(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記位置検出部が、前記骨モデルにおける予め定められた特定部分である特徴点に先端部を宛がった状態の特徴点指示ロッドモデルを支持した状態のロッド支持部モデルが、前記骨モデルに取り付けられた状態の前記骨処置補助部材モデルに装着された第2支持部材モデルに取り付けられたときに、前記ロッド支持部モデルから長尺状に延びる形状とされた長尺部材モデルにおいて当該延びる方向に異なる位置に設けられた複数の目盛りのうち、前記第2支持部材モデルにより指し示される目盛りを、前記距離として検出するように、前記コンピューターを更に機能させる請求項3に記載の位置検出プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態に係る取付位置確認部材、骨切断補助キット、及び位置検出プログラムについて図面を参照して説明する。
【0011】
図1Aは本発明の一実施形態に係る骨切断補助キットに備えられる骨処置補助部材を示す斜視図である。
図1Bは骨処置補助部材の裏面の嵌合面側を示す斜視図である。
図2は、処置対象とされる骨を示す斜視図である。
図3は、処置対象とされる骨を切断して各骨片に分割した状態を示す斜視図である。
【0012】
骨切断補助キットは、骨処置補助部材1及び取付位置確認部材3(
図4)を備える。本実施形態では、骨処置補助部材1は、異常態様に変形した骨Bを予め定められた切断面で切断して分割するために用いられる骨処置補助部材である。但し、本発明に係る骨処置補助部材を骨処置補助部材に限定する趣旨ではなく、本発明に係る骨処置補助部材には、骨に対するドリリング又はKワイヤー刺入等を行う際に用いられる補助部材も含まれる。また、骨処置補助部材1により骨Bが切断分割されて各骨片BP1,BP2とされる。各骨片BP1,BP2は、術者により、いずれか又は両方が、正常な態様を示す目標矯正位置に移動又は/及び回転(以下、単に移動という)される。骨処置補助部材1は、後述する骨処置補助部材作成用プログラムにより作成されて出力される立体三次元モデルデータに基づいて、光造形などのラピッドプロトタイピング、又は3Dプリンター等により作成される。骨処置補助部材1は、例えば樹脂により形成される。
【0013】
骨処置補助部材1は、本体11と、嵌合面12と、切断用スリット131,132と、第1ガイド孔15とを有する。
【0014】
本体11は、処置対象となる骨の表面の形状に沿った形状に形成されている。本体11の側面部であって、処置対象となる骨Bに対向する面(
図1に示す本体11の裏側となる面)に嵌合面12が形成されている。嵌合面12は、骨Bの表面形状に合致する形状とされている。嵌合面12は、当該骨BをCT等により撮影して得た骨Bの立体三次元データに基づいて形成される。
【0015】
当該骨Bの立体三次元データを取得するデバイスとしては、対象物の三次元モデルを得ることができる限りどのようなデバイスを用いても可能である。例えば、CCDカメラ、光学カメラ、レントゲン撮影、CT、MRI(磁気共鳴像)などの手段を用いることができる。但し、これらに限定されない。
【0016】
切断用スリット131,132は、上記嵌合面が上記骨の表面に嵌合した状態とされて骨処置補助部材1が骨Bに取り付けられているときに、切断治具を予め定められた切断面に向けて案内するスリットである。切断用スリット131,132は、本体11の側面部(表面部)に形成される。なお、切断治具は、電気ノコギリ等である。上記切断面は、例えば平面とされ、骨Bの表面上における位置と、当該骨Bの表面に対する角度により特定される。この切断面は、処置対象となる骨Bの術前に、術者により予め設定される。切断用スリット131,132は、切断治具を電気ノコギリとした場合、その歯部分を挿入可能な形状とされる。切断用スリット131,132はそれぞれ、上記骨Bに対して上記位置及び角度で特定された切断面に、切断治具である電気ノコギリの歯を案内する。
【0017】
第1ガイド孔15は、上記嵌合面が上記骨の表面に嵌合した状態とされて骨処置補助部材1が骨Bに取り付けられているときに、骨Bに挿入するための第1ロッド(図示は後述)を、予め定められた突き刺し位置に案内する形状とされている。第1ロッドは、例えば、先端部を尖らせて骨に突き刺して挿入することが可能とされた金属製とされる。第1ロッドは、第1ガイド孔15と同径又は僅かに小さい径を有している。第1ガイド孔15は、第1ロッドを骨Bに突き刺す場合に、第1ロッドの通る道筋において延びる凸部151〜156を有している。
【0018】
この第1ロッドの突き刺し位置は、処置対象とされる骨Bを上記切断面で切断した各骨片BP1,BP2を、正常な態様での骨を構成する目標矯正位置まで移動させたときに、当該各骨片BP1,BP2に突き刺された第1ロッド同士が予め定められた位置関係(一例を後述の
図20に示す)となる位置に設定されている。すなわち、第1ガイド孔15は、嵌合面が上記骨の表面に嵌合した状態とされて骨処置補助部材1が骨Bに取り付けられているときに、当該骨に挿入する第1ロッドを、当該骨が上記切断面で切断されてなる各骨片を正常な態様での位置関係に矯正した後に、当該各骨片に突き刺された第1ロッド同士が上記予め定められた位置関係となる姿勢で案内する。第1ガイド孔15の凸部151〜156は、第1ロッドを当該姿勢で案内可能な方向に側面部11から突出して形成されている。
【0019】
本実施形態では、骨片BP1に3本の第1ロッドを突き刺し、骨片BP2に3本の第1ロッドを挿入するために、骨片BP1用に3つの第1ガイド孔15が本体11に形成されている。また、骨片BP2用に3つの第1ガイド孔15が本体11に形成されている。但し、各骨片BP1,BP2用に形成される第1ガイド孔15の数は特に限定されない。
