特許第6392320号(P6392320)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6392320結晶性3’,5’−サイクリックジグアニル酸
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392320
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】結晶性3’,5’−サイクリックジグアニル酸
(51)【国際特許分類】
   C07H 21/02 20060101AFI20180910BHJP
【FI】
   C07H21/02
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-506468(P2016-506468)
(86)(22)【出願日】2015年2月27日
(86)【国際出願番号】JP2015055975
(87)【国際公開番号】WO2015133411
(87)【国際公開日】20150911
【審査請求日】2017年4月18日
(31)【優先権主張番号】特願2014-40108(P2014-40108)
(32)【優先日】2014年3月3日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006770
【氏名又は名称】ヤマサ醤油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】田中 寿基
(72)【発明者】
【氏名】石毛 和也
【審査官】 伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/101526(WO,A1)
【文献】 YAN H and LOPEZ AGUILAR A,Nucleosides, Nucleotides & Nucleic Acids,2007年,Vol.26,p.189-204
【文献】 石毛和也,バイオサイエンスとインダストリー,2012年11月 1日,第70巻第6号,466〜467頁
【文献】 平山令明編著,有機化合物結晶作製ハンドブック−原理とノウハウ−,丸善株式会社,2008年 7月25日,p.17-23,37-40,45-51,57-65
【文献】 GUAN, Y. et al,Molecular Structure of Cyclic Diguanylic Acid at 1Å Resolution of Two Crystal Forms: Self-association, Interactions with Metal Ion/Planar Dyes and Modeling Studies.,Journal of Biomolecular Structure & Dynamics,1993年,Vol.11, No.2,p253-276
【文献】 LIAW, Y C. et al,Cyclic diguanylic acid behaves as a host molecule for planar intercalators,FEBS LETTERS,1990年,Vol.264, No.2,pp223-227
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末X線分析において、回折角(2θ)が、8.1±0.4、8.3±0.4、10.8±0.5、11.8±0.5、16.9±0.8、19.1±0.9、19.5±0.9、22.4±1.1、25.0±1.2、26.7±1.3、27.0±1.3、27.7±1.3(°)に特徴的なピークを示
3’,5’−サイクリックジグアニル酸1分子に対し3.9〜6.2分子の水分子が結合又は付着している、金属塩を含まない遊離酸結晶である3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶。
【請求項2】
高速液体クロマトグラフィーで測定したとき97%以上の純度を有する請求項1記載の結晶。
【請求項3】
高速液体クロマトグラフィーで測定したとき99%以上の純度を有する請求項1または2記載の結晶。
【請求項4】
熱重量測定/示差熱分析(TG/DTA)装置により測定したとき、213〜217℃に吸熱ピークを示す、請求項1からのいずれかに記載の結晶。
【請求項5】
赤外線吸収スペクトルを測定したとき、3163±1.9、1712±1.9、1637±1.9、1601±1.9、1530±1.9、1470±1.9、1386±1.9、1339±1.9(cm-1)に特徴的なピークを有する、請求項1からのいずれかに記載の結晶。
【請求項6】
下記(1)〜(3)の工程を含む、粉末X線分析において、回折角(2θ)が、8.1±0.4、8.3±0.4、10.8±0.5、11.8±0.5、16.9±0.8、19.1±0.9、19.5±0.9、22.4±1.1、25.0±1.2、26.7±1.3、27.0±1.3、27.7±1.3(°)に特徴的なピークを示す、金属塩を含まない遊離酸結晶である3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶の製造法。
(1)3’,5’−サイクリックジグアニル酸水溶液を50〜70℃まで加熱する工程、
