特許第6392346号(P6392346)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6392346下部透明導体層の部分を通る電流漏れを低減するように改良された構造を有するエレクトロクロミックデバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392346
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】下部透明導体層の部分を通る電流漏れを低減するように改良された構造を有するエレクトロクロミックデバイス
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/155 20060101AFI20180910BHJP
   G02F 1/15 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   G02F1/155
   G02F1/15 507
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-530048(P2016-530048)
(86)(22)【出願日】2014年7月24日
(65)【公表番号】特表2016-525719(P2016-525719A)
(43)【公表日】2016年8月25日
(86)【国際出願番号】US2014047955
(87)【国際公開番号】WO2015013487
(87)【国際公開日】20150129
【審査請求日】2017年7月4日
(31)【優先権主張番号】13/950,791
(32)【優先日】2013年7月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504416080
【氏名又は名称】セイジ・エレクトロクロミクス,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100188857
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 智文
(72)【発明者】
【氏名】マーク・サミュエル・バーディス
(72)【発明者】
【氏名】ジーン−クリストフ・ヒロン
【審査官】 岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2011/0260961(US,A1)
【文献】 特開平11−194372(JP,A)
【文献】 特表2012−523018(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/007334(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/155
G02F 1/15
G09F 9/30
G09G 3/19
G09G 3/38
C03C 27/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレクトロクロミックデバイスであって:
下部透明導電層において、前記下部透明導電層の第1部分が第1導電素子に連結されており、前記下部透明導電層の前記第1部分から物理的に分離されている前記下部透明導電層の第2部分が第2導電素子に連結されている前記下部透明導電層と;
上部透明導電層において、前記上部透明導電層の第1部分が前記第1導電素子に連結されており、前記上部透明導電層の前記第1部分から物理的に分離されている前記上部透明導電層の第2部分が前記第2導電素子に連結されている前記上部透明導電層と;
前記下部透明導電層と前記上部透明導電層との間にあり、前記下部透明導電層の前記第1部分および前記第2部分のそれぞれと接触している、対電極層およびエレクトロクロミック層のうちの一方を含む第1電極層と;
前記下部透明導電層と前記上部透明導電層との間にある、前記対電極層および前記エレクトロクロミック層のうちの他方を含む第2電極層と;
前記第1電極層と前記第2電極層との間にあり、かつこれらと連通している、イオンを伝導するためのイオン伝導体層において、イオン伝導体が、前記第1導電素子から前記第2導電素子まで連続して延在している、前記イオン伝導体層と
を含み、
前記下部透明導電層の前記第1部分および前記第2部分が、前記第1電極層を占めている電荷補償イオンの移動長さを超えて離間しており
前記下部透明導電層の前記第1部分と前記第2部分との間のスペースが、前記下部透明導電層の前記第1部分および前記第2部分のそれぞれから電気的に単離されている前記下部透明導電層の第3部分によって少なくとも部分的に充填されている、エレクトロクロミックデバイス。
【請求項2】
前記下部透明導電層の前記第1部分および前記第2部分が、約50ミクロンを超えて離間している、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記下部透明導電層の前記第1部分および前記第2部分が、約75ミクロンを超えて離間している、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記下部透明導電層の前記第1部分と前記第2部分との間のスペースが、前記第1電極層によって少なくとも部分的に充填されている、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記下部透明導電層の前記第1部分および前記第3部分が、約25ミクロンを超えて離間しており、前記下部透明導電層の前記第2部分および前記第3部分が、約25ミクロンを超えて離間している、請求項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記下部透明導電層の前記第1部分と前記第3部分との間および前記第2部分と前記第3部分との間のそれぞれのスペースが、それぞれ、前記第1電極層によって少なくとも部分的に充填されている、請求項に記載のデバイス。
【請求項7】
エレクトロクロミックデバイスであって:
