(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392342
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】インピンジメントバッフルを有するタービンノズル
(51)【国際特許分類】
F01D 9/02 20060101AFI20180910BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20180910BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20180910BHJP
F02C 7/18 20060101ALI20180910BHJP
F02C 7/20 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
F01D9/02 104
F01D9/02 102
F01D25/00 L
F02C7/00 C
F02C7/18 A
F02C7/20 Z
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-527995(P2016-527995)
(86)(22)【出願日】2014年6月18日
(65)【公表番号】特表2016-525181(P2016-525181A)
(43)【公表日】2016年8月22日
(86)【国際出願番号】US2014042985
(87)【国際公開番号】WO2015009392
(87)【国際公開日】20150122
【審査請求日】2017年6月9日
(31)【優先権主張番号】61/856,376
(32)【優先日】2013年7月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】テュアシャー,マイケル・レイ
(72)【発明者】
【氏名】セニル,ダレル・グレン
(72)【発明者】
【氏名】フェルプス,グレッグ
【審査官】
山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0068034(US,A1)
【文献】
英国特許出願公告第00685769(GB,A)
【文献】
特開昭50−026103(JP,A)
【文献】
西独国特許出願公開第02127454(DE,A)
【文献】
特開2000−282806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 9/02
F01D 25/00
F02C 7/00
F02C 7/18
F02C 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンノズル装置であって、
内側バンド(12)と外側バンド(14)の間に延在する翼形ベーン(16)であって、ベーン(16)の内部が開いていて外側バンド(14)の翼形開口(30)と連絡しており、ベーン(16)と両バンド(12,14)とが低延性材料で全体が構成された単体の一部である、ベーン(16)と、
ベーン(16)の内部に配置された金属バッフル(42)であって、上端(44)及び下端(46)を有し、下端(46)が端壁(50)で閉じられた中空内部空間を画成する周壁(48)を含んでおり、複数のインピンジメント孔(56)が周壁(48)を貫通して形成されている、バッフル(42)と、
前記開口(30)の形状と略一致する開リング形状の本体(60)を有する金属リテーナ(58)であって、本体(60)が、インピンジメントバッフル(42)の上端(44)に当接し、複数の機械式締結具(86,92)によって外側バンド(14)に接続されているリテーナ(58)と
を備え、
外側バンド(14)の開口(30)の周囲に凹部(32)が形成されていて、バッフルフランジ(52)が、上端(44)の近傍でインピンジメントバッフル(42)の周囲から横方向外側に延在し、凹部(32)に受け止められている、タービンノズル装置。
【請求項2】
リテーナ(58)の中央開口の周りにラベット(66)が形成されていて、バッフル(42)の上縁(84)が、ラベット(66)に受け止められている、請求項1に記載のタービンノズル装置。
