(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記排気通路は、前記燃料通路と略平行に設けられた排気平行通路(54)と、前記排気通路の入口から流入した前記排気を前記排気平行通路の両端の一方に導入する排気流入部(51)と、前記排気平行通路の両端の他方から流出した前記排気を前記排気通路の出口へと導入する排気流出部(52)とを含み、
前記切替手段は、前記排気流入部に設けられ、前記排気流入部を前記排気平行通路の両端の一方に選択的に接続する第1切替弁(V1)と、前記排気流出部に設けられ、前記排気流出部を前記排気平行通路の両端の他方に選択的に接続する第2切替弁(V2)とにより構成されることを特徴とする請求項2に記載の改質器。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、各実施形態を図面に基づいて説明する。なお、図中、互いに同一もしくは均等である部分には、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。
【0013】
<実施形態>
図1は、本実施形態に係る発電システムを示している。発電システムは、原燃料を改質燃料へと改質する改質器を備えており、改質燃料を燃焼させることで得られる動力により発電を行うシステムである。
【0014】
発電システムは、内燃機関10と、エアクリーナ30と、原燃料タンク31と、原燃料気化器32と、排気浄化装置33と、改質器50とを含んで構成されている。内燃機関10は、ディーゼル機関である。エアクリーナ30は、外部の空気から粉塵等を取り除き、清浄な空気を発電システムへと取り込む。原燃料タンク31は、液体の燃料である原燃料を貯留している。原燃料気化器32は、内部に原燃料流路を備えており、液体の原燃料を蒸発させ気体の原燃料へと変化させる。排気浄化装置33は、排気を浄化する触媒を備えている。改質器50は、排気通路50aと燃料通路50bとを備えており、排気通路50a内を通過する流体と燃料通路50b内を通過する流体との間で熱交換が可能となっている。また、改質器50は、切替手段として機能する第1切替弁V1と第2切替弁V2とを備えている。
【0015】
内燃機関10は、シリンダブロック11とシリンダヘッド12とを含んで構成されている。シリンダブロック11にはシリンダ13が形成されており、シリンダ13内にはシリンダ13に対して上下方向に往復動するピストン14が配設されている。ピストン14はコンロッド15を介してクランク軸16に連結されている。ピストン14の上方には、シリンダブロック11とシリンダヘッド12により区画形成された燃焼室17が設けられ、燃焼室17は吸気バルブ18及び排気バルブ19を介して、シリンダヘッド12に形成された吸気ポート20及び排気ポート21に連通している。また、シリンダヘッド12には、燃焼室17へ副燃料を供給する副燃料供給装置22が設けられている。なお、副燃料としては、圧縮着火が可能な軽油等が用いられる。
【0016】
クランク軸16には図示しない発電機が接続されており、ピストン14の上下動に伴うクランク軸16の回転により発電機で発電が行われ、外部機器または蓄電装置への給電がなされる。
【0017】
内燃機関10の吸気ポート20は、吸気通路40を介して、エアクリーナ30と接続されており、内燃機関10の排気ポート21は、第1排気通路41を介して、改質器50の排気通路50aの排気入口に接続されている。一方、改質器50の排気通路50aの排気出口は、第2排気通路42により、排気浄化装置33の排気入口に接続されており、排気浄化装置33の浄化排気出口は、第3排気通路43に接続されている。すなわち、第1排気通路41、第2排気通路42、及び、第3排気通路43により、排気経路を構成している。
【0018】
原燃料タンク31は、原燃料を送出する燃料ポンプ44aが設けられた原燃料通路44を介して、原燃料気化器32の原燃料入口に接続されている。原燃料気化器32の気化原燃料出口は、気化原燃料通路45を介して、改質器50の燃料通路50bの燃料供給口に接続されている。なお、原燃料気化器32は、内燃機関10と熱交換通路46a、46bを介して接続されており、内燃機関10において発生した熱を、原燃料気化器32内を流通する原燃料へ供給可能な構成となっている。改質器50の燃料通路50bの改質燃料出口は、改質燃料導入通路47を介して、エアクリーナ30と吸気ポート20との間に介在する吸気通路40に接続されている。