下部透明導電層において、前記下部透明導電層の第1部分が第1導電素子に連結されており、前記下部透明導電層の前記第1部分から物理的に分離されている前記下部透明導電層の第2部分が第2導電素子に連結されている前記下部透明導電層と;
上部透明導電層において、前記上部透明導電層の第1部分が前記第1導電素子に連結されており、前記上部透明導電層の前記第1部分から物理的に分離されている前記上部透明導電層の第2部分が前記第2導電素子に連結されている前記上部透明導電層と;
前記下部透明導電層と前記上部透明導電層との間にあり、前記下部透明導電層の前記第1部分および前記第2部分のそれぞれと接触している、対電極層およびエレクトロクロミック層のうちの一方を含む第1電極層と;
前記下部透明導電層と前記上部透明導電層との間にある、前記対電極層および前記エレクトロクロミック層のうちの他方を含む第2電極層と;
前記第1電極層と前記第2電極層との間にあり、かつこれらと連通している、イオンを伝導するためのイオン伝導体層において、イオン伝導体が、前記第1導電素子から前記第2導電素子まで連続して延在している、前記イオン伝導体層と
を含み、
前記下部透明導電層の前記第1部分および前記第2部分が、前記第1電極層を占めている電荷補償イオンの移動長さを超えて離間しており、
前記第1電極層が、前記第1導電素子と前記下部透明導電層の前記第1部分とに連結された第1部分と、前記第2導電素子と前記下部透明導電層の前記第2部分とに連結された、前記第1電極層の前記第1部分から物理的に分離されている第2部分とを含み、
前記下部透明導電層の前記第1部分および前記第2部分が、前記第1電極層の前記第1部分および前記第2部分が離間しているよりも離間している、エレクトロクロミックデバイス。
【請求項8】
前記下部透明導電層の前記第1部分および前記第2部分が、約50ミクロンを超えて離間している、請求項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記下部透明導電層の前記第1部分と前記第2部分との間のスペースが、前記イオン伝導体層によって少なくとも部分的に充填されている、請求項に記載のデバイス。
【請求項10】
前記第1電極層の前記第1部分と前記第2部分との間のスペースが、前記イオン伝導体層によって少なくとも部分的に充填されている、請求項に記載のデバイス。
【請求項11】
前記対電極層が、タングステンニッケル混合酸化物を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
エレクトロクロミックデバイスの作製のための方法であって:
第1導電層を堆積することと;
前記第1導電層の第1部分、前記第1導電層の第2部分および前記第1導電層の第3部分それぞれ電気的に単離されるように前記第1導電層を切断することによって、前記第1導電層の前記第1部分および前記第2部分がスペースによって分離され、前記第1導電層の前記第1部分と前記第2部分との間の前記スペースが、前記第1導電層の前記第3部分によって少なくとも部分的に充填されていることと;
エレクトロクロミック電極層および対電極層のうちの一方を、前記第1導電層に、かつ前記第1導電層の前記第1部分と前記第2部分との間の前記スペース内に堆積することにより、前記第1導電層の前記第1部分と前記第2部分との間のスペースよりも短い移動長さを有する電荷補償イオンによって占められている第1堆積電極を付与することと;
前記第1堆積電極にイオン伝導体層を堆積させ、その結果、前記イオン伝導体層が前記第1堆積電極と連通するようにすることと;
前記エレクトロクロミック電極層および前記対電極層のうちの他方を前記イオン伝導体層に堆積させることにより、第2堆積電極を付与することと;
第2導電層を前記第2堆積電極に堆積させることと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本願は、2013年7月25日に提出された米国特許出願第13/950,791号の継続であり、その開示内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、エレクトロクロミックデバイスに関し、より詳細には、固体状態の無機薄膜デバイスに関する。
【背景技術】
【0003】
エレクトロクロミック材料およびデバイスは、建造物および車両の窓における光および熱管理のための不動態被膜材料に対する代替として開発されてきた。エレクトロクロミックデバイスは、不動態被膜材料とは対照に、印加電位に応じた電気化学的酸化還元に従ってその光学特性を可逆的に変更することができる材料を使用している。光変調は、電気化学材料の格子における電子および電荷補償イオンの同時挿入および抽出の結果物である。
【0004】
一般に、エレクトロクロミックデバイス(「ECデバイス」)は、光の透過率を調節することができる複合構造を有している。図1は、以下の5つの重畳層を有する典型的な5層固体型エレクトロクロミックデバイスの断面を示す:酸化または還元の際に吸収または反射の変化を生ずるエレクトロクロミック電極層(「EC」)14;電解質を機能的に置き換えて、電子電流を遮断しながらイオンの通過を可能にするイオン伝導体層(「IC」)13;デバイスが脱色または透明状態にあるときにイオンの貯蔵層として機能する対電極層(「CE」)12;ならびにエレクトロクロミックデバイスに電位を印加する働きをする2つの透明導電層(「TCL」)11および15。上記の層は、それぞれ、典型的には、基板16に逐次的に適用される。かかるデバイスは、固有の電子漏洩(エレクトロクロミックスタック層間)および電子的絶縁破壊に典型的には悩まされる。
【0005】
典型的には、電力は、バスバーを通ってエレクトロクロミックデバイスに分配される。図2は、2つの導電素子、例えば、バスバー18および19から供給される電力を有する図1のエレクトロクロミックデバイスの断面を示す。バスバーが共に短絡することを防止するために、バスバーは、互いに電気的に単離されている。このことは、従来的には、TCL11および15をスクライブすることによってなされている。図2に示すように、第1(下部)TCL15が点P1においてスクライブされて、下部TCL15を不連続(すなわち、物理的に分離された)層にし、これにより、バスバーが下部TCL15を通って短絡することを防止する。点P1におけるスクライブの幅は、典型的にはおよそ25ミクロン以上であるが、長さは、特定のデバイスが形成される幅を基準にして変動する。同様に、第2(上部)TCL11は、点P3においてスクライブされて、上部TCL11もまた不連続にし、これにより、バスバーが上部TCL11を通って短絡することを防止する。P3スクライブは、P1スクライブの寸法と同様に、典型的にはおよそ25ミクロン以上であるが、長さは、特定のデバイスが形成される幅を基準にして変動する。
