(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記処理装置は、前記支援装置から、実際に行われた故障対応を示す故障対応情報を受信し、前記故障対応情報を、前記故障種別情報及び前記稼働情報と対応させて、前記記憶装置に格納する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のショベルの管理装置。
前記ショベルは、当該ショベルの稼働情報が正常範囲内か、正常範囲から外れているかを診断する機能を有し、前記稼働情報が前記正常範囲内である場合、前記稼働情報が前記正常範囲から外れている場合よりも少ない頻度で、前記処理装置が前記稼働情報を受信する請求項1乃至5のいずれか1項に記載のショベルの管理装置。
前記処理装置は、複数の前記稼働情報の各々について、当該稼働情報が正常の範囲内か否かを判定し、複数の判定結果に基づいて、前記ショベルが正常であるか否かを判定する請求項7に記載のショベルの管理装置。
前記処理装置は、前記入力装置から、実際に行われた故障対応を示す故障対応情報が入力されると、前記通信装置を介して前記管理装置に、入力された前記故障対応情報を送信する請求項9に記載の支援装置。
前記処理装置は、前記通信装置を介して前記管理装置から、近くに配備されているショベルの現在位置情報を受信すると、前記表示装置に、受信されたショベルを特定するためのショベル選択情報を表示し、前記入力装置を、表示されたショベル選択情報に基づいて1つのショベルを選択するための入力が可能な状態にする請求項11に記載の支援装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に、実施例によるショベルの管理装置60及び支援装置50を含む管理システム、及び管理対象のショベル30の概略図を示す。ショベル30、管理装置60、及び支援装置50が、ネットワーク40を介して相互に通信を行う。ショベル30と支援装置50とは、後述するように、ネットワークを介さず直接通信することも可能である。
【0012】
ショベル30に、車両コントローラ31、電子制御ユニット(ECU)32、表示装置33、通信装置34、GPS(全地球測位システム)受信機35、種々のセンサ36、近距離無線通信装置37等が搭載されている。
【0013】
センサ36は、ショベル30の種々の運転変数を測定する。センサ36の測定値が車両コントローラ31に入力される。運転変数には、例えば、運転時間、油圧ポンプ圧力、冷却水温度、油圧負荷、稼働時間等が含まれる。車両コントローラ31は、ショベルの機体識別情報、種々の運転変数の測定値、及びGPS受信機35で算出された現在位置情報を、通信装置34から、ネットワーク40を介して管理装置60に送信する。車両コントローラ31は、ショベルに関する種々の情報を表示装置33に表示する。ECU32は、車両コントローラ31からの指令に基づき、エンジンを制御する。近距離無線通信装置37は、近距離に位置する支援装置50との通信を行う。近距離無線通信規格として、例えばBluetooth、無線LAN等が用いられる。支援装置50には、例えば携帯電話端末、タブレット端末等が用いられる。
【0014】
図2A〜
図2D、
図3を参照して、本明細書で用いられる用語の定義、及び具体例について説明する。
【0015】
図2Aに、稼働情報の一例を示す。稼働情報は、ショベルの運転変数を、決められた収集期間に亘って測定し、測定された値に統計的な処理を施して得られる数値の集合である。稼働情報は、ショベルの稼働状況を表している。運転変数には、例えば、「運転時間」、「ポンプ圧力」、「油圧負荷」、「稼働時間」、「エンジン回転数」、「冷却水温度」等が含まれる。これらの値が、機体識別番号及びデータ収集された年月日と関連付けられている。「運転時間」は、ショベルの起動スイッチが押されてから、停止スイッチが押されるまでの時間、すなわちショベルが起動していた時間を意味する。「稼動時間」は、操作者がショベルを操作していた時間を意味する。
図2Aに示した例では、機体識別情報A001の機体から、2013年5月10日に取得された種々のデータに統計的処理を施して得られた運転時間がa1、ポンプ圧力がb1、油圧負荷がc1、稼働時間がd1である。
【0016】
図2Bに、異常コード、及び故障探索支援情報の一例を示す。異常コードは、ショベルに発生している異常な現象を識別するためのコードである。
