(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
生体組織のヘモグロビン吸光特性において吸収係数の極大値から極小値までの観察対象波長帯域に含まれる第1狭帯域光、及び前記第1狭帯域光より吸収係数が低く前記生体組織による散乱係数が低い第2狭帯域光を被検体に照射する光源部と、
前記第1狭帯域光及び前記第2狭帯域光の前記被検体からの戻り光を撮像して画像信号を生成する撮像部と、
前記撮像部が撮像を行うフレーム毎に前記画像信号においてヘモグロビンに対する光学濃度の違いに基づいて前記生体組織の出血点に対応する第1部分及び前記出血点以外に対応する第2部分の色を特定する色特定部と、
前記色特定部により特定された前記第1部分の色と前記第2部分の色とに基づき、前記第1部分の色と前記第2部分の色との色差を所定の範囲内に維持しながら、前記第1部分及び前記第2部分の色をそれぞれ補正する色補正部と、
を備えることを特徴とする内視鏡システム。
前記色空間は、Mg(マゼンタ)、B(ブルー)、BCy(ブルーシアン)、Cy(シアン)、G(グリーン)、Ye(イエロー)、RYe(レッドイエロー)、R(レッド)、及びRMg(レッドマゼンタ)の色相毎に設定される9本の基準軸によって定義される色空間であり、
前記色補正部は、前記色空間上におけるRYeを含みGからMgまでの領域に対応する色を前記色空間上におけるYeに近づけるように補正することを特徴とする請求項4に記載の内視鏡システム。
前記色補正部は、前記第1部分の前記第2部分に対する色相の差と、前記第1部分の前記第2部分に対する彩度の差とを所定の範囲内に維持しながら、前記第1部分及び前記第2部分の色をそれぞれ補正することを特徴とする請求項1に記載の内視鏡システム。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、図面を参照して本発明に係る画像処理装置、画像処理装置の作動方法、及び画像処理装置の作動プログラムの実施の形態を説明する。なお、これらの実施の形態により本発明が限定されるものではない。以下の実施の形態においては、画像処理装置を備えた内視鏡システムを例示して説明するが、本発明は、画像処理装置を備えた撮像システム一般に適用することができる。
【0020】
また、図面の記載において、同一又は対応する要素には適宜同一の符号を付している。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実と異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0021】
(実施の形態1)
〔内視鏡システムの構成〕
図1は、本発明の実施の形態1に係る画像処理装置を備える内視鏡システムの概略構成を示す図である。
図2は、本発明の実施の形態1に係る画像処理装置を備える内視鏡システムの要部の機能構成を示すブロック図である。
【0022】
図1及び
図2に示す内視鏡システム1は、被検体の体腔内に先端部を挿入することによって被検体の画像信号を撮像する撮像部としての内視鏡2(内視鏡スコープ)と、内視鏡2の先端から出射する照明光を発生する光源部としての光源装置3と、内視鏡2が撮像した画像信号に所定の画像処理を施すとともに、内視鏡システム1全体の動作を統括的に制御する画像処理装置としての処理装置4と、処理装置4が画像処理を施した画像信号に対応する観察画像(体内画像)を表示する表示装置5と、を備える。なお、本実施の形態では、内視鏡2を軟性内視鏡を例に説明するが、3D内視鏡、硬性内視鏡及び経鼻内視鏡のいずれであってもよい。
【0023】
〔内視鏡の構成〕
まず、内視鏡2の構成について説明する。
内視鏡2は、可撓性を有する細長形状をなす挿入部21と、挿入部21の基端側に接続され、各種の操作信号の入力を受け付ける操作部22と、操作部22から挿入部21が延びる方向と異なる方向に延び、光源装置3及び処理装置4に接続する各種ケーブルを内蔵するユニバーサルコード23と、を備える。
【0024】
挿入部21は、光を受光して光電変換を行うことにより電気信号(画像信号)を生成する画素が2次元状に配置されてなる撮像素子244を内蔵した先端部24と、複数の湾曲駒によって構成された湾曲自在な湾曲部25と、湾曲部25の基端側に接続され、可撓性を有する長尺状の可撓管部26と、を有する。
【0025】
