特許第6392318号(P6392318)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6392318液体クロマトグラフィー用充填剤及び液体クロマトグラフィー用カラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392318
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】液体クロマトグラフィー用充填剤及び液体クロマトグラフィー用カラム
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/285 20060101AFI20180910BHJP
   B01J 20/281 20060101ALI20180910BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20180910BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20180910BHJP
   B01D 15/38 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   B01J20/285 N
   B01J20/281 X
   G01N30/88 N
   B01J20/26 G
   B01J20/26 L
   B01D15/38
【請求項の数】8
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-505199(P2016-505199)
(86)(22)【出願日】2015年2月23日
(86)【国際出願番号】JP2015055031
(87)【国際公開番号】WO2015129622
(87)【国際公開日】20150903
【審査請求日】2017年11月14日
(31)【優先権主張番号】特願2014-38331(P2014-38331)
(32)【優先日】2014年2月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】中島 修弥
(72)【発明者】
【氏名】岡田 由治
(72)【発明者】
【氏名】近藤 英幸
【審査官】 黒田 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−177015(JP,A)
【文献】 特開2013−75954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 30/88
B01D 15/08
B01J 20/24
B01J 20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール樹脂を含む親水性の樹脂に、スペーサーを介して、式(1)
【化1】
(R1は水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基を示し、R2は水酸基を1個以上有する炭素数1〜6のアルキル基を示す。※は、スペーサーとの結合位置を示す。)
で示されるアミノ基が結合していることを特徴とする、液体クロマトグラフィー用充填剤。
【請求項2】
1が水素原子またはメチル基である請求項1に記載の液体クロマトグラフィー用充填剤。
【請求項3】
2が式(2)
【化2】
(式中、nは0〜4の整数を示す)で示される構造である、請求項1または2に記載の液体クロマトグラフィー用充填剤。
【請求項4】
式(1)で示されるアミノ基がD‐グルカミン、N‐メチル‐D‐グルカミン、1‐アミノ‐1‐デオキシ‐D‐マンニトール、1‐アミノ‐1‐デオキシ‐D‐ガラクチトール、1‐アミノ‐1‐デオキシ‐D‐イジトール、1‐アミノ‐1‐デオキシ‐D‐アラビニトール、1‐アミノ‐1‐デオキシ‐D‐キシリトール、4‐アミノ‐1,2,3‐ブタントリオール、3‐アミノ‐1,2‐プロパンジオール、3‐メチルアミノ‐1,2‐プロパンジオールからなる群のうちのいずれか一つのアミン由来である請求項1に記載の液体クロマトグラフィー用充填剤。
【請求項5】
