特許第6392456号(P6392456)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6392456-ポリプロピレンを押出す方法 図000024
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392456
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】ポリプロピレンを押出す方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 47/10 20060101AFI20180910BHJP
   C08L 23/10 20060101ALI20180910BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20180910BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20180910BHJP
   C08K 5/521 20060101ALI20180910BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20180910BHJP
   B29K 23/00 20060101ALN20180910BHJP
【FI】
   B29C47/10
   C08L23/10
   C08K5/098
   C08K3/34
   C08K5/521
   C08J3/22CES
   B29K23:00
【請求項の数】18
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2017-528112(P2017-528112)
(86)(22)【出願日】2015年11月6日
(65)【公表番号】特表2017-537195(P2017-537195A)
(43)【公表日】2017年12月14日
(86)【国際出願番号】US2015059377
(87)【国際公開番号】WO2016085633
(87)【国際公開日】20160602
【審査請求日】2017年6月1日
(31)【優先権主張番号】62/084,119
(32)【優先日】2014年11月25日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】599060788
【氏名又は名称】ミリケン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Milliken & Company
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100189913
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜飼 健
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(72)【発明者】
【氏名】レイク、ケンパー・ディー.
(72)【発明者】
【氏名】コチャナビクズ、クリストファー・ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン、ジョセフ・ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ビヌム、クリフォード・エス.
(72)【発明者】
【氏名】ケラー、キース・エー.
【審査官】 三原 健治
(56)【参考文献】
【文献】 特表2017−537196(JP,A)
【文献】 特開2011−219518(JP,A)
【文献】 米国特許第05236514(US,A)
【文献】 特開2001−302723(JP,A)
【文献】 特表2004−524417(JP,A)
【文献】 特表2004−525227(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/126559(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
B29C
C08J
C08K
B29K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)押出機により、第1の組成物を押出して第1の押出物を形成し、第1の押出組成物をペレット化することであり、第1の組成物が、第1の反応器フレークポリプロピレン、成核剤および第1の酸スカベンジャーを含み、第1の組成物が、成核剤を少なくとも50ppmの量で含み、成核剤が、リン酸エステル塩、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、ビス(4−tert−ブチル安息香酸)アルミニウムヒドロキシド、タルクおよび以下の式(I)または式(II)の構造に適合する化合物からなる群から選択される、第1の押出物を形成することと、
b)工程a)に続く直後に、押出機により、第2の組成物を押出して第2の押出物を形成し、第2押出組成物をペレット化することであり、第2の組成物が、第2の反応器フレークポリプロピレンおよび第2の酸スカベンジャーを含み、第2の押出物が、0.01ppm〜1ppm成核剤を含有し、第2の押出物中の全成核剤の量は、10ppm未満である、第2の押出物を形成することと
を順番に含む、ポリプロピレンを押出す方法であって、
(i)成核剤が、式(I)
【化1】
(式中、M1は、有機または無機カチオンであり、xは1〜2の整数であり、yは1または2であり、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、水素、C1〜C9アルキル、ヒドロキシ、C1〜C9アルコキシ、C1〜C9アルキレンオキシ、アミン、C1〜C9アルキルアミン、ハロゲンおよびフェニルからなる群から個々に選択され、ただし、このような基がアルキルであるとき、任意の2つのビシナルまたはジェミナルアルキル基は結合して、最大6個の炭素原子の炭素環を形成してもよく、式(I)のカルボキシル部分は、シス配置で存在する)の構造に適合する場合、第2の酸スカベンジャーが脂肪酸の金属塩であり、この金属塩は、リチウム、ナトリウムおよびマグネシウムからなる群から選択される金属のカチオンを含み、(ii)成核剤が、式(II)
【化2】
(式中、M11およびM12は同一もしくは異なるか、またはM11およびM12は結合して、単一部分を形成し、金属もしくは有機カチオンからなる群から独立に選択され、ここで、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28およびR29は、水素および1〜C9アルキルからなる群から独立に選択され、さらに任意の2つの隣接して位置するR22〜R29アルキル基は、任意に結合して炭素環を形成してもよい)の構造に適合する場合、第2の酸スカベンジャーが、金属ステアロイル−2−ラクチレート、珪灰石(CaSiO3)、シリカおよびマグネシウムオキシスルフェート、ならびに脂肪酸の金属塩からなる群から選択され、この金属塩は、アルミニウム、マンガン、亜鉛およびマグネシウムからなる群から選択される金属のカチオンを含み、(iii)成核剤が、リン酸エステル塩、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、ビス(4−tert−ブチル安息香酸)アルミニウムヒドロキシドおよびタルクからなる群から選択される場合、第2の酸スカベンジャーが、脂肪酸の金属塩であり、この金属塩は、ナトリウム、アルミニウムおよびカリウムからなる群から選択される金属のカチオンを含む、
方法。
【請求項2】
成核剤が、式(I)の構造に適合する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1〜R10が水素であり、M1がカルシウムカチオンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第2の酸スカベンジャーが、ナトリウムカチオンおよびC3〜C22脂肪酸アニオンを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
第2の酸スカベンジャーが、ステアリン酸ナトリウムを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
成核剤が、式(II)の構造に適合する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
20〜R29が水素であり、M11およびM12がナトリウムカチオンである、請求項に記載の方法。
【請求項8】
第2の酸スカベンジャーが、アルミニウムカチオンおよびC3〜C22脂肪酸アニオンを含む、請求項に記載の方法。
【請求項9】
第2の酸スカベンジャーが、ステアリン酸アルミニウムを含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
第2の酸スカベンジャーが、さらに、12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムを含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
第2の酸スカベンジャーが、さらに、ステアロイル乳酸カルシウムを含む、請求項に記載の方法。
【請求項12】
第2の酸スカベンジャーが、さらに、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛を含む、請求項に記載の方法。
【請求項13】
第1の組成物は、成核剤を少なくとも100ppmの量で含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
