特許第6392385号(P6392385)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392385
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】太陽電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/068 20120101AFI20180910BHJP
   H01L 31/18 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   H01L31/06 300
   H01L31/04 420
【請求項の数】12
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-13392(P2017-13392)
(22)【出願日】2017年1月27日
(65)【公開番号】特開2017-135386(P2017-135386A)
(43)【公開日】2017年8月3日
【審査請求日】2017年1月27日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0011825
(32)【優先日】2016年1月29日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2016-0151337
(32)【優先日】2016年11月14日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】502032105
【氏名又は名称】エルジー エレクトロニクス インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100165191
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 章
(74)【代理人】
【識別番号】100151459
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 健一
(72)【発明者】
【氏名】チョン ジュファ
(72)【発明者】
【氏名】アン チョンヨン
(72)【発明者】
【氏名】チャン ウォンチェ
(72)【発明者】
【氏名】キム チェソン
【審査官】 佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2009−503845(JP,A)
【文献】 中国特許第102983214(CN,B)
【文献】 特表2013−529857(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/00−31/078
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板上にシリコン酸化物層を形成するステップと、
連続して前記シリコン酸化物層を570℃〜700℃の温度に露出させてアニーリング(annealing)するステップと、
を含
前記アニーリングするステップにおいて、前記シリコン酸化物層を1〜1.5nmの厚さのトンネル層に変換し
前記アニーリングするステップにおいて、前記シリコン酸化物層は、700℃よりも低い温度から、第1区間の間徐々に700℃付近まで加熱された後、第2区間の間700℃付近の温度を維持し、その後第3区間の間前記700℃より低い温度に徐々に下降させ
前記第3区間の間の1分当たりの下降温度は、前記第1区間の間の1分当たりの上昇温度よりも小さい、太陽電池の製造方法。
【請求項2】
前記第1区間の間の1分当たりの上昇温度は10℃である、請求項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項3】
前記第1区間は8分〜12分である、請求項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項4】
前記低い温度は、600℃と同一またはそれより高い温度である、請求項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項5】
前記第2区間は12分〜18分である、請求項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項6】
前記第3区間の間の1分当たりの下降温度は℃である、請求項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項7】
前記第1区間は、前記第2区間よりも短いか、または前記第3区間よりも短い、請求項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項8】
前記第1区間、第2区間、及び第3区間を合わせた時間は、1時間と同一またはそれより短い、請求項に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項9】
前記シリコン酸化物層を形成するステップ及び前記シリコン酸化物層を570℃〜700℃の温度に露出させてアニーリング(annealing)するステップは、インサイチュ(in−situ)工程で行われる、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項10】
前記シリコン酸化物層は、前記半導体基板の表面を湿式酸化して形成するか、化学溶液に露出させて形成するか、または熱酸化により形成する、請求項1に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項11】
前記シリコン酸化物層はSiOである、請求項10に記載の太陽電池の製造方法。
【請求項12】
半導体基板上に第1温度でシリコン酸化物層を形成するステップと
前記シリコン酸化物層を第2温度でアニーリング(annealing)してトンネル層を形成するステップと
前記トンネル層上に多結晶シリコン層を形成するステップと、
を含み、
前記シリコン酸化物層を形成するステップにおいて、前記シリコン酸化物層は、チャンバー内で熱酸化によって形成され
前記トンネル層を形成するステップは、前記チャンバー内でインサイチュ(in−situ)工程で連続して行われ、
前記第1温度と前記第2温度は同一であり
