特許第6392376号(P6392376)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392376
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】サブマージアーク溶接ワイヤ
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/30 20060101AFI20180910BHJP
   B23K 9/18 20060101ALI20180910BHJP
   B23K 35/362 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   B23K35/30 320F
   B23K9/18 G
   B23K35/362 310C
【請求項の数】3
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-572531(P2016-572531)
(86)(22)【出願日】2014年7月30日
(65)【公表番号】特表2017-523046(P2017-523046A)
(43)【公表日】2017年8月17日
(86)【国際出願番号】CN2014083305
(87)【国際公開番号】WO2015188427
(87)【国際公開日】20151217
【審査請求日】2017年2月10日
(31)【優先権主張番号】201410258769.3
(32)【優先日】2014年6月11日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516368162
【氏名又は名称】江▲蘇▼省沙▲鋼鋼鉄▼研究院有限公司
【氏名又は名称原語表記】INSTITUTE OF RESEARCH OF IRON AND STEEL, JIANGSU PROVINCE/SHA−STEEL, CO.LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120411
【弁理士】
【氏名又は名称】島野 公利
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼宇
(72)【発明者】
【氏名】潘▲シン▼
(72)【発明者】
【氏名】王▲銀▼柏
【審査官】 川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】 中国特許出願公開第102069320(CN,A)
【文献】 特開2003−138340(JP,A)
【文献】 特開2006−051515(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第103317257(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第103464926(CN,A)
【文献】 特開2008−163456(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第1376553(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/00−35/40
C22C 38/00−38/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、組成が
0.85〜1.60%のMo、
2.50〜4.50%のNi、
0.10〜0.30%のTi、
0.005〜0.02%のB、
0.005〜0.02%のREM、
1.60〜2.00%のMn、
0%を超え0.06%以下のC、
0%を超え0.10%以下のSi、
0.008%以下のP、および
0.006%以下のS、
を含み、残部がFeであることを特徴とするサブマージアーク溶接ワイヤ。
【請求項2】
さらに、0.65〜1.45%のCrを含むことを特徴とする請求項1に記載のサブマージアーク溶接ワイヤ。
【請求項3】
0.10〜0.50%のCuをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のサブマージアーク溶接ワイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接技術の分野に関し、特に、サブマージアーク溶接ワイヤ及び溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶接技術とは、高温や高圧条件で、溶接材料(溶接棒や溶接ワイヤ)を用いて2つ或いは2つ以上の母材(溶接されるワーク)を一体に接続する操作方法である。産業技術の持続的な発展につれて、溶接は、単一の加工プロセスから、すでに現代の科学技術における学際融合的な新学科へ発展し、総合的なエンジニアリング技術になり、材料、溶接材料、溶接ワイヤ生産プロセスの制御及び機械化・自動化、溶接品質の制御、溶接後熱処理などの諸技術分野に関し、工業生産の各部門に広く適用され、工業発展及び製品技術の進歩の推進及び国民経済の発展の促進の面で重要な役割を果たしている。
