特許第6392589号(P6392589)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6392589-ポリカーボネート樹脂 図000019
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392589
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】ポリカーボネート樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/06 20060101AFI20180910BHJP
【FI】
   C08G64/06
【請求項の数】5
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2014-175265(P2014-175265)
(22)【出願日】2014年8月29日
(65)【公開番号】特開2016-50232(P2016-50232A)
(43)【公開日】2016年4月11日
【審査請求日】2017年5月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100169085
【弁理士】
【氏名又は名称】為山 太郎
(72)【発明者】
【氏名】常守 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】松井 学
(72)【発明者】
【氏名】梅木 篤志
【審査官】 前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−041548(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/031516(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/053110(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G64/00−64/42
C08L1/00−101/14
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される構成単位(A)を有し、下記一般式(2)で表される構成単位(B)を有し、全構成単位における構成単位(B)の割合が10ppm以上2000ppm以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
【化1】
(式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、または、炭素原子数6〜15のアリール基、または炭素原子数3〜8の環状アルキル基を示す。)
【化2】
(式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、または、炭素原子数6〜15のアリール基、又は炭素原子数3〜8の環状アルキル基を示す。Xは下記式(2−1)および(2−2)からなる群より選択される少なくとも1種の有機残基を表し、Yは水素原子、下記式(2−1)および(2−2)からなる群より選択される少なくとも1種の有機残基を表す。)
【化3】
(式(2−1)中、Rは、炭素原子数1〜6のアルキル基、又は、炭素原子数6〜15のアリール基、又は炭素原子数3〜8の環状アルキル基を示す。)
【化4】
(式(2−2)中、Rは、炭素原子数1〜6のアルキル基、又は、炭素原子数6〜15のアリール基、又は炭素原子数3〜8の環状アルキル基を示す。)
【請求項2】
成形温度300℃で成形した厚さ2mmの成形板におけるJIS K5600に準拠した鉛筆硬度が、H以上であることを特徴とする請求項1記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項3】
成形温度300℃で成形した引張試験片におけるアルカリ溶液を使用したソルベントクラック試験において24時間後の限界歪みが1%以上であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項4】
成形温度300℃で成形した厚さ2mmの成形板におけるJIS K7373に準拠して測定した色相(YI)が1.5以下であり、成形温度300℃で15分間滞留後の色相変化値(ΔYI)が0.5以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
【請求項5】
粒径15μm以上である異物総個数が1個/40g以上、37個/40g以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の構成単位を含有するポリカーボネート樹脂において、特定の化合物に由来する構成単位を特定量含有した耐擦傷性が高く、耐アルカリ性に優れたポリカーボネート樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート樹脂は、透明性、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性に優れていることから、エンジニアリングプラスチックとして、電気・電子・OA機器の筐体や部品、自動車用内装・外装部品、家具、楽器、雑貨類などの幅広い分野で使用されている。
一方、JIS K5600に記載の塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法)に準拠して測定したポリカーボネート樹脂の鉛筆硬度は2Bであり、傷がつきやすいことが課題である。特に、携帯電話、スマートフォン、液晶テレビ、スピーカー、携帯ゲーム機、ノートパソコン、タブレットPCに代表される電気・電子・OA機器の筐体やインテリアパネル、ドアハンドル、ステアリング、カーオーディオ・カーナビゲーションフレーム、シフトノブに代表される自動車用内装、ルーフスポイラー、ウィンドウガーニッシュ等に代表される自動車外装部品、スマートメータ等の計器窓、住宅窓、カーポート等の建材、家具、楽器類では、表面の引っかき傷は致命的な外観不良となる。