前記第2温度は570℃〜700℃である、太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一実施例は、トンネル層を有する太陽電池の新たな製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、石油や石炭のような既存エネルギー資源の枯渇が予想されながら、これらに代わる代替エネルギーへの関心が高まっている。その中でも太陽電池は、太陽光エネルギーを電気エネルギーに変換させる次世代電池として脚光を浴びている。
【0003】
最近開発されている太陽電池は、効率を良くするために、基板とドープされた半導体層との間にトンネル層を配置してセル効率を高めている。このトンネル層は、シリコン酸化物からなっており、トンネル効果を得るためにはアニーリング(annealing)工程を伴わなければならない。
【0004】
一方、効率は、太陽電池の性能を評価する重要な因子であって、この効率は太陽電池の発電性能と直結している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、効率を向上させることができる太陽電池の製造方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施例に係る製造方法は、半導体基板上にシリコン酸化物層を形成するステップ、及び連続して前記シリコン酸化物層を570℃〜700℃の温度に露出させてアニーリング(annealing)するステップを含む。
【0007】
本発明の他の実施例では、半導体基板上に第1温度でシリコン酸化物層を形成するステップ、前記シリコン酸化物層を第2温度でアニーリング(annealing)してトンネル層を形成するステップ、及び前記トンネル層上に多結晶シリコン層を形成するステップを含む太陽電池の製造方法を開示する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一実施例によれば、シリコン酸化物層を形成した直後にアニーリングを行うので、改善されたトンネル層を形成することができる。
【0009】
また、半導体層を形成する前にアニーリングを行うので、低い温度で熱処理が可能である。
【0010】
また、熱処理時に温度を100℃以内で徐々に上昇させた後、下降させるので、半導体基板に加わる熱応力を減らし、セル効率を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施例に係る製造方法を用いて作製した太陽電池の断面図である。
図2】本発明の一実施例に係る太陽電池の製造方法を説明するフローチャートである。
図3】シリコン酸化物層の熱処理時の温度変化を示すグラフである。
図4】本発明の他の実施例に係る太陽電池の製造方法を説明するフローチャートである。
図5A】本発明の一実施例に係る作製方法を用いて図1に示した太陽電池を作製する過程を模式的に示す図である。
図5B】本発明の一実施例に係る作製方法を用いて図1に示した太陽電池を作製する過程を模式的に示す図である。
図5C】本発明の一実施例に係る作製方法を用いて図1に示した太陽電池を作製する過程を模式的に示す図である。
図5D】本発明の一実施例に係る作製方法を用いて図1に示した太陽電池を作製する過程を模式的に示す図である。
図5E】本発明の一実施例に係る作製方法を用いて図1に示した太陽電池を作製する過程を模式的に示す図である。
図5F】本発明の一実施例に係る作製方法を用いて図1に示した太陽電池を作製する過程を模式的に示す図である。
図5G】本発明の一実施例に係る作製方法を用いて図1に示した太陽電池を作製する過程を模式的に示す図である。
図5H】本発明の一実施例に係る作製方法を用いて図1に示した太陽電池を作製する過程を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下では、添付の図面を参照して、本発明の実施例を詳細に説明する。しかし、本発明がこれらの実施例に限定されるものではなく、様々な形態に変形可能であることは勿論である。図面では、本発明を明確且つ簡略に説明するために、説明と関係のない部分の図示を簡単にしたり省略し、また、厚さ、面積、大きさなどは、恣意的に実際と異なって調整しており、本発明の厚さ、面積などは、図面に図示されたものに限定されない。また、蒸着法、スパッタリング法のように公知の半導体製造方法については、発明の本質が不明確にならないように詳細な説明を省略した。
【0013】
図1は、後述する本発明の一実施例に係る製造方法を用いて作製した太陽電池の断面の様子を示す。
【0014】
図1を参照すると、太陽電池100は、半導体基板10と、半導体基板10の後面側に位置するn+領域20と、半導体基板10の前面側に位置するp+領域30とを含んで構成される。電極42,44は、n+領域20に接続される第1電極42、及びp+領域30に接続される第2電極44を含む。そして、太陽電池100は、第1パッシベーション膜24、第2パッシベーション膜34、反射防止膜36のような絶縁膜をさらに含むことができる。これについて詳細に説明する。
【0015】
半導体基板10は単結晶構造の半導体層で構成される。半導体基板10が単結晶半導体で構成されると、太陽電池100が、結晶性が高いため欠陥の少ない単結晶半導体で構成される半導体基板10をベースとするようになる。これによって、太陽電池100が優れた電気的特性を有することができる。
【0016】
半導体基板10の前面は、テクスチャリング(texturing)されて凹凸を有することができる。凹凸は、一例として、外面が半導体基板10の(111)面で構成され、不規則な大きさを有するピラミッド形状を有することができる。テクスチャリングにより半導体基板10の前面などに凹凸が形成されて前面の表面粗さが増加すると、半導体基板10の前面などを介して入射する光の反射率を低下させることができる。したがって、半導体基板10においてpn接合をなす領域まで到達する光量を増加させることができ、光損失を最小化することができる。
【0017】
半導体基板10は、n型又はp型ドーパントが低いドーピング濃度でドープされており、好ましい一形態において、半導体基板10はn型ドーパントでドープされている。
【0018】
半導体基板10の後面全体にはn+領域20が形成されている。一例として、半導体基板10上にトンネル層22が形成され、トンネル層22上にn+領域20が形成されてもよい。