図2Bに示した例では、冷却水温異常という異常内容に異常コードXS001が割り振られている。故障探索支援情報は、ショベルに発生している異常な現象から、故障の内容を探索する支援を行うための情報である。故障探索支援情報は、異常コードに対応付けられて準備されている。故障探索支援情報の1件のデータは、「確認事項」と「不良時の対処」との2つの項目を含む。一例として、冷却水温異常という異常コードに対応付けられた故障探索支援情報は、確認事項の項目として、「防塵ネットの状態を確認」、「ラジエータのコア面を確認」等の内容を含み、不良時の対処の項目として、「清掃実施」等の内容を含む。
【0017】
図3Aに、故障種別情報の一例を示す。故障種別情報の1件のデータは、「機体識別情報」、「年月日」、及び「故障種別」の3つの項目からなる。「故障種別」は、ショベルに発生する故障の内容を識別するための情報である。
【0018】
図3Bに、故障対応情報の一例を示す。故障対応情報の1件のデータは、「機体識別情報」、「年月日」、及び「故障対応」の3つの項目からなる。「故障対応」は、故障を修理するために行った処置の内容を識別するための情報である。
【0019】
以下に、冷却水温に異常が発生した場合について、具体例を示す。「冷却水温異常」という異常に対して、1つの異常コードXS001(
図2B)が割り当てられている。「冷却水温異常」の異常コードXS001に対応付けられた故障探索支援情報には、「防塵ネットの状態を確認」、「ラジエータのコア面の状態を確認」、「ファンの状態を確認」、「リザーブタンク内の冷却水量を確認」というような、故障探索を行うための手掛かりとなる情報が含まれる。
【0020】
サービスマンは、故障探索支援情報を参考にして、故障の探索を行う。故障探索の結果、例えばファンの破損が見つかる場合がある。この場合、故障種別情報の「故障種別」の項目に、「ファンの破損」という内容が設定される。ファンの破損が見つかると、サービスマンは、ファンの交換を行う。この場合、故障対応情報の「故障対応」の項目に、「ファンの交換」という内容が設定される。
【0021】
図3Cに、配備情報の一例を示す。配備情報は、「機体識別情報」及び「現在位置」の2つの項目からなる。「現在位置」の項目には、GPS受信機35(
図1)の受信データから求められたショベルの現在位置情報が設定される。現在位置は、例えば緯度及び経度で表される。
【0022】
図4に、ショベルの管理装置60のブロック図を示す。管理装置60は、処理装置61、通信装置62、入力装置63、出力装置64、及び記憶装置65を含む。処理装置61は、稼働情報受信処理部70、故障種別受信処理部71、異常コード受信処理部72、故障種別推定処理部73、及び配備情報生成処理部75を含む。これら処理部の機能は、コンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0023】
稼働情報受信処理部70は、複数のショベル30から定期的に稼働情報(
図2A)を受信し、記憶装置65に格納する。なお、ショベル30の各々から、種々のデータに統計的処理を施す前の基礎データを受信し、稼働情報受信処理部70が、受信した基礎データに統計的処理を施して、稼働情報を生成してもよい。
【0024】
図5を参照して、故障種別推定処理部73の機能について説明する。故障種別推定処理部73は、ショベル30(
図1)に何らかの異常が発生したとき、当該ショベル30から収集された稼働情報に、故障種別推定モデル78を適用することにより、推定故障種別情報79を生成する。
【0025】
推定故障種別情報79の1つのデータは、優先順位、確率、及び故障種別の3つの項目を含む。「故障種別」の項目は、ショベルに発生していると推定される故障種別を表している。「確率」の項目は、当該故障種別に対応する故障が発生している確率を表す。「優先順位」の項目は、確率の高い順番を表す。
図5に示した例では、「エンジンインジェクタ異常」が発生している確率が50%であり、「エンジンオイルクーラ異常」が発生している確率が10%であり、「エンジンオルタネータ異常」が発生している確率が5%であり、「旋回モータ異常」が発生している確率が3%である。故障種別及び確率の推定方法として、例えば国際公開番号第2013/047408に開示されている方法を適用することができる。
【0026】
図4に示した処理装置61の他の処理部の機能については、後に、
図7〜
図10を参照して説明する。
【0027】
図6に、ショベルの支援装置50のブロック図を示す。支援装置50は、処理装置51、近距離無線通信装置52、通信装置53、入力装置54、及び表示装置55を含む。一例として、タッチパネルが、入力装置54と表示装置55とを兼ねる。近距離無線通信装置52は、近くのショベル30(
図1)と直接無線通信を行う。通信装置53は、ネットワーク40を介して管理装置60(
図1)と通信を行う。
【0028】