先端部24は、ライトガイド241と、照明レンズ242と、光学系243と、撮像素子244と、アナログフロントエンド部245(以下、「AFE部245」という)と、送信部246と、タイミングジェネレータ部247(以下、「TG部247」という)と、撮像制御部248と、を有する。
【0026】
ライトガイド241は、グラスファイバ等を用いて構成され、光源装置3が発光した光の導光路をなす。照明レンズ242は、ライトガイド241の先端に設けられ、ライトガイド241が導光した光を被写体に向けて発散する。
【0027】
光学系243は、1又は複数のレンズ及びプリズム等を用いて構成され、画角を変化させる光学ズーム機能及び焦点を変化させるフォーカス機能を有する。
【0028】
撮像素子244は、光学系243から光を光電変換して電気信号を画像信号として生成する。撮像素子244は、CCD(Charge Coupled Device)又はCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像センサを用いて構成される。撮像素子244は、光学系243が被写体像を結像する結像位置に設けられる。撮像素子244は、撮像制御部248の制御のもと、TG部247から入力される信号に従って画像信号を生成する。
【0029】
AFE部245は、撮像素子244から入力された画像信号に含まれるノイズ成分を低減するとともに、画像信号の増幅率を調整して一定の出力レベルを維持するCDS(Correlated Double Sampling)処理及び画像信号をA/D変換するA/D変換処理等を行って送信部246へ出力する。
【0030】
送信部246は、AFE部245から入力されたデジタルの画像信号を処理装置4へ送信する。送信部246は、例えばパラレル信号の画像信号をシリアル信号の画像信号に変換するパラレル/シリアル変換処理、又は電気信号の画像信号を光信号の画像信号に変換するE/O変換処理を行って処理装置4へ送信する。
【0031】
TG部247は、撮像素子244及び撮像制御部248それぞれを駆動するための各種信号処理のパルスを発生する。TG部247は、パルス信号を撮像素子244及び撮像制御部248へ出力する。
【0032】
撮像制御部248は、撮像素子244の撮像を制御する。撮像制御部248は、CPU(Central Processing Unit)や各種プログラムを記録するレジスタ等を用いて構成される。
【0033】
操作部22は、湾曲部25を上下方向及び左右方向に湾曲させる湾曲ノブ221と、被検体の体腔内に生体鉗子、電気メス及び検査プローブ等の処置具を挿入する処置具挿入部222と、処理装置4、光源装置3に加えて、送気手段、送水手段、画面表示制御等の周辺機器の操作指示信号を入力する操作入力部である複数のスイッチ223と、を有する。処置具挿入部222から挿入される処置具は、先端部24の処置具チャンネル(図示せず)を経由して開口部(図示せず)から表出する。
【0034】
ユニバーサルコード23は、ライトガイド241と、1又は複数の信号線をまとめた集合ケーブル249と、を少なくとも内蔵している。集合ケーブル249は、後述する処理装置4から出力された同期信号を伝送するための信号線と、画像信号を伝送するための信号線と、を少なくとも含む。
【0035】
〔光源装置の構成〕
次に、光源装置3の構成について説明する。
光源装置3は、照明部31と、照明制御部32と、を備える。
【0036】
照明部31は、照明制御部32の制御のもと、被写体(被検体)に対して、波長帯域が互いに異なる複数の照明光を順次切り替えて出射する。照明部31は、光源部311と、光源ドライバ312と、光学フィルタ313と、駆動部314と、駆動ドライバ315と、を有する。
【0037】
光源部311は、白色LED及び1又は複数のレンズ等を用いて構成され、光源ドライバ312の制御のもと、白色光を光学フィルタ313へ出射する。光源部311が発生させた白色光は、光学フィルタ313及びライトガイド241を経由して先端部24の先端から被写体に向けて出射される。なお、光源部311を赤色LED、緑色LED及び青色LEDで構成し、光源ドライバ312が各LEDに対して電流を供給することによって赤色光、緑色光又は青色光を順次出射させるものであってもよい。また、白色LEDや、赤色LED、緑色LED及び青色LEDから同時に光を出射させるものや、キセノンランプなどの放電灯などにより白色光を被検体に照射して画像を取得するものであってもよい。
