
【0024】
アルコキシシランポリスルフィド以外のカップリング剤の例としては、とりわけ、例えば特許出願WO02/30939(またはUS6774255)、WO02/31041(またはUS2004/051210)およびWO2007/061550中に記載のような二官能性POS(ポリオルガノシロキサン)、またはヒドロキシシランポリスルフィド(前記の式I中で、R
2=OH)、あるいは例えば、特許出願WO2006/125532、WO2006/125533およびWO2006/125534に記載されるような、アゾジカルボニル官能基を有するシランまたはPOSが挙げられる。
その他のシランスルフィドの例としては、例えば、特許または特許出願US6849754、WO99/09036、WO2006/023815およびWO2007/098080に記載されるような、例えば、少なくとも1つのチオール(−SH)官能基(メルカプトシランと呼ばれる)および/または少なくとも1つのマスクされたチオール官能基を有するシランが挙げられる。
【0025】
もちろん、とりわけ前に言及した出願WO2006/125534に記載されるように、上記のカップリング剤の混合物を使用することもできる。
それらのゴム組成物をシリカなどの無機充填剤で補強する場合、ゴム組成物は、好ましくは2と15phrとの間、より好ましくは3と12phrとの間のカップリング剤を含む。
【0026】
当業者は、この項で説明した補強用無機充填剤に等価な充填剤として、別の性質、とりわけ有機性の補強充填剤を、この補強充填剤が、シリカなどの無機層で覆われるか、あるいは充填剤とエラストマーとの間に結合を形成するためにカップリング剤の使用を必要とするその表面に官能部位、とりわけヒドロキシル部位を備えるとの条件で、使用することができることを理解するであろう。
【0027】
4.3.発泡剤および付随の活性化剤
本発明は、発泡剤としてのナトリウムまたはカリウムの炭酸塩または炭酸水素塩の微小粒子を、発泡活性化剤としてのその融点が60℃と220℃との間であるカルボン酸と、とりわけ高含有量で組み合わせて使用するという本質的な特徴を有する。
【0028】
用語「微小粒子」は、一般には、マイクロメートルのサイズの粒子、すなわち、そのメジアン径(重量で表して)が1μmを超えかつ1mm未満である粒子を意味すると理解され、これらの微小粒子は、任意の緻密化された形態、例えば、粉末、微小ビーズ、顆粒、またはビーズの形態で提供することが可能であり、ここでは粉末形態での提供が好ましい。
本発明による発泡剤の本質的特徴は、1と50μmとの間、好ましくは2と30μmとの間、より好ましくはさらに5から25μmの範囲内のとりわけ小さい、その微小粒子のメジアン径にある。このような条件のおかげで、ゴム組成物の加硫速度が顕著に減速されることはなく、そのうえ、融氷に対するグリップ性能に有害な影響を及ぼさないことが観察された。
【0029】
周知の方式で、発泡剤は、熱活性化中に、例えばタイヤの加硫中に多量の気体を放出し、それによって泡の形成をもたらすことを意図した、熱で分解できる化合物である。したがって、ゴム組成物中での気体放出は、発泡剤のこの熱分解から始まる。
本発明により使用される発泡剤は、ナトリウムまたはカリウムの炭酸塩または炭酸水素塩(重炭酸塩とも呼ばれる)である。換言すれば、発泡剤は、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、およびこのような化合物の混合物(もちろんそれらの水和形態を含む)からなる群から選択される。
このような発泡剤は、その分解中に、二酸化炭素および水のみを放出するという利点を有し、したがって、環境に対してとりわけ好都合である。とりわけ炭酸水素ナトリウム(NaHCO
3)が使用される。
この発泡剤の含有量は、5と25phrとの間、好ましくは8と20phrとの間である。
【0030】
本発明の別の本質的特徴は、前記の発泡剤に、その融点が60℃と220℃との間であるカルボン酸を添加することである。
