特許第6392575号(P6392575)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392575
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】コンロ用バーナ
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/06 20060101AFI20180910BHJP
   F24C 3/08 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   F23D14/06 D
   F23D14/06 L
   F24C3/08 Q
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-159259(P2014-159259)
(22)【出願日】2014年8月5日
(65)【公開番号】特開2016-38106(P2016-38106A)
(43)【公開日】2016年3月22日
【審査請求日】2017年6月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】柴田 隼
(72)【発明者】
【氏名】竹本 安伸
【審査官】 柳本 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−036730(JP,A)
【文献】 特開平06−185707(JP,A)
【文献】 特開2009−121767(JP,A)
【文献】 特開平10−314031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/08
F23D 14/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内筒と外筒とを有する中空環状の板金製のバーナボディと、バーナボディ上に載置される環状のバーナキャップとを備え、バーナキャップの内周縁部に、バーナボディの内筒に内挿される筒部が垂設され、バーナキャップの下面外周部に、バーナボディの外筒の上端部に着座する筒壁部が垂設されて、筒壁部に、周方向の間隔を存して複数の炎孔が形成されたコンロ用バーナにおいて、
バーナキャップの筒部に、周方向1箇所に位置させて、筒部の下端から上方にのびる切欠きが形成され、バーナボディの内筒内に、切欠きに挿入可能でバーナボディとは別体の位置決め部材が配置され、バーナキャップが正規位相で載置されるときは、切欠きに位置決め部材が挿入されて、バーナキャップの筒壁部がバーナボディの外筒の上端部に着座するが、バーナキャップが正規位相からずれた位相で載置されるときは、筒部の下端の切欠きが形成されていない部分が位置決め部材に乗り上げて、筒壁部が外筒の上端部から浮き上がるようにし、
更に、バーナボディの外筒の周方向1箇所に、径方向外方に窪む窪み部が外筒の上端部に達するように形成されると共に、バーナキャップの下面の周方向1箇所に、バーナキャップが正規位相で載置されるときに窪み部に嵌合するピン部が垂設され、筒部の切欠きに位置決め部材が挿入された状態で、切欠きに対する位置決め部材の挿入クリアランス分だけ筒部が周方向に動いたときの炎孔の周方向変位よりも、窪み部へのピン部の嵌合で、炎孔の周方向変位が小さく抑えられることを特徴とするコンロ用バーナ。
【請求項2】
請求項1記載のコンロ用バーナであって、前記バーナボディの前記内筒に挿通される支持パイプと、支持パイプの上端部に支持される、前記バーナキャップよりも上方に突出する感熱ヘッドとを有する鍋底温度センサを備えるものにおいて、
支持パイプを固定する固定具に前記位置決め部材が一体に形成されることを特徴とするコンロ用バーナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内筒と外筒とを有する中空環状の板金製のバーナボディと、バーナボディ上に載置される環状のバーナキャップとを備えるコンロ用バーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のコンロ用バーナでは、バーナキャップの内周縁部に、バーナボディの内筒に内挿される筒部が垂設され、バーナキャップの下面外周部に、バーナボディの外筒の上端部に着座する筒壁部が垂設されて、筒壁部に、周方向の間隔を存して複数の炎孔が形成されている。
【0003】
また、従来、バーナボディを鋳物製とするコンロ用バーナにおいて、バーナキャップの筒部に、周方向1箇所に位置させて、筒部の下端から上方にのびる切欠きを形成すると共に、バーナボディの内筒の内周面に、周方向1箇所に位置させて、切欠きに挿入可能な径方向内方に突出する突起部を形成し、バーナキャップが正規位相で載置されるときは、切欠きに突起部が挿入されて、バーナキャップの筒壁部がバーナボディの外筒の上端部に着座するが、バーナキャップが正規位相からずれた位相で載置されるときは、筒部の下端の切欠きが形成されていない部分が突起部に乗り上げて、筒壁部が外筒の上端部から浮き上がり、誤セット状態であることを気づきやすくしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、コストダウンを図るには、バーナボディを鋳物製ではなく板金製とすることが望まれる。然し、板金製のバーナボディでは、内筒の内周面に突起部を形成できず、上記の構造を採用できない。
【0005】
