特許第6392258号(P6392258)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392258
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】防波堤の構築方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/06 20060101AFI20180910BHJP
【FI】
   E02B3/06 301
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-17354(P2016-17354)
(22)【出願日】2016年2月1日
(65)【公開番号】特開2017-137631(P2017-137631A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2017年8月30日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行者: 公益社団法人土木学会 刊行物: 土木学会平成27年度全国大会第70回年次学術講演会講演概要集 発行日: 平成27年8月1日(頒布日:平成27年8月8日)
(73)【特許権者】
【識別番号】000236610
【氏名又は名称】株式会社不動テトラ
(74)【代理人】
【識別番号】100107375
【弁理士】
【氏名又は名称】武田 明広
(72)【発明者】
【氏名】三井 順
(72)【発明者】
【氏名】丸山 草平
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−160019(JP,U)
【文献】 赤塚雄三 外2名,混成堤の堤体背後に設置したコンクリート方塊あるいは割石の滑動抵抗,第22回海岸工学講演会論文集,1975年,頁421〜425
【文献】 菊池喜昭 外2名,ケーソンの安定性に及ぼす裏込めの効果,港湾技術研究所報告,1998年 6月,第37巻 第2号,頁29〜58
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/04〜 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーソンの港内側に多数の消波ブロックを積み上げて防波堤を構築する方法であって、
一つのケーソンの重量の値W1にケーソンとマウンドとの摩擦係数の値μ1を乗じて算出されるケーソンの滑動抵抗力の値R1と、当該ケーソンの港内側に積み上げる消波ブロックの総重量の値W2に消波工とマウンドとの摩擦係数の値μ2を乗じて算出される滑動抵抗力の値R2と、を加算して算出される滑動抵抗力の値Rを、想定される津波力Pと一致させるために必要となる値W2を、前記消波工とマウンドとの摩擦係数の値μ2を0.6として求め、
総重量が値W2以上となる量の消波ブロックを、前記一つのケーソンの港内側に積み上げることを特徴とする防波堤の構築方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基礎マウンド上にケーソン及び消波ブロックを設置することによって構築される防波堤に関し、特に、想定される津波に対し十分な滑動抵抗力を有する防波堤の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
港湾等を保護するために構築される防波堤は、通常、海底に構築した基礎マウンドの上にケーソンを設置し、その沖側(港外側)に多数の消波ブロックを積み上げて(消波工を形成して)構築されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】港湾の施設の技術上の基準・同解説検討委員会編 「港湾の施設の技術上の基準・同解説」 日本港湾協会出版 2007年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年では、地震津波によって防波堤のケーソンが陸側へ転落してしまうという被災事例が多数報告されており、耐津波性能の向上が望まれている。
【0005】
本発明は、このような従来技術における課題を解決しようとするものであって、想定される津波に対し十分な滑動抵抗力を有する防波堤を構築する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る防波堤の構築方法は、一つのケーソンの重量の値W1にケーソンとマウンドとの摩擦係数の値μ1を乗じて算出されるケーソンの滑動抵抗力の値R1と、当該ケーソンの港内側に積み上げる消波ブロックの総重量の値W2に消波工(消波ブロックを積み上げて構築される構造物)とマウンドとの摩擦係数の値μ2を乗じて算出される滑動抵抗力の値R2と、を加算して算出される滑動抵抗力の値Rを、想定される津波力Pと一致させるために必要となる値W2を求め、総重量が値W2以上となる量の消波ブロックを、前記一つのケーソンの港内側に積み上げることを特徴としている。
【0007】
尚、消波工とマウンドとの摩擦係数の値μ2を、0.6として値W2を求めることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る防波堤の構築方法によれば、ケーソンの港内側に形成した消波工を、津波に対する受動抵抗として機能させることができ、各ケーソンにおける耐津波性能(安定性)の飛躍的な向上を期待することができ、想定される津波に対し十分な滑動抵抗力を有する防波堤を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明に係る方法によって構築した防波堤1の構造を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の発明者らによる実験において使用された実験装置の斜視図である。
図3図3は、図2に示す実験装置の断面図である。
図4図4は、図2図3の実験装置による測定結果に基づいて解析したケーソン3’の変位と滑動抵抗力との関係を示すグラフである。
図5図5は、図2図3の実験装置による測定結果に基づいて解析したケーソン3’の変位と消波工4’とマウンドとの摩擦係数との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明「防波堤の構築方法」を実施するための形態について説明する。図1は、本発明に係る方法によって構築した防波堤1の構造を模式的に示す断面図である。図示されているように、この防波堤1は、海底地盤上に捨石を配置して構築したマウンド2の上にケーソン3を設置するとともに、ケーソン3の港内側(図1において右側)に、消波ブロック5を積み上げることによって、消波工4が構築されている。(尚、図1に示すように、ケーソン3の港外側(図1において左側)にも、必要に応じて消波ブロック5を積み上げ、消波工6を形成してもよい。)