【0019】
また、内燃機関10には、計測装置として、内燃機関10のクランク軸16の回転数を計測するクランク角センサ60が設けられている。第1排気通路41には、排気温度センサ61が設けられており、改質燃料導入通路47には、燃料温度センサ62が設けられている。排気温度センサ61は、排気温度計測手段として機能し、改質器50の排気通路50aへ流入する排気の温度を示す排気温度T_exを計測する。また、燃料温度センサ62は、燃料温度計測手段として機能し、改質器50の燃料通路50bから送出される燃料の温度を示す燃料温度T_foを計測する。
【0020】
発電システムは、制御装置70を備えており、クランク角センサ60により計測された内燃機関10のクランク軸16の回転数、排気温度センサ61により計測された排気温度T_ex、燃料温度センサ62により計測された燃料温度T_foが制御装置70に入力される。また、外部から入力された発電システムの駆動命令、または、制御装置70内で生成された発電システムの駆動命令に基づいて、燃料ポンプ44a、第1切替弁V1、第2切替弁V2へ制御信号を送信する。
【0021】
本実施形態に係る発電システムにおいて、原燃料タンク31から供給される原燃料はメタノールである。原燃料タンク31から改質器50へと供給されたメタノールは、改質器50内において、下記熱化学方程式1に示す吸熱反応である化学反応により、水素と一酸化炭素とに改質される。そして、この化学反応により生成された水素と一酸化炭素が改質燃料となる。
【0022】
【化1】
ここで、本実施形態に係る発電システムの動作について説明する。まず、制御装置70から燃料ポンプ44aへ送信された制御信号により燃料ポンプ44aが作動し、原燃料タンク31に蓄えられた原燃料が、原燃料通路44を介して原燃料気化器32へと供給される。原燃料気化器32へ供給された原燃料は、内燃機関10から熱交換通路46a、46bを介して流入した熱により、気化される。気化された原燃料は、気化原燃料通路45を介して改質器50の燃料通路50bの原燃料入口へと供給され、改質器50の燃料通路50bを通過し、上述した化学反応により改質燃料へと改質される。改質器50の燃料通路50bの改質燃料出口から送出された改質燃料は、改質燃料導入通路47を通過し、吸気通路40へと流入する。一方、エアクリーナ30から吸入された空気も吸気通路40へと流入する。吸気通路40内では、改質燃料と空気とが混合して混合気となり、混合気は吸気ポート20へ供給される。
【0023】
吸気ポート20へ供給された混合気は、吸気行程における吸気バルブ18の開放に伴い、燃焼室17内へと流入する。圧縮行程において、ピストン14の上昇に伴い、混合気が圧縮され、燃焼室17内は高温高圧となる。ここで、クランク角センサ60が、ピストン14が上死点近傍まで上昇したことを検出すれば、制御装置70からの指令により、副燃料供給装置22から副燃料が燃焼室17内へと供給される。供給された副燃料は、高温高圧の環境下で自己発火し、発生した火炎が改質燃料へと伝播して改質燃料の燃焼が行われる。そして、副燃料及び改質燃料の燃焼により、燃焼室17内の混合気が膨張し、ピストン14が下降する。ピストン14が下死点近傍まで下降すれば、排気バルブ19が開放され、排気が排気ポート21から排出される。
【0024】
排気ポート21から排出された排気は、第1排気通路41を介して改質器50の排気通路50aの排気入口へと流入し、改質器50の燃料通路50bの原燃料と熱交換を行った後、改質器50の排気通路50aの排気出口から、第2排気通路42を経て排気浄化装置33の排気入口へ流入し、浄化される。浄化された排気は、排気浄化装置33の浄化排気出口から第3排気通路43を介して、外部へ排出される。
【0025】
図2は、
図1で示した改質器50の拡大図である。排気通路50aは、排気流入部51と、排気流出部52と、排気分岐部53と、複数の排気平行通路54とにより構成されている。
【0026】