このカルボン酸の含有量は、2と20phrとの間、好ましくは2と15phrとの間である。このカルボン酸は、組成物中に均一に分散させることによって、前に示した特定の温度範囲内でのその融解中に、発泡剤を化学的に(すなわち、化学反応によって)活性化する役割を有し、そのため、発泡剤は、それを単独で使用した場合に比べて、その熱分解中により多くの気体(CO
2およびH
2O)の泡を放出する。
【0031】
60℃と220℃との間、好ましくは100℃と200℃との間、とりわけ120℃と180℃との間の融点を示す(したがって23℃で固体の)任意のカルボン酸が、適している能力がある。融点は、熱融解性の有機または無機化合物の周知の基本的物理定数であり(例えば、「Handbook of Chemistry and Physics」で入手可能)、融点は、任意の公知の方法によって、例えば、シール法(Thiele method)、コフラーベンチ法(Kofler bench method)、または他にDSC分析によって観察することができる。
カルボン酸は、一酸、二酸、三酸でよく、それらは、脂肪族または芳香族でよく、それらは、さらなる官能基(COOH以外の)、例えば、ヒドロキシル(OH)基、ケトン(C=O)基、またはエチレン性不飽和を有する基を含むこともできる。
好ましい実施形態によれば、カルボン酸のpK
a(K
a:酸性度定数)は、1を超え、より好ましくは2.5と12との間、とりわけ3と10との間である。
前記の実施形態と組み合わせたまたは組み合わせない別の好ましい実施形態によれば、カルボン酸は、その炭化水素鎖に沿って2から22個の炭素原子、好ましくは4から20個の炭素原子を含む。
脂肪族一酸は、好ましくは、それらの炭化水素鎖に沿って少なくとも16個の炭素原子を含み、例としては、パルミチン酸(C
16)、ステアリン酸(C
18)、ノナデカン酸(C
19)、ベヘン酸(C
20)、およびこれらの各種混合物を挙げることができる。脂肪族二酸は、好ましくは、それらの炭化水素鎖に沿って2から10個の炭素原子を含み、例としては、シュウ酸(C
2)、マロン酸(C
3)、コハク酸(C
4)、グルタル酸(C
5)、アジピン酸(C
6)、ピメリン酸(C
7)、スベリン酸(C
8)、アゼライン酸(C
9)、セバシン酸(C
10)、およびこれらの各種混合物を挙げることができる。芳香族一酸としては、例えば安息香酸を挙げることができる。官能基を含む酸は、脂肪族および芳香族型の一酸、二酸または三酸でよく、例としては、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、グリコール酸、α−ケトグルタル酸、サリチル酸、フタル酸、またはクエン酸を挙げることができる。
【0032】
好ましくは、カルボン酸は、パルミチン酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、ベヘン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、安息香酸、酒石酸、リンゴ酸、マレイン酸、グリコール酸、α−ケトグルタル酸、サリチル酸、フタル酸、クエン酸、またはこれらの酸の混合物からなる群から選択される。
より詳細には、カルボン酸は、リンゴ酸、α−ケトグルタル酸、クエン酸、ステアリン酸、およびこれらの混合物からなる群から選択される。より好ましくはさらに、クエン酸、ステアリン酸、またはこれらの2種の酸の混合物が使用される。
【0033】
本発明の別の本質的特徴は、トレッドの融氷に対する最適化されたグリップ性を得るために、発泡剤とその付随する活性化剤との合計量が、10phrを超え、好ましくは10と40phrとの間になければならないことである。この合計量は、より好ましくは、15phrを超え、とりわけ15と40phrとの間である。
微小粒子の粒径分析およびメジアン径(または実質上球であると仮定した微小粒子のメジアン直径)の計算には、公知の様々な方法、例えばレーザー回折による方法が適用できる(例えば、規格ISO−8130−13または規格JIS K5600−9−3を参照されたい)。