【請求項3】
バッフルフランジ(52)が、上端(44)の近傍でバッフル(42)の周囲から横方向外側に延在して、凹部(32)に受け止められており、
周溝(68)が本体(60)の底面に形成され、ラベット(66)の横方向外側に離隔して配置されており、
リテーナ(58)とバッフルフランジ(52)の間で半径方向に負荷をかけるために、周溝(68)にばね(100)が配置されている、請求項1又は2に記載のタービンノズル装置。
【請求項4】
タービンノズル装置であって、
内側バンド(12)と外側バンド(14)の間に延在する翼形ベーン(16)であって、ベーン(16)の内部が開いていて外側バンド(14)の翼形開口(30)と連絡しており、ベーン(16)と両バンド(12,14)とが低延性材料で全体が構成された単体の一部である、ベーン(16)と、
ベーン(16)の内部に配置された金属バッフル(42)であって、上端(44)及び下端(46)を有し、下端(46)が端壁(50)で閉じられた中空内部空間を画成する周壁(48)を含んでおり、複数のインピンジメント孔(56)が周壁(48)を貫通して形成されている、バッフル(42)と、
前記開口(30)の形状と略一致する開リング形状の本体(60)を有する金属リテーナ(58)であって、本体(60)が、インピンジメントバッフル(42)の上端(44)に当接し、複数の機械式締結具(86,92)によって外側バンド(14)に接続されているリテーナ(58)と
を備え、
外側バンド(14)が、外側バンド(14)の前端の近傍で半径方向外側に延在する前方フランジ(34)と、外側バンド(14)の後端の近傍で半径方向外側に延在する後方フランジ(38)とを含んでいて、
リテーナ(58)の本体(60)が、本体(60)から延在する延長部(70,76)を有し、半径方向に整列したリテーナタブ(72,78)が、本体(60)の先端に存在し、リテーナタブ(72,78)が、前方フランジ(34)又は後方フランジ(38)に隣接していて前方フランジ(34)又は後方フランジ(38)と平行であり、
リテーナピン(86,92)が、リテーナタブ(72,78)と、前方フランジ(34)又は後方フランジ(38)とを通る、タービンノズル装置。
【請求項5】
タービンノズル装置であって、
内側バンド(12)と外側バンド(14)の間に延在する翼形ベーン(16)であって、ベーン(16)の内部が開いていて外側バンド(14)の翼形開口(30)と連絡しており、ベーン(16)と両バンド(12,14)とが低延性材料で全体が構成された単体の一部である、ベーン(16)と、
ベーン(16)の内部に配置された金属バッフル(42)であって、上端(44)及び下端(46)を有し、下端(46)が端壁(50)で閉じられた中空内部空間を画成する周壁(48)を含んでおり、複数のインピンジメント孔(56)が周壁(48)を貫通して形成されている、バッフル(42)と、
前記開口(30)の形状と略一致する開リング形状の本体(60)を有する金属リテーナ(58)であって、本体(60)が、インピンジメントバッフル(42)の上端(44)に当接し、複数の機械式締結具(86,92)によって外側バンド(14)に接続されているリテーナ(58)と
を備え、
外側バンド(14)が、外側バンド(14)の後端の近傍で半径方向外側に延在する後方フランジ(38)を含んでおり、
後方延長部(70)が、本体(60)の後端(64)に配置されているとともに、その遠位端において後方フランジ(38)に隣接していて後方フランジ(38)と平行な半径方向に整列した後方リテーナタブ(72)を含んでおり、
後方リテーナピン(86)が、後方リテーナタブ(72)及び後方フランジ(38)を通る、タービンノズル装置。
【請求項6】
後方リーフシール(88)が、後方フランジ(38)と後方リテーナタブ(72)の間に配置されている、請求項5に記載のタービンノズル装置。
【請求項7】
V字状の後方ばね(90)が、後方リテーナタブ(72)と後方リーフシール(88)の間に配置され、後方リーフシール(88)を後方フランジ(38)に対して付勢する、請求項6に記載のタービンノズル装置。