処理装置51は、故障種別入力処理部80、異常コード入力処理部81、故障探索支援情報受信処理部82、故障種別推定依頼処理部83、故障種別受信処理部84、配備情報問合せ処理部86、制御データ収集処理部87、及び機番問合せ処理部88を含む。これらの処理部の機能は、コンピュータプログラムを実行することにより実現される。
【0029】
図7〜
図14Bを参照して、ショベルの管理装置60(
図1)、及び支援装置50(
図1)の動作について説明する。
【0030】
図7に、ショベル30、支援装置50、及びショベルの管理装置60の処理シーケンスを示す。定期的に、ショベル30から管理装置60に稼働情報(
図2A)が送られる。管理装置60の稼働情報受信処理部70(
図4)は、受信した稼働情報を記憶装置65(
図4)に格納する。
【0031】
ショベル30に異常が発生してから、修理が完了するまでの工程が、機体識別情報入力工程S1、準備工程S2、修理工程S3、後工程S4に分類される。
【0032】
[機体識別情報入力工程S1]
以下、機体識別情報入力工程S1について説明する。サービスマンが、異常の発生しているショベルが配備されている現場に到着し、支援装置50を起動させると、支援装置50に初期画面(
図11A)が表示される。初期画面に、ショベルの型式の入力領域561、機番の入力領域562、機番取得ボタン563、及び周辺検索ボタン564が表示されている。
【0033】
サービスマンが、機番取得ボタン563を選択(タップ)すると、支援装置50の機番問合せ処理部88(
図6)が起動され、
図7に示したように、近距離無線通信装置52(
図6)を通して、ショベル30に機体識別情報問合せコマンドを送信する。ショベル30は、機体識別情報問合せコマンドを受信すると、当該ショベル30の型式及び機番(機体識別情報)を支援装置50に返信する。
【0034】
支援装置50がショベル30から機体識別情報を受信すると、機番問合せ処理部88(
図6)が、表示装置55(
図6)に、受信した型式565及び機番566を表示するとともに、次の処理を選択するためのボタンを表示する(
図11B)。例えば、表示装置55に、稼働情報ボタン567、機歴ボタン568、警報ボタン569、所在地情報ボタン570、異常コード入力ボタン571、故障種別推定ボタン572が表示される。
【0035】
稼働情報ボタン567がタップされると、支援装置50は管理装置60から当該ショベル30の稼働情報を取得し、表示装置55に稼働情報を表示する。機歴ボタン568がタップされると、当該ショベル30の部品交換履歴、修理履歴等が表示装置55に表示される。警報ボタン569がタップされると、当該ショベル30に過去に発生した異常コード等が日付とともに表示される。所在地情報ボタン570がタップされると、表示装置55に地図が表示されるとともに、地図上にショベル30の現在位置を示すアイコンが表示される。異常コード入力ボタン571、及び故障種別推定ボタン572がタップされると、準備工程S2(
図7)が実行される。
【0036】
図8に、機体識別情報入力工程S1の他の処理シーケンスを示す。この処理シーケンスでは、
図7に示した支援装置50からショベル30への機体識別情報問合せを行う必要はない。
図11Aに示した初期画面において、周辺検索ボタンがタップされると、支援装置50の配備情報問合せ処理部86が起動され、管理装置60に配備情報問合せコマンドを送信される。配備情報問合せコマンドには、支援装置の現在位置情報が含まれる。
【0037】
管理装置60が配備情報問合せコマンドを受信すると、配備情報生成処理部75(
図4)が、支援装置50の現在位置情報、及び記憶装置65に格納されている配備情報(
図3C)に基づいて、支援装置50の現在位置からショベル30の現在位置までの近さの順番に、複数のショベル30から少なくとも1つのショベル30を抽出する(ステップS11)。配備情報生成処理部75は、抽出されたショベル30の現在位置情報を支援装置50に送信する。
【0038】
支援装置50が、抽出されたショベル30の現在位置情報を受信すると、配備情報問合せ処理部86(
図6)が、表示装置55にショベル選択情報を表示し(ステップS12)、入力装置54を、1つのショベルを選択するための入力が可能な状態にする。例えば、
図12Aに示すように、表示装置55に地図を表示するとともに、地図上に、ショベルのアイコンを表示する。さらに、近隣に配備されているショベルの型式及び機番を、表形式で表示する。サービスマンは異常が発生しているショベルに相当するアイコンをタップすることにより、簡易に修理対象のショベルを選択することができる(ステップS13)。
【0039】
1つのショベルが選択されると、
図12Bに示すように、選択されたショベルの型式及び機番が表示装置55に表示される。この状態は、