スペーサーが末端にグリシジル基を有する化合物由来であることを特徴とする、請求項1に記載の液体クロマトグラフィー用充填剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の液体クロマトグラフィー用充填剤を用いた、液体クロマトグラフィー用カラム。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の液体クロマトグラフィー用充填剤を用いた、糖分析用液体クロマトグラフィー用カラム。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の液体クロマトグラフィー用充填剤を用いた、親水性相互作用クロマトグラフィー用カラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性に優れた液体クロマトグラフィー用充填剤及び該充填剤を充填した液体クロマトグラフィー用カラムに関する。
【背景技術】
【0002】
糖類は、食品中などに多く含まれており、その分析は食品産業などにおいて極めて重要である。そして、その分析には液体クロマトグラフィーが広く用いられている。液体クロマトグラフィーによる糖類の分析には、配位子交換、親水性相互作用カラムが主に用いられている。
【0003】
配位子交換カラムを用いた分析では、アノマー分離を抑制するために高温条件下で分析する必要がある。たとえば、特開昭61−71354号公報(特許文献1)には、スルホン酸基の対イオンとして、銀ならびにアルカリ(土類)金属イオンを用いたイオン交換樹脂粒子を充填剤としたカラムが開示されている。この特許文献1では、カラム温度を60℃で、分離が行われている。しかしながら、かかる高温下では、充填剤にイオン結合している金属イオンが脱離しやすく、充填剤の経時変化の問題がある。
【0004】
親水性相互作用カラムを用いた場合、ポリアクリルアミド樹脂からなる充填剤を用いたカラムがある(たとえば、特開2006−137944号公報:特許文献2)。しかしながら、配位子交換カラムと同様にアノマー分離を抑制するために高温条件下にする必要がある。
【0005】
一方、アミノ基を結合させた充填剤を用いたカラム(以下アミノカラムとする)を用いると、アミノ基のアルカリ性によってアノマー分離を抑制することができ、高温条件を必要としないため、アミノカラムは糖分析において広く用いられている。(J.C.Linden et al.J.Chromatogr.A 105(1975)125−133)しかしながら、アミノカラムのほとんどはシリカゲルを基材に用いており、アミノ基を結合させたシリカゲルは安定性に乏しく、カラムの耐久性に問題がある。
【0006】
アミノ基を結合させ、かつ化学的な安定性を有する材料としては、有機高分子担体を用いるものがある。有機高分子担体にアミノ基を結合した材料として、ポリアクリレート系樹脂やスチレン‐ジビニルベンゼン共重合体樹脂にN‐メチル‐D‐グルカミンを結合させた化合物が金属やホウ素の吸着材として用いられている。(J.Sanchez et al.J.APPL POLY.SCI.129(2013)1541−1545、J.Sanchez et al.J.APPL POLY.SCI.126(2012)1475−1483)
しかし、ポリアクリレート系樹脂やスチレン‐ジビニルベンゼン共重合体樹脂を用いた材料をアミノカラムに応用すると、親水性が低く糖類の分離が不十分であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭61−71354号公報
【特許文献2】特開2006−137944号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】J.Sanchez et al.J.APPL POLY.SCI.129(2013)1541−1545
【非特許文献2】J.Sanchez et al.J.APPL POLY.SCI.126(2012)1475−1483
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、耐久性に優れ、繰り返し分析を行っても経時変化を起こさないアミノカラムに適した充填剤を与えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を達成すべく研究を重ねることで、ポリビニルアルコール樹脂を含む親水性の樹脂を基材とし、特定のアミノ基が導入された充填剤を用いることにより、アミノカラムの耐久性を改善できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち本発明は次の事項に関する。
[1]ポリビニルアルコール樹脂を含む親水性の樹脂に、スペーサーを介して、式(1)