【0019】
トンネル層22は、半導体基板10の後面に接触して形成されることによって、構造を単純化し、トンネル効果を向上させることができる。このトンネル層22は、電子及び正孔にとって一種のバリア(barrier)として作用して、少数キャリア(minority carrier)が通過しないようにし、トンネル層22に隣接する部分で蓄積された後、一定以上のエネルギーを有する多数キャリア(majority carrier)のみがトンネル層22を通過できるようにする。また、トンネル層22は、n+領域20のドーパントが半導体基板10へ拡散することを防止する拡散バリアとしての役割を果たすことができる。このようなトンネル層22は、多数キャリアがトンネリングされ得る様々な物質を含むことができ、一例として、酸化物、窒化物、半導体、伝導性高分子などを含むことができる。特に、トンネル層22が、シリコン酸化物を含むシリコン酸化物層で構成されてもよい。シリコン酸化物層は、パッシベーション特性に優れ、キャリアがトンネリングされやすい膜であるためである。
【0020】
トンネル効果を十分に具現できるように、トンネル層22の厚さが、第1及び第2パッシベーション膜24,34、第1又は第2導電型領域20,30の厚さよりも小さくてもよい。一例として、トンネル層22の厚さが2nm以下であってもよく、一例として、1nm〜1.5nmである。
【0021】
トンネル層22の厚さが2nmを超えると、トンネリングが円滑に行われないため、太陽電池100の効率が低下することがあり、トンネル層22の厚さが1nm未満であると、所望の品質のトンネル層22を形成しにくいことがある。
【0022】
n+領域20は、半導体基板10と同じ半導体物質(より具体的には、単一半導体物質、一例として、シリコン)を含む半導体層で構成される。すると、n+領域20が半導体基板10と類似の特性を有することによって、異なる半導体物質を含む場合に発生し得る特性の差を最小化することができる。ただし、n+領域20が半導体基板10上で半導体基板10と別個に形成されるため、半導体基板10上で容易に形成され得るように、n+領域20が半導体基板10と異なる結晶構造を有することができる。
【0023】
例えば、n+領域20は、多結晶シリコンからなる半導体層にn型ドーパントをドープして形成することができる。すると、優れた電気伝導度を有することによって、キャリアの移動を円滑にすることができ、酸化物などで構成されたトンネル層22でキャリアのトンネリングが円滑に行われるように誘導することができる。
【0024】
本実施例において、n+領域20を半導体基板10と別個に形成することによって、半導体基板10の内部にドーピング領域を形成するときに発生し得る欠陥または開放電圧低下の問題を低減することができる。これによって、太陽電池100の開放電圧を向上させることができる。
【0025】
半導体基板10の前面側にはp+領域30が形成されている。一例として、本実施例では、p+領域30が、半導体基板10の一部にp型ドーパントがドープされて形成されたドーピング領域であって、半導体基板10とpn接合をなす。
【0026】
ここで、p型ドーパントとしては、ボロン(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)などの3族元素を挙げることができ、n型ドーパントとしては、リン(P)、ヒ素(As)、ビスマス(Bi)、アンチモン(Sb)などの5族元素を挙げることができる。
【0027】
図1の太陽電池では、半導体基板10と別個に形成されるn+領域20が半導体基板10の後面側に位置し、半導体基板10の一部を構成するp+領域30が半導体基板10の前面側に位置する。半導体基板10と異なる結晶構造を有するn+領域20が半導体基板10の前面側に位置すると、n+領域20での光吸収が増加してしまい、pn接合に到達する光量が低下することがあるため、n+領域20を半導体基板10の後面側に位置させたものである。
【0028】
第1及び第2導電型領域20,30上には、第1及び第2電極42,44に対応する開口部102,104を除いて、絶縁物質からなる膜が全体的に形成されてもよい。このような絶縁膜は、別途にドーパントを含まないアンドープ絶縁膜である。
【0029】
一例として、n+領域20上には、開口部102を除いた部分に第1絶縁膜が全体的に形成され、p+領域30上には、開口部104を除いた部分に第2絶縁膜が全体的に形成される。このような絶縁膜はパッシベーション膜であって、ドーピング領域20,30の表面またはバルク内に存在する欠陥を不動化させる。
【0030】
そして、更に他の絶縁膜として、半導体基板10の前面に、光の反射率を減少させる反射防止膜36がさらに形成されている。
【0031】
このような絶縁膜は、シリコン窒化膜、含水素シリコン窒化膜、シリコン酸化膜、シリコン酸化窒化膜、アルミニウム酸化膜、MgF、ZnS、TiO及びCeOからなる群から選択されたいずれか1つの単一膜または2つ以上の膜が組み合わされた多層膜構造を有する。
【0032】
第1電極42は、n+領域20とコンタクト(contact)して、n+領域20に電気的に接続され、第2電極44はp+領域30に電気的に接続される。この第1電極42及び第2電極44は、それぞれ絶縁膜に形成した開口部102,104を介してn+領域20及びp+領域30に接続される。
【0033】
図2は、本発明の一実施例に係る太陽電池の製造方法を説明するフローチャートである。
【0034】
本発明の一実施例に係る製造方法は、半導体基板上にシリコン酸化物層を形成するステップ(S11)を含む。
【0035】
シリコン酸化物層は、SiOのような化学式を有する物質であって、好ましい形態ではSiOである。
【0036】
シリコン酸化物層を半導体基板上に形成する方法は、湿式酸化(wet oxidation)、熱酸化(thermal oxidation)または化学酸化(chemical oxidation)方式をいずれも使用することができる。化学酸化は、半導体基板の表面を液状の酸化剤からなる化学溶液(chemical solution)に露出させてシリコン酸化物層を形成する方式であって、約60℃〜約90℃で行うことができる。酸化剤としては、オゾン(O)及び過酸化水素(H)などが用いられる。
【0037】
