【文献】
Mol. Ther.,2005年,Vol.12,pp.892-899
【文献】
Hum. Gene Ther.,2003年,Vol.14,pp.263-276
【文献】
Mol. Ther.,2010年,Vol.18,pp.1748-1757
【文献】
Hum. Gene Ther. Methods ,2012年,Vol.23,pp.408-415
【文献】
J. Immunol.,2011年,Vol.187,pp.3931-3941
【文献】
Hum. Gene Ther.,2004年,Vol.15,pp.393-404
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、メモリーB細胞をプラズマ芽球およびプラズマ細胞へと分化させるために、インビトロの複数条件下でB細胞を培養することに一般的に関する。本発明はさらに、B細胞を遺伝学的に改変して目的遺伝子を発現させること、そして、その目的遺伝子にコードされるタンパク質を発現させるために、その改変B細胞を活性化および培養することに関する。これらの活性化改変B細胞を、その後、被験体に投与する。本明細書中に記載される組成物と方法は、例えば、簡単な採血由来のB細胞をインビトロで分化させ、その後、目的核酸によりコードされるタンパク質を大量に分泌するようにその分化したB細胞に前記目的核酸を形質導入する能力を提供する。このシステムの一つの特定の利点は、このシステムが休止メモリーB細胞をプラズマ芽球またはプラズマ細胞(これらは、その後、形質導入および目的タンパク質の生産のために使用される場合がある)へと分化させるために約10日間しか必要としないことである。当該技術分野で既知のシステムは、10週間ほどかかる場合がある。従って、本開示は、培養に、より少ない時間を必要とする方法であって、先行方法に比べて商業上の利点および安全性の利点を提供するものを提供する。本発明の別の利点は、このインビトロ培養方法により、形質導入効率が、約20%の形質導入効率へと増加することである。このことは、当該技術分野で既知の方法の形質導入効率が低いことへの改善となる。本方法は、また、GMPグレードの生産にとってやっかいなものとなっているフィーダー細胞を必要としない。
【0011】
B細胞の培養および形質導入方法
本開示の形質導入方法を用いる、使用のための細胞のプロトタイプの例は、B細胞である。ある実施形態では、本開示の方法に使用されるB細胞は、休止B細胞、メモリーB細胞、プライムされるか若しくは活性化されたB細胞、ミエローマ細胞、リンパ球性白血病B細胞、またはBリンパ腫細胞である場合がある。しかしながら、当業者は、本開示のベクターおよび方法が他の細胞型にも適用可能であることを容易に理解する。例示すると、培養、分化、改変、および活性化可能な細胞型には、任意の一般的に非分裂または静止状態の細胞(例、神経芽細胞、造血幹細胞および造血前駆細胞(CD34+細胞)、間葉系幹細胞、間葉系前駆細胞、神経と肝臓の前駆および幹細胞、樹状細胞、T細胞(CD8+もしくはCD4+T細胞)、他の白血球集団、多能性幹細胞(pluripotentstemcell)、多能性幹細胞(multi−potentstemcell)等)が含まれる。従って、本開示のある実施形態は、この本方法の結果生じる細胞集団を提供する。ある実施形態では、本明細書中に記載される方法およびベクターを使用して、任意の他の所望細胞型(例、肝細胞、表皮細胞、骨芽細胞、筋肉細胞、繊維芽細胞、脂肪細胞等)に形質導入する場合がある。
【0012】
本明細書中で使用される「静止状態」は、細胞が活発に増殖していない細胞状態を指す。
【0013】
分化および形質導入前に、被験体からB細胞の供給源を得る。用語「被験体」は、後天免疫応答が誘発可能な生きている生物(例、哺乳動物)を含むことを意図している。被験体の例には、ヒト、イヌ、ネコ、ネズミ、ラット、およびその遺伝子組み換え種が含まれる。B細胞は、多数の供給源(例、末梢血単核細胞、骨髄、リンパ節組織、臍帯血、感染部位由来組織、脾臓組織、および腫瘍を含むもの)から得ることができる。本開示のある実施形態では、当該技術分野で利用可能な任意の数のB細胞株を使用してもよい。本明細書中に記載される方法のある実施形態では、当業者に既知の任意の数の技術(例、FICOLL(商標)(高密度溶液を調製するのに使用可能な、ショ糖とエピクロルヒドリンとのコポリマー)分離)を使用して、被験体から回収される血液のユニットから、B細胞を得ることができる。一つの好ましい実施形態では、個人の循環血液由来の細胞を、アフェレーシスまたは白血球分離により得る。アフェレーシス産物は、典型的には、リンパ球(T細胞、単球、顆粒球、B細胞、他の有核白血球、赤血球、および血小板を含むもの)を含む。一つの実施形態では、アフェレーシスにより回収された細胞を洗浄して、血漿画分を除去し、そして、その細胞を次の処理工程用の適切な緩衝液または培地中に置く場合がある。本明細書中に記載される方法の一つの実施形態では、細胞を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で洗浄する。他の実施形態では、洗浄溶液はカルシウムを欠き、および、マグネシウムも欠く場合があるか又は全ての二価陽イオンではないかもしれないがその多くを欠く場合がある。当業者が容易に理解するであろうことには、当業者に公知の方法(例、半自動化「フロースルー」遠心分離機(例、Cobe 2991細胞処理装置)を、製造元の説明書に従って使用すること)により、洗浄工程を達成する場合がある。洗浄後、細胞を、各種生体適合性緩衝液(例、PBS)中に再懸濁してもよい。または、アフェレーシスサンプルの望ましくない成分を除去し、そして細胞を、直接、培養培地中に再懸濁してもよい。
【0014】
B細胞を、当該技術分野で既知の手法を使用して、末梢血から又は白血球分離により単離する場合がある。例えば、PBMCをFICOLL(商標)(Sigma−Aldrich、St Louis、MO)を使用して単離する場合があり、そして、CD19+B細胞を、当該技術分野で既知の任意の各種抗体を使用するネガティブまたはポジティブ選択(例、ロゼット型四量体(Rosette tetrameric)複合システム(Stem Cell Technologies、バンクーバー、カナダ))により精製する場合もある。ある実施形態では、メモリーB細胞を、Jourdanらにより記載されるように単離する(Blood、2009年12月10日、114(25):5173−81)。例えば、抗CD2磁性ビーズを使用して、CD2+細胞を除去した後、CD19+CD27+メモリーB細胞をFACSによりソーティングする場合がある。骨髄プラズマ細胞(BMPC)を、抗CD138磁性マイクロビーズによるソーティングまたは他の同様な方法と試薬を使用して、精製することができる。
【0015】
他の単離キット(例、R&D Systems(Minneapolis、MN)製MagCellectヒトB細胞単離キット)が、市販されている。ある実施形態では、休止B細胞を、文献(Defrancoら、(1982年)、J.Exp.Med.、155:1523)に記載されるように、不連続Percoll勾配上に沈降させることにより調製する場合がある。
【0016】
本開示は、B細胞が、目的タンパク質をコードするウイルスベクターを用いて効率的に形質導入され、導入遺伝子によりコードされるタンパク質を活発に生産するように分化および活性化を促進するための、B細胞(例、メモリーB細胞)を培養する方法を提供する。この点に関しては、B細胞は活性化され、プラズマ細胞もしくはプラズマ芽球またはその両者へと分化する。当業者に認識されるのは、プラズマ細胞は、標準的フローサイトメトリー法を使用して、細胞表面タンパク質発現パターンにより同定可能であることである。例えば、最終的に分化したプラズマ細胞は、比較的少数の表面抗原を発現し、共通する一般的(pan)B細胞マーカー(例、CD19およびCD20)を発現しない。その代わりに、プラズマ細胞は、CD38、CD78、CD138、インターロイキン6受容体の追加的発現とCD45の発現の欠如によりフローサイトメトリーを介して同定される。ヒトにおいては、CD27がプラズマ細胞の良いマーカーであり、ナイーブB細胞はCD27−、メモリーB細胞はCD27+、そしてプラズマ細胞は、CD27++である。CD38およびCD138は、プラズマ細胞でハイレベルに発現される。従って、ある実施形態では、本明細書中に記載されるインビトロ培養方法の開始時に使用されるB細胞は、CD20+CD38−CD138−であり、形質導入効率は良くない。しかしながら、一つの実施形態では、本明細書中に記載される培養方法のある工程の後においては、細胞は、ほとんどCD20−CD38+CD138−である。そして、本明細書中に記載されるインビトロ培養方法のさらなる工程の後、細胞はCD20−CD38+CD138+となる。そのような細胞を、その後、本明細書中に記載されるように、効率的な形質導入のために使用する場合がある。ある実施形態では、形質導入前に、B細胞を分化および活性化するのが望ましい。一つの実施形態では、Day6での細胞の表現型は、「活性化型」として最適に記載可能である。というのも、それらの細胞の細胞表面表現型は、CD20−CD38−CD138−CD27+となるからだ。
【0017】
一つの実施形態では、B細胞活性化因子(例、B細胞を活性化および/または分化させることが知られる、任意の各種サイトカイン、成長因子、または細胞株)とB細胞を接触させる場合がある(例えば、Fluckigerら、Blood、1998年、92:4509−4520;Luoら、Blood、2009年、113:1422−1431を参照されたい)。そのような因子は、限定はされないが、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−19、IL−20、IL−21、IL−22、IL−23、IL−24、IL−25、IL−26、IL−27、IL−28、IL−29、IL−30、IL−31、IL−32、IL−33、IL−34、およびIL−35、IFN−γ、IFN−α、IFN−β、IFN−δ、C型ケモカインXCL1およびXCL2、C−C型ケモカイン(現在までに、CCL1〜CCL28を含む)、CXC型ケモカイン(現在までに、CXCL1〜CXCL17を含む)、TNFスーパーファミリーのメンバー(例、TNF−α、4−1 BBリガンド、B細胞活性化因子(BLyS))、FASリガンド、sCD40L(多量体バージョンのsCD40Lを含む;例、ヒスチジンのタグを付けた可溶性組換えCD40Lを抗ポリヒスチジンmAbと組み合わせて、複数のsCD40L分子を共に一つの群とするもの)、リンホトキシン、OX40L、RANKL、TRAIL、CpG、ならびに、他のトール様受容体作動薬(例、CpG)からなる群より選択される場合がある。一つの実施形態では、特に、B細胞(形質導入されたB細胞を含むもの)を、フィーダー細胞に接触させるか、または、その上で培養する。他の実施形態では、本明細書中に記載される培養システムを、フィーダー細胞の非存在下で実施し、フィーダー細胞を必要とする当該技術分野で既知の他のシステムより大きい利点を提供する。フィーダー細胞が使用可能な場合、フィーダー細胞は、ストローマ細胞株(例、マウスストローマ細胞株S17またはMS5)である。さらなる実施形態では、精製CD19+細胞を、B細胞活性化因子であるサイトカイン(例、IL−10およびIL−4)の存在下、およびCD40リガンドを発現する繊維芽細胞の存在下で培養してもよい。CD40Lを、表面(例、組織培養プレートまたはビーズ)に結合させて提供する場合もある。別の実施形態では、精製B細胞を、フィーダー細胞の存在下または非存在下であって、IL−10、IL−4、IL−7、p−ODN、CpG DNA、IL−2、IL−15、IL−6、IFN−α、およびIFN−δから選択される一若しくは複数のサイトカインまたは因子の存在下で、CD40Lと共に培養する場合がある。
【0018】
別の実施形態では、B細胞活性化因子を、B細胞または他のフィーダー細胞にトランスフェクションすることにより提供する場合がある。この文脈では、抗体分泌細胞へのB細胞の分化を促進する一又は複数の因子および/または抗体生産細胞の寿命を伸ばす一又は複数の因子を使用してもよい。そのような因子には、例えば、Blimp−1、TRF4、Bcl−xlもしくはBcl5のような抗アポトーシス因子、またはCD40受容体の恒常活性化型変異体が含まれる。さらに、下流に働くシグナル分子(例、TNF受容体関連因子(TRAF)の発現を促進する因子も、また、B細胞の活性化/分化に使用可能である。この点では、TNF受容体スーパーファミリーの細胞活性化機能、細胞維持機能、および抗アポトーシス機能は、ほとんどTRAF1〜6により媒介される(例えば、R.H.Archら、Genes Dev.、12(1998年)、pp.2821−2830を参照されたい)。TRAF情報伝達の下流エフェクターには、各種観点の細胞機能および免疫機能に関わる遺伝子をオン状態にすることができる、NF−κBおよびAP−1ファミリーの転写因子が含まれる。さらに、NF−κBおよびAP−1の活性化は、抗アポトーシス遺伝子の転写を介して、細胞にアポトーシスからの防御を提供することが示されている。
【0019】
他の実施形態では、エプスタイン・バーウイルス(EBV)由来のタンパク質が、B細胞の活性化/分化に有用である場合があり、または、抗体生産細胞の寿命を伸ばすのに有用である場合がある。EBV由来のタンパク質には、限定はされないが、EBNA−1、EBNA−2、EBNA−3、LMP−1、LMP−2、EBER、miRNA(複数)、EBV−EA、EBV−MA、EBV−VCA、およびEBV−ANが含まれる。
【0020】