図11Bに示した状態と同一である。サービスマンは、修理対象のショベル以外のショベルに対応するアイコンをタップすることにより、近隣地域で稼働しているショベルの機歴(修理履歴)や異常コードの発生状況を確認することができる。これらの修理履歴は、修理対象のショベルを修理する際に有益な情報となる。
【0040】
なお、
図11Aの初期画面が表示されている状態で、サービスマンが、ショベルの型式の入力領域、及び機番の入力領域に、異常が発生している対象ショベルの型式及び機番を直接入力してもよい。
【0041】
[準備工程S2]
図7に示した準備工程S2において、異常コード入力ボタン571(
図11B、
図12B)がタップされると、異常コード入力処理部81(
図6)が表示装置55に、異常コード入力画面(
図11C)を表示する。異常コード入力画面は、異常コード入力領域573を含む。ショベル30に異常が発生している場合、異常コードが、ショベル30の表示装置33(
図1)に表示されている。サービスマンは、この表示を読み取り、異常コード入力領域573に異常コードを入力する(ステップS21)。なお、近距離無線通信により、ショベル30から支援装置50に、ショベル30に発生している異常コードを送信してもよい。
【0042】
異常コードが入力されると、異常コード入力処理部81(
図6)が、入力された異常コードを管理装置60に送信する。管理装置60が異常コードを受信すると、異常コード受信処理部72(
図4)が、異常コードに基づいて、対応する故障探索支援情報(
図3)を抽出する(ステップS22)。故障探索支援情報の抽出後、抽出された故障探索支援情報を支援装置50に送信する。
【0043】
支援装置50が故障探索支援情報を受信すると、故障探索支援情報受信処理部82(
図6)が起動され、表示装置55に故障探索支援情報が表示される(ステップS23)。
図11Dに、故障探索支援情報574が表示された状態の支援装置50を示す。サービスマンは、故障箇所を探索する際に、支援装置50に表示された故障探索支援情報574を有益な情報として利用することができる。
【0044】
図9に、準備工程S2の他の処理シーケンスを示す。この処理シーケンスは、ショベル30に何らかの異常が発生しているが、異常コードを特定できない場合に実行される。サービスマンは、異常コードを特定できない場合、故障種別推定ボタン(
図11B、
図12B)をタップする。故障種別推定ボタンがタップされると、支援装置50の故障種別推定依頼処理部83が起動され、故障種別問合せコマンドが管理装置60に送信される。故障種別問合せコマンドには、機体識別情報及び年月日情報が含まれている。
【0045】
管理装置60が故障種別問合せコマンドを受信すると、故障種別推定処理部73(
図4)が、機体識別情報、年月日情報、及び記憶装置65に格納されている稼働情報(
図2A)に基づいて、故障種別推定モデル78(
図5)を適用し、修理対象のショベル30に発生している故障種別を推定する(ステップS24)。故障種別推定処理部73(
図4)は、推定結果を支援装置50に送信する。
【0046】
支援装置50が故障種別の推定結果を受信すると、故障種別受信処理部84が起動され、故障種別の推定結果が表示装置55に表示される(ステップS25)。
【0047】
図13に、故障種別の推定結果が表示された支援装置50を示す。表示装置55に、優先順位づけされた故障種別が表示されるとともに、ショベルの概略図が表示される。ショベルの概略図には、故障が発生している可能性が高い部品の位置にマーク(例えば丸印)が付される。サービスマンは、故障箇所を探索する際に、支援装置50に表示された故障種別の推定結果を有益な情報として利用することができる。
【0048】
[修理工程S3]
図7に示した修理工程S3において、サービスマンは、
図11Dに示した故障探索支援情報や、
図13に示した故障種別の推定結果を参考にして、故障探索を行う。故障箇所が特定されたら、修理を行う。
【0049】
図10に、修理工程S3の他の処理シーケンスを示す。
図14Aに、故障探索支援情報が表示された支援装置50を示す。
図14Aにおいては、
図11Dに示した表示装置55に表示されている故障探索支援情報に加えて、制御データ収集ボタンが表示されている。制御データ収集ボタンがタップされると、制御データ収集処理部87(
図6)が起動され、
図10に示すように、修理対象のショベル30に、近距離無線通信装置52(
図6)を介して制御データ収集要求コマンドを送信する。ショベル30は、制御データ収集要求コマンドを受信すると、制御データを支援装置50に返信する。
【0050】
ここで、「制御データ」は、ショベルの車両コントローラ31及びECU32(