【0006】
EC層14の固有の特性は、該層が着色状態に推移するときに導電性になることである。換言すると、EC材料14内への電子および電荷補償イオン(例えばリチウムイオン)の挿入が、該材料の絶縁状態から導電状態への推移を導く。この推移は、挿入された(または「インターカレートされた」)電子または電荷補償イオンが閾値濃度に達するとき起こり得、このとき、ECデバイスが導電状態に突然推移する。ECデバイスの理想的な操作下では、電荷補償イオンの挿入は、下部透明導電層の不在により電界が発生しないときには、P1スクライブ自体の上では起こらない。しかし、電荷補償イオンは、通常の拡散法則に従って層内で横方向に(すなわち、図2において横向きに)移動し得ることが可能である。さらに、閾値濃度の電荷補償イオンが材料内に横方向に移動するとき、材料が導電性になる。閾値濃度の電荷補償イオンが横方向に拡散することができる距離を、以下、「移動長さ」と称する。移動長さがP1スクライブ幅を満たすまたは超えるならば、導電領域がP1スクライブのエリア内に形成され得る。さらに、導電領域がP1スクライブの全幅を通って延在するとき、下部TCL15の2つの部分15aおよび15bが導電領域によって導電接続され得る。例えば、図3に示すように、EC層14の部分が、合理的な時間量の間、着色され得る。この時間の間、リチウムは、P1スクライブを通って横方向に拡散し、エリア17内のEC層14を絶縁層から導電層に変換することができる。下部TCL15の2つの部分15aおよび15b間のスクライブされたチャネルが十分に広くないと、電流がこれらの部分の間を通ることによって、バスバー18および19を共に電気的に短絡する場合がある。さらに、一旦漏れ経路が完成されると、エリア17は、導電領域から絶縁領域に簡単には戻ることができない、なぜなら、エレクトロクロミックデバイス10の透明化が、デバイス10を脱色する(すなわち、着色状態から非着色状態または低着色状態への推移)ために該デバイスの領域に電界を印加しないからである。
【0007】
さらに、エレクトロクロミックデバイスをよりコスト効果的に製造するために、堆積プロセスを改変して、より高い歩留まりを付与し、より大量生産し易いようにする必要がある。一般に、歩留まりは、基板または他のワークピースが真空と大気との間およびその逆を循環するごとに低減されると考えられ得る。このことは、スパッタリングの際に不可避に存在し、ベントおよびポンプダウンの際に周囲に「吹かれ」て活性層上にその道を見出し、フィルム構造において潜在的な欠陥、例えば短絡回路または「ショート」を引き起こす場合がある、コーティングプロセス由来の塵および破片によって引き起こされ得るとされている。そのため、1つの単独の連続真空工程、すなわち、1つのコーティング機において全ての層を堆積させることにより、高い歩留まりが達成される。しかし、図3に示す構造を作製するには、単一の真空工程における全ての層の堆積が、同一真空系において下部透明導電体の堆積と第2透明導電体の堆積との間にレーザースクライブ(または同じタイプの切断)を含む必要がある。かかる切断プロセスは、真空系において非常に困難である。例えば、レーザースクライビングに関して、レーザーのための極めてタイトなフォーカスを維持する必要がある。かかるフォーカスを、典型的な市販のスパッタリング系に存在する機械公差によって効率的に達成するのは非常に困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
できる限り高い歩留まりを維持しながら(例えば、できる限り、切断プロセスの際に少ないスクライビング工程を行いながら)、エレクトロクロミックデバイスの透明導電層の部分間の電子漏洩量を低減することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示の一態様は、下部透明導電層を含むエレクトロクロミックデバイスを提供する。下部透明導電層の第1部分は、第1導電素子に連結されていてよい。下部透明導電層の、第1部分から物理的に分離されている第2部分は、第2導電素子に連結されていてよい。エレクトロクロミックデバイスは、上部透明導電層を含んでいてもよい。上部透明導電層の第1部分は、第1導電素子に連結されていてよい。上部透明導電層の、第1部分から物理的に分離されている第2部分は、第2導電素子に連結されていてよい。
【0010】
エレクトロクロミックデバイスは、対電極層およびエレクトロクロミック層のうちの一方を含む第1電極層を含んでいてもよい。第1電極層は、下部透明導電層と上部透明導電層との間にあってよく、下部導電層の第1部分および第2部分のそれぞれと接触していてよい。エレクトロクロミックデバイスは、対電極層およびエレクトロクロミック層のうちの他方を含む第2電極層を含んでいてよい。第2電極層は、下部透明導電層と上部透明導電層との間にあってもよい。
【0011】
エレクトロクロミックデバイスは、第1電極層と第2電極層との間にあり、かつこれらと連通している、イオンを伝導するためのイオン伝導体層をさらに含むことができる。
【0012】
下部透明導電層の第1部分および第2部分は、本明細書においてより詳細に定義されている移動長さを超えて離間していてよい。いくつかの実施形態において、下部透明導電層の第1部分および第2部分は、約25ミクロンを超えて離間していてよい。いくつかの実施形態において、これらは、約50ミクロンを超えて離間していてよい。いくつかの実施形態において、これらは、約75ミクロンを超えて離間していてよい。
【0013】
