(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392555
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】粉体急結剤
(51)【国際特許分類】
C04B 22/14 20060101AFI20180910BHJP
C04B 24/22 20060101ALI20180910BHJP
C04B 22/12 20060101ALI20180910BHJP
C04B 24/04 20060101ALI20180910BHJP
C04B 28/02 20060101ALI20180910BHJP
E21D 11/10 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
C04B22/14 A
C04B24/22 A
C04B22/12
C04B24/04
C04B22/14 B
C04B28/02
E21D11/10 D
【請求項の数】9
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-119906(P2014-119906)
(22)【出願日】2014年6月10日
(65)【公開番号】特開2015-231931(P2015-231931A)
(43)【公開日】2015年12月24日
【審査請求日】2017年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】原 啓史
(72)【発明者】
【氏名】室川 貴光
(72)【発明者】
【氏名】奥山 康二
(72)【発明者】
【氏名】樋口 隆行
【審査官】
浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−233954(JP,A)
【文献】
特開2002−053357(JP,A)
【文献】
特開2014−005183(JP,A)
【文献】
特開2002−220267(JP,A)
【文献】
特開2014−005184(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00−32/02
C04B 40/00−40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記条件<1>〜<4>を満たす粉体急結剤。
<1>硫酸アルミニウム100部と下記式(1)のビスフェノール系縮合物
(但し、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンの縮合物と2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの縮合物を除く。)メタンの縮合物)0.01〜7部を含有する
こと。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
<2>硫酸アルミニウムの水和数が6〜18であること。
<3>ビスフェノール系縮合物の平均分子量が700〜30,000であること。
<4>以下<4−1>〜<4−1>からなる群の1種以上を含有する助剤を使用すること。
<4−1>硫酸アルミニウムとビスフェノール系縮合物の合計100部に対して、7部以下のフッ素化合物。
<4−2>カルボン酸。
<4−3>硫酸アルミニウムとビスフェノール系縮合物の合計100部に対して、10部以下の石膏。
【請求項2】
ビスフェノール系縮合物が、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンの縮合物、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンの縮合物、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンの縮合物、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィドの縮合物、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンの縮合物からなる群の1種以上を含有する請求項1記載の粉体急結剤。
【請求項3】
ビスフェノール系縮合物がビスフェノールSである請求項1〜2のうちの1項記載の粉体急結剤。
【請求項4】
カルボン酸類の使用量が、硫酸アルミニウムとビスフェノール系縮合物の合計100部に対して、5部以下である請求項1〜3のうちの1項記載の粉体急結剤。
【請求項5】
セメントと、請求項1〜4のうちの1項記載の粉体急結剤を含有するセメント組成物。
【請求項6】
粉体急結剤の使用量が、セメント100部に対して、2〜20部ある請求項5記載のセメント組成物。
【請求項7】
更に、水を含有する請求項5〜6のうちの1項記載のセメント組成物。
【請求項8】
請求項5〜7のうちの1項記載のセメント組成物を含有する吹付け材料。
【請求項9】