【0038】
光源ドライバ312は、照明制御部32の制御のもと、光源部311に対して電流を供給することにより、光源部311に白色光を出射させる。
【0039】
光学フィルタ313は、所定の波長帯域の光のみを透過する複数のフィルタを用いて構成される。光学フィルタ313は、駆動部314の制御のもと、所定のフィルタが光源部311によって出射される白色光の光路L上に挿脱可能に配置される。光学フィルタ313は、光源部311から出射される白色光を所定の波長帯域に制限する透過特性を有する。光学フィルタ313は、駆動部314によって、光源部311によって出射される白色光の光路L上に挿抜可能に配置される。
【0040】
フィルタ313aは、赤色光(R)、緑色光(G)及び青色光(B)それぞれの波長帯域を有する光(例えば、赤:波長600nm〜700nm、緑:波長500nm〜600nm、青:波長400nm〜500nm)を順次透過させる。フィルタ313aは、内視鏡システム1が白色光観察(WLI)を行う場合、駆動部314によって、白色光の光路L上に配置されて回転されることによって、赤、緑及び青の波長帯域により、光源部311が出射する白色光(W照明)は、狭帯域化した赤色光(R照明)、緑色光(G照明)及び青色光(B照明)のいずれかの光を内視鏡2に順次出射(面順次方式)することができる。
【0041】
フィルタ313bは、青色の狭帯域の光(例えば波長390nm〜445nm)及び緑色の狭帯域の光(例えば波長530nm〜550nm)それぞれを透過する。具体的には、フィルタ313bは、内視鏡システム1が特殊光観察として狭帯域光観察(NBI:Narrow Band Imaging)を行う場合、駆動部314によって、白色光の光路L上に配置される。
【0042】
フィルタ313cは、生体組織のヘモグロビン吸光特性において吸収係数の極大値から極小値までの観察対象波長帯域に含まれる第1狭帯域光(例えば波長600nm)と、観察対象波長帯域に含まれ第1狭帯域光より吸収係数が低く生体組織による散乱係数が低い第2狭帯域光(例えば波長630nm)との2つの赤色の狭帯域の光それぞれを透過する。すなわち、フィルタ313cを通過した光は、狭帯域の分光特性を有する。フィルタ313cは、内視鏡システム1が特殊観察光として狭帯域光観察(DRI:Dual Red Imaging)を行う場合、駆動部314によって、白色光の光路L上に配置される。狭帯域光観察(DRI)では、ヘモグロビンに対する光学濃度が大きい出血点や血管等を強調することができる。
【0043】
なお、光学フィルタ313に、内視鏡システム1が特殊光観察として蛍光観察(AFI:Auto Fluorescence Imaging)を行う場合、光源部311から出射される白色光に対して、コラーゲン等の蛍光物質からの自家蛍光を観察するための励起光(例えば波長390nm〜470nm)及び血液中のヘモグロビンに吸収される波長(例えば波長540nm〜560nm)の光それぞれを透過するフィルタ、及び内視鏡システム1が特殊光観察として赤外光観察(IRI:Infra Red Imaging)を行う場合、2つの赤外光(例えば波長790nm〜820nm及び波長905nm〜970nm)それぞれを透過するフィルタを設けてもよい。
【0044】
駆動部314は、ステッピングモータやDCモータ等を用いて構成され、駆動ドライバ315の制御のもと、光学フィルタ313を構成する各フィルタを白色光の光路L上に配置する。
【0045】
駆動ドライバ315は、照明制御部32の制御のもと、駆動部314に所定の電流を供給する。
【0046】
照明制御部32は、処理装置4から入力される指示信号に基づいて、所定の周期で光源部311に白色光を出射させる。
【0047】
〔処理装置の構成〕
次に、処理装置4の構成について説明する。
処理装置4は、受信部41と、画像処理部42と、明るさ検出部43と、調光部44と、入力部45と、記録部46と、同期信号生成部47と、制御部48と、を備える。
【0048】
受信部41は、送信部246から送信された画像信号を受信して画像処理部42へ出力する。受信部41は、送信部246から送信された画像信号がパラレル信号であった場合、シリアル信号に変換するパラレル/シリアル変換処理を行って画像信号を画像処理部42へ出力し、送信部246から送信された画像信号が光信号であった場合、電気信号に変換するO/E変換処理を行って画像信号を画像処理部42へ出力する。
