(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1〜
図7を参照して、本発明の第1実施形態を説明する。
図1に示す虚像観察装置100は、本体部101と導光部102とを備えている。本体部101は、フックなどの係合部材103を用いて、メガネ104のテンプル105に取付け可能である。導光部102は、メガネ104を観察者が装着した状態で、本体部101から観察者の眼球の正面まで延びるように形成される。本体部101は、観察させる画像を形成して画像光として射出し、導光部102は、本体部101からの画像光を観察者の眼球に導光する。
【0020】
本明細書では、説明の便宜上、虚像観察装置100をメガネ104を介して装着している観察者を正面から観たときの左(図のX軸正方向)、右(図のX軸負方向)、前(図のY軸正方向。観察者から遠い側。)、後(図のY軸負方向。観察者に近い側。)、上(図のZ軸正方向)、下(図のZ軸負方向)、水平(図のXY平面方向)、及び鉛直(図のZ軸方向)を、それぞれ単に「左」、「右」、「前」、「後」、「上」、「下」、「水平」、及び「鉛直」という場合がある。X軸、Y軸、及びZ軸は、互いに垂直である。
【0021】
図2に示すように、本体部101は、筐体114と、筐体114内に配置された光源106、照明プリズム107、及び表示素子108とを、有する。光源106は、例えばLEDであり、照明光を発する。
【0022】
照明プリズム107は、入射面109、射出面110、および反射面111を有する。光源106が発する照明光が照明プリズム107の入射面109に入射するように、照明プリズム107は配置される。照明プリズム107に入射した照明光を射出面110が反射面111に向けて全反射し、全反射された照明光を射出面110に略垂直に入射するように反射面111が照明光を反射し、略垂直に入射する照明光が射出面110を透過するように、照明プリズム107は形成され、配置される。
【0023】
照明プリズム107の射出面110を透過した照明光は、表示素子108に入射される。表示素子108は、本実施形態では透過型に構成されており、例えば透過型LCD表示素子である。表示素子108は、入射される照明光の光束を、2次元状に配置された画素毎に変調することにより、観察者に観察させる画像に相当する画像光を形成し、射出する。
【0024】
図2に示すように、導光部102は、筐体132と、左端側が筐体132内に収納されているとともに右端側が筐体132の外部へ露出している接眼光学部131と、筐体132内に格納されたインナー光学素子130と、インナー光学素子130のための回動手段140とを、有している。インナー光学素子130は、表示素子108と接眼光学部131との間の光路内に配置されている。導光部102の筐体132は、本体部101の筐体114に連結されている。本体部101の筐体114と、導光部102の筐体132とには、表示素子108とインナー光学素子130との間で画像光を伝達可能にするための開口が、それぞれ形成されている。
【0025】
接眼光学部131は、表示素子108からインナー光学素子130を介して入射された画像光を、観察者の眼球に導光して、拡大された虚像として表示させる。本例における接眼光学部131は、導光プリズム115と接眼部116(接眼面)とによって構成されている(
図2参照)。
【0026】
接眼光学部131の導光プリズム115は、例えば第1〜第6面を有するプリズムである。前後に互いに対向する第1面117および第2面118は、等脚台形状であり(
図3参照)、XZ平面方向に沿って延在している。インナー光学素子130からの画像光の入射面となる第3面119は、第1面117および第2面118の左端側の面であり、YZ平面方向に沿って延在している(
図2、
図3参照)。第4面120は、第3面119に対向する面であって、第1面117および第3面119に対して45°傾斜している。第5面及び第6面は、それぞれ上面及び下面である。導光プリズム115は、
図3に示すように、右側(X軸負側)に向かうにつれて徐々に上下方向の長さが短くなるように形成されており、その上下方向の長さは、全長にわたって例えば4mm以下である。
【0027】
接眼光学部131の接眼部116は、後方(Y軸負方向)に向けて突出した平凸レンズであって、前側の平面が、導光プリズム115の第1面117の右端部に接着され又は導光プリズム115と一体に形成される(
