【実施例】
【0027】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明がこれに限定されないのは明らかである。
(実施例1)3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶の製造
公知の方法(特許文献1)に従って、酵素的に3’,5’−サイクリックジグアニル酸を合成し、精製を行った。
精製して得られた59.9mMの3’,5’−サイクリックジグアニル酸溶液(191ml)を、インキュベーターにて60℃に加温し、撹拌しながら1Nの塩酸溶液 27.5mlを2時間かけて添加し、pH1.9とした。
【0028】
塩酸溶液添加の後、プログラムインキュベーターを用いて、温度勾配−7℃/hrで、液温が5℃になるまで冷却し、結晶を析出せしめた。このようにして析出した結晶はグラスフィルター(17G3)にて濾取し、湿結晶を得た。湿結晶は9時間、30℃乾燥して、乾燥結晶8.095gを得た。
【0029】
(参考例)3’,5’−サイクリックジグアニル酸金属共結晶の製造
非特許文献2、3の記載を参考に、下記のように3’,5’−サイクリックジグアニル酸とマグネシウムまたはコバルトとの共結晶を得た。
(参考例1)3’,5’−サイクリックジグアニル酸とマグネシウムとの共結晶
結晶化開始液(2mM 3’,5’−サイクリックジグアニル酸、20mM MgCl
2、20mM glycine−HCl(pH2.1)、7%(v/v) 2−MPD)500mLを調製した。
当該結晶化開始液を55℃の加温下、エバポレーターで濃縮し、白濁が観察された時点で再度500mLにフィルアップし、55℃で30分加温して完全溶解させた。これを再度濃縮し、清澄化させたものを25℃で一晩静置すると、六角平板結晶の析出が観察されたことから、蒸気拡散法にて結晶を十分育成し、マグネシウムとの共結晶を得た。
【0030】
(参考例2)3’,5’−サイクリックジグアニル酸とコバルトとの共結晶
結晶化開始液(2mM 3’,5’−サイクリックジグアニル酸,11mM CoCl
2,20mM glycine−HCl(pH2.1),7%(v/v) 2−MPD)500mlを調製した。
当該結晶化開始液を55℃の加温下、エバポレーターで濃縮した後、25℃で一晩静置すると、双四角錐結晶の析出が観察されたことから、蒸気拡散法での結晶育成を行った。蒸気拡散法では、密閉容器(TLC展開槽)に800mLの50%2−MPD(水:MPD=1:1)を張り、両ビーカーを6ヶ月静置することで、コバルトとの共結晶を得た。
【0031】
(実施例2)3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶の物性
上記実施例1で調製した3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶に対して実施した機器分析の結果について以下に示す。
【0032】
(機器分析)
(A)純度検定
実施例1で得られた3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶の純度を、高速液体クロマトグラフィー法で分析した結果、3’,5’−サイクリックジグアニル酸純度は99.0%であった。なお、高速液体クロマトグラフィー法は以下の条件で行った。
(条件)
カラム:Hydrosphere C18(YMC社製)
溶出液:0.1M TEA−P(pH6.0)
検出法:UV260nmによる検出
【0033】
(B)結晶形
実施例1で調製した3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶ならびに参考例で調製した3’,5’−サイクリックジグアニル酸とマグネシウムとの共結晶およびコバルトとの共結晶の代表的な写真を
図1〜3に示す。
図1に示すように、本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸の結晶は立方体結晶であるのに対し、
図2および3に示すようにマグネシウムとの共結晶は六角平板結晶、コバルトとの共結晶は双四角錐結晶であり、本発明の結晶は、従来の結晶とは全く異なる結晶形を示した。
【0034】
(C)水分
実施例1で調製した3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶について、カールフィッシャー法により結晶の水分含量を測定した結果、水分含量は9.3〜13.9%であった。すなわち、本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶では、3’,5’−サイクリックジグアニル酸1分子に対し約4〜6分子、より詳細には3.9〜6.2分子の水分子が結合又は付着していることが明らかとなった。
【0035】
(D)示差走査熱量分析
熱重量測定/示差熱分析(TG/DTA)装置(昇温速度5℃/分)で分析したところ、本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶は、213〜217℃において特徴的吸熱ピークを示した(
図4)。これに対し、3’,5’−サイクリックジグアニル酸とマグネシウムとの共結晶は221℃付近、コバルトとの共結晶は239℃付近に特徴的な吸熱ピークを示した(それぞれ
図5、6)。
【0036】
(E)赤外線吸収スペクトル
本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶ならびに参考例の3’,5’−サイクリックジグアニル酸とマグネシウムの共結晶および3’,5’−サイクリックジグアニル酸とコバルトの共結晶について、フーリエ変換赤外分光光度計Spectrum One(Perkin Elmer)を用いてATR(Attenuated Total Reflectance、減衰全反射)法によって赤外線吸収スペクトルを測定した。
【0037】
それぞれの結晶で観察された特徴的なピーク(cm
−1)の値を表1に示す。また、本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶ならびに参考例の3’,5’−サイクリックジグアニル酸マグネシウム共結晶および3’,5’−サイクリックジグアニル酸コバルト共結晶の赤外吸収スペクトルをそれぞれ
図7、
図8、
図9に示す。
【0038】
本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸の結晶は、3163、1712、1637、1601、1530、1470、1386、1339(cm
-1)付近に特徴的なピークを有していた。これに対し、マグネシウムとの共結晶は3226、1702、1634、1597、1531、1477、1345(cm
-1)付近に特徴的なピークを有し、コバルトとの共結晶は3179、1638、1576、1534、1487、1383(cm
-1)付近に特徴的なピークを有していた。これらの結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
(F)粉末X線回折
本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶ならびに参考例の3’,5’−サイクリックジグアニル酸とコバルトの共結晶および3’,5’−サイクリックジグアニル酸とマグネシウムの共結晶について、X線回折装置X’Pert PRO MPD(スペクトリス)を用い、下記の測定条件でX線回折スペクトルを測定した。
【0041】
(測定条件)
ターゲット:Cu
X線管電流:40mA
X線管電圧:45kV
走査範囲:2θ=4.0〜40.0°
前処理:めのう製乳鉢を用いて粉砕
【0042】
図10および表2に示すように、本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶は、回折角(2θ)が、8.1、8.3、10.8、11.8、16.9、19.1、19.5、22.4、25.0、26.7、27.0.27.7(°)付近に特徴的なピークを示した。なお、比較データとして3’,5’−サイクリックジグアニル酸マグネシウム共結晶の結果を
図11と表3に、3’,5’−サイクリックジグアニル酸コバルト共結晶の結果を
図12と表4に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
(G)安定性
本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶ならびに参考例のコバルトとの共結晶およびマグネシウムとの共結晶を、飽和食塩水を入れたデシケーター内に入れ50℃で保存し、保存開始から0、7、31、84、167日目後にそれぞれHPLC純度を測定した。HPLC純度(%)の測定結果を下記表5に、また、測定0日目のHPLC純度を100%としたときの、各測定日における保存開始からの残存率(%)を表6示す。
【0047】
結果、本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸は、50℃で167日間したときのHPLC純度低下率が1%未満であり、きわめて安定性が高いものであることが判明した。この値は、従来の金属との共結晶と比べても遜色ないものであり、実用的に使用可能なものであることが明らかになった。
【0048】
【表5】
【0049】
【表6】