ある実施形態では、本明細書中に提供される方法を使用して、B細胞をB細胞活性化因子と接触させることは、他の事象の中では、細胞増殖、活性化型成熟B細胞と矛盾しない表面表現型へとIgM+細胞表面表現型を調節すること、Igの分泌、およびアイソタイプ・スイッチングを導く。CD19+B細胞を、既知で市販されている細胞分離キット(例、MiniMacs細胞分離システム(Miltenyi Biotech、Bergisch Gladbach、ドイツ))を使用して、単離してもよい。ある実施形態では、CD40Lを発現する繊維芽細胞を、本明細書中に記載される方法に使用する前に放射線照射する。さらなる実施形態では、前駆細胞またはB細胞を、IL−3、IL−7、Flt3リガンド、トロンボポエチン、SCF、IL−2、IL−10、G−CSF、およびCpGの中の一又は複数のものの存在下で培養する場合がある。ある実施形態では、本方法は、低レベルのアンカー型CD40Lを提供する形質転換したストローマ細胞(例、MS5)と、またはプレートもしくはビーズに結合したCD40Lと組み合わせて、一又は複数の前記因子の存在下で、B細胞または前駆細胞を培養する工程を含む。
【0021】
任意の各種培養培地が本方法に使用可能であり、それらは当業者には知られている(例えば、「Current Protocols in Cell Culture」、2000〜2009年、John Wiley&Sons,Inc.によるものを参照されたい)。一つの実施形態では、本明細書中に記載される方法に使用される培地には、限定はされないが、Iscove改変ダルベッコ培地(牛胎児血清または他の適切な血清を有してもまたは有さなくてもよいもの)が含まれる。例示的な培地には、また、限定はされないが、IMDM、RPMI1640、AIM−V、DMEM、MEM、α−MEM、F−12、X−Vivo15、およびX−Vivo20が含まれる。さらなる実施形態では、培地は、界面活性剤、抗体、プラスマネートもしくは還元剤(例、N−アセチル−システイン、2−メルカプトエタノール)、または一若しくは複数の抗生物質を含む場合がある。いくつかの実施形態では、IL−6、可溶性CD40L、および架橋増強剤を使用する場合もある。
【0022】
B細胞または前駆細胞を、所望の分化および活性化を実現するのに十分な時間と条件下で培養する場合がある。ある実施形態では、B細胞または前駆細胞を、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または100%さえものB細胞が望ましくは分化および/または活性化するような十分な時間と条件下で培養する。一つの実施形態では、B細胞は活性化され、プラズマ細胞へと分化する。当業者に認識されるのは、本明細書中のどこかに記載される標準的フローサイトメトリー法を使用して、細胞表面タンパク質発現パターンにより、プラズマ芽球およびプラズマ細胞を同定する場合があることである。例えば、CD38、CD78、インターロイキン6受容体、CD27
high、CD138の発現と、共通する一般的(pan)B細胞マーカー(例、CD19およびCD20)の発現欠如と、CD45の発現欠如とにより同定可能である。当業者に理解されるのは、メモリーB細胞が、一般的に、CD20+CD19+CD27+CD38−である一方で、初期のプラズマ芽球は、CD20−CD19+CD27++CD38++であることである。ある実施形態では、本明細書中に記載される方法における開始集団は、CD20+CD38−CD138−(これらの細胞は一般的に形質導入効率が悪い)である。一つの実施形態では、本明細書中に記載される方法を使用して培養される細胞は、CD20−CD38+CD138−である。別の実施形態では、細胞が検討される培養日と因子が培地中に使用される培養日に依存して、細胞は、CD20−CD38+CD138+の表現型を有する場合がある。ある実施形態では、細胞を1〜7日間培養する。さらなる実施形態では、細胞を、7、14、21日間以上培養する。従って、細胞を、適切な条件下で培養する期間は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、または29日以上である。細胞をまき直し、当該技術分野で既知の手法を使用して、必要ならば、培地および添加物を加えるか又は交換する場合がある。
【0023】
ある実施形態では、B細胞または前駆細胞(形質導入の前または後のいずれかのもの)を、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の前記細胞が分化および活性化してIgを生産および/または目的トランスジーンを発現するのに十分な時間と条件下で培養する場合がある。
【0024】
B細胞の活性化の誘導を測定する技術は、例えば、RNAへの
3H−ウリジン取り込み(B細胞が分化するにつれ、RNA合成は増加する)または
3H−チミジン取り込み(細胞増殖と関連するDNA合成を測定するもの)によるものである場合がある。B細胞増殖の最適な測定のために、インターロイキン4(IL−4)を、適切な濃度(例、約10ng/ml)で培養培地に加えてもよい。
【0025】
または、B細胞活性化を、免疫グロブリン分泌の関数として測定してもよい。例えば、CD40Lを、IL−4(例、10ng/ml)およびIL−5(例、5ng/ml)またはB細胞の活性化に適する他のサイトカインと一緒に、休止B細胞に加える場合がある。活性化B細胞に典型的な細胞表面マーカーを測定するために、フローサイトメトリーが、また、使用可能である。例えば、Civin CI、Loken MR、Int’l J.Cell Cloning、987、5:1−16;Loken,MRら、「Flow Cytometry Characterization of Erythroid,Lymphoid and Monomyeloid Lineages in Normal Human Bone Marrow,in Flow Cytometry in Hematology」、Laerum OD、Bjerksnes R.編、Academic Press、New York、1992年、pp.31−42;ならびにLeBein TWら、Leukemia、1990年、4:354−358を参照されたい。
【0026】
適切な期間(例、2、3、4、5、6、7、8、または9日以上)の培養後、一般的には、約3日後に、追加的容量の培養培地を加える場合がある。個々の培養物の上清を、培養期間の様々な時間で回収して、Noelleら、(1991年)、J.Immunol.、146:1118−1124に記載されているようにIgMとIgG1に関して定量する場合がある。さらなる実施形態では、培養物を回収して、フローサイトメトリー、ELISA、ELISPOT、または当該技術分野で既知の他のアッセイを使用して、目的トランスジーンの発現を測定する場合がある。
【0027】
さらなる実施形態では、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を使用して、IgMまたは他の抗体アイソタイプの生産あるいは目的トランスジーンの生産を測定してもよい。ある実施形態では、捕獲抗体として市販の抗体(例、ヤギ抗ヒトIgG)を使用し、その後、任意の各種適切な検出試薬(例、ビオチン化ヤギ抗ヒトIgG、ストレプトアビジン・アルカリホスファターゼ、および基質)を使用して検出することにより、IgG決定を行う場合がある。
【0028】
B細胞または他の目的細胞は、当該技術分野で既知の任意の各種手法を使用し、本明細書中に記載されるレトロウイルスベクターを用いて形質導入可能である(例えば、Science、1996年4月12日、272:263−267;Blood、2007年、99:2342−2350;Blood、2009年、113:1422−1431;Blood、2009年10月8日、114(15):3173−80;Blood、2003年、101(6):2167−2174;「Current Protocols in Molecular Biology」または「Current Protocols in Immunology」、John Wiley&Sons、New York、N.Y.(2009年)を参照されたい)。例えば、ドナー由来のPBMC、Bリンパ球、またはTリンパ球および他のB細胞のがん細胞(例、B−CLL)は、IMDM培地もしくはRPMI1640(GibcoBRL・Invitrogen、Auckland、ニュージーランド)または本明細書中に記載される他の適切な培地(血清不含有もしくは10%のFCSを添加したものであって、ペニシリン/ストレプトマイシンおよび/または他の適切な添加剤(例、トランスフェリンおよび/またはインスリン)を有するもの)中で、単離および培養可能である。ある実施形態では、細胞を、1×10
5細胞で、48穴プレートに播種し、濃縮ベクターを各種用量(日常的に行われる方法を使用して、当業者によりルーチンに最適化される場合があるもの)で加える。ある実施形態では、B細胞を、10%のAB血清、5%のFCS、50ng/mlのrhSCF、10ng/mlのrhIL−15、および5ng/mlのrhIL−2を添加したRPMI中で、MS5細胞単層上へ移し、そして、培地を、必要ならば定期的に新しいものにする。当業者に認識されるのは、他の適切な培地と添加剤とが、所望ならば、使用可能であることである。
【0029】
一つの実施形態では、分化させるために本明細書中に記載されるように培養されるB細胞を、そのB細胞の少なくとも一部に形質導入するのに十分な条件下で、プロモーターに機能的に連結された目的核酸を含む本明細書中に記載されるレトロウイルスベクターと接触させる。一つの実施形態では、B細胞を、そのB細胞の少なくとも20%に形質導入するのに十分な条件下で、プロモーターに機能的に連結された目的核酸を含む本明細書中に記載されるレトロウイルスベクターと接触させる。さらなる実施形態では、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%さえもの休止B細胞に形質導入するのに十分な条件下で、本明細中に記載されるベクターと、B細胞を接触させる。一つの特定の実施形態では、分化および活性化されたB細胞(本明細書中に記載されるようにインビトロで培養されたもの)に形質導入する。そのようなケースでは、少なくとも15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%さえもの分化および活性化されたB細胞に形質導入するのに十分な条件下で、本明細中に記載されるベクターと、培養されて分化および活性化されたB細胞を接触させる。
【0030】
ある実施形態では、形質導入前に、細胞を黄色ブドウ球菌コーワン(Staphylococcus Aureus Cowan)(SAC;Calbiochem、San Diego、CA)で前刺激する。当業者に既知であって、ルーチンに最適化された適切な濃度で、B細胞に対してはIL−2、T細胞に対しては抗hCD3/抗hCD28/IL−2を用いて前刺激する。他のB細胞活性化因子(例、PMA)(当業者に既知であって、本明細書中に記載されたもの)が使用可能である。
【0031】
ウイルスベクター
ある実施形態は、本明細書中に記載される発現システムを用いて、プラズマ細胞(例、B細胞)に形質導入するためのウイルスベクターを採用する。ウイルスベクターの例には、限定はされないが、アデノウイルス系ベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)系ベクター、レトロウイルスベクター、レトロウイルス・アデノウイルスベクター、および単純ヘルペスウイルス(HSV)(アンプリコンベクター、複製欠損型HSV、および弱毒化HSVを含むもの)由来ベクターが含まれる(例えば、Krisky、Gene Ther.、5:1517−30、1998年;Pfeifer、Annu.Rev.Genomics Hum.Genet.、2:177−211、2001年を参照されたい;各々は参照により完全に組込まれる)。
【0032】
ある実施形態は、レトロウイルスベクターまたはレトロウイルス由来のベクターの使用に関する。「レトロウイルス」は、エンベロープに包まれたRNAウイルスであって、動物細胞に感染することができ、感染の初期段階で酵素である逆転写酵素を利用して、そのRNAゲノムからDNAコピーを生成し、その後、宿主ゲノムに典型的に組み込まれるようなウイルスである。レトロウイルスベクターの例には、Moloneyマウス白血病ウイルス(MLV)由来ベクター、マウス幹細胞ウイルス(標的細胞(例、造血前駆細胞およびその分化した子孫細胞)中で長期安定発現を提供するもの(例えば、Hawleyら、PNAS USA、93:10297−10302、1996年;Kellerら、Blood、92:877−887、1998年を参照されたい))に基づくレトロウイルスベクター、ハイブリッドベクター(例えば、Choiら、Stem Cells、19:236−246、2001年を参照されたい)、および複雑なレトロウイルス由来のベクター(例、レンチウイルスベクター)が含まれる。
【0033】
上記したように、ある実施形態では、レンチウイルスベクターを用いる。用語「レンチウイルス」は、分裂および非分裂細胞の両者に感染することができる複雑なレトロウイルスの属を指す。レンチウイルスの例には、HIV(ヒト免疫不全ウイルス;HIV 1型、HIV 2型を含む)、ビスナ・マエディウイルス、ヤギ関節炎脳炎ウイルス、ウマ伝染性貧血ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)、およびサル免疫不全ウイルス(SIV)が含まれる。レンチウイルスベクターは、任意の一又は複数のこれらのレンチウイルスより派生可能である(例えば、Evansら、Hum GeneTher.、10:1479−1489、1999年;Caseら、PNAS USA、96:2988−2993、1999年;Uchidaら、PNAS USA、95:11939−11944、1998年;Miyoshiら、Science、283:682−686、1999年;Suttonら、J Virol、72:5781−5788、1998年;およびFrechaら、Blood、112:4843−52、2008年を参照されたい;各々は参照により完全に組み込まれる)。