湿式酸化は、例えば、半導体基板を純水(DI water)の条件でリンスし、基板の表面に薄い酸化膜を形成する方式であってもよい。具体的には、約80℃〜約90℃の温度の純水に半導体基板を約10分〜約20分間露出させることによって、半導体基板にシリコン酸化物層を形成することができる。
【0038】
純水(DI water)の温度が前記範囲を維持することによって、短時間内に適切な水準の酸化膜の形成が可能である。純水(DI water)の温度が90℃を超える場合、純水の沸点に近いため、安定した工程の進行が難しいことがある。純水(DI water)の温度が80℃未満である場合、十分な酸化膜の形成が難しいことがある。
【0039】
また、半導体基板を純水(DI water)に露出させる時間が10分未満である場合、十分な水準の酸化膜の形成が難しいことがある。半導体基板を純水(DI water)に露出させる時間が20分を超える場合、工程時間が長くなるため、工程効率が低下することがあり、酸化膜の厚さが厚くなるため、トンネル効果が現れないことがある。
【0040】
すなわち、湿式酸化は、半導体基板を純水(DI water)に露出させる時間及び温度を同時に制御することによって、効果的に酸化膜を形成することができる。
【0041】
湿式酸化は、酸化剤などを含まない純水(DI water)を用いるという点で化学酸化と区別できる。
【0042】
純水(DI water)を用いて半導体基板にシリコン酸化膜を形成する場合、生産コストが安価で、化学酸化と比較して別途の洗浄工程(rinsing)を必要としないので、工程が簡素化されて生産性を向上させることができる。
【0043】
それだけでなく、純水(DI water)を用いて半導体基板にシリコン酸化膜を形成する場合、生産コストが安価であり、化学酸化に比べて欠陥(defect site)が相対的に少ないので、向上した品質のシリコン酸化膜を具現することができる。熱酸化は、550℃〜700℃のチャンバー(chamber)に半導体基板を位置させ、反応ガスを注入して、1分〜2分間、半導体基板の表面で化学反応を起こす形態からなる。反応ガスとしては、窒素(N)及び酸素(O)を用いることができ、追加的に水または塩酸の液状のバブルが追加されてもよい。
【0044】
シリコン酸化物層の厚さは1〜1.5(nm)であり、1.5(nm)以上ではトンネル効果を期待しにくい。
【0045】
また、本実施例は、前述したように、低温でシリコン酸化物層を形成することによって、容易にシリコン酸化物層の厚さを制御することができる。次いで、熱酸化によりシリコン酸化物層を形成する場合に、後続するアニーリング工程(S13)を同じチャンバーで行うことができるのでインサイチュ(in−situ)工程が可能となり、製造時間を短縮することができる。
【0046】
アニーリング工程(S13)は、シリコン酸化物層の構造をさらに緻密(dense)にし、パッシベーション機能を向上させることができる。具体的に、本発明の一実施例に係る製造方法は、シリコン酸化物層を570℃〜700℃の温度のチャンバーでアニーリング(annealing)してトンネル層に変換させるステップ(S13)を含み、アニーリング工程(S13)は、窒素(N)雰囲気下で行うことができる。ただし、アニーリング工程時の気体雰囲気は、通常の技術者が容易に適用できる範囲まで含むことができる。
【0047】
シリコン酸化物層は、チャンバーで約570℃〜約750℃の温度に露出されてアニーリングされ、具体的には、約570℃〜約700℃、より具体的には、約600℃〜700℃でアニーリングされてもよい。好ましい一形態において、熱応力(thermal stress)を最小化するために、シリコン酸化物層は、570℃付近で徐々に加熱され始め、700℃付近まで加熱された後、徐々に低くなる。
【0048】
図3は、アニーリング工程の温度変化を示す。
【0049】
図3で例示するように、半導体基板は、0〜t1の時間の間、開始温度から最大温度まで上昇しながら徐々に加熱され、t1〜t2の時間の間は最大温度に加熱され、t2〜t3の時間の間は、最大温度から開始温度に下降しながら徐々に加熱される。時間の順序に従って、0〜t1の時間の間を第1区間、t1〜t2時間の間を第2区間、t2〜t3時間の間を第3区間として定義することができる。
【0050】
第1区間において、好ましい一形態において、開始温度は、半導体基板がチャンバーで加熱され始める温度であって、約600℃以上の温度であり、最大温度は約700℃である。一方、明細書全体において数値を説明するにおいて「約」という用語を使用しており、これは、数値を測定する位置、時間または方法などに応じて少しずつ異なり得るため、これを含むために使用するものであり、説明を不明確にするためのものではない。
【0051】
開始温度を約600℃以上の温度に設定する理由は、最大温度との差を低減するためのもので、開始温度と最大温度との差が小さいほど、半導体基板は、熱処理工程中に熱変形に対するストレスを減らすことができる。好ましい一形態において、開始温度と最大温度との差は、100℃よりも小さいことが好ましい。
【0052】
もし、100℃よりも大きくなると、温度差が激しいため、熱変形に対するストレスにより半導体基板が熱処理工程中に損傷することがあり、工程のランニングタイムが長くなるため、製造コストが増加するという問題がある。
【0053】
そして、工程設備や半導体基板に加わる熱応力を考慮して、開始温度から最大温度まで、1分当たりの上昇温度は約10℃であることが好ましく、上昇時間は8分〜12分であることが好ましい。
【0054】
上昇時間が8分よりも短くなると、1分当たりの上昇温度が過度に高いため、半導体基板に加わる熱応力が大きくなり、12分よりも長くなると、ランニングタイムが長くなり、最大温度と開始温度との間の温度偏差が過度に大きくなるという問題がある。
【0055】
第2区間において、半導体基板は、t1〜t2の間、最大温度で加熱され、好ましい形態において、最大温度は約700℃であり、加熱時間は12分〜18分である。
【0056】
最大温度は、開始温度との温度偏差を考慮して、約700℃前後の値を有する。そして、加熱時間は、最大温度に応じて調節され、最大温度が700℃である場合に12分〜18分間加熱したとき、最も安定したアニーリングが行われる。最大温度が700℃よりも小さくなると、加熱時間(t1〜t2)は相対的に増加し、この場合、ランニングタイムが長くなり、生産コストを上昇させるため、産業上の利用可能性を考慮すると好ましくない。最大温度が700℃を超える場合、酸化物層の特性が低下することがある。