【0020】
次に、
図4及び
図5を用いて、取付位置確認部材3を説明する。取付位置確認部材3は、第1ロッド31と、ロッド支持部32と、第2支持部材33とを備える。
【0021】
第1ロッド31は、骨Bの予め定められた特定部分である特徴点Vに先端部が宛がわれるロッドである。
【0022】
当該特徴点Vは、予め術者によって定められる骨Bの一部分である。術者は、術前に、骨Bにおいて第1ロッド31の先端を宛がう対象とする部分を、特徴点Vとして決定する。特徴点Vとしては、骨Bにおいて操作者にとって認識しやすい形状部分が選択される。特徴点Vとする箇所は、例えば上肢領域では茎状突起先端・上腕骨内上顆などが好適である。また、特徴点Vは、解剖学的名称として、尺骨・橈骨の場合は茎状突起(styloid process)、上腕骨の場合は内側上顆(medial epicondyle)といった人間誰もが有する骨の特徴的な形状のポイントのことである。当該特徴点Vは、患者個別に有する形状を示さない。骨において、形状的に特徴的で、かつ位置情報としてランドマークにし易い場所が当該特徴点Vとされる。
【0023】
当該特徴点Vは、第1ロッド31の先端が特徴点Vに到達して指し示していることをもって、骨処置補助部材1が、処置対象とされる骨Bに対して、計画通りの位置に配置されていることを術者が確認するために用いられる。
【0024】
ロッド支持部32は、ロッド支持部材321と、長尺部材322とを備えている。ロッド支持部材321には、内部を貫通する円筒状の中空325が形成されている。この中空325は、第1ロッド31と同径又は僅かに大きい径を有している。
【0025】
第1ロッド31は、中空325と同径又は僅かに小さい径を有している。中空325は、第1ロッド31が挿入された場合に、第1ロッド31が挿通可能となる形状に形成されている。ロッド支持部32は、第1ロッド31が中空325に挿入されて貫通された状態で、第1ロッド31の先端部を、ロッド支持部材321から露出させた状態で第1ロッド31を保持する。この状態で、第1ロッド31の当該露出した先端部を骨Bの上記特徴点Vに宛がうことが可能とされている。すなわち、ロッド支持部材321は、第1ロッド31をその先端部が骨Bの特徴点Vに向く姿勢で抜き差し可能に支持する。
【0026】
また、ロッド支持部材321の端部3211は、第1ロッド31の先端部を露出させ、骨Bの特徴点Vに対向して配置され、
図4に示すように先細りの形状とされている。端部3211についての当該先細りの形状により、ロッド支持部材321から露出した第1ロッド31の先端部を術者が識別し易くなっている。
【0027】
長尺部材322は、ロッド支持部材321から長尺状に延びる形状を有する。長尺部材322は、ロッド支持部材321に結合されており、例えば、ロッド支持部材321の長手方向に対して直交する方向に延びる。長尺部材322は、当該延びる方向に複数の目盛りMが設けられている。目盛りMとして、当該延びる方向においては、複数の各目盛りM1〜M5が一定間隔で設けられている。当該目盛りM1〜M5は、長尺部材322に、切り込み等により形成されている。なお、当該目盛りの数は特に限定されない。
【0028】
第2支持部材33は、ロッド支持部32の長尺部材322を、上記延びる方向に移動自在に支持する。第2支持部材33は、例えば直方体状の本体331と、ロッド支持部32の長尺部材322を受け入れて支持する支持部332とを備えている。直方体状の本体331は、支持部332と一体的に設けられている。本体331の幅寸法Wは、骨処置補助部材1の凸部151の外縁部と凸部153の外縁部との間の距離とされている。
【0029】
また、本体331の側面部3311には、凹部3312の開口が形成されている。凹部3312は、第1ガイド孔15の凸部152の直径と同寸法であって、凸部152の嵌入が可能な大きさの孔とされている。これにより、
図5に示すように、凹部3312に凸部152を嵌入させた状態で、凸部151及び凸部153の間に本体331を嵌め入れることが可能とされている。この状態では、凹部3312と凸部152との嵌入と、凸部151及び153に対する本体331の嵌入とにより、骨処置補助部材1の本体11に対して第2支持部材33が固定される。
【0030】
また、支持部332は、突出部3321と貫通孔3322を有する。支持部332は、本体331の外側面3313側に設けられている。突出部3321と貫通孔3322は上記幅Wの方向に延びる。本体331の内部には、貫通孔3322が上記幅Wの方向に延びて形成されている。この貫通孔3322の内部形状は、ロッド支持部32の長尺部材322の外形と同寸法であって、長尺部材322を上記幅Wの方向への移動が自在な状態で嵌入可能な大きさとされている。
【0031】
長尺部材322に設けられている目盛りM1〜M5は、上記延びる方向に直交する方向に延びて形成され、突出部3321の上縁部3321Aに並行に設けられている。長尺部材322が上記貫通孔3322に嵌入されて上記延びる方向に移動したとき、上縁部3321Aの位置が、目盛りM1〜M5のいずれかに一致させることが可能とされている。すなわち、支持部332の突出部3321における上縁部3321Aは、目盛りM1〜M5のいずれかを指し示す。
【0032】
術者は、術前に、骨Bにおける、ロッド支持部材321に支持された状態の第1ロッド31の先端部を宛がう部分として、上述した特徴点Vを決定する。骨処置補助部材1は、上記嵌合面12が骨Bの表面に合致した状態で骨Bに取り付けられる。取付位置確認部材3は、第2支持部材33が凹部3312と凸部152との嵌入と、凸部151及び153に対する本体331の嵌入とにより、このように骨Bに取り付けられた骨処置補助部材1の本体11に対して固定される。
【0033】
