【実施例1】
【0033】
[1 遊技機全体の概要]
実施例1のパチンコ遊技機Pは、
図1に示す様に、外枠A、中枠B、遊技盤C、前枠D、上の球受け皿E、下の球受け皿F及び発射装置Gを備えている。外枠Aはパチンコ機Pの外郭を構成する縦長方形の枠である。中枠Bは、各種の遊技用構成部材をセットするための縦長方形の枠であって、外枠Aの前面側に開閉可能かつ着脱可能に組み付けられる。遊技盤Cは、中枠Bの開口部に取り付けられる。前枠Dは遊技盤Cの透視保護窓であって、施錠装置Hの操作によって開閉可能な様に中枠Bの前面側に組み付けられる。上の球受け皿Eは、貸し球や賞球の受け皿で、本実施例においては前枠Dの下部と一体に構成されている。従って、前枠Dを中枠Bに対して開閉するときに上の球受け皿Eも共に開閉される。下の球受け皿Fは、上の球受け皿Eが一杯になったときに排出される遊技球や打ち損じの遊技球等を受ける受け皿であって、中枠Bの下部に固定されている。発射装置Gは、上の球受け皿Eから発射レールに送り込まれた遊技球をハンドル操作に対応する強さで打ち出すための装置であって、中枠Bの右下部に装備される。
【0034】
中枠Bは、上縁をなす上枠部材B1と、下縁をなし発射装置G等が設置された下枠部材B2と、左側縁をなす左枠部材B3と、右側縁をなす右枠部材B4とから構成されて、これら上下左右の枠部材B1〜B4を組み付けた際に、全体が外枠Aの開口に整合する矩形枠状に形成される。そして、上下左右の枠部材B1〜B4を組み付けた際に開口する開口部分が、遊技盤Cを設置する遊技盤保持部B5として機能する。ここで、中枠Bは、外枠Aの左上端部及び左下端部に設けられた支軸を介して枢支され、左側端部を中心として中枠Bを回転させることで外枠Aに対して中枠Bを開閉し得るようになっている。本実施例では、中枠Bが組立体となっている場合を説明したが、中枠Bは一体品でも構わない。
【0035】
また、上の玉受け皿Eの右側には、貸し玉ボタンQ、カード取り出しボタンR、演出操作ボタンSも備えられている。実施例のパチンコ遊技機Pが設置される遊技島には、遊技機毎にカードユニットが設置されていて、このカードユニットに挿入されたカード式記憶媒体に対して、入金度数を記憶するシステムが採用されている。貸し玉ボタンQは、このカード式記憶媒体に残度数がある場合に押下することで、例えば、2度数、5度数等の単位度数分の貸し玉指令を行うための押しボタンである。カード取り出しボタンRは、遊技を終了したり、離席する際にカードユニットからカード式記憶媒体を取り出すための指令を入力するための押しボタンである。演出操作ボタンSは、回転と押下とを行い得るものであって、内部にLEDを備えている。このLEDは、所定の遊技状態において点灯され、遊技者に演出ボタン操作を促す等のために設けられている。本実施例においては、この演出ボタンSは、その操作により、演出効果を高めるためのメッセージ表示等を行うだけではなく、後述する遊技履歴の蓄積開始、遊技履歴の記憶、さらには遊技履歴を反映した演出の実行等にも関与する部品ともなっている。
【0036】
[2 制御装置の構成]
図2に示す様に、CPU,ROM,RAM,クロック等を備えた主制御基板310に対して、遊技盤Cに備えられた各入賞口への遊技球の入賞を検知する入賞検知センサSE1,SE2,…、裏ユニットの球排出通路へと遊技球が排出されたことを検知する排出球検知センサSE11,SE12,…からの検知信号が入力される様になっている。また、主制御基板310からは、サブ制御基板320、払出制御基板330、及び発射制御基板340へとコマンドが出力される様になっている。インタフェース基板350は、払出制御基板330との間でコマンドのやり取りを行う構成となっている。なお、電源基板360は、電源中継基板380を介して主制御基板310への電源供給を行う構成となっている。そして、サブ制御基板320は、演出表示制御基板370へとコマンドを出力する構成となっている。また、貸し玉ボタンQ、カード取り出しボタンRからの押下信号は、球貸し操作基板390へと入力され、この球貸し操作基板390からインタフェース基板350を経由して払出制御基板330へと入力される構成となっている。インタフェース基板350はまた、カードユニット500との間でもコマンドをやり取りする構成となっている。また、演出操作ボタンSからの押下信号は、サブ制御基板320へと入力される構成となっている。
【0037】
