特許第6392451号(P6392451)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392451
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】圧接型半導体素子用スタック
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/11 20060101AFI20180910BHJP
【FI】
   H01L25/14 A
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-515287(P2017-515287)
(86)(22)【出願日】2015年4月27日
(86)【国際出願番号】JP2015002254
(87)【国際公開番号】WO2016174695
(87)【国際公開日】20161103
【審査請求日】2017年7月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正則
(72)【発明者】
【氏名】表 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 亮
(72)【発明者】
【氏名】椋木 誠
(72)【発明者】
【氏名】吉沢 大輔
(72)【発明者】
【氏名】市倉 優太
(72)【発明者】
【氏名】飯尾 尚隆
【審査官】 秋山 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−128464(JP,A)
【文献】 特開平08−330484(JP,A)
【文献】 特開平07−273279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のチップが同一平面上に配置されたマルチチップ半導体素子で構成された圧接型半導体素子及びこの圧接型半導体素子の両面に配置したヒートシンクを、交互に積層配置し、当該積層配置した圧接型半導体素子及びヒートシンクの間の圧接力が所定の圧接力になるように加圧する加圧手段を備えた圧接型半導体素子用スタックであって、
前記加圧手段は、
前記積層配置された前記圧接型半導体素子及びヒートシンクの上面及び下面に配置された加圧体と、
前記加圧体によって加えられた圧力を外周面に分配する絶縁座用金具と、
前記絶縁座用金具の加圧面と当該絶縁座用金具の加圧面の直近に配置されたヒートシンクとの間に配置され、当該絶縁座用金具の加圧面に加えられた圧力により当該ヒートシンクを加圧する絶縁座と、を備え、
前記圧接型半導体素子は、
圧接面である一方のコレクタポスト面と、相対抗して配置された他方のエミッタポスト面と、当該コレクタポスト面又はエミッタポスト面の何れか一方のポスト面の周端部の一部に切欠き部を有し、
前記圧接型半導体素子を構成するチップが、前記コレクタポスト面とエミッタポスト面との間に前記圧接面と平行に配置され、かつ、前記コレクタポスト面から前記チップの表面までの距離と、前記エミッタポスト面から前記チップの裏面までの距離とが異なるとき、
前記上面加圧体によって加圧された前記絶縁座用金具の加圧面からその加圧面の直近に配置された圧接型半導体素子のチップの表面までの距離と、前記下面加圧体によって加圧された前記絶縁座用金具の加圧面からその加圧面の直近に配置された圧接型半導体素子のチップの裏面までの距離を等しくする手段を備えたことを特徴とする圧接型半導体素子用スタック。
【請求項2】
前記絶縁座用金具の加圧面からその加圧面の直近に配置された圧接型半導体素子のチップ表面若しくは裏面までの距離を等しくする手段は、
前記上面加圧体によって加圧された前記絶縁座用金具の加圧面からその加圧面の直近に配置された圧接型半導体素子のチップの表面までの距離と、前記下面加圧体によって加圧された前記絶縁座用金具の加圧面からその加圧面の直近に配置された圧接型半導体素子のチップの裏面までの距離との差を、距離が短い側の前記絶縁座と前記ヒートシンクとの間に前記差に等しい厚さを有するスペーサを配置することにより吸収することを特徴とする請求項1記載の圧接型半導体素子用スタック。
【請求項3】