ロッド支持部32の長尺部材322は、上記のようにして骨処置補助部材1に固定された第2支持部材33の貫通孔3322に挿入されて第2支持部材33に支持された状態となる。そして、術者は、術時に、第1ロッド31の先端部が、ロッド支持部32に支持された状態で上記特徴点Vを指し示すように、支持部332に対する長尺部材322の位置を移動させ、長尺部材322が第2支持部材33に入り込む量を調整する。このように調整したときに、突出部3321の上縁部3321Aが、目盛りM1〜M5のいずれかを指し示すことが可能になる。
【0034】
本実施形態では、第1ロッドをそれぞれ突き刺した各骨片BP1,BP2を移動させ、一方の骨片に突き刺された第1ロッドと、他方の骨片に突き刺された第1ロッドとが予め定められた位置関係(詳細は後述)になったことを術者が目視で確認できたときに、これをもって、各骨片BP1,BP2同士が目標矯正位置にあると判断できるように構成されている。
【0035】
次に、骨処置補助部材1の製造に用いる骨処置補助部材作成用プログラムを説明する。骨処置補助部材1は、骨処置補助部材作成用プログラムにより作成されて出力される立体三次元モデルデータを用いて、光造形などのラピッドプロトタイピングで作成される。骨処置補助部材作成用プログラムは、情報処理装置にインストールされて用いられる。
【0036】
図6は、骨処置補助部材作成用プログラムがインストールされた情報処理装置の構成を示すブロック図である。
【0037】
情報処理装置10は、制御ユニット100と、ROM110と、RAM111と、メモリ113と、表示部114と、通信インターフェイス115と、入力部116とHDD117とを備える。これら各部は、互いにCPUバスによりデータ又は信号の送受信が可能とされている。
【0038】
制御ユニット100は、CPU等からなる。ROM110は、情報処理装置10の基本動作についての動作プログラムを記憶する。RAM111は、制御ユニット100の動作領域等として使用される。
【0039】
メモリ113は、上記撮影装置から骨処置補助部材1の作成用に送られてくる立体三次元モデルデータ等のデータを記憶するための記憶媒体である。
【0040】
HDD117は、上記骨処置補助部材作成用プログラムがインストールされる記憶領域である。
【0041】
制御ユニット100は、制御部101と、骨モデル作成部102と、第1ロッドモデル位置算出部103と、骨片モデル作成部104と、位置検出部106と、骨処置補助部材モデル作成部107と、作成用データ出力部108とを備える。
【0042】
なお、制御ユニット100は、上記HDD117にインストールされている骨処置補助部材作成用プログラムに従って動作することにより、制御部101と、骨モデル作成部102と、第1ロッドモデル位置算出部103と、骨片モデル作成部104と、位置検出部106と、骨処置補助部材モデル作成部107と、作成用データ出力部108として機能し、これら各部を備える。
【0043】
但し、制御部101と、骨モデル作成部102と、第1ロッドモデル位置算出部103と、骨片モデル作成部104と、位置検出部106と、骨処置補助部材モデル作成部107と、作成用データ出力部108とは、当該骨処置補助部材作成用プログラムに基づく動作によらず、それぞれハード回路により構成されるものとしてもよい。以下、特に触れない限り、各実施形態について同様である。
【0044】
制御部101は、情報処理装置10の全体的な動作制御を司る。例えば、制御部101は、表示部114の表示制御を行う。
【0045】
骨モデル作成部102は、処置対象とされる上記の骨Bを撮影するCT等の画像撮影装置から、通信インターフェイス115を介して、当該骨の立体三次元データを取得する。骨モデル作成部102は、当該取得した三次元データに基づいて、当該骨Bを表す三次元の骨モデルを作成する。当該骨モデルは、コンピューターグラフィックにより示される立体画像である。
【0046】
骨片モデル作成部104は、上記骨モデルに対して設定された矯正用の切断面で当該骨モデルを切断した各骨片モデルを作成する。例えば、制御部101が表示部114に、上記骨モデルを示すグラフィック画像と、当該骨モデルの長さ方向における軸に対して一定の角度を有し、骨モデルの長さ方向に並ぶ複数の切断面を示すグラフィック画像を表示させる。なお、当該一定の角度は、入力部116に入力される操作者からの指示に従って設定される。操作者は、当該表示されている複数の切断面を示すグラフィック画像の内、骨モデルに対して所望の位置にある切断面を示すグラフィック画像を、入力部116の操作により指定する。この指定が入力されると、骨片モデル作成部104は、当該指定されたグラフィック画像の示す切断面が表示されている座標位置の座標位置情報を取得する。操作者は、上記操作により、切断により作成される各骨片モデルが、矯正目的とする骨を示す目的骨モデルに近似する目標矯正位置まで移動可能となるように、骨モデルに対する切断面を設定する。各骨片モデルは、どのような角度又は位置での切断面により切断されるかに応じて形状が異なることになる。
【0047】
制御部101は、表示部114に、上記切断によって作成された各骨片モデル等の各モデルを表示させ、この状態で、入力部116に入力される操作者からの指示に従って、グラフィック上において、各骨片モデルの位置を変更して表示させる。これにより、操作者は、作成された骨片モデルを上記目標矯正位置まで移動可能となるかをシミュレートでき、上記切断面を最も好適な位置に設定することが可能とされている。
【0048】