第1の酸スカベンジャーが、ステアロイル乳酸カルシウムまたはハイドロタルサイトを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
成核剤が、安息香酸ナトリウムであり、第1の酸スカベンジャーが、成核剤と同じ組成物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
追加の成核剤が、工程b中に添加されない、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
第1の押出物のTcと第2の押出物のTcとの差異が5℃超である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
第2の押出物のTcは、110℃未満である、請求項1に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【発明の技術分野】
【0001】
[0001]本発明は、酸スカベンジャーおよび少量の成核剤を含むポリプロピレン組成物を押出す方法を対象とする。
【背景】
【0002】
[0002]いくつかの無核ポリプロピレン(PP)等級、例えば、二軸延伸ポリプロピレン(BOPP)があり、そこでは一貫したベースライン結晶化温度が必要とされる。BOPPにおいて、晶析速度の変化は、いくつかの処理変数:フィルムをクエンチする(または凍結させる)処理点、フィルムを首尾よく延伸させる温度、および標準的な処理条件下で得ることができる延伸量に影響を与える可能性がある。BOPPフィルムが意図せずに核形成された場合、処理問題に遭遇し得ることが業界で周知であり、これらの問題のうち主なものは、フィルムが、横方向に延伸されているため、機械方向に裂けるか、または分裂することである。
【0003】
[0003]同様に、射出成形ポリプロピレン等級が意図せずに核形成された場合、収縮特性が、変化し得る可能性がある。したがって、厳しい寸法公差を有する射出成形品は、意図せずに核形成された組成物で作られている場合、過度に収縮し、仕様から外れる可能性がある。
【0004】
[0004]部品の成形加工(part fabrication)が無核ポリプロピレンで最初に確立された場合に、入ってくるポリプロピレンが意図せずに核形成されるならば、同様の処理問題および/または物理的特性の問題が広範な部品の成形加工に関して存在し得る。
【0005】
[0005]したがって、無核ポリプロピレン等級においていかなる残留核形成も低減するか、または排除することができる添加剤および方法が必要とされる。
【発明の概要】
【0006】
[0006]第1の組成物を押出して第1の押出物を形成すること、次いで第2の組成物を押出して2の押出物を形成することを含む、ポリプロピレンを押出す方法。第1の組成物は、第1のポリプロピレン、成核剤および第1の酸スカベンジャーを含有し、この成核剤は、少なくとも約50ppmの量である。第2の組成物は、第2のポリプロピレンおよび第2の酸スカベンジャーを含有し、この第2の押出物は、成核剤を約10ppm未満含有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】[0007]図1は、例5、6および7の配合物のTc対時間を示すグラフである。
【詳細な説明】
【0008】
[0008]以下の定義は、本出願全体で使用する用語のいくつかを定義するために提供される。
【0009】
[0009]「ステアリン酸」という用語を本出願で使用するとき、該用語は、金属カチオンおよびその価数に応じて、モノ、ジおよびトリステアリン酸を含むために用いられる。さらに、化合物が「ステアリン酸」と称されるとき、化合物は、少量の他の脂肪酸、例えば、パルミチン酸、ミリスチン酸等を含有していてもよく、これは、商業等級のステアリン酸の特性である。「脂肪酸」という用語は、化学誘導体、例えば(これだけに限定されないが)12−ヒドロキシステアレート、ラクチレート(lactylate)および乳酸エステルを含んでいてもよい。
【0010】
[0010]ここで使用する「酸中和剤」または「酸スカベンジャー」という用語は、ポリプロピレンの製造において重合反応で使用した残留量の触媒に関連するか、またはそれにより生じる酸性種を中和するために使用してもよい添加剤のクラスを指す。これらの中和剤またはスカベンジャーは、また、配合物において同様に他の目的、例えば、色調の改善、潤滑性、または離型剤としての目的を果たしてもよい。
【0011】
[0011]別段の指示がない限り、条件は、25℃、1気圧および50%相対湿度であり、濃度は、重量であり、分子量は、重量平均分子量に基づく。本出願で使用する「ポリマー」という用語は、少なくとも5000重量平均分子量(Mw)を有する材料を示す。用語「コポリマー」は、広義で用いられ、2つ以上の異なるモノマー単位を含有するポリマー、例えば、ターポリマーを含み、別段の指示がない限り、ランダム、ブロックおよびインパクトコポリマーを含む。特定の相または異相組成物中のエチレンまたはプロピレンの濃度は、あらゆる賦形剤または他の非ポリオレフィン系加剤は除く、各々特定の相または異相組成物中のポリオレフィンポリマーの全重量に対する、反応したエチレンの単位またはプロピレンの単位の重量に基づく。全異種ポリマー組成物の各相の濃度は、あらゆる賦形剤または他の非ポリオレフィン添加剤もしくはポリマーは除く、異相組成物中のポリオレフィンポリマーの全重量に基づく。
【0012】
[0012]方法は、第1の組成物を押出して第1の押出物を形成することから好ましくは開始し、この第1の組成物は、第1のポリプロピレン、成核剤および第1の酸スカベンジャーを含む。第1の組成物は、押出機に入る組成物として定義され、第1の押出物は、押出金型を出る組成物として定義される。第1の組成物は、少なくとも約50ppmの量で成核剤を含有し、成核剤は、リン酸エステル塩、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、ビス(4−tert−ブチル安息香酸)アルミニウムヒドロキシド(Al−PTBBAとしても商業的に知られている)、タルク、および以下に例示する式(I)または式(II)の構造に適合する化合物からなる群から選択される。
【0013】
[0013]本発明の第1の押出物は、熱可塑性物品を製造するのに有用である。第1の押出物は、第2の操作で使用してもよい完成品または樹脂を生成するために用いられてもよい。第1の押出物は、任意の適当な技術、例えば、射出成形、ブロー成形(例えば、射出ブロー成形または射出ストレッチブロー成形)、押出、押出ブロー成形、熱成形、回転成形、フィルムインフレーション(インフレーションフィルム)、フィルムキャスト(キャストフィルム)、圧縮成形などにより所望の熱可塑性物品に形成できる。第1の押出物を、二軸延伸し、BOPPフィルム(二軸延伸ポリプロピレン)を形成し、繊維中に押出すか、またはパイプ中に押出してもよく、中間樹脂(ペレット状または粉末状)として使用して、次いでそれを別のプロセスに送り、完成品を生成してもよい。
【0014】
[0014]第1の押出物は、好ましくは意図的に核形成されたポリプロピレンであり、これは、第1のポリプロピレンを顕著に核形成させるのに十分な量で、成核剤を第1の組成物に意図的に添加することを意味する。そのようなものとして、結晶化温度(Tc)は、成核剤の不在下でのPPの結晶化温度より高い。さらに、ポリマーの結晶形態は、ポリマーと独特な核形成基材との間のエピタキシャル整合により決定される配向において異なってもよい。市販の成核剤を意図的に充填することにより、ポリマーの結晶化温度を15〜30℃増加させてもよい。
【0015】
[0015]有核ポリプロピレンは、製造業者および/またはエンドユーザーにもたらす属性により、多くの市場で非常に所望されている。部品が、より早く、より高い温度で凝固するため、有核ポリプロピレンに関連したより高い結晶化温度は、一般に、より早い処理速度に置き換えられる。成核剤により生じる結晶サイズの減少も、より高い透明性および光沢に置き換えられてよい。物理的特性に関して、有核ポリプロピレンは、組み込まれている成核剤の種類に依存して、より高い弾性率、より優れた温度耐性および独特の収縮特性を一般に有する。さらに、引張強度を改善してもよいが、これは引張伸びの低下を伴う可能性がある。これらの種類の特性が、一般に望ましいが、これらの属性は、これらの属性が所望されない状況、および導入するポリプロピレン組成物における核形成の程度の変動に合わせるために、方法に適合させることが必要とされているが、それを容易に行うことができない状況では、問題となり得る。
【0016】
[0016]第1のポリプロピレンは、ポリプロピレンホモポリマー、ポリプロピレンコポリマー[ポリプロピレンブロックコポリマー(例えば、インパクトコポリマー)、ポリプロピレンランダムコポリマーおよびミニランダムコポリマー]およびそれらの混合物を含む、任意の適当なポリプロピレンであってよい。コポリマーは、エチレン、ブテンまたはペンテンのコモノマーを含有していてもよい。
【0017】
[0017]第1の組成物は、成核剤を少なくとも約50ppm、より好ましくは少なくとも約100ppmの量で含む。別の態様において、第1の組成物は、成核剤を少なくとも約300ppm、より好ましくは少なくとも約500ppmの量で含む。別の態様において、第1の組成物は、成核剤を少なくとも約1000ppm、より好ましくは少なくとも約2000ppmの量で含む。
【0018】
[0018]一態様において、成核剤は、脂環式金属塩である。一態様において、成核剤は、ヘキサヒドロフタル酸(および、ここではHHPAとして称される)の特定の金属塩を含む。この態様において、成核剤は、式(I)
【0019】
【化1】
【0020】
の構造に適合する。
【0021】