【0011】
このように本発明は、ケーソン3の港内側に多数の消波ブロック5を積み上げて(消波工4を形成して)防波堤1を構築することを一つの特徴とするものである。ケーソン3の港内側に形成した消波工4を、津波に対する受動抵抗として機能させることにより、各ケーソン3における耐津波性能(安定性)の飛躍的な向上を期待することができる。
【0012】
更に本発明は、想定される津波力に対してケーソン3(及び消波工4)の抵抗力を拮抗させるために必要となる港内側の消波工4の重量を算出し、総重量がその閾値以上となる量の消波ブロック5をケーソン3の港内側に積み上げて消波工4を形成することを特徴としている。
【0013】
尚、想定される津波力Pに対してケーソン(及び消波工)の抵抗力を拮抗させるために必要となる港内側の消波工の重量(ケーソンの港内側の消波ブロックの総重量)W2は、次のようにして求めることができる。
【0014】
「想定される津波力Pに対してケーソン(及び消波工)の抵抗力が拮抗する」とは、「想定される津波力Pと、ケーソンとその港内側に形成される消波工の全体の滑動抵抗力Rが等しい」ということを意味している(P=R)。そして、ケーソンとその港内側に形成される消波工の全体の滑動抵抗力Rは、当該ケーソンの滑動抵抗力R1と、消波工の滑動抵抗力R2との和であり(R=R1+R2)、ケーソンの滑動抵抗力R1は、ケーソンの重量W1に摩擦係数μ1を乗じることによって求めることができ(R1=W1×μ1)、また、消波工の滑動抵抗力R2は、消波工の重量W2に摩擦係数μ2を乗じることによって求めることができる(R2=W2×μ2)。
【0015】
これらを整理すると、次の通りとなる。
P=W1×μ1+W2×μ2
(P:想定される津波力、W1:検討対象となる一つのケーソンの重量、W2:消波工の重量、μ1:ケーソンとマウンドとの摩擦係数、μ2:消波工とマウンドとの摩擦係数)
【0016】
従って、想定される津波力Pに対してケーソン(及び消波工)の抵抗力を拮抗させるために必要となる港内側の消波工の重量W2は、次式により求めることができる。
W2=(P−W1×μ1)÷μ2
【0017】
ここで、想定される津波力Pの値、及び、ケーソンの重量W1の値は、対象案件毎に適宜設定することができ、また、ケーソンとマウンドとの摩擦係数μ1の値としては、一般に「0.6」という数値が用いられている(例えば、非特許文献1)。一方、消波工とマウンドとの摩擦係数μ2については、これまでに一般的に用いられている数値は存在していない。
【0018】
そこで本発明の発明者らが、模型を用いて実験を行い、消波工とマウンドとの摩擦係数μ2が、どのような値となるか調べたところ、「0.6」という数値となることが判明した。
【0019】
以下、本発明の発明者らが行った実験の内容とその結果について説明する。
まず、図2に示すような実験装置を用意した。より具体的には、マウンド2’,2”(模型)の上に、ケーソン3’(模型)を載置するとともに、ケーソン3’の背後に消波ブロックの模型を積み上げて消波工4’(模型)を形成した。尚、ケーソン3’及び消波工4’の左右両側に側壁10,10をそれぞれ配置し、ケーソン3’の両側面にそれぞれ固定した。
【0020】
そして、図示しないウインチを用いて、ケーソン3’(模型)及び消波工4’をワイヤー9で水平に(図2において右方向へ)牽引することで載荷し、荷重とケーソン3’の変位を測定するとともに、消波工4’を形成せずに、ケーソン3’のみを牽引した場合の荷重と変位の測定を行った。尚、牽引する高さ位置は、ケーソン3’の底面から天端面までの高さの1/3の位置とし、牽引速度は、1.5cm/sとした。また、ケーソン3’の下のマウンド2”は、木製の土台とし、地盤に固定した。これは、ケーソン3’とマウンドの摩擦力のバラツキを小さくするためと、牽引時にケーソンを水平に保つためである。また、実験時に捨石マウンドが地盤上を滑ることを防ぐため、地盤にワイヤーメッシュを設置した。
【0021】
図3は、実験装置の断面図である。模型縮尺は、1/50を想定しており、図中には、現地量に換算した値を併記している。消波工4’に使用した消波ブロック模型の諸元は、空隙率50%、密度2359kg/m、空中単位体積重量11.56kN/mである。マウンド2’に使用した捨石模型の諸元は、空隙率39.3%、密度2656kg/m、空中単位体積重量15.80kN/mである。
【0022】
牽引時の経過を観察したところ、消波工4’とマウンド2’との境界で滑りが生じ、消波工4’全体が、設置時の形状をほぼ保ちながら滑動する様子が確認された。
【0023】
消波工4’あり、無しでのケーソン3’の変位と滑動抵抗力との関係(測定結果に基づく解析結果)を図4に示す。消波工4’ありの場合、変位が大きくなるにつれて抵抗が増大する傾向があり、変位が15mm程度の時点で最大値を示した。この理由としては、消波ブロックと捨石とのかみ合いが次第に進行したことと、ブロック間の空隙が次第に詰まったことが考えられる。消波工4’とマウンド2’との境界を滑り面と仮定し、消波工4’全体の重量と滑動抵抗力の測定値から摩擦係数を逆算したものを図5に示す。摩擦係数は、動き出しの時点で0.6程度、最大で1.2程度であった。
【0024】
以上の実験結果から、消波工とマウンドとの摩擦係数μ2は、「0.6」という数値となることが判明し、従って、消波工とマウンドとの摩擦係数μ2を「0.6」として計算することにより、想定される津波力Pに対してケーソン(及び消波工)の抵抗力を拮抗させるために必要となる港内側の消波工の重量W2を求めることができる。そして、総重量が当該閾値(W2の値)以上となる量の消波ブロックをケーソンの港内側に積み上げて消波工を形成することにより、想定される津波に対し十分な滑動抵抗力を有する防波堤を構築することができる。
【符号の説明】
【0025】
1:防波堤、
1’:防波堤(模型)
2:マウンド、
2’,2”:マウンド(模型)、
3:ケーソン、
3’:ケーソン(模型)
4:消波工(港内側)、
4’:消波工(模型)、
5:消波ブロック、
6:消波工(港外側)
7:変位計、
8:ロードセル、
9:ワイヤー、
10:側壁
図1
図2
図3
図4
図5