第1ロッドモデル位置算出部103は、上記目標矯正位置にある各骨片モデルのそれぞれに、第1ロッドモデルを取り付けた状態にある各第1ロッドモデルの位置を取得し、この位置に基づいて、当該各骨片モデルが上述した骨モデル(矯正前)を構成する位置まで移動した場合における、対応する骨片モデルに対する各第1ロッドモデルの位置を算出する。例えば、第1ロッドモデルは、上記目標矯正位置にある各骨片モデルのそれぞれに複数の第1ロッドモデルが取り付けられる。但し、各骨片モデルのそれぞれに取り付けられる第1ロッドモデルは、単数であってもよい。また、各骨片モデルのそれぞれに複数の第1ロッドモデルが取り付けられる場合には、各骨片モデルに取り付けられる複数の第1ロッドモデルは平行に取り付けられてもよい。第1ロッドモデルとは、上記第1ロッドの形状を示すコンピューターグラフィックによる立体画像である。第1ロッドモデルを示す三次元データは、位置検出部106が保有している。
【0049】
骨処置補助部材モデル作成部107は、骨処置補助部材を示す基本の画像データと、上記作成された骨モデルと、上記設定された切断面の位置と、上記算出された第1ロッドモデルの位置とを用いて、骨処置補助部材モデルを生成する。この骨処置補助部材モデルは、上記骨処置補助部材1をグラフィック画像により示した三次元画像である。骨処置補助部材モデルは、上記骨処置補助部材1の本体11を示す本体モデルと、嵌合面を示す嵌合面モデルと、切断用スリット13を示す切断用スリットモデルと、上記第1ロッドモデルの位置に配置されて当該第1ロッドモデルを挿入するための第1ガイド孔を示す第1ガイド孔モデルと、上記算出された第1ロッドモデルの位置に配置されて当該第1ロッドモデルを挿入するためのガイド孔を示すガイド孔モデルとを有する。
【0050】
作成用データ出力部108は、骨処置補助部材モデル作成部107で生成された骨処置補助部材モデルを示す三次元データを、骨処置補助部材1の作成用三次元データとして、通信インターフェイス115を介して、USBメモリ、他の情報処理装置、又はNC工作機械等に出力する。当該作成用三次元データを用いて、骨処置補助部材や当該骨処置補助部材作成用の金型等の作成が可能になる。
【0051】
位置検出部106は、骨モデルにおける上記特徴点Vに先端部を宛がった状態の特徴点指示ロッドモデルを支持した状態のロッド支持部モデルが、骨モデルに取り付けられた状態の骨処置補助部材モデルに装着された第2支持部材モデルに取り付けられたときにおける、前記骨モデルにおける特徴点を示す箇所から、前記嵌合面を示す部分が矯正前の骨モデルの表面形状に合致する位置に取り付けられた骨処置補助部材モデルまでの距離を検出する。
【0052】
なお、本実施形態では、位置検出部106は、ロッド支持部モデルから長尺状に延びる形状とされた長尺部材モデルにおいて当該延びる方向に異なる位置に設けられた複数の目盛りのうち、第2支持部材モデルにおける上記突出部の上縁部に相当する部分により指し示される目盛りを、上記距離として検出するものとして説明する。
【0053】
表示部114は、LCD(Liquid Crystal Display)等からなり、制御部101による表示制御により、上述した画像の表示や、各種データの内容、情報処理装置10を操作するユーザに対する操作案内等が表示される。
【0054】
通信インターフェイス115は、例えばUSBインターフェイス等を有し、情報処理装置10に接続される外部メモリ、他の情報処理装置、NC工作機械等に、上記骨処置補助部材作成用データ及びブロック体作成用データを出力する。また、通信インターフェイス115は、CT等の撮影装置又はUSBメモリ等から、上記三次元データを取得するインターフェイスとして機能する。
【0055】
入力部116は、情報処理装置10に設けられたキーボードやマウスポインタ、表示部114の表示画面部分に設けられたタッチパネル機構等から構成され、操作者から各種の操作指示が入力される。
【0056】
次に、上記骨処置補助部材作成用プログラムがインストールされた情報処理装置10による、骨処置補助部材作成用データの作成方法を説明する。
図7は情報処理装置10による骨処置補助部材作成用データの作成処理を示すフローチャートである。
【0057】
最初に、矯正手術を受ける患者における処置対象とする骨B部分をCT、MRI等の撮影装置により撮影する。例えば、CTによる断層撮影の場合、撮影装置は、当該撮影により得られる断層画像上の位置情報(X方向及びY方向の位置情報とする)と、患者の背丈方向(Z方向とする)における各撮影位置の組からなる三次元データが得られる。また、当該患者の正常な骨部分(例えば、健側の骨部分、すなわち、上記処置対象とする骨を矯正する目的とする形状を有する骨部分)も当該撮影装置により撮影して、その三次元データを取得する。
【0058】
情報処理装置10においては、上記の骨処置補助部材作成用プログラムを起動し、制御ユニット100を上述した骨モデル作成部102から作成用データ出力部108までの各部として機能させる。操作者は、上記撮影装置で取得した上記処置対象とする骨B部分を撮影した三次元データと、正常な骨部分を撮影した三次元データとを、USBメモリを介して、又はUSB接続により、通信インターフェイス115から情報処理装置10に入力する。骨モデル作成部102は、通信インターフェイス115を介して、上記撮影装置から上記三次元データを取得する(S1)。
【0059】
骨モデル作成部102は、当該取得した処置対象とする骨Bの三次元データを用いて、当該骨Bを示す骨モデルBMを作成する(S2)。
【0060】
情報処理装置10の制御部101は、上記作成した骨モデルBMを表示部114に表示させる(S3)。このときの表示部114における表示画面の例を
図8に示す。制御部101は、入力部116に入力される操作者からの指示に従って、骨モデルBMの表示角度及び表示位置を異ならせて表示させる。
【0061】
そして、入力部116に入力される操作者からの指示に従って、制御部101は、表示部114に、上記第1ロッドモデルLM1、骨モデルBM、及び目的骨モデルTBMに加えて、