前記絶縁座用金具の加圧面からその加圧面の直近に配置された圧接型半導体素子のチップ表面若しくは裏面までの距離を等しくする手段は、
前記上面加圧体によって加圧された前記絶縁座用金具の加圧面からその加圧面の直近に配置された圧接型半導体素子のチップの表面までの距離と、前記下面加圧体によって加圧された前記絶縁座用金具の加圧面からその加圧面の直近に配置された圧接型半導体素子のチップの裏面までの距離との差を、距離が短い側の前記ヒートシンクの厚さを可変することにより吸収することを特徴とする請求項1記載の圧接型半導体素子用スタック。
【請求項4】
前記絶縁座用金具の加圧面からその加圧面の直近に配置された圧接型半導体素子のチップ表面若しくは裏面までの距離を等しくする手段は、
前記上面加圧体によって加圧された前記絶縁座用金具の加圧面からその加圧面の直近に配置された圧接型半導体素子のチップの表面までの距離と、前記下面加圧体によって加圧された前記絶縁座用金具の加圧面からその加圧面の直近に配置された圧接型半導体素子のチップの裏面までの距離との差を、絶縁座の厚さを可変することにより吸収することを特徴とする請求項1記載の圧接型半導体素子用スタック。
【請求項5】
前記ヒートシンクは、
水冷フィンで構成されたことを特徴とする請求項1又は請求項3記載の圧接型半導体素子用スタック。
【請求項6】
前記加圧体は、
球面加圧体又は円錐加圧体で構成された請求項1乃至請求項4記載の圧接型半導体素子用スタック。
【請求項7】
前記絶縁座用金具は、
前記圧接面側にザグリ加工した切欠き部と、
前記ザグリ加工した切欠き部の反対面側に前記加圧体が球面加圧体の場合には当接する部分に被球面加圧面を備え、前記加圧体が円錐加圧体の場合には当接する部分に被円錐加圧面を備えた請求項1乃至請求項4記載の圧接型半導体素子用スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置内スタックユニットを構成する圧接型半導体素子用スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
マルチチップ半導体素子で構成された圧接型半導体素子(例えば、平型半導体素子)を大容量の電力変換装置に適用する場合は、圧接型半導体素子を冷却するために、圧接型半導体素子とヒートシンクとを交互に積層し、これら交互に積層した圧接型半導体素子及びヒートシンクを圧接して冷却する方法が用いられている。この加圧方法として、平面加圧体である台座で加圧する場合には、加圧面積が大きいため、加圧面が平坦でない場合、又は密着性が悪い場合に、一部に圧力が偏る偏荷重になる場合がある。これを防止するため、球面形状の加圧面で、平型半導体素子の中心部を加圧し、偏荷重を防止している(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかしながら、特許文献1の方法は、平型半導体素子の中心部を加圧するため、中心部より外周面に向かって加圧した圧力が低下し、平型半導体素子を均一に加圧するのが難しく、平型半半導体素子の外周面部分で熱破壊が発生しやすいという課題があった。これを防止する方法として、図7に示す圧接型半導体素子及びヒートシンクを加圧する平型半導体素子用スタックが検討された。
【0004】
図7は、圧接型半導体素子を構成する外周面の素子の熱破壊を防止する効果を有する従来技術に係る圧接型半導体素子用スタック200の断面図である。図示した圧接型半導体素子用スタック200は、圧接型半導体素子10及び水冷フィン9を交互に複数個積層し、両端に配置した絶縁座用金具7を外側から内側に加圧する構成を備える。上記絶縁座用金具7(絶縁座用金具7a、7bの総称)は、両面にザグリ加工が施されている。このザグリ加工により、圧接型半導体素子の外周面にも圧力が加わる。この結果、上述した圧接型半導体素子(平型半導体素子)の外周面の素子の熱破壊を防止することができる。
【0005】