いくつかの実施形態において、下部透明導電層の第1部分と第2部分との間のスペースは、第1電極層によって少なくとも部分的に充填されていてよい。いくつかの実施形態において、下部透明導電層の第1部分と第2部分との間のスペースは、下部透明導電層の第1部分および第2部分のそれぞれから電気的に単離されている下部透明導電層の第3部分によって少なくとも部分的に充填されていてよい。下部透明導電層の第1部分および第3部分は、約25ミクロンを超えて離間していてよく、下部透明導電層の第2部分および第3部分は、約25ミクロンを超えて離間していてもよい。このように、下部透明導電層の第1部分および第2部分は、約50ミクロンを超えて離間していてよい。いくつかの実施形態において、下部透明導電層の第1部分および第2部分は、約75ミクロンを超えて離間していてよい。下部透明導電層の第1部分と第3部分との間および第2部分と第3部分との間のそれぞれのスペースは、それぞれ、第1電極層によって少なくとも部分的に充填されていてよい。
【0014】
いくつかの実施形態において、第1導電電極層は、第1導電素子と下部透明導電層の第1部分とに連結された第1部分と、第2導電素子と透明導電層の第2部分とに連結された、第1部分から物理的に分離されている第2部分とを含んでいてよい。下部透明導電層の第1部分および第2部分は、第1電極層の第1部分および第2部分が離間しているよりもさらに離間していてよい。下部透明導電層の第1部分と第2部分との間のスペースは、イオン伝導体層によって少なくとも部分的に充填されていてよい。第1電極層の第1部分と第2部分との間のスペースは、イオン伝導体層によって少なくとも部分的に充填されている。
【0015】
上記実施形態のいくつかにおいて、対電極層は、タングステンニッケル混合酸化物を含んでいてよい。いくつかのさらなる実施形態において、対電極層は、リチウムイオンを含んでいてよい。
【0016】
本発明の別の態様は、エレクトロクロミックデバイスの作製のための方法を提供する。該方法は、第1導電層を付与することと、第1導電層の第1部分が第1導電層の第2部分から電気的に単離されるように第1導電層を切断することと、エレクトロクロミック電極層および対電極層のうちの一方を第1導電層に堆積させることにより、第1導電層の第1部分と第2部分との間のスペースよりも短い拡散長さを有する電荷補償イオンによって占められている第1堆積電極を付与することと、第1堆積電極にイオン伝導体層を堆積させ、その結果、イオン透明層が第1堆積電極と連通するようにすることと、エレクトロクロミック電極層および対電極層のうちの他方をイオン伝導体層に堆積させることにより、第2堆積電極を付与することと、第2導電層を第2堆積電極に堆積させることとを含んでいてよい。
【0017】
第1堆積電極は、第1導電層の第1および第2部分の上に堆積されていてよく、第1および第2部分は、約25ミクロンを超えて離間していてよい。いくつかの実施形態において、これらは、約50ミクロンを超えて離間していてよい。いくつかの実施形態において、これらは、約75ミクロンを超えて離間していてよい。
【0018】
第1堆積電極は、第1導電層の第1部分と第2部分との間のスペースが第1堆積電極によって少なくとも部分的に充填されるように、第1導電層の第1および第2部分の上に堆積されていてよい。
【0019】
いくつかの実施形態において、該方法は、第1導電層が、電気的に単離された3つの部分に分割されて、かかる部分のうち1つが、他の2つの外側部分の間に位置付けられた中間部分となるように、第1導電層の第2部分を切断することをさらに含んでよい。中間部分と外側部分のそれぞれとの間のスペースは、第1電極層によって少なくとも部分的に充填されていてよい。
【0020】
第1切断工程は、第1電極層が第1導電層に堆積される前に実施されてよい。第2切断工程は、第1電極層が、第1導電層の第1部分に連結されている第1部分と、第1導電層の第2部分に連結されている、第1部分から物理的に分離されている第2部分とを含むように、かつ、第1導電層の第1部分および第2部分が、第1電極層の第1部分および第2部分が離間しているよりも離間するように第1電極層が第1導電層に堆積された後に実施されてよい。第1導電層の第1部分と第2部分との間のスペースは、イオン伝導体層によって少なくとも部分的に充填されていてよい。いくつかの実施形態において、第1電極層の第1部分と第2部分との間のスペースは、イオン伝導体層によって少なくとも部分的に充填されていてよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、典型的なエレクトロクロミックデバイスの概略断面図である。
図2図2は、典型的なエレクトロクロミックデバイスの別の概略断面図である。
図3図3は、エレクトロクロミックデバイスの部分のクローズアップを示す図2の概略断面図である。
図4図4は、本発明の実施形態による、改良された構造を有するエレクトロクロミックデバイスの部分の概略断面図である。
図5図5は、本発明の別の実施形態による、改良された構造を有する別のエレクトロクロミックデバイスの部分の概略断面図である。
図6図6は、本発明のさらに別の実施形態による、改良された構造を有する別のエレクトロクロミックデバイスの部分の概略断面図である。
図7図7は、本発明の実施形態によるエレクトロクロミックデバイスを形成するためのプロセスを示すフローチャートである。
図8図8は、本発明の実施形態によるエレクトロクロミックデバイスを形成するためのプロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の1つの目的は、(例えば、透明導体層の電気的に単離された部分間の)電子漏洩を低減するように改良された絶縁膜構造を有するエレクトロクロミックデバイスを提供することである。開示されているエレクトロクロミックデバイスは、それぞれ、1つまたは2つのいずれかのレーザー処理工程を間に含む(堆積プロセスの後に実施されてよいレーザースクライビング処理工程を含めない)2つまたは3つのコーティングプロセスを有する堆積プロセスを用いて形成される。開示されているデバイスおよびプロセスは、したがって、最小の真空サイクルを含むことにより、歩留まりを潜在的に増加させる。これらおよび他の目的は、位置P1においてより幅広いまたは効果的により幅広いチャネル幅を有する透明導体層を利用するエレクトロクロミックデバイスを用いて実現される。