【請求項8】
タービンノズル装置であって、
内側バンド(12)と外側バンド(14)の間に延在する翼形ベーン(16)であって、ベーン(16)の内部が開いていて外側バンド(14)の翼形開口(30)と連絡しており、ベーン(16)と両バンド(12,14)とが低延性材料で全体が構成された単体の一部である、ベーン(16)と、
ベーン(16)の内部に配置された金属バッフル(42)であって、上端(44)及び下端(46)を有し、下端(46)が端壁(50)で閉じられた中空内部空間を画成する周壁(48)を含んでおり、複数のインピンジメント孔(56)が周壁(48)を貫通して形成されている、バッフル(42)と、
前記開口(30)の形状と略一致する開リング形状の本体(60)を有する金属リテーナ(58)であって、本体(60)が、インピンジメントバッフル(42)の上端(44)に当接し、複数の機械式締結具(86,92)によって外側バンド(14)に接続されているリテーナ(58)と
を備え、
外側バンド(14)が、外側バンド(14)の前端の近傍で半径方向外側に延在する前方フランジ(34)を含んでおり、
前方延長部(76)が、本体(60)の前端(62)に配置され、前方延長部(76)の先端に、半径方向に整列した前方リテーナタブ(78)を含んでおり、前方リテーナタブ(78)が、2つの平行な脚部(80A,80B)を有し、前方フランジ(34)が2つの脚部(80A,80B)間の空間に受け止められており、
前方リテーナピン(92)が、前方リテーナタブ(72)及び前方フランジ(34)を通る、タービンノズル装置。
【請求項9】
外側バンド(14)が、前方フランジの前方に配置されたシールリップ(94)を含んでおり、
前方リーフシール(96)が、前方フランジ(34)とシールリップ(94)の間に配置されている、請求項8に記載のタービンノズル装置。
【請求項10】
前方ばね(98)が、前方リテーナタブ(78)と前方リーフシール(96)の間に配置され、前方リーフシール(96)をシールリップ(94)に対して付勢する、請求項9に記載のタービンノズル装置。
【請求項11】
バンパ(54)の配列が、インピンジメントバッフル(42)の周壁(48)から横方向外側に延在する、請求項1乃至10のいずれか1項に記載のタービンノズル装置。
【請求項12】
低延性材料が、約1%以下の室温引張延性を有する、請求項1乃至11のいずれか1項に記載のタービンノズル装置。
【請求項13】
ベーンが後縁スロット(26)を含む、請求項1乃至12のいずれか1項に記載のタービンノズル装置。
【請求項14】
ベーンがフィルム冷却孔(28)を有する、請求項1乃至13のいずれか1項に記載のタービンノズル装置。
【請求項15】
複数のベーン(16)がバッフル(42)を各々有していて、リテーナ(58)が内側バンド(12)と外側バンド(14)の間に配置されている、請求項1乃至14のいずれか1項に記載のタービンノズル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、ガスタービンエンジンに関し、より詳細には、低延性材料を組み込むそのようなエンジン用のタービンノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
通常のガスタービンエンジンは、直列的に流れる関係にある高圧圧縮機、燃焼器、及び高圧タービンを有するターボ機械コアを含む。このコアは、主要なガス流を生成するために、既知の方式で操作可能である。高圧タービンは、主要なガス流からエネルギーを抽出する1つ以上の段を含む。各段は、静止したタービンノズルを備え、タービン翼を保持する下流のロータが後に続く。これらの部品は、非常に高温の環境で動作し、十分な寿命を確保するために、空気流によって冷却されなければならない。通常、冷却のために使用される空気は、圧縮機から抽出される(抜き取られる)。抽気空気の使用は、燃料消費率(「SFC」)に悪影響を及ぼし、一般に最小化されるべきである。
【0003】