図1)等で処理される種々のデータである。「制御データ」には、例えばメインポンプのレギュレータの斜板角度、メインポンプの吐出圧力、貯蔵タンク内の作動油の温度、油圧制御のためのパイロット圧、エンジン回転数の設定値等が含まれる。なお、制御データは、一定の時間刻み幅で検出された実際の値で構成されており、統計的な処理を施す前のデータである。
【0051】
支援装置50が制御データを受信すると、制御データ収集処理部87(
図6)が表示装置55(
図6)に制御データの時間変化をグラフで表示する(ステップS31)。
図14Bに、制御データの時間変化が表示された支援装置50を示す。サービスマンは、
図11Dに示した故障探索支援情報や、
図13に示した故障種別の推定結果に加えて、制御データの時刻歴を参考にして、故障探索を行う(ステップS32)。
【0052】
[後工程S4]
次に、
図7の後工程S4について説明する。故障の探索及び修理が完了すると、サービスマンは、支援装置50を操作して、表示装置55に故障種別入力画面(
図11E)を表示させる。故障種別入力画面には、故障種別入力領域575、故障対応入力領域576、その他の対応ボタン577、及び交換または修理した部品名の入力領域578が表示されている。サービスマンは、実際に故障探索を行った結果判明した故障種別、及び実際に行った故障対応を支援装置50に入力する。予め準備されている典型的な故障種別や修理対応は、プルダウンメニューから選択して入力することができる。該当する故障種別や故障対応がプルダウンメニューに表示されない場合には、サービスマンは、その他の対応ボタン577をタップすることにより、任意の文章を入力することができる。
【0053】
部品名の入力領域578には、選択された故障種別及び故障対応の内容に対応して、部品名が表示される。さらに、部品名に関連付けて、個数の入力欄が表示される。サービスマンは、部品名の入力領域578に表示された部品名から、実際に交換または修理した部品名を選択すればよい。サービスマンは、選択された部品名に関連付けて、修理または交換した部品の個数を入力する。部品名の入力領域578に、故障種別及び故障対応に関連する部品名を表示することにより、部品名の入力の手間を省くことができる。
【0054】
図11Fに示すように、部品名の入力領域578に、部品名に関連付けて、部位及び部品型式を入力する欄を設けてもよい。「部位」は、対応する部品が組み込まれている箇所を示す。「部位」には、例えば、エンジン、ブームトップ、ブームボトム、油圧メインポンプ等が含まれる。
【0055】
修理または交換した部品名が表示されない場合のために、部品検索機能を備えてもよい。部品検索欄579を表示してもよい。表示装置55に、部品検索欄579が表示される。サービスマンが部品検索欄579に部品名または部品名の一部を入力すると、入力された部品名が部品名の入力領域578に表示される。
【0056】
故障種別及び故障対応が入力される(ステップS41)と、支援装置50の故障種別入力処理部80(
図6)が、ショベルの機番、故障種別情報、故障対応情報、及び修理交換部品情報を管理装置60に送信する。管理装置60がショベルの機番、故障種別情報、故障対応情報、及び修理交換部品情報を受信すると、故障種別受信処理部71(
図4)が、故障種別情報と稼働情報とを関連付けて、記憶装置65に格納する(ステップS42)。故障種別情報と稼働情報とは、機体識別情報(
図2A、
図3A)及び年月日(
図2A、
図3A)の項目に基づいて、関連付けを行うことができる。
【0057】
管理装置60は、ショベルの機体ごとに、修理交換部品データベースを持っている。管理装置60は、支援装置50から修理交換部品情報を受信すると、受信した機番のショベルの修理交換部品データベースを更新する。これにより、サービス対象のショベルの修理交換部品データベースを、最新の状態に維持することができる。
【0058】
管理装置60の故障種別推定処理部73(
図4)は、稼働情報に基づいて故障種別の推定を行う際に、稼働情報に関連付けられている故障種別情報及び故障対応情報を利用することができる。例えば、稼働情報と故障種別との因果関係をモデル化してデータマイニング手法に取り入れることにより、故障種別の推定精度を高めることができる。このように、新しく記憶装置65に格納された故障種別情報及び稼働情報は、その後の故障種別の推定に利用することができる。利用可能な故障種別情報及び稼働情報が増えることにより、故障種別の推定結果を支援装置50に送信する際に、故障種別の推定精度を高めることができる。
【0059】
例えば、管理装置60から支援装置50に送信した推定故障種別情報(