[0019]R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、同一または異なり、水素、C1〜C9アルキル、ヒドロキシ、C1〜C9アルコキシ、C1〜C9アルキレンオキシ、アミン、C1〜C9アルキルアミン、ハロゲンおよびフェニルからなる群から個々に選択される。M1は、金属または有機カチオンであり、xは1〜2の整数であり、yは1〜2の整数である。好ましくは、M1は、カルシウム、ストロンチウム、リチウムおよび一塩基性アルミニウムの群から選択される。
【0022】
[0020]一つの好ましい態様において、M1は、カルシウムカチオンであり、R1〜R10は水素である。ここで称されるCaHHPAは、式(IA)を示す。Milliken & Company of Spartanburg、S.C製のHYPERFORM(商標)HPN−20Eを使用してもよく、それは、市販されており、CaHHPAを含み、例えば、その内容全体が参照によりここに組み込まれている、米国特許第6599971号に記載されている。
【0023】
【化2】
【0024】
[0021]別の態様において、成核剤は、例えば、米国特許第6465551号および第6534574号に記載されている、二環式ジカルボン酸金属塩である。成核剤は、式(II)
【0025】
【化3】
【0026】
[式中、M11およびM12は同一もしくは異なるか、またはM11およびM12は結合して、単一部分を形成し、金属もしくは有機カチオンからなる群から独立に選択される。好ましくは、M11およびM12(または結合したM11およびM12による単一部分)は、ナトリウム、カルシウム、ストロンチウム、リチウム、亜鉛、マグネシウムおよび一塩基性アルミニウムからなる群から選択される。R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28およびR29は、水素およびC1〜C9アルキルからなる群から独立に選択され、さらに任意の2つの隣接して位置するR22〜R29アルキル基は、任意に結合して炭素環を形成してもよい。好ましくは、R20〜R29は水素であり、M11およびM12はナトリウムカチオンである]
の構造に適合する。
【0027】
[0022]特に、適当な二環式ジカルボン酸金属塩としては、ジナトリウムビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシレート、カルシウムビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシレートおよびそれらの組み合わせが挙げられる。Milliken & Company of Spartanburg、S.C製のHYPERFORM(商標)HPN−68またはHPN−68Lを使用してもよい。HPN−68Lは、市販されており、式(IIA)
【0028】
【化4】
【0029】
で示されるジナトリウムビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジカルボキシレートを含む。
【0030】
[0023]別の態様において、成核剤は、リン酸エステル塩である。核形成および/または清澄剤として使用するのに適したリン酸エステル塩としては、ナトリウム2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート[旭電化工業(株)製、「NA−11(商標)」として知られる]、アルミニウムヒドロキシビス[2,2’−メチレン−ビス−(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフェート]およびミリスチン酸リチウム[旭電化工業(株)製、「NA−21(商標)」として知られる]、ならびに他のこのようなリン酸エステル、例えば、米国特許第5342868号および第4463113号に開示されている、例えば、NA−71(リチウムリン酸塩およびステアリン酸リチウム)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
[0024]別の態様において、成核剤は、安息香酸ナトリウムである。成核剤が安息香酸ナトリウムであるとき、安息香酸ナトリウムは、成核剤と酸スカベンジャーの両方として機能してもよく、したがって別個のおよび追加の酸スカベンジャーは不要としてもよい。成核剤が安息香酸ナトリウムである一態様において、酸スカベンジャーは、成核剤と同じ組成物(安息香酸ナトリウム)である。
【0032】
[0025]別の態様において、成核剤は安息香酸リチウムである。別の態様において、成核剤は、ビス(4−tert−ブチル安息香酸)アルミニウムヒドロキシド(Al−PTBBAとしても商業的に知られている)である。別の態様において、成核剤は、タルク(含水ケイ酸マグネシウム)である。
【0033】
[0026]ある種のおそらく好ましい態様において、第1の組成物は、第1のポリプロピレンおよび成核剤に加えて、第1の酸スカベンジャーを含む。本発明の組成物での使用に適した酸スカベンジャーは、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マンガン、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸セリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸銅、ステアリン酸鉄、ステアリン酸ニッケル、乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸カルシウム(calcium stearoyl lactylate)、合成ハイドロタルサイト、酸化亜鉛、酸化カルシウム、酸化マグネシウムおよび水酸化カルシウムを含むが、これらに限定されない、任意の適当な酸スカベンジャーであってよい。好ましくは、第1の酸スカベンジャーは、ステアリン酸の金属塩、例えば、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムおよびそれらの混合物からなる群から選択される。ステアリン酸カルシウムは、低コスト、低着色性および良好な性能によりいくつかの用途で好まれ得る。別の態様において、第1の酸スカベンジャーは、有効性および低い移動特性によりハイドロタルサイト(すなわち、DHT−4A)である。一態様において、第1の酸スカベンジャーは、2種以上の酸スカベンジャーのブレンドである。
【0034】
[0027]第1の酸スカベンジャーが組成物中に存在するとき、第1の組成物中に任意の適当な量で存在できる。酸スカベンジャー(第1および第2)の量は、重合触媒の性質、残留触媒の量、および/または組成物を効果的に安定させるのに必要な量に基づき選択されてもよい。
【0035】
[0028]好ましくは、第1の酸スカベンジャーは、第1の組成物の全重量に対して約250ppm〜約2500ppmの量で組成物中に存在する。第1の酸スカベンジャーは、第1の組成物の全重量に対して、より好ましくは約400ppm〜約1500ppmの量、最も好ましくは約500ppm〜約1200ppmの量で組成物中に存在する。
【0036】
[0029]樹脂押出機が、無核ポリプロピレンのランを伴って有核ポリプロピレンに続くこともある。方法の第2の工程において、第2の組成物を押出して第2の押出物を形成し、この第2の組成物は、第2のポリプロピレンおよび第2の酸スカベンジャーを含み、第2の押出物は、成核剤を約10ppm未満含有する。
【0037】
[0030]第2のポリプロピレンは、第1のポリプロピレンに関して開示したポリプロピレンの種類を含む、任意の適当なポリプロピレンであってよい。第2のポリプロピレンは、第1のポリプロピレンと同一または異なるポリプロピレンであってよい。
【0038】
[0031]一態様において、第2の押出物は、成核剤を約5ppm未満、より好ましくは約1ppm未満含有する。別の態様において、第2の押出物は、成核剤を約0.1ppm未満、より好ましくは約0.01ppm未満含有する。別の態様において、第2の押出物は、成核剤を約0.01ppm〜1ppm含有する。
【0039】
[0032]好ましくは、追加の成核剤は、第2の組成物の調製および押出中のいかなる時点でも第2の組成物に意図的に添加されない。成核剤は、押出金型/スクリュー/バレル、ホッパー、フィーダー、供給ライン、添加剤マスターバッチブレンダーまたは押出システムの任意の他の部分に保持された残留量の成核剤を通じて、第2の組成物に意図せずに添加される可能性がある。残留する少量の成核剤およびある種の酸スカベンジャーを含有する押出されたポリプロピレンにより、意図せずに核形成されたポリプロピレンが生成され得ることが判明した。この核形成は、所望されず、意図せずに核形成されたポリプロピレンにおいて望まれない特性、例えば、高い結晶化温度(Tc)、および破れることなくBOPPフィルムを製造する上での問題が生じる可能性がある。
【0040】
[0033]一態様において、第2の押出物中の全成核剤の含有量は、10ppm未満、より好ましくは5ppm未満、より好ましくは1ppm未満、より好ましくは0.1ppm未満、より好ましくは0.01ppm未満である。
【0041】
[0034]好ましくは、第2の押出物のTcは、第2のポリプロピレンが夾雑していないベースライン状態のTcの約5℃以内である。所与のポリプロピレンのこのベースライン状態を決定する方法は、明細書の試験方法の項に定義されている。別の態様において、第2の押出物のTcは、第2のポリプロピレンが夾雑していないベースライン状態のTcの約3℃以内、より好ましくは約1.5℃以内である。ポリプロピレンがホモポリマーポリプロピレンを含む別の態様において、第2の押出物のTcは、約115℃未満、より好ましくは約112℃未満、より好ましくは約110℃未満である。
【0042】
[0035]好ましくは、第1の押出物のTcと第2の押出物のTcとの差異は、約5℃超、より好ましくは約10℃超、さらにより好ましくは約15〜20℃、最も好ましくは約25℃超である。