図2参照)。接眼部116は、第1面117の位置での上下方向の長さが例えば4mm以下であって、接眼部116は、メガネ104を介した虚像観察装置100の観察者による装着時に、観察者の眼球にほぼ対向することとなる。
【0028】
インナー光学素子130から接眼光学部131の第3面119に入射する画像光は、第4面120において接眼部116の方向に反射される。さらに画像光は接眼部116から射出されることにより、観察者の眼球に入射し、観察者は画像を観察できるようになる。
【0029】
なお、本実施形態では、虚像観察装置100の各構成要素(照明プリズム107、表示素子108、接眼光学部131等)が上述の構成を有するものとして説明するが、これらはそのような構成を有するものに限定されない。例えば、照明プリズム107や接眼光学部131の形状及び寸法は、本例以外のものでもよい。また、表示素子108は、透過型表示素子以外にも、反射型表示素子(LCOS表示素子等)や、自発光型表示素子(有機EL等。その場合は光源106を省略できる。)等で、構成してもよい。また、光源106と照明プリズム107を、LCD用の平面バックライトに置き換えてもよい。また、本体部101は、メガネ104に対して係合部材103以外の手段によって取り付け可能にしてもよいし、あるいはメガネ104と一体化(固定)されていてもよい。また、接眼光学部131は、本例のように左右方向に延在するように配置される場合以外にも、例えば接眼部116側が下側となるように上下方向に延在するように配置されてもよい。
【0030】
次に、
図4を参照して、インナー素子130の構成についてさらに詳しく説明する。
図4(a)は、表示素子108及び導光部102を示す斜視図であり、
図4(b)は
図4(a)のA−A線に沿う要部断面図である。
図4(a)に示す例において、インナー光学素子130は、回動手段140によって2つの回動位置(第1回動位置と第2回動位置)に選択的に切換可能に構成されている。回動手段140は、回動シャフト142と、回動シャフト142の操作手段としての操作レバー141とを、有している。回動シャフト142は、上下方向に延在しており、上端部がインナー光学素子130の下部に固定されており、中間部が導光部102の筐体132に回動自在に支持されて、下端部が筐体132の外部に突出している。操作レバー141は、筐体132の外部に突出した回動シャフト142の下端部から、水平方向に前側(Y軸正側)に向かって延在しており、使用者により手動操作可能である。操作レバー141、回動シャフト142、及びインナー光学素子130は、一体となって連動する。
【0031】
また、回動手段140は、インナー光学素子130を第1及び第2回動位置のそれぞれで保持するための保持手段144を、さらに有している。本例において、保持手段144は、
図4(b)の断面図に示すように、各回動位置において、操作レバー141と回動方向の両側で係合して操作レバー141の回動を抑制するように、筐体132の下面に設けられた計4つ(各回動位置に対して2つずつ)の突起132b(ストッパー)として、構成されている。回動する際には操作レバー141は保持手段144を乗り越えて回動し、第1又は第2回動位置まで回動すると保持手段144が操作レバー141の回動を抑制することにより、インナー光学素子130は当該回動位置で保持される。
【0032】
本例において、インナー光学素子130は、直方体に形成されており、その水平断面形状は、2つの異なる辺長さa、b(a<b)を有する長方形である。操作レバー141の回動操作により、回動シャフト142が水平面内で90度回動されると、インナー光学素子130は、これに連動して水平面内で90度回動されて、第1回動位置又は第2回動位置に選択的に変位される。インナー光学素子130は、第1及び第2回動位置において、画像光の入射面及び射出面が、画像光の入射方向(X軸方向)に対して垂直となる。
【0033】
操作レバー141が左側に切り換えられたとき、インナー光学素子130は、第1回動位置(
図4(a)に実線で示す位置)に変位される。このとき、インナー光学素子130の画像光の透過光路に沿う方向の厚みは、水平断面形状における短いほうの辺長さaに等しくなる。一方、操作レバー141が右側に切り換えられたとき、インナー光学素子130は、第2回動位置(
図4(a)に二点鎖線で示す位置)に変位される。このとき、インナー光学素子130の画像光の透過光路に沿う方向の厚みは、水平断面形状における長いほうの辺長さbに等しくなる。このような構成によって、インナー光学素子130は、次に説明するように、第1回動位置にあるときと第2回動位置にあるときとで、画像光の透過光路の光路長を異ならせることができ、ゆえに虚像の前後方向の表示位置、すなわち視度を変化させることができる。