【0003】
ポリカーボネート樹脂の耐擦傷性を向上させる方法の一つとして、樹脂表面にメラミン樹脂やシリコーン樹脂等の塗料をポリカーボネート樹脂表面に塗装することが知られている。しかしながら、塗料のポリカーボネート樹脂表面に対する濡れ性や塗装工程の環境条件によってピンホール、クラック、ハジキ、ゆず肌(オレンジピール)といった外観不良や塗装の密着不良が発生し、生産性が低下することが課題である。
また、ポリカーボネート樹脂の耐擦傷性を向上させる手法の一つとして、ポリカーボネート樹脂の片面または両面にアクリル樹脂を積層する方法が知られている。しかしながら、アクリル樹脂はポリカーボネート樹脂に比べて耐熱性が低く、吸水性が高いため、例えば、高温高湿下における寸法変化の樹脂間差が大きく、積層体に反りが発生することが課題である。
【0004】
その他の方法の一つとして例えば、特定の構成単位を含有する表面硬度の高いポリカーボネートやコポリカーボネートとする方法が記載されている。(特許文献1、2)
更に、表面硬度が高く、難燃性が高いポリカーボネート樹脂を提供するために、アルカリ分解後の不純物量を制御する方法が記載されている。(特許文献3〜7)これらの文献では、難燃性以外にも流動性や色相向上、異物低減といった副次的効果も確認されている。ところが、電子機器筐体や自動車内装用途に特定の構成単位を含有するポリカーボネート樹脂を使用した場合、前述したポリカーボネート樹脂に塗装する場合やアクリル樹脂を積層する場合に比べて、耐アルカリ性に劣ることが課題である。
これまでに、耐擦傷性が高く、耐アルカリ性に優れたポリカーボネート樹脂は、まだない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭64−069625号公報
【特許文献2】特開平08−183852号公報
【特許文献3】特開2011−105932号公報
【特許文献4】特開2012−236989号公報
【特許文献5】特開2012−236990号公報
【特許文献6】特開2012−236991号公報
【特許文献7】特開2013−227508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、耐擦傷性が高く、耐アルカリ性に優れたポリカーボネート樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の構成単位を含有するポリカーボネート樹脂において、特定の化合物に由来する構成単位を特定量含有することにより、耐擦傷性が高く、耐アルカリ性に優れたポリカーボネート樹脂が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
1.下記一般式(1)で表される構成単位(A)を有し、下記一般式(2)で表される構成単位(B)を有し、全構成単位における構成単位(B)の割合が10ppm以上2000ppm以下であることを特徴とするポリカーボネート樹脂。
【化1】
(式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、または、炭素原子数6〜15のアリール基、または炭素原子数3〜8の環状アルキル基を示す。)
【化2】
(式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、または、炭素原子数6〜15のアリール基、又は炭素原子数3〜8の環状アルキル基を示す。Xは下記式(2−1)および(2−2)からなる群より選択される少なくとも1種の有機残基を表し、Yは水素原子、下記式(2−1)および(2−2)からなる群より選択される少なくとも1種の有機残基を表す。)
【化3】
(式(2−1)中、Rは、炭素原子数1〜6のアルキル基、又は、炭素原子数6〜15のアリール基、又は炭素原子数3〜8の環状アルキル基を示す。)
【化4】
(式(2−2)中、Rは、炭素原子数1〜6のアルキル基、又は、炭素原子数6〜15のアリール基、又は炭素原子数3〜8の環状アルキル基を示す。)
2.成形温度300℃で成形した厚さ2mmの成形板におけるJIS K5600に準拠した鉛筆硬度が、H以上であることを特徴とする前記1記載のポリカーボネート樹脂。
3.成形温度300℃で成形した引張試験片におけるアルカリ溶液を使用したソルベントクラック試験において24時間後の限界歪みが1%以上であることを特徴とする前記1または2に記載のポリカーボネート樹脂。
4.成形温度300℃で成形した厚さ2mmの成形板におけるJIS K7373に準拠して測定した色相(YI)が1.5以下であり、成形温度300℃で15分間滞留後の色相変化値(ΔYI)が0.5以下であることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
5.粒径15μm以上である異物総個数が1個/40g以上、37個/40g以下であることを特徴とする前記1〜4のいずれかに記載のポリカーボネート樹脂。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、従前知られるポリカーボネート樹脂と比較して、耐擦傷性が高く、アルカリ性に優れたポリカーボネート樹脂を得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】熱分解における推定機構の説明の図である。
図2】ストレスクラック性評価方法(定歪み曲げ法)の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0013】