【0003】
溶接技術の多くの応用領域中では、パイプラインの溶接は、業界でずっと広く注目を集めた焦点の一つとなり、特に近年の経済社会の急速な発展に伴ってエネルギー需要の持続的な増加が速くなり、石油ガス輸送パイプライン建設の急速な発展に繋がった。現在、X80及びそれ以下グレードのパイプラインの溶接プロセス及び材料技術は比較的に成熟したものであり、中国の「西気東輸2線」と建設中の「3線」の工事のパイプライン建設に好適に使用されている。
【0004】
しかし、エネルギー需要の持続的な増加につれて、業界では、輸送効率を向上させることが急務になっている。そこで、より数多くの高強度レベルのパイプライン、例えば、X90、X100およびX120などの高強度鋼管を採用すると、パイプラインの厚さを薄くすることによって材料の消費量を低減する目的を達成できる上、管径及び輸送圧力を増加することも可能であり、油送効率を向上させ、運行コストを節約することができる。したがって、高強度レベルの鋼管は、未来の石油ガスパイプライン建設における主な傾向と方向性であり、当然ながら相関のパイプラインの溶接も徐々に研究開発者の注目を集めている。
【0005】
パイプラインの溶接には、主に、サブマージアーク溶接による溶接方法が採用されているが、構造の大型化及び安全要求の厳格化につれて、業界ではX100及びX120などの超ハイグレードパイプラインの応用上の要求も厳しくなっている。特にパイプラインの溶接プロセスに対する要求は益々高くなっている。例えば、パイプライン用サブマージアーク溶接ワイヤの高強度、高靭性、優れた成形性及び高溶接効率(大熱量、高速度溶接)などや溶接後の溶接金属の引張強度、低温耐衝撃性及びパイプラインの溶接のプロセスなどに対して、いずれも厳格な要求を有している。
【0006】
従来技術では、上述のようなX100とX120などの超高グレードのパイプラインの溶接材料に関する報告は少なく、特許CN201110176764.2及びCN201310025309.1には、何れも、X100グレードのパイプライン専用のサブマージアーク溶接ワイヤを開示し、SJ101アルカリ性溶接に応用して製造されたパイプラインの溶接金属は、引張強度が760MPa以上、−40℃における衝撃エネルギーが150Jより大きいことが開示され、上記の溶接材料は、X80およびX100パイプラインの溶接による製管の需要を満たすことができるが、X120パイプラインの溶接による製管の需要をまだ満足できない。
【0007】
したがって、X120グレードのパイプライン用サブマージアーク溶接ワイヤ及び対応の溶接方法であるを見出して、強度、低温靭性および高溶接速度に対する要求を同時に満たすことができる溶接材料及び方法を求めることは、業界におけるずっと解決しようとしている問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】中国特許出願第CN201110176764.2号明細書
【特許文献2】中国特許出願第CN201310025309.1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする技術的課題は、サブマージアーク溶接ワイヤ及びその溶接方を提供することにあり、本発明により提供されたサブマージアーク溶接ワイヤは、X120グレードのパイプライン用サブマージアーク溶接ワイヤであり、本発明により提供されたサブマージアーク溶接ワイヤを採用した溶接プロセスと溶接後の溶接継手は、X120パイプライン溶接による製管上の要求を満たすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、質量%で、
0.85〜1.60%のMo、
2.50〜4.50%のNi、
0.10〜0.30%のTi、
0.005〜0.02%のB、
0.005〜0.02%のREM、
1.60〜2.00%のMn、
0%を超え0.06%以下のC、
0%を超え0.10%以下のSi、
0.008%以下のP、
0.006%以下のS、
を含み、残部がFeであることを特徴とするサブマージアーク溶接ワイヤを開示する。
【0011】
さらに、前記サブマージアーク溶接ワイヤは、0.65〜1.45%のCrを含むことが好ましい。
【0012】
さらに、前記サブマージアーク溶接ワイヤは、0.10〜0.50%のCuを含むことが好ましい。
【0013】
本発明は、さらに、前記のいずれか1項の技術案に記載のサブマージアーク溶接ワイヤと、MgO-SiO-CaF-AlO系弱塩基性焼結フラックスとを溶接した後、溶接金属を得るステップを含むことを特徴とする溶接方法を開示している。
【0014】
さらに、前記溶接の溶接速度は1.8〜2.4m/分であることが好ましい。
【0015】
さらに、前記溶接の入熱量は15〜150kJ/cmであることが好ましい。
【0016】
さらに、前記溶接前に、予めMgO-SiO-CaF-AlO系弱塩基性焼結フラックスを予熱するステップであって、前記予熱の温度は300〜400℃、前記予熱の時間は1〜3時間であるステップを含むことが好ましい。