サブ制御基板320は、主制御基板310からの演出指令信号に基づいて、発光装置LED、スピーカSP、モータMT、ソレノイドSOLに対して制御信号を出力して発光演出、音声演出、可動体演出を実行すると共に、演出表示制御基板370へと演出表示のためのコマンドを出力している。演出表示制御基板370は、サブ制御基板320からの演出表示のための指令信号に基づいて、液晶表示装置LCDに対して制御信号を出力し、表示演出を実行する。
【0038】
払出制御基板330は、主制御基板310からの払出コマンドに従って、賞球の払出を実行する。賞球払出個数は、どの入賞口に入賞したかによって予め定められている。また、主制御基板310は、払出制御基板330の外部出力端子を介してホールコンピュータ400へとエラー信号を出力する機能も備えている。
【0039】
発射制御基板340は、主制御基板310からの制御コマンドに従って、発射装置Gによる打球の発射・停止を実行する。打球の停止は、例えば、何らかのエラーが発生したときなどに指令される。
【0040】
インタフェース基板350は、球貸し操作基板390からの貸し玉指令やカード取り出し指令の中継基板として機能する。貸し玉指令は、インタフェース基板350を中継して払出制御基板330とカードユニット500へと出力される。貸し玉指令が入力された払出制御基板330は、BCユニット335へと玉貸し信号を出力し、BCユニット335が作動して上皿Eへと玉貸しが実行される。また、貸し玉指令が入力されたカードユニット500は、貸し玉指令に対応する残度数管理を行う。具体的には、カード式記憶媒体の残度数の減算処理を行う。そして、カードユニット500は、減算処理した後の残度数データをインタフェース基板350へと出力する。この残度数データは、貸し玉ボタンQの近傍に設けられた残度数表示の更新に用いられる。また、カード取り出し指令は、インタフェース基板350を中継してカードユニット500へと出力する。カードユニット500は、カード取り出し指令が入力されるとカード取り出し動作を実行する。
【0041】
[3 制御処理(賞球払出)]
主制御基板310は、
図3(A)に示す制御系統により、入賞検知センサSE1〜SE7からの入賞検知信号が入力されると、各センサに対応する賞球払出個数に対応する賞球払出コマンドを払出制御基板330に対して出力する賞球払出処理を実行している。これを受けて、払出制御基板330は、遊技球の入賞口に対応して予め定められた個数の賞球の払出動作を実行する。
【0042】
この賞球払出制御は、
図3(B)に示す様な演算処理ルーチンとして実行され、入賞検知センサSE1〜SE7からの検知信号が入力されたか否かを判断し(S10)、「YES」と判定されたら、払出制御基板330に対してセンサを特定した賞球払出信号を出力すると共に(S20)、抽選処理ルーチンを起動する(S30)。
【0043】
[4 制御処理(乱数抽選)]
また、主制御基板310は、
図4(A)に示す制御系統により、始動入賞口の入賞検知センサSE1,SE2からの入賞検知信号が入力されると、乱数抽選を実行し、その結果を保留球記憶情報としてRAMに記憶する乱数抽選処理を実行している。
【0044】
ここで、本実施例の遊技機は、センター役物の下方に備えられた始動入賞口への入賞を契機として乱数を取得し、図柄変動ゲーム開始時に「当たり」か「はずれ」かを判定する。「当たり」には「2R通常」「2R確変」「15R通常」「15R確変」など、単に当たりというだけでなく、遊技者に対する有利さの異なる複数種類の当たり種別の中のいずれに該当するかを、別途行われる「当たり種別判定」として実行する。なお、「2R」「15R」とは、特別遊技のラウンド数を意味し、「確変」とは、特別遊技終了後に抽選による大当たりの確率が高い高確率(「確率変動」ともいう)の遊技状態となる場合を意味する。「通常」は、特別遊技終了後に「確変」にならない場合を意味する。また、「2R」の場合、短時間だけ特別入賞口を開閉する動作となっていて実質的な出玉は期待できない遊技状態となっている。「2R通常」「2R確変」における特別入賞口の開放時間を、出玉獲得可能な時間に設定しても構わない。
【0045】
「当たり/はずれ」の判定に続いて、変動パターンが乱数抽選される。「当たり」の場合は、上述の様に、遊技者に対する有利さの異なる複数種類の当たり種別があることから、これら当たり種別のいずれであるかにより、当選確率を異ならせた変動パターンが、例えば、A〜Cといった具合に複数用意されている。この変動パターンは、変動時間の長さとなっている。具体的には変動パターンごとに変動時間が異なっている。ここまでは主制御基板310の処理として実行される。こうして主制御基板310の決定した変動パターンに基づいて、サブ制御基板320側で変動パターンに対応する演出パターンが抽選される。例えば、変動パターンがA〜Cであるとき、演出パターンは、変動パターンAに対して複数用意された演出パターンA1〜Anの中のいずれかが、変動パターンBに対して複数用意された演出パターンB1〜Bnの中のいずれかが、変動パターンCに対して複数用意された演出パターンC1〜Cnの中のいずれかが、サブ制御基板320側で決定されるといった処理が実行されることになる。