金属タービン構造体は、セラミックマトリックス複合材(「CMC」)等の、高温性能がより優れた材料で置き換えられ得る。CMCの密度は、タービンエンジンの高温部に使用される従来の金属超合金の密度の約1/3であり、このため、同じ部品形状を維持しつつ金属合金をCMCで置き換えることにより、部品の重量が減少し、冷却空気流の必要性も同様に減少する。
【0004】
CMC材料は、タービン部品において有用ではあるが、カンチレバーの部分、ばね、薄い部分等のいくつかの機械素子用にCMC材料を使用することは難しい。したがって、CMC部品は通常、バッフル、ばね素子、又は封止部等の金属部品に取り付けられるか、又は接続される必要がある。
【0005】
このことは、CMC材料が、金属と比較した場合、引張延性が比較的低く、又は破断点歪みが低いという事実によって複雑化する。また、CMCは、熱膨張係数(「CTE」)が、超合金の熱膨張係数の約1/3であり、このことは、2つの異なる材料間の剛接が、温度の変化に伴って大きな歪み及び応力を引き起こすことと、CMC部品及び金属部品を共に固定することが、熱応力をもたらすか、又はクランプアタッチメントを開いてしまう可能性があることとを意味する。CMCについての許容可能な応力限界はまた、金属合金より低く、このことにより、CMC部品のための簡単かつ低応力の設計に対する必要性が高まる。最後に、CMC部品と金属部品との材料組成が異なるため、ろう付け及び溶接等の従来の接合方法が、実施不可能である。
【0006】
したがって、CMC部品における機械的負荷及び熱応力を最小化する、CMCその他の低延性部品を金属部品と組み合わせる装置に対する必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】仏国特許出願公開第2976616号明細書
【発明の概要】
【0008】
この必要性は、本発明によって対処される。本発明は、低延性材料から作られ、低延性材料に取り付けられた金属インピンジメントバッフルを有し、かつ必要に応じてさらなる金属封止素子を含むタービンノズルを提供する。
【0009】
本発明の一態様では、タービンノズル装置は、内側バンドと外側バンドの間に延在する翼形ベーンであって、ベーンの内部が開いていて外側バンドの翼形開口と連絡しており、ベーンと両バンドとが低延性材料で全体が構成された単体の一部である、ベーンと、ベーンの内部に配置された金属バッフルであって、上端及び下端を有し、下端が端壁で閉じられた中空内部空間を画成する周壁を含んでおり、複数のインピンジメント孔が周壁を貫通して形成されているバッフルと、開口の形状と略一致する開リング形状の本体を有する金属リテーナであって、本体が、インピンジメントバッフルの上端に当接し、複数の機械式締結具によって外側バンドに接続されているリテーナとを備える。
【0010】
本発明の別の態様では、リテーナの中央開口の周りにラベットが形成され、バッフルの上縁がラベットに受け止められている。
【0011】
本発明の別の態様では、外側バンドの開口の周囲に凹部が形成され、バッフルフランジが、上端の近傍でインピンジメントバッフルの周囲から横方向外側に延在し、凹部に受け止められている。
【0012】
本発明の別の態様では、バッフルフランジが、上端の近傍でバッフルの周囲から横方向外側に延在し、凹部に受け止められており、周溝が、本体の底面に形成され、ラベットの横方向外側に離隔して配置されており、リテーナとバッフルフランジの間で半径方向に負荷をかけるために、周溝にばねが配置されている。
【0013】
本発明の別の態様では、外側バンドが、外側バンドの前端の近傍で半径方向外側に延在する前方フランジと、外側バンドの後端の近傍で半径方向外側に延在する後方フランジとを含み、リテーナの本体が、本体から延在する延長部を有し、半径方向に整列したリテーナタブが、本体の先端に存在し、リテーナタブが、前方フランジ又は後方フランジに隣接していて前方フランジ又は後方フランジと平行であり、リテーナピンが、リテーナタブと、前方フランジ又は後方フランジとを通る。
【0014】
本発明の別の態様では、外側バンドが、外側バンドの後端の近傍で半径方向外側に延在する後方フランジを含み、後方延長部が、本体の後端に配置されているとともに、その遠位端において後方フランジに隣接していて後方フランジと平行な半径方向に整列した後方リテーナタブを含み、後方リテーナピンが、後方リテーナタブ及び後方フランジを通る。