【0012】
【化1】
(R1は水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基を示し、R2は水酸基を1個以上有する炭素数1〜6のアルキル基を示す。※は、スペーサーとの結合位置を示す。)
で示されるアミノ基が結合していることを特徴とする、液体クロマトグラフィー用充填剤。
[2]R1が水素原子またはメチル基である[1]の液体クロマトグラフィー用充填剤。
[3]R2が式(2)
【0013】
【化2】
(式中、nは0〜4の整数を示す)で示される構造である、[1]または[2]の液体クロマトグラフィー用充填剤。
[4]式(1)で示されるアミノ基がD‐グルカミン、N‐メチル‐D‐グルカミン、1‐アミノ‐1‐デオキシ‐D‐マンニトール、1‐アミノ‐1‐デオキシ‐D‐ガラクチトール、1‐アミノ‐1‐デオキシ‐D‐イジトール、1‐アミノ‐1‐デオキシ‐D‐アラビニトール、1‐アミノ‐1‐デオキシ‐D‐キシリトール、4‐アミノ‐1,2,3‐ブタントリオール、3‐アミノ‐1,2‐プロパンジオール、3‐メチルアミノ‐1,2‐プロパンジオールからなる群のうちのいずれか一つのアミン由来である[1]の液体クロマトグラフィー用充填剤。
【0014】
[5]スペーサーが末端にグリシジル基を有する化合物由来である[1]の液体クロマトグラフィー用充填剤。
[6]前記[1]〜[5]の液体クロマトグラフィー用充填剤を用いた、液体クロマトグラフィー用カラム。
[7]前記[1]〜[5]の液体クロマトグラフィー用充填剤を用いた、糖分析用液体クロマトグラフィー用カラム。
[8]前記[1]〜[5]の液体クロマトグラフィー用充填剤を用いた、親水性相互作用クロマトグラフィー用カラム。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかる液体クロマトグラフィー用充填剤は、糖類の分析において高温条件を必要とせず、30〜50℃といった低温でも、優れた分離を示す。また、糖類以外にも様々な親水性化合物の分離も可能である。さらに、アルカリ耐性を有しており、従来のアミノカラムに比べ、再現性、耐久性の点で優れている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例1の充填剤について、フルクトース、マンノース、グルコース及びスクロースの4種類の糖類の分析を行って得られたクロマトグラムを示す。
図2】実施例1の充填剤について、安定性試験結果を示す。
図3】実施例2の充填剤について、4種類の糖類の分析を行って得られたクロマトグラムを示す。
図4】実施例3の充填剤について、4種類の糖類の分析を行って得られたクロマトグラムを示す。
図5】比較例2の充填剤について、4種類の糖類の分析を行って得られたクロマトグラムを示す。
図6】実施例1の充填剤について、フルクトース、ガラクトース、ラクツロース、エピラクトース、ラクトースの5種類の糖類の分析を行って得られたクロマトグラムを示す。
図7】分析例6について、溶離液を変更して5種類の糖類の分析を行って得られたクロマトグラムを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の液体クロマトグラフィー用充填剤は、親水性の樹脂に式(1)
【0018】
【化3】
(式中、R1は水素原子、または炭素数1〜4のアルキル基を示し、R2は水酸基を一個以上有する炭素数1〜6のアルキル基を示す。※は、スペーサーとの結合位置を示す)で示されるアミノ基を、スペーサーを介して結合させた粒子である。このときR1は、水素原子またはメチル基であることが好ましい。
また、R2は、式(2)
【0019】
【化4】
(式中、nは0〜4の整数を示す)で示されるヒドロキシアルキル基であることが好ましく、さらにはnが4であることが好ましい。
【0020】