【0057】
第3区間において、半導体基板は、t2〜t3の間、最大温度から開始温度に下降しながら徐々に加熱される。
【0058】
この第3区間は、温度を徐々に下降させながら膜質を安定化させる区間である。この第3区間の間、1分当たりの下降温度は約5℃であって、第1区間の1分当たりの上昇温度よりも小さいことが好ましい。アニーリングを良好に行うためには、このように1分当たりの下降温度が1分当たりの上昇温度よりも小さくなければならない。
【0059】
このように、本発明の好ましい形態において、第3区間の安定化時間は第1区間よりも大きく、より好ましくは、第1区間の約2倍の時間の間行われて、16分〜24分である。
【0060】
そして、第1区間、第2区間、第3区間を合わせた総時間は1時間を超えないことが好ましく、1時間以上になると、半導体基板が高い温度に長時間露出するため、熱応力が激しくなり、また、ランニングタイムが長くなるため、製造コストを上昇させるという問題がある。
【0061】
一方、このステップ(S13)では、このようにシリコン酸化物層が露出した状態で熱処理を行うので、570℃〜700℃の低い温度でシリコン酸化物層をアニーリングしてトンネル層に変換させることが可能である。
【0062】
一方、570℃よりも低い温度でシリコン酸化物層22aを加熱する場合、シリコン酸化物層22aがトンネル層22に変換されず、また、変換されるとしても、そのトンネル効果がほとんどない。このような結果は、後述する実験結果から確認することができる。
【0063】
このような本発明の一実施例によれば、シリコン酸化物層の熱変形に対するストレスを減らし、温度の変化が大きくないため、工程時間を短縮することができる。また、シリコン酸化物層を形成するときに使用するチャンバーと同じチャンバーを用いてシリコン酸化物層を熱処理することが可能であるので、インサイチュ(in−situ)工程でプロセスを進行することができ、工程時間をさらに短縮することができる。
【0064】
図4は、本発明の他の実施例に係る太陽電池の製造方法を説明するフローチャートである。
【0065】
本発明の他の実施例に係る製造方法は、第1温度で半導体基板上にシリコン酸化物層を形成するステップ(S21)を含む。シリコン酸化物層は、SiOのような化学式を有する物質であって、好ましい一形態ではSiOである。
【0066】
シリコン酸化物層を半導体基板上に形成する方法は、湿式酸化(wet oxidation)、熱酸化(thermal oxidation)または化学酸化(chemical oxidation)を用いることができる。
【0067】
化学酸化は、半導体基板の表面を液状の酸化剤からなる化学溶液に露出させてシリコン酸化物層を形成する方式であって、酸化剤としては、オゾン(O)及び過酸化水素(H)などが用いられる。この化学酸化は、70℃〜90℃の温度の酸化剤に半導体基板を5〜15分間ディッピングさせて表面を酸化させる形態で行われる。
【0068】
湿式酸化は、例えば、半導体基板を純水(DI water)の条件でリンスし、基板の表面に薄い酸化膜を形成する方式であってもよい。具体的に、約80℃〜約90℃の温度の純水に半導体基板を約10分〜約20分間露出させることによって、半導体基板にシリコン酸化物層を形成することができる。
【0069】
純水(DI water)の温度が前記範囲を維持することによって、短時間内に適切な水準の酸化膜の形成が可能である。純水(DI water)の温度が90℃を超える場合、純水の沸点に近いため、安定した工程の進行が難しいことがある。純水(DI water)の温度が80℃未満である場合、十分な酸化膜の形成が難しいことがある。
【0070】
また、半導体基板を純水(DI water)に露出させる時間が10分未満である場合、十分な水準の酸化膜の形成が難しいことがある。半導体基板を純水(DI water)に露出させる時間が20分を超える場合、工程時間が長くなるため、工程効率が低下することがあり、酸化膜の厚さが厚くなるため、トンネル効果が現れないことがある。
【0071】
すなわち、湿式酸化は、半導体基板を純水(DI water)に露出させる時間及び温度を同時に制御することによって、効果的に酸化膜を形成することができる。
【0072】
湿式酸化は、酸化剤などを含まない純水(DI water)を用いるという点で化学酸化と区別できる。
【0073】
純水(DI water)を用いて半導体基板にシリコン酸化膜を形成する場合、生産コストが安価で、化学酸化と比較して別途の洗浄工程(rinsing)を必要としないので、工程が簡素化されて生産性を向上させることができる。
【0074】
それだけでなく、純水(DI water)を用いて半導体基板にシリコン酸化膜を形成する場合、生産コストが安価で、化学酸化に比べて欠陥(defect site)が相対的に少ないので、向上した品質のシリコン酸化膜を具現することができる。熱酸化は、半導体基板上にシリコン酸化物層を形成する方式であって、550℃〜700℃のチャンバー(chamber)に半導体基板を位置させ、反応ガスを注入して、1分〜2分間、半導体基板の表面で化学反応を起こす形態からなる。反応ガスとしては、窒素(N)及び酸素(O)を用いることができ、追加的に水または塩酸の液状のバブルが追加されてもよい。
【0075】
シリコン酸化物層の厚さは1〜1.5(nm)であり、1.5(nm)以上ではトンネル効果を期待しにくい。
【0076】
熱酸化でシリコン酸化物層を形成する場合に、後続するアニーリング工程(S23)を同じチャンバーで行うことができるのでインサイチュ(in−situ)が可能となり、製造時間を短縮することができる。
【0077】
次いで、本発明の他の実施例に係る製造方法は、多結晶シリコン層を形成する前に、シリコン酸化物層を570℃〜700℃の温度のチャンバーでアニーリング(annealing)してトンネル層に変換させるステップ(S23)を含む。
【0078】
シリコン酸化物層は、チャンバーで570℃〜700℃の温度に露出されてアニーリングされる。好ましい一形態において、熱応力(thermal stress)を最小化するために、シリコン酸化物層は、570℃付近で徐々に加熱され始め、700℃付近まで加熱された後、徐々に低くなり、図3のようなアニーリングが行われる。