【0034】
例えば、接眼光学部131の焦点距離fを26mmとし、第1回動位置及び第2回動位置におけるインナー光学素子130の画像光の透過光路に沿う方向の厚みa, bをそれぞれ4
mm, 6mmとし、インナー光学素子130の屈折率を1.5とする。このとき、インナー光学素子130が第1回動位置から第2回動位置へと切り替えられる場合、表示素子108から観察者の眼球までに至る空気換算光路長の変化x'は、
x' = (6-4) - (6-4) / 1.5 = 0.666 mm
となる。したがって、虚像の前後方向の表示位置の変化Xは、レンズの公式(ニュートンの式)より、
X = f
2 / x' = 26
2 / 0.666 = 1015 mm
となり、すなわち約1D(ディオプタ)となる。
よって、この虚像観察装置1によれば、使用者は、操作レバー141の操作によって、例えば無限遠(0D)から1m先(-1D)への虚像表示位置の切り替えや、例えば2m先(-0.5D)から0.66m先(-1.5D)への虚像表示位置の切り替え等を、微妙な調整することなく容易に行うことができる。
虚像表示位置を観察者から遠くへ変位させる第1回動位置は、例えば観察者が屋外でウォーキング中で遠くの物を見ることが多い場合等に好適であり、虚像表示位置を観察者の近くへ変位させる第2回動位置は、例えば観察者がデスクワーク中で近くの物を見ることが多い場合等に好適である。
【0035】
第1実施形態によれば、インナー光学素子130が、第1回動位置にあるときと第2回動位置にあるときとで、画像光の透過光路に沿う方向の厚みを異ならせて、画像光の透過光路の光路長を異ならせることにより、虚像の表示状態(視度)を変化させることができる。使用者は、このような光学的機能の調整を2段階の切り換えにより容易に行うことができる。
なお、本発明において、「虚像の表示状態を変化させる」とは、すなわち、視度、射出角度(眼幅)、画角等(第1実施形態では、視度)を変化させることにより、虚像の表示位置等を変化させることを指している。
【0036】
図5は、保持手段144の変形例を示している。
図5(a)は、表示素子108及び導光部102を示す斜視図であり、
図5(b)は
図5(a)のB−B線に沿う要部断面図である。本変形例において、保持手段144は、操作レバー141の上面に形成された1つの凹部141aと、第1及び第2回動位置のそれぞれにおいて、操作レバー141の凹部141aと係合して操作レバー141の回動を抑制するように、筐体132の下面に設けられた2つ(各回動位置に対して1つずつ)の突起132bとから、構成されている。
なお、保持手段144は、
図4や
図5の例のものに限られない。例えば、保持手段144は、操作レバー141の上面に形成された1つの突起と、第1及び第2回動位置のそれぞれにおいて、操作レバー141の突起と係合して操作レバー141の回動を抑制するように、筐体132の下面に形成された2つの凹部とから、構成されてもよい。
【0037】
図6は、インナー光学素子130及び回動手段140の変形例を示している。本変形例について、
図4の例と異なる部分を中心に説明する。
図6(a)は、表示素子108及び導光部102を示す斜視図であり、
図6(b)は
図6(a)のC−C線に沿う要部断面図である。
図6に示す例において、回動手段140は、回動シャフト142と、回動シャフト142の操作手段としての操作ホイール143とを、有している。回動シャフト142は、前後方向に延在しており、後端部(Y軸負方向の端部)がインナー光学素子130の前部に固定されており、前端部が筐体132によって回動自在に支持されている。操作ホイール143は、筐体132の内部で、回動シャフト142と同心軸上に回動シャフト142に固定されている。操作ホイール143の上部及び下部は、それぞれ筐体132を貫通して外部に露出しており、その外部に露出した上下の部分が、使用者により手動操作可能である。操作ホイール143、回動シャフト142、及びインナー光学素子130は、一体となって連動する。
【0038】