図5)と、故障探索の結果判明した実際の故障種別とが不一致である場合、実際の故障種別に基づいて、故障種別推定モデル78(
図5)を修正することが可能である。
【0060】
さらに、ショベル30に発生した異常コードと、故障種別情報及び故障対応情報に基づいて、故障探索支援情報(
図3)を、より適切なものに修正することが可能である。
【0061】
上記実施例では、サービスマンが故障探索及び修理(
図7の修理工程S3)を行った後、支援装置50を操作することにより、支援装置50に故障種別入力画面(
図11E)が表示された。ステップS23(
図7)において支援装置50の表示装置55(
図6)に故障探索支援情報(
図11D)とともに、故障種別の入力を促す情報が表示されるようにしてもよい。または、故障探索支援情報(
図11D)の表示を終了した後に、故障種別入力画面(
図11E)が表示されるようにしてもよい。このように、支援装置50が故障種別の入力を促す情報を表示することにより、故障探索及び修理の後の故障種別の入力忘れを防止することができる。
【0062】
次に、
図15〜
図18を参照して、他の実施例について説明する。以下、
図1〜
図14A、
図14Bに示した実施例との相違点について説明し、共通の構成については説明を省略する。上記実施例では、
図7を参照して説明したように、定期的にショベル30から管理装置60に稼働情報(
図2A)が送られる。以下に説明する実施例では、稼働情報が送られる頻度が、ショベル30の状態によって変更される。
【0063】
図15に、複数のショベル30から管理装置60に稼働情報を送信するときの送信シーケンスの一例を示す。ショベル30の各々は、一定の時間間隔で稼働情報を収集する。
図15において、稼働情報の収集時刻Tcを中空または中実の丸記号で表す。稼働情報が収集されると、ショベル30の各々は、収集された稼働情報が正常範囲内であるか否かを判定する。稼働情報が正常範囲内であると判定された収集時刻Tcを中空の丸記号で表し、正常範囲外であると判定された収集時刻Tcを中実の丸記号で表す。
【0064】
稼働情報が正常範囲内であると判定されている期間、ショベル30の各々は、第1の時間間隔TI1で稼働情報を管理装置60に送信する。ショベル30の各々は、稼働情報が正常範囲外であると判定すると、稼働情報を送信する頻度を高める。例えば、稼働情報が正常範囲外であると判定されると、第1の時間間隔TI1より短い第2の時間間隔TI2で、稼働情報が管理装置60に送信される。稼働情報が正常範囲内に復帰すると、稼働情報の送信頻度も元に戻る。
【0065】
図16に、ショベル30が実行する処理のフローチャートを示す。この処理は、例えばショベル30の車両コントローラ31(
図1)が実行する。ステップSA1において、ショベル30が既定動作を行っている期間に、ショベル30の運転変数を一定の時間間隔で取得する。既定動作は、ショベル30の運転中の種々の動作から選択された一つの動作を意味する。既定動作の例として、アイドリング動作、油圧リリーフ動作、ブーム上げ動作、ブーム下げ動作、旋回動作、前進動作、後退動作等が挙げられる。運転変数として、例えばエンジン回転数が採用される。ショベル30が取得した運転変数の時間変化を、評価波形ということとする。
【0066】
ステップSA2において、評価波形から特徴量を算出する。「特徴量」とは、波形の形状を特徴付ける種々の統計量を意味する。例えば、特徴量として、平均値、標準偏差、最大波高値、ピークの数、信号非存在時間の最大値等を採用することができる。
【0067】
図17を参照して、ピークの数及び信号非存在時間の最大値について説明する。
図17に、評価波形の一部分を例示する。「ピークの数」は、例えば、波形が閾値Pth0を横切る箇所の数と定義される。
図17に示した期間においては、交差箇所H1〜H4で、波形が閾値Pth0を横切っている。このため、ピークの数は4と算出される。
【0068】
波形が閾値Pth1よりも低い区間を信号非存在区間と定義する。
図17に示した例では、信号非存在区間T1〜T4が現れている。「信号非存在時間の最大値」は、複数の信号非存在区間の時間幅のうち最大の時間幅を意味する。
図17に示した例では、信号非存在区間T3の時間幅が、信号非存在時間の最大値として採用される。一般的に、波形に周期の長いうねりがあると、信号非存在時間の最大値が大きくなる。
【0069】
ステップSA3(
図16)において、評価波形の特徴量を要素とする評価ベクトルを規格化して規格化評価ベクトルを求める。以下、評価ベクトルを規格化する手順について説明する。
【0070】