【0046】
また、「はずれ」の場合は、リーチはずれにするか否かを別途乱数を用いて抽選し、リーチはずれとする場合は、さらに、「はずれリーチ」の「変動パターン」が乱数抽選によって決定される。なお、はずれリーチの変動パターンとしては、「リーチはずれ」「スーパーリーチはずれ」などがあり、「リーチはずれ」の抽選結果とならなかったときは「ノーマルはずれ」として定まっている変動パターンに基づくはずれ演出となる。「変動パターン」とは、変動時間のことであり、スーパーリーチの場合には複数の変動パターンの中の一つが抽選されることになる。「ノーマルはずれ」「リーチはずれ」「スーパーリーチはずれ」のいずれの変動パターンになるかは、当選確率が「ノーマルはずれ」>「リーチはずれ」>「スーパーリーチはずれ」となる様に乱数値との対応が予め定められている。なお、「リーチはずれ」「スーパーリーチはずれ」の変動パターンは、当たりの場合と逆の傾向となる様な当選確率で変動パターンと乱数値との関係が予め定められている。
【0047】
上述の様に、「スーパーリーチ」にあっては、その変動パターンが複数(例えばA〜C)用意されていて、例えば、「当たり」のときは「スーパーリーチA」>「スーパーリーチB」>「スーパーリーチC」という当選確率でいずれのパターンに発展するかが設定され、逆に、「はずれ」のときは「スーパーリーチC」>「スーパーリーチB」>「スーパーリーチA」という当選確率でいずれのパターンに発展するかが設定されることにより、遊技者は、スーパーリーチ演出に発展したとき、「パターンA」の変動時間となる演出ならば「当たり」となることをより大きく期待し、逆に「パターンC」の変動時間となる演出ならば「当たりの可能性は小さい」と、期待度が低い感覚を抱く。この様に、スーパーリーチの際に抽選された変動パターンに基づいて実行される演出パターンにより、遊技者に与える期待感を異ならせ、この結果、「パターンA」は信頼度が高く、「パターンC」は信頼度が低いといった予測を遊技者に与えることが可能となっている。なお、「ノーマル演出」は「当たり」での当選確率を極めて低く設定することによって「ノーマル当たり」にプレミアム感を持たせることにもなる。
【0048】
本実施例における乱数抽選処理は、
図4(B)に示す様な演算処理ルーチンとして実行され、今回検知信号を入力したセンサが始動入賞口センサSE1,SE2のものか否かを判定し(S110)、「NO」であれば直ちに処理を終了する。一方、「YES」と判定された場合は、保留球個数Nが4未満か否かを判定する(S120)。N<4ならば(S120:YES)、保留球個数Nをインクリメントし(S130)、「NO」の場合は乱数抽選に進むことなく処理を終了する。
【0049】
乱数抽選に進むと、まず、「当たり/はずれ」を判定するための乱数を取得する「当たり/はずれ抽選」を実行する(S140)。そして、「当たり」の場合は(S150:YES)、「当たり種別」を決定するための乱数を取得し(S160)、「当たり種別」に対応する「変動パターン」の抽選までが実行される(S165)。「はずれ」の場合は(S150:NO)、「リーチ演出の有無」を決定するための乱数を取得し(S170)、「リーチ演出あり」の場合は、さらに「変動パターン」の抽選までが実行される(S175)。そして、S140,S160,S170で生成した乱数値をRAMに記憶する(S180)。本実施例の場合、「当たり/はずれ」の乱数が「当たり」の場合に続いて「当たり種別」の乱数を取得することで、上述した「2R通常」「2R確変」「15R通常」「15R確変」のいずれに該当するかが特定されることとなる。なお、「ノーマルはずれ」について複数の変動パターンが設定される場合には、S170で「NO」の判定となった後に、「ノーマルはずれの変動パターン抽選」が追加されていても構わない。
【0050】
[5 制御処理(保留消化)]
次に、保留消化処理について説明する。主制御基板310は、
図5(A)に示す制御系統により、RAM内に記憶された保留球記憶情報から乱数値を読み出し、当選条件と照合して演出指令コマンドをサブ制御基板320に対して指令する保留消化処理を実行する。
【0051】
