【実施例1】
【0014】
図1は、実施例1に係る圧接型半導体素子用スタック100の断面図である。圧接型半導体素子用スタック100は、マルチチップで構成された圧接型半導体素子10、当該圧接型半導体素子10を冷却するための水冷フィン9及びこれらを加圧する上部加圧部(加圧手段)30a及び下部加圧部(加圧手段)30bなどで構成される。
【0015】
実施例では、水冷フィン9及び圧接型半導体素子10を一組として複数組直列に積層されているため、圧接型半導体素子10は、水冷フィン9と水冷フィン9の間に配置され、圧接型半導体素子10の上面及び下面から冷却される。図は、このように構成された場合の一例である。
【0016】
加圧部30(加圧部30a、30bの総称)は、圧接板2a・2b、ステー11a・11b、台座3a、付勢手段としての弾性体4a・4b、台座5a・5b、円錐加圧体6a・6b、絶縁座用金具7a・7b及び絶縁座8a・8bなどで構成され、圧接板2a及び2bの間に積層配置された圧接型半導体素子10及び水冷フィン9の間の圧接力が所定の圧接力になるように加圧する。
【0017】
台座5a・5b、円錐加圧体6a・6b、絶縁座用金具7a・7b及び絶縁座8a・8b、及び圧接型半導体素子10、水冷フィン9、・・は、弾性体4a・4bの反発力により圧接型半導体素子10及び水冷フィン9の間が一定の圧接力で加圧される。また、ナット12a・12a、及び12b・12bを調整することで弾性体4a・4bの反発力により、上記圧接力を一定の圧力の範囲で微調整が可能である。
【0018】
本実施例では、最下部の水冷フィン9と絶縁座8bの間にスペーサ20が配置される。このスペーサ20は、ザグリ加工が施された絶縁座用金具7a下部(絶縁座8aに対する加圧面)から圧接型半導体素子10のチップの表面までの距離と、絶縁座用金具7b上部(絶縁座8bに対する加圧面)から圧接型半導体素子10のチップの裏面までの距離が等しくなるように配置される。
【0019】
加圧面が平面の場合には、加工精度により圧接型半導体素子と加圧面の密着度が悪い場合に、加圧面に偏荷重が発生し、圧接型半導体素子を均一に加圧できない場合が発生する。円錐加圧体6a・6bは、上記偏荷重の発生を防止することができる。
【0020】
絶縁座用金具7a・7bの両面のザグリ加工は、円錐加圧体によって加えられた圧力を外周面に分配する。その結果、圧接型半導体素子を構成する外周面の素子の圧力低下を防止することができるため、圧接型半導体素子の外周面の素子の熱破壊を防止することができる。
【0021】
絶縁座8aは、絶縁座用金具7aによって加えられた圧力により当該絶縁座8aに当接する水冷フィン9を加圧する。同様に絶縁座8bは、絶縁座用金具7bよって加えられた圧力により当該絶縁座8bに当接する水冷フィン9を加圧する。
【0022】
図2は、
図1に係る圧接型半導体素子用スタックにスペーサ20が無い場合(
図2(1)スペーサ無参照)の圧接型半導体素子用スタック200及びスペーサ20が有る場合(
図2(2)スペーサ有参照)の圧接型半導体素子用スタック100の断面図である。
図3は、
図2に示す圧接型半導体素子用スタックにスペーサ20が無い場合(
図3(1)スペーサ無参照)の圧接型半導体素子用スタック200のチップ10aの配置位置及びスペーサ有りの場合(
図3(2)スペーサ有参照)の圧接型半導体素子用スタック100のチップ10aの配置位置を示す要部断面図である。
【0023】
図4は、
図3に示す圧接型半導体素子用スタックにスペーサ20が無い場合(
図4(1)スペーサ無参照)及びスペーサが有る場合(
図4(2)スペーサ有参照)の、絶縁座用金具7aの加圧面から直近に配置された圧接型半導体素子10のチップ10aの表面までの距離L1、L1と絶縁座用金具7bの加圧面から直近に配置された圧接型半導体素子10のチップ10aの裏面までの距離L2、L3との違いを示す圧接型半導体用素子の要部断面図である。
【0024】
図4(1)は、スペーサ20が無い場合の絶縁座用金具7aの加圧面からその直近に配置された圧接型半導体素子10のチップ10aの表面までの距離L1に対し、絶縁座用金具7bの加圧面からその直近に配置された圧接型半導体素子10のチップ10aの裏面までの距離L2は、L1>L2となる。
【0025】
すなわち、絶縁座用金具7aの加圧面からその直近に配置された圧接型半導体素子10のチップ10a表面までの距離L1と絶縁座用金具7bの加圧面からその直近に配置された圧接型半導体素子10のチップ10a裏面までの距離L2は、圧接型半導体素子10のチップ10aの配置位置が、構造上厚み方向の中央部に位置していないためにL1>L2となる。
【0026】
また、
図8(1)に示すように圧接型半導体素子にはエミッタ部に切欠き部10bが設けられており、
図7に示す従来の圧接型半導体素子用スタック200による当該圧接型半導体素子10の圧力分布を測定した結果、当該圧接型半導体素子10の切欠き部10b周辺のチップ(例えば、チップNo18及びチップNo21)の圧力が低下する(圧力抜けが発生している)ことがわかった。
【0027】
上記圧力抜けは、
図8(2)に示す切欠き部10bの位置が、絶縁座用金具の加圧面に接近している場合に圧力抜けが顕著に表れることがわかった。