【0049】
画像処理部42は、FPGA等を用いて実現される。画像処理部42は、制御部48の制御のもと、受信部41等を介して入力された撮像素子244により撮像された画像信号に画像処理を施し、表示装置5が表示するための体内画像を生成して表示装置5へ出力する。画像処理部42は、画像信号に対して、所定の画像処理を施して体内画像を生成する。ここで、画像処理としては、同時化処理、オプティカルブラック低減処理、ホワイトバランス調整処理、カラーマトリクス演算処理、ガンマ補正処理、色再現処理、エッジ強調処理及びフォーマット変換処理等である。画像処理部42は、色特定部421と、色補正部422と、を有する。
【0050】
色特定部421は、画像信号の少なくとも第1部分及び第2部分の色調を特定する。
図3は、内視鏡画像に設定される第1部分及び第2部分を表す図である。
図3に示すように、内視鏡画像I(画像信号)内に第1部分及び第2部分が設定される。第1部分及び第2部分は、生体組織のヘモグロビンに対する光学濃度が、それぞれ光学濃度D11、光学濃度D12である部分である。第1部分の光学濃度D11は、第2部分の光学濃度D12より大きい。第2部分より光学濃度が大きい第1部分は、例えば生体組織の出血点に対応し、第2部分は、出血点以外の部分に対応する。第1部分及び第2部分は、内視鏡画像Iを観察したユーザにより手動で設定されてもよいし、所定の画像処理やセンサにより検出した値等を用いて所定の色の画素を含む領域に自動で設定されてもよい。また、第1部分及び第2部分は、観察開始時に設定される構成であってもよいが、撮像素子244が撮像を行う毎(フレーム毎)に設定される構成であってもよい。
【0051】
色特定部421は、第1部分及び第2部分の色を、それぞれ色空間上の点に対応させることにより特定する。
図4は、色相毎に設定される9本の基準軸によって定義される色空間を表す図である。
図4に示すように、色空間は、例えば、Mg(マゼンタ)、B(ブルー)、BCy(ブルーシアン)、Cy(シアン)、G(グリーン)、Ye(イエロー)、RYe(レッドイエロー)、R(レッド)、及びRMg(レッドマゼンタ)の色相毎に設定される9本の基準軸によって定義される色空間である。そして、この色空間において、色は、基準軸に対する角度で表される色相と、中心からの距離で表される彩度とによって特定される。
図5は、色空間における第1部分及び第2部分の補正前後の色をそれぞれ表す図である。
図5に示すように、色特定部421は、第1部分及び第2部分の色を、それぞれ色空間上の点C11及び点C12として特定する。なお、第1部分及び第2部分の色は、第1部分又は第2部分に含まれる画素の色の平均値であるが、第1部分又は第2部分に含まれる画素の色の最頻値や中間値、最大値、最小値等の統計値であってもよい。
【0052】
色補正部422は、色特定部421により特定された第1部分の色と第2部分の色とに基づき、第1部分の色と第2部分の色との色差を所定の範囲内に維持しながら、第1部分及び第2部分の色をそれぞれ補正する。具体的には、色補正部422は、カラーマトリクス演算処理と9軸色域調整処理とを行う。
【0053】
まず、撮像素子244により撮像された画像信号(内視鏡画像I)は、R信号、G信号、B信号のカラーの色信号である。色補正部422は、入力信号(R
in、G
in、B
in)にマトリクス係数Mat[0][0]〜[2][2]を掛けることにより、以下の式(1)に従い出力信号(R
out、G
out、B
out)を算出する。
【0054】
【数1】
さらに、色補正部422は、R信号、G信号、B信号の色信号である出力信号を、Y信号、Cr信号、Cb信号に変換する。そして、Cr信号とCb信号との大小関係を比較することにより、9個の色相領域(
図4のA1〜A9)のいずれに位置するかが判断される。
【0055】
9個の色相領域のそれぞれに対して色補正処理を行うために、記録部46には、9個の飽和度(彩度)補正係数、KR
sat、KG
sat、KB
sat、KY
esat、KC
ysat、KM
gsat、KRY
esat、KRM
gsat、KBC
ysat、及び、9個の色相補正係数、KR
hue、KG
hue、KB
hue、KY
ehue、KC