排気流入部51は、第1排気通路41から流入する排気を分岐させる第1排気流入部51aと、第2排気流入部51bとにより構成されている。また、排気流出部52は、第2排気通路42へと流出する排気を合流させる第1排気流出部52aと、第2排気流出部52bとにより構成されている。
【0027】
排気分岐部53は、第1排気分岐部53aと、第2排気分岐部53bとにより構成されている。第1排気分岐部53aは、第1端が第1排気流入部51aに接続されており、第2端が第1排気流出部52aに接続されている。第2排気分岐部53bは、第1端が第2排気流入部51bに接続されており、第2端が第2排気流出部52bに接続されている。
【0028】
第1排気分岐部53aの第1端と第2端との間には、排気平行通路54の第1端が、それぞれ所定の間隔を空けて接続されており、第2排気分岐部53bの第1端と第2端との間には、排気平行通路54の第2端が、それぞれ所定の間隔を空けて接続されている。
【0029】
排気流入部51には、第1切替弁V1が設けられており、第1切替弁V1の切替制御により、第1排気流入部51aの閉塞及び開放、第2排気流入部51bの閉塞及び開放が可能となっている。また、排気流出部52には、第2切替弁V2が設けられており、第2切替弁V2の切替制御により、第1排気流出部52aの閉塞及び開放、第2排気流出部52bの閉塞及び開放が可能となっている。すなわち、第1切替弁V1の切替制御により、排気流入部51と、排気平行通路54の第1端と第2端との一方とを選択的に接続することが可能となっており、第2切替弁V2の切替制御により、排気流出部52と、排気平行通路54の第1端と第2端との一方とを選択的に接続することが可能となっている。
【0030】
一方、燃料通路50bは、燃料入口が気化原燃料通路45に接続された燃料流入部55と、燃料出口が改質燃料導入通路47に接続された燃料流出部56と、複数の燃料平行通路57とにより構成されている。
【0031】
燃料平行通路57は、排気平行通路54とそれぞれが互い違いとなるように設けられており、各排気平行通路54と各燃料平行通路57とは、略平行となるように設けられている。そして、燃料平行通路57の第1端は、燃料流入部55に、それぞれ所定の間隔を空けて接続されており、燃料平行通路57の第2端は、燃料流出部56に、それぞれ所定の間隔を空けて接続されている。すなわち、各排気平行通路54と各燃料平行通路57とが略平行となるように設けられ、且つ、第1排気分岐部53aと、第2排気分岐部53bと、燃料流入部55と、燃料流出部56とが、略平行となるように設けられている。
【0032】
本実施形態では、第1切替弁V1、第2切替弁V2の位置を0〜1で表されるバルブ位置を用いて制御している。
図3は、第1切替弁V1及び第2切替弁V2のバルブ位置と、第1排気流入部51a、第2排気流入部51b、第1排気流出部52a、第2排気流出部52bの通路面積との関係を示している。
【0033】
第1切替弁V1のバルブ位置を0とすれば、第1排気流入部51aが閉塞されるとともに、第2排気流入部51bが開放され、第1切替弁V1のバルブ位置を1とすれば、第1排気流入部51aが開放されるとともに、第2排気流入部51bが閉塞される。一方、第2切替弁V2のバルブ位置を0とすれば、第1排気流出部52aが閉塞されるとともに、第2排気流出部52bが開放され、第2切替弁V2のバルブ位置を1とすれば、第1排気流出部52aが開放されるとともに、第2排気流出部52bが閉塞される。
【0034】
また、第1切替弁V1のバルブ位置を0よりも大きく1よりも小さい値とすれば、第1排気流入部51a及び第2排気流入部51bが共に開放され、第2切替弁V2のバルブ位置を0よりも大きく1よりも小さい値とすれば、第1排気流出部52a及び第2排気流出部52bが共に開放される。
【0035】
本実施形態では、第1切替弁V1のバルブ位置を切り替えることにより、排気流入部51と、排気平行通路54の両端の一方とを選択的に接続している。また、第2切替弁V2のバルブ位置を切り替えることにより、排気流出部52と、排気平行通路54の両端の他方とを接続している。こうすることにより、排気平行通路54を通過する排気の通過方向を変更している。
【0036】