【0023】
本発明のさらに別の目的は、改良された絶縁膜構造を含むエレクトロクロミックデバイスを作製する方法を提供することである。
【0024】
本発明のさらに別の目的は、エレクトロクロミックデバイスに用いられる改良された絶縁膜構造を作製する方法を提供することである。
【0025】
本発明によると、図4は、改良された絶縁膜構造を有する固体型エレクトロクロミックデバイス40の部分の断面を示す。図4のデバイス40は、上記EC、IC、CE、および上部TCL層11〜14のそれぞれもまた図4のデバイスに存在する限りにおいて、完成したときに、図1および2に示されている固体型デバイスと同様である。図4のデバイスは、位置P1におけるP1スクライブが図1および2のP1スクライブよりも幅広い限りにおいて、完成したときに、図1および2に示されているデバイスと異なる。例えば、P1スクライブの線幅は、約25ミクロン超である。いくつかの例において、線幅は、約50ミクロン超であってよく、さらなる例において、線幅は、約75ミクロン超であってよい。下部透明導電層の左側および右側部分45aおよび45bは、それぞれ、デバイスの位置P1に位置付けられた幅広いP1スクライブによってこのように分離される。
【0026】
理想的には、位置P1を通る抵抗は、下部透明導電層45の2つの部分45aおよび45bを電気的に単離するように無限である。実際には、抵抗Rは、以下の式を用いて算出され得る:
【0027】
【数1】
【0028】
式中、Cは、EC層の伝導度であり、Wは、スクライブの線幅であり、Aは、スクライブの面積であり、該面積は、スクライブ長さ(スクライブと平行に測定されるデバイスの幅によって求められる)をEC膜の厚さによって乗算したものである。式から分かるように、スクライブの線幅が増加すると、下部TCL部分45aおよび45b間の位置P1における抵抗が増加する。
【0029】
図2のデバイスの構造と同様に、図4のデバイスのEC層44は、P1スクライブによって完全にまたは部分的のいずれかで形成されるギャップを充填する。このように、下部TCL部分45aおよび45bを分離しているチャネルは、電気伝導性でない材料によって充填されている。具体的には、チャネルの線幅は、EC層44においてリチウムイオンの移動長さを超えるように選択される。換言すると、チャネルの線幅は、EC層44における電荷補償イオンが横向きに拡散することができる距離よりも幅広くなるように選択される。このことは、エレクトロクロミックデバイス40が相当な時間量で着色状態に保持されるとき、TCLの一部分45aから他の部分45bに延在する導電性パスが、EC層44に形成されないことを確実にする。
【0030】
いくつかの実施形態において、位置P1の有効線幅は、下部TCLに作られる切断の数を増加させることなく増加され得る。例えば、図5は、完成したときに、図1および2のデバイスの構造においてさらに改良された絶縁膜構造を有する、さらに別の固体型エレクトロクロミックデバイス50の部分の断面を示す。図5のデバイス50は、上記層(すなわち、図2の層11〜14)のそれぞれが図5に示すデバイス50の部分の下部TCL55の頂部に形成される限りにおいて、図4に示す固体型デバイス40と同様である。図5のデバイス50は、図5のデバイス50が、下部TCL55において二重の2つの単離されたスクライブを含む限りにおいて、図4のデバイスと異なる。図5のデバイス50において、下部TCL55は、3つのセクションに分割される:第1バスバー58に電気的に接続された左側セクション55a、第2バスバー59に電気的に接続された右側セクション55c、および第1スクライブPlaによって左側セクション55aから電気的に単離され、第2スクライブPlbによって右側セクション55cから電気的に単離された中間セクション55b。図5に示す二重構造の形成は、P1位置を通って完全に欠失された線を作る(すなわち、デバイス50から中間セクション55bを完全に切断する)のと同じ効果を有する。
【0031】
また、EC層54は、PlaおよびPlb切断によって完全にまたは部分的のいずれかで形成されるギャップを充填する。このように、下部TCLの左側および中間セクション55aおよび55bを分離しているチャネル、ならびに中間および右側セクション55bおよび55cを分離しているチャネルは、それぞれ、電気伝導性でない材料によって充填されている。具体的には、二重構造の有効線幅が、EC層54を占めるリチウムイオンの移動長さを超えるように選択される。このことは、エレクトロクロミックデバイス50が相当な時間量で着色状態に保持されるとき、TCLの左側セクション55aから右側セクション55cに延在する導電性パスが、EC層54に形成されないことを確実にする。
【0032】
図5の例において、ギャップは、それぞれ、非常に狭くてよい(例えば、10ミクロン幅、5ミクロン幅、またはこれ未満)、ただし、各ギャップが下部TCLを完全に分断し、下部TCLの左側セクション55aと右側セクション55cとの間の距離がEC層における伝導イオンの移動長さを超えることを条件とする。実際には、ECデバイス50の非着色面積を最小にし、デバイスが暗い状態にあるときにはさらに視覚的に満足のいく外観を維持するように、この距離を比較的短く保つことが審美的に望ましい。
【0033】
いくつかの実施形態において、TCL部分は、位置P1においてEC層を切断することによって互いにさらに電気的に単離されていてよい。例えば、図6は、完成したときに、図1および2のデバイスの構造においてさらに改良された絶縁膜構造を有する、さらに別の固体型エレクトロクロミックデバイス60の部分の断面を示す。図6のデバイス60は、上記の上部TCL、CE、およびIC層(すなわち、図2の層11〜13)のそれぞれが図6に示すデバイス60の部分の下部TCL65の頂部に形成される限りにおいて、図4に示す固体型デバイス40と同様である。図6のデバイス60は、デバイス60のEC層64が部分64aおよび64bに切断され、各部分が位置P1において互いに電気的に単離されている限りにおいて、図4のデバイスと異なる。EC層の左側部分64aは、第1バスバー68および下部TCL65aの左側部分に電気的に接続されている。EC層の右側部分64bは、第2バスバー69および上部TCL65bの右側部分に電気的に接続されている。EC層64の部分を分離する切断は、下にある下部TCL65の部分を分離する切断よりも狭い(より小さな線幅を有する)。EC層64を通る追加の切断により、下部TCL65の左側および右側部分間のチャネルが、EC層64によって部分的にのみ充填されている。チャネルの残りは、絶縁IC層63によって充填されている。