【0043】
[0036]任意の単一の理論に拘束されずに、好ましい第2の酸スカベンジャーは、残留量の成核剤を不活性化すると考えられていると仮定される。この不活性化を、残留する成核剤と酸中和剤との間のイオン交換メカニズムにより可能にし、それにより核形成種の化学的性質を変化させてもよい。この不活性化を、成核剤の表面を覆う酸中和剤により起こし、それにより成核剤とポリプロピレンとの間のエピタキシャル整合を変化させてもよい。
【0044】
[0037]一態様において、第2の酸スカベンジャーは、脂肪酸のカリウム塩である。脂肪酸のカリウム塩は、上記および同様のすべての公知の成核剤によるポリプロピレンの核形成を低減させることが判明した。好ましくは、第2の酸スカベンジャーは、カリウムカチオンおよびC3〜C22脂肪酸アニオンを含む。より好ましくは、第2の酸スカベンジャーは、ステアリン酸カリウムを含む。一態様において、第2の酸スカベンジャーは、2種以上の酸スカベンジャーのブレンドである。
【0045】
[0038]成核剤が式(I)に対応する組成物である態様において、第2の酸スカベンジャーは、好ましくは脂肪酸の金属塩であり、この金属塩は、リチウム、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウムからなる群から選択される金属カチオンを含む。一態様において、第2の酸スカベンジャーは、カリウムまたはナトリウムカチオン、およびC3〜C22脂肪酸アニオンを含有する。一態様において、第2の酸スカベンジャーは、リチウムまたはマグネシウムカチオンおよびC3〜C22脂肪酸アニオンを含有する。好ましい態様において、第2の酸スカベンジャーは、ステアリン酸カリウムである。別の好ましい態様において、第2の酸スカベンジャーは、ステアリン酸ナトリウムである。ステアリン酸カリウムおよびステアリン酸ナトリウムは、式(I)に対応する、少量の残留成核剤を有するポリプロピレン押出物のあらゆる不要な核形成を防ぐか、または顕著に低減することができることが判明した。一態様において、第2の酸スカベンジャーは、2種以上の酸スカベンジャーのブレンドである。一態様において、第2の酸スカベンジャーは、二酸化チタン、ケイ酸カルシウムおよびシリカからなる群から選択される。
【0046】
[0039]成核剤が式(II)に対応する組成物である態様において、第2の酸スカベンジャーは、金属ステアロイル−2−ラクチレート、珪灰石(CaSiO3)およびマグネシウムオキシスルフェート、シリカ、ならびに脂肪酸の金属塩からなる群から選択され、この金属塩は、アルミニウム、マンガン、亜鉛、カリウムおよびマグネシウムからなる群から選択される金属のカチオンを含む。一態様において、第2の酸スカベンジャーは、カリウムまたはアルミニウムカチオンおよびC3〜C22脂肪酸アニオンを含有する。好ましい態様において、第2の酸スカベンジャーは、ステアリン酸カリウムである。別の好ましい態様において、第2の酸スカベンジャーは、ステアリン酸アルミニウムである。ステアリン酸カリウムおよびステアリン酸アルミニウムは、式(II)に対応する、少量の残留成核剤を有するポリプロピレン押出物のあらゆる不要な核形成を防ぐか、または顕著に低減することができることが判明した。別の好ましい態様において、第2の酸スカベンジャーは、ステアロイル乳酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛または12−ヒドロキシステアリン酸マグネシウムであってよい。一態様において、第2の酸スカベンジャーは、2種以上の酸スカベンジャーのブレンドである。
【0047】
[0040]成核剤がリン酸エステル塩、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、ビス(4−tert−ブチル安息香酸)アルミニウムヒドロキシド(Al−ptbbaとして商業的に知られている)、タルクである態様において、第2の酸スカベンジャーは、好ましくは脂肪酸の金属塩であり、この金属塩は、ナトリウム、アルミニウムおよびカリウムからなる群から選択される金属のカチオンを含む。一態様において、第2の酸スカベンジャーは、2種以上の酸スカベンジャーのブレンドである。
【0048】
[0041]一態様において、第1の酸スカベンジャーおよび第2の酸スカベンジャーは同じ組成物である。これは、コストを低減し、原材料の流れを簡便にするため、製造環境において好まれ得る。
【0049】
[0042]方法は、残留量の成核剤による望まれない核形成を顕著に低減させた、ポリプロピレン完成品または樹脂を形成するために用いられてもよい。一態様において、二軸延伸ポリプロピレンフィルムが製造されてもよい。本明細書において、二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、延伸ポリマーフィルム、例えば、幅出しまたはインフレーションポリプロピレンフィルムを含むと定義される。
【0050】
[0043]一態様において、BOPPフィルムは、成核剤、脂肪酸のカリウム塩およびポリプロピレンから本質的になる熱可塑性物質を含む。フィルム中の全成核剤の含有量は、10ppm未満であり、この成核剤は、好ましくは式(I)または(II)の構造に適合する。フィルムは、1つ以上の層を含んでいてもよく、層の少なくとも1層は、成核剤、脂肪酸のカリウム塩およびポリプロピレンから本質的になる熱可塑性物質を含有し、このフィルム中の全成核剤の含有量は、10ppm未満であり、成核剤は、式(I)または(II)の構造に適合する。好ましくは、フィルム中の熱可塑性ポリマーはすべて、ポリプロピレンから本質的になる。本出願において、「ポリプロピレンから本質的になる」とは、ポリプロピレンポリマーが、他の熱可塑性ポリマーを10重量%未満含有することを意味する。
試験方法
[0044]ピーク結晶化温度(Tc)− 20℃/分の速度で50℃から220℃まで加熱し、2分間保持し、20℃/分の速度で冷却して50℃に戻すプロファイルで修正した、ASTM D3418−08に従って、すべての例のピーク結晶化温度(Tc)を決定した。これらの条件下で、次いでピークTcを結晶化発熱から決定した。Mettler Toledo DSC822およびMettler Toledo DSC 1Starの2台の計器が、試料の測定に関与した。2台の計器間のTcバイアスは約1℃であった。
【0051】
[0045]ベースラインTc− 107.5℃のベースライン値を、a)PRO−FAX(商標)6301の反応器フレーク(reactor flake)、IRGANOX(商標)1010 500ppm、IRGAFOS(商標)168 1000ppmおよびステアリン酸カルシウム500ppmからなる0.5kgのバッチを製造し、b)バッチを無菌プラスチックバック中で勢いよく混合し、c)230℃の温度で13000psiの油圧をかけるCarver Pressを用いて、粉末混合物を1.27mm厚のディスクに成形し、d)示差走査熱量測定用に試料をこのディスクから得、e)ASTM D3418−08(20℃/分の速度で50℃から220℃まで加熱し、2分間保持し、20℃/分の速度で冷却して50℃まで戻すプロファイルで修正)に従ってピーク結晶化温度(Tc)を決定することにより確立し、それによりピークTc値を、結晶化発熱から決定した。この方式で、Tcを標準的な添加剤パッケージを有するポリマーから決定することにより、ポリマーを核形成させる可能性がある夾雑物質が導入されるリスクを本質的に排除できた。
【0052】
例セット1
[0046]いくつかのポリプロピレン押出システムは、最初に成核剤(50ppm超の量)を有するポリプロピレンを押出し、次いで無核等級のポリプロピレンに切り替える。無核等級のポリプロピレンもやはり残留量(1ppm)の成核剤を含有し得る。この例は、残留量の成核剤を有する無核等級のポリプロピレンおよびポリプロピレン組成物のTcに対する様々な酸スカベンジャーの影響をシミュレートする。
【0053】
[0047]少量の成核剤を有するポリプロピレン組成物を生成するために、以下の成分:IRGANOX(商標)1010を500ppmの量で、IRGAFOS(商標)168を1000ppmの量で、およびMILLIKEN&COMPANY(商標)から入手できるHYPERFOM(商標)HPN−68L(本出願ではHPN−68Lと省略する)またはMILLIKEN&COMPANY(商標)から入手できるHYPERFORM(商標)HPN−20E(本出願ではHPN−20Eと省略する)の成核剤を1000ppmの量でPRO−FAX(商標)6301 12MFR PPホモポリマーの反応器フレークに添加することにより、濃縮した成核剤混合物を最初に形成した。1kgのバッチサイズを利用して、これらの成分を10LのHENSCHEL(商標)ミキサー中で1分間高強度ブレンドし、濃縮した成核剤混合物を生成した。
【0054】
[0048]次に、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを製造するために使用したポリプロピレンホモポリマーの反応器フレークに、以下の成分:IRGANOX(商標)1010を500ppmの量で、IRGAFOS(商標)168を1000ppmの量でおよび濃縮した成核剤混合物を1000ppmの量で添加した。この一連の希釈により、配合物中の成核剤は約1ppmになった。さらに、選別されるべき酸スカベンジャーも、市販の配合物でのその使用量と一致する濃度で添加した。0.5kgのバッチサイズを利用して、これらの成分を4LのHENSCHEL(商標)ミキサー中で1分間高強度ブレンドした。
【0055】