そこで、従来、バーナボディを板金製とするコンロ用バーナとして、バーナボディの外筒の周方向1箇所に、径方向外方に窪む窪み部を外筒の上端部に達するように形成すると共に、バーナキャップの下面の周方向1箇所に、バーナキャップが正規位相で載置されるときに窪み部に嵌合するピン部を垂設し、バーナキャップが正規位相からずれた位相で載置されるときは、ピン部の下端が外筒の上端部に乗り上げて、筒壁部が外筒の上端部から浮き上がるようにしたものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
然し、このものでは、加工上の理由から窪み部の上下方向長さが制限されるため、ピン部の上下方向長さも制限されることになる。そのため、バーナキャップが正規位相からずれた位相で載置されたときに、筒壁部が外筒の上端部から然程浮き上がらず、使用者が誤セット状態であることに気づきにくくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−214606号公報
【特許文献2】特開2009−121767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、以上の点に鑑み、バーナボディを板金製としたコンロ用バーナであって、バーナキャップが誤セット状態であることを気づきやすくしたものを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、内筒と外筒とを有する中空環状の板金製のバーナボディと、バーナボディ上に載置される環状のバーナキャップとを備え、バーナキャップの内周縁部に、バーナボディの内筒に内挿される筒部が垂設され、バーナキャップの下面外周部に、バーナボディの外筒の上端部に着座する筒壁部が垂設されて、筒壁部に、周方向の間隔を存して複数の炎孔が形成されたコンロ用バーナにおいて、バーナキャップの筒部に、周方向1箇所に位置させて、筒部の下端から上方にのびる切欠きが形成され、バーナボディの内筒内に、切欠きに挿入可能でバーナボディとは別体の位置決め部材が配置され、バーナキャップが正規位相で載置されるときは、切欠きに位置決め部材が挿入されて、バーナキャップの筒壁部がバーナボディの外筒の上端部に着座するが、バーナキャップが正規位相からずれた位相で載置されるときは、筒部の下端の切欠きが形成されていない部分が位置決め部材に乗り上げて、筒壁部が外筒の上端部から浮き上がるようにし、更に、バーナボディの外筒の周方向1箇所に、径方向外方に窪む窪み部が外筒の上端部に達するように形成されると共に、バーナキャップの下面の周方向1箇所に、バーナキャップが正規位相で載置されるときに窪み部に嵌合するピン部が垂設され、筒部の切欠きに位置決め部材が挿入された状態で、切欠きに対する位置決め部材の挿入クリアランス分だけ筒部が周方向に動いたときの炎孔の周方向変位よりも、窪み部へのピン部の嵌合で、炎孔の周方向変位が小さく抑えられることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、バーナボディの内筒内に配置した位置決め部材が、上記従来例の鋳物製バーナボディの内筒内周面に形成する突起部と同様の機能を発揮することになり、バーナボディを板金製とするにも拘らず、バーナキャップが誤セット状態であるときに、バーナキャップの筒部を利用して、バーナキャップの筒壁部をバーナボディの外筒の上端部から浮き上がらせることができる。そして、バーナキャップの筒部は、加工上の制約を受けることなく十分に長く形成することができるため、誤セット状態での筒壁部の外筒上端部からの浮き上がり量を大きくして、誤セット状態であることを気づきやすくすることができる。
【0011】
また、コンロ用バーナが、バーナボディの内筒に挿通される支持パイプと、支持パイプの上端部に支持される、バーナキャップよりも上方に突出する感熱ヘッドとを有する鍋底温度センサを備えるものである場合は、支持パイプを固定する固定具に上記位置決め部材を一体に形成することが望ましい。これによれば、位置決め部材を設けることで、部品点数が増加してコストアップすることを回避できる。
【0012】
ところで、バーナキャップの筒部の切欠きに位置決め部材が挿入された状態で、切欠きに対する位置決め部材の挿入クリアランス分だけ筒部が周方向に動き得る。そして、筒部はバーナキャップの内周側に設けられているため、筒部が上記挿入クリアランス分だけ周方向に動くと、バーナキャップの外周側の周壁部に形成した炎孔は周方向に上記挿入クリアランスより大きく変位してしまう。
【0013】
これに対し、本発明によれば、窪み部へのピン部の嵌合で、バーナキャップが外周側でバーナボディに対し回り止めされることになり、バーナキャップの周壁部に形成した炎孔の周方向変位を小さく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態のコンロ用バーナの斜視図。
図2図1のII−II線で切断した切断側面図。
図3図2のIII−III線で切断した断面図。
図4】実施形態のコンロ用バーナの分解状態の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1乃至図3を参照して、本発明の実施形態のコンロ用バーナは、バーナボディ1とバーナキャップ2とを備えている。バーナボディ1は、これに一体の混合管3の先端部から立ち上がる内筒11と外筒12とを有する中空環状の板金製であり、コンロ本体(図示せず)内に固定の台枠4に載置固定されている。外筒12の上端には、径方向外方に屈曲するフランジ部13と、フランジ部13の外周から下方にのびるスカート部14とが形成されている。
【0016】