【0015】
本発明の別の態様では、後方リーフシールが、後方フランジと後方リテーナタブの間に配置されている。
【0016】
本発明の別の態様では、V字状の後方ばねが、後方リテーナタブと後方リーフシールの間に配置され、後方リーフシールを後方フランジに対して付勢する。
【0017】
本発明の別の態様では、外側バンドが、外側バンドの前端の近傍で半径方向外側に延在する前方フランジを含み、前方延長部が、本体の前端に配置され、前方延長部の先端に、半径方向に整列した前方リテーナタブを含み、前方リテーナタブが、2つの平行な脚部を有し、前方フランジが、2つの脚部間の空間に受け止められており、前方リテーナピンが、前方リテーナタブ及び前方フランジを通る。
【0018】
本発明の別の態様では、外側バンドが、前方フランジの前方に配置されたシールリップを含み、前方リーフシールが、前方フランジとシールリップの間に配置されている。
【0019】
本発明の別の態様では、前方ばねが、前方リテーナタブと前方リーフシールの間に配置され、前方リーフシールをシールリップに対して付勢する。
【0020】
本発明の別の態様では、バンパの配列が、インピンジメントバッフルの周壁から、横方向外側に延在する。
【0021】
本発明の別の態様では、低延性材料が、約1%以下の室温での引張延性を有する。
【0022】
本発明の別の態様では、ベーンが、後縁スロットを含む。
【0023】
本発明の別の態様では、ベーンが、フィルム冷却孔を有する。
【0024】
本発明の別の態様では、複数のベーンが、バッフルをそれぞれ有し、リテーナが、内側バンドと外側バンドの間に配置されている。
【0025】
本発明は、添付の図面の図を用いた以下の説明を参照することにより、最もよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の態様に従って組み立てられた、ガスタービンエンジン用のタービンノズルセグメントの概略斜視図である。
【
図2】
図1の線2−2に沿って切り取られた断面図である。
【
図3】
図1の線3−3に沿って切り取られた断面図である。
【
図4】
図1の線4−4に沿って切り取られた断面図である。
【
図5】
図1のタービンノズルセグメントの上面図である。
【
図6】
図5の線6−6に沿って切り取られた図である。
【
図7】周囲のノズルが明確にするために取り除かれた、
図1のノズルセグメントにおける一対のインピンジメントバッフルの側面図である。
【
図8】
図1のノズルセグメントにおけるリテーナの底部斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面を参照すると、これらの図面では同一の参照数字が、様々な図の全体を通して同じ要素を示しているが、
図1は、本発明の態様に従って組み立てられた例示的なタービンノズル10を示している。タービンノズル10は、ガスタービンエンジンのタービン部分の一部を形成する静止部品である。タービンノズル10が、タービンロータの上流でガスタービンエンジンに取り付けられ、ロータディスクが、翼形タービン翼の配列を保持し、ノズル及びロータが、タービンの段の1つを定めることが理解されるであろう。ノズルの主要な機能は、燃焼ガス流を下流のタービンロータ段に導くことである。
【0028】
タービンは、既知のタイプのガスタービンエンジンにおける既知の部品であり、上流の燃焼器(不図示)からの高温加圧燃焼ガスからエネルギーを抽出し、このエネルギーを機械的な仕事に変換するように機能する。その後、機械的な仕事は、圧縮機、ファン、シャフト、又は他の機械的負荷(不図示)を駆動するために使用される。本明細書に説明される原理は、ターボファンエンジン、ターボジェットエンジン、及びターボシャフトエンジン、並びに他の車両、又は静止した用途で使用されるタービンエンジンに対して同じように適用可能である。
【0029】