【0034】
EC層64の部分を分離する切断は、EC層における導電性イオンの移動長さよりも狭くてよい。例えば、切断は、約10ミクロン、約5ミクロン、またはこれより狭くさえあってよい。効果的には、この切断が下に堆積されている層を完全に分断する限り、その幅についての最小値は存在しない。これは、第2に、下部TCLの分離された部分間の「遮断」接触のように本質的に機能するEC層/IC層(またはEC層/CE層)界面の形成が結果としてもたらされるからである。この界面は、抵抗器よりもダイオードのように振る舞うとされており、したがって、移動長さよりも短い距離に沿ってさえも、導電イオンの移動を遮断するときにさらにより効果的である。
【0035】
本明細書に記載されているように改良された歩留まりおよび増加した性能を有するエレクトロクロミックデバイスを製造する方法も提供される。堆積される層の組成およびタイプは、本発明の教示から逸脱することなく所望の結果を得るために変更されてよい。
【0036】
図7は、部分が図4に示されているデバイス40、および部分が図5に示されているデバイス50をその全体において形成することができるプロセスを示すフロー図700を付与する。ブロック702において、下部輸送導電層を、下部輸送導電層が第1バスバーから第2バスバーに連続して延在するように基板上に堆積させる。好ましい実施形態において、導体層を構成する材料をスパッタリングを介して透明基板上に堆積させ、第1透明導体層を形成する。
【0037】
ブロック704において、下部輸送導電層を位置P1においてスクライブまたは切断する。スクライブは、レーザースクライビング、エッチング、機械研磨または当該分野において公知の他の好適な除去プロセス(「切断」)を含めたいくつかの異なる方法のうち1つを用いて得ることができる。
【0038】
切断は、例えば、レーザー、例えばダイヤモンド、ルビーもしくはステンレス鋼先端の使用を含む機械研磨プロセス、放電加工機、または化学エッチングのうちの1つ以上を利用する好適なマスキング、スクライビングまたはエッチングプロセスの使用による種々の異なる手法および/または方法において実施されてよい。
【0039】
図4の例において、切断の線幅は、複数の切断を次々に実施することによって有意に増加され得る。図5の例において、線幅は、2以上の切断の間にTCLから残存する材料がデバイスの第1および第2バスバーの両方から電気的に単離されるように互いに離間する2以上の切断を実施することによって効果的に増加され得る。
【0040】
ブロック706において、次いで、エレクトロクロミック(EC)電極層(本明細書において「第1電極」とも呼ぶ)を、EC層が第1バスバーから第2バスバーに連続して延在するように下部TCLに堆積させる。
【0041】
好ましい実施形態において、第1電極を中間周波数反応性スパッタリングまたはDCスパッタリング技術を介して堆積させる。いくつかの実施形態において、第1電極層を、加熱された下部透明導電層に堆積させる。
【0042】
ブロック708において、次いで、イオン伝導体層を、イオン伝導体層が第1バスバーから第2バスバーに連続して延在するようにエレクトロクロミック電極層に堆積させる。開示内容が全体に本明細書に参照により組み込まれる米国特許第7,372,610号および同第7,593,154号に記載されているように、イオン伝導体層は、イオンが該層を通って移動することを可能にし得る固体電解質から構成されていてよい。イオン伝導体層は、イオン、好ましくはリチウムイオンが通って移動するのを可能にする十分なイオン輸送性を有していなければならない。イオン伝導体には、いずれの材料が用いられてもよいが、CE層からEC層へのイオンの通過を可能にすることを条件とする。いくつかの実施形態において、イオン伝導体層は、シリケート系構造を含む。他の実施形態において、リチウムイオンの透過に特に適した好適なイオン伝導体として、限定されないが、ケイ酸リチウム、ケイ酸リチウムアルミニウム、ホウ酸リチウムアルミニウム、ホウ酸リチウム、ケイ酸リチウムジルコニウム、ニオブ酸リチウム、ホウケイ酸リチウム、リンケイ酸リチウム、窒化リチウム、フッ化リチウムアルミニウム、および他のかかるリチウム系セラミック材料、シリカ、または酸化シリコンが挙げられる。他の好適なイオン伝導性材料、例えば、二酸化シリコンまたは酸化タンタルが用いられてもよい。好ましくは、イオン伝導層は、電子伝導性が低いかまたは電子伝導性を有さない。好ましいイオン伝導体材料は、スパッタリングまたはゾルゲルプロセスのいずれかによって製造されるリチウム−シリコン−酸化物である。
【0043】
いくつかの好ましい実施形態において、イオン伝導体層を中間周波数反応性スパッタリングまたはDCスパッタリング技術によって堆積させる。他の好ましい実施形態において、イオン伝導体層を、浸漬コーティング、スピンコーティングおよび噴霧コーティングを含めたゾルゲル薄膜堆積技術によって堆積させる。さらに他の好ましい実施形態において、イオン伝導体層をスパッタリングによってまたはゾルゲル技術によって堆積させる。かかる層をスパッタリングまたはゾルゲルコーティングによって堆積させる手技は、当業者に公知である。
【0044】