yhue、KM
ghue、KRY
ehue、KRM
ghue、KBC
yhueからなる処理条件が予め記憶されている。ここで、補正係数を示す記号「K」の後の添字は、色相の略号であり、RMgはRとMgとの間の中間色を、RYeはRとYeとの間の中間色を、BCyはBとCyとの間の中間色を示している。
【0056】
制御部48は、処理条件の設定値と、Cr信号とCb信号との大小関係から、内視鏡画像Iの画素の色信号が位置する色相領域にかかる処理条件である4個の補正係数、K
sat1、K
sat2、K
hue1、K
hue2を、色補正部422に出力する。一方、色補正部422は、内視鏡画像Iの第1部分及び第2部分の色に対応する点が位置する色相領域を挾む色軸方向のベクトル量である、d
p、d
cを算出する。色補正部422は、制御部48から受信した処理条件と算出したベクトル量とから、以下の式(2)、(3)に従い補正係数を算出する。
【0057】
【数2】
色補正部422は、固定補正係数である、Cr
−a1、Cb
−a1、Cr
−a2、Cb
−a2と、算出補正係数、p
sat、p
hue、c
sat、c
hue、をもとに、以下の式(4)〜(7)により内視鏡画像Iの色補正処理を行う。
【0059】
以上説明した補正が色補正部422によって施されると、
図5に示すように、第1部分の色に対応する点が点C11から点C13に補正され、第2部分の色に対応する点が点C12から点C14に補正される。このとき、色補正部422により、第1部分と第2部分との間の補正前の角度αと、第1部分と第2部分との間の補正後の角度βとが、略等しくなるように補正が施される。
【0060】
明るさ検出部43は、画像処理部42から入力される画像信号に含まれるRGB画像情報に基づいて、各画像に対応する明るさレベルを検出し、この検出した明るさレベルを内部に設けられたメモリに記録するとともに、調光部44及び制御部48それぞれへ出力する。
【0061】
調光部44は、制御部48の制御のもと、明るさ検出部43が検出した明るさレベルに基づいて、光源装置3が発生する光量や発光タイミング等の発光条件を設定し、この設定した発光条件を含む調光信号を光源装置3へ出力する。
【0062】
入力部45は、内視鏡システム1の動作を指示する動作指示信号等の各種信号の入力を受け付ける。入力部45は、スイッチ等を用いて構成される。入力部45は、複数のモード及び複数の画像処理の各々の設定値のいずれか1つを変更する指示信号の入力を受け付ける。
【0063】
記録部46は、ROM(Read Only Memory)を用いて実現され、内視鏡システム1を動作させるための各種プログラム及び内視鏡システム1の動作に必要な各種パラメータ等を含むデータ等を記録する。
【0064】
同期信号生成部47は、少なくとも垂直同期信号を含む同期信号を生成し、集合ケーブル249を介してTG部247へ出力するとともに、画像処理部42へ出力する。
【0065】
制御部48は、CPU等を用いて構成され、撮像素子244及び光源装置3を含む各構成部の駆動制御及び各構成部に対する情報の入出力制御等を行う。
【0066】
以上説明したように、実施の形態1によれば、色補正部422が色相を補正する前後の第1部分の第2部分との色相の差を表す角度αと角度βとが略等しくなるように補正を行う。ここで、色差は、色空間上における第1部分の色と第2部分の色との間の距離として定義される。従って、
図5に示すように、色補正部422により補正前の第1部分の第2部分に対する色相の差を表す角度αと補正後の第1部分の第2部分に対する色相の差を表す角度βとが略等しく、補正前の第1部分の第2部分に対する彩度の差と補正後の第1部分の第2部分に対する彩度の差とが略等しくなるように補正が施されると、点C11と点C12との間の距離と、点C13と点C14との間の距離とが略等しくなり、色差を維持したまま色を補正することができる。ただし、第1部分と第2部分との色相の差と彩度の差との両方を補正前後で略等しくすることで、補正後においても補正前の色相の差と彩度の差とを維持したまま視認性の向上が可能であるが、補正前後で色差が維持できれば必ずしも色相の差と彩度の差との両方を略等しくする必要はない。
【0067】