[0049]次いで、30:1のL/D比を有する25mm一軸スクリューを有し、MADDOCKS(商標)ミキサーを備えた、DELTAPLAST(商標)押出機(約6kg/時の典型的な出力)で、希釈した配合物を混和した。バレル温度プロファイルを、最大ゾーン設定の約230℃で設定した。溶融したポリマーを60メッシュのスクリーンパックから濾過し、次いで、ストランドダイから押出した。次いで、ストランドを水浴でクエンチし、乾燥し、ペレット化した。
【0056】
[0050]230℃の温度で13000psiの油圧をかけるCarver Pressを用いて、押出されたペレットを1.27mm厚のディスクに成形した。示差走査熱量測定用に試料をこのディスクから得た。
【0057】
【表1】
【0058】
[0051]二軸延伸フィルムを製造するために使用したポリプロピレンのベースラインTcは107.3℃であった。表1に示した結果から分かるように、例1〜4のTcはBOPP等級のポリプロピレンのTcの+/−2℃以内であった。これらのデータは、残留量のHPN−20EおよびHPN−68Lによる悪影響(すなわち、ベースラインを5〜10℃上回るTc値)を好ましい酸スカベンジャーの選択により本質的に排除できることを例示している。ベースラインは、試験方法の項に記載した方式で測定されなかった(例セット1のみ)。107.3℃のこのベースライン値を、a)対象のポリプロピレンの反応器フレーク、Irganox1010 500ppm、Irganox1010 1000ppmおよびステアリン酸カルシウム500ppmからなる0.1kgのバッチを製造し、b)バッチを無菌プラスチックバック中で勢いよく混合し、c)230℃の温度で13000psiの油圧をかけるCarver Pressを用いて、粉末混合物を1.27mm厚のディスクに成形し、d)示差走査熱量測定用に試料をこのディスクから得、e)ASTM D3418−08(20℃/分の速度で50℃から220℃まで加熱し、2分間保持し、20℃/分の速度で冷却して50℃まで戻すプロファイルで修正)に従ってピーク結晶化温度(Tc)を決定することにより確立し、それによりピークTc値を、結晶化発熱から決定した。この方式で、ポリマーを核形成させる可能性がある夾雑物質が導入されるリスクを、本質的に排除できる、標準的な添加剤パッケージを有するポリマーからTcを決定した。
【0059】
例セット2
[0052]好ましい酸中和剤が、残留核形成による不要な影響をいかに早く低減できたかを例示するために、MADDOCKS(商標)ミキサー(約6kg/時の典型的な出力)を備えたDELTAPLAST(商標)25mm一軸スクリュー押出機(30:1l/d)での実験を計画した。バレル温度プロファイルを、最大ゾーン設定の約230℃で設定した。溶融したポリマーを60メッシュのスクリーンパックから濾過し、次いで、ストランドダイから押出した。次いで、ストランドを水浴でクエンチし、乾燥し、ペレット化した。
【0060】
[0053]押出す前に、すべての試料を10LのHENSCHEL(商標)高強度ミキサーで1分間プレブレンドした。試料を押出機に導入する前に、押出機を市販の無核1.8MFRポリプロピレンホモポリマー5kgでパージした。
【0061】
[0054]5kgのパージに次いで、1kgの有核「夾雑」バッチをストランドに押出し、次いでストランドを水冷し、ペレット状に切断した。このバッチは、PRO−FAX(商標)6301ホモポリマーおよび以下の添加剤パッケージ:IRGANOX(商標)1010 500ppm、IRGAFOS(商標)168 1000ppm、DHT−4A 400ppmおよびHPN−20E 400ppmからなる。
【0062】
[0055]230℃の温度で13000psiの油圧をかけるCarver Pressを用いて、「夾雑」バッチ由来の押出されたペレットを1.27mm厚のディスクに成形した。示差走査熱量測定用に試料をこのディスクから得た。
【0063】
[0056]「夾雑」バッチの直後に、PRO−FAX(商標)6301ホモポリマーおよび以下の添加剤パッケージ:IRGANOX(商標)1010 500ppm、IRGAFOS(商標)168 1000ppmおよびステアリン酸ナトリウム500ppmからなる化合物を90分間押出し、例7を形成した。
【0064】
[0057]押出されたペレット試料を、1、15、30、45、60、75および90分後に回収した。230℃の温度で13000psiの油圧をかけるCarver Pressを用いて、押出されたペレットを1.27mm厚のディスクに成形した。示差走査熱量測定用に試料をこのディスクから得、ピーク結晶化温度(Tc)を決定した。
【0065】
[0058]ステアリン酸カルシウムをステアリン酸ナトリウムの代用とした以外は、例セット2の工程を繰り返し、例6を形成した。DHT−4A(合成ハイドロタルサイト)をステアリン酸ナトリウムの代用とした以外は、例セット2の工程を繰り返し、例5を形成した。
【0066】
[0059]図1から分かるように、例7の配合物(ステアリン酸ナトリウムを含有)のTcは、ポリプロピレンのベースライン(107.5℃)までほぼ直ぐに低下し、一般に用いられる酸中和剤、DHT−4Aおよびステアリン酸カルシウムを含有する例5および6よりも5〜8℃低い。試験の残り89分間、例5(DHT−4A)では、約115℃で横ばい状態であったようで、例6(CaSt)ではわずかな低下のみ観察された。例5および6は、まさに無核の結晶化値を得ることを可能にするための、押出システムからの成核剤の除去の問題を象徴している。一方で、十分に理解されていないメカニズムにより、ステアリン酸ナトリウム(例7)は、システム中に残る残留量のHPN−20Eを不活性化しているようである。
【0067】
例セット3
[0060]いくつかのポリプロピレン押出システムは、最初に成核剤(50ppm超の量)を有するポリプロピレンを押出し、次いで無核等級のポリプロピレンに切り替える。無核等級のポリプロピレンもやはり残留量(1ppm)の成核剤を含有し得る。この例は、残留量の様々な市販の成核剤を有する無核等級のポリプロピレンおよび様々な好ましい酸スカベンジャーのポリプロピレン組成物のTcに対する影響をシミュレートする。
【0068】
[0061]少量の成核剤を有するポリプロピレン組成物を生成するために、以下の成分:IRGANOX(商標)1010を500ppmの量で、IRGAFOS(商標)168を1000ppmの量でおよび成核剤[FLUID ENERGY(商標)安息香酸ナトリウム、旭電化(商標)NA−11、旭電化(商標)NA−21、旭電化(商標)NA−71、GCHアルミニウムp−第3級ブチル安息香酸(Al−PTBBAとしても知られており、ビス(4−tert−ブチル安息香酸)アルミニウムヒドロキシドでもある)、IMERYS(商標)Jetfine3CAタルクまたはSIGMA ALDRICH(商標)安息香酸リチウム]を1000ppmの量で、PRO−FAX(商標)6301 12MFR PPホモポリマーの反応器フレークに添加することにより、濃縮した成核剤混合物を最初に形成した。0.5kgのバッチサイズを利用して、これらの成分を4LのHENSCHELミキサー中で1分間高強度ブレンドし、濃縮した成核剤混合物を形成した。
【0069】
[0062]次に、PRO−FAX(商標)6301 12MFR PPホモポリマーの反応器フレークに、以下の成分:IRGANOX(商標)1010を500ppmの量で、IRGAFOS(商標)168を1000ppmの量でおよび濃縮した成核剤混合物を1000ppmの量で添加した。この一連の希釈により、配合物中の成核剤は1ppmになった。さらに、選別されるべき酸スカベンジャーも、市販の配合物でのその使用量と一致する濃度で添加した。0.5kgのバッチサイズを利用して、これらの成分を4LのHENSCHEL(商標)ミキサー中で1分間高強度ブレンドした。
【0070】
[0063]次いで、30:1のL/D比を有する25mm一軸スクリューを有し、MADDOCKS(商標)ミキサーを備えた、DELTAPLAST(商標)押出機(約6kg/時の典型的な出力)で、希釈した配合物を混和した。バレル温度プロファイルを、最大ゾーン設定の約230℃で設定した。溶融したポリマーを60メッシュのスクリーンパックから濾過し、次いで、ストランドダイから押出した。次いで、ストランドを水浴でクエンチし、乾燥し、ペレット化した。
【0071】
[0064]230℃の温度で13000psiの油圧をかけるCarver Pressを用いて、押出されたペレットを1.27mm厚のディスクに成形した。示差走査熱量測定用に試料をこのディスクから得、ピーク結晶化温度(Tc)を決定した。
【0072】
【表2-1】
【0073】
【表2-2】
【0074】
[0065]例8〜28を総説すると、残留量の様々な成核剤と共に使用したとき、各例では、ベースライン未満であるか、またはベースラインを約5℃以下で上回る、付与されたTc値になった。残留量の様々な成核剤と共に使用したとき、例8〜11および13〜28では、ベースライン未満であるか、またはベースラインを約2℃以下で上回る、付与されたTc値になった。したがって、好ましいステアリン酸は、ベースラインTc性能が所望される、無核ポリプロピレンでの使用に対して広範な適用性を有すると思われる。
【0075】
例セット4
[0066]いくつかのポリプロピレン押出システムは、最初に成核剤(50ppm超の量)を有するポリプロピレンを押出し、次いで無核等級のポリプロピレンに切り替える。無核等級のポリプロピレンもやはり残留量(1ppm)の成核剤を含有し得る。この例は、残留量のHPN−20Eを有する無核等級のポリプロピレンおよびステアリン酸の金属塩を含むクラスからの様々な酸スカベンジャーの影響をシミュレートする。
【0076】
[0067]少量のHPN−20E成核剤を有するポリプロピレン組成物を生成するために、以下の成分:IRGANOX(商標)1010を500ppmの量で、IRGAFOS(商標)168を1000ppmの量でおよびHPN−20E成核剤を1000ppmの量で、PRO−FAX(商標)6301 12MFR PPホモポリマーの反応器フレークに添加することにより、濃縮した成核剤混合物を最初に形成した。0.5kgのバッチサイズを利用して、これらの成分を4LのHENSCHEL(商標)ミキサー中で1分間高強度ブレンドし、濃縮したHPN−20E成核剤混合物を形成した。