セメントと、請求項1〜4のうちの1項記載の粉体急結剤を混合する吹付け工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路、鉄道、及び導水路等のトンネルにおいて、露出した地山面へ吹付ける粉体急結剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トンネル掘削等、露出した地山の崩落を防止するために、急結剤をコンクリートに混合した急結性コンクリートの吹付け工法が用いられている(特許文献1)。この工法は、通常、掘削工事現場に設置した計量混合プラントで、セメント、骨材、及び水を計量混合して吹付け用のコンクリートを調整し、アジテータ車で運搬し、コンクリートポンプで圧送し、途中に設けた合流管で他方から圧送された急結剤と混合して急結性吹付けコンクリートとし、地山面に所定の厚さになるまで吹付ける工法である。
【0003】
急結剤としては、大きく分けて、カルシウムアルミネートにアルカリ金属アルミン酸塩やアルカリ金属炭酸塩等を混合した粉体急結剤が使用される場合が多い。しかし、吹付け時の粉塵量が少なく、アルカリ薬傷がないという点から、アルミニウム塩を主成分とする酸性の液体急結剤の使用が望まれている(特許文献2〜6)。
【0004】
ビスフェノール系縮合物と急結成分を含有した急結剤が報告されている(特許文献7)。しかしながら、ここで言う急結成分とはカルシウムアルミネートのことであり、本発明の硫酸アルミニウムとは異なる。
【0005】
ビスフェノール系縮合物と硫酸アルミニウムを含有する吹付け材料が報告されている(特許文献8〜10)。しかしながら、これらの先行技術文献は、いずれも硫酸アルミニウム水溶液に対してビスフェノール系縮合物を添加しているものであり、本発明の粉体急結剤とは異なる。これらの先行技術文献において、ビスフェノール系縮合物を用いる目的は、併用するポリアルキレンオキサイドとの反応により、吹付けコンクリートのずり落ちを防ぐためである。
【0006】
本発明は、例えば、セメントコンクリートと混合した際に、粉体急結剤中の硫酸アルミニウムの分散性を向上するために、ビスフェノール系縮合物を用いるものである。
【0007】
本発明は、これらの先行技術文献とは、ビスフェノール系縮合物を用いる目的が異なる。これらの先行技術文献には、セメントコンクリートとの混合性を向上することは記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公昭60−4149号公報
【特許文献2】特開平10−87358号公報
【特許文献3】特開2003−246659号公報
【特許文献4】特開2005−89276号公報
【特許文献5】特開2006−193388号公報
【特許文献6】特開2008−30999号公報
【特許文献7】特開2002−220267号公報
【特許文献8】特開2002−121061号公報
【特許文献9】特開2001−335353号公報
【特許文献10】特開2002−249356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者は、前記課題や要求を種々検討した結果、本発明により、前述の課題を解決する知見を得て本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明は、硫酸アルミニウム100部と下記式(1)のビスフェノール系縮合物0.01〜7部を含有する粉体急結剤であり、
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【化10】
硫酸アルミニウムの水和数が6〜18である該粉体急結剤であり、ビスフェノール系縮合物の平均分子量が1,000〜30,000である該粉体急結剤であり、ビスフェノール系縮合物がビスフェノールSである該粉体急結剤であり、更に、フッ素化合物を含有する該粉体急結剤であり、更に、カルボン酸類を含有する該粉体急結剤であり、更に、石膏を含有する該粉体急結剤であり、セメントと、該粉体急結剤を含有するセメント組成物であり、該セメント組成物を含有する吹付け材料であり、セメントと、該粉体急結剤を混合する吹付け工法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の粉体急結剤は、優れた急結性や強度発現性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明で言うセメントコンクリートとは、セメントペースト、モルタル、及びコンクリートの総称である。本発明で言う部や%は、特に規定のない限り質量基準である。本発明で言う粉体急結剤とは、例えば、最大粒径が1mm以下であるものをいう。
【0014】
本発明は、硫酸アルミニウム100部に対して、ビスフェノール系縮合物を0.01〜7部含有する粉体急結剤である。
【0015】
本発明で使用する硫酸アルミニウムは、無水物、水和物のいずれも使用することができる。水和数が異なるものを2種以上用いてもよい。これらの中では、コンクリートと混合時の分散性が優れる点で、水和物が好ましく、6〜18水和物がより好ましく、10〜16水和物が最も好ましい。水和数が6未満だと、水に対する溶解性が悪く、分散しづらく、優れた急結性が得られない場合がある。水和数が18を超えると、含有する水の割合が高くなるために、強度発現性が損なわれる場合がある。硫酸アルミニウムの水和数は、熱重量測定装置を用いて、結晶水が完全に放出されるのに十分な温度(500℃)まで試料を加熱し、減少した重量率W(%)を測定し、下記の式より水和数Hを算出した。下記の式において、水、硫酸アルミニウム無水物の分子量を、それぞれ18、342とし、硫酸アルミニウム単分子あたりの水分子数を算出した。