保留消化処理は、
図5(B)のフローチャートに示す様に、特別遊技を実行していない状態のときに(S210:NO)、RAM内に保留記憶情報があるか否かを判定し(S220)、保留記憶情報があるときは当該記憶内容を一つ読み出し(S230)、乱数値1,乱数値2に基づいて演出指令コマンドを決定する(S240)。そして、この演出指令コマンドをサブ制御基板320に対して出力すると共に(S250)、保留記憶情報の更新を行う(S260)。
【0052】
[6 制御処理(演出制御)]
サブ制御基板320は、
図6(A)に示す制御系統により、主制御基板310からの変動パターン指令コマンドに対応してサブ制御基板側で抽選した演出パターンに従って、発光装置LED、スピーカSP、モータMT、ソレノイドSOLに対して制御信号を出力し、発光演出、音声演出、可動体演出等を実行すると共に、演出表示制御基板370を介して液晶表示装置LCDによる表示演出を実行させる。なお、主制御基板310からエラー報知が指令されたときは、エラー報知処理を実行する。
【0053】
この演出制御は、
図6(B)示す様な演算処理ルーチンとして実行され、主制御基板310からの新たなコマンドが入力されたか否かを判定し(S310)、「YES」の場合は、当該コマンドがエラー報知か、変動パターン指令か、を判定する(S320)。ここで「エラー」ならば、エラーの種類を特定し(S330)、エラー報知を行って処理を終了する(S340)。一方、エラー報知でなく、「変動パターン指令コマンド」であるなら、変動パターン指令コマンドによって特定される変動パターン毎に複数用意されている演出パターンの中から抽選を行って一つの演出パターンを決定し(S350)、対応する演出制御データをROMから読み出し(S360)、演出表示制御基板370、発光装置LED等に対して制御データを出力する(S370)。
[7 履歴反映遊技]
【0054】
本実施例のパチンコ機Pは、サブ制御基板320内の記憶装置600に対して遊技者毎の遊技履歴を記憶しておき、この遊技履歴を反映した演出を実行することができるものとなっている。このため、パスワードの登録、履歴の蓄積、履歴の記憶、履歴の読出及び履歴反映遊技の実行という処理を行う。この記憶装置600は、バックアップ電源によって電源遮断時にもデータを保持できるものである。
【0055】
[7.1 パスワード登録]
まず、パスワード登録について説明する。サブ制御基板320は、
図7(A)に示す制御系統により、遊技開始時等に遊技者が演出操作ボタンSを押下すると液晶表示装置LCDにパスワード登録画面710を表示する。本実施例では、パスワード登録画面710には、パスワード入力欄711、入力可能な数字・アルファベット(以下、「記号」という。)を列挙した記号選択欄712、登録ボタン713及び訂正ボタン714を表示する。初期状態は、パスワード入力欄711は空欄であり、記号選択欄712の記号「0」を反転表示とする。
【0056】
遊技者が、記号を選択した上で演出操作ボタンSを押下すると、当該記号をワーキングメモリに記憶すると共に、パスワード入力欄711の左端の空欄に表示する。この記号の選択は、例えば、演出操作ボタンSを右に回転させると「0」→「1」→・・・→「A」→「B」→・・・と記号選択欄712の反転表示を順送りし、演出操作ボタンSを左に回転させると反転表示を逆送りするといった方法によって実行する。遊技者は、入力しようとする記号を反転表示させた状態で演出操作ボタンSを押下することにより、記号を一つ選択する。
【0057】
遊技者が、記号選択に続けて演出操作ボタンSを再度押下すると、反転表示を登録ボタン713へと変化させる。そして、遊技者が再度演出操作ボタンSを押下することによって登録処理へと進む。このとき、訂正したい場合は、演出操作ボタンSを右回転させることにより、訂正ボタン714の反転表示状態とした上で演出操作ボタンSを押下する。すると、ワーキングメモリに記憶した記号列を消去すると共に、初期状態に戻す。
【0058】
なお、本実施例では、パスワードを最大8桁とし、遊技者が8桁の記号を選択し終えたときは、登録ボタン713の反転表示へと移行し、登録又は訂正の指令を待つ。遊技者は、記号選択に続けて演出操作ボタンSを再度押下することによって、8桁未満のパスワードを選定することもできる。
【0059】
遊技者が選定したパスワードは、サブ制御基板320の記憶装置600に設けられたパスワード記憶欄610に記憶される。なお、遊技者が選定したパスワードが既登録パスワードと重複する場合には、パスワードの変更を求め、重複登録を回避する処理も行っている。