また、式(1)で示されるアミノ基としては、D‐グルカミン、N‐メチル‐D‐グルカミン、1‐アミノ‐1‐デオキシ‐D‐マンニトール、1‐アミノ‐1‐デオキシ‐D‐ガラクチトール、1‐アミノ‐1‐デオキシ‐D‐イジトール、1‐アミノ‐1‐デオキシ‐D‐アラビニトール、1‐アミノ‐1‐デオキシ‐D‐キシリトール、4‐アミノ‐1,2,3‐ブタントリオール、3‐アミノ‐1,2‐プロパンジオール、3‐メチルアミノ‐1,2‐プロパンジオールからなる群のアミン類のなかのいずれか一つに由来するものが好ましい。これらのアミン類の窒素に結合した1つの水素が外れて、スペーサーと結合する。本発明では、これらのアミン類を、スペーサーに結合させるが、また、アンモニアを、スペーサーを介して親水性樹脂に結合させたのちに、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを用いて、グルコース、マンノース、ガラクトース、キシロースなどのアルドースを、アミノ基を構成する窒素原子に結合させたものであってもよい。これらの中では、分離性能、反応の簡便さ、試薬の入手の容易さといった点で、N‐メチル‐D‐グルカミンを反応させて得られるアミノ基であることが特に好ましい。
【0021】
このようなアミノ基をスペーサーを介して結合させた充填剤は、糖類の分析において、高温条件を必要とせず、30〜50℃といった低温でも、優れた分離を示し、アルカリ耐性を有しており、再現性、耐久性の点で優れている。
【0022】
本発明における充填剤を構成する親水性樹脂の、大きさ、形状に特に制限はない。ただし、本発明である充填剤のカラムへの充填を考慮すると、その形状は直径が1〜30μmの球状が好ましい。材質は架橋あるいは非架橋の樹脂が好ましい。特に好ましくはアルコール性水酸基を有する樹脂が用いられる。
【0023】
本発明に用いる樹脂は、好ましくはカルボン酸ビニルエステルと架橋性単量体からなる架橋共重合体のエステル基をケン化またはエステル交換反応によってアルコール性水酸基に変換したポリビニルアルコール系樹脂が挙げられる。カルボン酸ビニルエステルとしては、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、吉草酸ビニル及びピバリン酸ビニル等があげられ、これらは単独でもよく、2種以上を組み合わせて用いても良い。これらの中でも、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニルが重合及びケン化が容易であるため好ましい。架橋性単量体としてはトリアジン環を有する架橋性単量体が好ましく、中でもトリアリルイソシアヌレートが特に好ましい。
【0024】
上記の樹脂は、エステル構造やアミド構造のようなアルカリ性に弱い構造を持たない。そのため、本発明の充填剤はアルカリ性においても安定である。よってアルカリ性の分析条件においても好適に使用可能であるという利点がある。
【0025】
また、上記樹脂以外に本発明の目的を損なわない範囲で、他の樹脂を含むものであってもよい。たとえば、スチレン-ジビニルベンゼン系架橋重合体、メタクリレート系架橋重合体、水酸基含有メタクリレート系架橋重合体粒子に長鎖アシル基が化学結合したものなどを使用することも可能である。これらのその他樹脂の含有量は、樹脂量に対し10質量%以下、好ましくは5質量%以下の量であればよい。より好ましくは、上記親水性樹脂がポリビニルアルコール樹脂からなるものであれば、耐久性や耐アルカリ性などの点で好ましい。
【0026】
アミノ基の量は、樹脂重量に対し0.1〜0.7meq/gが好ましく、さらに好ましくは0.15〜0.5meq/gの範囲にある。この範囲にあれば、低温条件においても糖類を分析可能となる。
【0027】
本発明におけるスペーサーは、基材(親水性樹脂)とアミノ基との距離を調整するために用いられる化学結合部位をいう。当該スペーサーは、式(1)のアミノ基と基材との干渉を抑えピーク拡散を抑える機能を付与するために用いる。基材にスペーサーを導入するために用いられる化合物、いわゆるスペーサー化合物としてはグリシジル基を有するものが挙げられ、たとえば、エピクロロヒドリン、1,4‐ブタンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル等が挙げられる。これらのスペーサー化合物の末端ハロゲン基や片方の末端グリシジル基と、親水性樹脂の水酸基が反応する。
【0028】
グリシジル基の導入量は、0.2〜0.8mol/gが好ましく、さらに好ましくは0.4〜0.6mol/gの範囲である。この範囲にあれば、好ましい量のアミノ基を導入することができる。
【0029】
グリシジル基の導入は無溶媒もしくは溶媒下でゲルに対して0.1〜10倍量の上記試薬を添加して撹拌均一として行われる。