従来、狭帯域光観察(DRI)を行う場合に、内視鏡画像の画像全体の色調を赤色から黄色に画像処理により補正すると、出血点の視認性を向上させる効果が低減する場合があった。しかしながら、実施の形態1によれば、出血点である第1部分と、出血点以外の部分である第2部分との色差が維持されているため、処理装置4による画像処理を行っても、狭帯域光観察(DRI)により出血点の視認性を向上させる効果が維持される。
【0068】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る画像処理装置は、画像処理装置における処理が実施の形態1と異なるが、その他の構成は、
図1に示す実施の形態1と同様の構成であるので適宜説明を省略する。
【0069】
色特定部421は、画像信号の第1部分、第2部分、及び第3部分の色を特定する。
図6は、内視鏡画像に設定される第1部分、第2部分、及び第3部分を表す図である。
図6に示すように、内視鏡画像I(画像信号)内に第1部分、第2部分、及び第3部分が設定される。第1部分、第2部分、及び第3部分は、生体組織のヘモグロビンに対する光学濃度が、それぞれ光学濃度D21、光学濃度D22、光学濃度D23である部分である。これらの光学濃度の大小関係は、光学濃度D21<光学濃度D22<光学濃度D23であるとする。第1部分、第2部分、及び第3部分は、ユーザが内視鏡画像Iを観察して任意の位置に手動で設定されてもよいし、所定の画像処理によって所定の色の画素を含む領域に自動で設定されてもよい。
【0070】
色特定部421は、第1部分、第2部分、及び第3部分の色を、それぞれ色空間上の点に対応させることにより特定する。
図7は、色空間における第1部分、第2部分、及び第3部分の補正前後の色をそれぞれ表す図である。
図7に示すように、色特定部421は、第1部分、第2部分、及び第3部分の色を、それぞれ色空間上の点C21、点C22、点C23として特定する。
【0071】
色補正部422は、第1部分の色と第2部分の色との色差、及び第1部分の色と第3部分の色との色差を所定の範囲内に維持しながら、第1部分、第2部分、及び第3部分の色をそれぞれ補正する。具体的には、色補正部422は、上述したカラーマトリクス演算処理と9軸色域調整処理とを行い、
図7に示すように、第1部分、第2部分、及び第3部分の色に対応する点を、それぞれ点C21、点C22、点C23から点C24、点C25、点C26に補正する。このとき、色補正部422により、色空間における補正前後の第1部分と第2部分との間の距離a及び距離b、色空間における補正前後の第1部分と第3部分との間の距離c及び距離dが、それぞれ略等しくなるように色相及び彩度に補正が施される。
【0072】
以上説明した実施の形態2のように、内視鏡画像I内の3つの部分の色差を維持しながら、画像処理を行ってもよい。
【0073】
(実施の形態3)
実施の形態3に係る画像処理装置は、画像処理装置における処理が実施の形態1と異なるが、その他の構成は、
図1に示す実施の形態1と同様の構成であるので適宜説明を省略する。
【0074】
色特定部421は、画像信号の第1部分、第2部分、第3部分、及び第4部分の色を特定する。
図8は、第1部分〜第4部分を表す図である。
図8に示すように、第1部分は、動脈血が流れ出ている部分や生理食塩水で薄まっている部分である。第2部分は、静脈血が流れ出ている部分や生理食塩水で薄まっている部分である。第3部分は、動脈血の出血点である。第4部分は、静脈血の出血点である。
【0075】
図9は、内視鏡画像に設定される第1部分〜第4部分を表す図である。内視鏡画像I(画像信号)内に第1部分〜第4部分が設定される。第1部分〜第4部分は、生体組織のヘモグロビンに対する光学濃度が、それぞれ光学濃度D31、光学濃度D32、光学濃度D33、光学濃度D34である部分である。第1部分〜第4部分は、ユーザが内視鏡画像Iを観察して任意の位置に手動で設定されてもよいし、所定の画像処理によって所定の色の画素を含む領域に自動で設定されてもよい。
【0076】
色特定部421は、第1部分〜第4部分の色を、それぞれ色空間上の点に対応させることにより特定する。さらに、色補正部422は、第1部分の色と第3部分の色との色差、及び第2部分の色と第4部分の色との色差を所定の範囲内に維持しながら、第1部分〜第4部分の色をそれぞれ補正する。なお、色の特定方法及び補正方法は、実施の形態1と同様であってよいので説明を省略する。
【0077】