【0017】
本発明は、さらに、質量%で、
0.85〜1.60%のMo、
2.50〜4.50%のNi、
0.005〜0.30%のTi、
0.002〜0.02%のB、
0.002〜0.02%のREM、
1.60〜2.00%のMn、
0%を超え0.06%以下のC、
0%を超え0.20%以下のSi、
0.008%以下のP、および
0.006%以下のS、
を含み、残部がFeであることを特徴とする溶接金属を開示している。
【0018】
さらに、前記溶接金属は、0.65〜1.45%のCrを含むことが好ましい。
【0019】
さらに、前記溶接金属は、0.10〜0.50%のCuを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、質量%で、0.85〜1.60%のMo、2.50〜4.50%のNi、0.10〜0.30%のTi、0.005〜0.02%のB、0.005〜0.02%のREM、1.60〜2.00%のMn、0%を超え0.06%以下のC、0%を超え0.10%以下のSi、0%を超え0.008%以下のP、0%を超え0.006%以下のS、を含み、残部がFeであるサブマージアーク溶接ワイヤを開示している。従来技術に比べて、本発明は、超高強度パイプラインX120の溶接に用いられるサブマージアーク溶接ソリッドワイヤを提供し、MgO-SiO-CaF-AlO弱塩基性焼結フラックスと組合わせて溶接すると、性能要求を満たす超高強度X120溶接継手が得られ、高い引張強度及び良い低温靭性を有し、且つ溶接過程において、高い溶接速度を有する。実験結果により、本発明により提供されたサブマージアーク溶接ワイヤを採用して溶接して得られたサブマージアーク溶接継手の溶接金属は、引張強度≧920Mpa、-40℃の衝撃エネルギー≧100J、伸び≧18%、溶接速度が最高で2.4m/分にすることができることが示された。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明をさらに理解するために、以下、実施例に併せて、本発明の好適な実施形態について説明するが、これらの説明は、単に本発明の特徴及び利点をさらに説明しているにすぎず、本発明の特許請求の範囲を限定するものではないと理解されるべきである。
【0022】
本発明は、質量%で、組成が
0.85〜1.60%のMo、
2.50〜4.50%のNi、
0.10〜0.30%のTi、
0.005〜0.02%のB、
0.005〜0.02%のREM、
1.60〜2.00%のMn、0%を超え0.06%以下のC、0%を超え0.10%以下のSi、0%を超え0.008%以下のP、0%を超え0.006%以下のS、
残部がFeであることを特徴とするサブマージアーク溶接ワイヤを開示している。
【0023】
本発明において使用される原料は、その由来は特に限定されず、市場で購入すればよい。
【0024】
本発明において、使用された全ての原料の純度は特に限定されず、当業者によく知られている純度であればよく、分析級試薬であることが好ましい。
【0025】
本発明において、上記Moの含有量(質量%)は、目的とする溶接金属の強度、及びNiとTiなどの他の合金の含有量によって、総合的に判断して確定する。本発明では、質量%で、上記溶接ワイヤーにおけるMoの含有量は、好ましくは0.85〜1.60%、より好ましくは1.0〜1.5%、最も好ましくは1.1〜1.3%である。本発明では、Moの由来は特に限定されず、当業者によく知られている方法により製造されたものや市販品であればよい。本発明において、Moの純度は特に限定されず、当業者によく知られているサブマージアーク溶接ワイヤを製造するための純度であればよい。
【0026】
本発明は、微量元素としてMoをサブマージアーク溶接ワイヤに加えることにより、溶接金属の強度及び低温衝撃靱性(low-temperature impact toughness)を向上させることができ、同時に一定量のMOを添加することで、溶接金属の溶接後の冷却工程における相転移温度を効果的に低減して、溶接金属の組織を微細化するとともに、アシキュラーフェライト及びベイナイトの形成温度範囲を拡大することができる。サブマージアーク溶接ワイヤの組織の微細化は、溶接金属の強度を向上させ、アシキュラーフェライトの促進は、低温衝撃靱性を向上させる。
【0027】
本発明では、質量%で、上記溶接ワイヤにおけるMnの含有量が、好ましくは1.60〜2.00%、より好ましくは1.70〜1.90%、最も好ましくは1.1〜1.3%である。本発明では、Mnの由来は特に限定されず、当業者によく知られている方法によって製造されたものや市販品であればよい。本発明では、Mnの純度は特に限定されず、当業者によく知られているサブマージアーク溶接ワイヤを製造するための純度であればよい。
【0028】