また、回動手段140は、インナー光学素子130を第1及び第2回動位置のそれぞれで保持するための保持手段144を、さらに有している。本例において、保持手段144は、操作ホイール143の前面(Y軸正側の面)に対向する筐体132の内壁面に設けられた1つの突起132bと、第1及び第2回動位置のそれぞれにおいて、操作ホイール143の凹部143aと係合して操作ホイール143の回動を抑制するように、操作ホイール143の前面に形成された2つ(各回動位置に対して1つずつ)の凹部143aとから、構成されている。インナー光学素子130は、第1又は第2回動位置に切り換えられたときに、保持手段144が操作ホイール143の回動を抑制することにより、当該回動位置で保持される。
なお、保持手段144は、
図6の例のものに限られない。例えば、保持手段144は、操作ホイール143の前面に形成された1つの突起と、第1及び第2回動位置のそれぞれにおいて、操作ホイール143の突起と係合して操作ホイール143の回動を抑制するように、筐体132の内壁面に形成された2つの凹部とから、構成されてもよい。
【0039】
図6のインナー光学素子130は、直方体に形成されており、そのXZ平面に沿う鉛直断面形状は、2つの異なる辺長さa、b(a<b)を有する長方形である。操作ホイール143がXZ平面内で90度回動されると、インナー光学素子130は、これに連動して、回動シャフト142を介してXZ平面内で90度回動されて、第1回動位置又は第2回動位置に選択的に変位される。インナー光学素子130は、第1及び第2回動位置において、画像光の入射面及び射出面が、画像光の入射方向(X軸方向)に対して垂直となる。
【0040】
インナー光学素子130は、第1回動位置(
図6(a)に実線で示す位置)にあるとき、画像光の透過光路に沿う方向の厚みが、鉛直断面形状における短いほうの辺長さaに等しくなる。一方、インナー光学素子130は、第2回動位置(
図6(a)に二点鎖線で示す位置)にあるとき、画像光の透過光路に沿う方向の厚みが、鉛直断面形状における長いほうの辺長さbに等しくなる。したがって、
図4の例と同様に、
図6の例でも、第1及び第2回動位置の切換により、インナー光学素子130の透過光路に沿う方向の厚み、ひいては光路長を変化させて、光学的機能を変化させることができる。使用者は、このような光学的機能の調整を2段階の切り換えにより容易に行うことができる。
【0041】
図7は、インナー光学素子130及び回動手段140の他の変形例を示している。本例では、インナー光学素子130の構成が
図6の例と同じであり、回動手段140の構成が
図6の例と異なる。本例の回動手段140は、回動シャフト142と、操作レバー141とを、有している。回動シャフト142は、前後方向に延在しており、後端部(Y軸負方向の端部)がインナー光学素子130の前部に固定されており、中間部が導光部102の筐体132に回動自在に支持されて、前端部が筐体132の外部に突出している。操作レバー141は、筐体132の外部に突出した回動シャフト142の前端部から、下側に向かって延在しており、使用者により手動操作可能である。また、回動手段140は、インナー光学素子130を第1及び第2回動位置のそれぞれで保持するための保持手段144を、さらに有している。本例において、保持手段144は、各回動位置において、操作レバー141と回動方向の両側で係合して操作レバー141の回動を抑制するように、筐体132の前面に設けられた計4つ(各回動位置に対して2つずつ)の突起132bとして、構成されている。そして、操作レバー141がXZ平面内で90度回動されると、インナー光学素子130はこれに連動して回動シャフト142を介してXZ平面内で90度回動されて、第1回動位置又は第2回動位置に選択的に変位される。本例の作用効果は、
図6の例と同様である。
【0042】
なお、第1実施形態において、インナー光学素子130の回動位置の切り換えにより、画像光の透過光路に沿う方向の厚みを変化させることができる限り、インナー光学素子130の形状は、直方体以外の形状でも良い。また、回動シャフト142の操作手段としては、操作レバー141や操作ホイール143以外のものを用いてもよい。また、回動位置の切り換え時での回動角度は、90度以外の角度でもよい。
【0043】
(第2実施形態)
図8〜
図9を参照して、本発明の第2実施形態を、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
図8は、第2実施形態の虚像観察装置100における表示素子108と導光部102の一部とを示す水平断面図である。本実施形態の構成は、インナー光学素子130を除いて、
図4の例のものと同じである。
図8では、操作手段と保持手段と導光部102の筐体132との図示を省略している。操作手段としては、操作レバー141や操作ホイール143等を使用可能である。