【0060】
このパスワード登録のための制御処理は、
図7(B)示す様な演算処理ルーチンとして実行される。このルーチンでは、遊技者からのパスワード登録要求があったときに、パスワード登録画面を表示し(S410,S420)、上述の様に、演出操作ボタンSの回転と押下とによるパスワードの選定が可能な状態とする。遊技者が自分自身でパスワードを選定し終えて登録ボタン713が反転表示された状態で演出操作ボタンSが押下されることによってパスワード入力が完了したと判断したら(S430:YES)、記憶装置600のパスワード記憶欄610に既に登録されているパスワードと重複しないかを判断する(S440)。重複がない場合は(S440:YES)、パスワード登録(S450)へと進み、重複がある場合はパスワード変更要求表示(S460)へと進む。
【0061】
[7.2 履歴蓄積開始]
次に、遊技履歴の蓄積について説明する。サブ制御基板320は、
図8(A)に示す制御系統により、遊技者が演出操作ボタンSを操作して遊技履歴の蓄積開始を指令したときに、記憶装置600の遊技履歴蓄積メモリ630へと遊技履歴の蓄積を開始する。本実施例では、この遊技履歴の蓄積開始に当たってパスワード入力画面720を液晶表示装置LCDに表示し、最初にパスワード入力を求める。なお、パスワード登録をしていない遊技者が遊技履歴の蓄積開始を指令したときのために、パスワード入力画面720には、パスワード入力欄721、記号選択欄722、決定ボタン723及び訂正ボタン724に加えて、新規ボタン725も備わっている。
【0062】
この履歴蓄積開始のための制御処理は、
図8(B)示す様な演算処理ルーチンとして実行される。このルーチンでは、遊技者からの履歴蓄積開始要求があったときに、パスワード入力画面を表示し(S510,S520)、パスワード登録の場合と同様の遊技者による演出操作ボタンSの操作に基づいて遊技者がパスワードを入力し終えて決定を指令するのを待つ(S530)。遊技者が決定を指令したときは(S530:YES)、記憶装置600のパスワード記憶欄610に登録済みであるか否かを判断する(S540)。登録済みである場合には(S540:YES)、「履歴追加蓄積」の処理へと進む。一方、登録済みでない場合には(S540:NO)、入力エラーを表示し(S550)、S520へと戻り、遊技者に再度パスワード入力を求める。
【0063】
一方、決定ではなく、新規ボタン725を反転表示させて押下する操作がなされたときは(S530:NO→S560:YES)、パスワードの新規登録を行った上で(S570)、「履歴新規蓄積」へと進む。このパスワードの新規登録の処理内容は、パスワード登録処理におけるS440〜S460と同様の処理であって、重複登録を回避しつつパスワードの新規登録を実行する。
【0064】
決定でも新規でもない場合(パスワード入力中及び訂正指令)は(S530:NO,S560:NO))、S520へと戻る。
【0065】
この履歴蓄積開始の処理においてもパスワードの新規登録が実行できる様に構成されている結果、パスワードを登録せずに履歴蓄積を指令してしまったときも遊技者に煩わしさを感じさせることなく、履歴蓄積を開始することができる。
【0066】
[7.3 履歴蓄積]
上述の処理に続いて実行する履歴蓄積について説明する。サブ制御基板320は、
図9(A)に示す制御系統により、主制御基板310から入力される遊技履歴(始動回数、リーチ回数、スーパーリーチ回数、大当たり回数、出玉数など)を遊技履歴蓄積メモリ630へと蓄積する。また、遊技者が演出操作ボタンSを操作して実行する画面フレーム、BGM、効果音(SE)などのカスタマイズ対象についてのカスタマイズ情報も遊技履歴蓄積メモリ630へと蓄積する。
【0067】
この履歴蓄積のための制御処理は、
図9(B),(C)示す様な演算処理ルーチンとして実行される。前述の履歴蓄積開始の処理によって「履歴追加蓄積」へと進んだときは(S540:YES)、
図9(B)の演算処理が開始され、該当するパスワードに対して記憶装置600の遊技履歴欄620に記憶されていた履歴情報を読み出す(S610)。そして、この履歴情報に続けて遊技履歴を蓄積する(S620)。この処理は、遊技者による蓄積終了を意味する操作が演出操作ボタンSから入力されるまで継続して実行される(S630→S620)。蓄積終了が指令されたら(S630:YES)、「履歴記憶」へと進む。
【0068】
一方、履歴蓄積開始の処理によって「履歴新規蓄積」へと進んだときは(S570:YES)、