グリシジル基を導入した重合体と、式(1)で示されるアミノ基を導入するための前記アミン類との反応は、次のように行うことができる。まず、グリシジル基を導入した重合体を、水、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド等の溶媒に分散させる。このときの溶媒は、扱いやすさ、用いるアミンの溶解性などの点において水が最も好ましい。アミンは、グリシジル基を導入した重合体1gあたり、2mmol以上加えることが好ましく、10mmol〜20mmolの範囲で加えることが反応効率と再現性の点でさらに好ましい。反応温度は、再現性と反応効率の観点で、30〜40℃が好ましい。反応時間は、反応量と効率の点で、12時間〜24時間が好ましい。
【0030】
本発明の液体クロマトグラフィー用充填剤の粒径としては、体積平均粒径が1〜30μmのものが用いられ、好ましくは2〜20μm、さらに好ましくは2〜10μmである。体積平均粒径が1μm未満の場合はカラムの圧力上昇が大きく、充填が極めて困難となることがある。一方、30μmを超えるとカラムの理論段数が低くなるため好ましくない。本願における上記の体積平均粒径は、コールターカウンター法を用いて次のように測定される。すなわち、測定装置としてMultisizer 4(ベックマン・コールター社製)を用い、充填剤サンプル0.2gにアイソトン(希釈液)25mLを加え、超音波を3分間当てて分散させた後、約1000個の測定個数にて体積平均粒径を測定する。体積平均粒径を好ましい範囲とするには、風力分級、ふるい分けによる分級、沈殿を利用した分級等で制御できる。
【0031】
本発明の液体クロマトグラフィー用充填剤のカラムへの充填はスラリー法など公知の充填方法に準じて行われる。得られた液体クロマトグラフィー用カラムは、アセトニトリルと水もしくはギ酸アンモニウム、酢酸アンモニウムなどからなる緩衝液の混合溶媒を溶離液として用いることで、糖類やその他の親水性化合物を良好に分離することができる。
【0032】
本発明における分離対象物質としては、環境汚染物質、ダイオキシン類、環境ホルモン、農薬、界面活性剤、生物毒素、天然薬物、天然色素、天然香料、および天然調味料などが挙げられる。
【0033】
本発明は、耐久性に優れ、繰り返し分析を行っても経時変化を起こさないアミノカラムに適した充填剤を与えることが可能である。特に低温でも分離可能であるため、高温下では不安定な性質を持つ糖類の分析などの用途にも適用可能となる。
【実施例】
【0034】
以下実施例により、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
〔実施例1〕
ポリビニルアルコールゲル(基材)
酢酸ビニル100g、トリアリルイソシアヌレート150g、酢酸ブチル100g、n‐デカン25g及び2,2−アゾビスイソブチロニトリル5gよりなる均一混合液と、ポリビニルアルコール12g及びリン酸水素二ナトリウム18gを溶解した水1200mLと還流冷却器を備えた5L三口フラスコに入れ10分攪拌した。次いで、窒素気流下で攪拌しつつ、60℃で16時間重合を行うことで粒状重合体を得た。該重合体を濾過、洗浄し、アセトン抽出した後乾燥した。次いで該重合体を10%カセイソーダ水溶液3Lとともに還流冷却器、窒素導入管及び攪拌器を備えた5Lの三口フラスコに入れ、窒素気流下で15℃,20時間攪拌して該重合体のケン化を行った後、濾過、水洗、更に乾燥した。ケン化によって得られたポリビニルアルコール重合体の水酸基の密度は2.1meq/gであった。
【0035】
糖分析用及び親水性相互作用クロマトグラフィー用充填剤
上記乾燥ポリビニルアルコール重合体10g、エピクロロヒドリン45g、ジメチルスルホキシド100mL及び30%苛性ソーダ水溶液5mLをセパラブルフラスコに入れ、30℃で20時間撹拌し、該重合体にグリシジル基を導入した。導入後の重合体を、ジメチルスルホキシド、水、メタノールで洗浄後、乾燥した。
【0036】
上記グリシジル基を導入した重合体4g、N‐メチル‐D‐グルカミン10g及び水40mLをセパラブルフラスコに入れ、30℃で20時間撹拌し、アミノ基を導入した糖分析用及び親水性相互作用クロマトグラフィー用充填剤を作製した。該充填剤を水での洗浄をはさみながら0.5N塩酸及び0.5N苛性ソーダ水溶液で洗浄し、さらにメタノールで洗浄後、乾燥した。このようにして得られた充填剤を、0.5N塩化カリウム水溶液に分散させ、0.1M塩酸を用いてアミノ基を滴定することにより該充填剤のアミノ基の密度を測定した結果、0.44meq/gであった。また、該充填剤の体積平均粒径は、5μmであった。
【0037】
〔実施例2〕