【0034】
機械的篩い分けによる粒径分析を単純でしかも好ましい方式で利用することも可能であり、その操作は、規定量のサンプル(例えば、200g)を、分析予定の微小粒子のサイズに適した網目範囲の様々な直径の篩を用いて振動台上で30分間篩い分けることにあり、各篩内に集められた網目より大きな粒子を精密天秤で秤量し;その重量から、各網目の直径について、網目より大きな粒子の全粒子の重量に対する%を導き出し;最終的には、メジアン径(またはメジアン直径)を、粒径分布ヒストグラムから公知の方式で計算する。重量メジアン径は、粒子の累積分布の50%(重量で)、すなわち、重量で粒子の半分が、メジアン径未満のサイズを有すること、および粒子の残り半分が、このメジアン径を超えるサイズを有することに相当する。
【0035】
4.4.各種添加剤
熱膨張性ゴム組成物は、また、タイヤのトレッド用のゴム組成物中で通例的に使用される通常的添加剤、例えば、オゾン劣化防止ワックス、化学オゾン劣化防止剤、酸化防止剤などの保護剤;可塑剤、硫黄または硫黄供与体および/または過酸化物および/またはビスマレイミドのいずれかをベースにした架橋系;加硫促進剤または加硫活性化剤の全部または一部を含むことができる。
好ましい実施形態によれば、熱膨張性ゴム組成物は、また、液状可塑剤(20℃で液体)を含み、その役割は、ジエンエラストマーおよび補強充填剤を希釈することによってマトリックスを軟化することであり、そのTg(ガラス転移温度)は、定義により、−20°よりも低く、好ましくは−40℃よりも低い。
より好ましくは、本発明のタイヤトレッドの最適な性能のために、この液状可塑剤は、補強充填剤の液状可塑剤に対する重量比率が2.0を超える、より好ましくは2.5を超える、とりわけ3.0を超えるような、比較的低含有量で使用される。
【0036】
ジエンエラストマーに対するその可塑化特性について公知である任意の伸展油、任意の液状可塑剤を、芳香族性または非芳香族性のいずれにせよ使用することができる。外界温度(20℃)で、これらの可塑剤またはこれらの伸展油は、多かれ少なかれ粘性があり、とりわけその本質により外界温度で固体ある可塑性炭化水素樹脂と対照的に、液体(すなわち、付記すれば、最終的にそれらの容器の形状に従う能力を有する物質)である。
【0037】
本発明の特定の一実施形態によれば、液状可塑剤は、詳細には、石油系オイル、好ましくは非芳香族石油系オイルである。液状可塑剤は、IP346法によるDMSO中での抽出で測定して、可塑剤の全重量に対して3重量%未満である多環式芳香族化合物の含有量を示すなら、非芳香族と記述される。
ナフテン系オイル(低または高粘度の、とりわけ、水素化された、または水素化されていない)、パラフィン系オイル、MES(中度抽出溶媒和物(Medium Extracted Solvates))オイル、DAE(留出物芳香族系抽出物(Distillate Aromatic Extract))オイル、TDAE(処理留出物芳香族抽出物(Treated Distillate Aromatic Extract))オイル、RAE(残留芳香族抽出物(Residual Aromatic Extract))オイル、TRAE(処理残留芳香族抽出物を処理した(Treated Residual Aromatic Extract))オイル、SRAE(安全残留芳香族抽出物(Safety Residual Aromatic Extract))、鉱物油、植物油、エーテル可塑剤、エステル可塑剤、ホスフェート可塑剤、スルホネート可塑剤、およびこれらの化合物の混合物からなる群から選択される液状可塑剤が、とりわけ適している。より好ましい実施形態によれば、液状可塑剤は、MESオイル、TDAEオイル、ナフテン系オイル、植物油、およびこれらのオイルの混合物からなる群から選択される。
【0038】