予め、ショベル30が正常状態時に既定動作を行っているときの運転変数が収集されている。ある期間に亘って収集された運転変数から、複数の時間波形を切り出す。この時間波形を参照波形ということとする。複数の参照波形の各々について、特徴量を算出する。複数の参照波形の各々の特徴量を要素とする参照ベクトルが得られる。参照ベクトルの特徴量のそれぞれについて平均が0になり、標準偏差が1になるように規格化することにより、規格化参照ベクトルを求める。この規格化処理には、複数の参照ベクトルの特徴量の各々の平均値及び標準偏差が用いられる。特徴量iの平均値をm(i)で表し、標準偏差をσ(i)で表すこととする。
【0071】
評価ベクトルは、参照ベクトルの特徴量iの平均値m(i)及び標準偏差σ(i)を用いて規格化される。評価ベクトルの特徴量iをa(i)で表すと、規格化評価ベクトルの特徴量iは、(a(i)−m(i))/σ(i)で表される。評価波形の形状が参照波形の形状に近い場合には、規格化評価ベクトルの特徴量iの各々が0に近くなり、評価波形の形状と参照波形の形状との差が大きい場合には、規格化評価ベクトルの特徴量iの絶対値が大きくなる。
【0072】
図18に、規格化参照ベクトルの分布及び規格化評価ベクトル92の一例を示す。
図18では、2つの特徴量A及び特徴量Bについて二次元平面で規格化参照ベクトルの分布が示されているが、実際には、規格化参照ベクトル及び規格化評価ベクトルは、特徴量iの個数に応じた次元を持つベクトル空間内に分布する。規格化参照ベクトルの終点を中空の丸記号で表す。規格化参照ベクトルのうち約68%は、半径1σの球体90内に分布する。ここで、σは標準偏差を表しており、各特徴量が規格化されているため、標準偏差σは1である。
【0073】
ステップSA4(
図16)において、現時点の稼働情報が正常範囲内か、正常範囲から外れているか否かを判定する。稼働情報が正常範囲内か否かの診断は、稼働情報から求まる規格化評価ベクトル92(
図18)の長さに基づいて行われる。規格化評価ベクトル92の長さが正常判定閾値以下の場合、当該稼働情報は正常範囲内であると判定される。規格化評価ベクトルの長さが正常判定閾値を超えている場合には、当該稼働情報は正常範囲外であると判定される。
【0074】
正常判定閾値として、例えば2σが選択される。
図18に示したベクトル空間において、規格化評価ベクトル92の終点が半径2σの球体91内に位置するとき、当該稼働情報は正常範囲内であると判定される。規格化評価ベクトル92の終点が半径2σの球体91の外に位置するとき、当該稼働情報は正常範囲外であると判定される。
【0075】
現時点の稼働情報が正常範囲内であるとき、ステップSA5(
図16)において、稼働情報の送信時間間隔を第1の時間間隔TI1に設定する。現時点の稼働情報が正常範囲外であるとき、ステップSA6(
図16)において、稼働情報の送信時間間隔を、第1の時間間隔TI1より短い第2の時間間隔TI2に設定する。
【0076】
次に、
図15〜
図18に示した実施例の優れた効果について説明する。ステップS42(
図7)において、故障種別と稼働情報との関連付けを、より適正化するために、稼働情報の収集頻度を高めることが好ましい。ところが、収集頻度を高めると、データ通信コストが上昇してしまう。
【0077】
上記実施例では、稼働情報が正常範囲から外れているときに、稼働情報が正常範囲内の期間と比べて、稼働情報の送信頻度を高くしている。このため、故障種別と稼働情報との関連付けを、より適正化することが可能である。また、稼働情報が正常範囲内の期間は、稼働情報の送信頻度を低くしているため、データ通信コストを抑制することができる。稼働情報が正常範囲内である場合には、当該稼働情報が故障種別と関連付けられることはない。従って、稼働情報の送信頻度を低くしても、故障種別と稼働情報との関連付けの適正化の妨げになることはない。
【0078】
次に、
図19及び
図20を参照して、さらに他の実施例について説明する。以下、
図1〜
図14A、
図14Bに示した実施例との相違点について説明し、共通の構成については説明を省略する。
【0079】
図19に、ショベル30、支援装置50、及びショベルの管理装置60の処理シーケンスを示す。予め設定された送信条件の下で、ショベル30から管理装置60に稼働情報(
図2A)が送られる。送信条件には、例えば、
図15に示したように一定の送信周期で送信するという条件、及びショベル30で異常が検知されたという条件が含まれる。管理装置60の稼働情報受信処理部70(
図4)は、受信した稼働情報を記憶装置65の稼働情報記憶領域66に格納する。稼働情報記憶領域66には、1つのショベル30に関して、直近に取得された稼働情報、及び、過去に取得された複数の稼働情報が記憶されている。
【0080】