バーナキャップ2は、バーナボディ1上に載置されるもので、環状に形成されている。バーナキャップ2の内周縁部には、バーナボディ1の内筒11に内挿される筒部21が垂設されている。また、バーナキャップ2の下面外周部には、バーナボディ1の外筒12の上端部、即ち、フランジ部13に着座する筒壁部22が垂設されている。そして、筒壁部22に、周方向の間隔を存して溝から成る複数の炎孔23を形成し、混合管3からバーナボディ1内に供給される混合気(燃料ガスと一次空気との混合ガス)がこれら炎孔23から噴出して燃焼するようにしている。尚、炎孔23には、一般炎孔23aとこれより小さな小炎孔23bとがあり、コンロの天板上に載置する五徳の各五徳爪と同一方位に位置する炎孔は小炎孔23bとして、火炎が五徳爪に触れることを防止している。
【0017】
また、筒壁部22の周囲1箇所には、点火炎孔23cが形成されると共に、点火炎孔23cの上方位置から径方向外方に張り出す庇部24が形成されている。そして、庇部24で覆われる位置に、台枠4上に取付ブラケット51を介して固定される点火電極5を配置している。また、筒壁部22には火炎検知用炎孔が形成されており、この炎孔に臨む位置に、台枠4上に取付ブラケット61を介して固定される熱電対から成る火炎検知素子6を配置している。
【0018】
コンロ用バーナは、更に、五徳に載せた調理容器の底面に当接してその温度を検出する鍋底温度センサ7を備えている。鍋底温度センサ7は、バーナボディ1の内筒11に挿通される支持パイプ71と、支持パイプ71の上端部に支持される、バーナキャップ2よりも上方に突出する感熱ヘッド72とを有している。感熱ヘッド72は、上端部にサーミスタ等の感熱素子72aを内蔵している。そして、支持パイプ71に対し感熱ヘッド72をバネ73で上方に付勢し、五徳に調理容器を載せたときに、感熱ヘッド72がバネ73の付勢力に抗して押し下げられて調理容器の底面に密着するようにしている。
【0019】
尚、支持パイプ71は、台枠4上に設けた固定具74で固定されている。固定具74は、台枠4に固定される固定板74aと、固定板74aとの間に支持パイプ71を挟み込んで固定する押え板74bとで構成されている。
【0020】
ところで、バーナキャップ2は、小炎孔23bが五徳爪と同一方位に位置し、点火炎孔23cと火炎検知用炎孔が夫々点火電極5と火炎検知素子6に対向する正規位相でバーナボディ1上に載置する必要がある。そして、バーナキャップ2が正規位相からずれた位相で載置されたときは、誤セット状態であることを使用者が気づきやすくすべきである。
【0021】
そこで、本実施形態では、図4にも示されているように、バーナキャップ2の筒部21に、周方向1箇所に位置させて、筒部21の下端から上方にのびる切欠き25を形成し、更に、バーナボディ1の内筒11内に、切欠き25に挿入可能でバーナボディ1とは別体の位置決め部材8を配置している。尚、本実施形態では、鍋底温度センサ7の支持パイプ71用の固定具74の上部片側に、バーナボディ1の内筒11に接近する側方への張出し部を形成し、この張出し部で位置決め部材8を構成している。即ち、固定具74に位置決め部材8を一体に形成している。
【0022】
そして、バーナキャップ2が正規位相で載置されるときは、切欠き25に位置決め部材8が挿入されて、バーナキャップ2の筒壁部22がバーナボディ1のフランジ部13(外筒12の上端部)に着座するが、バーナキャップ2が正規位相からずれた位相で載置されるときは、筒部21の下端の切欠き25が形成されていない部分が位置決め部材8に乗り上げて、筒壁部22がフランジ部13から浮き上がるようにしている。
【0023】
ここで、バーナキャップ2の筒部21は、加工上の制約を受けることなく十分に長く形成することができる。そのため、誤セット状態での筒壁部22のフランジ部13からの浮き上がり量を大きくして、誤セット状態であることを気づきやすくすることができる。また、バーナボディ1とは別体の位置決め部材8を設けても、固定具74に位置決め部材8を一体に形成するため、部品点数が増加してコストアップすることはない。
【0024】
ところで、バーナキャップ2の筒部21の切欠き25に位置決め部材8が挿入された状態でも、切欠き25に対する位置決め部材8の挿入クリアランス(切欠き25の幅と位置決め部材8の厚さとの差)分だけ筒部21が周方向に動き得る。そして、筒部21はバーナキャップ2の内周側に設けられているため、筒部21が上記挿入クリアランス分だけ周方向に動くと、バーナキャップ2の外周側の周壁部22に形成した炎孔23は周方向に上記挿入クリアランスより大きく変位し、点火炎孔23cや火炎検知用炎孔が点火電極5や火炎検知素子6に正対しなくなってしまう。
【0025】
そこで、本実施形態では、バーナボディ1の外筒12の周方向1箇所に、径方向外方に窪む窪み部15をフランジ部13(外筒12の上端部)に達するように形成すると共に、バーナキャップ2の下面の周方向1箇所に、バーナキャップ2が正規位相で載置されるときに窪み部15に嵌合するピン部26を垂設している。これによれば、窪み部15へのピン部26の嵌合で、バーナキャップ2が外周側でバーナボディ1に対し回り止めされることになり、バーナキャップ2の周壁部22に形成した炎孔23の周方向変位を小さく抑え、点火炎孔23cや火炎検知用炎孔が点火電極5や火炎検知素子6に正対しなくなってしまうことを防止できる。
【0026】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0027】
1…バーナボディ、11…内筒、12…外筒、13…フランジ部(外筒の上端部)、15…窪み部、2…バーナキャップ、21…筒部、22…筒壁部、23…炎孔、25…切欠き、26…ピン部、7…鍋底温度センサ、71…支持パイプ、72…感熱ヘッド、74…固定具、8…位置決め部材。
図1
図2
図3
図4