ホスフェート系可塑剤としては、例えば、12と30個との間の炭素原子を含むもの、例えば、リン酸トリオクチルを挙げることができる。エステル系可塑剤の例としては、トリメリット酸エステル、ピロメリット酸エステル、フタル酸エステル、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸エステル、アジピン酸エステル、アゼライン酸エステル、セバシン酸エステル、グリセロールのトリエステル、およびこれらの化合物の混合物からなる群から選択される化合物を挙げることができる。数ある上記のトリエステルの中でも、特に、好ましくは主として(50重量%超、より好ましくは80重量%超の)不飽和C
18脂肪酸からなる、すなわち、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、およびこれらの酸の混合物からなる群から選択されるグリセロールトリエステルを挙げることができる。さらに好ましくは、合成由来または天然由来(例えば、ヒマワリまたはナタネ植物油)のいずれであるにせよ、使用される脂肪酸は、50重量%を超える、より好ましくは80重量%さえ超えるオレイン酸からなる。オレイン酸を高含有量で含むこのようなトリエステル(トリオレイン酸エステル)は周知であり、それらは、例えば、出願WO02/088238中にタイヤトレッド中の可塑剤として記載されている。
【0039】
別の好ましい実施形態によれば、本発明のゴム組成物は、また、例えば出願WO2005/087859、WO2006/061064またはWO2007/017060に記載のように、固体状可塑剤(23℃で固体)として、+20℃より高い、好ましくは+30℃より高いTgを示す炭化水素樹脂を含むことができる。
炭化水素樹脂は、本質的には炭素および水素をベースとした当業者にとって周知のポリマーであり、それらをさらに「可塑性」と記述する場合には、したがって、ジエンエラストマー組成物と本来的に混和性である。それらの樹脂は、脂肪族、芳香族、または脂肪族/芳香族型でよく、すなわち、脂肪族および/または芳香族モノマーをベースにすることができる。それらの樹脂は、天然または合成の樹脂でよく、石油をベースにしている(このような場合、石油樹脂の名称でも知られる)か、ベースにしていない。それらの樹脂は、好ましくは、もっぱら炭化水素の性質を有し、すなわち炭素および水素原子だけを含む。
【0040】
好ましくは、可塑化用炭化水素樹脂は、次の特徴の少なくとも1つ、より好ましくはすべてを示す:
・20℃を超える(より好ましくは、40℃と100℃との間の)Tg;
・400と2000g/モルとの間の(より好ましくは、500と1500g/モルとの間の)数平均分子量(Mn);
・3未満、より好ましくは2未満の多分散指数(PI)(注記、PI=Mw/Mnであり、Mwは重量平均分子量である)。
【0041】
この樹脂のTgは、規格ASTM D3418によりDSC(示差走査熱量測定(Differential Scanning Calorimetry))を用い公知の方式で測定される。炭化水素樹脂のマクロ構造(Mw、MnおよびPI)は、立体排除クロマトグラフィー(SEC)によって測定される。溶媒:テトラヒドロフラン、温度:35℃、濃度:1g/L、流速:1mL/分、注入前に溶液を0.45μmの孔を有するフィルターを通して濾過、標準ポリスチレンでムーア(Moore)較正、3本直列のWatersカラム(Styragel HR4E、HR1およびHR0.5)、示差屈折計(Waters2410)およびその付随の操作ソフトウェア(Waters Empower)によって検出。
【0042】
とりわけ好ましい実施形態によれば、可塑化用炭化水素樹脂は、シクロペンタジエン(CPDと略記)のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、ジシクロペンタジエン(DCPDと略記)のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、テルペンのホモポリマーまたはコポリマー樹脂、C
5留分のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、C