図4は、第1切替弁V1の位置を0とし、第2切替弁V2の位置を1とした場合の、排気の通過方向と、燃料の通過方向とを示している。図中、排気の通過方向を破線で示し、燃料の通過方向を実線で示している。第1切替弁V1の位置を0としており、第2切替弁V2の位置を1としているため、第1排気流入部51a及び第2排気流出部52bが閉塞され、第2排気流入部51b及び第1排気流出部52aが開放されている。
【0037】
第1排気通路41から流入した排気は、第2排気流入部51b、第2排気分岐部53bを経て、各排気平行通路54へと流入する。各排気平行通路54を通過した排気は、第1排気分岐部53a、第1排気流出部52aを経て、第2排気通路42へと送出される。
【0038】
一方、気化原燃料通路45から流入した原燃料は、燃料流入部55を経て、各燃料平行通路57へと流入する。燃料平行通路57を通過する燃料は、排気平行通路54を通過する排気と熱交換を行う。このとき、燃料平行通路57を通過する燃料の通過方向と、排気平行通路54を通過する排気の通過方向とは、対向方向である。そして、燃料平行通路57を通過した燃料は、燃料流出部56を経て、改質燃料導入通路47へ送出される。
【0039】
図5は、第1切替弁V1の位置を1とし、第2切替弁V2の位置を0とした場合の、排気の通過方向と、燃料の通過方向とを示している。図中、排気の通過方向を破線で示し、燃料の通過方向を実線で示している。第1切替弁V1の位置を1としており、第2切替弁V2の位置を0としているため、第1排気流入部51a及び第2排気流出部52bが開放され、第2排気流入部51b及び第1排気流出部52aが閉塞されている。
【0040】
第1排気通路41から流入した排気は、第1排気流入部51a、第1排気分岐部53aを経て、各排気平行通路54へと流入する。各排気平行通路54を通過した排気は、第2排気分岐部53b、第2排気流出部52bを経て、第2排気通路42へと送出される。
【0041】
一方、気化原燃料通路45から流入した原燃料は、燃料流入部55を経て、各燃料平行通路57へと流入する。燃料平行通路57を通過する燃料は、排気平行通路54を通過する排気と熱交換を行う。このとき、燃料平行通路57を通過する燃料の通過方向と、排気平行通路54を通過する排気の通過方向とは、並行方向である。そして、燃料平行通路57を通過した燃料は、燃料流出部56を経て、改質燃料導入通路47へ送出される。
【0042】
図6は、第1切替弁V1の位置を1とし、第2切替弁V2の位置を0よりも大きく1よりも小さい値に対応した位置とした場合の、排気の通過方向と、燃料の通過方向とを示している。図中、排気の通過方向を破線で示し、燃料の通過方向を実線で示している。第1切替弁V1の位置を1としているため、第1排気流入部51aが開放され、第2排気流入部51bが閉塞されている。また、第2切替弁V2の位置を0よりも大きく1よりも小さい値に対応した位置としているため、第1排気流出部52a及び第2排気流出部52bはともに開放されている。
【0043】
第1排気通路41から流入した排気は、第1排気流入部51a、第1排気分岐部53aを経て、一部は各排気平行通路54へと流入し、一部は第1排気流出部52aへ流入する。各排気平行通路54を通過した排気は、第2排気分岐部53b、第2排気流出部52bを経て、第1排気流出部52aを通過した排気と合流し、第2排気通路42へと送出される。すなわち、排気は、第1排気流入部51aから第1排気流出部52aへと直接通過しており、第1切替弁V1及び第2切替弁V2をバイパス手段として機能させているということができる。
【0044】
一方、気化原燃料通路45から流入した原燃料は、燃料流入部55を経て、各燃料平行通路57へと流入する。燃料平行通路57を通過する燃料は、排気平行通路54を通過する排気と熱交換を行う。このとき、燃料平行通路57を通過する燃料の通過方向と、排気平行通路54を通過する排気の通過方向とは、並行方向である。そして、燃料平行通路57を通過した燃料は、燃料流出部56を経て、改質燃料導入通路47へ送出される。
【0045】
ところで、改質器50内では、下記熱化学方程式2に示す化学反応により、副生成物も生成される。
【0046】
【化2】