図9に示すように、更に切断面を示す上記複数の切断面画像CM1,CM2を表示させる(S4)。操作者による入力部116の操作により、制御部101が、骨モデルBMに対する所望の位置に、切断面画像CM1,CM2を表示させる。このように操作者により指定された位置に切断面画像CM1,CM2が表示されているときに、操作者による入力部116の操作で、操作者から位置情報取得指示が入力されると、骨モデル作成部102は、当該指定された切断面画像CM1,CM2が表示されている骨モデルBMに対する位置(
図9参照)を、切断面画像CM1,CM2のそれぞれの位置としてその座標位置情報を取得する(S5)。
【0062】
続いて、骨片モデル作成部104は、骨モデルBMを複数の切断面画像CMの示す位置で切断して分割した画像を作成し、当該作成した各々の画像をそれぞれ骨片モデルBPM1,BPM2として作成する(S6)。
【0063】
制御部101は、上記作成した各骨片モデルBPM1,BPM2を、
図10に例を示すように、骨モデルBMに代えて、表示部114に更に表示させる(S7)。なお、
図10では、上記切断面画像CM1,CM2で切断され、当該切断面画像CM1,CM2で挟まれている骨部分は切除された状態を制御部101が表示させる例を示している。
【0064】
続いて、制御部101は、入力部116に入力される操作者からの指示に従って、骨片モデルBPM1,BPM2の表示角度及び表示位置を異ならせて表示させる。操作者による入力部116の操作に応じて、制御部101は、
図11に例を示すように、各骨片モデルBPM1,BPM2が組み合わされてなる形状を、矯正の目標とする形状を示す目的骨モデルTBMを示す位置まで各骨片モデルBPM1,BPM2を移動させ(S8)、その状態を表示部114に表示させる。
【0065】
この時点で、操作者が位置情報取得指示を入力部116に入力すると、骨処置補助部材モデル作成部107は、この時点での各骨片モデルBPM1,BPM2が表示されているグラフィック上の座標位置を、各骨片モデルBPM1,BPM2を移動させる目標矯正位置として、各骨片モデルBPM1,BPM2についてその座標位置情報を取得する(S9)。但し、ここに示した目標矯正位置の取得方法は単なる一例であり、目標矯正位置の取得に他の方法を用いることも可能である。
【0066】
ここで、例えば、制御部101は、入力部116に入力される操作者からの指示に基づいて、表示部114に、第1ロッドモデルLM1を表示させる(ここでは、骨片モデルBPM1につき3本,BPM2につき3本を表示する例を示す)。制御部101は、操作者からの指示に従って、グラフィック上で、各第1ロッドモデルLM1の位置を変更して表示させる。操作者による入力部116の操作に基づいて、制御部101は、第1ロッドモデルLM1が各骨片モデルBPM1,BPM2に対して操作者所望の位置、例えば、各第1ロッドモデルLM1が、各骨片モデルBPM1,BPM2のそれぞれに突き刺された(挿入された)状態で表示する(S10)。なお、制御部101は、当該各骨片モデルに第1ロッドモデルが突き刺された状態を示す画像を、このまま表示させておく。例えば、
図12に示すように、複数の第1ロッドモデルLM1が各骨片モデルBPM1,BPM2のそれぞれに突き刺された状態で表示される。例えば、操作者は、入力部116を操作して、複数の第1ロッドモデルLM1が各骨片モデルBPM1,BPM2に対して、
図12に示すように、平行な状態で整列して突き刺された状態となるように第1ロッドモデルLM1を配置し、この状態を制御部101に表示させる。
【0067】
このように各第1ロッドモデルLM1が各骨片モデルBPM1,BPM2のそれぞれに突き刺された状態で表示されている時に、操作者が位置情報取得指示を入力すると、位置検出部106は、この時点での各第1ロッドモデルLM1が表示されているグラフィック上の座標位置を、目標矯正位置にある各骨片モデルBPM1,BPM2に対する各第1ロッドモデルLM1の位置として、各第1ロッドモデルLM1についてその座標位置情報を取得する(S11)。
【0068】
続いて、位置検出部106は、上記目標矯正位置にある各骨片モデルBPM1,BPM2に対する各第1ロッドモデルLM1の位置から、当該各骨片モデルBPM1,BPM2が上述した骨モデルBMを構成する位置まで移動した場合における、各骨片モデルBPM1,BPM2に対する各第1ロッドモデルLM1の位置を示す座標位置情報を算出する(S12)。
【0069】
そして、骨処置補助部材モデル作成部107は、骨処置補助部材モデルを作成する(S13)。S13においては、まず、骨処置補助部材モデル作成部107は、矯正前の骨モデルBMの三次元データを用いて、骨モデルBMの表面形状に沿う形状を有する嵌合面を示す嵌合面モデルを作成する(S131)。
【0070】
更に、骨処置補助部材モデル作成部107は、操作者からの指示に従って、上記嵌合面モデルを有する、骨処置補助部材1の本体11に対応する部分を示す本体部モデルを作成する(S132)。
【0071】
そして、骨処置補助部材モデル作成部107は、上記本体部モデルにおいて、上記S5で取得した切断面の位置情報が示す位置及び角度で、予め定められた厚み、幅及び長さを有する切断用スリットを示す切断用スリットモデルを生成する(S133)。この場合、骨処置補助部材モデル作成部107は、当該スリットモデルの外側に予め定められた厚さからなる支持部を作成する。
【0072】