9留分のホモポリマーまたはコポリマー樹脂、α−メチルスチレンのホモポリマーまたはコポリマー樹脂、およびこれらの樹脂の混合物からなる群から選択される。より好ましくは、数ある上記コポリマー樹脂の中でも、(D)CPD/ビニル芳香族のコポリマー樹脂、(D)CPD/テルペンのコポリマー樹脂、(D)CPD/C
5留分のコポリマー樹脂、(D)CPD/C
9留分のコポリマー樹脂、テルペン/ビニル芳香族のコポリマー樹脂、テルペン/フェノールのコポリマー樹脂、C
5留分/ビニル芳香族のコポリマー樹脂、C
9留分/ビニル芳香族のコポリマー樹脂、およびこれらの樹脂の混合物からなる群から選択される樹脂が使用される。
【0043】
ここで、用語「テルペン」は、α−ピネン、β−ピネンおよびリモネンモノマーを公知の方式で包含し、好ましくは、リモネンモノマーが使用され、この化合物は、公知の方式で、3種の可能な異性体の形態:L−リモネン(左旋性エナンチオマー)、D−リモネン(右旋性エナンチオマー)、または他のジペンテン(右旋性および左旋性エナンチオマーのラセミ化合物)の形態で存在する。ビニル芳香族モノマーとして適しているのは、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−、m−もしくはp−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−(tert−ブチル)スチレン、メトキシスチレン、クロロスチレン、ヒドロキシスチレン、ビニルメシチレン、ジビニルベンゼン、ビニルナフタレン、またはC9留分(またはより一般的にはC
8からC
10の留分)に由来する任意のビニル芳香族モノマーである。好ましくは、ビニル芳香族化合物は、スチレンまたはC
9留分(より一般的にはC
8からC
10の留分)に由来するビニル芳香族モノマーである。好ましくは、ビニル芳香族化合物は、モル分率で表現すると、考慮下のコポリマーにおいて副次的なモノマーである。
【0044】
炭化水素樹脂の含有量は、好ましくは3と60phrとの間、より好ましくは3と40phrとの間、とりわけ5と30phrとの間である。
しかし、上記液状可塑剤の含有量を低減することなく、発泡後のトレッドの剛性を増強させることが所望される場合には、例えば、WO02/10269またはUS7199175に記載のような補強用樹脂(例えば、メチレン受容体および供与体)を有利には組み込むことができる。
【0045】
熱膨張性ゴム組成物は、また、カップリング剤を使用するならカップリング活性化剤を、無機充填剤を使用するなら無機充填剤を覆うための薬剤を、あるいはより一般的には、ゴムマトリックス中での充填剤の分散を改善するために、組成物の粘度を低下させるために、未硬化段階でのそれらの加工性を公知の方式で改善する能力のある加工助剤を含むことができ;これらの薬剤は、例えば、加水分解性シラン、またはアルキルアルコキシシランなどのヒドロキシシラン、ポリオール、ポリエーテル、アミン、またはヒドロキシル化もしくは加水分解性ポリオルガノシロキサンである。
【0046】
4.5.組成物の製造
ゴム組成物は、適切なミキサー内で、例えば、当業者に公知の一般的手順による2つの連続する調製段階:とりわけその段階中に発泡活性化剤(カルボン酸)が組み込まれる、130℃と200℃との間、好ましくは145℃と185℃との間の最高温度までの高温での熱機械的加工または混練の第1段階(「非生産」段階と呼ばれることもある)、それに続く、その最終段階中に発泡剤および架橋または加硫系が組み込まれる、典型的には120℃未満、例えば60℃と100℃との間の低温での機械的加工の第2段階(「生産」段階と呼ばれることもある)を利用して製造される。
このようなゴム組成物を製造するのに使用できる方法は、例えばおよび好ましくは、次の段階を含む:
・ミキサー内で、エラストマー中またはエラストマー混合物中に少なくとも充填剤およびカルボン酸を組み込み、これらのすべてを、1つ以上のステップで130℃と200℃との間の最高温度に到達するまで熱機械的に混練する段階;