副生成物にはメタンが含まれているため、そのメタンを燃料として用いることはできる。ところが、副生成物は発熱反応により生成されているため、副生成物を燃焼させた際に発生する熱量は、原燃料を直接燃焼させる場合と比較しても小さくなる。そのため、改質器50での副生成物の生成は、発電システム全体での発電効率の低下の一因となる。そのうえ、上記熱化学方程式2に係る化学反応は発熱反応であるため、排気熱と反応熱とによりさらに温度が上昇し、より一層副生成物が生成されることになり、さらに発電効率が低下する。
【0047】
図7は、燃料温度T_foと、改質効率との関係性を示している。ここで、改質効率とは、改質器50へ導入された原燃料の、熱化学方程式1に係る化学反応が起こる割合を示している。燃料温度T_foが低い場合、改質が十分に行われず、原燃料の吹き抜けが生ずる。そのため、改質効率が低下する。一方、燃料温度T_foが高い場合、熱化学方程式1に係る化学反応の割合が低下し、上述した熱化学方程式2に係る化学反応の割合が上昇する。そのため、改質効率が低下する。本実施形態では、
図7で示した改質効率に基づいて、原燃料の吹き抜けにより改質効率が低下すると見なすことができる温度を第1温度閾値T1と定義し、副生成物の生成により改質効率が低下すると見なすことができる温度を第2温度閾値T2と定義する。すなわち、燃料温度T_foの、第1温度閾値T1よりも高く、第2温度閾値T2よりも低い温度範囲を、改質の適正温度帯ということができる。
【0048】
図8(a)〜(c)は、燃料の通過方向と排気の通過方向が対向方向である場合の、排気通路50a中の排気の温度変化と、燃料通路50b中の燃料の温度変化を示している。燃料の通過方向と排気の通過方向とが対向方向である場合、燃料は、燃料平行通路57の燃料流入部55側において、熱交換により温度が低下した排気からの熱を得る。燃料が燃料通路50bを通過する過程で、対向方向に流れる排気の温度は上昇し、それに伴い、燃料の温度も上昇する。そして、燃料温度T_foは、排気温度T_exと同等の値、または、排気温度T_exよりも低く、且つ、排気温度T_exに近似した値となる。なお、上記熱化学方程式1に係る化学反応により改質燃料が生成される限りは、排気から燃料へと熱を供給しており、且つ、化学反応が吸熱反応であるため、燃料温度T_foが排気温度T_exよりも高くなることはない。
【0049】
図8(a)は、排気温度T_exが第2温度閾値T2よりも高い場合の、排気通路50a中の排気の温度変化と、燃料通路50b中の燃料の温度変化を示している。燃料温度T_foは、排気温度T_exと同等の値、または、排気温度T_exよりも低く、且つ、排気温度T_exに近似した値となるため、燃料温度T_foが第2温度閾値T2よりも高くなるおそれがある。そのため、副生成物の生成が促進され、改質効率が低下する。
【0050】
図8(b)、(c)は、排気温度T_exが第2温度閾値T2よりも低い場合の、排気通路50a中の排気の温度変化と、燃料通路50b中の燃料の温度変化を示している。燃料温度T_foは、排気温度T_exと同等の値、または、排気温度T_exよりも低く、且つ、排気温度T_exに近似した値となるため、燃料温度T_foは、第2温度閾値T2よりも低い値となる。
【0051】
したがって、排気温度T_exが第2温度閾値T2よりも低い場合には、燃料の通過方向と排気の通過方向とを対向方向とすれば、燃料温度T_foを第2温度閾値T2よりも低くすることができるといえる。
【0052】
図9(a)〜(c)は、燃料の通過方向と排気の通過方向が対向方向である場合の、排気温度T_exと、燃料温度T_foとを示している。ここで、
図9(a)における排気温度T_exは、
図8(a)における排気温度T_exと同じであり、
図9(b)における排気温度T_exは、
図8(b)における排気温度T_exと同じであり、
図9(c)における排気温度T_exは、
図8(c)における排気温度T_exと同じである。
【0053】
燃料の通過方向と排気の通過方向とが並行方向である場合、燃料は、燃料平行通路57の燃料流入部55側において、高温の排気からの熱を得る。燃料が燃料通路50bを通過する過程で、燃料の温度が上昇するとともに、並行方向に流れる排気の温度は低下する。そして、燃料温度T_foは、燃料通路50bの出口において、排気温度T_exと、気化原燃料通路45から燃料通路50bに流入する燃料の温度との中間値となる。したがって、燃料の通過方向と排気の通過方向が並行方向である場合、排気温度T_exが低いほど、燃料温度T_foが第1温度閾値T1よりも低くなるおそれが生ずる。一方、排気温度T_exが第2温度閾値T2よりも高くても、燃料温度T_foが第2温度閾値T2よりも高くなるおそれは小さくなる。