【0077】
[0068]次に、PRO−FAX(商標)6301 12MFR PPホモポリマーの反応器フレークに、以下の成分:IRGANOX(商標)1010を500ppmの量で、IRGAFOS(商標)168を1000ppmの量でおよび濃縮した成核剤混合物を1000ppmの量で添加した。この一連の希釈により、配合物中のHPN−20E成核剤は1ppmになった。さらに、選別されるべき酸スカベンジャーも、市販の配合物でのその使用量と一致する濃度で添加した。0.5kgのバッチサイズを利用して、これらの成分を4LのHENSCHEL(商標)ミキサー中で1分間高強度ブレンドした。
【0078】
[0069]次いで、30:1のL/D比を有する25mm一軸スクリューを有し、MADDOCKS(商標)ミキサーを備えた、DELTAPLAST(商標)押出機(約6kg/時の典型的な出力)で、希釈した配合物を混和した。バレル温度プロファイルを、最大ゾーン設定の約230℃で設定した。溶融したポリマーを60メッシュのスクリーンパックから濾過し、次いで、ストランドダイから押出した。次いで、ストランドを水浴でクエンチし、乾燥し、ペレット化した。
【0079】
[0070]230℃の温度で13000psiの油圧をかけるCarver Pressを用いて、押出されたペレットを1.27mm厚のディスクに成形した。示差走査熱量測定用に試料をこのディスクから得、ピーク結晶化温度(Tc)を決定した。
【0080】
【表3-1】
【0081】
【表3-2】
【0082】
[0071]一般に、残留量のHPN−20Eと共に使用したとき、ステアリン酸の一価金属塩(例29〜31)では、最も低いピーク結晶化温度になり、ベースラインを約3.5℃の範囲内で上回るTc値になった。これらの種類の中では、ステアリン酸カリウムで、最も低いTc反応が示された。この例セットにおいて、上記の例との顕著な差異は、試験した二価と三価の塩の間では見られなかった。
【0083】
例セット5
[0072]いくつかのポリプロピレン押出システムは、最初に成核剤(50ppm超の量)を有するポリプロピレンを押出し、次いで無核等級のポリプロピレンに切り替える。無核等級のポリプロピレンもやはり残留量(1ppm)の成核剤を含有し得る。この例は、残留量のHPN−68Lを有する無核等級のポリプロピレンおよび金属脂肪酸塩を含むクラスからの様々な酸スカベンジャーの影響をシミュレートする。
【0084】
[0073]少量のHPN−68L成核剤を有するポリプロピレン組成物を形成するために、以下の成分:IRGANOX(商標)1010を500ppmの量で、IRGAFOS(商標)168を1000ppmの量でおよびHPN−68L成核剤を1000ppmの量で、PRO−FAX(商標)6301 12MFR PPホモポリマーの反応器フレークに添加することにより、濃縮した成核剤混合物を最初に生成した。0.5kgのバッチサイズを利用して、これらの成分を4LのHENSCHEL(商標)ミキサー中で1分間高強度ブレンドし、濃縮したHPN−68L成核剤混合物を形成した。
【0085】
[0074]次に、PRO−FAX(商標)6301 12MFR PPホモポリマーの反応器フレークに、以下の成分:IRGANOX(商標)1010を500ppmの量で、IRGAFOS(商標)168を1000ppmの量でおよび濃縮した成核剤混合物を1000ppmの量で添加した。この一連の希釈により、配合物中のHPN−68L成核剤は1ppmになった。さらに、選別されるべき酸スカベンジャーも、市販の配合物でのその使用量と一致する濃度で添加した。0.5kgのバッチサイズを利用して、これらの成分を4LのHENSCHEL(商標)ミキサー中で1分間高強度ブレンドした。
【0086】
[0075]次いで、30:1のL/D比を有する25mm一軸スクリューを有し、MADDOCKS(商標)ミキサーを備えた、DELTAPLAST(商標)押出機(約6kg/時の典型的な出力)で、希釈した配合物を混和した。バレル温度プロファイルを、最大ゾーン設定の約230℃で設定した。溶融したポリマーを60メッシュのスクリーンパックから濾過し、次いで、ストランドダイから押出した。次いで、ストランドを水浴でクエンチし、乾燥し、ペレット化した。
【0087】
[0076]230℃の温度で13000psiの油圧をかけるCarver Pressを用いて、押出されたペレットを1.27mm厚のディスクに成形した。示差走査熱量測定用に試料をこのディスクから得、ピーク結晶化温度(Tc)を決定した。
【0088】
【表4-1】
【0089】
【表4-2】
【0090】
[0077]塩を残留量のHyperform HPN−68Lと共に使用したとき、ステアリン酸金属の価数とピーク結晶化温度との間には相関関係が存在しないようであった。実際に、低いTc値が、一価のカリウム塩(例51)、二価のマグネシウム、マンガンおよび亜鉛の塩(各々例52、54、57)、ならびに三価のアルミニウム塩(例59)で観察された。これらの先に記載した塩すべてで、ベースラインを約3.8℃の範囲内で上回るTc値になった。
【0091】
[0078]ステアリン酸カリウム(例31および51)では、HPN−68LまたはHPN−20Eのいずれかの存在下で低いTc反応となり、それは好ましい。12−ヒドロキシステアリン酸(例61〜64)に関しては、マグネシウムおよび亜鉛の塩では、ベースラインを約0.5℃の範囲内で上回るTc値になった。
【0092】
[0079]乳酸カルシウムおよびラクチレート(例65〜68)に関しては、ステアロイル乳酸カルシウム(Pationic930)を除いて、いずれも、残留量のHPN−68L成核剤の存在下で望ましい低いピーク結晶化温度にならなかった。HPN−20EまたはHPN−68Lのいずれかの存在下で低いピーク結晶化温度になった酸中和剤は、Ca塩だけである。
【0093】
[0080]残留量のHPN−68L対HPN−20Eを使用したとき、ステアリン酸カリウムを除いて、試験したステアリン酸塩はすべて、PP組成物のピーク結晶化温度に関して異なる反応を有するようである。
【0094】
例セット6
[0081]いくつかのポリプロピレン押出システムは、最初に成核剤(50ppm超の量)を有するポリプロピレンを押出し、次いで無核等級のポリプロピレンに切り替える。無核等級のポリプロピレンもやはり残留量(1ppm)の成核剤を含有し得る。この例は、残留量のHPN−20Eを有する無核等級のポリプロピレン、ならびに様々な無機添加剤および酸スカベンジャーの影響をシミュレートする。
【0095】
[0082]少量のHPN−20E成核剤を有するポリプロピレン組成物を形成するために、以下の成分:IRGANOX(商標)1010を500ppmの量で、IRGAFOS(商標)168を1000ppmの量でおよびHPN−20E成核剤を1000ppmの量で、PRO−FAX(商標)6301 12MFR PPホモポリマーの反応器フレークに添加することにより、濃縮した成核剤混合物を最初に形成した。0.5kgのバッチサイズを利用して、これらの成分を4LのHENSCHEL(商標)ミキサー中で1分間高強度ブレンドし、濃縮したHPN−20E成核剤混合物を形成した。
【0096】
[0083]次に、PRO−FAX(商標)6301 12MFR PPホモポリマーの反応器フレークに、以下の成分:IRGANOX(商標)1010を500ppmの量で、IRGAFOS(商標)168を1000ppmの量でおよび濃縮した成核剤混合物を1000ppmの量で添加した。この一連の希釈により、配合物中のHPN−20E成核剤は1ppmになった。さらに、選別されるべき無機添加剤および酸スカベンジャーをすべて1000ppmの濃度で添加した。0.5kgのバッチサイズを利用して、これらの成分を4LのHENSCHEL(商標)ミキサー中で1分間高強度ブレンドした。
【0097】
[0084]次いで、30:1のL/D比を有する25mm一軸スクリューを有し、MADDOCKS(商標)ミキサーを備えた、DELTAPLAST(商標)押出機(約6kg/時の典型的な出力)で、希釈した配合物を混和した。バレル温度プロファイルを、最大ゾーン設定の約230℃で設定した。溶融したポリマーを60メッシュのスクリーンパックから濾過し、次いで、ストランドダイから押出した。次いで、ストランドを水浴でクエンチし、乾燥し、ペレット化した。
【0098】
[0085]230℃の温度で13000psiの油圧をかけるCarver Pressを用いて、押出されたペレットを1.27mm厚のディスクに成形した。示差走査熱量測定用に試料をこのディスクから得、ピーク結晶化温度(Tc)を決定した。
【0099】
【表5】
【0100】
[0086]表5から分かるように、いくつかの無機添加剤も、残留量のHPN−20E成核剤の存在下でTcを低下させるのに有効である。より高い性能を示すもの(performer)の一部(すなわち、二酸化チタン、ケイ酸カルシウムおよびシリカ、各々例74、76および77)では、ポリプロピレンのベースライン結晶化温度を5.7〜6.8℃上回った。
【0101】
例セット7
[0087]いくつかのポリプロピレン押出システムは、最初に成核剤(50ppm超の量)を有するポリプロピレンを押出し、次いで無核等級のポリプロピレンに切り替える。無核等級のポリプロピレンもやはり残留量(1ppm)の成核剤を含有し得る。この例は、残留量のHPN−68Lを有する無核等級のポリプロピレン、ならびに様々な無機添加剤および酸スカベンジャーの影響をシミュレートする。
【0102】