【0079】
次いで、本発明の他の実施例に係る製造方法は、トンネル層上に多結晶シリコン層を形成するステップ(S25)を含む。
【0080】
好ましい一形態において、多結晶シリコン層は、LPCVD(low pressure chemical vapor deposition)法によって、300〜400nmの厚さに形成される。
【0081】
この工程で用いられる反応ガスは、多結晶シリコン層を構成するSiを含む気体、一例として、シランガスを含み、多結晶シリコン層は、結晶構造のみが多結晶構造をなしているため、反応ガスとしてSiのみを含む単純な気体(例、シランガス)のみで構成される。追加的に、酸化窒素(NO)気体及び/又は酸素(O)気体を共に注入して結晶粒のサイズ、結晶性などを調節して、結晶成長が良好に行われるようにすることができる。
【0082】
LPCVD法で半導体層を形成する場合に、反応温度を調節して、半導体層を非晶質シリコン(a−Si)または多結晶シリコン(polycrystalline silicon)で蒸着することができ、反応温度が約600℃以下では非晶質シリコンが形成され、約600℃以上では多結晶シリコンが形成される。
【0083】
好ましい一形態において、多結晶シリコン層は、トンネル層上に多結晶シリコン層として直接形成できるように、約600℃以上の温度で20分〜35分間、LPCVD法によって形成され、より好ましくは、アニーリング工程の温度範囲内の温度でLPCVD法を行うことによって、2つの工程間の温度変化がほとんどないようにする。すると、2つの工程間の温度変化がほとんどないため、半導体基板に加わる熱応力を減らすことができ、また、温度変化がほとんどないということは、工程間の温度を合わせて安定化させる時間がそれだけ減少することを意味するので、ランニングタイムもまた短縮することができる。
【0084】
一方、この多結晶シリコン層を、非晶質シリコンとしてまず形成した後、その後に熱処理を通じて多結晶シリコンとして形成することも可能であるが、非晶質シリコンを多結晶シリコンに変換するためには、900℃付近の温度で熱処理を行わなければならない。このように高い温度で熱処理が行われると、シリコン酸化物層が受ける熱応力が大きくならざるを得ず、温度変化も激しいため、熱応力はさらに大きくならざるを得ない。また、このように高い温度を用いる場合には、工程のランニングタイム(running time)が増加してしまい、製造コストを高め、効率は低くならざるを得ない。
【0085】
このように、この実施例では、多結晶シリコン層をトンネル層上に形成することによって、後続工程で多結晶シリコン層を熱処理する工程を省略し、その代わりに、シリコン酸化物層は、多結晶シリコン層を形成する前に低い温度でアニーリングを行う。
【0086】
以下、上述した本発明の一実施例に対する効果を確認するために実験した結果について説明する。
【0087】
本発明の効果を確認するために、次のように4つのサンプルを作製し、Sun−Voc測定を通じてimplied Vocを測定した。
【0088】
サンプル1
【0089】
サンプル1は、半導体基板にSiOからなるシリコン酸化物層を1〜1.5(nm)の厚さに形成した後、これをアニーリングさせるために、570℃〜700℃の温度に徐々に加熱した後、降温し、その上に、多結晶シリコンからなる半導体層及びSiNからなる絶縁膜をそれぞれ形成した。
【0090】
サンプル2
【0091】
サンプル2は、半導体基板にシリコン酸化物層を1〜1.5(nm)の厚さに形成し、アニーリング過程なしに、シリコン酸化物層上に多結晶シリコンからなる半導体層及びSiNからなる絶縁膜をそれぞれ形成した。
【0092】
サンプル3
【0093】
サンプル3は、半導体基板にSiOからなるシリコン酸化物層を1〜1.5(nm)の厚さに形成した後、これを570℃〜700℃の温度に徐々に加熱してアニーリングを行い、その上に、多結晶シリコンからなる半導体層を形成した後、これを、800℃〜1000℃の温度範囲でn型ドーパントを半導体層に拡散させてn+ドーピング領域を形成し、その上にSiNからなる絶縁膜を形成した。
【0094】
サンプル4
【0095】
サンプル4は、半導体基板にシリコン酸化物層を1〜1.5(nm)の厚さに形成し、アニーリング過程なしに、このシリコン酸化物層上に多結晶シリコンからなる半導体層を形成した後、これを、750℃〜900℃の温度範囲でn型ドーパントを半導体層に拡散させてn+ドーピング領域を形成し、その上にSiNからなる絶縁膜を形成した。
【0096】
このように作製したサンプル1〜4のimplied Vocを測定した結果は、下記表1の通りである。
【0097】
【表1】
【0098】
前記の実験結果を通じてわかるように、シリコン酸化物層を570℃〜700℃の温度で熱処理した場合(サンプル1)が、熱処理していない場合(サンプル2、4)よりも、implied Vocが 40〜50程度上昇することが確認できた。
【0099】
そして、サンプル4は、サンプル2と比較して、n+ドーピング領域を有する半導体層を形成したという点のみが異なり、シリコン酸化物層を熱処理する過程を省略したという点で共通しており、実験結果は、implied Vocの値が680で同一であった。
【0100】
この結果は、シリコン酸化物層を形成した直後に熱処理を行わなければならないが、シリコン酸化物層がトンネル層として形成されながらトンネル効果があることを傍証する。
【0101】
このような結果は、サンプル1とサンプル3を比較しても確認することができる。サンプル3は、サンプル1と比較して、シリコン酸化物層を形成した直後に熱処理を行う点で共通しており、半導体層を形成した後に熱処理をさらに行っている点だけが異なり、implied Vocの値は、サンプル1とほぼ同様の水準の値を示す。この結果は、シリコン酸化物層を形成した直後に熱処理を行わなければ効果的ではなく、半導体層を形成した後に行う熱処理は、セルの効率を高めるのに何らの影響も与えないことを傍証する。
【0102】
以下、図1に例示された太陽電池を上述した本発明の実施例に係る製造方法によって製造する過程を、図5A乃至図5Hと共に説明する。図5A乃至図5Hは、製造過程を模式的に説明する。
【0103】
図5Aは、図2のステップS11及びS13、そして、図4のステップS21及びS23に対応する過程であって、この過程では、まず、半導体基板10の前面及び後面にそれぞれシリコン酸化物層22aを形成する。