以上説明したように、実施の形態3によれば、第1部分の色と第3部分の色との色差、及び第2部分の色と第4部分の色との色差を所定の範囲内に維持することにより、動脈血内、静脈血内のそれぞれにおいて、出血点の視認性を維持することができる。
【0078】
(実施の形態3の変形例)
図10は、内視鏡画像に設定される第1部分〜第4部分を表す図である。
図10に示すように、実施の形態3の変形例では、色補正部422は、第1部分の色と第3部分の色との色差、第2部分の色と第4部分の色との色差、第1部分の色と第4部分の色との色差、及び第2部分の色と第3部分の色との色差を所定の範囲内に維持しながら、第1部分〜第4部分の色をそれぞれ補正する。その結果、この実施の形態3の変形例によれば、動脈血と静脈血とが混在した場合においても、出血点の視認性を維持することができる。
【0079】
なお、上述した実施の形態では、内視鏡画像I内の複数の部分の色差を維持しながら色を補正する例を説明したがこれに限られない。色補正部422は、色空間上における赤色領域を含む所定の領域に対応する色を色空間上における黄色領域に近づけるように内視鏡画像の画像全体の色調を補正してもよい。より具体的には、色補正部422は、色空間上におけるRYeを含みGからMgまでの領域に対応する色を色空間上におけるYeに近づけるように補正してもよい。同様に、色補正部422は、色空間上におけるRYeを含みYeからRまでの領域に対応する色を色空間上におけるYeに近づけるように補正してもよい。
【0080】
また、上述した実施の形態では、色補正部422がカラーマトリクス演算処理と9軸色域調整処理との双方を行う例を示したが、これに限られない。色補正部422は、カラーマトリクス演算処理と9軸色域調整処理とのいずれか一方の補正を行う構成であってもよい。
【0081】
また、上述した実施の形態では、9本の基準軸によって定義される色空間を用いて説明したが、色空間の基準軸の本数や定義の仕方は特に限定されない。
【0082】
また、上述した実施の形態では、色特定部421が処理装置4に含まれる構成を示したが、色特定部は、内視鏡に配置されていてもよい。
【0083】
また、上述した実施の形態では、処理装置4が色特定部421及び色補正部422を備える構成を示したがこれに限られない。例えば、処理装置4は、インターネット(クラウドやソフトウェアのダウンロード)によって、色特定部421及び色補正部422に相当する機能を追加可能な構成であってもよい。
【0084】
また、上述した実施の形態では、伝送ケーブルを介して画像信号を処理装置4へ送信していたが、例えば有線である必要はなく、無線であってもよい。この場合、所定の無線通信規格(例えばWi−Fi(登録商標)やBluetooth(登録商標))に従って、画像信号等を処理装置4へ送信するようにすればよい。もちろん、他の無線通信規格に従って無線通信を行ってもよい。
【0085】
また、上述した実施の形態では、処理装置4と光源装置3とが別体であったが、これに限定されない。例えば処理装置と光源装置とが一体的に形成されていてもよい。
【0086】
また、上述した実施の形態では、面順次式の内視鏡を例に説明したが、同時式の内視鏡であっても適用することができる。
【0087】
また、上述した実施の形態では、被検体に挿入される内視鏡2であったが、例えばカプセル型の内視鏡又は被検体を撮像する撮像装置であっても適用することができる。
【0088】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、以上のように表し、かつ記述した特定の詳細及び代表的な実施の形態に限定されるものではない。従って、添付のクレーム及びその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神又は範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
画像処理装置は、画像信号の第1部分及び第2部分の色を特定する色特定部と、前記色特定部により特定された前記第1部分の色と前記第2部分の色とに基づき、前記第1部分の色と前記第2部分の色との色差を所定の範囲内に維持しながら、前記第1部分及び前記第2部分の色をそれぞれ補正する色補正部と、を備える。これにより、撮像条件によらずに、観察対象の視認性を向上させる効果を維持することができる画像処理装置、画像処理装置の作動方法、及び画像処理装置の作動プログラムを提供する。