【0054】
そこで、本実施形態では、排気温度T_exが第2温度閾値T2以下の場合には、燃料の通過方向と排気の通過方向とを対向方向とし、燃料温度T_foの低下を防ぎ、改質効率を上昇させる。一方、排気温度T_exが第2温度閾値T2よりも高い場合には、燃料の通過方向と排気の通過方向とを並行方向とし、燃料温度T_foが第2温度閾値T2よりも高くなることを防ぎ、改質効率を上昇させる。さらに、排気温度T_exの上昇に伴い、燃料温度T_foが第2温度閾値T2よりも高くなった場合には、燃料の通過方向と排気の通過方向とを並行方向とするとともに、排気の一部を排気流入部51から排気流出部52へと直接通過させ、熱交換に用いられる排気の量を低減する。すなわち、第1切替弁V1及び第2切替弁V2の切替制御を行う際に閾値として用いる所定値を、第2温度閾値T2としている。
【0055】
図10は、制御装置70が実行する制御を示すフローチャートである。
図10に示すフローチャートは、所定の制御周期で実行される。
【0056】
まず、排気温度T_exが第2温度閾値T2以下であるか否かの判定がなされる(S101)。ここで、上述した通り、排気と燃料との間で熱交換が行われるため、排気温度T_exが第2温度閾値T2以下である場合、燃料温度T_foも第2温度閾値T2以下となる。したがって、排気温度T_exが第2温度閾値T2以下と判定された場合には(S101:YES)、第1切替弁V1を1とし、第2切替弁V2を0として(S102)、燃料の通過方向と排気の通過方向を対向方向とすることにより、熱交換効率を上昇させる。これにより、燃料温度T_foが第2温度閾値T2よりも大きくならないという条件のもとで、燃料温度T_foの低下を抑止する。
【0057】
一方、排気温度T_exが第2温度閾値T2以下でないと判定された場合(S101:NO)、燃料温度T_foが第2温度閾値T2以下であるか否かの判定がなされる(S103)。排気温度T_exが第2温度閾値T2以下であると判定された場合(S103:YES)、第1切替弁V1を1とし、第2切替弁V2を0として(S104)、燃料の通過方向と排気の通過方向とを並行方向として、熱交換効率を低下させる。すなわち、燃料温度T_foは第2温度閾値T2以下であるものの、排気温度T_exは第2温度閾値T2よりも高いため、排気と燃料の通過方向とを対向方向とする制御を継続した場合、燃料温度T_foが第2温度閾値T2よりも高くなるおそれがある。そのため、燃料の通過方向と排気の通過方向とを並行方向として、熱交換効率を低下させている。これにより、燃料温度T_foが第2温度閾値T2よりも高くなることを抑止する。
【0058】
さらに、燃料温度T_foが第2温度閾値T2以下でないと判定された場合(S103:NO)、すなわち、燃料温度T_foが第2温度閾値T2よりも高くなり、上記熱化学方程式2に係る化学反応の割合が上昇した場合、排気の一部を排気流入部51から排気流出部52へと直接通過させる。このとき、まず、第2切替弁V2の位置を示す変数x(0<x<1)を、燃料温度T_foと第2温度閾値T2との差分を変数として用いる関数を用いて算出する(S105)。そして、第2切替弁V2の位置をxとする。この制御により、燃料の通過方向と排気の通過方向とを並行方向とするとともに、排気の一部を排気流入部51から排気流出部52へと直接通過させることとなり、熱交換に用いられる排気の量を低減する。
【0059】
上記構成により、本実施形態に係る改質器50を備える発電システムは、以下の効果を奏する。
【0060】
・燃料の通過方向と排気の通過方向とを、熱交換効率の高い対向方向と、熱交換効率が低い並行方向とに切り替えることができる。このため、原燃料の改質状態を比較的制御し易い2つの状態で切り替えることができ、簡易な構造により改質効率の低下を抑制することができる。
【0061】