【0044】
図8の例のインナー光学素子130は、水平断面形状が、略鉛直に延在する第1〜第4面151〜154によって区画されている。水平断面において、互いに対向する第2面152及び第4面154は、互いに同一長さにわたって平行に延びており、第3面153は第2面152及び第4面154に対して垂直である。第3面153に対向する第1面151は、インナー光学素子130の外側に向けて突出した凸状の曲面からなる。
【0045】
このように構成されたインナー光学素子130は、操作手段に連動して上下に延在する回動シャフト142の回動により水平面内で90度回動されて、第1回動位置又は第2回動位置に選択的に変位される。インナー光学素子130は、第1回動位置(
図8に実線で示す位置)にあるとき、凸曲面状の第1面151と平面状の第3面153とが、それぞれ表示素子108からの画像光の入射面及び射出面となり、インナー光学素子130は平凸レンズの機能を発揮する。したがって、画像光は、インナー光学素子130によって屈折され、収束されることとなる。一方、インナー光学素子130は、第2回動位置(
図8に二点鎖線で示す位置)にあるとき、平面状の第2面152及び第4面154が、それぞれ表示素子108からの画像光の入射面及び射出面となり、インナー光学素子130はレンズ機能を発揮しない。なお、このとき第2面152及び第4面154は、画像光の入射方向(X軸方向)に対して垂直となる。また、
図8の例では、第1回動位置でのインナー光学素子130の画像光の透過光路に沿う方向の厚みaよりも、第2回動位置でのインナー光学素子130の画像光の透過光路に沿う方向の厚みbのほうが長い。
【0046】
第2実施形態によれば、インナー光学素子130は、第1回動位置にあるときと第2回動位置にあるときとで、異なるレンズパワーを有するので、第1回動位置と第2回動位置とで視度、画角といった虚像の表示状態に関する光学的機能を変化させることができる。使用者は、このような光学的機能の調整を2段階の切り換えにより容易に行うことができる。また、本実施形態によれば、レンズ機能を用いない第1実施形態と比べて、インナー光学素子130を大型化させることなく、回動位置の切り換えによって視度等の光学的機能をより大きく変化させることも可能である。
【0047】
なお、第2実施形態では、インナー光学素子130の画像光の透過光路に沿う方向の厚みが、回動位置の切り換えの前後で、同じとなるようにしてもよい。
【0048】
また、
図8の例に限られず、インナー光学素子130の第1〜第4面151〜154は、それぞれ、インナー光学素子130の外側に向けて突出した凸状の曲面、内側に向けて窪んだ凹状の曲面、又は平坦面のいずれからなってもよい。例えば、
図9に示す変形例では、互いに対向する第1面151及び第3面153が凸状の曲面からなり、互いに対向する第2面152及び第4面154が凹状の曲面からなる。このように構成されたインナー光学素子130は、例えば、第1回動位置にあるときに、凸曲面状の第1面151及び第3面153が、それぞれ表示素子108からの画像光の入射面及び射出面となり、インナー光学素子130は両凸レンズの機能を発揮する。したがって、画像光は、インナー光学素子130によって屈折され、収束されることとなる。一方、インナー光学素子130は、第2回動位置にあるときに、凹曲面状の第2面152及び第4面154が、それぞれ表示素子108からの画像光の入射面及び射出面となり、インナー光学素子130は両凹レンズの機能を発揮する。したがって、画像光は、インナー光学素子130によって屈折され、発散されることとなる。本変形例のインナー光学素子130は、第1及び第2回動位置の切換により、
図8の例に比べて、レンズパワーをより大きく変化させて、視度、画角等の虚像の表示状態に関する光学的機能をより大きく変化させることができる。
【0049】
(第3実施形態)
図10を参照して、本発明の第3実施形態を、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
図10は、第3実施形態の虚像観察装置100における表示素子108と導光部102の一部とを示す水平断面図であり、
図8に対応する図である。
図10の例のインナー光学素子130は、直方体に形成されており、その水平断面形状は長方形である。インナー光学素子130の鉛直に延在し水平断面形状を区画する4つの面を、第1〜第4面151〜154とする。
【0050】