[0088]少量のHPN−68L成核剤を有するポリプロピレン組成物を生成するために、以下の成分:IRGANOX(商標)1010を500ppmの量で、IRGAFOS(商標)168を1000ppmの量でおよびHPN−68L成核剤を1000ppmの量で、PRO−FAX(商標)6301 12MFR PPホモポリマーの反応器フレークに添加することにより、濃縮した成核剤混合物を最初に形成した。0.5kgのバッチサイズを利用して、これらの成分を4LのHENSCHEL(商標)ミキサー中で1分間高強度ブレンドし、濃縮したHPN−68L成核剤混合物を形成した。
【0103】
[0089]次に、PRO−FAX(商標)6301 12MFR PPホモポリマーの反応器フレークに、以下の成分:IRGANOX(商標)1010を500ppmの量で、IRGAFOS(商標)168を1000ppmの量でおよび濃縮した成核剤混合物を1000ppmの量で添加した。この一連の希釈により、配合物中のHPN−68L成核剤は1ppmになった。さらに、選別されるべき無機添加剤および酸スカベンジャーをすべて1000ppmの濃度で添加した。0.5kgのバッチサイズを利用して、これらの成分を4LのHENSCHEL(商標)ミキサー中で1分間高強度ブレンドした。
【0104】
[0090]次いで、30:1のL/D比を有する25mm一軸スクリューを有し、MADDOCKSミキサーを備えた、DELTAPLAST(商標)押出機(約6kg/時の典型的な出力)で、希釈した配合物を混和した。バレル温度プロファイルを、最大ゾーン設定の約230℃で設定した。溶融したポリマーを60メッシュのスクリーンパックから濾過し、次いで、ストランドダイから押出した。次いで、ストランドを水浴でクエンチし、乾燥し、ペレット化した。
【0105】
[0091]230℃の温度で13000psiの油圧をかけるCarver Pressを用いて、押出されたペレットを1.27mm厚のディスクに成形した。示差走査熱量測定用に試料をこのディスクから得、ピーク結晶化温度(Tc)を決定した。
【0106】
【表6】
【0107】
[0092]ケイ酸カルシウム(例86)および二酸化チタン(例84)では、残留量のHPN−68L成核剤の存在下で、ピーク結晶化値が大幅に低下した。これらの場合、いずれもポリプロピレンのベースライン結晶化温度を約2.7℃の範囲内で上回った。同様に、マグネシウムオキシスルフェート(例79)およびシリカ(例87)では、ピーク結晶化温度が抑制され、ポリプロピレンのベースライン結晶化温度を約4.7℃の範囲内で上回ることが判明した。
【0108】
例セット8
[0093]先の試験は、ステアリン酸カリウムにより、残留量のHPN−20EとHPN−68Lの両方の存在下で、好ましい低いピーク結晶化温度になることを示している。一方で、ステアリン酸カルシウムでは、残留量のHPN−20EとHPN−68Lの両方の存在下で、一貫して不必要に高いピーク結晶化温度になった。この試験は、炭素鎖長が、カリウムまたはカルシウム脂肪酸塩のいずれかの作用に影響を及ぼすかどうかを理解するために行われた。
【0109】
[0094]少量のHyperform HPN−68L成核剤を有するポリプロピレン組成物を生成するために、以下の成分:IRGANOX(商標)1010を500ppmの量で、IRGAFOS(商標)168を1000ppmの量でおよびHPN−68L成核剤を1000ppmの量で、PRO−FAX(商標)6301 12MFR PPホモポリマーの反応器フレークに添加することにより、濃縮した成核剤混合物を最初に形成した。0.5kgのバッチサイズを利用して、これらの成分を4LのHENSCHEL(商標)ミキサー中で1分間高強度ブレンドし、濃縮したHPN−68L成核剤混合物を形成した。
【0110】
[0095]次に、PRO−FAX(商標)6301 12MFR PPホモポリマーの反応器フレークに、以下の成分:IRGANOX(商標)1010を500ppmの量で、IRGAFOS(商標)168を1000ppmの量でおよび濃縮した成核剤混合物を500ppmまたは1000ppmのいずれかの量で添加した。さらに、選別されるべき酸スカベンジャーも、市販の配合物でのその使用量と一致する濃度で添加した。この一連の希釈により、配合物中のHPN−68L成核剤は0.5ppmまたは1ppmのいずれかになった。0.5kgのバッチサイズを利用して、これらの成分を4LのHENSCHEL(商標)ミキサー中で1分間高強度ブレンドした。
【0111】
[0096]次いで、30:1のL/D比を有する25mm一軸スクリューを有し、MADDOCKS(商標)ミキサーを備えた、DELTAPLAST(商標)押出機(約6kg/時の典型的な出力)で、希釈した配合物を混和した。バレル温度プロファイルを、最大ゾーン設定の約230℃で設定した。溶融したポリマーを60メッシュのスクリーンパックから濾過し、次いで、ストランドダイから押出した。次いで、ストランドを水浴でクエンチし、乾燥し、ペレット化した。
【0112】
[0097]230℃の温度で13000psiの油圧をかけるCarver Pressを用いて、押出されたペレットを1.27mm厚のディスクに成形した。示差走査熱量測定用に試料をこのディスクから得、ピーク結晶化温度(Tc)を決定した。
【0113】
【表7-1】
【0114】
【表7-2】
【0115】
[0098]カルシウム塩(例89〜98)の複合ピーク結晶化温度は、116.3℃+/−1.1℃であり、カリウム塩(例99〜104)の複合ピーク結晶化温度は、110.3℃+/−1.3℃であった。
【0116】
[0099]これらのデータは、炭素鎖長が、残留核形成を抑制する酸中和剤の能力に対してあまり顕著な影響を与えないことを示している。一方で、脂肪酸塩に結合する金属は、ポリプロピレン組成物の所望の低い結晶化温度をもたらす酸中和剤の能力に関して最も重要な因子であると思われる。
【0117】
例セット9
[00100]先の試験はすべて、ある種の酸中和剤により、1ppm以下の残留量の成核剤を含有するポリプロピレン系において、いかに所望の低いまたはベースライン結晶化温度にすることができるのかを例示している。この実験は、ステアリン酸カリウムが、10ppmから従来の使用量(usage loading)の500ppmおよび1000ppmまでの濃度の成核剤を有するPP系における核形成にいかに影響を与えるのかを評価する。ステアリン酸カリウムよりもステアリン酸カルシウムを含有する同様の有核系についても比較した。
【0118】
[00101]様々な量のHPN−68L成核剤を含有するポリプロピレン組成物を生成するために、以下の成分:IRGANOX(商標)1010を500ppmの量で、IRGAFOS(商標)168を1000ppmの量でおよびHPN−68L成核剤を1000ppmの量で、PRO−FAX(商標)6301 12MFR PPホモポリマーの反応器フレークに添加することにより、濃縮した成核剤混合物を最初に形成した。0.5kgのバッチサイズを利用して、これらの成分を4LのHENSCHEL(商標)ミキサー中で1分間高強度ブレンドし、濃縮したHPN−68L成核剤混合物を形成した。
【0119】
[00102]次に、PRO−FAX(商標)6301 12MFR PPホモポリマーの反応器フレークに、以下の成分:IRGANOX(商標)1010を500ppmの量で、IRGAFOS(商標)168を1000ppmの量でおよび濃縮した成核剤混合物を0.1%〜100%の範囲の量で添加した。さらに、選別されるべき酸スカベンジャーも、市販の配合物でのその使用量と一致する濃度で添加した。この一連の希釈により、配合物中のHPN−68L成核剤は1〜1000ppmの範囲の最終濃度になった。0.5kgのバッチサイズを利用して、これらの成分を4LのHENSCHEL(商標)ミキサー中で1分間高強度ブレンドした。
【0120】
[00103]次いで、30:1のL/D比を有する25mm一軸スクリューを有し、MADDOCKS(商標)ミキサーを備えた、DELTAPLAST(商標)押出機(約6kg/時の典型的な出力)で、希釈した配合物を混和した。バレル温度プロファイルを、最大ゾーン設定の約230℃で設定した。溶融したポリマーを60メッシュのスクリーンパックから濾過し、次いで、ストランドダイから押出した。次いで、ストランドを水浴でクエンチし、乾燥し、ペレット化した。
【0121】
[00104]230℃の温度で13000psiの油圧をかけるCarver Pressを用いて、押出されたペレットを1.27mm厚のディスクに成形した。示差走査熱量測定用に試料をこのディスクから得、ピーク結晶化温度(Tc)を決定した。
【0122】
【表8】
【0123】
[00105]先の表は、様々な成核剤の配合量でのステアリン酸カリウムおよびステアリン酸カルシウムのポリマーのTcに対する影響をやはり例示している。
【0124】
[00106]成核剤の量が少ないと、ステアリン酸カリウムでは、ベースラインポリマーのTc値に近いTc値になる。成核剤の量を増加すると、この抑制作用が打ち破られ始め、成核剤として有効に機能し得る。Tcは、ステアリン酸カルシウムでのTcと同じくらい高くなることはなく、これは、材料の供給または一掃を簡便にするため、製造において有用な方法となり得る。
【0125】
例セット10
[00107]先の試験は、残留量の成核剤との相互作用を理解するために、典型的な商業的配合量の約500ppmで脂肪酸塩を評価した。この実験は、所望の低い結晶化温度が、より高い配合量の酸スカベンジャーを使用することにより、強化され得るかどうかを決定することを試みる。
【0126】
[00108]少量の成核剤を有するポリプロピレン組成物を形成するために、以下の成分:IRGANOX(商標)1010を約500ppmの量で、IRGAFOS(商標)168を1000ppmの量でおよび成核剤(HPN−68LまたはHPN−20Eのいずれか)を1000ppmの量で、PRO−FAX(商標)6301 12MFR PPホモポリマーの反応器フレークに添加することにより、濃縮した成核剤混合物を最初に形成した。1kgのバッチサイズを利用して、これらの成分を10LのHENSCHEL(商標)ミキサー中で1分間高強度ブレンドし、濃縮した成核剤混合物を形成した。