本明細書で使用される場合、「軸方向の」又は「長手方向の」という用語は、ガスタービンエンジンの回転軸線に平行な方向を指し、「半径方向の」という用語は、軸方向に垂直な方向を指し、「接線の」又は「円周方向の」という用語は、軸方向及び接線方向の双方に垂直な方向を指すことに留意されたい。(
図1の矢印「A」、矢印「R」、及び矢印「T」参照)。本明細書で使用される場合、「前方」又は「前部」という用語は、部品を通り抜けるか又は部品の周りを流れる空気流における比較的上流の場所を指し、「後方」又は「後部」という用語は、部品を通り抜けるか又は部品の周りを流れる空気流における比較的下流の場所を指す。この流れの方向は、
図1の矢印「F」によって示されている。これらの方向を示す用語は、単に説明の便宜上使用されるものであり、これによって説明される構造体が特定の向きを有することを必要とするものではない。
【0030】
タービンノズル10は、環状の内側バンド12及び環状の外側バンド14を含み、環状の内側バンド12及び環状の外側バンド14は、それぞれタービンノズル10を通る高温ガスの流路の内側境界及び外側境界を定める。
【0031】
翼形タービンベーン(又は単に「ベーン」)16の配列が、内側バンド12と外側バンド14の間に配置されている。各ベーン16は、前縁18と後縁20の間に延在する、互いに反対方向を向く凹形の面及び凸形の面を有し、かつ根端22と先端24の間に延在する。図示された例では、タービンノズル10は、より大きな環状構造体のセグメントであり、2つのベーン16を含む。この構成は、一般に「ダブレット」と呼ばれている。本発明の原理は、単一のベーンを有するノズル、2つより多いベーンを有するセグメント、又は完全なノズルリング構造体に対して同じように適用可能である。
【0032】
内側バンド12及び外側バンド14並びにベーン16は、低延性高温対応材料から全体が組み立てられた単体の一部である。適切な材料の一例には、既知のタイプのセラミックマトリックス複合材(CMC)材料がある。一般に、市販のCMC材料は、例えば炭化珪素(SiC)のようなセラミックタイプの繊維を含み、このような繊維の外形は、窒化ホウ素(BN)等の適合性材料で被覆されている。繊維は、セラミックタイプのマトリックス内に保持されている。このようなマトリックスの一形態が、SiCである。通常、CMCタイプの材料は、室温での引張延性が約1%以下であり、本明細書ではこの値は、「低延性材料」を定め、意味するために使用される。一般に、CMCタイプの材料は、室温での引張延性が約0.4%〜約0.7%の範囲にある。このことは、金属が通常、室温での引張延性が少なくとも約5%、例えば約5%〜約15%の範囲にあることと比較される。
【0033】
ベーン16は中空であり、図示された後縁スロット26及びフィルム冷却孔28等の冷却空気出口機構を包含する。このような出口機構は、従来技術において知られており、ベーン16の内部からベーン16の外側に空気を流すための流路を提供する。各ベーン16の内端は、内側バンド12によって閉ざされている。各ベーン16の内部は開いており、外側バンド14の翼形開口30と連絡している。凹部32が、それぞれの開口30の周囲に形成されている(
図3参照)。
【0034】
図6を参照すると、外側バンド14は、外側バンド14の前端の近傍で半径方向外側に延在する前方フランジ34を含む。一般に軸方向に整列した一連の孔36(
図3)が、前方フランジ34に沿って離れて配置されている。外側バンド14はまた、外側バンド14の後端の近傍で半径方向外側に延在する後方フランジ38を含む。一般に軸方向に整列した一連の孔40(
図2)が、後方フランジ38に沿って離れて配置されている。
【0035】
上端44及び下端46を有する金属インピンジメントバッフル42が、各ベーン16の内部に受け止められている(
図7参照)。インピンジメントバッフル42は、中空内部空間を画成する周壁48を有する。端壁50は、下端46を閉ざす。バッフルフランジ52(