本実施形態において、インナー光学素子130は、操作手段の回動操作により、上下に延在する回動シャフト142が水平面内で90度未満の任意の角度(
図10の例では、45度)だけ回動されて、第1回動位置又は第2回動位置に選択的に変位される。互いに平行な第1面151及び第3面153は、第1回動位置及び第2回動位置の両方において、それぞれ表示素子108からの画像光の入射面及び射出面となる。インナー光学素子130は、第1回動位置(
図10に実線で示す位置)にあるときと、第2回動位置(
図10に二点鎖線で示す位置)にあるときとで、画像光の入射方向(X軸方向)に対する入射面(第1面151)及び射出面(第3面153)の傾斜角度が変化し、ゆえに第3面153から射出された画像光の中心光線CRが変位(シフト)される。
【0051】
本実施形態によれば、インナー光学素子130は、第1回動位置にあるときと第2回動位置にあるときとで、画像光の入射方向に対する入射面や射出面の傾斜角度を変化させることができるので、画像光の射出角度の調整が可能となる。つまり、虚像表示状態に関する光学的機能を変化させることができる。使用者は、このような光学的機能の調整を2段階の切り換えにより容易に行うことができる。本実施形態の虚像観察装置100は、虚像表示位置を観察者の視野正面(画像を見やすい位置)と正面を外した位置(実視界の邪魔になりにくい位置)とで切り替えるのに特に好適であり、観察者の眼の位置に応じて眼幅調整(アライメント調整)して、ケラレを防止するのにも好適である。
【0052】
(第4実施形態)
図11を参照して、本発明の第4実施形態を、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
図11は、第4実施形態の虚像観察装置100における表示素子108と導光部102の一部とを示す水平断面図であり、
図8に対応する図である。本実施形態の虚像観察装置100は、インナー光学素子130として第1及び第2インナー光学素子130a、130bを有する。第1及び第2インナー光学素子130a、130bは、それぞれ直方体に形成されており、左右方向に互いから離間されている。また、本実施形態の虚像観察装置100は、回動手段140として、第1及び第2インナー光学素子130a、130bをそれぞれ回動させるための第1及び第2回動シャフト142a、142bと、第1及び第2回動シャフト142a、142bを個別に操作可能な操作手段(図示せず)とを、有している。第1及び第2回動シャフト142a、142bは、上下に延在しており、画像光の中心光線CRを間に挟んで前後方向に互いに反対側に配置されている。ただし、第1及び第2回動シャフト142a、142bは、画像光の中心光線CRに対して前後方向に同じ側に配置されてもよい。
【0053】
第1及び第2インナー光学素子130a、130bは、個別に、それぞれ第1及び第2回動シャフト142a、142bに連動して水平面内で90度回動されて、第1回動位置又は第2回動位置に選択的に変位される。第1及び第2インナー光学素子130a、130bは、それぞれ、第1回動位置(
図11に実線で示す位置)にあるとき、画像光の入射方向(X軸方向)に対して垂直な向きで、画像光の光路内に配置される。一方、第1及び第2インナー光学素子130a、130bは、それぞれ第2回動位置(
図11に二点鎖線で示す位置)にあるとき、画像光の入射方向と平行な向きで、画像光の光路から外れた位置に配置される。本例では、第1及び第2インナー光学素子130a、130bのいずれか一方が第1回動位置にあって、他方が第2回動位置にある(すなわちいずれか一方のインナー光学素子のみが画像光の光路内にある)場合と、第1及び第2インナー光学素子130a、130bの両方が第1回動位置にある(すなわち両方のインナー光学素子が画像光の光路内にある)場合と、第1及び第2インナー光学素子130a、130bの両方が第2回動位置にある(すなわち両方のインナー光学素子が画像光の光路内にない)場合との、計4通りの切換パターンが可能である。
【0054】
本実施形態では、各インナー光学素子130a、130bを、画像光の光路内に配置される第1回動位置と、画像光の光路内に配置されない第2回動位置とで、切り換えることができるので、インナー光学素子130全体としての、透過光路に沿う方向の厚みひいては光路長等を変化させて、視度等の虚像表示状態に関する光学的機能を変化させることができる。使用者は、このような光学的機能の調整を段階的な切り換えにより容易に行うことができる。
【0055】