図9(C)の演算処理が開始され、履歴情報を読み出すことなく新規なものとして遊技履歴を蓄積し(S625)、蓄積終了が指令されたら(S635:YES)、「履歴記憶」へと進む。
【0069】
例えば、S620,S625の履歴蓄積においては、主制御基板310から入力される遊技履歴は、総数と日付に対応した数値とをそれぞれ蓄積し、カスタマイズ情報は上書きする形で蓄積する。
【0070】
[7.4 履歴記憶]
次に、履歴記憶について説明する。サブ制御基板320は、
図10(A)に示す制御系統により、
図10(B)に示す演算処理を実行し、遊技履歴蓄積メモリ630に蓄積した履歴情報を読み出し(S710)、該当するパスワードの遊技履歴欄620へと上書きする(S720)。
【0071】
[7.5 履歴反映演出(大当たり演出)]
履歴蓄積が開始された後、蓄積終了となるまでの間、サブ制御基板320は、
図11(A)に示す制御系統により、表示演出、発光演出、音声演出、可動体演出を実行する。本実施例では、遊技履歴の大当たり回数が、例えば100回などと設定されたプレミアム回数VNPに達したとき、通常は実行することのないプレミアム演出を予め記憶している。
【0072】
この結果、
図11(B)示す様に、大当たりが発生したときは(S810)、履歴蓄積メモリ630の総数の大当たり回数VNに関する履歴を読み出し(S820)、VNがVPに達したか否かを判断する処理を実行している(S830)。VNがVNPに達していないときは(S830:NO)、通常データを読み出して大当たり演出を実行する(S840,S850)。一方、VNがVNPに達したときは(S830:YES)、上述したプレミアムデータの方を読み出して大当たり演出を実行する(S845,S850)。
【0073】
なお、VNPに達したときだけでなく、その後は、プレミアム演出と通常演出を遊技者の希望によって選択できる様にしてもよい。また、プレミアム演出を複数用意しておき、S830での判断におけるVNとの比較値をVNP1,VNP2,…と多段階にしてもよい。
【0074】
[7.6 履歴反映演出(成績表示)]
本実施例では、履歴反映演出として、さらに、
図12(A)に示す制御系統により、履歴蓄積開始時及び任意のタイミングにおいて、過去の成績を液晶表示装置LCDにグラフ表示する成績表示演出のための演出データもサブ制御基板320に記憶させている。
【0075】
履歴蓄積開始時には、
図12(B)示す様に、成績に関する履歴情報を履歴蓄積メモリ630から読み出し(S1010,S1020)、液晶表示装置LCDに日付毎の棒グラフあるいは折れ線グラフなどとして表示する(S1030)。この成績グラフは、変動開始となったとき(S1040:YES)、または遊技者によるグラフ表示を閉じる旨の指令が入力されたときに(S1050:YES)、閉じられ、通常表示へと戻る(S1060)。
【0076】
その後は、
図12(C)示す様に、遊技者から成績表示が指令されたとき(S1110:YES)、履歴蓄積メモリ630からの成績読み出し(S1120)、液晶表示装置LCDへのグラフ表示を実行する(S1130)。なお、この成績表示の指令は、変動中でないときに演出操作ボタンSを操作することで実行可能に構成され、グラフ表示後に所定時間が経過するか(S1140:YES)、変動開始となったときには(S1150:YES)、閉じられ、通常表示へと戻る(S1160)。
【0077】
[7.7 履歴反映演出(カスタマイズ演出)]
本実施例では、履歴反映演出として、さらに、
図13(A)に示す制御系統により、遊技者の指令に基づいて画面フレーム、BGM、SEなどについてのカスタマイズデータに基づく演出も実行可能となっている。
【0078】
この演算処理は、
図13(B)示す様に、遊技者からカスタマイズの指令がなされたときに開始される。なお、このカスタマイズ指令も変動中でないときに演出操作ボタンSを操作することで実行可能に構成されている。カスタマイズの指令が設定であるときは(S1210:YES)、液晶表示装置LCDに対してカスタマイズ設定のための画面を表示する(S1220)。そして、カスタマイズ入力の結果に基づいて遊技履歴蓄積メモリ630のカスタマイズ履歴を更新し(S1230)、カスタマイズデータに基づく演出を実行する(S1240)。このカスタマイズ演出は、通常状態への戻しが指令されたときや(S1250:YES)、履歴蓄積が終了となったときに(S1260:YES)、閉じられ、通常表示へと戻される(S1270)。
【0079】
カスタマイズ指令が履歴の読み出しであるときは(S1210:NO→S1280:YES)、遊技履歴蓄積メモリ630のカスタマイズ履歴を読み出し(S1290)、S1240へと進む。