本発明において、微量元素としてMnがサブマージアーク溶接ワイヤに添加される。Mnは、溶接金属における主な脱酸元素の一つであって、同時に鋼板や溶接金属の強度の向上に最も効果的な元素の一つであり、その含有量が1.60%以上であると、強度向上効果が著しいが、Mnの含有量が2.0%を超えると、溶接金属の衝撃靭性が著しく低減する。
【0029】
本発明において、Ni/Mn比は、溶接金属の低温衝撃靭性に直接影響を与えることを考慮して、目的とする溶接金属の性能要求及びMnの含有量(質量%)によって総合的に判定して確定される。本発明では、上記溶接ワイヤにおけるNiの含有量は、質量%で、好ましくは2.5〜4.5%、より好ましくは3.0〜4.0%、最も好ましくは3.3〜4.7%である。本発明では、Niの由来は特に限定されず、当業者によく知られている方法によって製造されたものや市販品であればよい。本発明では、Niの純度は特に限定されず、当業者によく知られているサブマージアーク溶接ワイヤを製造するための純度であればよい。
【0030】
本発明において、微量元素としてNiをサブマージアーク溶接ワイヤに加える。その主な役割は、溶接金属の低温靭性を向上させることであり、同時にその固溶強化効果により、溶接金属の強度を向上させる。Niによる低温靭性の向上のメカニズムは、フェライトマトリックスを靭性化することにより実現される。Ni及びMnはいずれもオーステナイト安定化元素であり、一定量の添加によってオーステナイト相転移温度を低下させ、強度を向上させるが、両者の衝撃靭性への影響はまったく異なるので、同時に添加する。
【0031】
本発明に記載のTiの含有量(質量%)は、フラックスや溶接プロセスの影響にしたがって添加することが好ましい。本発明において、質量%で、上記溶接ワイヤにおけるTiの含有量は、好ましくは0.10〜0.30%、より好ましくは0.15〜0.25%、最も好ましくは0.18〜0.22%である。本発明において、Tiの由来は特に限定されず、当業者によく知られている方法によって製造されたものや市販品であればよい。本発明において、Tiの純度は特に限定されず、当業者によく知られているサブマージアーク溶接ワイヤを製造するための純度であればよい。
【0032】
本発明において、微量元素としてTiをサブマージアーク溶接ワイヤに加えることにより、それから形成した酸化物の大きさが微細化され、その体積含有率が著しく増加することができ、それによって、溶接金属におけるアシキュラーフェライトの生成を著しく促進することができる。
【0033】
本発明において、質量%で、上記溶接ワイヤにおけるBの含有量が、好ましくは0.005〜0.02%、より好ましくは0.008〜0.015%、最も好ましくは0.01〜0.013%である。本発明では、Bの由来は特に限定されず、当業者によく知られている方法によって製造されたものや市販品であればよい。本発明において、Bの純度は特に限定されず、当業者によく知られているサブマージアーク溶接ワイヤを製造するための純度であればよい。
【0034】
本発明は、微量元素としてBをサブマージアーク溶接ワイヤに加えることにより、溶接金属の焼入れ性と強度を向上させることができ、それが粒界に偏析しやすい特性を利用して溶接金属における結晶内組織の形成を促進するとともに、粒界の核形成により生じたベイナイトとマルテンサイト組織を抑制し、溶接金属の低温靭性を向上させる。
【0035】
本発明において、質量%で、上記溶接ワイヤにおけるREMの含有量が、好ましくは0.005〜0.2%、より好ましくは0.01〜0.15%、最も好ましくは0.05〜0.10%である。本発明に述べるREMは希土類元素であり、本発明では、REMの組成が特に限定されず、当業者によく知られているREMの組成であればよい。本発明において、質量%で、REMには、50%以上のLa、50%以上のCe、或い50%以上のLaとCeの混合物を含むことが好ましい。本発明では、REMの由来は特に限定されず、当業者によく知られている方法によって製造されたものや市販品であればよい。本発明では、REMの純度は特に限定されず、当業者によく知られているサブマージアーク溶接ワイヤを製造するための純度であればよい。
【0036】
本発明は、重要な微量元素としてREMをサブマージアーク溶接ワイヤに加えることにより、脱酸素を行って溶接金属の酸素含有量を減少させ、溶接金属の低温衝撃靭性を向上することができるとともに、PとSの偏析を改善して溶接金属耐割れ性能を高めることもでき、一方、それから生成した酸化物は分散しやすく、且つ集中成長しにくいという特性を利用して、粒内の針状性の組織の生成を促進し、溶接金属の顕微組織を微細化して、溶接金属の低温靭性を向上させる。
【0037】
本発明において、質量%で、上記溶接ワイヤにおけるCの含有量が、好ましくは0.06%以下、より好ましくは0.05%以下、最も好ましくは0.03%以下である。Cの含有量が高いと、鉄系材料の低温衝撃靭性及び溶接性能に悪影響を及ぼすので、本発明においては、上記のCの含有量を制御し、Cの含有量を低減して溶接金属の焼入れ性を低下することができ、マルテンサイト変態の傾向を減少し、マルテンサイトが生成された場合にも、低いC含有量がマルテンサイトの硬度を低減し、低温衝撃靭性を改善することができ、さらに、Cの含有量を低減することにより、溶接低温割れ感受性を下げ、溶接品質を上げて、溶接金属の低温衝撃靭性を向上させ、低温割れ感受性を改善することができる。