H =(W/18)/{(100−W)/342}
【0016】
本発明で使用するビスフェノール系縮合物とは、例えば、2個のフェノールが官能基で架橋された化合物とホルムアルデヒドを縮合反応して得られる生成物の総称である。
【0017】
2個のフェノールを架橋する官能基としては、メチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、ブチリデン基、シクロヘキシリデン基、ビニリデン基、カルボニル基、イミノ基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基等が挙げられる。
【0018】
更にこれらの基の任意の水素原子が、炭素数1〜4のアルキル基、フェニル基、アミノ基、ヒドロキシ基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等で置換されたものも挙げられる。
【0019】
ここで言うフェノールとは、芳香環に結合している任意の水素原子が、炭素数1〜4のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、アミノ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基等で置換された化合物、ヒドロキシル基の水素原子の一部がアルカリ金属原子等に置換された化合物も含有する。ビスフェノール系縮合物は1種又は2種以上が使用可能である。これらの中では、強度発現性が優れる点で、2個のフェノールをスルホニル基で架橋したビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(通称、ビスフェノールS)が好ましい。
【0020】
ビスフェノール系縮合物は、その塩であっても良い。ビスフェノールとは、例えば、下記式(1)の化合物が好ましい。
【0026】
ビスフェノール系縮合物の平均分子量は700〜35,000が好ましく、1,000〜30,000がより好ましく、5,000〜20,000が最も好ましい。この範囲内であれば、本発明の粉体急結剤の分散性が向上し、優れた急結性を示す。ここでいう平均分子量とは、重量平均分子量を指す。平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ分析(標準物質はポリスチレンスルホン酸ナトリウム)により測定する。ビスフェノール系縮合物は、例えば、各成分をアルカリ存在下で、加熱して縮合することによって得られる。
【0027】
ビスフェノール系縮合物の使用量は、硫酸アルミニウム100部に対して、0.01〜7部が好ましく、0.1〜5部がより好ましく、0.5〜3部が最も好ましい。0.01部未満だと、分散性が改善されず、優れた急結性を示さない場合がある。7部を越えると、ビスフェノール系縮合物が遅延剤として働き、急結性を阻害する場合がある。
【0028】
本発明の粉体急結剤は、急結性を向上させるために、フッ素化合物を含有してもよい。フッ素化合物としては、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化マグネシウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化アルミニウム、フッ化亜鉛、フッ化アンモニウム、フッ化水素ナトリウム、フッ化水素カリウム、六フッ化アルミニウムナトリウム、六フッ化アルミニウムカリウム、ケイフッ化水素、ケイフッ化ナトリウム、ケイフッ化マグネシウム、ケイフッ化カリウム、ケイフッ化亜鉛、ケイフッ化アンモニウム等が挙げられる。これらのうち1種又は2種以上が使用可能である。これらの中では、凝結性状や強度発現性が優れる点で、フッ化ナトリウム及び/又はフッ化カリウムが好ましく、フッ化ナトリウムが好ましい。
【0029】
フッ素化合物の使用量は、硫酸アルミニウムとビスフェノール系縮合物の合計100部に対して、10部以下が好ましく、1〜7部がより好ましい。10部を超えると、長期強度発現性が損なわれる場合がある。
【0030】
本発明の粉体急結剤は、強度発現性を向上させるために、カルボン酸類を含有してもよい。カルボン酸類としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、プロピオン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、フマル酸、マレイン酸、安息香酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、サリチル酸、更にこれらのナトリウム又はカリウム塩等が挙げられる。これらのうち1種又は2種以上が使用可能である。これらの中では、凝結性状や強度発現性が優れる点で、シュウ酸が好ましい。
【0031】
カルボン酸類の使用量は、硫酸アルミニウムとビスフェノール系縮合物の合計100部に対して、5部以下が好ましく、0.5〜3部がより好ましい。5部を超えると、急結性が損なわれる場合がある。
【0032】
本発明の粉体急結剤は、長期強度発現性を向上させるために、石膏を含有してもよい。石膏としては、無水石膏、半水石膏、二水石膏等が使用可能である。これらのうち1種又は2種以上が使用可能である。これらの中では、強度発現性が優れる点で、無水石膏が好ましい。
