特許第6392582号(P6392582)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392582
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】砂防堰堤
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/02 20060101AFI20180910BHJP
   E02D 29/02 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   E02B7/02 B
   E02D29/02 309
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-168602(P2014-168602)
(22)【出願日】2014年8月21日
(65)【公開番号】特開2016-44446(P2016-44446A)
(43)【公開日】2016年4月4日
【審査請求日】2017年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 幸司
(72)【発明者】
【氏名】山口 聖勝
【審査官】 西田 光宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−138544(JP,A)
【文献】 特開平08−338014(JP,A)
【文献】 特開2005−083121(JP,A)
【文献】 特開2011−157804(JP,A)
【文献】 特開2002−138501(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0154012(US,A1)
【文献】 特開2004−316081(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/02
E02D 3/08
E02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
河川に設けられる砂防堰堤であって、
上流側に対向するように設けられる上流側保護壁部と、
下流側に対向するように設けられる下流側保護壁部と、
前記上流側保護壁部と前記下流側保護壁部との間に形成される空間内に打設され、現場発生土を用いた流動性を有するソイルセメントである中詰材と
前記空間内において少なくとも一方の保護壁部に設けられ、当該保護壁部を補強する補強部材とを備え、
前記ソイルセメントにおける単位体積あたりのセメント量が250kg/mのとき、圧縮強度が5.4N/mmであることを特徴とする砂防堰堤。
【請求項2】
河川に設けられる砂防堰堤であって、
上流側に対向するように設けられる上流側保護壁部と、
下流側に対向するように設けられる下流側保護壁部と、
前記上流側保護壁部と前記下流側保護壁部との間に形成される空間内に打設され、現場発生土を用いた流動性を有するソイルセメントである中詰材と、
前記空間内において少なくとも一方の保護壁部に設けられ、当該保護壁部を補強する補強部材とを備え、
前記ソイルセメントにおける単位体積あたりのセメント量が350kg/mのとき、圧縮強度が9.3N/mmであることを特徴とする砂防堰堤。
【請求項3】
河川に設けられる砂防堰堤であって、
上流側に対向するように設けられる上流側保護壁部と、
下流側に対向するように設けられる下流側保護壁部と、
前記上流側保護壁部と前記下流側保護壁部との間に形成される空間内に打設され、現場発生土を用いた流動性を有するソイルセメントである中詰材と、
前記空間内において少なくとも一方の保護壁部に設けられ、当該保護壁部を補強する補強部材とを備え、
前記ソイルセメントは、1mあたりの混合時間が90〜270秒であることを特徴とする砂防堰堤。
【請求項4】
各保護壁部は、複数の保護セグメントが組み合わされて構成されており、
隣接する保護セグメント間に設けられ、隣接する保護セグメント間を止水するシール部材を備えることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載の砂防堰堤。
【請求項5】
前記シール部材は、テープ状に形成されており、前記保護壁部の内側から隣接する前記保護セグメント間を塞ぐように貼り付けられていることを特徴とする請求項に記載の砂防堰堤。
【請求項6】
前記補強部材は、一端が打設された前記中詰材に連結され、他端が保護壁部に連結されていることを特徴とする請求項1から5までのいずれか一項に記載の砂防堰堤。
【請求項7】
前記上流側保護壁部は、複数の鋼製パネルを連結して構成されることを特徴とする請求項1からまでのいずれか一項に記載の砂防堰堤。
【請求項8】
前記下流側保護壁部は、複数のコンクリート製パネルを連結して構成されることを特徴とする請求項1からまでのいずれか一項に記載の砂防堰堤。
【請求項9】
前記ソイルセメントは、スランプ値が10.3〜18.8cmであることを特徴とする請求項1から8までのいずれか一項に記載の砂防堰堤。