さらに、第1及び第2インナー光学素子130a、130bの第1回動位置での画像光の透過光路に沿う方向の厚みc、dを、それぞれ異ならせた場合には、第1インナー光学素子130aのみが光路内に配置される場合と第2インナー光学素子130bのみが光路内に配置される場合とで、光路長を変化させることができる。
また、これに代えて、あるいはこれに加えて、第1及び第2インナー光学素子130a、130bの材料ひいては屈折率をそれぞれ異ならせた場合も、第1インナー光学素子130aのみが光路内に配置される場合と第2インナー光学素子130bのみが光路内に配置される場合とで、インナー光学素子130の屈折率を変化させて、虚像の表示位置等の光学的機能を変化させることができる。
【0056】
なお、インナー光学素子130として、
図11の例のように2つのインナー光学素子130a、130bを設ける場合に限られず、1つのみ又は3つ以上のインナー光学素子を設けてもよい。
【0057】
(第5実施形態)
図12〜
図13を参照して、本発明の第5実施形態を、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
図12は、第5実施形態の虚像観察装置100における導光部102を示す水平断面図である。本実施形態では、本体部101の光学素子を導光部102に内蔵させたものである。導光部102は、表示素子108と、筐体132と、光源部106と、接眼光学部131と、インナー光学素子130と、インナー光学素子130のための回動手段140と、シャッター160と、シャッター160のための移動手段163とを、有している。表示素子108は、反射型の表示素子に構成されている。また、本実施形態の虚像観察装置100は、インナー光学素子130の回動位置に応じて光源106のON、OFFを切り換える手段(図示なし)を備えている。
【0058】
表示素子108と接眼光学部131との間の光路内に配置されたインナー光学素子130は、
図8の例と同様の形状からなり、すなわち、水平断面形状を区画する第1〜第4面151〜154のうち、第1面151が凸状の曲面からなる。また、インナー光学素子130には、第1面151と第2面152との間の角部155から、第3面153と第4面154との間の角部156までに至る、対角線上に沿って、ハーフミラー157が施してある。インナー光学素子130のための回動手段140は、回動シャフト142と、操作ホイール143とを、有する。回動シャフト142は、上下方向に延在しており、上端部がインナー光学素子130の下部に固定されており、中間部が導光部102の筐体132に回動自在に支持されて、下端部が筐体132の外部に突出している。操作ホイール143は、回動シャフト142と同心軸上に、筐体132の外部に突出した回動シャフト142の下端部に固定されている。また、回動手段140は、インナー光学素子130を第1及び第2回動位置のそれぞれで保持するための保持手段144を、さらに有している。本例において、保持手段144は、操作ホイール143の上面に対向する筐体132の下面に設けられた1つの突起132bと、第1及び第2回動位置のそれぞれにおいて、筐体132の突起132bと係合して操作ホイール143の回動を抑制するように、操作ホイール143の上面に形成された2つ(各回動位置に対して1つずつ)の凹部143aとから、構成されている。
操作ホイール143が水平面内で90度回動されると、インナー光学素子130は、これに連動して、回動シャフト142を介して水平面内で90度回動されて、第1回動位置又は第2回動位置に選択的に変位される。
【0059】
光源106は、インナー光学素子130の後方側(Y軸負側)で、筐体132の内面に固定されている。一方、インナー光学素子130の前方側において、筐体132には外部環境からの外光を取り入れることができる窓132aが形成されている。シャッター160は、筐体132の内部にて、左右方向(X軸方向)に移動されることにより、窓132aを開閉可能である。シャッター160のための移動手段163は、ラック161と、ピニオンギア162とを、有する。ピニオンギア162は、筐体132の底壁とインナー光学素子130との間で、回動シャフト142と同心軸上に回動シャフト142に固定されている。ラック161は、その上部がシャッター160の下部に固定されており、その後端部で左右方向に配列された歯が、ピニオンギア162の歯と噛み合っている。これにより、ピニオンギア162が回動シャフト142に連動して水平面内で回動されると、ラック161が左右方向に移動されて、シャッター160が窓132aを開閉する。