【0038】
本発明において、質量%で、上記溶接ワイヤにおけるSiの含有量は、好ましくは0.10%以下、より好ましくは0.07%以下、最も好ましくは0.04%以下である。Siの含有量が高いと、溶接金属の高温割れの傾向を増加させ、溶接に不利であり、また、溶接金属における粒界フェライトおよびフェライトサイドプレートを生成する傾向が増加され、これによって、低温衝撃靭性が損なわれる。
【0039】
本発明において、質量%で、上記溶接ワイヤは、さらに不純物元素Pを含み、上記溶接ワイヤにおけるPの含有量は、好ましくは0.008%以下に制御し、より好ましくは0.005%以下に制御し、最も好ましくは0.003%以下に制御し、本発明において、質量%で、上記溶接ワイヤは、さらに不純物元素Sを含み、上記溶接ワイヤにおけるSの含有量は、好ましくは0.006%以下に制御し、より好ましくは0.004%以下に制御し、最も好ましくは0.002%以下に制御する。
【0040】
本発明において、上記サブマージアーク溶接ワイヤは、さらにCrを含むことが好ましい。本発明において、質量%で、上記溶接ワイヤにおけるCrの含有量(質量%)は、好ましくは0.65〜1.45%、より好ましくは0.85〜1.25%、最も好ましくは0.95〜1.15%である。本発明において、Crの由来は特に限定されず、当業者によく知られている方法によって製造されたものや市販品であればよい。本発明において、Crの純度は特に限定されず、当業者によく知られているサブマージアーク溶接ワイヤを製造するための純度であればよい。
【0041】
本発明において、微量元素としてCrをサブマージアーク溶接ワイヤに加える。当該元素は溶接金属の焼き入れ性及び強度を効果的に向上させる元素のひとつであり、その含有量が0.65%を下回ると、補強効果は著しくなく、その含有量が1.45%を超えると、溶接金属の低温衝撃靭性に不利である。
【0042】
本発明において、上記サブマージアーク溶接ワイヤは、さらにCuを含むことが好ましい。本発明において、質量%で、上記溶接ワイヤにおけるCuの含有量は、好ましくは0.10〜0.50%、より好ましくは0.20〜0.40%、最も好ましくは0.25〜0.35%である。本発明では、Cuの由来は特に限定されず、当業者によく知られている方法によって製造されたものや市販品であればよい。本発明では、Cuの純度は特に限定されず、当業者によく知られているサブマージアーク溶接ワイヤを製造する際の純度であればよい。
【0043】
本発明は、微量元素としてCuをサブマージアーク溶接ワイヤに加え、固溶強化により溶接金属の強度を向上させる一方、溶接金属の耐腐食能力も向上させることができる。その含有量が0.10%以下であると、強度及び耐腐食能力に対する効果が著しくなく、その含有量が0.50%以上であると、溶接ワイヤ用鋼線材の精錬及び表面品質の制御に困難をもたらす。また、マルチパス溶接継目において後続パスが前のパスに焼戻し効果を起こし、こうして、Cu粒子相の析出が誘導され、溶接金属の衝撃靭性を損なうことなく、溶接金属の強度を大幅に向上させることができるという役割を果たしている。
【0044】
本発明は、超高強度パイプラインに用いられるサブマージアーク溶接ワイヤを提供し、超高強度X120グレードパイプラインのサブマージアーク溶接による製管に用いることができる。サブマージアーク溶接ワイヤは、高Mo、高Ti、高BおよびREMの合金設計であり、溶接後の溶接金属は、比較的大きな入熱量の溶接条件下で、アシキュラーフェライトを主とした溶接組織を得ることを確保でき、強度と靭性の両方を兼ねて、入力量の大きい溶接のニーズを満たすことができ、低C、低Si及び高Niの合金設計が、溶接金属における低炭素当量、低温割れ感受性と脆化相の生成を確保でき、溶接の継目の低温靭性に寄与するとともに、高Niの設計が、フェライトマトリックスを靭性化して溶接金属の低温靱性の安定域を向上し、溶接金属の、大入熱量溶接、高溶接速度の溶接への適用に、基礎を提供している。
【0045】
本発明は、上記のいずれか1項の技術案に記載のサブマージアーク溶接ワイヤとMgO-SiO-CaF-AlO系弱塩基性焼結フラックスと溶接して、溶接金属を得るステップであって、上記溶接の溶接速度は、好ましくは1.8〜2.4m/分、より好ましくは1.9〜2.3m/分、最も好ましくは2.0〜2.2m/分であり、上記溶接の入熱量は、好ましくは15〜150kJ/cm、より好ましくは30〜120kJ/cm、最も好ましくは50〜100kJ/cmであるステップを含むこと特徴をとする溶接方法を提供している。
【0046】