ブロック710において、次いで、対電極(CE)層(本明細書において「第2電極」層とも呼ぶ)を、CE層が第1バスバーから第2バスバーに連続して延在するようにイオン伝導体層に堆積させる。CE層は、開示内容が全体に本明細書に参照により組み込まれる米国特許第7,372,610号に記載されているように、アノード補完CE層、例えばタングステン−ニッケル混合酸化物、好ましくは実質的に結晶性のタングステン−ニッケル混合酸化物であってよい。補完CE層は、リチウムなどの電荷補償イオンを含んでいてよい。電荷補償イオンは、タングステン−ニッケル混合酸化物内に少なくとも部分的にインターカレートされていてよく、かつ/またはCE層の表面を少なくとも部分的にコーティングする膜として存在していてよい。電荷補償イオンは、適切な電位が印加されたときCE層からEC層に可逆的に移動することが可能である。
【0045】
タングステン−ニッケル混合酸化物膜を堆積させるいくつかの実施形態において、堆積された膜を、リチウムの堆積を通して還元する。リチウムの堆積は、湿式化学法、ゾルゲル、化学蒸着、物理蒸着、または非反応性スパッタリングのいずれかの1つを通して達成される。好ましい実施形態において、酸化タングステンニッケル膜に堆積されるリチウム源は、非反応性スパッタリングプロセスを用いて真空中で堆積されるリチウム金属である。一実施形態において、アノードのタングステン−ニッケル混合酸化物膜に堆積されるリチウムの量は、CE層、したがってデバイス全体を通して最大の光透過率を可能にするリチウム量が添加されるように注意深く制御される。
【0046】
図7のフロー図700を参照すると、ブロック712において、電荷補償イオン、例えば、プロトン(H)、リチウムイオン(Li)、またはナトリウムイオン(Na)を、エレクトロクロミックデバイス内にインターカレートする。用語「インターカレーション」は、本明細書において用いられているとき、エレクトロクロミックデバイス層の格子内に分子、原子またはイオンを可逆的に挿入することを意味する。本発明の好ましい実施形態において、電荷補償イオンはリチウムである。いくつかの例において、リチウムイオンを、真空処理条件下に、金属スパッタターゲットからデバイス内への原子リチウムのマグネトロンスパッタ堆積によって堆積させる。他の例において、任意の公知の堆積手段(例えば、スパッタリングなど)を用いて金属リチウムの代わりに酸化リチウムまたは炭酸リチウムを堆積させてもよい。典型的には、インターカレーション工程は、電極層の1つまたは両方の堆積後に行われる。電荷補償イオンの堆積量は、エレクトロクロミックデバイスのダイナミックレンジを最大にする電荷補償イオン量が添加されるように注意深く制御される。
【0047】
最後に、ブロック714において、上部透明導電層を、当該分野において周知の方法によって、第1透明導電層の堆積において先に記載されているように対電極層に堆積させる。
【0048】
いくつかの実施形態において、エレクトロクロミックデバイスを構成する全ての層を、デバイス製作の製造可能性を増加させるように同じ真空処理チャンバにおいてマグネトロンスパッタ堆積を介して堆積させているが、これは、取り扱いの低減の結果として歩留まりが改良され易いこと、および処理工程を少なくする結果として処理量も増加し易いことを意味している。さらに、全ての層を同じチャンバにおいて堆積させることで、短絡の数の低減を結果としてもたらす。
【0049】
透明導電体、EC、IC、およびCE層を、湿式化学法、化学蒸着、または物理蒸着を含めた当該分野において公知のいずれの技術によって堆積させてもよい。好ましい堆積方法として、ゾルゲル、噴霧熱分解、電着、金属有機分解、レーザーアブレーション、パルスレーザーアブレーション、蒸発、e−ビーム支援蒸発、スパッタリング、中間周波数反応性スパッタリング、RFスパッタリング、マグネトロンスパッタリング、DCスパッタリング、反応性DCマグネトロンスパッタリングなどが挙げられる。
【0050】
熱処理プロセスは、エレクトロクロミックデバイスのスイッチング特性にプラスの効果を及ぼすだけでなく、第2電極層(すなわち、上部TCLに隣接する電極層)の導電性および透明性を改良するとされている。熱処理はまた、リチウム化されたCE層の透過率を増加させる効果も有するとされている。
【0051】
フロー図800は、部分が図6に示されているデバイス60をその全体において形成することができるプロセスを示す。ブロック802〜806および810〜816に記載されている工程は、フロー図700に関連して記載されている工程702〜714にそれぞれ匹敵するためここでは繰り返さない。フロー図800は、追加の工程、ブロック808を含む。ブロック808において、EC層を、EC層の下の下部透明導電層におけるスクライブの上に、位置P1においてスクライブまたは切断する。EC層のスクライブは、下部TC層のスクライブよりも狭い線幅を有していてよく、その結果、位置P1において堆積されかつ下部TC層部分間のチャネルを占めているEC層材料の部分のみをスクライブすることとなるが、EC層材料のいくらかはチャネルに堆積されたままであるようにする。
【0052】
このように、図4および図5の例において、形成がフローチャート700の工程702〜706によって示されている、P1切断を通して形成されるチャネルは、EC層によって充填されている。チャネルの幅に及ぶ導電性パスが、デバイスが相当な期間にわたって着色状態に保持されるときにEC層に形成されることを防止するために、チャネルの線幅は、(上記のように、デバイス内にインターカレートされる)リチウムイオンの移動長さを超えるように選択される。対照的に、図6の例において、形成がフローチャート800の工程802〜810によって示されている、TCLに形成されるチャネルは、EC層によって部分的に、かつEC層の上でIC層によって部分的に充填されている。IC層は、EC層とは異なり、デバイスが着色状態にあるとき導電性にならない。そのため、位置P1において形成されるチャネルは、完全に導電性にはならない。その結果、図6のTCLの左側および右側部分65aおよび65b間のチャネル(すなわち、ブロック804において形成される第1P1スクライブの線幅)は、下部TCLの短絡を防止するために、図4または図5のいずれかのTCLの左側および右側部分間に形成されるチャネルの線幅と必ずしも同じ幅である必要はない。
【0053】