【請求項10】
前記補強部材は、鉄筋であることを特徴とする請求項1からまでのいずれか一項に記載の砂防堰堤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川に設けられる砂防堰堤に関する。
【背景技術】
【0002】
土砂災害を防ぐ砂防施設として、砂防堰堤が知られている。堰堤は、従来、コンクリート製のものが一般的であったが、砂防施設の設置場所が狭隘な山岳地域のため、コンクリートを持ち込むことが困難な場合が多くあった。近年、この問題に対し、現場発生土にセメント及び水を混合して現地にて製作したソイルセメントを用い、施工位置に型枠を設置し、次に、ソイルセメントを型枠内に打設する。次に、打設されたソイルセメントをバックホウなどで敷き均し、振動ローラなどで転圧して締め固める。次に、型枠を取り外し(型枠を残置する場合もあり)、打設されたソイルセメントの層上に型枠を設置し、型枠内にソイルセメントを打設する。このような作業工程を所定の高さまで繰り返すことにより、堰堤が構築される方法が用いられていた。(例えば、特許文献1参照)。
他の堰堤としては、最初に、施工位置の上流側に鋼製パネルを設置すると共に、下流側にコンクリート製パネル又は鋼製パネルを設置する。次に、現場発生土にセメント及び水を混合してソイルセメントを作成し、ソイルセメントを上流側のパネルと下流側のパネルとの間にできた空間に打設する。次に、打設されたソイルセメントをバックホウなどで敷き均し、振動ローラなどで転圧して締め固める。
ソイルセメントを既設のパネルの上端まで打設して締め固めて固化させた後、パネルの上端に次のパネルを設け、新たに設けた上流側のパネルと下流側のパネルとの間にソイルセメントを打設し、敷き均し、締め固める。
このような作業を所定の高さまで繰り返し、天端に保護コンクリートを打設することにより、堰堤が構築される。この堰堤は、型枠として利用したパネルも埋設してしまうので、堰堤の強度を高める上で好ましい構造である(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−180434号公報
【特許文献2】特開2012−092583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のような堰堤の施工においては、堰堤の強度を保持するためには、ソイルセメント自体が早期に強度を発生させる必要がある、また、特許文献2のような堰堤では、パネル間からソイルセメントが漏れ出さないように、流動性のないソイルセメント、すなわち、スランプがゼロのソイルセメントを作成していた。ところが、現場発生土の性状がよくない場合、現地発生土とセメントの混合がうまく行かず、所定の強度が発揮できない場合があった。このような課題に対しては、現地発生土にセメントを多く入れて最低限の強度及び密度を確保する必要がある。このような場合、セメントと水が多く含まれたセメントミルク、流動性を有するソイルセメント、すなわち、スランプを有するソイルセメントが作成されることになる。
しかし、スランプを有するソイルセメントをパネル間に打設しようとした場合、締め固めが困難で、パネルには大きな側圧荷重がかかるため、パネルの耐久性に問題がある。パネル自体の強度を増やすことも考えられるが、パネルが重くなり、施工性が低下してしまうほか、コストも増大する。また、パネル同士の結合は水密性を持たないため、ソイルセメントが漏れ出すことが懸念される。
【0005】
このような問題を解決するため、仮設的にパネルの外側に土砂を盛土したり、土嚢を積み上げたり、コンクリートブロックを外側に設置するといった方法が考えられる。しかし、いずれの方法においても、工程が増えて施工性が低下するため、上記の全ての問題の解決には至っていない。
このように、従来の堰堤は、スランプがゼロのソイルセメントを打設することを前提としているため、これらの全ての問題を解決するような堰堤は考えられていなかった。
【0006】
そこで、本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、内部に流動性を有するソイルセメントを打設する際に、施工性を低下させることなく、側圧荷重に耐えることができ、かつ所定の強度を有する砂防堰堤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、河川に設けられる砂防堰堤であって、上流側に対向するように設けられる上流側保護壁部と、下流側に対向するように設けられる下流側保護壁部と、前記上流側保護壁部と前記下流側保護壁部との間に形成される空間内に打設される流動性を有する中詰材とを備え、前記空間内において少なくとも一方の保護壁部に設けられ、当該保護壁部を補強する補強部材を備えることを特徴としている。
【0008】
この発明の一態様として、各保護壁部は、複数の保護セグメントが組み合わされて構成されており、隣接する保護セグメント間に設けられ、隣接する保護セグメント間を止水するシール部材を備えることが好ましい。
【0009】