本発明において、上記のMgO-SiO-CaF-AlO系弱塩基性焼結フラックスについては特に限定されず、当業者によく知られているサブマージアーク溶接ワイヤに用られるMgO-SiO-CaF-AlO系弱塩基性焼結フラックスであればよい。本発明において、溶接効果を確保するために、上記溶接の前に、予めMgO-SiO-CaF-AlO系弱塩基性焼結フラックスを予熱することが好ましく、上記予熱の温度は、好ましくは300〜400℃、より好ましくは330〜370℃であり、上記予熱の時間は、好ましくは1〜3時間、より好ましくは1.5〜2.5時間であり、本発明では、上記予熱の他の条件については特に限定されず、当業者によく知られている弱塩基性焼結フラックスの予熱条件であればよい。本発明では、上記の溶接プロセスは特に限定されず、当業者によく知られているサブマージアーク溶接プロセスであればよい。本発明において、上記溶接の他の条件については特に限定されず、当業者によく知られている溶接条件であればよい。本発明では、上記の溶接装置については特に限定されず、当業者によく知られているサブマージアーク溶接装置であればよい。
【0047】
本発明により提供された溶接方法によれば、本発明により提供された溶接ワイヤ及び相応のMgO-SiO-CaF-AlO系弱塩基性フラックスを採用すると、高溶接速度を実現でき、高効率の溶接の要求を満たすことができる。
【0048】
本発明は、さらに、質量%で、
0.85〜1.60%のMo、
2.50〜4.50%のNi、
0.005〜0.30%のTi、
0.002〜0.02%のB、
0.002〜0.02%のREM、
1.60〜2.00%のMn、0%を超え0.06%以下のC、0%を超え0.20%以下のSi、
0.008%以下のP、
0.006%以下のS、
を含み、残部がFeであることを特徴とする溶接金属を開示する。
【0049】
本発明に記載の溶接金属は、上記のいずれか1項の技術案に記載のサブマージアーク溶接ワイヤを上記のいずれか1項の技術案に記載の溶接方法により溶接して得られたものである。
【0050】
本発明において、フラックス及び溶接プロセスの総合的な影響を考慮して、本発明では、質量%で、上記溶接金属におけるTiの含有量が、好ましくは0.05〜0.30%、より好ましくは0.10〜0.25%、最も好ましくは0.15〜0.20%であり、本発明に記載の溶接金属におけるTiの含有量がこの含有量の範囲にあることにより、それから形成された酸化物のサイズが微細化され得、且つその体積含有率が著しく増加し、それによって、溶接金属におけるアシキュラーフェライトの形成を著しく促進することができる。
【0051】
本発明において、質量%で、上記溶接金属におけるBの含有量が、好ましくは0.002〜0.02%、より好ましくは0.005〜0.017%、最も好ましくは0.01〜0.014%であり、本発明に記載の溶接金属におけるTiの含有量がこの含有量の範囲にあることにより、その粒界に偏析しやすい特性を利用して溶接金属における結晶内組織の形成を促進するとともに、粒界における核の形成によって生じたベイナイトとマルテンサイト組織を抑制し、溶接金属の低温靭性を向上させる。
【0052】
本発明において、上記の溶接金属におけるREMの含有量は、質量%で、好ましくは0.002〜0.02%、より好ましくは0.006〜0.017%、最も好ましくは0.01〜0.014%であり、本発明に述べるREMは、上記REMと一致しているので、ここでは説明を省略する。
【0053】
本発明において、上記溶接金属におけるSiの含有量は、質量%で、好ましくは0.20%以下、より好ましくは0.15%以下、最も好ましくは0.10%以下である。高いSiの含有量は、溶接金属の高温割れの傾向を増加させ、溶接に不利である一方、溶接金属における粒界フェライトおよびフェライトサイドプレートを生成する傾向を増加し、これによって、低温衝撃靭性が損なわれる。しかしながら、溶接プロセス性能を保つように、サブマージアーク溶接フラックスに一定量のSiOを加えることを必要とするので、溶接金属におけるSiの含有量は増加するが、その含有量が0.20%以下であるように制御すべきである。その含有量が0.2%を超えると、溶接金属において、特に、マルチパス溶接継目に脆化相M-A組分は著しく増加し、低温靭性が損なわれる。
【0054】
本発明に記載の溶接金属に含まれる他の組分は、上記溶接ワイヤにおける元素組成、好ましいである原則及び原理と一致しているので、ここで、説明を省略する。
【0055】
本発明は、上記の溶接方法により得られた溶接金属の性能を測定したところ、実験の結果によると、本発明により提供された溶接金属の引張強度920MPa以上、伸び18%以上、-40℃における衝撃エネルギー100J以上であり、本発明の溶接プロセスにおける最大の溶接速度は2.4m/分であり、最大入熱量は150kJ/cmに達することが示された。
【0056】
本発明をさらに説明するために、以下、実施例と組み合わせて、本発明により提供されたサブマージアーク溶接ワイヤ及びその溶接方法を詳細に説明するが、本発明の保護範囲は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0057】
実施例1