図8は、圧接型半導体素子10の一例で、マルチチップ半導体素子10の構成を示す。ここでは、記載する内容により、圧接型半導体素子10又はマルチチップ半導体素子10と記載する場合があるが、何れも同一の物として説明する。図8(1)は圧接型半導体素子10の平面図で、図8(2)は、図8(1)に示す圧接型半導体素子10のA−A断面図である。図示した圧接型半導体素子10には切欠き部10bが設けられている。また、圧接型半導体素子10は、複数のチップ10aが同一平面上に配置されて構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−168778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した圧接型半導体素子10のチップ10aは、圧接型半導体素子10の厚み方向の中央部に配置されているのではなく、圧接型半導体素子10表面のコレクタポスト面10cからチップ10a表面までは距離Lc離間した位置であって、圧接型半導体素子10裏面のエミッタポスト面10dからチップ裏面までは距離Le離間した位置に配置されている(図8(2)参照。)。すなわち、圧接型半導体素子10のコレクタポスト面10cからチップ10a表面までの距離Lcとエミッタポスト面10dからチップ10a裏面までの距離Leとが異なっている(Lc<Le)。
【0008】
また、図8(1)に示す切欠き部10bが存在するため、切欠き部分10bに圧力が加わらないことによる圧力抜けが生じ、上述した図7に示すザグリ加工を施した場合であっても、圧接型半導体素子10を均一に加圧できないという課題があった。
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するためになされたもので、マルチチップで構成された圧接型半導体素子を複数個積層し、両端に配置した絶縁座用金具を外側から内側に加圧する加圧手段を備え、当該上下に配置された絶縁座用金具の加圧面からチップ表面又は裏面までの距離を等しくすることにより、圧接型半導体素子の切欠き部の有無に関わらず当該圧接型半導体素子を均一に加圧でき、当該圧接型半導体素子の熱破壊を防止することができる圧接型半導体素子用スタックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1記載の圧接型半導体素子用スタックは、複数のチップが同一平面上に配置されたマルチチップ半導体素子で構成された圧接型半導体素子及びこの圧接型半導体素子の両面に配置したヒートシンクを、交互に積層配置し、当該積層配置した圧接型半導体素子及びヒートシンクの間の圧接力が所定の圧接力になるように加圧する加圧手段を備えた圧接型半導体素子用スタックであって、前記加圧手段は、前記積層配置された前記圧接型半導体素子及びヒートシンクの上面及び下面に配置された加圧体と、前記加圧体によって加えられた圧力を外周面に分配する絶縁座用金具と、前記絶縁座用金具の加圧面と当該絶縁座用金具の加圧面の直近に配置されたヒートシンクとの間に配置され、当該絶縁座用金具の加圧面に加えられた圧力により当該ヒートシンクを加圧する絶縁座と、を備え、前記圧接型半導体素子は、圧接面である一方のコレクタポスト面と、相対抗して配置された他方のエミッタポスト面と、当該コレクタポスト面又はエミッタポスト面の何れか一方のポスト面の周端部の一部に切欠き部を有し、前記圧接型半導体素子を構成するチップが、前記コレクタポスト面とエミッタポスト面との間に前記圧接面と平行に配置され、かつ、前記コレクタポスト面から前記チップの表面までの距離と、前記エミッタポスト面から前記チップの裏面までの距離とが異なるとき、前記上面加圧体によって加圧された前記絶縁座用金具の加圧面からその加圧面の直近に配置された圧接型半導体素子のチップの表面までの距離と、前記下面加圧体によって加圧された前記絶縁座用金具の加圧面からその加圧面の直近に配置された圧接型半導体素子のチップの裏面までの距離を等しくする手段を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
この発明によれば、本発明に係る圧接型半導体素子用スタックは、マルチチップで構成された圧接型半導体素子を複数個積層し、両端に配置した絶縁座用金具を外側から内側に加圧する加圧手段を備え、当該上下に配置された絶縁座用金具の加圧面からチップ表面又は裏面までの距離を等しくすることにより、圧接型半導体素子の切欠き部の有無に関わらず当該圧接型半導体素子を均一に加圧でき、当該圧接型半導体素子の熱破壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1に係る圧接型半導体素子用スタックの断面図。