この発明の一態様として、前記補強部材は、一端が打設された前記中詰材に連結され、他端が保護壁部に連結されていることが好ましい。
【0010】
この発明の一態様として、前記上流側保護壁部は、複数の鋼製パネルを連結して構成されることが好ましい。
【0011】
この発明の一態様として、前記下流側保護壁部は、複数のコンクリート製パネルを連結して構成されることが好ましい。
【0012】
この発明の一態様として、前記中詰材は、現場発生土を用いたソイルセメントであることが好ましい。
【0013】
この発明の一態様として、前記ソイルセメントは、スランプ値が10.3〜18.8cmであることが好ましい。
【0014】
この発明の一態様として、前記ソイルセメントにおける単位体積あたりのセメント量が250kg/mのとき、圧縮強度が5.4N/mmであることが好ましい。
【0015】
この発明の一態様として、前記ソイルセメントにおける単位体積あたりのセメント量が350kg/mのとき、圧縮強度が9.3N/mmであることが好ましい。
【0016】
この発明の一態様として、前記ソイルセメントは、1mあたりの混合時間が90〜270秒であることが好ましい。
【0017】
この発明の一態様として、前記補強部材は、鉄筋であることが好ましい。
【0018】
この発明の一態様として、前記シール部材は、テープ状に形成されており、前記保護壁部の内側から隣接する前記保護セグメント間を塞ぐように貼り付けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、現場発生土に、セメントミルクを混合攪拌することにより、流動性のあるソイルセメントを作成することが出来るので、堰堤の内部に中詰材であるソイルセメントを打設する際に、施工性を低下させることはない。また、所定の補強材と止水材を用いるのでパネル体の強度が保持され、中詰材の側圧荷重に耐えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】砂防堰堤の一部を断面視した斜視図である。
図2】上流側保護壁部を内側から見た斜視図である。
図3】下流側保護壁部を内側から見た斜視図である。
図4】補強部材の取付構造を説明する図である。
図5】試験条件及び圧縮強度試験の結果を示す図である。
図6】土砂の性状を示す図である。
図7】ソイルセメントの混合時間と圧縮強度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に示す実施形態は一つの例示であり、本発明の範囲において、種々の実施形態をとり得る。
【0022】
<砂防堰堤の構成>
図1は、河川に設けられる不透過型の砂防堰堤1の斜視図であり、一部を断面視している。
砂防堰堤1は、基礎部2と、上流側保護壁部3と、下流側保護壁部4と、中詰材5を備えている。
【0023】
(基礎部)
基礎部2は、コンクリートで形成されており、河川の流れる方向に直交する方向(河川の幅方向)に沿って河川の底部に設けられている。基礎部2は、2つ設けられており、上流側と下流側とに所定の間隔をあけて配置されている。
各基礎部2の上面は、それぞれ平面状に形成されており、上流側の基礎部2の上面に上流側保護壁部3が設けられ、下流側の基礎部2の上面に下流側保護壁部4が設けられている。
基礎部2の表面には、略U字状に形成された係止部材21が埋設されており、係止部材21の湾曲部分が基礎部2の表面から突出している(図2図3参照)。係止部材21は、例えば、鉄筋から形成されている。
【0024】
(上流側保護壁部)
図2は、上流側保護壁部3を内側から見た斜視図である。上流側保護壁部3は、上流側の基礎部2の上面に設けられていることから、上流側保護壁部3は、河川の上流側に対向するように設けられている。
上流側保護壁部3は、複数の保護セグメント31が組み合わされて構成されている。保護セグメント31は、組み合わせた際に、隣接する保護セグメント31同士が同じ高さにならないように上下方向にずらして配置されている。
保護セグメント31は、鋼製のパネルから構成されており、表面が波形状に形成された矩形の鋼板32と、鋼板32の各縁に溶接等によって接合されたリブ33とを有している。リブ33には、縁の延在方向に沿って複数の孔が形成されており、隣接する保護セグメント31の孔同士を合わせた状態でボルトを通し、ナットで締結される。
保護セグメント31の上下方向に沿って延在するリブ33には、複数の板材34が溶接等によって接合されている。板材34は、保護セグメント31の上下方向に沿って並んでおり、板材34には上下方向に沿って交互に支持部材6と補強部材7が連結されている。
支持部材6は、保護セグメント31の倒壊を防止するものであり、例えば、鉄筋から形成されている。支持部材6の一端は板材34に連結され、他端は基礎部2の上面に設けられた係止部材21に連結される。
補強部材7は、保護セグメント31を補強するものであり、例えば、鉄筋から形成されている。補強部材7の一端は板材34に連結され、他端は基礎部2の上面に設けられた係止部材21に連結される。