さらに、骨処置補助部材モデル作成部107は、S12で取得された第1ロッドモデルの位置情報を用いて、この位置にある第1ロッドモデルを挿入するためのガイド孔を示すガイド孔モデルを、上記本体モデル上に作成する(S134)。例えば、骨処置補助部材モデル作成部107は、上記S12で取得した第1ロッドモデルの位置情報が示す本体モデルにおける位置に、第1ロッドモデルと同一の径又は若干大きい径と、予め定められた長さを示すガイド孔モデルを生成する。骨処置補助部材モデル作成部107は、ガイド孔モデルとして、上記径を有する孔部と、当該孔部の周囲に予め定められた厚みを有する支持部とを有するモデルを作成する。
【0073】
これにより、骨処置補助部材モデル作成部107は、
図1及び
図2に示したような、本体11に、嵌合面と、切断用スリット13と、第1ガイド孔15とを備える骨処置補助部材1を示す骨処置補助部材モデルMを作成する。
【0074】
ここで、制御部101は、入力部116に入力される操作者からの指示に従って、骨処置補助部材モデルMを、その嵌合面12を示す部分が矯正前の骨モデルBMの表面形状に合致する位置に配置して、骨処置補助部材モデルMが骨モデルBMに取り付けられた状態を表示させる(S14)。このときの表示部114における表示画面の例を
図13に示す。
【0075】
更に、入力部116に操作者から取付位置確認部材3の表示指示が入力されると、制御部101は、表示部114に、特徴点指示ロッド31、ロッド支持部32、及び第2支持部材33を示す特徴点指示ロッドモデル31M、ロッド支持部モデル32M、及び第2支持部材モデル33Mをそれぞれに表示させる(S15)。
【0076】
そして、入力部116に入力される操作者からの指示に従って、
図14に示すように、制御部101は、第2支持部材モデル33Mを、骨処置補助部材モデルMの本体11であって、凸部152を示す画像を表示する位置に、第2支持部材モデル33Mにおける凹部3312に相当する部分を示す画像の位置を合わせた位置に表示させる(S16)。
【0077】
更に、入力部116に入力される操作者からの指示に従って、制御部101は、特徴点指示ロッドモデル31M及びロッド支持部モデル32Mの位置を変更して表示させる。ここでは、入力部116に入力される操作者からの指示に従って、制御部101は、上記
図14に示すように、特徴点指示ロッドモデル31Mがロッド支持部モデル32M内に挿通され、特徴点指示ロッドモデル31Mの先端部がロッド支持部モデル32Mから露出した状態で表示部114に表示させる(S17)。
【0078】
この状態で更に、操作者から入力部116に入力される指示に従って、制御部101は、上記ロッド支持部モデル32Mに挿通された状態の特徴点指示ロッドモデル31Mの先端部が、骨モデルBMの上記特徴点Vに相当する部分を示す画像を指し示す位置に、ロッド支持部モデル32M及び特徴点指示ロッドモデル31Mを、長尺部材に相当する部分の画像の延びる方向に移動させて、表示部114に表示させる。
【0079】
この状態で操作者から位置情報取得指示が入力部116に入力されると、位置検出部106が、ロッド支持部モデル32Mに指示された状態で表示される特徴点指示ロッドモデル31Mの長尺部材に相当する部分の画像に設けられている複数の目盛りのうち、第2支持部材モデル33Mの上縁部3321Aに相当する部分の画像により指し示される目盛り(目盛りM1〜M5のいずれが指し示されているかの情報)を検出し、これを、骨モデルMにおける特徴点Vから
、嵌合面12を示す部分が矯正前の骨モデルBMの表面形状に合致する位置に取り付けられた骨処置補助部材モデルMまでの距離として取得する(S18)。なお、位置検出部106は、上記指し示されている目盛りを検出するのではなく、上記距離を示す情報を、そのまま検出するようにしてもよい(S18)。
【0080】
更には、操作者は、上記のように、制御部101により、上記ロッド支持部モデル32Mに挿通された状態の特徴点指示ロッドモデル31Mの先端部が特徴点Vに相当する部分を示す画像を指し示す位置に移動した状態が表示部114に表示されているときにおける、第2支持部材モデル33Mの上縁部3321Aに相当する部分の画像により指し示されている目盛りを、当該表示に基づいて目視で確認し、操作者が当該目盛りを記憶しておくようにしてもよい。
【0081】
続いて、操作者からの指示に基づいて、作成用データ出力部108は、S131〜S134により骨処置補助部材モデル作成部107で生成された骨処置補助部材モデルを示す作成用三次元データを、通信インターフェイス115を介して、USBメモリ、他の情報処理装置、又はNC工作機械等に出力する(S19)。
【0082】
この後、操作者は、上記出力された骨処置補助部材モデル及びブロック体モデルを示す各作成用三次元データを用いて、NC工作機械に、
図1に例を示したような骨処置補助部材1を形成させ、又は、骨処置補助部材1を光造形などのラピッドプロトタイピングで形成する。或いは、上記各三次元データに従って生成した金型を用いた樹脂成形等により骨処置補助部材1を形成してもよい。
【0083】
例えば、操作者は、各作成用三次元データに基づいて、光造形などの任意の成型方法により素材(例えば、金属、プラスチック、セラミックなど)を成型することによって骨処置補助部材1を作製することができる。光造形とは、液状の紫外線硬化樹脂(紫外線に反応し、硬化する液体)を光造形装置の紫外線レーザーを使用して硬化させ、積層することで3Dのデータとほぼ同一の精密な立体物を、短時間で作成する技術である。
【0084】
上記に示した骨処置補助部材の作成により、患者及びその骨に応じたカスタムメイドの骨処置補助部材1を簡単に作成することができ、各患者に応じた最適な骨矯正を行うことが可能になる。
【0085】
次に、上記のようにして形成した骨処置補助部材1を含む骨切断補助キット1Aを用いた処置対象骨の施術を説明する。
【0086】
(1)まず、患者の患部を切開し、処置対象とする骨の切断対象部分を露出させる。
【0087】
(2)続いて、