【0034】
休止TおよびB細胞が、HIVのアクセサリータンパク質(vif、vpr、vpu、およびnef)のほとんどを保持するVSVG被覆LVにより形質導入可能であることは詳細に記述されている(例えば、Frechaら、2010年、Mol.Therapy、18:1748を参照されたい)。ある実施形態では、レトロウイルスベクターは、レンチウイルスゲノム(例、HIVゲノムまたはSIVゲノム)由来のいくつかの最小配列を含んでいる。レンチウイルスのゲノムは、典型的には、5’ロングターミナルリピート(LTR)領域、gag遺伝子、pol遺伝子、env遺伝子、アクセサリー遺伝子(例、nef、vif、vpr、vpu、tat、rev)、および3’LTR領域に構成される。ウイルスのLTRは、U3、R(リピート)、およびU5と呼ばれる3つの領域に分割される。U3領域は、エンハンサーとプロモーターエレメントを含む。U5領域は、ポリアデニル化シグナルを含む。そして、R領域は、U3領域とU5領域を分離させる。R領域の転写配列は、ウイルスRNAの5’および3’末端の両方に見られる(例えば、「RNA Viruses:A Practical Approach」(Alan J.Cann編、Oxford University Press、2000年);O Narayan、J.Gen.Virology.、70:1617−1639、1989年;Fieldsら、「Fundamental Virology」、Raven Press.、1990年;Miyoshiら、J Virol.、72:8150−7、1998年;および米国特許番号第6,013,516号を参照されたい;各々は参照により完全に組み込まれる)。レンチウイルスベクターは、所望のようにベクターの活性を制御するために、レンチウイルスゲノムのこれらエレメントの任意の一又は複数を含む場合がある。または、レンチウイルスベクターは、レンチウイルス複製の病理学的効果を減らすため、または、レンチウイルスベクターを一回の感染に限定するために、これらエレメントの一又は複数に欠失、挿入、置換、または変異を含む場合がある。
【0035】
典型的には、最小なレトロウイルスベクターは、5’LTRおよび3’LTR配列、一又は複数の目的遺伝子(標的細胞で発現されるもの)、一又は複数のプロモーター、およびRNAのパッケージングのためにシスに作用する配列を含む。本明細書中に記載され且つ当該技術分野で既知の他の制御配列も含まれる場合がある。ウイルスベクターは、典型的には、パッケージング細胞株(例、真核細胞(例、293−HEK))へとトランスフェクション可能なプラスミドにクローニングされる。ウイルスベクターはまた、典型的には、細菌中でのプラスミド複製に有用な配列も含む。
【0036】
ある実施形態では、ウイルスベクターは、レトロウイルス(例、レンチウイルス)の5’LTRおよび/または3’LTR由来の配列を含む。LTR配列は、任意の種からの任意のレンチウイルス由来のLTR配列である場合がある。例えば、それらは、HIV、SIV、FIV、またはBIV由来LTR配列であってもよい。好ましくは、LTR配列は、HIVのLTR配列である。
【0037】
ある実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスの5’LTR由来のRおよびU5配列と、レンチウイルス由来の不活性化された又は「自己不活化する」3’LTRとを含む。「自己不活化する3’LTR」は、LTR配列が下流遺伝子の発現を促進するのを阻害する変異、置換、または欠失を含む3’ロングターミナルリピート(LTR)である。その3’LTR由来のU3領域のコピーは、組み込まれたプロウイルス中の両方のLTRの生成のための鋳型として働く。従って、不活性化欠失または変異を有する前記3’LTRが、プロウイルスの5’LTRとして組み込まれる場合は、その5’LTRからの転写は不可能である。このことが、ウイルスのエンハンサー/プロモーターと任意の内部エンハンサー/プロモーターとの間の競合を排除する。自己不活化する3’LTRは、例えば、Zuffereyら、J Virol.、72:9873−9880、1998年;Miyoshiら、J Virol.、72:8150−8157、1998年;およびIwakumaら、Vilology、261:120−132、1999年(各々は参照により完全に組み込まれる)に記載される。自己不活化する3’LTRは、当技術分野において公知の任意の方法により作製可能である。ある実施形態では、3’LTRのU3エレメントは、そのエンハンサー配列、好ましくは、TATAボックス、Sp1および/またはNFκBサイトの欠失を含んでいる。自己不活化する3’LTRの結果、宿主細胞ゲノムに組み込まれるプロウイルスは、不活化した5’LTRを含む。
【0038】
本明細書中に提供されるウイルスベクターは、典型的には、一又は複数の標的細胞に望ましくは発現されるタンパク質(または他の分子(例、siRNA))をコードする遺伝子を含む。好ましくは、目的遺伝子は、5’LTRと3’LTRとの間に位置している。さらに、目的遺伝子は、好ましくは、その目的遺伝子が一旦標的細胞に組み込まれたら、特定の様式でその目的遺伝子の発現を制御するために、他の遺伝的要素(例、転写制御配列(例、プロモーターおよび/またはエンハンサー))と機能的に関係する。ある実施形態では、有用な転写制御配列は、時空間的に活性が高度に制御されるものである。
【0039】
ある実施形態では、多様な集団内(例、ヒト患者内)で、感染した標的細胞を選択的に死滅させることを主として可能にするために、一又は複数の追加的遺伝子を、安全策として取り込ませる場合がある。一つの例示的実施形態では、選択遺伝子は、チミジンキナーゼ遺伝子(TK)であり、その発現は、標的細胞を薬剤ガンシクロビルの作用に感受性とする。さらなる実施形態では、自殺遺伝子は、カスパーゼ9自殺遺伝子である。
【0040】
ある実施形態では、マーカータンパク質をコードする遺伝子を、所望タンパク質を発現している細胞の同定を可能にするために、その主要遺伝子の前または後に配置する場合がある。ある実施形態は、蛍光マーカータンパク質(例、緑色蛍光タンパク(GFP)または赤色蛍光タンパク質(RFP))をコードする遺伝子を目的主要遺伝子とともに取り込む。もし、一又は複数の追加的レポーター遺伝子を含めるならば、IRES配列または2Aエレメントもまた含める場合がある。それらは、目的主要遺伝子をレポーター遺伝子および/または他の目的遺伝子から分離する。
【0041】
ある実施形態は、一又は複数の選択マーカーをコードする遺伝子を用いる場合がある。例には、真核細胞または原核細胞中で効果的な選択マーカー(例、選択培養培地中で増殖する形質転換した宿主細胞の生存または増殖に必要な因子をコードする薬剤耐性遺伝子)が含まれる。例示的選択遺伝子は、抗生物質または他の毒素に耐性を付与するタンパク質(例、G418、ハイグロマイシンB、ピュロマイシン、ゼオシン、ウアバイン、ブラストサイジン、アンピシリン、ネオマイシン、メトトレキサート、またはテトラサイクリン)、栄養要求性欠如を補充するタンパク質、または供給するタンパク質をコードし、別々のプラスミドに存在する場合があり、そして、ウイルスベクターとコトランスフェクションすることにより導入される場合もある。ある他の実施形態は、トランフェクションされた細胞にタグを付けたり、検出したり、または精製するために使用可能な細胞表面受容体(複数可)(例、低親和性神経成長因子受容体(LNGFR)または形質導入タグシステムとして有用な他のそのような受容体;例えば、Lauerら、Cancer Gene Ther.、2000年3月、7(3):430−7を参照されたい)をコードする遺伝子を用いる場合がある。
【0042】
あるウイルスベクター(例、レトロウイルスベクター)は、一又は複数の異種プロモーター、エンハンサー、またはその両者を採用する。ある実施形態では、レトロウイルス又はレンチウイルスの5’LTR由来のU3配列は、ウイルスコンストラクト中のプロモーター又はエンハンサー配列で置換可能である。ある実施形態は、ウイルスベクターの5’LTR配列と3’LTR配列との間に位置し、目的遺伝子に機能的に連結される「内部」プロモーター/エンハンサーを用いる。「機能的関係」および「機能的に連結」は、限定はされないが、プロモーターおよび/またはエンハンサーが適切な制御分子と接触した場合に、遺伝子発現が影響を受けるように、そのプロモーターおよび/またはエンハンサーに対して適切な位置と方向に遺伝子があることを意味する。パッケージング細胞株中でウイルスRNAゲノムの発現を制御(例、増加、減少)するか、感染標的細胞中で目的選択遺伝子の発現を制御するか、またはその両者である任意のエンハンサー/プロモーターの組み合わせが使用可能である。
【0043】
プロモーターは、RNAポリメラーゼの結合および転写が起こるのを可能にするDNA配列により形成される発現制御エレメントである。プロモーターは、目的選択遺伝子の開始コドンの上流(5’)(典型的には、約100〜1000bpの範囲内)に位置し、プロモーターが機能的に連結されるポリヌクレオチドコード配列の転写と翻訳を制御する非翻訳配列である。プロモーターは、誘導性または恒常活性化型であってもよい。誘導性プロモーターは、培養条件の何らかの変化(例、温度変化)に対応して、その制御下でDNAからの転写のレベルを増加開始させる。
【0044】
各種プロモーターが当該技術分野で公知であり、そのプロモーターをポリヌクレオチドコード配列に機能的に連結する方法も公知である。自然なプロモーター配列と多くの異種プロモーターの両者を使用して、目的選択遺伝子の発現を指揮する。ある実施形態が異種プロモーターを用いるのは、それらプロモーターが、一般的に、自然なプロモーターと比べて転写を増加させて、所望タンパク質の収量を高くできるからだ。
【0045】
ある実施形態は、異種ウイルスプロモーターを採用する場合がある。そのようなプロモーターの例には、ウイルス(例、ポリオーマウイルス、鶏痘ウイルス、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、トリ肉腫ウイルス、サイトメガロウイルス、レトロウイルス、B型肝炎ウイルス、およびシミアンウイルス40(SV40))のゲノムから得られるものが含まれる。ある実施形態は、異種哺乳類プロモーター(例、アクチンプロモーター、免疫グロブリンプロモーター、ヒートショックプロモーター、または目的遺伝子の自然な配列と結合するプロモーター)を用いる場合がある。典型的には、プロモーターは、標的細胞(例、静止状態のBリンパ球、活性化Bリンパ球、プラズマB細胞、メモリーB細胞、または他のリンパ球標的細胞)と適合する。
【0046】
ある実施形態は、一又は複数のRNAポリメラーゼIIおよびIIIプロモーターを用いる場合がある。RNAポリメラーゼIIIを適切に選択することが、例えば、PauleとWhite、Nucleic Acids Research、Vol.28、pp1283−1298、2000年(参照により完全に組み込まれるもの)に見出すことができる。RNAポリメラーゼIIおよびIIIプロモーターはまた、それぞれRNAポリメラーゼIIまたはIIIを指揮して、その下流のRNAコード配列を転写可能にする任意の合成または設計DNA断片を含む。さらに、ウイルスベクターの一部として使用されるRNAポリメラーゼIIまたはIII(POLII又はIII)プロモーター(複数可)は、誘導性である場合がある。任意の適切な誘導性PolIIまたはIIIプロモーターは、本明細書中に記載される方法と共に使用可能である。例示的PolIIまたはIIIプロモーターには、テトラサイクリン応答性プロモーター(OhkawaとTaira、Human Gene Therapy、Vol.11、pp577−585、2000年;およびMeissnerら、Nucleic Acids Research、Vol.29、pp1672−1682、2001年で提供されるもの;各々は参照により完全に組み込まれる)が含まれる。
【0047】
使用可能な恒常活性化型プロモーターの非限定的な例には、ユビキチンプロモーター、CMVプロモーター(例えば、Karasuyamaら、J.Exp.Med.、169:13、1989年を参照されたい)、β−アクチンプロモーター(例えば、Gunningら、PNAS USA、84:4831−4835、1987年を参照されたい)、およびpgkプロモーター(例えば、Adraら、Gene、60:65−74、1987年を参照されたい)が含まれる(Singer−Samら、Gene、32:409−417、1984年;およびDobsonら、Nucleic Acids Res.、10:2635−2637、1982年;各々は参照により組み込まれる)。組織特異的プロモーターの非限定的な例には、lckプロモーター(例えば、Garvinら、Mol.Cell Biol.、8:3058−3064、1988年;およびTakaderaら、Mol.Cell Biol.、9:2173−2180、1989年を参照されたい)、ミオゲニンプロモーター(Yeeら、Genes and Development、7:1277−1289、1993年)、thylプロモーター(例えば、Gundersenら、Gene、113:207−214、1992年を参照されたい)が含まれる。
【0048】