図2図1に係る圧接型半導体素子用スタックにスペーサ20が無い場合(スペーサ無)及びスペーサ20有りの場合(スペーサ有)の圧接型半導体素子用スタックの断面図。
図3図2に示す圧接型半導体素子用スタックにスペーサ20が無い場合(スペーサ無)の圧接型半導体素子用スタックのチップ10aの配置位置及びスペーサ有りの場合(スペーサ有)の圧接型半導体素子用スタックのチップ10aの配置位置を示す要部断面図。
図4図4は、図3に示す圧接型半導体素子用スタックにスペーサ20が無い場合(図4(1)スペーサ無)及びスペーサ有りの場合(図4(2)スペーサ有)の絶縁座用金具の加圧面からチップの表面(裏面)までの距離の違いを示す圧接型半導体用素子の要部断面図。
図5】実施例2に係る圧接型半導体素子用スタックにおいて、スペーサの替りに水冷フィンの厚さを厚くした場合の要部断面図。
図6】実施例3に係る圧接型半導体素子用スタックにおいて、スペーサの替りに絶縁座の厚さを厚くした場合の要部構成図。
図7】圧接型半導体素子を構成する外周面の素子の熱破壊を防止する効果を有する従来技術に係る圧接型半導体素子用スタックの断面図。
図8】圧接型半導体素子の一例で、マルチチップ半導体素子の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、実施例1に係る圧接型半導体素子用スタック100の断面図である。圧接型半導体素子用スタック100は、マルチチップで構成された圧接型半導体素子10、当該圧接型半導体素子10を冷却するための水冷フィン9及びこれらを加圧する上部加圧部(加圧手段)30a及び下部加圧部(加圧手段)30bなどで構成される。
【0015】
実施例では、水冷フィン9及び圧接型半導体素子10を一組として複数組直列に積層されているため、圧接型半導体素子10は、水冷フィン9と水冷フィン9の間に配置され、圧接型半導体素子10の上面及び下面から冷却される。図は、このように構成された場合の一例である。
【0016】
加圧部30(加圧部30a、30bの総称)は、圧接板2a・2b、ステー11a・11b、台座3a、付勢手段としての弾性体4a・4b、台座5a・5b、円錐加圧体6a・6b、絶縁座用金具7a・7b及び絶縁座8a・8bなどで構成され、圧接板2a及び2bの間に積層配置された圧接型半導体素子10及び水冷フィン9の間の圧接力が所定の圧接力になるように加圧する。
【0017】
台座5a・5b、円錐加圧体6a・6b、絶縁座用金具7a・7b及び絶縁座8a・8b、及び圧接型半導体素子10、水冷フィン9、・・は、弾性体4a・4bの反発力により圧接型半導体素子10及び水冷フィン9の間が一定の圧接力で加圧される。また、ナット12a・12a、及び12b・12bを調整することで弾性体4a・4bの反発力により、上記圧接力を一定の圧力の範囲で微調整が可能である。
【0018】
本実施例では、最下部の水冷フィン9と絶縁座8bの間にスペーサ20が配置される。このスペーサ20は、ザグリ加工が施された絶縁座用金具7a下部(絶縁座8aに対する加圧面)から圧接型半導体素子10のチップの表面までの距離と、絶縁座用金具7b上部(絶縁座8bに対する加圧面)から圧接型半導体素子10のチップの裏面までの距離が等しくなるように配置される。
【0019】
加圧面が平面の場合には、加工精度により圧接型半導体素子と加圧面の密着度が悪い場合に、加圧面に偏荷重が発生し、圧接型半導体素子を均一に加圧できない場合が発生する。円錐加圧体6a・6bは、上記偏荷重の発生を防止することができる。
【0020】
絶縁座用金具7a・7bの両面のザグリ加工は、円錐加圧体によって加えられた圧力を外周面に分配する。その結果、圧接型半導体素子を構成する外周面の素子の圧力低下を防止することができるため、圧接型半導体素子の外周面の素子の熱破壊を防止することができる。
【0021】
絶縁座8aは、絶縁座用金具7aによって加えられた圧力により当該絶縁座8aに当接する水冷フィン9を加圧する。同様に絶縁座8bは、絶縁座用金具7bよって加えられた圧力により当該絶縁座8bに当接する水冷フィン9を加圧する。