【0127】
[00109]次に、PRO−FAX(商標)6301 12MFR PPホモポリマーの反応器フレークに、以下の成分:IRGANOX(商標)1010を500ppmの量で、IRGAFOS(商標)168を1000ppmの量でおよび濃縮した成核剤混合物を1000ppmの量で添加した。この一連の希釈により、配合物中の成核剤は1ppmになった。さらに、選別されるべき酸スカベンジャーも、市販の配合物でのその使用量と一致する濃度およびかなり高い配合量で添加した。0.5kgのバッチサイズを利用して、これらの成分を4LのHENSCHEL(商標)ミキサー中で1分間高強度ブレンドした。
【0128】
[00110]次いで、30:1のL/D比を有する25mm一軸スクリューを有し、MADDOCKS(商標)ミキサーを備えた、DELTAPLAST(商標)押出機(約6kg/時の典型的な出力)で、希釈した配合物を混和した。バレル温度プロファイルを、最大ゾーン設定の約230℃で設定した。溶融したポリマーを60メッシュのスクリーンパックから濾過し、次いで、ストランドダイから押出した。次いで、ストランドを水浴でクエンチし、乾燥し、ペレット化した。
【0129】
[00111]230℃の温度で13000psiの油圧をかけるCarver Pressを用いて、押出されたペレットを1.27mm厚のディスクに成形した。示差走査熱量測定用に試料をこのディスクから得、ピーク結晶化温度(Tc)を決定した。
【0130】
【表9-1】
【0131】
【表9-2】
【0132】
[00112]より高い配合量の酸スカベンジャーへの移行は、ステアリン酸マグネシウムを除いて、脂肪酸と、残留量のHPN−68LまたはHPN−20Eのいずれかの成核剤との相互作用に顕著な影響を与えないようであった。この場合(例122、123、132および133)、500ppmから2000ppmへの移行により、HPN−20E 1ppmおよびHPN−68L 1ppmの存在下でTcが各々2.3℃および4.3℃低下した。
【0133】
[00113]ステアリン酸マグネシウムは別として、一貫した上昇または下降傾向はなく、これは、より高い配合量の他の脂肪酸塩が、いかにポリプロピレン組成物の結晶化温度に影響を与えるのかで特定された。
【0134】
[00114]ここで引用した刊行物、特許出願および特許を含むすべての参考文献は、各参考文献が、個々および具体的に示され、参照により組み込まれているのと、およびその全体がここに記載されているのと同じ程度で、参照によりここに組み込まれる。
【0135】
[00115]本出願の主題を説明する文脈において(特に、以下の特許請求の範囲の文脈において)、「一つの(aおよびan)」および「その(the)」の用語および同様の指示語の使用は、ここに別段の指示がない限り、または文脈に明らかに矛盾しない限り、単数と複数の両方に対応すると解釈されるべきである。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」および「含有する(containing)」という用語は、別段の記載のない限り、制限のない用語(すなわち、「含むが、これだけに限定されない」を意味する)と解釈されるべきである。ここで値の範囲の記述は、ここで別段の指示がない限り、その範囲内に属する各個別の値を個々に言及するための略記法としての役割を果たすことが単に意図され、各個別の値は、ここで個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。ここで説明した方法はすべて、ここに別段の指示がない限り、または文脈に明らかに矛盾しない限り、任意の適当な順番で行うことができる。ここで提供される、あらゆるおよびすべての例、または例示的な言い回し(例えば、「例えば」)の使用は、本出願の主題を良好に示すことが単に意図され、別段の主張がない限り、主題の範囲に制限を設けるものではない。本明細書のいかなる言い回しも、特許請求されていないいかなる要素も、ここで説明した主題の実施に必須なものとして示すと解釈されるべきではない。
【0136】
[00116]特許請求された主題を実施するために本発明者らに公知の最良の形態を含む、本出願の主題の好ましい態様が、ここで説明されている。先の説明を一読すれば、これらの好ましい態様の変形形態が、当業者には明らかとなり得る。本発明者らは、熟練者がこのような変形形態を適宜使用することを予想しており、本発明者らは、ここで説明した主題が、ここで具体的に説明した以外の方法で実施されることを意図している。したがって、この開示は、準拠法で認められるように、添付の特許請求の範囲に列挙された主題の修正および等価物をすべて含む。さらに、それらのすべての可能な変形形態において、ここに別段の指示がない限り、または文脈に明らかに矛盾しない限り、上で説明した要素の任意の組み合わせが本開示に包含される。
以下に、本発明の実施態様を付記する。
1. a)第1の組成物を押出して第1の押出物を形成することであり、第1の組成物が、第1のポリプロピレン、成核剤および第1の酸スカベンジャーを含み、第1の組成物が、成核剤を少なくとも約50ppmの量で含み、成核剤が、リン酸エステル塩、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、ビス(4−tert−ブチル安息香酸)アルミニウムヒドロキシド、タルクおよび以下の式(I)または式(II)の構造に適合する化合物からなる群から選択される、第1の押出物を形成することと、
b)第2の組成物を押出して第2の押出物を形成することであり、第2の組成物が、第2のポリプロピレンおよび第2の酸スカベンジャーを含み、第2の押出物が、成核剤を約10ppm未満含有する、第2の押出物を形成することと
を順番に含む、ポリプロピレンを押出す方法であって、
(i)成核剤が、式(I)
【化a】
(式中、M1は、有機または無機カチオンであり、xは1〜2の整数であり、yは1または2であり、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9およびR10は、水素、C1〜C9アルキル、ヒドロキシ、C1〜C9アルコキシ、C1〜C9アルキレンオキシ、アミン、C1〜C9アルキルアミン、ハロゲンおよびフェニルからなる群から個々に選択され、ただし、このような基がアルキルであるとき、任意の2つのビシナルまたはジェミナルアルキル基は結合して、最大6個の炭素原子の炭素環を形成してもよく、式(I)のカルボキシル部分は、シス配置で存在する)
の構造に適合する場合、第2の酸スカベンジャーが脂肪酸の金属塩であり、この金属塩は、リチウム、ナトリウム、カリウムおよびマグネシウムからなる群から選択される金属のカチオンを含み、(ii)成核剤が、式(II)
【化b】
(式中、M11およびM12は同一もしくは異なるか、またはM11およびM12は結合して、単一部分を形成し、金属もしくは有機カチオンからなる群から独立に選択され、R20、R21、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28およびR29は、水素、C1〜C9アルキル、ヒドロキシル、C1〜C9アルコキシ、C1〜C9アルコキシ、C1〜C9アルキレンオキシ、アミンおよびC1〜C9アルキルアミン、ハロゲン、フェニル、アルキルフェニルならびにジェミナルまたはビシナルC1〜C9炭素環からなる群から個々に選択される)の構造に適合する場合、第2の酸スカベンジャーが、金属ステアロイル−2−ラクチレート、珪灰石(CaSiO3)、シリカおよびマグネシウムオキシスルフェート、ならびに脂肪酸の金属塩からなる群から選択され、この金属塩は、アルミニウム、マンガン、亜鉛、カリウムおよびマグネシウムからなる群から選択される金属のカチオンを含み、(iii)成核剤が、リン酸エステル塩、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、ビス(4−tert−ブチル安息香酸)アルミニウムヒドロキシドおよびタルクからなる群から選択される場合、第2の酸スカベンジャーが、脂肪酸の金属塩であり、この金属塩は、ナトリウム、アルミニウムおよびカリウムからなる群から選択される金属のカチオンを含む、
方法。
2. 成核剤が、式(I)の構造に適合する、1に記載の方法。
3. R1〜R10が水素であり、M1がカルシウムカチオンである、2に記載の方法。
4. 第2の酸スカベンジャーが、カリウムまたはナトリウムカチオンおよびC3〜C22脂肪酸アニオンを含む、2に記載の方法。
5. 第2の酸スカベンジャーが、ステアリン酸カリウムを含む、4に記載の方法。
6. 成核剤が、式(II)の構造に適合する、1に記載の方法。
7. R20〜R29が水素であり、M11およびM12がナトリウムカチオンである、6に記載の方法。
8. 第2の酸スカベンジャーが、カリウムまたはアルミニウムカチオンおよびC3〜C22脂肪酸アニオンを含む、6に記載の方法。
9. 第2の酸スカベンジャーが、ステアリン酸カリウムを含む、8に記載の方法。
10. 第2の酸スカベンジャーが、ステアリン酸アルミニウムを含む、8に記載の方法。
11. 第2の酸スカベンジャーが、ステアロイル乳酸カルシウムを含む、8に記載の方法。
12. 第2の酸スカベンジャーが、12−ヒドロキシステアリン酸亜鉛を含む、8に記載の方法。
13. 成核剤が、安息香酸ナトリウムであり、第1の酸スカベンジャーが、成核剤と同じ組成物を含む、1に記載の方法。
14. 追加の成核剤が、工程b中に添加されない、1に記載の方法。
15. 第2の押出物のTcが、第2のポリプロピレンのベースラインTcの約5℃以内である、1に記載の方法。
16. 第1の押出物のTcと第2の押出物のTcとの差異が約5℃超である、1に記載の方法。
図1