【0033】
石膏の使用量は、硫酸アルミニウムとビスフェノール系縮合物の合計100部に対して、10部以下が好ましく、1〜7部がより好ましい。10部を超えると、急結性が損なわれる場合がある。
【0034】
本発明の粉体急結剤の使用量は、セメント100部に対して、2〜20部が好ましく、4〜15部がより好ましく、5〜10部が最も好ましい。2部未満だと急結性を促進しにくい場合があり、20部を超えると長期強度発現性が損なわれる場合がある。
【0035】
ここでセメントとは、通常市販されている普通、早強、中庸熱、及び超早強等の各種ポルトランドセメントや、これら各種ポルトランドセメントにフライアッシュや高炉スラグ等を混合した各種混合セメント等が挙げられる。これらを微粉末化して使用することも可能である。
【0036】
本発明で使用するセメントコンクリートはセメントと骨材とを含有するものである。ここで骨材としては、吸水率が低く、骨材強度が高いものが好ましい。骨材の最大寸法は吹付けできれば特に限定されるものではない。
【0037】
細骨材としては、川砂、山砂、石灰砂、及び珪砂等が使用可能である。粗骨材としては、川砂利、山砂利、及び石灰砂利等が使用可能である。
【0038】
セメントコンクリートに使用する水の量は、強度発現性の点で、35%以上が好ましく、40〜55%がより好ましい。この範囲内であれば、セメントコンクリートを十分に混合できる。
【0039】
セメントコンクリートと粉体急結剤からなる急結性セメントコンクリートの吹付け工法としては、湿式吹付け工法が好ましい。湿式吹付け工法としては、例えば、セメント、細骨材、粗骨材、及び水を加えて練り混ぜ、空気圧送し、途中にY字管を設け、その一方から急結剤供給装置により圧送した粉体急結剤を合流混合して急結性セメントコンクリートとしたものを吹付ける方法等が挙げられる。
【0040】
粉体急結剤を圧送する圧送空気の圧力は、セメントコンクリートが粉体急結剤の圧送管内に混入した際に圧送管内が閉塞しないように、セメントコンクリートの圧送圧力より0.01〜0.3 MPa高いことが好ましい。
【実施例】
【0041】
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明する。試験(実験)環境温度は20℃に設定した。
【0042】
実験例1
硫酸アルミニウム100部と、表1に示す量のビスフェノール系縮合物とを、ミキサーで混合することで、粉体急結剤を調製した。砂/セメント比=3、水/セメント比=50%のモルタルを調製した。セメント100部に対して、粉体急結剤6部を、セメントモルタルに添加し、急結性モルタルとした。急結性モルタルの凝結時間と圧縮強度を測定した。結果を表1に併記する。
【0043】
<使用材料>
硫酸アルミニウムD:14水和物、市販品
ビスフェノール系縮合物j:ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンの縮合物、平均分子量16,000、市販品
セメント:普通ポルトランドセメント、市販品、ブレーン値3,200cm
2/g、比重3.14
細骨材(砂):新潟県糸魚川市姫川産川砂、表乾状態、比重2.61
【0044】
<測定方法>
凝結試験:急結性モルタルを土木学会基準「吹付けコンクリート用急結剤品質規格(JSCED−102)」に準じて測定した。
圧縮強度:急結性モルタルをJIS R 5201に準じて測定した。
【0045】
【表1】
【0046】
表1より、硫酸アルミニウム100部に対し、0.01〜7部のビスフェノール系縮合物を含有することが、急結剤の性状として好ましい。
【0047】
実験例2
表2に示す硫酸アルミニウム100部と、表2に示すビスフェノール系縮合物2部とを、混合し、粉体急結剤を調製したこと以外は、実験例1と同様に実験した。結果を表2に併記する。
【0048】
<使用材料>
硫酸アルミニウムA:無水物、市販品
硫酸アルミニウムB:6水和物、市販品
硫酸アルミニウムC:10水和物、市販品
硫酸アルミニウムD:14水和物、市販品
硫酸アルミニウムE:16水和物、市販品
硫酸アルミニウムF:18水和物、市販品
硫酸アルミニウムG:27水和物、市販品
ビスフェノール系縮合物a:ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタンの縮合物、平均分子量14,000、市販品
ビスフェノール系縮合物b:2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの縮合物、平均分子量12,000、市販品
ビスフェノール系縮合物c:2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンの縮合物、平均分子量18,000、市販品
ビスフェノール系縮合物d:2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパンの縮合物、平均分子量18,000、市販品
ビスフェノール系縮合物e:4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンの縮合物、平均分子量15,000、市販品
