【0018】
本発明における保持材は、縦葺き外装材を
躯体に取り付ける,一般的に吊子と称される部材であり、流れ方向に配設(
躯体に直接的又は間接的に固定)するための固定部と、その左右に形成される起立部と、その裏面側に設けられる化粧部と、を備えた構成のものを用いる。
前記固定部は、2箇所以上に設けられることが好ましい。例えばこの保持材を、軒先側から延出状に配設する場合には、最も軒先側に位置する
躯体等(
躯体や該
躯体に固定した支持部材など)から片持ち状に保持材が延出することになるので、強度等を勘案すると少なくとも2つ以上の
躯体等に跨がって固定されることが好ましい。また、補強等の状況にもよるが、張り出し長さ(延出長さ)よりも躯体等上に位置する保持部材の長さが長いことが好ましい。
前記起立部は、特にその形状を限定するものではなく、略鉛直状の縦片でもよいし、後述する図示実施例のように先端が傾斜する構成であってもよい。
また、前述のように縦葺き外装材を
躯体に取り付けるための構成としては、
躯体に固定した保持材に縦葺き外装材が取り付けられるような部位、例えば被係合部等が設けられるが、この被係合部等は、前記起立部に設けてもよいし、その内側に各種形状の被係合部等を設けてもよいし、複数設けるようにしてもよい。
【実施例】
【0025】
図1に示す本発明の縦葺き外装構造の第1実施例は、母屋3aに固定された保持材2と、左右の側縁に立ち上げ成形部12,12'を有する縦葺き外装材1とで構成され、前記保持材2は、流れ方向に配設され、その左右には起立部22,22を有し、その裏面側には化粧部21を設けてなり、左右に隣接する前記保持材2,2の化粧部21,21間に、両端に上方へ突出状の係合部42,42を有する化粧材4を架設している構成である。
【0026】
前記保持材2は、縦葺き外装材1を
躯体(母屋)3aに取り付ける,一般的に吊子と称される部材であり、流れ方向に配設するための固定部23と、その左右に形成される起立部22,22と、その裏面側に設けられる化粧部21と、を備えた構成である。
この第1実施例における保持材2は、
図1(a)に示すようにC型鋼(母屋)である
躯体3aへの固定が合計3箇所(図中、2bは固定具)に設けられており、
図1(b)に示すように左右の平坦状部分(23)に形成した孔231から固定具2bを母屋3aに打ち込んで固定部23としている。この保持材2は、軒先側における張り出し長さ(延出長さ)よりも母屋3aを含む躯体(下地)3上に位置する保持材の長さが僅かに長くなるように配設されている。
【0027】
前記起立部22は、
図1(b)に示すように略鉛直状の縦片の先端がそれぞれ内側へ傾斜する構成である。
また、この第1実施例における保持材2は、前記起立部22及び前記固定部23の内側に、上面241が略平坦状の中央隆起部24を有する構成であり、該中央隆起部24の左右には、側方へ肩状の突出部242が形成され、その下方には、側方から内側へ没入する凹状部243が形成されているので、縦葺き外装材1の立ち上げ成形部12,12'を弾性的に係合させて取り付けることができる。
【0028】
また、前記化粧部21は、保持材2を連続材(通し材)として裏面を化粧部21としたものであり、この第1実施例では、金属材からなる保持材2の裏面を略平坦状とした構成である。
【0029】
前記縦葺き外装材1は、左右の側縁に立ち上げ成形部(外側立上り部)12,12'を有する構成である。
この第1実施例における縦葺き外装材1は、中央に面板部11が、その左右側縁には凸状部(内側立上り部)13,13が形成されると共に、各凸状部13の外側には導水溝14を介して立ち上げ成形部12(12')が形成される構成であり、裏面側には裏貼り材17が添設されている。また、一方(図面では左方)の立ち上げ成形部12'には前記保持材2の中央隆起部24の上面241に沿う平坦状部分を介して略C字状に被重合部15が形成され、他方の立ち上げ成形部12側にはやはり平坦状部分を介して重合部16が形成されている。これらの構成は、立ち上げ成形部12,12'を前記保持材2の突出部242や凹状部243に対して弾性的に係合させて取り付ける点では共通であり、一方の被重合部15に、隣接する縦葺き外装材1の他方の重合部16がオーバーハング状に重合し、且つ弾性的に嵌合するように接続されている。加えて、図中、一点鎖線にて示す部分に、上方からビス等を打ち込んで対向状の被重合部15及び重合部16を一体的に固定し、接続強度を向上するようにしてもよい。その場合、仮にビス穴から雨水が浸入しても、雨水は被重合部15を貫通するビスの下端から落下するため、裏貼り材17として止水材を用いれば重合部16や被重合部15の内面側に雨水が伝うことを防止することができる。
【0030】
前記化粧材4は、前述のように両端に上方へ突出状の係合部42,42を有する構成であって、左右に隣接する前記保持材2,2の化粧部21,21間に架設されるように配設される。
この第1実施例における化粧材4は、略平坦状の化粧面部41の左右の側縁に係合部42,42が形成され、この係合部42は、上方へ突出状に形成されているが、その上端はやや外側へ屈曲され、前記保持材2のやや内側へ傾斜する起立部22に対して密着状に嵌合させることができる。
また、この化粧材4は、
図1(a)に示すようにその水下端が
躯体3上に位置するように配設されている。