【実施例8】
【0102】
次に、実施例8について説明する。機器構成及び制御系統、履歴蓄積等の各処理は実施例1と同様であり、履歴反映(大当たり演出)の内容を変更したものである。
【0103】
この実施例は、大当たり演出において、連荘回数RNによって大当たり演出時に実行する演出内容が第1話,第2話,…と連続ドラマの様に変化する構成となったものである。
【0104】
そして、
図20(B)示す様に、大当たりが発生したときは(S2010)、連荘回数RNに代えて、総当たり回数VNtotal を利用するか否かを問い合わせ(S2020)、「YES」であれば履歴蓄積メモリ630の総大当たり回数VNtotal を読み出して(S2030)、これを連荘回数RNに設定し(S2040)、第RN話による大当たり演出を実行する(S2050)。
【0105】
また、連荘回数RNに代えて、本日の大当たり回数VNday を利用するか否かを問い合わせ(S2025)、「YES」であれば履歴蓄積メモリ630の本日の大当たり回数VNday を読み出して(S2035)、これを連荘回数RNに設定し(S2045)、第RN話による大当たり演出を実行する(S2050)。
【0106】
なお、S2020,S2025共に「NO」のときは、連荘回数RNを書き換えることなく第RN話による大当たり演出を実行する(S2050)。
【0107】
以上説明した様に、これらの実施例1〜実施例7によれば、過去の履歴を反映した各種演出等を実行するためのパスワード登録、パスワード入力に際して、携帯端末を操作する必用がなく、誰でも容易に、特定のパチンコ機における遊技者固有の履歴を反映した各種演出を楽しむことができる。また、そのために必用な履歴情報は、当該遊技機の記憶装置600にパスワードと対応付けて記憶させる構成であるから、サーバを用意しなくてもよい。
【0108】
この履歴を反映した演出等を楽しむために必用なパスワードは、その都度ランダムに生成されるパスワードではなく、遊技者自身が自らの入力によって選定したり、あるいは提示された複数の候補の中からの選択によって選定したり、イニシャルを追加する操作によって選定する結果、遊技者自身が忘れにくいものとなる。
【0109】
そして、特定の遊技機に遊技者自身の遊技履歴を記憶させる結果、遊技者は自分自身の気に入ったホールの気に入った遊技台で遊技する結果、当該遊技台の稼働率を向上させることができる。
【0110】
特に、1日では到底達成することのできない大当たり回数で初めて見られるプレミアム演出を用意する場合、この傾向は高まる。また、連続ドラマの様に連荘回数によって大当たり演出が第1話,第2話,…や、BGMの選択肢が増加する遊技機にあっては、遊技者自身の履歴を反映して擬似的に大連荘している状態と同様の大当たり演出を楽しむことができる結果、遊技機の稼働率を向上させる傾向を高める。
【0111】
そして、これらプレミアム演出や大連荘時の演出を、遊技者各自の履歴を利用して楽しむことができる結果、必要以上に長時間の遊技をしなくても、何日もかけてこれらの演出を楽しむことができる結果、多くの遊技者が当該遊技台で楽しむことにもつながり、稼働率向上に寄与する。
【0112】
また、遊技者自身が画面フレームやBGM等をカスタマイズできる遊技機にあっては、同じ遊技台に座れば、お気に入りのカスタマイズデータを容易に利用することができる点においても、遊技台の稼働率向上に繋がる。さらに、各遊技者にとって、発射装置の癖や、BGMの聞こえやすさなどを考慮した台選びに際して、成績を参照することもでき、台選びがし易くなるという効果も発揮される。そして、お気に入りの遊技台ができることにより、遊技者の楽しみも増大する。
【0113】
加えて、携帯端末のID確認等が不要であって、遊技者自身が選定するパスワードに対して遊技履歴を蓄積し、記憶させるので、パスワードを複数人が共有することもできる。そして、仲間内だけパスワードを共有しておいて、複数人で協力しあって大当たり回数を蓄積するといった楽しみ方も可能になる。
【0114】
これらの楽しみ方において、実施例1等で説明した様に、パスワード登録時に重複登録を回避する構成となっている結果、誰か分からない他人によって遊技履歴が書き換えられてしまう問題も回避することができる。実施例2,3等で説明した様に、既登録パスワードと重複しない新たなパスワードを生成して提示する構成も、こうした誤った遊技履歴の書き換えを防止する効果を発揮する。
【0115】