プロモーターの別の例には、ユビキチンCプロモーター、(Bリンパ球で機能的である)ヒトμ重鎖プロモーターまたはIg重鎖プロモーター(例、MH)、およびヒトκ軽鎖プロモーターまたはIg軽鎖プロモーター(例、EEK)が含まれる。MHプロモーターは、ヒトμ重鎖プロモーターであって、その前にはι、ε、μエンハンサーがマトリクス関連領域(matrix association region)が側に付いて配置されるものを含む。そして、EEKプロモーターは、κ軽鎖プロモーターであって、その前に、イントロン性エンハンサー(ι、ε、κ)、マトリクス関連領域、および3’エンハンサー(3’ε、κ)が配置されるものを含む(例えば、Luoら、Blood、113:1422−1431,2009年および米国特許出願公開番号第20100203630号を参照されたい)。従って、ある実施形態は、一又は複数のこれらのプロモーターまたはエンハンサーエレメントを採用する場合がある。
【0049】
上記した様に、ある実施形態は、エンハンサーエレメント(例、内部エンハンサー)を使用して、目的遺伝子の発現を増加させることができる。エンハンサーは、シスに作用するDNAエレメントで、通常、長さは約10〜300bpであり、プロモーターに作用して、プロモーターからの転写を増加させる。あるエンハンサー配列(例、ι、ε、μエンハンサー、ι、ε、κイントロン性エンハンサー、および3’ε、κエンハンサー)は、哺乳類遺伝子(例、グロビン、エラスターゼ、アルブミン、α−フェトプロテイン、インスリン)に由来する。また、真核生物ウイルス由来のエンハンサー(例、複製起点の後期側のSV40エンハンサー(bp100〜270)、サイトメガロウイルスの初期プロモーターエンハンサー、複製起点の後期側のポリオーマエンハンサー、およびアデノウイルスエンハンサーを含むもの)が含まれる。エンハンサーは、抗原特異的ポリヌクレオチド配列の5’または3’の位置にベクター中へ挿入されるが、好ましくは、プロモーターの5’サイトに位置する。当業者は、所望の発現パターンに基づいて適切なエンハンサーを選択する。
【0050】
ある実施形態では、プロモーターを、遺伝子の誘導性発現を可能にするために選択する場合がある。多数の誘導性発現システムが当該技術分野で公知となっていて、そのシステムには、テトラサイクリン応答システムおよびlacオペレーター・リプレッサーシステムが含まれる。また、目的遺伝子の所望の発現を得るために、プロモーターの組み合わせが使用可能であることも考慮される。当業者は、目的生物および/または目的標的細胞での遺伝子の所望の発現パターンに基づいて、プロモーターを選択することができる。
【0051】
あるウイルスベクターは、ウイルスRNAゲノムをウイルス粒子に取り込むことを促進する、シスに作用するパッケージング配列を含む。例には、psi配列が含まれる。そのようなシスに作用する配列は、当該技術分野で公知である。ある実施形態では、本明細書中に記載されるウイルスべクターは、二以上の遺伝子を発現する場合があり、それは、例えば、第一遺伝子を超えて各個別の遺伝子に機能的に連結される内部プロモーターを組み込んだり、共発現を促進するエレメント(例、内部リボソーム結合配列(IRES)エレメント)(米国特許番号第4,937,190号;参照により組み込まれる)、または、2Aエレメント、あるいは、その両者を組み込むことにより実現される。
ただ例示するやり方としてではあるが、単一のベクターが、所望の特異性を有する免疫グロブリン分子の各鎖をコードする配列を含む場合、IRESまたは2Aエレメントが使用可能である。例えば、第一コード領域(重鎖または軽鎖のいずれかをコードするもの)を、プロモーターの下流直下に配置してもよく、第二コード領域(他の鎖をコードするもの)を、第一コード領域の下流に位置するものであって、第一コード領域と第二コード領域との間にIRESまたは2Aエレメントを(好ましくは、第二コード領域の直前に)配置するようにしてもよい。他の実施形態では、IRESまたは2Aエレメントを使用して、非関連遺伝子(例、レポーター遺伝子、選択マーカー、または免疫機能を向上させる遺伝子)を共発現する。使用可能なIRES配列の例には、限定はされないが、脳せき髄炎ウイルス(EMCV)のIRESエレメント、口蹄疫ウイルス(FMDV)のIRESエレメント、タイラーマウス脳脊髄炎ウイルス(TMEV)のIRESエレメント、ヒトライノウイルス(HRV)のIRESエレメント、コクサッキーウイルス(CSV)のIRESエレメント、ポリオウイルス(POLIO)のIRESエレメント、A型肝炎ウイルス(HAV)のIRESエレメント、C型肝炎ウイルス(HCV)のIRESエレメント、およびペスチウイルス類(例、ブタコレラウイルス(HOCV)およびウシウイルス性下痢症ウイルス(BVDV))のIRESエレメントが含まれる(例えば、Leら、Virus Genes、12:135−147、1996年;およびLeら、Nuc.Acids Res.、25:362−369、1997年を参照されたい;各々は参照により完全に組み込まれる)。2Aエレメントの一つの例には、口蹄疫ウイルス由来のF2A配列が含まれる。
【0052】
ある実施形態では、本明細書中に提供されるウイルスベクターは、また、所望の結果を得るために、追加的な遺伝学的要素を含む場合がある。例えば、あるウイルスベクターは、標的細胞中でウイルスゲノムが核に侵入するのを促進するシグナル(例、HIV−1のフラップシグナル)を含む場合がある。さらなる例として、あるウイルスベクターは、標的細胞中でのプロウイルスの組み込み位置の特徴解析を容易にする要素(例、tRNAアンバーサプレッサー配列)を含む場合がある。あるウイルスベクターは、目的遺伝子の発現を向上させるように設計された一又は複数の遺伝学的要素を含む場合がある。例えば、ウッドチャック肝炎ウイルス応答エレメント(WRE)を、コンストラクト中に配置してもよい(例えば、Zuffereyら、J.Virol.、74:3668−3681、1999年;およびDeglonら、Hum.Gene Ther.、11:179−190、2000年を参照されたい;各々は参照により完全に組み込まれる)。別の例として、トリβ−グロビンインスレーターが、ウイルスコンストラクト中に含まれる場合もある。このエレメントは、メチル化とヘテロクロマチン化効果により、標的細胞中に組み込まれたプロウイルスをサイレンシングする確率を低下させることが示されている。また、インスレーターは、内部エンハンサー、プロモーター、および外部遺伝子を、染色体上の組み込み位置の周囲のDNAに由来する正または負の位置効果から守ることができる。ある実施形態は、これら遺伝学的要素の各々を採用する。別の実施形態では、本明細書中に提供されるウイルスベクターは、また、発現を増加させるために、遍在性クロマチンオープニングエレメント(UCOE)を含む場合がある(例えば、Zhang Fら、「Molecular Therapy」、The Journal of the American Society of Gene Therapy、2010年9月、18(9):1640-9を参照されたい)。
【0053】
ある実施形態では、本明細書中に提供されるウイルスベクター(例、レトロウイルス、レンチウイルスのもの)は、選択細胞型を主として標的とするために、一又は複数の選択ウイルス糖タンパク質またはエンベロープタンパク質で「偽型」される。「偽型」とは、一般的に、一又は複数の異種ウイルス糖タンパク質を細胞表面のウイルス粒子上に取り込むことを指し、しばしば、ウイルス粒子がその通常の標的細胞と異なる選択細胞に感染することを可能にする。「異種」エレメントは、ウイルスベクターのRNAゲノムが由来するウイルス以外のウイルスに由来する。典型的には、ウイルスベクターの糖タンパク質コード領域は、例えば、欠失により遺伝学的に改変されて、その自身の糖タンパク質の発現を妨げる。単に例示のやり方としてではあるが、HIVに由来するレンチウイルスベクターのエンベロープ糖タンパク質であるgp41および/またはgp120は、典型的には、異種ウイルス糖タンパク質で偽型される前に欠失される。
【0054】
ある実施形態では、ウイルスベクターは、Bリンパ球を標的とする異種ウイルス糖タンパク質で偽型される。ある実施形態では、ウイルス糖タンパク質は、休止または静止状態のBリンパ球に選択的に感染するか、または、それに形質導入することを可能にする。ある実施形態では、ウイルス糖タンパク質は、Bリンパ球プラズマ細胞、プラズマ芽球、および活性化B細胞に選択的に感染することを可能にする。ある実施形態では、ウイルス糖タンパク質は、静止状態のBリンパ球、プラズマ芽球、プラズマ細胞、および活性化B細胞への感染または形質導入を可能にする。ある実施形態では、ウイルス糖タンパク質は、B細胞である慢性リンパ性白血病細胞への感染を可能にする。一つの実施形態では、ウイルスベクターは、VSV−Gで偽型される。別の実施形態では、異種ウイルス糖タンパク質は、麻疹ウイルス(例、エドモントン麻疹ウイルス)の糖タンパク質に由来する。ある実施形態は、麻疹ウイルス糖タンパク質である、ヘマグルチニン(H)、融合タンパク質(F)、またはその両者で偽型する(Frechaら、Blood、112:4843−52、2008年;およびFrechaら、Blood、114:3173−80、2009年を参照されたい;各々は参照により完全に組み込まれる)。一つの実施形態では、ウイルスベクターは、テナガザル白血病ウイルス(GALV)で偽型される。さらなる実施形態では、ウイルスベクターは、ベクターを特定の細胞型へと標的化する機能を持つ抗体結合ドメイン(例、一又は複数の可変領域(例、重鎖および軽鎖可変領域))をコードするものが埋め込まれている。
【0055】
ウイルスベクターの作製は、当該技術分野で既知の任意の適切な遺伝工学技術を使用して実現可能である。その技術には、限定はされないが、標準的技術のエンドヌクレアーゼ制限酵素分解、ライゲーション、形質転換、プラスミド精製、PCR増幅、およびDNA配列決定法が含まれる(例えば、Sambrookらのもの(「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、N.Y.(1989年))、Coffinらのもの(「Retroviruses」、Cold Spring Harbor Laboratory Press、N.Y.(1997年))、および「RNA Viruses:A Practical Approach」(Alan J.Cann編、Oxford University Press、(2000年))に記載される)。
【0056】
当該技術分野で既知の任意の各種方法を使用して、ゲノムがウイルスベクターのRNAコピーを含むような、適切なレトロウイルス粒子を生産することができる。一つの方法として、ウイルスベクターに基づくウイルスゲノムRNAを、所望の標的細胞特異性を有するウイルス粒子中にパッケージするパッケージング細胞株へと、そのウイルスベクターを導入する場合がある。パッケージング細胞株は、典型的には、ウイルスゲノムRNAをウイルス粒子にパッケージングし、標的細胞に感染させるために必要とされるウイルスタンパク質(構造タンパク質gag、酵素タンパク質pol、およびエンベロープ糖タンパク質を含むもの)をトランスに提供する。
【0057】
ある実施形態では、パッケージング細胞株は、必須または所望のウイルスタンパク質(例、gag、pol)のあるものを安定的に発現する場合がある(例えば、米国特許番号第6,218,181号を参照されたい;参照により本明細書中に組み込まれる)。ある実施形態では、パッケージング細胞株は、必須または所望のウイルスタンパク質(例、gag、pol、糖タンパク質)(本明細書中に記載される麻疹ウイルス糖タンパク配列を含むもの)のあるものをコードするプラスミドで一過性にトランスフェクションされる場合がある。一つの例示的実施形態では、パッケージング細胞株は、gagおよびpol配列を安定的に発現する。その後、その細胞株に、ウイルスベクターをコードするプラスミドと糖タンパク質をコードするプラスミドとをトランスフェクションする。所望プラスミドの導入後、例えば、超遠心分離法によりウイルス粒子を回収および順次処理し、ウイルス粒子の濃縮ストックを得る。例示的パッケージング細胞株には、293細胞株(ATCC CCL X)、HeLa細胞株(ATCC CCL 2)、D17細胞株(ATCC CCL 183)、MDCK細胞株(ATCC CCL 34)、BHK細胞株(ATCC CCL−10)、およびCf2Th細胞株(ATCC CRL 1430)が含まれる。
【0058】
目的遺伝子/核酸
本明細書中で使用される「目的遺伝子」、「遺伝子」、または「目的核酸」は、標的形質導入細胞中で発現される目的タンパク質をコードする目的核酸を指す。用語「遺伝子」を使用する場合があるが、この用語は、ゲノムDNAに見られる遺伝子であることを意味せず、用語「核酸」と相互に交換して使用される。一般的に、目的核酸は、目的タンパク質をコードする適した核酸を提供し、cDNAまたはDNAを含む場合があり、そして、イントロンを含んでもよいし、含まなくてもよいが、一般的には、イントロンを含まない。どこかで記載されるように、目的核酸は、発現制御配列に機能的に連結されて、効果的に、標的細胞で目的タンパク質を発現する。ある実施形態では、本明細書中に記載されるベクターは、二以上の目的遺伝子を含む場合があり、2個、3個、または4個の目的遺伝子(例、免疫グロブリンの重鎖および軽鎖)であって、本明細書中に記載される内部プロモーターを使用して編成される場合があるものを含んでもよい。
【0059】