【0028】
上記圧力抜けは、絶縁座用金具7bの加圧面と切欠き部10bの距離を長くすることにより防止することができる。
【0029】
本実施例では、
図4(2)に示すように、絶縁座8bと圧接型半導体素子10の間にスペーサ20を配置し、絶縁座用金具7bの加圧面からチップ10aの下面までの距離を、
図4(1)に示すスペーサ20が無い場合の距離L2に比べてスペーサの厚さDs分長い距離L3にすることにより、上述した圧力抜けを防止することができる(下式(1))。
L3=L2+Ds
=L1・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(1)
L1:絶縁座用金具7aの加圧面からその加圧面の直近に配置されたチップ10a上面までの距離
L2:スペーサ20が無い場合の絶縁座用金具7bの加圧面からその加圧面の直近に配置されたチップ10a下面までの距離
L3:スペーサ20が有る場合の絶縁座用金具7bの加圧面からその加圧面の直近に配置されたチップ10a下面までの距離
Ds:スペーサ20の厚さ
実施例1では、上述したように、絶縁座用金具7aから直近に配置された圧接型半導体素子10のチップ10aの上面まで距離L1と、絶縁座用金具7bの加圧面の直近に配置された圧接型半導体素子10のチップ10aの下面までの距離L2を、同じ距離にするために、上記距離が短い側の絶縁座8bと水冷フィン9との間に距離L1と距離L2の差に等しい厚さ(=Ds)を有するスペーサ20を配置することにより、距離の差(=Ds)を吸収することができる。その結果、圧接型半導体素子10の切欠き部10bの圧力抜けによる熱破壊を防止することができる。
【0030】
なお、上述した実施例1では、加圧体として円錐加圧体を用いた場合に付いて説明したが、球面加圧体を用いた場合も同様の効果が得られる。
【実施例2】
【0031】
図5は、実施例2に係る圧接型半導体素子用スタックにおいて、スペーサの替りに水冷フィンの厚さを厚くした場合の要部断面図である。実施例2は、実施例1に係る
図4(2)に示すスペーサ20を配置する替りに、絶縁座用金具7bの加圧面の直近に配置された水冷フィン9の厚さを厚くした水冷フィン9Bを用いた場合の一例である。なお、その他の構成は、実施例1に示す内容と同様であり、その説明を省略する。
【0032】
その場合の絶縁座用金具7aの加圧面からその加圧面の直近に配置されたチップ10aの上面までの距離L1と、絶縁座用金具7bの加圧面からその加圧面の直近に配置されたチップ10aの下面までの距離L4の関係は、以下の通りである。
【0033】
L4=L1・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
L1:絶縁座用金具7aの加圧面からその加圧面の直近に配置されたチップ10aの上面までの距離
L4:絶縁座用金具7bの加圧面からその加圧面の直近に配置されたチップ10aの下面までの距離
実施例2では、上述したように、絶縁座用金具7aの加圧面から直近に配置された圧接型半導体素子10のチップ10aの上面まで距離L1と、絶縁座用金具7bの加圧面の直近に配置された圧接型半導体素子10のチップ10aの下面までの距離L2を、同じ距離にするために、上記距離が短い側の絶縁座8bに当接する水冷フィン9の厚さを厚くした水冷フィン9Bを用いることにより、距離の差を吸収することができる。その結果、圧接型半導体素子10の切欠き部10bの圧力抜けによる熱破壊を防止することができる。
【実施例3】
【0034】
図6は、実施例3に係る圧接型半導体素子用スタックの要部断面図である。実施例3は、実施例1に係る
図4(2)に示すスペーサ20を配置する替りに、絶縁座用金具7bの加圧面と当接する絶縁座8bの厚さを厚くした絶縁座8Bを使用した場合の一例である。なお、その他の構成は、実施例1に示す内容と同様であり、その説明を省略する。
【0035】
その場合の絶縁座用金具7aの加圧面からその加圧面の直近に配置されたチップ10aの上面までの距離L1と、絶縁座用金具7bの加圧面からその加圧面の直近に配置されたチップ10aの下面までの距離L5の関係は、以下の通りである。
【0036】
L5=L1・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2)
L1:絶縁座用金具7aの加圧面からその加圧面の直近に配置されたチップ10aの上面までの距離
L5:絶縁座用金具7bの加圧面からその加圧面の直近に配置されたチップ10aの下面までの距離
実施例3では、上述したように、絶縁座用金具7aの加圧面から直近に配置された圧接型半導体素子10のチップ10aの上面まで距離L1と、絶縁座用金具7bの加圧面から直近に配置された圧接型半導体素子10のチップ10aの下面までの距離L2を、同じ距離にするために、上記距離が短い側の絶縁座8Aの厚さを厚くすることにより、距離の差吸収することができる。その結果、圧接型半導体素子10の切欠き部10bの圧力抜けによる熱破壊を防止することができる。
【0037】
以上説明したように、本発明の課題である圧接型半導体素子の切欠き部の圧力抜けによる当該圧接型半導体素子の熱破壊を防止することができる圧接型半導体素子用スタックを提供できる。