隣接する保護セグメント31の間にはシール部材としての止水テープ10が貼り付けられている。止水テープとしては、例えば、日東電工社製の止水テープを用いる(異形部防水・気密テープ「ハイパーフラッシュNo.6951」)。もちろん、止水の機能を発揮するものであれば、どのようなテープであってもよい。止水テープ10は、隣接する保護セグメント31のリブ33に跨がるように貼り付けられる。
【0025】
(下流側保護壁部)
図3は、下流側保護壁部4を内側から見た斜視図である。下流側保護壁部4は、下流側の基礎部2の上面に設けられていることから、下流側保護壁部4は、河川の下流側に対向するように設けられている。
下流側保護壁部4は、複数の保護セグメント41が組み合わされて構成されている。保護セグメント41は、組み合わせた際に、隣接する保護セグメント41同士が同じ高さにならないように上下方向にずらして配置されている。
保護セグメント41は、コンクリート製のパネルで構成されている。
基礎部2の近傍の保護セグメント41には、支持部材8と補強部材9が連結されている。
支持部材8は、保護セグメント41の倒壊を防止するものであり、例えば、途中で屈曲された溝形鋼から形成されている。支持部材8の一端は保護セグメント41に連結され、他端は基礎部2の上面に連結される。支持部材8の保護セグメント41及び基礎部2への連結は、予め形成しておいたボルト孔にアンカーボルトを通して固定する。
補強部材9は、保護セグメント41を補強するものであり、例えば、鉄筋から形成されている。補強部材9の一端は、一部が保護セグメント41に埋設された板材44に連結され、他端は基礎部2の上面に設けられた係止部材21に連結される。板材44は、保護セグメント41の横方向に沿って並んでいる。
隣接する保護セグメント41の間にはシール部材としての止水テープ11が貼り付けられている。止水テープとしては、例えば、日東電工社製の止水テープを用いる(異形部防水・気密テープ「ハイパーフラッシュNo.6951」)。もちろん、止水の機能を発揮するものであれば、どのようなテープであってもよい。止水テープ11は、隣接する保護セグメント41の境界に跨がるように貼り付けられる。
【0026】
(中詰材)
図1に示すように、中詰材5は、上流側保護壁部3と下流側保護壁部4との間にある空間S内に打設されるものであり、流動性を有する。
具体的に、中詰材5は、現場の発生土にセメントと水を混合して作成したソイルセメントである。ここで用いられるソイルセメントは、スランプの有無について問われることはない。すなわち、ソイルセメントに流動性があってもなくても対応可能な堰堤であることを意味する。したがって、現場発生土の性状がどのようなものであっても、セメントと水の量を調整することで堰堤として構築することができる。
【0027】
<堰堤の施工方法>
次に、流動性のあるソイルセメント(中詰材)を用いた堰堤の施工方法について説明する。
堰堤の施工位置にコンクリートを打設し、基礎部2を構築する。基礎部2上に保護セグメント31及び保護セグメント41をそれぞれ組み上げていき、一回のソイルセメント打設分の高さに相当する上流側保護壁部3及び下流側保護壁部4を構築する。なお、上流側保護壁部3及び下流側保護壁部4の構築の際に、支持部材6,8及び補強部材7,9も、それぞれ基礎部2と保護セグメント31,41に連結しておく。
この作業後、または、この作業に並行して、施工現場に混合施設(混合枡)を設け、この混合施設内で現場発生土にセメント及び水を加えて混合し、中詰材5としてのソイルセメントを作成する。なお、この混合作業は、現場発生土を掘削したバックホウのバケットを利用して現場発生土とセメントと水とを混合する。
次に、作成したソイルセメントを上流側保護壁部3と下流側保護壁部4との間にできた空間S内に打設する。打設作業は、コンクリートバケットをクレーン等で吊して行う。
次に、コンクリート用のバイブレータを用いて、打設したソイルセメントを締め固める。
ソイルセメントの養生、固化後、次のソイルセメント打設分の高さに相当する上流側保護壁部3及び下流側保護壁部4を構築し、ソイルセメントを打設する。この場合において、支持部材6,8及び補強部材7,9を連結する係止部材21は、図4に示すように、前工程でのソイルセメントが固化する前に埋設しておき、固化後にこの係止部材21を用いて支持部材6,8及び補強部材7,9を連結する。
この作業を所定の高さまで繰り返した後、天端に保護コンクリート12を打設し、これをもって砂防堰堤1が完成する。
【0028】
以上のような構成を有する砂防堰堤1によれば、現場発生土の性状が好ましい状態にない場合、セメント及び水を多く加えた流動性のあるソイルセメントを用いることになり、両保護壁部3,4にはスランプがゼロのソイルセメントを用いる場合よりも大きな側圧が作用するが、各保護セグメント31,41が補強部材7,9によって補強されているので、大きくなった側圧にも耐えうる保護壁部3,4を構築できる。よって、現場発生土の性状に関わらず、砂防堰堤1を構築でき、環境負荷の軽減を図ることができる。また、保護セグメント自体を大きくしたり、強度向上のために複雑な構造にする必要もないので、施工性を低下させることもなく、コストの上昇を極力抑えることができる。