本明細書中で使用される記載「ポリヌクレオチド」または「核酸」は、mRNA、RNA、cRNA、cDNA、またはDNAを示す。その用語は、典型的には、リボヌクレオチドもしくはデオキシヌクレオチドまたはヌクレオチドのいずれかの型の改変された形のものであって、少なくとも10塩基長のヌクレオチドの重合体フォームを指す。その用語は、DNAおよびRNAの一本鎖および二本鎖の形を含む。目的核酸または目的遺伝子は、目的タンパク質をコードする任意の核酸であってもよい。本明細書中に記載される使用のための目的タンパク質は、所望の活性を提供する任意のタンパク質を含む。この点では、目的タンパク質には、限定はされないが、抗体もしくはその抗原結合断片、細胞表面受容体、サイトカインの様な分泌タンパク質(例、リンホカイン、インターロイキン、インターフェロン、またはケモカイン)、DNAによりコードされる小分子(例えば、Nature Chemical Biology、5、647−654(2009年)を参照されたい)、または接着分子が含まれる。一つの実施形態では、核酸は、抗体またはその抗原結合断片をコードする。例示的抗原結合断片には、ドメイン抗体、sFv、scFv、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvが含まれる。一つの実施形態では、核酸によりコードされる抗体は、HIV中和抗体b12の少なくとも抗原結合ドメインを含む(例えば、J.Virol、2003年、77:5863−5876;J.Virol.、1994年8月、68(8):4821−8;Proc Natl Acad Sci USA.、1992年、89:9339−9343を参照されたい;例示的配列が、GenBankアクセション番号(AAB26306.1 Gl 299737)(b12の軽鎖)および(AAB26315.1 Gl 299746)(重鎖)で提供される)。さらなる実施形態では、目的核酸によりコードされる抗体は、フゼオン(商標)(T−20/エンフビルチド/ペンタフシド(pentafuside)/DP−178)を含む。DP−178は、HIVのgp41由来のアミノ酸配列であり、HIVがその標的細胞と融合する能力と干渉する。フゼオンは、当業者に既知の方法を使用して合成的に作製可能である(例えば、2001年のJ.Virol.、75:3038−3042を参照されたい;この論文中に記載された方法が、DP−178ペプチドの治療的用量の分泌を生じることはありそうではないことに注意されたい)。
【0060】
一つの特定の実施形態では、目的核酸は、免疫学的に活性のあるタンパク質をコードする。ある実施形態では、目的核酸は、B細胞、T細胞、または他の免疫細胞の表面上にタンパク質を提示することを介して免疫ワクチン様反応を誘導するタンパク質または生物学的に活性のあるその断片をコードする。ある実施形態では、目的タンパク質は、B細胞の制御(例、限定はされないが、細胞分裂の促進、様々なB細胞系列への分化促進、細胞の不活性化もしくは細胞を死滅させること)に影響を与えるか、または、他の導入DNAエレメントの生産もしくは活性を制御する。インターロイキンは当業者に知られていて、現在までに、その例には、IL−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−5、IL−6、IL−7、IL−8、IL−9、IL−10、IL−11、IL−12、IL−13、IL−14、IL−15、IL−16、IL−17、IL−18、IL−19、IL−20、IL−21、IL−22、IL−23、IL−24、IL−25、IL−26、IL−27、IL−27の分泌型p28サブユニット、IL−28、IL−29、IL−30、IL−31、IL−32、IL−33、IL−34、およびIL−35が含まれる。インターフェロンには、IFN−γ、IFN−α、IFN−β、およびIFN−ωが含まれる。本明細書中の使用に考慮されるケモカインには、C型ケモカイン(XCL1およびXCL2)、C−C型ケモカイン(現在までに、CCL1〜CCL28を含む)、およびCXC型ケモカイン(現在までに、CXCL1〜CXCL17を含む)が含まれる。目的遺伝子として考慮されるものには、また、TNFスーパーファミリーのメンバー(例、TNF−α、4−1 BBリガンド、B細胞活性化因子、FASリガンド、リンホトキシン、OX40L、RANKL、およびTRAIL)がある。
【0061】
ある実施形態では、目的タンパク質は、免疫寛容を誘導する。この点では、目的タンパク質は、IgG−抗原融合タンパク質(例えば、Cellular Immunology、235(1)、2005年、12−20を参照されたい)を含む場合がある。
【0062】
さらなる実施形態では、目的遺伝子(複数可)は、抗体分泌細胞へのB細胞の分化を促進する一又は複数の因子および/または抗体生産細胞の寿命を伸ばす一又は複数の因子をコードする。そのような因子には、例えば、Blimp−1、TRF4、Bcl−xlもしくはBcl5のような抗アポトーシス因子、CD40受容体の恒常活性化型変異体が含まれる。さらに、目的遺伝子は、下流のシグナル分子(例、TNF受容体関連因子(TRAF))の発現を促進する因子をコードする。この点では、TNF受容体スーパーファミリーの細胞活性化機能、細胞維持機能、および抗アポトーシス機能は、ほとんどTRAF1〜6により媒介される(例えば、R.H.Archら、Genes Dev.、12(1998)、pp.2821−2830を参照されたい)。TRAF情報伝達の下流エフェクターには、各種観点の細胞機能および免疫機能に関わる遺伝子をオン状態にすることができる、NF−κBおよびAP−1ファミリーの転写因子が含まれる。さらに、NF−κBおよびAP−1の活性化は、抗アポトーシス遺伝子の転写を介して、細胞にアポトーシスからの防御を提供することが示されている。
【0063】
別の実施形態では、目的核酸(複数可)は、一又は複数のエプスタイン・バーウイルス(EBV)由来タンパク質をコードする。EBV由来のタンパク質には、限定はされないが、EBNA−1、EBNA−2、EBNA−3、LMP−1、LMP−2、EBER、EBV−EA、EBV−MA、EBV−VCA、およびEBV−ANが含まれる。一つの特定の実施形態では、目的核酸は、抗体またはその抗原結合断片をコードする。この点では、抗体は、自然な抗体またはカスタム化された組換え工学による抗体である場合がある。融合タンパク質は、抗体またはその部分を含み、本明細書中に記載されるベクターによりコードされることが具体的に考慮される。
【0064】
一つの実施形態では、本開示に係る抗体またはその断片は、抗HIV抗体(例、m36抗HIV抗体)(例えば、Proc Natl Acad Sci USA.、2008年11月4日、105(44):17121−6を参照されたい)のアミノ酸配列または抗HIV抗体(例、m36)のアミノ酸配列と少なくとも60%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%もしくは99%の配列同一性を有するアミノ酸分子を有する。特に、m36を含む融合タンパク質またはその誘導体(例、m36L2CD4Fc)が、具体的に考慮される(例えば、Antiviral Research、Volume 88、Issue 1、2010年10月、107−115ページを参照されたい)。
【0065】
さらなる実施形態では、本開示のトランスジーンによりコードされる抗体は、自己抗原に結合する。ある実施形態では、この点に関する自己抗原は、多発性硬化症またはI型糖尿病の発生と関連し、その例には、限定はされないが、MBP、αB−クリスタリン、S100β、プロテオリピドタンパク質(PLP)、HSP105、水疱性類天疱瘡(BP)抗原1の表皮型アイソフォーム(BPAG1−e)、脂質、ならびにミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)−αおよびMOG−βアイソフォーム、あるいは、任意の各種膵島細胞自己抗原(例、シアロ糖脂質、グルタミン酸デカルボキシラーゼ、インスリン、インスリン受容体、38kDタンパク質、ウシ血清アルブミン、グルコース輸送体、hsp65、カルボキシペプチダーゼH、52kDタンパク質、ICA12/ICA512、150kDタンパク質、およびRINポーラー(polar))が含まれる。これらの自己抗原に対する抗体は、当該技術分野で公知であり、配列決定されている場合があり、普段使われる技術を使用して組換え的に作製可能である(例えば、J.Clin.Invest.、107(5):555−564(2001年)を参照されたい)。
【0066】
さらなる実施形態では、抗体は、がん関連抗原に結合する。がん関連抗原は、各種腫瘍タンパク質に由来する場合がある。本開示に有用な例示的な腫瘍タンパク質には、限定はされないが、p53、MAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、MAGE−A6、MAGE−A10、MAGE−A12、BAGE、DAM−6、−10、GAGE−1、−2、−8、GAGE−3、−4、−5、−6、−7B、NA88−A、NY−ESO−1、MART−1、MC1 R、Gp100、PSA、PSM、チロシナーゼ、TRP−1、TRP−2、ART−4、CAMEL、CEA、Cyp−B、Her2/neu(例、抗体はHer2特異的mAbであるハーセプチン(R)由来である場合がある)、hTERT、hTRT、iCE、MUC1、MUC2、PRAME、P15、RU1、RU2、SART−1、SART−3、WT1、AFP、β−カテニン/m、カスパーゼ−8/m、CEA、CDK−4/m、ELF2M、GnT−V、G250、HSP70−2M、HST−2、KIAA0205、MUM−1、MUM−2、MUM−3、ミオシン/m、RAGE、SART−2、TRP−2/INT2、707−AP、アネキシンII、CDC27/m、TPI/mbcr−abl、ETV6/AML、LDLR/FUT、Pml/RARa、およびTEL/AML1の任意の一又は複数のものが含まれる。これら及び他の腫瘍タンパク質は、当業者に公知である。
【0067】
さらなる実施形態では、目的核酸は、特定の機能的属性(例、限定はされないが、阻害活性、がん細胞に細胞死を誘導する能力、またはがん細胞増殖を減速もしくは阻害する能力)を有するペプチドまたは他の結合ドメインをコードする。この点について、一つの実施形態では、目的核酸によりコードされるペプチドまたは結合ドメインは、本明細書中に記載される任意の標的タンパク質(例、上記がん関連抗原、CD4、HIVのgp120もしくは他のウイルスタンパク質、ICAM−3、DC−SIGN(例えば、米国特許番号第7,301,010号を参照されたい))に結合する場合がある。ある実施形態では、ペプチドは、病原性および非病原性細菌と緑色植物に由来する場合がある。例示的ペプチドが、米国特許番号第7084105号、7301010号、7338766号、7381701号、7491394号、7511117号、7556810号に開示されている。一つの実施形態では、目的核酸は、アズリン−p28(NSC745104)(p53ユビキチン化のペプチド阻害剤)をコードする(例えば、Cancer Chemother Pharmacol、2010年、DOI 10.1007/S00280−010−1518−3;米国特許番号第7,084,105号を参照されたい)。さらなる実施形態では、目的核酸は、食欲を惹起し、がん患者の治療に使用可能なグレリンとして知られる因子をコードする(例えば、Obes Facts.、2010年、3:285−92;FASEB J.、18(3):439−56を参照されたい)。別の実施形態では、目的核酸は、アンジオポエチン1および2に結合および阻害する結合ペプチド(例、AMG386(がん治療に使用される抗体のFc断片(ペプチボディー(peptibody)))をコードする。ある実施形態では、腫瘍抗原は、がんを有する個人から直接同定可能である。この点については、スクリーニングを、各種既存技術を使用して実施する場合がある。例えば、一つの実施形態では、腫瘍生検サンプルを患者から取得し、RNAを腫瘍細胞から単離し、および、ジーンチップ(例えば、Affymetrix製、Santa Clara、CA)を使用してスクリーニングし、そして、腫瘍抗原を同定する。一旦、腫瘍標的抗原が同定されると、その後、クローニングされ、そして、当該技術分野で既知の手法を使用して精製される。
【0068】
一つの実施形態では、目的核酸は、ムコ多糖症I型(MPS Iまたはハーラー症候群)の治療または予防用のイズロニダーゼ(IDUA)をコードする。別の実施形態では、目的核酸は、血友病の治療または予防用の第VII因子をコードする。一つの実施形態では、目的核酸は、例えば、レシチンコレステロールアシル転移酵素(LCAT)欠損症およびアテローム性動脈硬化の治療と予防に有用なレシチンコレステロールアシル転移酵素(LCAT)をコードする。別の実施形態では、目的核酸は、心血管疾患および障害(例、アテローム性動脈硬化)の治療または予防用のアポリポプロテインA−1ミラノ(ApoA−1 Milano)をコードする。一つの実施形態では、目的核酸は、リポタンパク質リパーゼ(LPL)欠損症の治療または予防用のリポタンパク質リパーゼ(LPL)をコードする。別の実施形態では、目的核酸は、広い範囲の中和抗体(bNAb)または複数のHIV−1株に結合し中和するその融合タンパク質(例、b12)をコードする。さらに別の実施形態では、目的核酸は、フェニルケトン尿症(phenyketonuria)(PKU)の治療または予防用のフェニルアラニンヒドロキシラーゼをコードする。
【0069】