(2)3’,5’−サイクリックジグアニル酸溶液に酸を添加し、pH1〜3まで低下させる工程、
(3)3’,5’−サイクリックジグアニル酸溶液を1〜10℃になるまで冷却する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアジュバントとして有用な物質であると考えられる3’,5’−サイクリックジグアニル酸の結晶および当該結晶の製造法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
3’,5’−サイクリックジグアニル酸は細菌のバイオフィルム形成などに関与するシグナル伝達物質であり、近年になってアジュバント、抗ウイルス剤、抗がん剤としての応用が期待されている(非特許文献1)。これまでに3’,5’−サイクリックジグアニル酸の製造方法としては、たとえばGeobacillus属に由来するジグアニレートシクラーゼを用いた、酵素による合成法などが知られている(特許文献1)。
また従来、3’,5’−サイクリックジグアニル酸は、凍結乾燥品またはコバルトやマグネシウム金属塩との共結晶として取得されている(非特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2013−129427
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Vaccine, 28, 3080−3085(2010)
【非特許文献2】Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, 3235−3239(1990)
【非特許文献3】FEBS Letters, 264, 223−227(1990)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来3’,5’−サイクリックジグアニル酸は、コバルトなどの金属塩を含有する共結晶として提供されており、当該結晶を医薬品原料等に利用しようとした場合には、安全性等の問題が生じる恐れがあった。しかしながら、これらの金属塩を含有しない3’,5’−サイクリックジグアニル酸の遊離酸結晶については、その取得方法も含め従来全く知られていなかった。また、従来の結晶取得方法は、いずれも蒸気拡散法を採用していることから、短期間に大量の結晶を取得するには向いておらず、簡便に大量の結晶を取得できる方法の開発が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、3’,5’−サイクリックジグアニル酸の結晶化に関して鋭意研究を重ねた結果、3’,5’−サイクリックジグアニル酸の遊離酸結晶を初めて得た。
【0007】
また、その結晶の製造法についても、3’,5’−サイクリックジグアニル酸水溶液に酸を添加し、pH1〜3まで低下させるという、従来の金属塩との共結晶の製造法と比較して、きわめて簡易な工程で作製可能であることを新たに見出した。
【発明の効果】
【0008】
本発明方法により得られた3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶は、既存の結晶と比べて遜色ない安定性を示し、余分な金属イオンを含まないことから様々な用途にて取り扱いやすく、医薬品原料等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶の結晶写真を示す。
図2図2は、3’,5’−サイクリックジグアニル酸のマグネシウム共結晶の結晶写真を示す。
図3図3は、3’,5’−サイクリックジグアニル酸のコバルト共結晶の結晶写真を示す。
図4図4は、3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶の熱重量測定/示差熱分析結果を示す。
図5図5は、3’,5’−サイクリックジグアニル酸のマグネシウム共結晶の熱重量測定/示差熱分析結果を示す。
図6図6は、3’,5’−サイクリックジグアニル酸のコバルト共結晶の熱重量測定/示差熱分析結果を示す。
図7図7は、3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶の赤外線吸収スペクトルを示す。
図8図8は、3’,5’−サイクリックジグアニル酸のマグネシウム共結晶の赤外線吸収スペクトルを示す。
図9図9は、3’,5’−サイクリックジグアニル酸のコバルト共結晶の赤外線吸収スペクトルを示す。
図10図10は、3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶のX線回折スペクトルを示す。
図11図11は、3’,5’−サイクリックジグアニル酸のマグネシウム共結晶のX線回折スペクトルを示す。
図12図12は、3’,5’−サイクリックジグアニル酸のコバルト共結晶のX線回折スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、下記の構造式で示される3’,5’−サイクリックジグアニル酸の結晶を提供するものである。
【0011】
【化1】
【0012】