また、隣接する保護セグメント31,41の境界に止水テープ10,11を貼り付けているので、流動性を有するソイルセメントが保護壁部の内部から外部に漏れ出すこともない。よって、流動性を有するソイルセメントであっても確実に空間S内に充填することができ、ソイルセメントが砂防堰堤1の外部に漏れることによる見映えの低下を防止できる。
【0029】
<その他>
なお、本発明は、上記実施形態に限られるものではなく、本発明の範囲を超えない範囲で適宜変更が可能である。例えば、支持部材及び補強部材の連結位置、その数量は任意であって、保護セグメントの形状や大きさに応じて自由に変更可能である。
また、下流側保護壁部は、コンクリート製のパネルだけでなく、上流側保護壁部と同じように鋼製のパネルを保護セグメントとして用いてもよい。
【実施例】
【0030】
以下、実施例について説明する。
<試験条件>
図5は、試験条件及び圧縮強度試験の結果を示す図であり、図6は、土砂の性状を示す図である。
図5に示すように、単位体積あたり(1m)に含まれるセメント量が250kgのソイルセメントの試験体Aと、350kgの試験体Bとをそれぞれ打設し、圧縮強度を測定して評価を行った。ここで、セメントは、例えば、高炉セメントB種を用い、土砂は、図6に示すような性状のものを用いた。
試験体Aについては、3回の打設を行い、それぞれ1mあたり270秒混合した。
1回目は、高さが0.4mとなるように打設量を3.9mとし、含水比は16.2、スランプは15cmである。このとき、ソイルセメント全体の練り量は4m(4000リットル)であり、ソイルセメントの各成分の重量は、セメント1000kg、水1054kg、土砂3691kgである。このとき、水セメント比は105.4となる。
2回目は、高さが1.6mとなるように打設量を15.7mとし、含水比は13.9、スランプは18.2cmである。このとき、ソイルセメント全体の練り量は4m(4000リットル)であり、ソイルセメントの各成分の重量は、セメント1000kg、水1398kg、土砂3597kgである。このとき、水セメント比は139.8となる。
3回目は、高さが1.6mとなるように打設量を15.7mとし、含水比は13.9、スランプは18.2cmである。このとき、ソイルセメント全体の練り量は12m(12000リットル)であり、ソイルセメントの各成分の重量は、セメント3000kg、水3603kg、土砂10791kgである。このとき、水セメント比は120.1となる。
【0031】
試験体Bについても、3回の打設を行った。
1回目は、高さが1.5mとなるように打設量を14.4mとし、含水比は16.2、スランプは18.8cmである。このとき、ソイルセメント全体の練り量は8.571m(8571リットル)であり、ソイルセメントの各成分の重量は、セメント3000kg、水2682kg、土砂7909kgである。このとき、水セメント比は89.4となる。
2回目は、高さが1.5mとなるように打設量を14.4mとし、含水比は16.2、スランプは18.8cmである。このとき、ソイルセメント全体の練り量は8.571m(8571リットル)であり、ソイルセメントの各成分の重量は、セメント3000kg、水2682kg、土砂7909kgである。このとき、水セメント比は89.4となる。
3回目は、高さが0.5mとなるように打設量を4.8mとし、含水比は13.1、スランプは10.3cmである。このとき、ソイルセメント全体の練り量は5.714m(5714リットル)であり、ソイルセメントの各成分の重量は、セメント2000kg、水1728kg、土砂5094kgである。このとき、水セメント比は86.3となる。
【0032】
<圧縮強度の評価>
図5に示すように、試験体Aにおいては、目標となる圧縮強度が3.0N/mm以上であるのに対して、行った試験の3回とも5.4N/mmであり、スランプを有するソイルセメントを用いても、圧縮強度を目標強度以上にすることができた。
試験体Bにおいても、目標となる圧縮強度が9.0N/mm以上であるのに対して、行った試験の3回とも9.3N/mmであり、スランプを有するソイルセメントを用いても、圧縮強度を目標強度以上にすることができた。
【0033】
図7は、試験体Aのソイルセメントの混合時間と圧縮強度との関係を示す図である。
図7に示すように、混合時間が90〜270秒の範囲においては、圧縮強度が目標値よりも大きくなっており、ソイルセメントの混合時間として十分であることが確認できた。
よって、スランプが10.3〜18.8cmのソイルセメントは、堰堤の中詰材として用いることが確認できた。
【符号の説明】
【0034】
1 堰堤
2 基礎部
3 上流側保護壁部
4 下流側保護壁部
5 中詰材
6 支持部材
7 補強部材
8 支持部材
9 補強部材
10 止水テープ(シール部材)
11 止水テープ(シール部材)
31 保護セグメント
41 保護セグメント
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7