溶接試験板は、厚さの仕様が16.3mmのX120パイプライン用鋼板を採取し、断面サイズが350×800mmである。シングルワイヤサブマージアーク溶接方法を採用し、溶接速度は2.0m/分、溶接入熱量は32kJ/cm、開先はシングルVである。直径が3.2mmのソリッドワイヤを選択し、化学成分(質量%)は表1を参照。表1は、実施例1〜18で用いられたサブマージアーク溶接ソリッドワイヤの化学成分である。フラックスとして、アルカリ度が1.35のMgO-SiO-CaF-AlO弱塩基性焼結フラックスを選択した。溶接前に、フラックスを350℃に加熱し、2時間保温した。
溶接後に、溶接継手をX線および超音波で探傷したところ、欠陥が見られなった。溶接継手の溶接金属成分(質量%)は表2を参照。表2は、実施例1〜18で得られた溶接継手の溶接金属の化学成分である。溶接金属の力学的特性の検出結果は、表3を参照。表3は実施例1〜18で得られた溶接継手の溶接金属の力学的特性である。
【0058】
実施例2
実施例1と同じ鋼板及びフラックスを採用した。溶接ワイヤ成分は、実施例1と同じであり、直径は4mmである。
ダブルワイヤサブマージアーク溶接方法を採用し、溶接入熱量は65kJ/cm、溶接速度は1.8m/分、開先はダブルVであり、表面と裏面に、1パスずつ行った。
溶接後に、溶接継手をX線および超音波で探傷したところ、欠陥は認められなかった。溶接継手の溶接金属成分(質量%)は表2を参照。表2は、実施例1〜18で得られた溶接継手の溶接金属の化学成分である。溶接金属の力学的特性の検出結果は、表3を参照。表3は実施例1〜18で得られた溶接継手の溶接金属の力学的特性である。
【0059】
実施例3
実施例1の成分と同じ溶接ワイヤを採用したが、直径が4mmである。溶接試験板の成分及び厚さの仕様は、実施例1と同じであるが、断面サイズが450×1200mmである。フラックスとして、アルカリ度が1.32のMgO-SiO-CaF-AlO弱塩基性焼結フラックスを選択した。
両面四線式サブマージアーク溶接方法を用い、開先はシングルVであり、表面と裏面に、溶接をそれぞれ1パスずつ行った。溶接入熱量は75kJ/cm、溶接速度は2.1m/分である。
溶接後に、溶接継手をX線および超音波で探傷したところ、欠陥は認められなかった。溶接継手の溶接金属成分(質量%)は表2を参照。表2は、実施例1〜18で得られた溶接継手の溶接金属の化学成分である。溶接金属の力学的特性の検出結果は、表3を参照。表3は実施例1〜18で得られた溶接継手の溶接金属の力学的特性である。
【0060】
実施例4
溶接試験板は、厚さ17.2mmのパイプライン用鋼板X120を採取し、断面サイズが450×1000mmである。直径が4mmのソリッドワイヤを選択し、化学成分(質量%)は表1を参照。表1は、実施例1〜18で用いられるサブマージアーク溶接ソリッドワイヤの化学成分である。サブマージアーク溶接フラックスとして、アルカリ度が1.38のMgO-SiO-CaF-AlO系弱塩基性焼結フラックスを選択し、溶接前に、フラックスを350℃に加熱し、2時間保温した。
シングルワイヤサブマージアーク溶接方法を用い、開先はシングルV、溶接入熱量は48kJ/cm、溶接速度は1.95m/分である。
溶接後に、溶接継手をX線および超音波で探傷したところ、欠陥は認められなかった。溶接継手の溶接金属成分(質量%)は表2を参照。表2は実施例1〜18で得られた溶接継手の溶接金属の化学成分である。溶接金属の力学的特性の検出結果は、表3を参照。表3は実施例1〜18で得られた溶接継手の溶接金属の力学的特性である。
【0061】
実施例5
実施例4と同じ溶接試験板、溶接ワイヤ及びフラックスを選択した。
ダブルワイヤサブマージアーク溶接法を用い、開先はシングルV、溶接入熱量は78kJ/cm、溶接速度は2.05m/分である。
溶接後に、溶接継手をX線および超音波で探傷したところ、欠陥は認められなかった。溶接継手の溶接金属成分(質量%)は表2を参照。表2は実施例1〜18で得られた溶接継手の溶接金属の化学成分である。溶接金属の力学的特性の検出結果は、表3を参照。表3は実施例1〜18で得られた溶接継手の溶接金属の力学的特性である。
【0062】
実施例6
実施例4と同じ溶接試験板、溶接ワイヤ及びフラックスを選択した。
両面四線式サブマージアーク溶接法を用い、開先はダブルV、溶接入熱量は65kJ/cm、溶接速度は2.2m/分である。
溶接後に、溶接継手をX線および超音波で探傷したところ、欠陥は認められなかった。溶接継手の溶接金属成分(質量%)は表2を参照。表2は実施例1〜18で得られた溶接継手の溶接金属の化学成分である。溶接金属の力学的特性の検出結果は、表3を参照。表3は実施例1〜18で得られた溶接継手の溶接金属の力学的特性である。
【0063】
実施例7-15
それぞれ異なる成分で、直径が4mmのソリッドワイヤを選択した。フラックスとして、アルカリ度が1.28のMgO-SiO-CaF-AlO系弱塩基性焼結フラックスを選択し、溶接前に、フラックスを350℃に加熱し、2時間保温した。