本明細書中で使用される「抗体」は、ポリクローナル抗体とモノクローナル抗体の両者を含み;霊長類化抗体(例、ヒト化抗体)、マウス抗体、マウス−ヒト抗体、マウス−霊長類抗体、およびキメラ抗体を含み;インタクトな分子、その断片(例、scFv、Fv、Fd、Fab、Fab’および、F(ab)’2断片)、あるいは、インタクトな分子や断片の多量体または集合体である場合があり;自然に存在するか、または、例えば、免疫、合成、遺伝子工学により製造される場合もある。本明細書中で使用される「抗体断片」は、抗体由来または抗体に関連する断片であって、抗原に結合し、そして、いくつかの実施形態では、誘導体化されて、例えば、ガラクトース残基を取り込むことによってクリアランスと取り込みを促進する構造的特徴を示す場合がある。抗体断片には、例えば、F(ab)、F(ab)’
2、scFv、軽鎖可変領域(VL)、重鎖可変領域(VH)、およびその組み合わせが含まれる。供給源には、様々な種に由来する抗体(抗体、sFv、scFv、またはFab(例、ファージライブラリー中のもの)の形式をとる場合もある)遺伝子配列が含まれている。その中には、ヒト、ラクダ類(ラクダ、ヒトコブラクダ、ラマ;Hamers−Castermanら、(1993年)、Nature、363:446およびNguyenら、(1998年)、J.Mol.Biol.、275:413)、サメ(Rouxら、(1998年)、Proc.Nat’l.Acad.Sci.(USA)95:11804)、魚(Nguyenら、(2002年)Immunogenetics、54:39)、齧歯類、鳥類、ヒツジの配列、ランダムペプチドライブラリーをコードする配列、あるいは、代替的非抗体スキャフォールド(例、フィブリノーゲンドメイン(例えば、Weiselら(1985年)Science、230:1388を参照されたい)、クニッツ(Kunitz)ドメイン(例えば、米国特許番号第6,423,498号を参照されたい)、リポカリンドメイン(例えば、WO2006/095164を参照されたい)、V様ドメイン(例えば、米国特許出願公開番号第2007/0065431号を参照されたい)、C型レクチンドメイン(ZelenskyとGready(2005年)FEBS J.272:6179)、mAb<2>またはFcab(TM)(例えば、PCT特許出願公開WO2007/098934;WO2006/072620を参照されたい)等)のループ領域中で工学的に多様化されたアミノ酸をコードする配列が含まれる。
【0070】
抗体技術を指して当業者に理解される用語は、本明細書中に明らかに定義されていない場合は、各々、当該技術分野で得られる意味を持つ。例えば、用語「VL」および「VH」は、それぞれ、抗体軽鎖および重鎖由来の可変結合領域を指す。可変結合領域は、「相補性決定領域」(CDR)および「フレームワーク領域」(FR)として知られる別個の詳細に定義されたサブ領域から構成される。用語「O.」および「CH」は、「免疫グロブリン定常領域」、すなわち、それぞれ抗体軽鎖または重鎖由来の定常領域を指す。後者の領域は、さらに、その領域が由来する抗体アイソタイプ(IgA、IgD、IgE、IgG、IgM)に依存して、Cm、CH2、CH3、およびCH4定常領域ドメインに分類可能であることが理解される。定常領域ドメインの一部は、Fc領域(「断片結晶化可能」領域)をなす。Fc領域は、免疫グロブリンのエフェクター機能(例、ADCC(抗体依存性細胞障害活性)、CDC(補体依存性細胞傷害作用)、ならびに補体結合反応、Fc受容体への結合、Fc領域を欠くポリペプチドに比べてより長いインビボ半減期、プロテインA結合、および、おそらく経胎盤伝達さえも含むもの)を担当するドメインを含む(Caponら、(1989年)、Nature、337:525を参照されたい)。さらに、Fc領域を含むポリペプチドは、そのポリペプチドの二量体化または多量体化が可能である。
【0071】
免疫グロブリンのドメイン構造は、設計改変することができて、抗原結合ドメインおよびエフェクター機能を付与するドメインを、免疫グロブリンのクラス間およびサブクラス間で交換することが可能である。免疫グロブリンの構造と機能は、例えば、Harlowら編、「Antibodies:A Laboratory Manual」、第14章(Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、1988年)に概説されている。組換え抗体技術のあらゆる観点に関する広範囲にわたる導入部とともに詳細な情報が、教科書「Recombinant Antibodies」(John Wiley&Sons、NY、1999年)に見出すことができる。詳細な抗体工学ラボプロトコルの包括的コレクションが、R.KontermannとS.Dubel編、「The Antibody Engineering Lab Manual」(Springer Verlag、Heidelberg/New York、2000年)に見出すことができる。さらに関連するプロトコルが、また、「Current Protocols in Immunology」(2009年8月)(出版はJohn Wiley&Sons,Inc.、Boston、MA)から入手可能である。酵素(例、IDUA)およびタンパク質生産工学方法は、当該技術分野で公知であり、本明細書中での使用に考慮される。
【0072】
従って、本開示は、遺伝学的にB細胞を改変するために、本開示の目的タンパク質をコードするポリヌクレオチド(単離ポリヌクレオチド、精製ポリヌクレオチド、または純粋なポリヌクレオチド)、そのようなポリヌクレオチドを含むベクター(クローニングベクターおよび発現ベクターを含むもの)、および本開示に係るポリヌクレオチドまたはベクターで形質転換またはトランスフェクションした細胞(例、宿主細胞)を提供する。ある実施形態では、本開示の目的タンパク質をコードするポリヌクレオチド(DNAまたはRNA)が考慮される。目的タンパク質をコードする発現カセットも、また、本明細書中で考慮される。
【0073】
本開示はまた、本開示のポリヌクレオチドを含むベクターに関し、特に、組換え発現コンストラクトに関する。一つの実施形態では、本開示は、本開示のタンパク質をコードするポリヌクレオチドを、そのようなタンパク質をコードする配列の転写、翻訳、およびプロセシングを引き起こすか又は助長する他のポリヌクレオチド配列とともに含むベクターを考慮する。原核生物および真核生物宿主と共に使用する適切なクローニングおよび発現ベクターは、例えば、Sambrookら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、第二版、Cold Spring Harbor、NY、(1989年)に記載されている。例示的なクローニング/発現ベクターには、中に含まれるポリヌクレオチドの増幅、移行、および/または発現に適する、当該技術分野で公知のプラスミド、ファジミド、ファスミド、コスミド、ウイルス、人工染色体、または任意の核酸ビヒクルに基づく場合があるクローニングベクター、シャトルベクター、および発現コンストラクトが含まれる。
【0074】
ウイルスベクターについてそうでないと記載されない限り、本明細書中で使用する「ベクター」は、それが連結される別の核酸を輸送することができる核酸分子を意味する。例示的ベクターには、プラスミド、酵母人工染色体、およびウイルスゲノムが含まれる。あるベクターは宿主細胞で自律的に複製することができるが、他のベクターは宿主細胞ゲノムに組み込まれて、従って、宿主ゲノムと共に複製される場合がある。また、あるベクターは、本明細書中では、「組換え発現ベクター」(または、単に、「発現ベクター」)として呼ばれるものであって、発現制御配列に機能的に連結される核酸配列を含み、従って、それらの配列発現を指揮することができるものを指す。ある実施形態では、発現コンストラクトは、プラスミドベクターに由来する。例示的コンストラクトには、改変pNASSベクター(Clontech、Palo Alto、CA)(アンピシリン耐性遺伝子、ポリアデニル化シグナル、およびT7プロモーター部位をコードする核酸配列を有するもの);pDEF38およびpNEF38(CMC ICOS Biologies,Inc.)(CHEF1プロモーターを有するもの);およびpD18(Lonza)(CMVプロモーターを有するもの)が含まれる。他の適切な哺乳類発現ベクターが周知である(例えば、Ausubelら、1995年;Sambrookら、上記を参照されたい;また、例えば、Invitrogenカタログ、San Diego、CA;Novagenカタログ、Madison、Wl;Pharmaciaカタログ、Piscataway、NJを参照されたい)。融合タンパク質の生産レベルの上昇(そのレベルは、適切な選択剤(例、メトトレキサート)の添加後に起こる遺伝子増幅の結果生じる)を促進するための、適切な規制的制御下にあるジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR)コード配列を含む有用なコンストラクトが作製可能である。
【0075】
一般的に、組換え発現ベクターは、上記した様に、複製開始点、宿主細胞の形質転換を可能にする選択マーカー、および、下流の構造配列の転写を指揮するための高発現遺伝子由来プロモーターを含んでいる。本開示に係るポリヌクレオチドが機能的に連結されているベクターから、クローニングまたは発現コンストラクトが作製される。例示的なクローニング/発現コンストラクトは、本開示のポリヌクレオチドに機能的に連結される少なくとも一つの発現制御エレメント(例、プロモーター)を含む。別の発現制御エレメント(例、エンハンサー、因子特異的結合部位、ターミネーター、およびリボソーム結合部位)は、本開示に係るベクターおよびクローニング/発現コンストラクトの中でも考慮される。本開示に係るポリヌクレオチドの異種構造配列を、翻訳開始および停止配列を用いて適切な相中で組み立てる。従って、例えば、本明細書中に提供されるコード核酸は、宿主細胞でそのようなタンパク質を発現する組換え発現コンストラクトとして、任意の一つの各種発現ベクターコンストラクト中に含有可能である。
【0076】
適切なDNA配列(複数可)を、例えば、各種方法により、ベクターに挿入する場合がある。一般的に、DNA配列を、当該技術分野で既知の方法により、適切な制限酵素切断部位(複数可)に挿入する。クローニング、DNA単離、増幅および精製用の標準的技術、DNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ、および制限酵素等用の標準的技術、ならびに様々な分離技術が考慮される。多数の標準的技術の記載が、例えば、Ausubelら(「Current Protocols in MolecularBiology」、Greene Publ.Assoc.Inc.とJohn Wiley&Sons,Inc.、Boston、MA,1993年);Sambrookら(「Molecular Cloning」、第二版、Cold Spring Harbor Laboratory、Plainview、NY、1989年);Maniatisら(「Molecular Cloning」、Cold Spring Harbor Laboratory、Plainview、NY、1982年);Glover(編)(「DNA Cloning」Vol.IおよびII、IRL Press、Oxford、UK、1985年);HamesとHiggins(編)(「Nucleic Acid Hybridization」、IRL Press、Oxford、UK、1985年);等にある。
【0077】
発現ベクター中のDNA配列を、少なくとも一つの適切な発現制御配列(例、恒常活性化型プロモーターまたは制御プロモーター)に機能的に連結して、mRNA合成を指揮する。そのような発現制御配列の例示的な例には、上記した、真核細胞またはそのウイルスのプロモーターが含まれる。プロモーター領域を、CAT(クロラムフェニコール転移酵素)ベクターまたは選択マーカーを有する他のベクターを使用して、任意の所望の遺伝子から選択してもよい。真核生物プロモーターには、CMV即時初期プロモーター、HSVチミジンキナーゼプロモーター、初期および後期SV40プロモーター、レトロウイルス由来のLTR、およびマウスメタロチオネイン−1プロモーターが含まれる。適切なベクターおよびプロモーターの選択は、当該技術分野の通常の技術水準範囲内に十分ある。そして、本開示に係るタンパク質またはポリペプチドをコードする核酸に機能的に連結される少なくとも一つのプロモーターまたは制御プロモーターを含む特に好ましい組換え発現コンストラクトの調製は、本明細書中に記載されている。
【0078】
本開示のポリヌクレオチドの変異体も考慮する。変異体ポリヌクレオチドは、本明細書中に記載される定義配列のポリヌクレオチドの一つ、または、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件(0.015Mの塩化ナトリウム、0.0015Mのクエン酸ナトリウム(約65〜68℃)または0.015Mの塩化ナトリウム、0.0015Mのクエン酸ナトリウムおよび50%のホルムアミド(約42℃))下で、定義配列のポリヌクレオチドの一つとハイブリダイズするポリヌクレオチドの一つと、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、そして、好ましくは95%、96%、97%、98%、99%、または99.9%同一である。ポリヌクレオチド変異体は、本明細書中に記載される機能性を有する結合ドメインまたはその融合タンパク質をコードする能力を保持している。
【0079】