・排気温度T_exが第2温度閾値T2よりも低い場合に、燃料の通過方向と排気の通過方向とを対向方向として熱交換効率を高めているため、改質温度の低下を抑制することができ、それにより、改質が十分に行われない事態を回避することができる。また、排気温度T_exが第2温度閾値T2よりも高い場合には、燃料の通過方向と排気の通過方向とを並行方向として熱交換効率を低下させているため、燃料温度T_foの上昇を抑制することができ、それにより、副生成物の生成を抑制することができる。
【0062】
・燃料温度T_foが第2温度閾値T2よりも高い場合には、燃料の通過方向と排気の通過方向とを並行方向とし、且つ、一部の排気を排気流入部51から排気流出部52へと直接通過させることで、燃料に供給される排気熱を低減することができる。それにより、副生成物の生成を抑制することができるため、改質効率を向上させることができる。
【0063】
<変形例>
・上記実施形態において、発電機として用いる内燃機関10の排気経路に改質器50を設けたものを示した。しかしながら、改質器50は、内燃機関10の排気経路に設けられ、内燃機関10の排気の熱により改質を行うものであればよく、その内燃機関10は、発電機以外として用いるものであってもよい。
【0064】
・上記実施形態では、排気の通過方向を切り替えることにより、燃料の通過方向と排気の通過方向とを、対向方向と並行方向とに切り替えるものとしたが、燃料の通過方向を切り替えることにより、燃料の通過方向と排気の通過方向とを、対向方向と並行方向とに切り替えるものとしてもよい。例えば、上記実施形態における改質器50の排気通路50aを燃料通路として用い、燃料通路50bを排気通路として用いればよい。
【0065】
・上記実施形態において、原燃料としてメタノールを用いるものとしたが、原燃料は、メタノールに限られることはない。すなわち、改質反応が吸熱反応であり、所定温度よりも低い場合では、燃料の吹き抜けによる改質効率の低下が発生し、所定温度よりも高い場合には、副生成物が発生するものであればよい。また、改質の際に空気や水等が必要な原燃料を用いることもでき、その場合には、改質器50の燃料通路50bに空気や水等を供給する構成とすればよい。
【0066】
・上記実施形態では、第2切替弁V2のバルブ位置を0よりも大きく1よりも小さい値に対応する位置とすることで、排気の一部を排気流入部51から排気流出部52へと直接通過させている。しかしながら、第1切替弁V1のバルブ位置を0よりも大きく1よりも小さい値に対応する位置とすることで、排気の一部を排気流入部51から排気流出部52へと直接通過させてもよい。
【0067】
・上記実施形態において、第1切替弁V1、第2切替弁V2を、それぞれ単一の切替弁とした。しかしながら、第1排気流入部51a、第2排気流入部51bのそれぞれに第1切替弁V1を設け、第1排気流入部51aの開放及び閉塞と、第2排気流入部51bの開放及び閉塞とを独立して制御可能なものとしてもよい。また、第1排気流出部52a、第2排気流出部52bのそれぞれに第2切替弁V2を設け、第1排気流出部52aの開放及び閉塞と、第2排気流出部52bの開放及び閉塞とを独立して制御可能なものとしてもよい。また、第1切替弁V1及び第2切替弁V2は、少なくとも、通路の開放及び閉塞を切り替えることが可能な構造を有していればよく、その具体的な構造は任意に設計可能である。
【0068】
・上記実施形態における排気通路50aの具体的な構造、及び、燃料通路50bの具体的な構造は、上記実施形態で示した構造に限られることはない。すなわち、少なくとも燃料の通過方向と排気の通過方向とを、対向方向の並行方向とに切り替えられる構造であればよい。すなわち、排気平行通路54、燃料平行通路57とは、厳密に平行な構造である必要はなく、直線形状の通路である必要もない。例えば、排気平行通路54中で排気平行通路54の形状が変形していてもよい。
【0069】
・上記各実施形態では、内燃機関10において、副燃料を燃焼させることにより発生する火炎を改質燃料に伝播させ、改質燃料を燃焼させるものとした。しかしながら、供給する改質燃料によっては、内燃機関10に副燃料供給装置22を設けず、点火プラグを設け、点火プラグにより発生した火花により改質燃料を燃焼させるものとしてもよい。
【0070】
・上記実施形態において、改質器50の燃料通路50bの出口の温度を燃料温度センサ62で計測し、その温度を燃料温度T_foとしたが、改質器50の燃料通路50bの内部の温度を計測し、その温度を燃料温度T_foとしてもよい。