【0031】
なお、前記縦葺き外装構造の裏面側には、大型鋼材等を一体に組み付けた梁3bが配設されているが、前記母屋3aを含めて、煩雑化を避けるために符号をしていない金具類も含めて一体的に固定されたものであり、総称して躯体(下地)3としている。また、前記母屋3aの外側には、野地材6A及び防水シート材6bが配設され、前記保持材2は、これらの野地材6A及び防水シート材6bを貫通して母屋3aに取り付けられている。
【0032】
次に、前記構成の保持材2、縦葺き外装材1、化粧材4を用いて縦葺き外装構造を敷設する方法を、
図2に基づいて説明する。
まず、第1の工程として、
図2(a)〜(b)に示すように躯体3(ここでは図示していない)に固定した左右に隣接する保持材2,2の化粧部21,21間に、化粧材4を架設する。
より詳細には、前記構成の保持材2が左右方向に所定間隔を隔てて流れ方に沿うように複数固定されているが、その上方に予め寸法を調整して作成した前記構成の化粧材4を臨ませ、上方から落とし込むように配設し、その係合部42,42を起立部22,22に嵌合状に取り付けて架設する。
【0033】
次に、第2の工程として、
図2(c)〜(d)に示すように左右に隣接する前記保持材2,2間に、縦葺き外装材1を取り付ける。
即ち前記第1の工程にて取り付けた化粧材4,4間に、前記構成の縦葺き外装材1を臨ませ、上方から落とし込むように配設して左右方向に隣接する縦葺き外装材1,1を接続する。より詳細には、保持材2の起立部22には、化粧材4の係合部42が係合されているが、更にその上方に凸状部(内側立上り部)13を覆うように嵌合させて取り付けると共に前記保持材2の中央隆起部24に立ち上げ成形部12,12'を弾性的に係合させて取り付け、左右に隣接する縦葺き外装材1,1の重合部16及び被重合部15を弾性的に嵌合させて取り付ける。
なお、図中5は、縦葺き外装材1の軒先端に取り付ける軒先面戸であり、7Aは軒先幕板、7Bは幕板下地、7Cは軒天、7Dは外壁材である。
【0034】
これらの保持材2、縦葺き外装材1、化粧材4からなる本発明の縦葺き外装構造を、図示するように軒先側へ大きく延在させて形成したこの第1実施例の構造(軒先構造)は、保持材2の裏面に設けた化粧部21と、該化粧部21,21間に架設される化粧材4(化粧面部41)とが、交互に配され、裏面側から見て美麗な
天井構造を有する。そのため、大きく軒先へ迫り出した構造(軒先構造)が、裏面側から見て美麗な軒天景観を有するものとなる。そして、屋根の施工と、軒先構造の施工とが同時に実施されるものとなり、工事費用の低廉化に寄与するものである。
【0035】
なお、この第1実施例では、縦葺き外装材1は内側係合部である凸状部13を有し、保持材2は前記凸状部13に対応する起立部22を有し、化粧材4は前記凸状部13及び前記起立部22に係合するので、縦葺き外装材1が保持材2に安定に取り付けられるものとなり、また化粧材4がそれらに安定に取り付けられるものとなる。したがって、これらの縦葺き外装材1、保持材2、化粧材4が一体化された安定な構造を有するものとなる。
【0036】
さらに、この第1実施例では、保持材2が躯体3の軒先端から更に軒先側へ延出する軒先構造であるため、裏面側から見て美麗な軒天構造が軒先側へ大きく延出されて形成されるものとなるため、通常の一般屋根に比べて先端がシャープな先鋭な印象を受ける屋根が表面側から見ても裏面側から見ても美麗に施工できる。また、該軒先により所定領域の雨避けや日光避けの庇(ひさし)として有効利用する空間を形成することができる。
【0037】
図3に示す第2実施例では、縦葺き外装材1、保持材2、及び化粧材4の各構成については前記第1実施例と同様であるが、保持材2の裏面には、壁部躯体7Dと接続する略円弧状の連結材8が配されている。
【0038】
この第2実施例における前記連結材8は、保持材2の裏面(化粧部)の一部と壁部躯体7Dを連結し、主に軒先部の補強材として用いている。このような連結材8は、
図3(b)に示すように断面略正方形状のパイプ材であって、略円弧状に大きく湾曲した形状に成形され、下端を8bで示す固定具等にて壁部躯体7Dに固定し、上端には前記保持材2を固定具8cや固定板8dにて固定している。
なお、この第2実施例における連結材8は、
図3(b)に示すように各保持材2に対してそれぞれ配しているが、特にそれに限定されるものではなく、桁行き方向に複数配置されている保持材(例えば一つおき)に一定の間隔で配されるものであってもよい。
【0039】
前記固定板8dについては、保持材2の裏面を覆うように配設するので、例えばこの固定板8dの寸法を長く形成してすることにより、化粧面を形成するための別部材としての機能を持たせるようにしてもよい。なお、その場合には、前述のように例えば略平坦状面に弧状やリブなどを付けた形状構成を採用することもできるし、金属材に限らず、どのような材質の化粧面部を形成することも可能である。
【0040】
この第2実施例の縦葺き外装構造では、前記第1実施例と同様の効果を奏することは説明するまでもないが、特に保持材2の裏面に、壁部躯体7Dと接続する連結材8を配した構造であるため、保持材2がより安定に支持されるものとなり、それに支持させる縦葺き外装材1や化粧材4も、より安定に取り付けられるものとなり、外装構造としての支持強度が向上する。