デバイス40、50、および60に含まれる層は、それぞれ、開示内容が全体に本明細書に参照により組み込まれる米国特許第8,004,744号およびタイトル「Laser Cuts to Reduce Electrical Leakage」の同時係属出願第13/786,934号に記載されている材料および技術を用いて形成されてよい。デバイスの層は、底部のTCLから始めて上部のTCLまで上がって逐次的に形成されてよい。
【0054】
いくつかの実施形態において、開示内容が全体に本明細書に参照により組み込まれる米国特許第5,724,177号にさらに完全に記載されているように、1つ以上の光学調整層が上部TCLの上に堆積されていてよい。例えば、光学調整層は、導電性金属層と併用されてよく、好ましくは約10nmと約50nmとの間、より好ましくは約23nmと約40nmとの間の厚さを有する。光学調整層を形成するための好ましい材料は、約1.9超、より好ましくは約1.9と約2.8との間の屈折率を有する。いくつかの実施形態において、光学調整層の屈折率および厚さは、以下の方法を用いて選択されてよい。所望の屈折率は、ガラス基板の屈折率を透明導電層の屈折率によって乗算し、積の平方根をとることによって求められてよい。光学調整層61の厚さは、可視光波長(例えば、540nm)を、算出された屈折率によって除算することにより求められる。好ましくは、光学調整層の厚さは約75nmである。
【0055】
一例において、ガラス基板は、1.5の屈折率を有し、第1光学調整層は、約1.77の屈折率および約75nmの厚さを有し、下部透明導電酸化物層は、約2.1の屈折率および約450nmの厚さを有し、エレクトロクロミック電極層は、約2.1の屈折率および約400nmの厚さを有し、イオン伝導層は、約1.5の屈折率および約200nmの厚さを有し、対電極層は、約2.0の屈折率および約200nmの厚さを有し、上部透明導電層は、約2.1の屈折率および約450nmの厚さを有し、第2光学調整層は、約1.77の屈折率および約75nmの厚さを有する。ガラススーパーストレート、およびガラススーパーストレートを光学調整層に接着させるためのラミネート層は、それぞれ約1.5の屈折率を有して、設けられてもよい。
【0056】
別の例において、ガラス基板は、約1.5の屈折率を有し、第1光学調整層は、約2.1の屈折率および約20nmの厚さを有し、第2の隣接する光学調整層は、約1.5の屈折率および約29nmの厚さを有し、下部透明導電層は、約2.1の屈折率および約450nmの厚さを有し、エレクトロクロミック電極層は、約2.1の屈折率および約300nmの厚さを有し、イオン伝導層は、約2.0の屈折率および約200nmの厚さを有し、対電極層は、約2.0の屈折率および約200nmの厚さを有し、上部透明導電層は、約2.1の屈折率および約450nmの厚さを有し、ラミネート層は、約1.5の屈折率を有し、ガラススーパーストレートは、約1.5の屈折率を有する。
【0057】
いくつかのさらなる例において、下部透明導電層は、種々の層の屈折率が基板の屈折率から下部透明導電層の屈折率まで徐々に増加するように選択される2以上の光学調整層の使用によって光学調整されてよい。これに関し、光学調整層は、屈折率を単調に増加させる2以上の層であってよい。例えば、約1.5の屈折率を有するガラス基板および約1.9の屈折率を有する下部透明導電層を含むデバイスでは、第1光学調整層が、約1.62((1.5×1.9)1/3)の屈折率を望ましくは有し、第2光学調整層が、約1.76((1.5×1.91/3)の屈折率を望ましくは有する。これらの層の厚さは、最大透過率を達成する光学モデルによって求められるとき、それぞれ、望ましくは約60nmおよび53nmである。所望により、光学調整の影響をさらに向上させるために、2を超える一連の隣接する光学調整層が用いられてよい。
【0058】
上記実施形態のそれぞれにおいて、EC層は、IC層の下に(例えば、基板に近接して、下部TCLに近接して)堆積され、CE層は、IC層の上に(例えば、上部TCLに近接して)堆積される。本開示の他の実施形態において、ECおよびCE層の配置が交換されてよく、その結果、CE層がIC層の下に位置付けられ、EC層がIC層の上に位置付けられることとなる。かかる実施形態において、P1スクライブは、EC層を通る代わりにCE層を通って切断してよく、P3スクライブは、EC層に近接するTCLを通って切断してよい。同様に、上記方法に関して、エレクトロクロミックスタックは、逆の順序で基板に形成されてよい。このように、実施形態に応じて形成された底部の2または3の層(すなわち、基板に隣接する透明導電層、CE層、およびいくつかの実施形態ではCE層に隣接するIC層)は、位置P1において切断されてよい。
【0059】
上記各実施形態は、たった2つのバスバー間のエレクトロクロミック構造を示しているが、上記開示は、2を超えるバスバーを有するデバイスにも同様に適用されることが理解されよう。かかるデバイスにおいて、各バスバーは、上記のようにエレクトロクロミック構造を形成することによって互いに電気的に分離されていてよい。各エレクトロクロミック構造の形成は、同時に実施されても逐次的に実施されてもよく、各対のバスバー間に形成される層は、上記のいずれの方法によってスクライブされてもよい。
【0060】
最後に、上記および図示の実施形態は、矩形状のエレクトロクロミックデバイスに限定されない。詳細な説明および図は、むしろ、エレクトロクロミックデバイスの断面図を示すことのみを意図しており、かかるデバイスの形状をいずれの様式にも限定することを意図していない。例えば、エレクトロクロミックデバイスは、矩形以外の形状(例えば、円形など)で形成されていてよい。さらなる例では、エレクトロクロミックデバイスは、三次元の形状(例えば、凸型、凹型など)であってよい。
【0061】
本明細書において本発明を特定の実施形態を参照して記載したが、これらの実施形態は、単に本発明の原理および適用の説明であることが理解されるべきである。したがって、説明的な実施形態に対して多くの変更がなされ得ること、ならびに添付の特許請求の範囲によって定義されている本発明の精神および範囲から逸脱することなく他のアレンジメントが考案され得ることが理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8