【0060】
このように構成された虚像観察装置100では、以下に詳しく説明するように、表示素子108に入射される照明光が、内部の光源106からの内部照明と、外部環境からの光による外部照明とに切り換え可能である。よって、インナー光学素子130の第1回動位置又は第2回動位置への変位に連動して、虚像の表示位置等の光学的機能が変化されるのに加えて、外部照明と内部照明とが切り換えられる。
【0061】
インナー光学素子130が第1回動位置にあるときは、
図12に示すように、凸曲面状の第1面151が表示素子108と対向し、第1面151及び第3面153がそれぞれ画像光の入射面及び射出面となる。また、内部照明を用いるべく、光源106はON状態にあり、シャッター160は右側(X軸負側)に変位されていて窓132aを閉状態にしている。光源106からの照明光(内部照明)は、インナー光学素子130の第4面154に入射して、その一部がハーフミラー157により反射されて、第1面151から射出され、表示素子108に入射する。その後、照明光は、表示素子108により反射されて画像光に変調されて射出され、インナー光学素子130の第1面151に入射し、ハーフミラー157を透過して、第3面153から射出される。このとき、インナー光学素子130は、画像光に対して平凸レンズの機能を発揮する。
【0062】
一方、インナー光学素子130が第2回動位置に切り換えられると、
図13に示すように、凸曲面状の第1面151が光源106と対向し、第2面152及び第4面154がそれぞれ画像光の入射面及び射出面となる。また、外部照明を用いるべく、光源106はOFF状態に切り換えられ、シャッター160は左方向に移動されて窓132aを開状態にする。窓132aからの外光(外部照明)は、インナー光学素子130の第3面153に入射して、その一部がハーフミラー157により反射されて、第2面152から射出され、表示素子108に入射する。その後、照明光は、表示素子108により反射されて画像光に変調されて射出され、インナー光学素子130の第2面152に入射されて、ハーフミラー157を透過して、第4面154から射出される。このとき、インナー光学素子130は、画像光に対してレンズ機能を発揮しない。
【0063】
第5実施形態では、インナー光学素子130の第1回動位置又は第2回動位置への変位に連動して、第2実施形態と同様にインナー光学素子130のレンズパワーを変化させて、視度、画角等の虚像表示状態に関する光学的機能を変化させるとともに、内部照明と外部照明とが切り換えられる。使用者は、このような光学的機能の調整及び照明の切り換えを、2段階で容易に行うことができる。特に、
図12〜
図13の例のように、レンズ機能及び内部照明が用いられる第1回動位置は、例えば観察者が屋内でデスクワークをする場合等に好適であり、レンズ機能が用いられずに外部照明が用いられる第2回動位置は、例えば観察者が屋外でウォーキングする場合等に好適である。
【0064】
なお、
図12〜
図13の例におけるインナー光学素子130の代わりに、上述した他の各種のインナー光学素子130を用いることもできる。このような場合も、インナー光学素子130の回動位置の切り換えに連動して、光学的機能及び照明光の切り換えが可能である。
例えば、
図4の例におけるインナー光学素子130を用いた場合には、インナー光学素子130の回動位置の切り換えに連動して、インナー光学素子130の画像光の透過光路に沿う方向の厚み、ひいては光路長を変化させて、視度(ひいては虚像表示位置)等の光学的機能を変化させるとともに、内部照明と外部照明とを切り換えることができる。この場合、内部照明を用いる第1回動位置で、インナー光学素子130の画像光の透過光路に沿う方向の厚みが短くなり、外部照明を用いる第2回動位置で、インナー光学素子130の画像光の透過光路に沿う方向の厚みが長くなるようにすると、好適である。
【0065】
なお、上述した各実施形態におけるインナー光学素子130には、他の実施形態におけるインナー光学素子130の特徴を組み合わせてもよい。また、第1〜3及び第5実施形態におけるインナー光学素子130や、第4実施形態における第1及び第2インナー光学素子130a、130bの回動位置の切り換えは、3段階以上で行われるようにしてもよい。また、上述した各実施形態において、インナー光学素子の回動位置の切り換えは、使用者によるボタン等の操作に応じて回動シャフト142を電気的に回動させる手段により行われるようにしてもよい。