・混ぜ合わされた混合物を100℃未満の温度まで冷却する段階;
・こうして得られ冷却された混合物中に、次いで、発泡剤(NaまたはKの炭酸塩または炭酸水素塩)を組み込み、これらのすべてを、100℃未満の最高温度に到達するまで熱機械的に混練する段階;
・続いて架橋系を組み込む段階;
・これらのすべてを120℃未満の最高温度まで混練する段階;
・こうして得られたゴム組成物を押し出すか、カレンダー加工する段階。
【0047】
例を挙げれば、発泡剤および架橋系を除くすべての必須成分、任意選択の補足的被覆剤または加工助剤、およびその他の各種添加剤を、適切なミキサー、例えば標準的な密閉ミキサー内に、非生産的な第1段階で導入する。熱機械的に加工し、こうして得られた混合物を落下させ、冷却した後、発泡剤、次いで加硫遅延剤(このような化合物を使用するなら)、最後に残りの加硫系(例えば、硫黄および促進剤)を好ましくはこの順序で、一般にはオープンミルなどの開放ミキサー内に、低温で組み込み、次いで、これらのすべてを、数分間、例えば5と15分との間の時間混合する(生産段階)。
適切な架橋系は、好ましくは、硫黄、および一次加硫促進剤、とりわけスルフェンアミド型の促進剤をベースとする。この加硫系に、公知の各種二次加硫促進剤または加硫活性化剤、例えば、酸化亜鉛、ステアリン酸、グアニジン誘導体(とりわけジフェニルグアニジン)などを、非生産的な第1段階および/または生産段階中に組み込んで添加する。硫黄含有量は、好ましくは、0.5と5phrとの間であり、一次促進剤の含有量は、好ましくは0.5と8phrとの間である。
【0048】
(第1または第2の)促進剤としては、硫黄の存在下でジエンエラストマーを加硫するための促進剤として作用する能力のある任意の化合物、とりわけ、チアゾール型促進剤さらにはそれらの誘導体、およびチウラムおよびジチオカルバミン酸亜鉛型の促進剤を使用することができる。これらの促進剤は、例えば、2−メルカプトベンゾチアジルジスルフィド(「MBTS」と略記)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(「TBZTD」)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(「CBS」)、N,N−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(「DCBS」)、N−(tert−ブチル)−2−ベンゾチアジルスルフェンアミド(「TBBS」)、N−(tert−ブチル)−2−ベンゾチアジルスルフェンイミド(「TBSI」)、ジベンジルチオカルバミン酸亜鉛(「ZBEC」)、およびこれらの化合物の混合物からなる群から選択される。
【0049】
カルボン酸は、起こり得る効果として、組成物の硬化中の誘導期(すなわち、加硫反応の開始に必要な時間)を短縮する効果を有するので、この現象を打消し、かくしてゴム組成物にその加硫前の完全な膨張に必要な時間を提供することを可能にする加硫遅延剤を、有利には使用することができる。
この加硫遅延剤の含有量は、好ましくは、0.5と10phrとの間、より好ましくは1と5phrとの間、とりわけ1と3phrとの間である。
加硫遅延剤は、当業者にとって周知である。例えば、Lanxessによって「Vulkalent G」の名称で販売されているN−シクロヘキシルチオフタルイミド、Lanxessによって「Vulkalent E/C」の名称で販売されているN−(トリクロロメチルチオ)ベンゼンスルホンアミド、またはLnaxessによって「Vulkalent B/C」の名称で販売されている無水フタル酸も挙げることができる。好ましくは、N−シクロヘキシルチオフタルイミド(「CTP」と略記)が使用される。
【0050】
こうして得られる最終組成物を、続いて、とりわけ実験室での特徴付けのため、例えば、薄板または厚板の形態にカレンダー加工するか、あるいは熱膨張性トレッドの形態にカレンダー加工するか押し出す。
未硬化(すなわち、未加硫)、したがって未膨張段階において、熱膨張性ゴム組成物のD