図15に示すように、骨処置補助部材1を、その嵌合面が、処置対象とする骨Bの表面において嵌合可能となる部分に嵌め合わせて密着させる。これにより、処置対象とする骨Bの表面において、骨処置補助部材1を上記切断面に合わせた狙いの位置に取り付けられることになる。
【0088】
そして、術者は、
図16に示すように、取付位置確認部材3の第2支持部材33を、凹部3312に骨処置補助部材1の本体11に設けられている凸部152を嵌め入れると共に、凸部151及び153の間に本体331を嵌め入れることにより、骨処置補助部材1に第2支持部材33を装着する。
【0089】
そして、術者は、特徴点指示ロッド31を、ロッド支持部32のロッド支持部材321に挿入して、特徴点指示ロッド31の先端部がロッド支持部32から露出した状態として、特徴点指示ロッド31をロッド支持部材321に支持させる。
【0090】
更に、術者は、
図17に示すように、特徴点指示ロッド31を支持した状態のロッド支持部材321であって、その長尺部材322をその先端部から、骨処置補助部材1に装着した第2支持部材33の貫通孔3322に挿入する。これにより、第2支持部材33に、特徴点指示ロッド31を支持した状態のロッド支持部32が保持される。
【0091】
このように、第2支持部材33に、特徴点指示ロッド31を保持した状態のロッド支持部32が保持された状態で、術者が、第2支持部材33に対するロッド支持部32の位置を長尺部材322の長さ方向に移動させることで、ロッド支持部32から露出した特徴点指示ロッド31の先端部が、骨Bの上記特徴点Vを指し示す位置まで、特徴点指示ロッド31及びロッド支持部32を移動させる。
【0092】
このように移動させた後、術者は、この時点で、第2支持部材33の上縁部3321Aにより指し示されている長尺部材322上の目盛りM1〜M5のいずれかが、上記S18において上記距離として取得された情報、すなわち、目盛りM1〜M5のいずれが指し示されているかの情報により示される目盛りと同一であるかを確認する。なお、上述したように、上記表示部114の表示に基づいて、上記操作者が目視で、第2支持部材モデル33Mの上縁部3321Aに相当する部分の画像により指し示されている目盛りを確認して記憶している場合は、術者は、当該記憶されている目盛りと、術時に指し示されている上記目盛りとが同一であるかを確認する。
【0093】
この時点で上縁部3321Aにより指し示されている長尺部材322上の目盛りと、上記S18で取得された位置情報が示す目盛りとが同一であることが術者により確認できれば、特徴点指示ロッド31の先端部が、骨Bの上記特徴点Vを、想定した正確な位置を指し示す状態を確保していることになる。
【0094】
一方、この時点で上縁部3321Aにより指し示されている長尺部材322上の目盛りと、上記S18で取得された情報が示す目盛りとが異なる場合は、術者は、この時点で上縁部3321Aにより指し示されている長尺部材322上の目盛りが、上記S19で取得された情報が示す目盛りと同一になる位置まで、骨Bに対する骨処置補助部材1の位置を移動させる。これにより、骨Bに対して骨処置補助部材1を目標の位置に正確に取り付けることが可能になる。この後、術者は、取付位置確認部材3を骨処置補助部材1から取り外す。
【0095】
(3)そして、術者は、
図18に示すように、上記のようにして骨Bに取り付けた骨処置補助部材1の第1ガイド孔15(凸部151〜156)に第1ロッド31を挿入し、処置対象骨Bに突き刺す。術者は、骨Bにおいて第1ロッド31が固定される程度の深さで骨処置補助部材1に第1ロッド31を挿し入れる。このとき、術者は、例えば、前もって、電気ドリルの先端部等を第1ガイド孔15(凸部151〜156)に挿し入れて、第1ガイド孔15(凸部151〜156)によって案内される角度及び位置で骨Bに、第1ロッド31突き刺し用の孔を形成しておく。本実施形態では、第1ロッド31は、処置対象骨Bを切断して得られる各骨片の一方に相当する位置に3本、他方の骨片に相当する位置に3本が挿し入れられる。
【0096】
(4)次に、術者は、切断用スリット131,132にそれぞれ電動のこぎり等の切断治具を挿し入れて動作させ、骨Bを切断分離する。このとき、第1ロッド31が切断に支障を生じる位置に存在するようであれば、この切断前に、第1ロッド31を骨B及び骨処置補助部材1から取り外し、(3)での突き刺しにより骨Bにできた孔に、当該切断後に再度第1ロッド31を骨Bに挿し差し込んでもよい。
【0097】
(5)上記切断後、
図19に示すように、第1ロッド31を残したままで骨Bから骨処置補助部材1を取り外す。本実施形態では、この時点で、処置対象骨Bは、各骨片BP1,BP2に分割され、各骨片BP1,BP2にはそれぞれ第1ロッド31が突き刺さっている状態となる。
【0098】
(6)次に、術者は目測で、予め定めておいた上記目標矯正位置まで上記各骨片BP1,BP2を移動させる(
図20)。この移動後、術者は、当該
図20に示すように、各骨片BP1,BP2に突き刺されている第1ロッド31が、S11で設定した位置関係(ここでは、各第1ロッド31が平行な状態で整列している)となっていることを目視で確認することにより、上記目標矯正位置まで上記各骨片BP1,BP2が移動したことを確認できる。
【0099】
そして、術者は、各第1ロッド31を各骨片BP1,BP2から取り外し、図略のブロック体を用い、この目標矯正位置にある各骨片BP1,BP2を互いに連結及び固定する。これにより、各骨片BP1,BP2同士の相対的な関係位置が、目標矯正位置の示す位置関係に補正される。
【0100】