ビスフェノール系縮合物f:ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィドの縮合物、平均分子量16,000、市販品
ビスフェノール系縮合物g:ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンの縮合物、平均分子量500、市販品
ビスフェノール系縮合物h:ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンの縮合物、平均分子量1,000、市販品
ビスフェノール系縮合物i:ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンの縮合物、平均分子量5,000、市販品
ビスフェノール系縮合物j:ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンの縮合物、平均分子量16,000、市販品
ビスフェノール系縮合物k:ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンの縮合物、平均分子量20,000、市販品
ビスフェノール系縮合物l:ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンの縮合物、平均分子量30,000、市販品
ビスフェノール系縮合物m:ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホンの縮合物、平均分子量36,000、市販品
【0049】
【表2】
【0050】
表2より、以下が認められる。硫酸アルミニウムとしては、6〜18水和物であることが、
急結剤の性状として好ましい。ビスフェノール系縮合物としては、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(以後、ビスフェノールS)であることが、結剤の性状として好ましい。ビスフェノール系縮合物の平均分子量としては、1,000〜30,000であることが、急結剤の性状として好ましい。
【0051】
実験例3
硫酸アルミニウムD100部、ビスフェノール系縮合物j2部、硫酸アルミニウムとビスフェノール系縮合物の合計100部に対して、表3に示す量の助剤を混合し、粉体急結剤を調製したこと以外は、実験例1と同様に実験した。結果を表3に併記する。
【0052】
<使用材料>
助剤ア:フッ化ナトリウム、市販品
助剤イ:フッ化カリウム、市販品
助剤ウ:フッ化カルシウム、市販品
助剤エ:ギ酸ナトリウム、市販品
助剤オ:酢酸ナトリウム、市販品
助剤カ:シュウ酸、市販品
助剤キ:無水石膏、市販品
助剤ク:二水石膏、市販品
【0053】
【表3】
【0054】
表3より、以下が認められる。フッ素化合物の使用量は10部以下であることが、急結剤の性状として好ましい。フッ素化合物の中では、フッ化ナトリウムが、急結剤の性状として好ましい。カルボン酸類の使用量は5部以下であることが、急結剤の性状として好ましい。カルボン酸類の中では、シュウ酸が、急結剤の性状として好ましい。石膏の使用量は10部以下であることが、急結剤の性状として好ましい。石膏の中では、無水石膏が、急結剤の性状として好ましい。
【0055】
実験例4
硫酸アルミニウムD100部とビスフェノール系縮合物j2部からなる粉体急結剤を、セメント100部に対して、表4に示す量使用したこと以外は、実験例1と同様に実験した。結果を表4に併記する。比較例として、市販の硫酸アルミニウム系液体急結剤を使用した場合の結果も併記する。
【0056】
<使用材料>
液体急結剤L:硫酸アルミニウム系水溶液、市販品
【0057】
【表4】
【0058】
表4より、粉体急結剤の使用量は、セメント100部に対し、2〜20部であることが、吹付け材料の性状として好ましい。市販の硫酸アルミニウム系液体急結剤を使用した場合、急結性や強度発現性が小さかった。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の粉体急結剤は、粉体の硫酸アルミニウムの分散性を向上し、優れた急結性を付与する。本発明は、例えば、分散効果を有するビスフェノール系縮合物を使用することにより、硫酸アルミニウムを主成分とする粉体急結剤を、セメントコンクリート中、均一的に分散させることができ、セメントと反応する粉体急結剤成分の割合が多くなり、凝結性状や強度発現性が高い吹付け材料を得ることができる。そのため、土木、建築の分野等で広範に使用することが可能である。
【0060】
本発明の粉体急結剤は、例えば、硫酸アルミニウム系液体急結剤より、以下の優位性がある。硫酸アルミニウムの水に対する溶解度は、20℃で27質量%であるので、液体急結剤の濃度を大きくすることにより、急結性を向上するのには限度があった。液体急結剤の使用量を多くすると、セメントコンクリートに供給される、液体急結剤由来の水の量が増加するため、強度発現性が向上しない可能性があった。本発明は粉体なので、急結性を向上しやすい。
【0061】
本発明の粉体急結剤は、例えば、以下の優位性がある。硫酸アルミニウムを単に粉体急結剤として使用しても、セメントコンクリートとの混合性に優れず、急結性が向上しない可能性があった。本発明はビスフェノール系縮合物を併用するので、急結性を向上しやすい。