ここで、「直近に取得された稼働情報」とは、予め設定された送信条件の下で送信された稼働情報のうち最新のものを意味する。「過去に取得された稼働情報」とは、予め設定された送信条件の下で送信された稼働情報のうち最新の稼働情報以外のものを意味する。
【0081】
管理装置60の処理装置61(
図4)は、直近に取得された稼働情報、及び過去に取得されていた複数の稼働情報に基づいて、ショベル30が正常か否かの診断を行う。以下、処理装置61が実行する診断の方法について説明する。管理装置60は、直近に取得された稼働情報、及び過去に取得されていた稼働情報の各々について、規格化評価ベクトルを求める。規格化評価ベクトルを求める方法は、
図16のステップSA1〜SA3の方法と同一である。
【0082】
図20に、複数の稼働情報に対してそれぞれ求められた規格化評価ベクトルの一例を示す。一部の規格化評価ベクトルは正常範囲95に含まれ、他の規格化評価ベクトルは正常範囲95の外側まで延びている。ここで、正常範囲95として、例えば半径3σの球体が採用される。半径3σの球体である正常範囲95の外側の領域は、いずれかの特徴量の値が、正常時の特徴量の平均値から標準偏差の3倍以上離れていることを意味する。
【0083】
正常範囲95の外側まで延びる規格化評価ベクトルは、ショベル30に何らかの異常が発生していることを示唆している。運転変数の時間波形は、ショベル30に発生している異常の種別に依存すると考えられる。このため、規格化評価ベクトルの方向に、ショベル30に発生している異常の種別が反映されていると考えることができる。
【0084】
処理装置61(
図4)は、規格化評価ベクトルの長さ及び方向に基づいて、稼働情報の各々について当該稼働情報が正常の範囲内であるか否かを判定する。これにより、稼働情報ごとに判定結果が得られる。処理装置61は、得られた複数の判定結果に基づいて、ショベル30の診断を行う。
【0085】
本実施例においては、複数の判定結果から、多数決によって、ショベル30の診断結果を得る。
図20に示した例では、正常範囲95から外れた複数の規格化評価ベクトルのうち3本の規格化評価ベクトルが正常を示唆し、4本の規格化評価ベクトルが異常Xを示唆し、1本の規格化評価ベクトルが異常Yを示唆している。この場合、多数決により、ショベル30に異常Xが発生していると判定される。
【0086】
図19に示すように、診断の結果、ショベル30に異常Xが発生していると判定された場合には、管理装置60は支援装置50に、ショベル30の機体識別情報とともに異常Xが発生していることを通知する。支援装置50は、この通知を受信すると、ショベル30に異常が発生していることを機体識別情報とともに表示装置55(
図6)に表示する。これにより、サービスマンは、異常が発生しているショベル30の故障探索及び修理を迅速に行うことが可能になる。
【0087】
複数の規格化評価ベクトルから、多数決によって正常か否かの診断を行う際に、重み付き多数決を採用してもよい。過去に取得された稼働情報よりも、直近に取得された稼働情報に、現在のショベル30の状況がより正確に反映されていると考えられる。従って、取得された時期が新しい稼働情報の規格化評価ベクトルほど、重み係数を大きくすることが好ましい。
【0088】
多数決または重み付き多数決に代えて、複数の規格化評価ベクトルの平均ベクトルに基づいて、正常か否かの判定を行ってもよい。
【0089】
次に、
図19及び
図20に示した実施例の優れた効果について説明する。一時的な環境変化等の特殊事情によって運転変数の時間波形が乱れる場合がある。一時的に乱れた時間波形から生成された規格化評価ベクトルに基づいてショベル30の診断を行うと、診断結果の信頼性が損なわれる。
図19及び
図20に示した実施例では、直近に取得された稼働情報のみならず、過去に取得されていた稼働情報を含めて、ショベル30の診断が行われる。このため、一時的な環境変化等の特殊事情による影響を排除し、診断の信頼性を高めることができる。
【0090】
診断の精度を高めるために十分なサンプリング数を確保することが好ましい。十分なサンプリング数を確保するために、1日以上前に取得されていた稼働情報を「過去に取得されていた稼働情報」として採用してもよい。これにより、診断結果が、日ごとの環境変化の影響を受けにくくなる。多数決によってショベル30の診断結果を決定する場合には、直近に取得された稼働情報と、過去に取得されていた少なくとも2つの稼働情報とが、診断の基礎となる稼働情報として採用される。
【0091】
以上実施例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されるものではない。例えば、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。