1で示される密度は、好ましくは、1.100と1.400g/cm
3との間、より好ましくは1.150から1.350g/cm
3の範囲内である。
加硫(または硬化)は、とりわけ採用される加硫系の硬化温度、および考慮下の組成物の加硫速度の関数として、一般には130℃と200℃との間の温度で、例えば5と90分との間で変更できる十分な時間で公知の方式において実施される。
【0051】
この加硫段階中に、発泡剤は、多量の気体を放出し、フォームラバー組成物中での泡の形成、最終的にはその膨張をもたらす。
硬化された(すなわち加硫された)状態において、一旦膨張したゴム組成物(すなわち、発泡ゴムの状態)のD
2で示される密度は、好ましくは、0.700と1.000g/cm
3との間、より好ましくは0.750から0.950g/cm
3の範囲内である。
T
E(%として表現)で示されるその体積膨張度は、好ましくは、20%と75%との間、より好ましくは25%から60%の範囲内であり、膨張度T
Eは、公知の方式で、上記の密度D
1およびD
2から次のように計算される:
T
E=[(D
1/D
2)−1]×100。
【実施例】
【0052】
5.本発明の典型的な実施形態
これまで説明してきた熱膨張性ゴム組成物は、後記の試験で立証されるように、有利には、任意タイプの車両用の冬用タイヤのトレッド中、とりわけ乗用車両用のタイヤ中で使用することができる。
これらの試験の要求に備えて、3種のゴム組成物(C−0、C−1およびC−2で示す)を調製した。その配合を表1に示す(各種原料(products)の含有量をphrで表現する)。組成物C−0は、対照組成物であり、発泡剤を含まない。組成物C−1は、本発明によらない組成物であり、発泡剤(炭酸水素ナトリウム)を含むが、その微小粒子のメジアン径は、本発明の範囲外にある(ほぼ100μm)。最後に組成物C−3は、本発明による組成物であり、1と50μmとの間(この場合、ほぼ10μm)の微小粒子のメジアン径を示す発泡剤(炭酸水素ナトリウム)を含む。さらに、2種の組成物C−1およびC−2において、発泡活性化剤としてのカルボン酸が、発泡剤に付随する。液状可塑剤の含有量は、組成物C−1およびC−2において、硬化後の剛性を可能な限り対照組成物C−0のそれに類似したレベルに維持するように調節された(大きく減らされた)。
【0053】
これらの組成物を製造するために、次の手順を使用した。組成物C−1およびC−2については、加硫系および発泡剤以外の、補強充填剤、ジエンエラストマー(NRとBRとのブレンド)、カルボン酸、およびその他の各種成分を、その初期容器温度がほぼ60℃である密閉ミキサー内に逐次的に導入し、こうしてミキサーをほぼ70%(容積%)まで満たした。次いで、熱機械的加工(非生産段階)を、ほぼ2から4分の段階で、ほぼ150℃の最大「落下」温度が達成されるまで実施した。こうして得られた混合物を、回収し、ほぼ50℃まで冷却し、次いで、発泡剤(炭酸水素Na)、加硫遅延剤(CTP)、続いてスルフェンアミド促進剤、および硫黄を、30℃の開放ミキサー(ホモフィニシャー)で組み込み、これらのすべてを数分間混合した(生産段階)。
乗用車両の冬用タイヤのためのトレッドとして直接的に使用可能である、こうして調製された組成物を、次いで、プレス中で加硫し、それらの特性を、後で説明するように、硬化の前後に測定した(添付の表2および3を参照されたい)。
【0054】
最初に、表2のレオメトリー(硬化)特性に関して、測定は、規格DIN53529−パート3(1983年6月)に従って振動ディスクレオメーターを用い150℃で実施した。時間の関数としてのレオメトリーのトルク変化は、加硫反応の結果としての組成物の硬化の変化を説明する。測定値は、規格DIN53529−パート2(1983年3月)に従って処理され:Tiは誘導期、すなわち、加硫反応を開始するのに必要な時間であり;T
α(例えば、T
95)は、α%、すなわち、最小トルクと最大トルクとの間の差のα%(例えば95%)の転換を達成するのに必要な時間である。