溶接試験板は、14.3mmのパイプライン鋼板X120を選択した。上記の溶接ワイヤ及びフラックスにより、外径が1219の鋼管製造ラインで内溶接及び外溶接を行った。4線式サブマージアーク溶接を採用し、開先はダブルVであり、表面と裏面にそれぞれは1パスずつ行った。内外溶接の熱入力量はそれぞれ65及び68kJ/cm、溶接速度は2.25m/分である。
溶接後に、溶接継手をX線および超音波で探傷したところ、欠陥は認められなかった。溶接継手の溶接金属成分(質量%)は表2を参照。表2は実施例1〜18で得られた溶接継手の溶接金属の化学成分である。溶接金属の力学的特性の検出結果は、表3を参照。表3は実施例1〜18で得られた溶接継手の溶接金属の力学的特性である。
【0064】
実施例16
溶接試験板は26mm厚さの高強度鋼板を採取し、引張強度はが925MPaである。
直径が4mmのソリッドワイヤを選択し、その成分(質量%)は表1を参照。表1は、実施例1〜18で用いられるサブマージアーク溶接ソリッドワイヤの化学成分である。フラックスとして、アルカリ度が1.34のMgO-SiO-CaF-AlO系弱塩基性焼結フラックスを選択し、溶接前に、フラックスを350℃に加熱し、2時間保温した。片面3線式サブマージアーク溶接方法を用い、開先はシングルVであり、片面溶接両面成形であり、溶接入熱量は136kJ/cm、溶接速度は2.21m/分である。
溶接後に、溶接継手をX線および超音波で探傷したところ、欠陥は認められなかった。溶接継手の溶接金属成分(質量%)は表2を参照。表2は実施例1〜18で得られた溶接継手の溶接金属の化学成分である。溶接金属の力学的特性の検出結果は、表3を参照。表3は実施例1〜18で得られた溶接継手の溶接金属の力学的特性である。
【0065】
実施例17
溶接試験板は、20mm厚さの高強度鋼板を採取し、その屈服強度が845MPa、引張強度が967Mpaである。
直径が4mmのソリッドワイヤを選択し、その成分(質量%)は表1を参照。表1は、実施例1〜18で使用されるサブマージアーク溶接ソリッドワイヤの化学成分である。フラックスとして、アルカリ度が1.27のMgO-SiO-CaF-AlO系弱塩基性焼結フラックスを選択し、溶接前に、フラックスを350℃に加熱し、2時間保温した。片面3線式サブマージアーク溶接方法を用い、開先はシングルVであり、片面溶接両面成形であり、溶接入熱量は124kJ/cm、溶接速度は2.15m/分である。
溶接後に、溶接継手をX線および超音波で探傷したところ、欠陥は認められなかった。溶接継手の溶接金属成分(質量%)は表2を参照。表2は実施例1〜18で得られた溶接継手の溶接金属の化学成分である。溶接金属の力学的特性の検出結果は、表3を参照。表3は実施例1〜18で得られた溶接継手の溶接金属の力学的特性である。
【0066】
実施例18
溶接試験板は、20mm厚さの高強度鋼板を採取し、その屈服強度が835MPa、引張強度が945MPaである。
直径が4mmのソリッドワイヤを選択し、その成分(質量%)は表1を参照。表1は、実施例1〜18で使用されるサブマージアーク溶接ソリッドワイヤの化学成分である。フラックスとして、アルカリ度が1.30のMgO-SiO-CaF-AlO系弱塩基性焼結フラックスを選択し、溶接前に、フラックスを350℃に加熱し、2時間保温した。両面ダブルワイヤサブマージアーク溶接法を用い、開先はダブルVであり、表面と裏面のそれぞれは、1パスずつ行って、溶接入熱量は105kJ/cm、溶接速度は1.9m/分である。
溶接後に、溶接継手をX線および超音波で探傷したところ、欠陥は認められなかった欠陥は認められなかった。溶接継手の溶接金属成分(質量%)は表2を参照。表2は実施例1〜18で得られた溶接継手の溶接金属の化学成分である。溶接金属の力学的特性の検出結果は、表3を参照。表3は実施例1〜18で得られた溶接継手の溶接金属の力学的特性である。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
【表3】
【0070】
上記の実施例のデータから分かるように、本発明の技術によれば、欠陥無しのパイプラインサブマージアーク溶接継手を得ることができ、且つ溶接金属の引張強度が980MPa以上、破断後の伸び率が18%以上、-40℃における衝撃エネルギーが100J以上であり、超高強度X120グレードパイプラインの溶接による製管に適することがわかる。
【0071】
同時に、本発明は、さらに、MgO-SiO-CaF-AlO系弱塩基性焼結フラックスを配合した溶接方法を提供し、高溶接速度が1.8〜2.4m/分、高熱入力量が15〜150kJ/cmである溶接加工を達成することができる。
【0072】
以上には、本発明により提供されたサブマージアーク溶接ワイヤ及びその溶接方法を詳細に説明し、本文において具体例を用い、本発明の原理及び実施形態を述べた。上記の実施例の説明は、単に本発明の方法及びその中心思想を理解するために用いられたものにすぎず、当業者にとって、本発明の原理から逸脱せずに、本発明に対して若干の変更及び修飾を行うことができ、これらの変更や修飾も本発明権利請求の保護範囲に含まれる。