【0022】
図2は、図1に係る圧接型半導体素子用スタックにスペーサ20が無い場合(図2(1)スペーサ無参照)の圧接型半導体素子用スタック200及びスペーサ20が有る場合(図2(2)スペーサ有参照)の圧接型半導体素子用スタック100の断面図である。
図3は、図2に示す圧接型半導体素子用スタックにスペーサ20が無い場合(図3(1)スペーサ無参照)の圧接型半導体素子用スタック200のチップ10aの配置位置及びスペーサ有りの場合(図3(2)スペーサ有参照)の圧接型半導体素子用スタック100のチップ10aの配置位置を示す要部断面図である。
【0023】
図4は、図3に示す圧接型半導体素子用スタックにスペーサ20が無い場合(図4(1)スペーサ無参照)及びスペーサが有る場合(図4(2)スペーサ有参照)の、絶縁座用金具7aの加圧面から直近に配置された圧接型半導体素子10のチップ10aの表面までの距離L1、L1と絶縁座用金具7bの加圧面から直近に配置された圧接型半導体素子10のチップ10aの裏面までの距離L2、L3との違いを示す圧接型半導体用素子の要部断面図である。
【0024】
図4(1)は、スペーサ20が無い場合の絶縁座用金具7aの加圧面からその直近に配置された圧接型半導体素子10のチップ10aの表面までの距離L1に対し、絶縁座用金具7bの加圧面からその直近に配置された圧接型半導体素子10のチップ10aの裏面までの距離L2は、L1>L2となる。
【0025】
すなわち、絶縁座用金具7aの加圧面からその直近に配置された圧接型半導体素子10のチップ10a表面までの距離L1と絶縁座用金具7bの加圧面からその直近に配置された圧接型半導体素子10のチップ10a裏面までの距離L2は、圧接型半導体素子10のチップ10aの配置位置が、構造上厚み方向の中央部に位置していないためにL1>L2となる。
【0026】
また、図8(1)に示すように圧接型半導体素子にはエミッタ部に切欠き部10bが設けられており、図7に示す従来の圧接型半導体素子用スタック200による当該圧接型半導体素子10の圧力分布を測定した結果、当該圧接型半導体素子10の切欠き部10b周辺のチップ(例えば、チップNo18及びチップNo21)の圧力が低下する(圧力抜けが発生している)ことがわかった。
【0027】
上記圧力抜けは、図8(2)に示す切欠き部10bの位置が、絶縁座用金具の加圧面に接近している場合に圧力抜けが顕著に表れることがわかった。
【0028】
上記圧力抜けは、絶縁座用金具7bの加圧面と切欠き部10bの距離を長くすることにより防止することができる。
【0029】
本実施例では、図4(2)に示すように、絶縁座8bと圧接型半導体素子10の間にスペーサ20を配置し、絶縁座用金具7bの加圧面からチップ10aの下面までの距離を、図4(1)に示すスペーサ20が無い場合の距離L2に比べてスペーサの厚さDs分長い距離L3にすることにより、上述した圧力抜けを防止することができる(下式(1))。
L3=L2+Ds
=L1・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
L1:絶縁座用金具7aの加圧面からその加圧面の直近に配置されたチップ10a上面までの距離
L2:スペーサ20が無い場合の絶縁座用金具7bの加圧面からその加圧面の直近に配置されたチップ10a下面までの距離
L3:スペーサ20が有る場合の絶縁座用金具7bの加圧面からその加圧面の直近に配置されたチップ10a下面までの距離
Ds:スペーサ20の厚さ
実施例1では、上述したように、絶縁座用金具7aから直近に配置された圧接型半導体素子10のチップ10aの上面まで距離L1と、絶縁座用金具7bの加圧面の直近に配置された圧接型半導体素子10のチップ10aの下面までの距離L2を、同じ距離にするために、上記距離が短い側の絶縁座8bと水冷フィン9との間に距離L1と距離L2の差に等しい厚さ(=Ds)を有するスペーサ20を配置することにより、距離の差(=Ds)を吸収することができる。その結果、圧接型半導体素子10の切欠き部10bの圧力抜けによる熱破壊を防止することができる。
【0030】