【0104】
半導体基板10は、シリコンからなるウエハであるか、またはバルク型のシリコン基板が用いられてもよい。そして、シリコン酸化物層は、SiOのような化学式を有する物質であって、好ましい一形態としてはSiOである。
【0105】
シリコン酸化物層22aは、湿式酸化、熱酸化または化学酸化によって形成される。このシリコン酸化物層22aの厚さは1〜1.5(nm)であり、1.5(nm)以上ではトンネル効果を期待しにくい。
【0106】
熱酸化によりシリコン酸化物層を形成する場合に、後続するアニーリング工程を同じチャンバーで行うことができるのでインサイチュ(in−situ)が可能となり、製造時間を短縮することができる。
【0107】
この過程は、シリコン酸化物層22aを、上述した方法のように、570℃〜700℃の温度に加熱してアニーリングさせる過程を含む。これによって、シリコン酸化物層22aはトンネル層22に変換される。好ましい一形態において、熱応力(thermal stress)を最小化するために、シリコン酸化物層22aは、600℃付近で徐々に加熱され始め、700℃付近まで加熱された後、徐々に再び600℃付近まで低くなる。
【0108】
このステップでは、このようにシリコン酸化物層22aが露出した状態でアニーリングを行うので、570℃〜700℃の温度でシリコン酸化物層22aをトンネル層に変換させることが可能である。もし、シリコン酸化物層22a上に他の層をさらに形成した後に熱処理を行う場合には、熱処理温度がさらに高くなければならないため、熱応力が加重されることがあり、高い温度を使用するため、作業時間が長くならざるを得ない。
【0109】
従来の技術では、900℃付近までシリコン酸化物層22aを加熱するため、シリコン酸化物層が受ける熱応力が大きくならざるを得ず、温度変化も激しいため、熱応力はさらに大きくならざるを得ない。このように高い温度を用いる場合には、工程のランニングタイム(running time)が増加してしまい、製造コストを高め、効率は低くならざるを得ない。
【0110】
また、570℃よりも低い温度でシリコン酸化物層22aを加熱する場合、シリコン酸化物層22aがトンネル層22に変換されず、また、変換されるとしても、そのトンネル効果がほとんどない。
【0111】
次いで、図5Bに例示するように、半導体基板10の前面及び後面のそれぞれに形成されたトンネル層22上に真性半導体層20aを形成する。この過程は、図4のステップS25に対応する。
【0112】
真性半導体層20aは、ドーパントが含まれていない純水な半導体層であって、好ましい一形態において、この真性半導体層20aは多結晶シリコン(polysilicon)で形成される。
【0113】
この真性半導体層20aは、CVD(chemical vapor doposition)法により形成することができ、より具体的には、LPCVD(low pressure chemical vapor deposition)法により形成することができる。
【0114】
この工程で用いられる反応ガスは、真性半導体層20aを構成するSiを含む気体、一例として、シランガスを含む。本実施例では、半導体層20aが真性の多結晶シリコンで構成されるため、気体雰囲気は、Siだけを含む単純な気体のみで構成される。
【0115】
そして、このステップでは、追加的に、酸化窒素(NO)気体及び/又は酸素(O)気体を共に注入して結晶粒のサイズ、結晶性などを調節して、結晶成長が良好に行われるようにすることができる。
【0116】
このステップでの蒸着温度は600℃〜700℃の間であるので、上述したアニーリングで用いられた温度範囲である570℃〜700℃に属する。このように、2つの工程間の温度変化がほとんどないので、半導体基板に加わる熱応力もまた最小に減らすことができ、また、温度変化がほとんどないということは、工程間の温度を合わせて安定化させる時間がそれだけ減少することを意味するので、ランニングタイムもまた短縮することができる。
【0117】
次いで、図5Cを参照すると、このステップは、半導体層20aをドーパントでドープして、ドーピング領域であるn+領域20として形成する過程を含む。
【0118】
半導体層20aをn+領域20として形成する一つの方法は、加熱された拡散炉でドーパントを半導体層20aに拡散させる熱拡散法を用いることができる。
【0119】
図5Cは、熱拡散法によってn+領域20が形成されることを説明する。半導体基板10がn型であると、POClを含む気体雰囲気で熱拡散が行われる。
【0120】
ドーピングソースとしてPOClを用いる場合には、チャンバー内へ運搬された高温のPOClとOが互いに反応して、真性半導体層20aの表面にP層を形成し、750℃〜900℃の温度で熱処理を行うと、P層のリン(P)がSiからなる真性半導体層20a中に拡散して、n+領域20となる。
【0121】
他の方法において、n+領域20は、リンシリケートガラス(phosphorus silicate glass、PSG)を用いて形成することもまた可能である。
【0122】
PSGの蒸着は、APCVD(Atmospheric Pressure CVD)法が用いられる。半導体基板10の前面及び後面にそれぞれ形成されている半導体層20aのいずれか一面に対してのみPSGを形成し、これを400℃〜600℃の温度に加熱して、半導体層20aをn+領域20として形成することができる。
【0123】
更に他の方法において、n+領域20は、半導体層20aを成長させるとき、n型ドーパントが含まれたドープされた(doped)半導体層を形成して形成することもまた可能である。
【0124】
次いで、図5Dに示したように、半導体基板10の前面に形成されている半導体層20a、及びその下に位置するトンネル層22を除去する。
【0125】
この過程で、半導体基板10の前面は半導体層及びトンネル層が除去され、露出された半導体基板の表面はテクスチャリングされる。
【0126】
この除去は、湿式エッチング及び乾式エッチングをいずれも用いることができるが、好ましい一形態では湿式エッチングが用いられる。エッチング溶液としては、水酸化カリウム(KOH)が用いられ、エッチングは、水酸化カリウム溶液に半導体基板10の前面のみを選択的にディッピング(dipping)させて行うことができる。
【0127】