図4)は、上端44から少し離れた所で、インピンジメントバッフル42の周辺から横方向外側に延在する。突起即ち「バンパ」54の配列が、周壁48から横方向外側に延在する。複数のインピンジメント孔56が、周壁48を貫通して形成されている。インピンジメント孔56の大きさ及び場所は、特定の用途に合うように変動するが、当業者ならば、冷却空気の噴流を近くの表面に排出するように、寸法が決められ、形状が決められ、かつ配置された「インピンジメント孔」と、フィルム冷却孔等の他のタイプの冷却孔の間の差異を認識するであろう。
【0036】
金属リテーナ58が、各インピンジメントバッフル42用に設置されている。
図7及び
図8に見られるように、リテーナ58は、前端62及び後端64を有する本体60を含む。本体60は、開口30の形状と略一致する形状を有する開リングとして形成されている。リップ即ちラベット66が、リテーナ58の中央開口の周りに形成されており、周溝68が、本体60の底面に形成され、ラベット66の横方向外側に離隔して配置されている。後方延長部70が、本体60の後端64に配置されていて、後方延長部70の先端に、半径方向に整列した後方リテーナタブ72を含む。後方リテーナタブ72は、内部に形成された後方取付孔74を有する。前方延長部76が、本体60の前端62に配置されていて、前方延長部76の先端に、離隔して配置された、半径方向に整列した一対の前方リテーナタブ78を含む。各前方リテーナタブ78は、2つの平行な脚部80A及び脚部80Bを含み、前方取付孔82A及び前方取付孔82Bのそれぞれが、内部に形成されている(
図3参照)。
【0037】
図5及び
図6は、組み立てられた状態でのベーン16及びインピンジメントバッフル42を示す。インピンジメントバッフル42は、中空ベーン16の内部に受け止められている。バンパ54により、最小限の横方向の隙間が、インピンジメントバッフル42の周壁48とベーン16の壁の間に、確実に存在するようになる。バッフルフランジ52が、凹部32に載り、インピンジメントバッフル42がベーン16内に挿入される半径方向の深さを限定する。リテーナ58が、インピンジメントバッフル42の上縁84がラベット66に受け止められるように、インピンジメントバッフル42の上に配置される。これらの2つの部品(
図3参照)間には、幾分かの横方向の隙間及び半径方向の隙間が存在する。
【0038】
リテーナ58は、外側バンド14の外側で、インピンジメントバッフル42を覆っている。
図2は、外側バンド14の後方フランジ38に隣接していてこの後方フランジ38と平行な後方リテーナタブ72を示す。頭部が拡大した後方ピン86が、後方取付孔74を通り、後方フランジ38の孔40のうち1つに入る。後方ピン86は、例えば後方ピン86を後方リテーナタブ72に溶接又はろう付けすることにより、適切な位置に固定され得る。
【0039】
オプションとして、1つ以上の封止素子を、後方フランジ38と後方リテーナタブ72の間に取り付けてもよい。図示された例では、
図6及び
図7に最もよく示されているが、横方向に引き伸ばされた後方リーフシール88が、後方フランジ38に対して配置されており、かつV字状の後方ばね90が、後方リテーナタブ72と後方リーフシール88の間に配置され、後方リーフシール88を後方フランジ38に対して偏らせている。後方リーフシール88及び後方ばね90は、後方ピン86によって保持される。後方リーフシール88は、タービンノズル10と周囲のエンジン部品(不図示)の間の空気漏れを減少させるか、又は防止するように機能する。
【0040】
図3は、外側バンド14の前方フランジ34と係合する前方リテーナタブ78のうち1つを示す。より詳細には、前方フランジ34は、前方リテーナタブ78の2つの脚部80A及び脚部80Bの間の空間に受け止められている。頭部が拡大した前方ピン92が、前方取付孔82A及び前方取付孔82Bを通り、前方フランジ34の孔36のうち1つを通る。前方ピン92は、例えば前方ピン92を前方リテーナタブ78に溶接又はろう付けすることにより、適切な位置に固定され得る。
【0041】
オプションとして、1つ以上の封止素子を、前方フランジ34と前方リテーナタブ78の間に取り付けてもよい。図示された例では、
図3、
図6、及び