本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶は、結晶化の工程において、コバルトやマグネシウムなどの金属を全く利用することなく得られる、金属塩を含まない遊離酸結晶である。なお、本発明における「3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶」は、特に限定しない場合、当該金属塩を含まない遊離酸結晶のことをいう。
【0013】
本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶は、高速液体クロマトグラフィー法にて純度検定したとき、97%以上、より好ましくは99%以上の純度を有する。
【0014】
本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶について、カールフィッシャー法にて測定したときの水分9.3〜13.9%である。すなわち本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶には、3’,5’−サイクリックジグアニル酸1分子に対し4〜6分子の、より詳細には3.9〜6.2分子の水分子が結合または付着する。
【0015】
本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶は、熱重量測定/示差熱分析(TG/DTA)装置(昇温速度5℃/分)で分析したとき、213〜217℃に吸熱ピークを有する。当該温度は、公知の金属との共結晶のものに比べて低い。
【0016】
本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶は、立方体結晶として得られる。これに対し、従来知られる金属との共結晶は六角平板または双四角錐結晶であり、本発明の結晶と従来知られる金属との共結晶は、その構造において相違するものである。
【0017】
本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶は、赤外線吸収スペクトルを測定したとき、3163、1712、1637、1601、1530、1470、1386、1339(cm-1)付近に特徴的なピークを有する。
【0018】
なお、赤外線吸収スペクトル測定では、一般に2(cm−1)未満の誤差範囲を含む場合があることから、上記数値と赤外線吸収スペクトルにおけるピークの位置が完全に一致する結晶のほか、ピークが2cm−1未満の誤差で一致する結晶も、本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸の結晶に包含される。例えば、赤外線吸収スペクトルを測定したとき、3163±1.9、1712±1.9、1637±1.9、1601±1.9、1530±1.9、1470±1.9、1386±1.9、1339±1.9(cm-1)に特徴的なピークを有する、
【0019】
本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶は、粉末X線分析において特徴的なピークを有し、たとえば本発明の結晶をCu−Kα線を用いた粉末X線回折装置で分析すると、後述実施例に示すように、回折角(2θ)が、8.1、8.3、10.8、11.8、16.9、19.1、19.5、22.4、25.0、26.7、27.0、27.7(°)付近に特徴的なピークを示す(図10参照)。
【0020】
なお一般に、粉末X線回折における回折角(2θ)は、5%未満の誤差範囲を含む場合があることから、粉末X線回折におけるピークの回折角が完全に一致する結晶のほか、ピークの回折角が5%未満の誤差で一致する結晶も、本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸の結晶に包含される。例えば、粉末X線回折において、回折角(2θ)は、8.1±0.4、8.3±0.4、10.8±0.5、11.8±0.5、16.9±0.8、19.1±0.9、19.5±0.9、22.4±1.1、25.0±1.2、26.7±1.3、27.0±1.3、27.7±1.3(°)に特徴的なピークを有する。
【0021】
本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶は、飽和食塩水を入れたデシケーター内にて、50℃で167日間保存したときの高速液体クロマトグラフィー測定値における純度低下率1%未満であり、きわめて安定性の高い結晶である。
【0022】
本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶は、3’,5’−サイクリックジグアニル酸水溶液に酸を添加し、pH1〜3まで低下させることによって得ることができる。
【0023】
結晶化に用いる3’,5’−サイクリックジグアニル酸は、酵素合成法や化学合成法など公知の方法によって合成すればよいが、酵素合成法によって合成したものが好ましい。酵素合成を行うに当たっては既知の方法に従えばよく、たとえば特許文献1に記載の方法を用いることができる。反応後、反応液中に生成した3’,5’−サイクリックジグアニル酸は、活性炭やイオン交換樹脂などを用いた通常のクロマトグラフィー処理法により単離精製することができる。
【0024】