こうした遊技機側がパスワード候補を提示する場合においても、実施例4で説明した様に、イニシャルの追加によって自身のパスワードを覚えやすくし、実施例5で説明した様に、検索機能によって自身のパスワードを忘れた場合にも過去の履歴を無駄にすることなく遊技を楽しむことができる。
【0116】
なお、検索機能を用いて候補を提示する場合に、パスワード自体の他に、遊技者だけが知り得る関連事項、例えば、干支であるとか血液型など、遊技者が忘れることのない付加情報をパスワードと共に登録させることで、誤った選択を防止する構成を追加してもよい。
【0117】
いずれにしても、詳述した実施例によれば、次の様な作用・効果が発揮される。
(イ)毎回異なるパスワードを入力する必要がなくなる。
(ロ)携帯電話を使用する必要がなくなる。
(ハ)遊技者自身の過去の遊技履歴を反映させることのできる遊技機は特定されることになるが、その特定の遊技機で遊技をするために毎回同じ遊技機を選ぼうという心理が働き、当該遊技機の稼働率を向上させることも期待される。
(ニ)同じ遊技機であるからこそ、遊技者は、打球発射装置の癖などを知り、当該遊技機により合った打ち方を工夫するといった楽しみ方ができる。
(ホ)自己の遊技履歴情報を利用するためのサーバを備えるといった遊技機提供者側の設備投資や管理の煩雑さ、をなくし、インターネット等に繋がらない遊技機単体への遊技履歴情報の記憶は、セキュリティ面でも優れたものとなり、安心して遊技を楽しみ、安心して遊技場を運営することができるという効果もある。
そして、何よりも、遊技者が煩雑な作業をしなくても遊技履歴を利用した遊技を容易に楽しむことができる。
【0118】
以上、発明を実施するための実施例を説明したが、本発明は、これらに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内における種々の変更が可能である。
【0119】
パスワード登録は、実施例1等で説明した様に、「(a)遊技履歴蓄積手段による遊技履歴蓄積の開始前に実行させる構成」としてもよいし、実施例6で説明した様に、「(b)遊技履歴情報をパスワード別遊技履歴情報記憶手段に記憶する際に実行させる構成」としてもよい。また、実施例1等で説明した様に、「(p)遊技履歴情報の記憶に際して遊技履歴を対応付けるべきパスワードの入力を要件とする構成」とすることもできる一方、実施例7で説明した様に、「(q)遊技履歴蓄積開始時にパスワード入力を要件としておき、遊技履歴情報の記憶の際にはパスワード入力を要件としない構成」とすることもできる。パスワード登録の時期を(b)とする構成にあっては、(p)の構成を採用することが望ましい。
【0120】
また、実施例7で説明した様に、遊技履歴蓄積開始時にパスワード入力を要件とし、遊技履歴情報記憶の際にもパスワード入力を要件とする場合には、「遊技履歴蓄積開始時に入力したパスワードと遊技履歴情報記憶の際に入力したパスワードの照合を行い、一致する場合に遊技履歴情報の記憶を行い、不一致の場合は、パスワードの再入力を求める構成」を採用するとよい。
【0121】
なお、蓄積される遊技履歴は、スタート回数、大当り回数や大当たりの種類、連荘回数、獲得出球などのメイン制御基板の演算処理結果としてサブ制御基板へと入力されるメイン系の遊技履歴や、特定の演出や予告の発生回数などといったサブ制御基板自身の演算処理結果に基づくサブ系の遊技履歴を挙げたが、メイン系遊技履歴、サブ系遊技履歴の両方を記憶しなくてもよい。また、例えばメイン系遊技履歴を記憶する場合、メイン系遊技履歴の全てである必用はなく、その一部であってもよい。サブ系遊技履歴についても同様である。
【0122】
さらに、BGMや表示画面のフレームなどに対する遊技者によるカスタマイズデータは履歴としては蓄積しない構成であっても構わない。
【0123】
こうして蓄積された遊技履歴は、例えば、「デモ画面表示中」や「変動演出が実行されていない状態」において、演出ボタン等を操作したときに「遊技履歴蓄積終了画面」を表示し、遊技者の操作に従って当該遊技者の選定したパスワードと対応付けた遊技履歴情報の蓄積を行う様に、「遊技者の積極的な指令」によって「所定の契機」を与える様に構成してもよいし、「貸し玉装置に挿入されていたカード媒体が取り出される」といった状態を「所定の契機」としてもよい。こうして「所定の契機」が与えられたとき、遊技履歴蓄積手段に蓄積された遊技履歴が、遊技者側が選定したパスワードと対応付けてパスワード別遊技履歴情報記憶手段に記憶される構成としてもよい。
【0124】
なお、演出操作ボタンSの回転操作による記号の選択等を行うジョグキーを別途設けたり、液晶表示装置LCDにタッチパネル機能を追加してもよい。