図7に最もよく示されているが、外側バンド14は、前方フランジ34のわずかに前方に配置されたシールリップ94を含む。横方向に引き伸ばされた前方リーフシール96が、シールリップ94に対して配置されており、かつコイルタイプの前方ばね98が、前方リテーナタブ78と前方リーフシール96の間に配置され、前方リーフシール96をシールリップ94に対して偏らせている。前方リーフシール96及び前方ばね98は、前方ピン92によって保持される。前方リーフシール96は、タービンノズル10と周囲のエンジン部品(不図示)の間の空気漏れを減少させるか、又は防止するように機能する。
【0042】
こうして組み立てられたリテーナ58は、ベーン16に対して、適切な位置に固定される。別個の半径方向の間隙が、リテーナ58とインピンジメントバッフル42の間に存在し、
図4に最もよく示されている。
【0043】
組立体の一部として、平面図においてはC字状である波形ばね100が、周溝68に配置されている(
図6参照)。この波形ばね100は、リテーナ58とバッフルフランジ52の間で半径方向に負荷を加える。リテーナ58が外側バンド14に対して固定されているため、波形ばね100の作用により、半径方向内向きに、外側バンド14の凹部32に対して、バッフルフランジ52に力が加えられる。この配置により、インピンジメントバッフル42が適切な位置に保たれ、かつインピンジメントバッフル42とベーン16の間の空気漏れに対する封止部が保たれ、一方で、リテーナ58とベーン16の間の熱膨張差が許容される。
【0044】
上述のタービンノズルには、従来技術と比較して、いくつかの利点がある。インピンジメントバッフルは、温度変化、及び2つの材料における熱膨張係数の違いにもかかわらず、リテーナにより適切な位置に保持される。また、同じリテーナが、ばね及びリーフシールをCMC部品に保持するために利用される。これらの機構のすべてを金属リテーナに組み合わせることにより、従来の金属接合手順(即ちタック溶接)を利用することができる。
【0045】
上では、ガスタービンエンジン用のタービンノズルについて説明してきた。(添付の特許請求の範囲、要約、及び図面のいずれも含めて)本明細書に開示される機構のすべて、及び/又はこうして開示されたいかなる方法もしくは工程におけるステップのすべては、少なくともいくつかのそのような機構及び/又はステップが、互いに排他的である組み合わせを除いて、いかなる組み合わせにおいても組み合わされ得る。
【0046】
(添付の特許請求の範囲、要約、及び図面のいずれも含めて)本明細書に開示される機構のそれぞれは、明確な別段の定めがない限り、同じ目的、均等な目的、又は同様の目的に適う代替的な機構によって置き換えられ得る。したがって、明確な別段の定めがない限り、開示された機構のそれぞれは、全体的な一連の均等な機構又は同様の機構における1つの例にすぎない。
【0047】
本発明は、前述の実施形態(単数及び複数)の詳細に限定されるものではない。本発明は、(添付の特許請求の範囲、要約、及び図面のいずれも含めて)本明細書に開示される機構の、いかなる新たな発明もしくはいかなる新たな組み合わせ、又はこうして開示されたいかなる方法又は工程におけるステップの、いかなる新たな発明もしくはいかなる新たな組み合わせにも及ぶものである。
【符号の説明】
【0048】
10 タービンノズル
12 内側バンド
14 外側バンド
16 ベーン
18 前縁
20 後縁
22 根端
24 先端
26 後縁スロット
28 フィルム冷却孔
30 開口
32 凹部
34 前方フランジ
36 孔
38 後方フランジ
40 孔
42 インピンジメントバッフル
44 上端
46 下端
48 周壁
50 端壁
52 バッフルフランジ
54 バンパ
56 インピンジメント孔
58 リテーナ
60 本体
62 前端
64 後端
66 ラベット
68 周溝
70 後方延長部
72 後方リテーナタブ
74 後方取付孔
76 前方延長部
78 前方リテーナタブ
80A 脚部
80B 脚部
82A 前方取付孔
82B 前方取付孔
84 上縁
86 後方ピン
88 後方リーフシール
90 後方ばね
92 前方ピン
94 シールリップ
96 前方リーフシール
98 前方ばね
100 波形ばね