結晶化では、3’,5’−サイクリックジグアニル酸水溶液に酸を添加し、pH1〜3、好ましくはpH1.5〜2.0まで低下させる。使用する酸としては、塩酸、硫酸、硝酸などを例示することができる。酸を急激に添加することによるアモルファス化や急激な結晶析出を防ぐため、添加はゆっくり行うことが好ましい。なお、結晶の取得収率が低い場合には、上記結晶の濾液から、上記した晶析処理を実施することで、2番結晶を回収してもよい。
【0025】
また、結晶化においては、(1)単離精製した3’,5’−サイクリックジグアニル酸水溶液を50〜70℃まで加熱する工程、(2)当該溶液に酸を添加し、pH1〜3、好ましくはpH1.5〜2.0まで低下させる工程、(3)当該溶液を1〜10℃、好ましくは4〜8℃となるまで冷却する工程、から成る方法によって行っても良い。より確実に結晶を析出させるため、(3)の冷却はゆっくりと行うことが好ましい。具体的には、温度勾配−3〜−11℃/hrで冷却することが好ましい。さらに、(1)(2)の工程、(2)(3)の工程は、同時に行うこともできる。
【0026】
上記製法によって得られた3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶は、濾取した後、30〜70℃で1〜10時間乾燥させることで、製品とすることができる。乾燥させる際には、減圧乾燥等の方法を適宜利用することができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明がこれに限定されないのは明らかである。
(実施例1)3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶の製造
公知の方法(特許文献1)に従って、酵素的に3’,5’−サイクリックジグアニル酸を合成し、精製を行った。
精製して得られた59.9mMの3’,5’−サイクリックジグアニル酸溶液(191ml)を、インキュベーターにて60℃に加温し、撹拌しながら1Nの塩酸溶液 27.5mlを2時間かけて添加し、pH1.9とした。
【0028】
塩酸溶液添加の後、プログラムインキュベーターを用いて、温度勾配−7℃/hrで、液温が5℃になるまで冷却し、結晶を析出せしめた。このようにして析出した結晶はグラスフィルター(17G3)にて濾取し、湿結晶を得た。湿結晶は9時間、30℃乾燥して、乾燥結晶8.095gを得た。
【0029】
(参考例)3’,5’−サイクリックジグアニル酸金属共結晶の製造
非特許文献2、3の記載を参考に、下記のように3’,5’−サイクリックジグアニル酸とマグネシウムまたはコバルトとの共結晶を得た。
(参考例1)3’,5’−サイクリックジグアニル酸とマグネシウムとの共結晶
結晶化開始液(2mM 3’,5’−サイクリックジグアニル酸、20mM MgCl、20mM glycine−HCl(pH2.1)、7%(v/v) 2−MPD)500mLを調製した。
当該結晶化開始液を55℃の加温下、エバポレーターで濃縮し、白濁が観察された時点で再度500mLにフィルアップし、55℃で30分加温して完全溶解させた。これを再度濃縮し、清澄化させたものを25℃で一晩静置すると、六角平板結晶の析出が観察されたことから、蒸気拡散法にて結晶を十分育成し、マグネシウムとの共結晶を得た。
【0030】
(参考例2)3’,5’−サイクリックジグアニル酸とコバルトとの共結晶
結晶化開始液(2mM 3’,5’−サイクリックジグアニル酸,11mM CoCl,20mM glycine−HCl(pH2.1),7%(v/v) 2−MPD)500mlを調製した。
当該結晶化開始液を55℃の加温下、エバポレーターで濃縮した後、25℃で一晩静置すると、双四角錐結晶の析出が観察されたことから、蒸気拡散法での結晶育成を行った。蒸気拡散法では、密閉容器(TLC展開槽)に800mLの50%2−MPD(水:MPD=1:1)を張り、両ビーカーを6ヶ月静置することで、コバルトとの共結晶を得た。
【0031】
(実施例2)3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶の物性
上記実施例1で調製した3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶に対して実施した機器分析の結果について以下に示す。
【0032】
(機器分析)
(A)純度検定
実施例1で得られた3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶の純度を、高速液体クロマトグラフィー法で分析した結果、3’,5’−サイクリックジグアニル酸純度は99.0%であった。なお、高速液体クロマトグラフィー法は以下の条件で行った。
(条件)
カラム:Hydrosphere C18(YMC社製)
溶出液:0.1M TEA−P(pH6.0)
検出法:UV260nmによる検出
【0033】
(B)結晶形
実施例1で調製した3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶ならびに参考例で調製した3’,5’−サイクリックジグアニル酸とマグネシウムとの共結晶およびコバルトとの共結晶の代表的な写真を図1〜3に示す。図1に示すように、本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸の結晶は立方体結晶であるのに対し、図2および3に示すようにマグネシウムとの共結晶は六角平板結晶、コバルトとの共結晶は双四角錐結晶であり、本発明の結晶は、従来の結晶とは全く異なる結晶形を示した。