各骨片BP1,BP2を接合する工程は、当該分野において周知の任意の手段を用いて実施することができる。骨片の接合は、プレート、スクリュー、ワイヤー、髄内釘などの内固定材料により行われ、骨欠損部である上記隙間には、リン酸カルシウムを補填したり、骨移植を行うことができる。例えば、補填は、リン酸カルシウム(例えば、ハイドロキシアパタイト)、βTCP、リン酸カルシウムペーストのような生体適合性の材料を用いて行うことができる。あるいは、骨欠損部は、骨移植により補填され得る。
【0101】
各骨片BP1,BP2を接合した後は、その状態を長期間保持することが好ましい。矯正した状態が保持され、矯正効果が確実なものとなるからである。
【0102】
本実施形態によれば、骨処置補助部材1を用いることにより、この種の矯正骨切手術において、予めコンピュータシミュレートにより算出された適切な切断面に沿って骨を切断でき、さらに切断後の骨片をコンピュータシミュレートにより設定した適切な目的矯正位置に移動させることが容易にできる。従って、従来のように医師の経験、熟練性や技術に頼ることなく、確実かつ容易な矯正骨切手術が可能となる。
【0103】
また、本実施形態によれば、術時に、骨処置補助部材1が、処置対象とする骨Bにおける目標位置に取り付けられているか否かを確認するためだけの目的でロッドを骨Bの特徴点Vに突き刺さす必要がないので、当該骨に余計な負荷を与えることがなく、また、骨処置補助部材1が骨Bの目標位置に取り付けられているかを確認するために、ロッドを特徴点に突き刺すという面倒な作業が必要とされることもない。さらには、上記実施形態によれば、第2支持部材33の上縁部3321Aにより指し示す長尺部材322上の目盛りに基づいて、処置対象とする骨Bにおける目標位置に対して、骨処置補助部材1が正確に取り付けられているか、或いは、どの程度ずれているのかを、術者が客観的に把握することが可能である。
【0104】
従って本実施形態によれば、処置対象とする骨において骨処置補助部材が目標位置にどの程度正確に取り付けられているかを、当該骨に与える影響を低減しつつ、小さな作業負荷で把握可能である。
【0105】
また、本発明は上記実施の形態の構成に限られず種々の変形が可能である。
【0106】
なお、
図1乃至
図20を用いて上記各実施形態に示した構成及び処理は、本発明の一実施形態に過ぎず、本発明の構成及び処理はこれに限定されるものではない。
【0107】
本実施形態において処置の対象とする骨は、四肢のものであることが通常であるが、それに限定されず、本発明では、任意の骨を対象とすることができる。人体であれば、人体内に存在する200個程度の骨すべてが対象であり、例えば、長骨(long bone;例えば、四肢)、短骨(short bone)、扁平骨(flat bone;胸骨、肋骨、肩甲骨、腸骨など)、種子骨(sesamoid bone;膝蓋骨)、不規則骨(irregular bone;顔面頭蓋、椎骨)などが挙げられるがそれらに限定されない。長骨(例えば、四肢)の矯正が本発明の矯正において適切である。本発明の治療対象は、代表的に変形治癒した骨である。
【0108】
なお、骨処置補助部材作成用プログラムは、任意の形態でユーザに提供され得る。例えば、そのプログラムを記録した記録媒体を配布する形態でそのプログラムをユーザに提供してもよいし、ネットワークを介してサーバから端末装置にそのプログラムをダウンロードする形態でそのプログラムをユーザに提供してもよい。骨処置補助部材作成用プログラムの提供は、有償であるか無償であるかを問わない。そのプログラムを記録する記録媒体としては、フレキシブルディスク、MOディスク、DVDなどの任意の記録媒体が使用され得る。ネットワークとしては、インターネットなどの任意のネットワークが使用され得る。
【0109】
本明細書において「骨」とは、脊椎動物の支持器官であって、内骨格の個々の構成要素をいう。脊椎動物の骨は、円口類及び軟骨魚類を除いて主に骨組織からなる。本明細書では、「骨」には、軟骨が含まれる。本明細書において、脊椎動物の骨格の大部分を形づくる硬い結合組織を特に区別するときは、「硬骨」と呼ぶ。なお、本明細書では、骨が例示されているが、骨以外の他の身体の一部であっても同様に処置を設計し、実施することができることが理解される。
【0110】
本明細書において骨の「処置」とは、骨に対して物理的に作用を与えることをいい、例えば、回転、切除、切断、移植片の挿入、延長、固定などをいうがそれらに限定されない。
【0111】
本明細書において「患者」とは、被験体であり、本実施形態で示した処置が適用される生物をいう。患者または被験体は、好ましくは、ヒトであり得る。
【0112】
本明細書において、骨の「切断」とは、骨を2以上の部分に分けるような処置を行うことをいう。代表的には、骨の切断は、骨切デバイス(例えば、ボーンソーなど)を用いて行われる。本明細書において、骨の切断が行われる部分は、「骨切り部」とも称される。
【0113】
本明細書において、骨(骨片)の「固定」とは、ある骨の処置を行った後に、その処置の状態を実質的に保持させる行為をいう。骨の固定は、一般的に対象となる骨のみで行われ得る。
処置対象とする骨において骨処置補助部材が目標位置にどの程度正確に取り付けられているかを、当該骨に与える影響を低減しつつ、小さな作業負荷で把握可能にする。骨切断補助キット1Aは骨処置補助部材1及び取付位置確認部材3を有する。取付位置確認部材3は、骨の特徴点に先端部が宛がわれる特徴点指示ロッド31と、特徴点指示ロッド31をその先端部が骨の特徴点を指し示す姿勢で抜き差し可能に支持するロッド支持部32と、ロッド支持部32を移動自在に支持し、ロッド支持部32の目盛りのいずれかを指し示す第2支持部材33とを備える。骨処置補助部材1は、切断用スリット131,132と、第1ロッドを予め定められた位置関係となる姿勢で案内する第1ガイド孔15(凸部151〜156)とを備える。取付位置確認部材3の第2支持部材33は、骨処置補助部材1の凸部152に取り付けられる。