用語「ストリンジェント」は、ストリンジェントだと当該技術分野で共通に理解される条件を指して使用される。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーは、温度、イオン強度、および変性剤(例、ホルムアミド)の濃度により、原理的に決定される。ハイブリダイゼーションと洗浄のストリンジェントな条件の例は、0.015Mの塩化ナトリウム、0.0015Mのクエン酸ナトリウム(約65〜68℃)または0.015Mの塩化ナトリウム、0.0015Mのクエン酸ナトリウム、および50%のホルムアミド(約42℃)である(Sambrookら、「Molecular Cloning:ALaboratory Manual」、第二版、Cold Spring Harbor Laboratory、Cold Spring Harbor、N.Y.、1989年を参照されたい)。よりストリンジェントな条件(例、より高温、より低イオン強度、より高濃度のホルムアミド、または他の変性剤)も使用可能である。しかしながら、ハイブリダイゼーションの効率が影響を受けることになる。デオキシオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションに関する例では、さらに別の例示的ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件には、6×SSC、0.05%のピロリン酸ナトリウム中の洗浄(14ベースのオリゴヌクレオチド用には37℃、17ベースのオリゴヌクレオチド用には48℃、20ベースのオリゴヌクレオチド用には55℃、および23ベースのオリゴヌクレオチド用には60℃)が含まれる。
【0080】
本開示のさらなる観点は、本開示の任意のポリヌクレオチドまたはベクター/発現コンストラクトで形質転換またはトランスフェクションした、或いはそうでなければそれを含む宿主細胞を提供する。本開示のポリヌクレオチドまたはクローニング/発現コンストラクトを、当該技術分野で既知の任意の方法(形質転換、トランスフェクション、および形質導入を含むもの)を使用して、適切な細胞へ導入する。宿主細胞には、体外細胞療法(例、体外遺伝子治療を含むもの)を受ける被験体の細胞が含まれる。真核生物宿主細胞が本開示に係るポリヌクレオチド、ベクター、またはタンパク質を保持している場合に、本開示の観点として考慮される真核生物宿主細胞には、被験体自身の細胞(例、ヒト患者自身の細胞)に加えて、VERO細胞、HeLa細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞株(発現される多価結合分子の糖鎖付加パターンを改変することのできる改変型CHO細胞を含む;米国特許出願公開番号第2003/0115614号を参照されたい)、COS細胞(例、COS−7)、W138、BHK、HepG2、3T3、RIN、MDCK、A549、PC12、K562、HEK293細胞、HepG2細胞、N細胞、3T3細胞、スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞(例、Sf9細胞)、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)細胞、ならびに、本開示に係るタンパク質またはペプチドを発現および、任意ではあるが、単離するのに有用な、当該技術分野で既知の任意の他の真核細胞が含まれる。原核細胞(大腸菌(Escherichia coli)、枯草菌(Bacillus subtilis)、サルモネラ・チフィリウム(Salmonella typhimurium)、ストレプトミセス菌(Streptomycete)、または、本開示に係るタンパク質またはペプチドを発現および、任意ではあるが、単離するのに適切な、当該技術分野で既知の任意の原核細胞を含むもの)も、また、考慮される。原核細胞からタンパク質またはペプチドを単離する場合、特に、封入体からタンパク質を抽出するための、当該技術分野で既知の技術を使用する場合があることも考慮される。適切な宿主の選択は、本明細書中の教義から、当業者の実施範囲内にある。本開示の融合タンパク質に糖鎖付加する宿主細胞も考慮する。
【0081】
用語「組換え宿主細胞」(または、単に、「宿主細胞」)は、組換え発現ベクターを含む細胞を指す。そのような用語が、特定の対象細胞だけでなく、そのような細胞の子孫を指すように意図されることは、理解されるべきである。突然変異かまたは環境的影響のせいで後世にある特定の改変が生じる可能性があるため、そのような子孫は、実際に、親細胞と同一ではない可能性があるが、本明細書に用いられる場合の「宿主細胞」という用語の範囲内になお含まれる。組換え宿主細胞は、プロモーターを活性化し、形質転換体を選択し、または、特定遺伝子を増幅するのに適するように改変された従来の栄養培地中で培養可能である。発現に関して選抜された特定の宿主細胞のための培養条件(例、温度、pH等)は、当業者には明白である。各種哺乳類細胞培養システムを用いて、組換えタンパク質を発現することもできる。哺乳類発現システムの例には、サル腎臓繊維芽細胞であるCOS−7株(Gluzman(1981年)、Cell、23:175に記載されるもの)および適合するベクターを発現可能な他の細胞株(C127、3T3、CHO、HeLa、およびBHK細胞株)が含まれる。哺乳類発現ベクターは、複製開始点、適切なプロモーター、ならびに任意ではあるが、エンハンサー、また、任意の必須リボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライシングドナーとアクセプター部位、転写終結配列、および、例えば、多価結合タンパク質発現コンストラクトの調製に関して本明細書中に記載される、5’側に隣接する非転写配列を含む。SV40のスプライシング部位およびポリアデニル化部位由来のDNA配列を使用して、必要な非転写遺伝子エレメントを提供することができる。宿主細胞へのコンストラクトの導入は、当業者が使い慣れた各種方法(リン酸カルシウムトランスフェクション、DEAE−デキストラン媒介トランスフェクション、またはエレクトロポレーション(Davisら(1986年)「Basic Methods in Molecular Biology」)を含むもの)により、実効化可能である。
【0082】
組成物および使用方法
一つの実施形態では、本開示の細胞組成物は、インビトロで活性化/分化したB細胞であって、本明細書中に記載されるように目的タンパク質を発現するために形質導入されたものを含む。一つの実施形態では、組成物は、プラズマB細胞に分化し、一又は複数の目的タンパク質を形質導入されて発現するB細胞を含む。標的細胞集団(例、形質導入されて活性化した本開示のB細胞集団)を、単独で投与する場合があり、または、希釈剤と組み合わせるか若しくは他の成分(例、サイトカインまたは細胞集団)と組み合わせる医薬組成物として投与する場合がある。簡単に言うと、本開示の細胞組成物は、本明細書中に記載される目的タンパク質を形質導入されて発現している分化および活性化したB細胞集団を、一若しくは複数の医薬的または生理学的に許容可能な担体、希釈剤、または賦形剤と組み合わせて含む場合がある。そのような組成物は、緩衝液(例、中性緩衝生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水等);炭水化物(例、グルコース、マンノース、スクロース、デキストラン、マンニトール);タンパク質;ポリペプチドまたはアミノ酸(例、グリシン);酸化防止剤;キレート剤(例、EDTAまたはグルタチオン);アジュバント(例、水酸化アルミニウム);および防腐剤を含んでもよい。本開示の組成物は、好ましくは、静脈投与用に処方される。
【0083】
本開示の細胞組成物は、治療(予防)される疾患に適切なやり方で投与可能である。投与の量と回数を、患者の状態、および患者の疾患のタイプと重症度のような因子により決定する。しかしながら、適切な投与量は、臨床試験により決定する場合がある。
【0084】
「有効量」、「抗腫瘍有効量」、「腫瘍阻害有効量」、または「治療有効量」を指す場合、投与される本開示の組成物の正確な量を、患者(被験体)の年齢、体重、腫瘍サイズ、感染と転移の程度、および症状の個人差を考慮して医師が決定する場合がある。B細胞組成物を、また、適切な投与量で複数回投与してもよい。細胞は、免疫療法で一般的に知られる点滴技術を使用して投与可能である(例えば、Rosenbergら、New Eng. J. of Med.、319:1676、1988年を参照されたい)。特定の患者に対する最適な投与量と治療計画は、疾患の兆候に関して患者を監視し、治療をそれに従って調整することで、医学の当業者により容易に決定可能である。典型的には、関連する養子免疫療法の試験では、抗原特異的T細胞を、約2×10
9〜2×10
11細胞で、患者に投与する(例えば、米国特許番号第5,057,423号を参照されたい)。本開示のいくつかの観点では、本開示のより少ない数の形質導入B細胞(10
6細胞/キログラム(患者当たり10
6〜10
11細胞)の範囲のもの)を投与する場合がある。ある実施形態では、被験体に、B細胞を、1×10
5、1×10
6、1×10
7、1×10
8、2×10
8、2×10
9、1×10
10、2×10
10、1×10
11、5×10
11、または1×10
12細胞で投与する。B細胞組成物を、これらの範囲内の投与量で、複数回投与してもよい。細胞は、治療を受ける患者の自己のものであっても、異種のものであってもよい。所望ならば、治療は、免疫応答の誘導を向上させるために、本明細書中に記載するように、分裂促進因子(例、PHA)もしくはリンホカイン、サイトカイン、および/またはケモカイン(例、GM−CSF、IL−4、IL−13、Flt3−L、RANTES、MIP1a等)の投与工程を含めてもよい。
【0085】
対象の組成物の投与を、任意の簡便な様式(エアゾール吸入、注射、経口摂取、点滴、インプラント、または移植)で実施する場合がある。本明細書中に記載される組成物は、患者に対して、皮下、皮内、腫瘍内、結節内、髄質内、筋肉内、静脈内(i.v.)注射により、または腹腔内に投与可能である。一つの実施形態では、本開示のB細胞組成物を、患者に、皮内または皮下注射により投与する。別の実施形態では、本明細書中に記載のB細胞組成物を、好ましくは、i.v.注射により投与する。B細胞の組成物は、直接に、腫瘍、リンパ節、骨髄、または感染部位に注射可能である。
【0086】
さらに別の実施形態では、医薬組成物を、放出制御システムで送達する場合がある。一つの実施形態では、ポンプを使用する場合がある(Langer、1990年、Science、249:1527−1533;Sefton、1987年、CRC Crit. Ref.Biomed.Eng.、14:201;Buchwaldら、1980年、Surgery、88:507;Saudekら、1989年、N.Engl.J.Med.、321:574を参照されたい)。別の実施形態では、ポリマー材料が使用可能である(「Medical Applications of Controlled Release」、1974年、LangerとWise(編)、CRC Pres.、Boca Raton、Fla.;「Controlled Drug Bioavailability, Drug Product Design and Performance」、1984年、SmolenとBall(編)、Wiley、New York;RangerとPeppas、1983年、J.Macromol.Sci.Rev.Macromol.Chem.、23:61を参照されたい;また、Levyら、1985年、Science、228:190;Duringら、1989年、Ann.Neurol.、25:351;Howardら、1989年、J.Neurosurg.、71:105も参照されたい)。さらに別の実施形態では、放出制御システムを、治療標的の近くに設置して、従って、全身投薬量のほんの少ししか必要としない場合もある(例えば、「Medical Applications of Controlled Release」、1984年、LangerとWise(編)、CRC Pres.、Boca Raton、Fla.、vol.2、pp.115−138を参照されたい)。
【0087】
本開示のB細胞組成物は、任意の数のマトリクスを使用して投与可能でもある。マトリクスは、組織工学の内容の範囲内で多年に渡って利用されてきた(例えば、「Principles of Tissue Engineering」(Lanza、LangerとChick(編)、1997年))。本開示は、B細胞の支持と維持のために人工リンパ性器官として働くという新規な内容の範囲内で、そのようなマトリクスを利用する。従って、本開示は、組織工学において有用性を実証されたこれらのマトリクス組成物および処方を利用することができる。従って、本開示の組成物、デバイス、および方法に使用可能なマトリクスのタイプは、実際制限がなく、生物学的マトリクスと合成マトリクスの両者を含む場合がある。一つの特定の例では、米国特許番号第5,980,889号;第5,913,998号;第5,902,745号;第5,843,069号;第5,787,900号;または第5,626,561号に記載される組成物とデバイスを利用する。マトリクスは、哺乳類宿主に投与される場合、生体適合性であることと一般的に関連する特徴を有する。マトリクスは、自然または合成材料の両者から成形可能である。マトリクスは、動物の体内に永続的な構造物または除去可能な構造物(例、インプラント)を残すことが望ましい例では、非生分解性である場合があるし、あるいは生分解性であってもよい。マトリクスの取り得る形態は、スポンジ、インプラント、チューブ、テルファ・パッド、線維、中空繊維、凍結乾燥構成要素、ゲル、粉、多孔性組成物、またはナノ粒子である。また、マトリクスは、徐放性の種細胞、生産済みサイトカイン、または他の活性剤を実現可能なように設計される場合がある。ある実施形態では、本開示のマトリクスは、フレキシブル且つ弾力性であり、物質(例、無機塩、水性流動体、ガス(酸素を含む)が溶解した剤)を透過する半固形基材として記載される場合がある。
【0088】