なお、上述した実施例1では、加圧体として円錐加圧体を用いた場合に付いて説明したが、球面加圧体を用いた場合も同様の効果が得られる。
【実施例2】
【0031】
図5は、実施例2に係る圧接型半導体素子用スタックにおいて、スペーサの替りに水冷フィンの厚さを厚くした場合の要部断面図である。実施例2は、実施例1に係る図4(2)に示すスペーサ20を配置する替りに、絶縁座用金具7bの加圧面の直近に配置された水冷フィン9の厚さを厚くした水冷フィン9Bを用いた場合の一例である。なお、その他の構成は、実施例1に示す内容と同様であり、その説明を省略する。
【0032】
その場合の絶縁座用金具7aの加圧面からその加圧面の直近に配置されたチップ10aの上面までの距離L1と、絶縁座用金具7bの加圧面からその加圧面の直近に配置されたチップ10aの下面までの距離L4の関係は、以下の通りである。
【0033】
L4=L1・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
L1:絶縁座用金具7aの加圧面からその加圧面の直近に配置されたチップ10aの上面までの距離
L4:絶縁座用金具7bの加圧面からその加圧面の直近に配置されたチップ10aの下面までの距離
実施例2では、上述したように、絶縁座用金具7aの加圧面から直近に配置された圧接型半導体素子10のチップ10aの上面まで距離L1と、絶縁座用金具7bの加圧面の直近に配置された圧接型半導体素子10のチップ10aの下面までの距離L2を、同じ距離にするために、上記距離が短い側の絶縁座8bに当接する水冷フィン9の厚さを厚くした水冷フィン9Bを用いることにより、距離の差を吸収することができる。その結果、圧接型半導体素子10の切欠き部10bの圧力抜けによる熱破壊を防止することができる。
【実施例3】
【0034】
図6は、実施例3に係る圧接型半導体素子用スタックの要部断面図である。実施例3は、実施例1に係る図4(2)に示すスペーサ20を配置する替りに、絶縁座用金具7bの加圧面と当接する絶縁座8bの厚さを厚くした絶縁座8Bを使用した場合の一例である。なお、その他の構成は、実施例1に示す内容と同様であり、その説明を省略する。
【0035】
その場合の絶縁座用金具7aの加圧面からその加圧面の直近に配置されたチップ10aの上面までの距離L1と、絶縁座用金具7bの加圧面からその加圧面の直近に配置されたチップ10aの下面までの距離L5の関係は、以下の通りである。
【0036】
L5=L1・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
L1:絶縁座用金具7aの加圧面からその加圧面の直近に配置されたチップ10aの上面までの距離
L5:絶縁座用金具7bの加圧面からその加圧面の直近に配置されたチップ10aの下面までの距離
実施例3では、上述したように、絶縁座用金具7aの加圧面から直近に配置された圧接型半導体素子10のチップ10aの上面まで距離L1と、絶縁座用金具7bの加圧面から直近に配置された圧接型半導体素子10のチップ10aの下面までの距離L2を、同じ距離にするために、上記距離が短い側の絶縁座8Aの厚さを厚くすることにより、距離の差吸収することができる。その結果、圧接型半導体素子10の切欠き部10bの圧力抜けによる熱破壊を防止することができる。
【0037】
以上説明したように、本発明の課題である圧接型半導体素子の切欠き部の圧力抜けによる当該圧接型半導体素子の熱破壊を防止することができる圧接型半導体素子用スタックを提供できる。
【符号の説明】
【0038】
2a、2b 圧接板
3a 台座
4a、4b 弾性体
5a、5b 台座
6a、6b 円錐加圧体
7a、7b 絶縁座用金具
8a、8b 絶縁座
9 水冷フィン
10 圧接型半導体素子(マルチチップ半導体素子)
11a、11b ステー
20 スペーサ
30 加圧部
100 スペーサを有する圧接型半導体素子用スタック
110 水冷フィンの厚さを厚くした圧接型半導体素子用スタック
120 絶縁座の厚さを厚くした圧接型半導体素子用スタック
200 従来技術に係る圧接型半導体素子用スタック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8