次いで、図5Eに示したように、半導体基板10の前面側にp+領域30を形成する。p+領域30は、p型ドーパントを半導体基板10にドープし、半導体基板10の一部をドーピング領域で構成する。
【0128】
p+領域30は、公知の様々な方法により形成される。例えば、p+領域30が熱拡散法によって形成されてもよい。熱拡散法が、トンネル層22の特性低下を最小化すると共に、ドーピングが可能であるためである。一方、イオン注入法などは、イオン注入後に高温で行われる活性化熱処理によってトンネル層22の特性が低下することがある。
【0129】
一例として、半導体基板10の後面に形成されたn+領域20上に、シリコン窒化物(SiNx)からなる保護膜204を形成し、p型ドーパントを含むガス雰囲気下で熱処理することによって、半導体基板10の前面にp+領域30を形成することができる。
【0130】
p+領域30がp型を有する場合には、BBrを含む気体雰囲気下で熱処理を行うことができる。または、p+領域30がn型を有する場合には、POClを含む気体雰囲気下で熱処理を行うことができる。p+領域30が形成された後は、次に、図5Fに示したように、この保護膜204を除去する。保護膜204は、第2導電型ドーパントのドーピングを遮断できる様々な膜を用いることができ、物質による除去方法によって除去することができる。
【0131】
好ましい一形態において、p+領域30が熱拡散法によって形成されると、工程温度は800℃〜1,000℃であり、時間は約60分間行われる。
【0132】
このように、p+領域30を熱処理温度よりも高い温度で形成する理由は、前の過程で形成されたn+領域20のドーパントを熱エネルギーでさらに活性化させることによって、効率の良いn+領域20とするためである。
【0133】
他の例として、半導体基板10の前面上に対してのみ選択的にp型ドーパントを含むドーピング層を形成し、熱処理によって、ドーピング層内に含まれたp型ドーパントを半導体基板10の内部に拡散させてp+領域30を形成することができる。一例として、p+領域30は、ボロンシリケートガラス(boron silicate glass、BSG)を用いることができ、このBSGは、LPCVD法で形成することが可能であり、工程温度は約400℃〜600℃である。
【0134】
次に、図5Fに示したように、半導体基板10の前面側でp+領域30上に第2絶縁膜34及び反射防止膜36を形成する。
【0135】
第2絶縁膜34または反射防止膜36は、真空蒸着法、化学気相蒸着法、スピンコーティング、スクリーン印刷またはスプレーコーティングなどのような様々な方法により形成することができる。このとき、第2絶縁膜34または反射防止膜36の形成時にプラズマ誘導化学気相蒸着(PECVD)のような片面蒸着を使用すると、第2絶縁膜34または反射防止膜36を半導体基板10の前面にのみ容易に形成することができる。したがって、第2絶縁膜34または反射防止膜36のための別途のパターニング工程を備えなくてもよい。
【0136】
次いで、図5Gに示したように、半導体基板10の後面側に第1絶縁膜24を形成する。この第1絶縁膜は、半導体基板10の後面に形成されているn+領域20上に形成される。
【0137】
この第1絶縁膜24は、真空蒸着法、化学気相蒸着法、スピンコーティング、スクリーン印刷またはスプレーコーティングなどのような様々な方法によって形成することができる。
【0138】
本実施例では、半導体基板10の前面側を覆う第2絶縁膜34を先に形成した後、半導体基板10の後面側を覆う第1絶縁膜24を形成することを例示した。
【0139】
これによれば、第1絶縁膜を形成する工程中にn+領域20の特性が低下または損傷することを防止することができる。特に、n+領域20がエミッタ領域であるときは、n+領域20の特性が非常に重要であるためである。しかし、本発明がこれに限定されず、半導体基板10の後面側を覆う第1絶縁膜を先に形成した後、半導体基板10の前面側を覆う第2絶縁膜を形成してもよい。
【0140】
次いで、図5Hに示したように、n+領域20とp+領域30にそれぞれ接続される第1及び第2電極42,44を形成する。
【0141】
一例として、パターニング工程によって第1及び第2絶縁膜に第1及び第2開口部102,104を形成し、その後、第1及び第2開口部102,104の内部を充填しながら第1及び第2電極42,44を形成する。このとき、第1及び第2開口部102,104は、レーザーを用いたレーザーアブレーション、またはエッチング溶液又はエッチングペーストなどを用いた様々な方法により形成することができる。そして、第1及び第2電極42,44は、めっき法、蒸着法などの様々な方法により形成することができる。
【0142】
一方、以上の実施例では、本発明の一実施例に係る製造方法を通じて、電極が半導体基板の前面及び後面にそれぞれ形成されているコンベンショナル構造の太陽電池を製造する実施例を説明したが、本発明がこの実施例に限定されるものではなく、トンネル層を備える太陽電池構造であれば、いずれにも同一に適用することができる。
【0143】
一例として、電極がいずれも太陽電池の後面に存在する後面接触型太陽電池において、太陽電池の後面に、上述した方法によって形成されたトンネル層を形成することができる。
【0144】
この場合、半導体基板の後面を熱酸化または化学溶液に露出させ、1〜1.5(nm)の厚さのシリコン酸化物層を形成し、これを、570℃〜700℃の温度に加熱してアニーリング層を形成する。
【0145】
後面接触型太陽電池は、半導体基板、半導体基板の後面に、上述した製造方法により形成されたトンネル層、その上に、p+領域及びn+領域を有する半導体層、その半導体層上を覆うように形成された絶縁膜、及び前記絶縁膜に形成されたコンタクトホールを介して前記p+領域及びn+領域にそれぞれ接触する電極を含んで構成される。
【0146】
上述したような特徴、構造、効果などは、本発明の少なくとも一つの実施例に含まれ、必ずしも一つの実施例にのみ限定されるものではない。さらに、各実施例で例示した特徴、構造、効果などは、実施例の属する分野における通常の知識を有する者によって、他の実施例に対しても組み合わせ又は変形して実施可能である。したがって、このような組み合わせ及び変形に係わる内容は、本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図5H