実施例1と同様にして作製したグリシジル基を導入した重合体2.0g、25%アンモニア水1.0mL及び水19mLをセパラブルフラスコに入れ、30℃で20時間撹拌し、アミノ基を導入した。該重合体をろ過後、水洗浄をはさみながら0.5N塩酸及び0.5N苛性ソーダ水溶液で洗浄し、さらにメタノールで洗浄後乾燥した。
【0038】
上記アミノ基を有する重合体1.8g、D‐マンノース1.9g、シアノ水素化ホウ素ナトリウム0.2g及び0.2Mリン酸水素化二カリウム水溶液12mLをセパラブルフラスコに入れ、60℃で20時間撹拌して、アルドースを窒素原子に結合させたアミノ基として、糖分析用及び親水性相互作用液体クロマトグラフィー用充填剤を作製した。該充填剤を、水洗浄をはさみながら、1.0N硫酸及び1.0N苛性ソーダ水溶液で洗浄後、乾燥した。
得られたアミノ基を有する重合体のアミノ基の密度を実施例1と同様にして測定した結果、0.26meq/gであった。
【0039】
〔実施例3〕
実施例1においてエピクロロヒドリン45gの代わりに、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル100gを用いる以外は同様の条件で液体クロマトグラフィー用充填剤を作製した。実施例1と同様に該充填剤のアミノ基密度を測定した結果、0.17meq/gであった。
【0040】
〔分析例1〕
実施例1で得られた充填剤を内径4.6mm、長さ150mmのSUS製のカラムに充填し、糖分析及び親水性相互作用クロマトグラフィー用カラムを調整した。このカラムを用いて、溶離液アセトニトリル/水=85/15、流速0.6mL/min、カラム温度40℃として分析を行った。分析サンプルはフルクトース、マンノース、グルコース及びスクロースの4種の糖を、いずれも5mg/mLとなるようにアセトニトリル/水=5/3の混合液に溶解したものを用いた。示差屈折率検出器を用いて得られたクロマトグラムを図1に示す。4種類の糖が良好に分離されている。
【0041】
〔分析例2〕
また、上記のカラムの安定性試験を行った。0.05N水酸化ナトリウム水溶液、流速0.6mL/min、カラム温度30℃にて溶離液を連続して80時間通液し、通液前後の糖類の保持時間及び理論段数を確認した。これによって得られた結果を図2に示す。本発明の充填剤を使用したカラムでは、溶離液を通液し続けても保持時間などの変化は起こらなかった。
【0042】
〔分析例3〕
実施例2で得られた充填剤を用い、分析例1と同様の分析を行った結果を図3に示す。4種類の糖が良好に分離されている。
【0043】
〔分析例4〕
実施例3で得られた充填剤を用い、分析例1と同様の分析を行った結果を図4に示す。4種類の糖が良好に分離されている。
【0044】
〔比較例1〕
シリカゲルを基材としたアミノ基導入充填剤を使用したカラムを用いて、上記の安定性試験を行った。その結果通液開始から17時間後に、カラムに詰りが生じて通液不能となった。
【0045】
〔比較例2〕
グリシジルメタクリレートを重合したアクリレート樹脂2.8g、N‐メチル‐D‐グルカミン6.5g及び水28mLをセパラブルフラスコに入れ、30℃で20時間撹拌し、アクリレート樹脂を基材とした充填剤を作製した。該重合体をろ過後、水洗浄をはさみながら0.5N塩酸及び0.5N苛性ソーダ水溶液で洗浄した。
【0046】
〔分析例5〕
比較例2で得られた充填剤を、分析例1と同様にカラムに充填し、糖類の分析を行った結果を図5に示す。保持が短く、糖類が分離されていないことが分かる。
【0047】
〔分析例6〕
実施例1で得られた充填剤を内径4.6mm、長さ250mmのSUS製カラムに充填し、糖分析及び親水性相互作用クロマトグラフィー用カラムを調整した。このカラムを用いてフルクトース、ガラクトース、ラクツロース、エピラクトース、ラクトースの5種類の糖類の分析を行った。分析条件は、流速1.0mL/min、カラム温度40℃とした。検出器には示差屈折率検出器を使用した。溶離液にアセトニトリル/水=80/20を用いた場合のクロマトグラムを図6に示す。
【0048】
〔分析例7〕
分析例6の図6では、ラクツロースとエピラクトースのピークが一部重なっている。そこで同じカラムを用いて溶離液をアセトニトリル/メタノール/水=75/20/5に変えて同様のサンプルを分析した場合のクロマトグラムを図7に示す。図6でピークが重なっていたラクツロースとエピラクトースのピークが完全に分離している。したがって、5種類の糖が良好に分離されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7