スコーチ時間(T5で示す)も、フランス規格NF T43−005(1991)に従って測定する。時間の関数としての粘稠度指数(consistometric index)の変化は、また、前記の規格に従って分で表現され、この指数について測定された最小値を5単位上回る粘稠度指数の増加(MUで表現される)を得るのに必要な時間であると定義される、パラメーターT5で評価されるゴム組成物のスコーチ時間を測定することを可能にする(大きなローターの場合)。
【0055】
表2を読み取ることによって、まず、対照組成物C−0との比較において、加硫(硬化)工程は、T5、TiおよびT
95パラメーターの顕著な増加によってとりわけ示されるように、本発明によらない組成物C−1では顕著に有害な影響を受ける(減速される)ことが見出され;例えば差(T
95−Ti)によって示すことのできる完全硬化時間がほとんど4倍まで(7分の代わりに25分に)増加することがとりわけ注目される。
他方で、そのメジアン径が組成物C−1に比較して大きく縮小された微小粒子を組み込んだ本発明による組成物(C−2)では、予想外に、上記のレオメトリー特性のすべて(T5、TiおよびT
95)は、発泡剤の存在によって影響されることが著しく少ないことが見出され:これらのレオメトリー特性は、発泡剤を欠く対照組成物(C−0)で観察される初期値に比較的近いままであり、とりわけ、その完全硬化時間(T
95−Ti)は、この場合、わずか2分増加する(7分の代わりに9分に)だけである。
さらに、表3の特性に関して、それぞれ比較用および本発明によるゴム組成物であるC−1およびC−2は、硬化後に(一旦発泡したら、すなわち、発泡ゴムの状態で)、双方とも、ほぼ30%のとりわけ高い体積膨張度に対応して著しい密度低下を示す。
【0056】
最後に、3種の上記組成物(C−0、C−1およびC−2)の氷に対するグリップ特性を測定するために、それらの組成物を、氷に対するそれらの摩擦係数を測定することにある実験室試験に供した。
【0057】
原理は、氷路(氷の温度を−2℃に設定)上を荷重(例えば、3kg/cm
2に等しい)を負荷されて所定の速度(例えば、5km/hに等しい)で滑動する、ゴム組成物のパッドをベースとする。パッドの移動方向に(Fx)および移動に対して垂直方向に(Fz)生じる力を測定すると、比率Fx/Fzは、氷に対する試験標本の摩擦係数を決定する。この試験の原理は、当業者にとって周知である(例えば、特許出願EP1052270、EP1505112、およびWO2010/009850を参照されたい)。その試験は、代表的な条件下で、そのトレッドが同一のゴム組成物からなるタイヤを装着した車両での走行試験中に得られるであろう融氷に対するグリップ性を評価することを可能にする。
【0058】
結果を表4に示すが、対照組成物(C−0)の値(自由裁量で100に設定)を超える値は、改善された結果、すなわちより短い制動距離に向かう傾向を示している。表3からのこれらの結果は、発泡された組成物C−1およびC−2に関して、新品状態および部分的摩耗状態(1mmの厚さを除去するように故意に浸食された)の双方で、非発泡組成物C−0に比較して顕著な摩擦係数の増加、したがって、特定の発泡剤および付随するカルボン酸の推奨される高含有量での組合せ使用による氷に対するグリップ性の改善を明確に立証している。その炭酸水素ナトリウムの微小粒子のサイズのみが組成物C−1と相違する本発明による組成物C−2が、走行後に、同等の良好な性能を示す(指数は132に比較して138)ことが注目される。
【0059】
結論として、上で解説したすべての結果は、本発明の利点、およびとりわけ特定のサイズを有するナトリウムまたはカリウムの炭酸塩または炭酸水素塩の微小粒子の使用によって、タイヤトレッドの氷に対するグリップ性を顕著に増大させ、かつそのうえこれらのタイヤの硬化特性に有害な影響を及ぼすことなく増大させることを可能にするフォームラバー配合物を設計することが可能になることを示している。
【表1】
【0060】
【表2】
【0061】
【表3】
【0062】
【表4】