マトリクスは、生体適合性物質の例として、本明細書中で使用される。しかしながら、本開示は、マトリクスに限定されない。従って、用語「マトリクス(複数可)」が出てきた場合はいつでも、これらの用語は、細胞保持または細胞横断を実現し、生体適合性であって、そして、物質自体が半透過性膜であるようにその物質を直接通過するか、または、特定の半透過性物質と共に使用するかのいずれかで高分子の横断を実現可能にするデバイスおよび他の物質を含むように読まれることが望ましい。
【0089】
本開示のある実施形態では、本明細書中に記載の方法または当該技術分野で既知の他の方法を使用して形質導入および活性化されたB細胞を、患者に、任意の数の妥当な治療様式(限定はされないが、薬剤(抗ウイルス剤)を用いる治療、化学療法、放射線、免疫抑制剤(例、シクロスポリン、アザチオプリン、メトトレキサート、ミコフェノール酸、およびFK506)、抗体もしくは他の免疫除去(immunoablative)剤(例、CAMPATH、抗CD3抗体、他の抗体療法)、サイトキシン(cytoxin)、フルダラビン(fludaribine)、シクロスポリン、FK506、ラパマイシン、ミコフェノール酸、ステロイド、FR901228、サイトカイン、および放射線照射)の、例えば、前、同時、または後に組み合わせて投与する。これらの薬剤は、カルシウム依存性ホスファターゼであるカルシニューリンを阻害する(シクロスポリンおよびFK506)または成長因子誘導性シグナル伝達に重要なp70S6キナーゼを阻害する(ラパマイシン)のいずれかである(Liuら、Cell、66:807−815、1991年;Hendersonら、Immun.、73:316−321、1991年;Biererら、Curr.Opin.Immun.、5:763−773、1993年;Isoniemi(上記))。さらなる実施形態では、本開示の細胞組成物を、患者に、骨髄移植、化学療法剤(例、フルダラビン)を使用するT細胞除去療法、外部ビーム照射療法(XRT)、シクロホスファミド、または抗体(例、OKT3またはCAMPATH)の、例えば、前、同時、後に組み合わせて投与する。一つの実施形態では、本開示の細胞組成物を、B細胞除去療法(例、CD20と反応する薬剤(例、Rituxan(R)))の後に投与する。例えば、一つの実施形態では、被験体は、高用量化学療法での標準的な治療の後に、末梢血幹細胞移植を行う場合がある。ある実施形態では、移植の後に、被験体に、本開示の増殖拡張後の免疫細胞を注入する。別の実施形態では、増殖拡張した細胞を、外科手術の前または後に投与する。
【0090】
患者に投与される上記治療剤の投与量は、治療される症状の正確な性質と治療を受ける被験体にしたがって異なる。ヒトへ投与量は、当該分野の慣習に従って、決定可能である。
【0091】
本開示の形質導入B細胞組成物、特に、特定目的抗体を発現するために形質導入されたB細胞は、各種感染症、がん、変性疾患、および免疫障害の治療または予防に使用可能である。
【0092】
本明細書中に記載される形質導入B細胞を含む組成物は、感染性生物(例、ウイルス、細菌、寄生虫、および真菌)が原因の任意の各種感染症の治療に使用可能である。感染性生物には、ウイルス(例、RNAウイルス、DNAウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、A型、B型、およびC型肝炎ウイルス、単純ヘルペスウイルス(HSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、ヒトパピローマウイルス(HPV))、寄生虫(例、原生動物および後生動物病原体(例、マラリア原虫(Plasmodia)種、リーシュマニア(Leishmania)種、住血吸虫(Schistosoma)種、トリパノソーマ(Trypanosoma)種)、細菌(例、マイコバクテリア、特に、結核菌(M.tuberculosis)、サルモネラ菌、ストレプトコッカス菌、大腸菌(E.coli)、ブドウ球菌)、真菌(例、カンジダ菌(Candida)種、麹菌(Aspergillus)種)、ニューモシスティス・カリニ(Pneumocystis carinii)、ならびにプリオン(既知のプリオンは、動物に感染し、スクレーピー(scrapie)(ヒツジとヤギの神経系の伝達性変性疾患)、牛海綿状脳症(BSE)(または「狂牛病」)、およびネコの猫海綿状脳症)を引き起こすもの)が含まれる場合がある。ヒトに罹患することが知られる四種類のプリオン病は、(1)クールー病、(2)クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、(3)ゲルストマン・シュトロイスラー・シャインカー病(GSS)、および(4)致死性家族性不眠症(FFI)である。本明細書中で使用される「プリオン」は、任意の使用動物(特に、ヒトおよびペット家畜)においてこれらの疾患または他の疾患の全てまたは任意のものを引き起こす全ての形態のプリオンを含む。例示的感性症には、限定はされないが、トキソプラズマ病、ヒストプラスマ症、CMV、EBV、コクシジウム症、結核、およびHIV等が含まれる。
【0093】
ある実施形態では、本明細書中に記載される形質導入B細胞組成物は、また、各種がんの予防または治療に使用可能でもある。この点について、ある実施形態では、形質導入B細胞を含む組成物は、メラノーマ、非ホジキンリンパ腫、ホジキン病、白血病、プラズマ細胞腫、肉腫、グリオーマ、胸腺腫、乳がん、前立腺がん、大腸・直腸がん、腎臓がん、腎細胞がん、子宮がん、膵臓がん、食道がん、脳がん、肺がん、卵巣がん、子宮頸がん、精巣がん、胃がん、食道がん、多発性骨髄腫、肝がん、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、および慢性リンパ性白血病(CLL)あるいは他のがんの予防または治療に有用である。
【0094】
一つの実施形態では、形質導入B細胞は、また、免疫疾患(例、後天性免疫不全症候群(AIDS)、無ガンマグロブリン血症、低ガンマグロブリン血症、他の免疫不全、免疫抑制、および重症複合免疫不全症(SCID))の治療に使用可能である。
【0095】
一つの実施形態では、本明細書中に記載される形質導入B細胞は、また、自己免疫疾患(例、限定はされないが、関節リウマチ、多発性硬化症、インスリン依存性糖尿病、アディソン病、セリアック病、慢性疲労症候群、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、線維筋痛症、全身性エリテマトーデス、乾癬、シェーグレン症候群、甲状腺機能亢進症/グレーブス病、甲状腺機能低下症/橋本病、インスリン依存性糖尿病(I型)、重症筋無力症、子宮内膜症、強皮症、悪性貧血、グッドパスチャー症候群、ヴェーグナー病、糸球体腎炎、再生不良性貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症、骨髄異形成症候群、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫溶血性貧血、エバンス症候群、第VIII因子阻害剤症候群、全身性血管炎、皮膚筋炎、多発性筋炎、およびリウマチ熱)の治療に使用可能でもある。従って、一つの実施形態では、本明細書中の方法は、疾患を治療する方法であって、治療を必要とする被験体または患者に、本明細書中に記載される形質導入B細胞を含む組成物の治療有効量を投与して、従って、前記疾患を治療する工程を含む方法を、含む。
【実施例】
【0096】
実施例1:
インビトロでのメモリーB細胞分化およびVSV−G偽型レンチウイルスを用いた形質導入
この実施例は、プラズマ芽球およびプラズマ細胞のインビトロ分化とVSV−Gウイルスを用いた同芽球・細胞への形質導入を記載する。本方法が実証するのは、培養システムの第二相後に、当該技術分野で既知の方法を使用してはたった5%であるのに比較して、約20%の形質導入が観察されることである。
(形質導入に関して:回転させながらイノキュレーションする必要(spinnoculation)はない。単に、硫酸プロタミンと共にウイルス上清を加えて、一晩インキュベートする。そして、培地交換する。)
【0097】
メモリーB細胞を、以下に記載のメモリーB細胞単離法を使用して単離した。
1.D1:精製メモリーB細胞を、1.5×10
5細胞/mlで、サイトカインの混合剤を添加した培地#1に再懸濁し、3日間インキュベートする。
2.D4:細胞を回収し、基本培地で洗浄し、8分間300gでスピンダウンし、細胞を、サイトカインの混合剤を添加した培地#2中に再懸濁した。
3.D6:細胞を回収および計数し、培地#2中に1.5×10
6細胞/mlで、細胞を再懸濁し、硫酸プロタミン(100×)10μl+濃縮GFPウイルス100μl(MOI約50)を加え、一晩インキュベートする。
4.D7:細胞を回収し、基本培地で洗浄し、8分間300gでスピンダウンし、サイトカインの混合剤を添加した培地#3中に再懸濁し、3日間インキュベートした。
5.D10:8分間300gでスピンダウンすることにより、細胞を回収し、4℃で15分間、固定バッファー中で細胞を固定する。細胞を二度洗浄し、そして細胞をフローバッファー中に保存する。細胞は、形質導入効率を測定するためのフローサイトメトリー解析に準備が整っている。
【0098】
第二工程後の細胞は、ほとんど、CD20−CD38+CD138−であり、第三工程後の細胞はCD20−CD38+CD138+である。
【0099】
【表1】
【0100】
ストック試薬調製:
1.インスリン50mg(シグマ)を、0.005NのHCLに溶解し、濾過(0.22μm)し、1ml/チューブで分注し、−20℃で保存した。ストック濃度は、5mg/ml(1000×)である。
2.トランスフェリン100mg(シグマ)を、2mlのPBSに溶解し、濾過(0.22μm)し、0.5ml/チューブで分注し、−20℃で保存した。ストック濃度は、50mg/ml(1000×)である。
3.p−ODN47.95mg(IDTで合成)を、4.795mlの滅菌ddH
2Oに溶解し、1ml/チューブで分注し、−20℃で保存した。ストック濃度は、10mg/ml(1000×)である。
4.sCD40L−his(20μg/40μl)(Prospec)を、滅菌した0.4mlのPBS/0.5%BSA中に希釈し、130μl/チューブで分注し、−20℃で保存した。ストック濃度は、50μg/ml(1000×)である。
5.IL−15の5μg(R&D)を、0.5mlの滅菌したPBS/0.5%BSAに溶解し、100μl/チューブで分注し、−20℃で保存した。ストック濃度は、10μg/ml(1000×)である。
6.IL−6の10μg(R&D)を、0.2mlの滅菌したPBS/0.5%BSAに溶解し、50μl/チューブで分注し、−20℃で保存した。ストック濃度は、50μg/ml(1000×)である。
7.IL−2(eBioscience)は、100μg/ml、つまり5.6×10
6U/mgであった。従って、ストックは5.7×10
5U/ml(2850×)である。
8.IL−10(eBioscience)は、100μg/ml(2000×)であった。
9.IFNは、100000Uに対して総量0.1mlである。ストック濃度は、1×10
6U/ml(2000×)である。
10.抗ポリhis抗体
【0101】
上記方法における開始集団の大半は、CD20+CD38−CD138−であり、それらの形質導入効率は悪い。第二工程後の細胞は、ほとんど、CD20−CD38+CD138−であり、第三工程後の細胞はCD20−CD38+CD138+である。インビトロのプラズマ芽球およびプラズマ細胞の分化を利用し、VSV−Gによる形質導入を組み合わせた方法は、当該技術分野では記載がない。このインビトロ方法を使用する場合、形質導入効率は、約20%に大幅に増加した。
【0102】
特に、本明細書中で実証された培養条件は、初めて、B細胞が形質導入可能になった時間枠を設定した(
図1)。VSV−G偽型ウイルスを用いたB細胞への効率的形質導入は、B細胞増殖と特異的B細胞表現型の取得との両者を刺激する条件を必要とした。9日間の培養過程に渡って、CD20+;CD38−CD20−;CD38−CD20−;およびCD38+表現型の変化を、
図2に示す。
【0103】
図1に示されるように、B細胞分化を促進するように設計された培養の5日後に、細胞は、形質導入可能性が最大になった。また、B細胞の表現型移行タイミングは、最も増殖している状態にある細胞と相関していた(
図3)。培養条件は、細胞増殖と表現型移行を誘導し、それらは、他の方法を使用することで観察されたものよりも有意に大きな形質導入効率を生じさせた。従って、本方法を使用して、効率的にB細胞に形質導入して目的タンパク質(例、特異的抗体または他の治療用タンパク質)を発現させることができる。
【0104】
上記各種実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を提供することができる。本明細書で参照および/または出願データシートにリストアップした米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願、および非特許文献の全ては、参照により完全に本明細書中に組み込まれる。必要ならば、各種特許、出願、および刊行物の概念を採用してまださらなる実施形態を提供するために、実施形態の観点は改変可能である。
【0105】
これらのおよび他の変更を、上記記載の観点から、実施形態に施すことができる。一般的に、引き続く特許請求の範囲では、使用する用語は、本明細書や請求項に開示される具体的実施形態に特許請求の範囲を限定するとは解釈されるべきではないが、そのような請求項が表わす等価なものの範囲全体に沿って全ての可能な実施形態を含むと解釈されるべきである。従って、特許請求の範囲は、本開示により限定されない。