【0034】
(C)水分
実施例1で調製した3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶について、カールフィッシャー法により結晶の水分含量を測定した結果、水分含量は9.3〜13.9%であった。すなわち、本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶では、3’,5’−サイクリックジグアニル酸1分子に対し約4〜6分子、より詳細には3.9〜6.2分子の水分子が結合又は付着していることが明らかとなった。
【0035】
(D)示差走査熱量分析
熱重量測定/示差熱分析(TG/DTA)装置(昇温速度5℃/分)で分析したところ、本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶は、213〜217℃において特徴的吸熱ピークを示した(図4)。これに対し、3’,5’−サイクリックジグアニル酸とマグネシウムとの共結晶は221℃付近、コバルトとの共結晶は239℃付近に特徴的な吸熱ピークを示した(それぞれ図5、6)。
【0036】
(E)赤外線吸収スペクトル
本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶ならびに参考例の3’,5’−サイクリックジグアニル酸とマグネシウムの共結晶および3’,5’−サイクリックジグアニル酸とコバルトの共結晶について、フーリエ変換赤外分光光度計Spectrum One(Perkin Elmer)を用いてATR(Attenuated Total Reflectance、減衰全反射)法によって赤外線吸収スペクトルを測定した。
【0037】
それぞれの結晶で観察された特徴的なピーク(cm−1)の値を表1に示す。また、本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶ならびに参考例の3’,5’−サイクリックジグアニル酸マグネシウム共結晶および3’,5’−サイクリックジグアニル酸コバルト共結晶の赤外吸収スペクトルをそれぞれ図7図8図9に示す。
【0038】
本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸の結晶は、3163、1712、1637、1601、1530、1470、1386、1339(cm-1)付近に特徴的なピークを有していた。これに対し、マグネシウムとの共結晶は3226、1702、1634、1597、1531、1477、1345(cm-1)付近に特徴的なピークを有し、コバルトとの共結晶は3179、1638、1576、1534、1487、1383(cm-1)付近に特徴的なピークを有していた。これらの結果を表1に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
(F)粉末X線回折
本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶ならびに参考例の3’,5’−サイクリックジグアニル酸とコバルトの共結晶および3’,5’−サイクリックジグアニル酸とマグネシウムの共結晶について、X線回折装置X’Pert PRO MPD(スペクトリス)を用い、下記の測定条件でX線回折スペクトルを測定した。
【0041】
(測定条件)
ターゲット:Cu
X線管電流:40mA
X線管電圧:45kV
走査範囲:2θ=4.0〜40.0°
前処理:めのう製乳鉢を用いて粉砕
【0042】
図10および表2に示すように、本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶は、回折角(2θ)が、8.1、8.3、10.8、11.8、16.9、19.1、19.5、22.4、25.0、26.7、27.0.27.7(°)付近に特徴的なピークを示した。なお、比較データとして3’,5’−サイクリックジグアニル酸マグネシウム共結晶の結果を図11と表3に、3’,5’−サイクリックジグアニル酸コバルト共結晶の結果を図12と表4に示す。
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
(G)安定性
本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸結晶ならびに参考例のコバルトとの共結晶およびマグネシウムとの共結晶を、飽和食塩水を入れたデシケーター内に入れ50℃で保存し、保存開始から0、7、31、84、167日目後にそれぞれHPLC純度を測定した。HPLC純度(%)の測定結果を下記表5に、また、測定0日目のHPLC純度を100%としたときの、各測定日における保存開始からの残存率(%)を表6示す。
【0047】
結果、本発明の3’,5’−サイクリックジグアニル酸は、50℃で167日間したときのHPLC純度低下率が1%未満であり、きわめて安定性が高いものであることが判明した。この値は、従来の金属との共結晶と比べても遜色ないものであり、実用的に使用可能なものであることが明らかになった。
【0048】
【表5】
【0049】
【表6】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12