<ポリカーボネート樹脂>
本発明のポリカーボネート樹脂は、下記一般式(1)で表される構成単位(A)を有し、下記一般式(2)で表される構成単位(B)を有し、全構成単位における構成単位(B)の割合が10ppm以上2000ppm以下であり、更に好ましくは30pp以上1800ppm以下であり、さらに好ましくは50ppm以上1500ppm以下、最も好ましくは、100〜1000ppm以下である。10ppmより少ないと耐アルカリ性が劣り、2000ppmより多いと色相、特に黄色度が高くなるため、好ましくない。
【0014】
【化5】
【0015】
(式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、又は、炭素原子数6〜15のアリール基、又は炭素原子数3〜8の環状アルキル基を示す。)
【0016】
【化6】
【0017】
(式(2)中、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、又は、炭素原子数6〜15のアリール基、又は炭素原子数3〜8の環状アルキル基を示す。Xは下記式(2−1)および(2−2)からなる郡より選択される少なくとも1種の有機残基を表し、Yは水素原子、下記式(2−1)および(2−2)からなる郡より選択される少なくとも1種の有機残基を表す。)
【0018】
【化7】
【0019】
(式(2−1)中、Rは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、又は、炭素原子数6〜15のアリール基、又は炭素原子数3〜8の環状アルキル基を示す。)
【0020】
【化8】
【0021】
(式(2−2)中、Rは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、又は、炭素原子数6〜15のアリール基、又は炭素原子数3〜8の環状アルキル基を示す。)
【0022】
本発明のポリカーボネート樹脂における一般式(1)で表される構成単位において、式(1)中、RおよびRは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜6のアルキル基、又は、炭素原子数6〜15のアリール基、又は炭素原子数3〜8の環状アルキル基を示す。
【0023】
およびRの炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基が挙げられる。RおよびRの炭素原子数6〜15のアリール基としては、例えば、フェニル基、ベンジル基、トリル基、4−メチルフェニル基、ナフチル基、フルオレン基等が挙げられる。RおよびRの炭素原子数3〜8の環状アルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル、 シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。これらの中でも、RおよびRは、メチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基が好ましく、その中でも特にメチル基が好ましい。
【0024】
ここで、一般式(1)で現れる構成単位におけるRおよびRの結合位置は、それぞれのフェニル基に置換されているヒドロキシル基を基準として、オルソ位、メタ位、パラ位から選ばれる任意の位置である。これらの中でも、オルソ位が好ましい。
【0025】
本発明のポリカーボネート樹脂は、少なくとも一般式(1)で表される構成単位を有するが、全構成単位に対して式(1)で表される構成単位が50重量%以上であることが好ましく、より好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上である。式(1)で表される構成単位の割合が50重量%未満であると、ポリカーボネート樹脂の耐擦傷性が劣る傾向がある。
【0026】
前記一般式(1)で表される構成単位に由来する二価フェノール類以外に、その他の二価フェノール類と併用して共重合ポリカーボネートにすることも可能である。その他の二価フェノール類の具体的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノール−A)、2,2−ビス{(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、及び2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン等が挙げられる、これらは単独で又は2種以上を混合して使用できる。これらの中でも特に2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましい。
【0027】
本発明のポリカーボネート樹脂は、前記式(1)で表される構成単位を有するが、ポリカーボネート樹脂は、その製造過程において、酸化、熱分解、加水分解等の化学変化が生じることは公知である。式(1)で表される構成単位は、特に酸化の影響を受けやすく、例えば、高温で溶融した場合、系中に存在する酸素により、熱分解反応が促進される。
式(1)で表される構成単位を有するポリカーボネート樹脂の熱分解機構を図1に記載した。
【0028】
図1に例示した熱分解反応によって形成された二重結合を有する核置換イソプロペニルフェノール化合物が生成する。この化合物が、特定の熱処理などの条件下で、前記式(1)で表される構成単位と反応することにより、前記式(2)で表される構成単位が生成されることが判明した。そして、前記式(2)で表される構成単位は、架橋構造を形成しやすく、その結果、ポリカーボネート樹脂自体の疎水性が向上し、アルカリ性水溶液に対する加水分解反応が抑制されることを見出したのである。但し、前記式(2)で表される構成単位が多くなると黄色度(YI)が高くなり、架橋構造が増加することで溶媒不溶分(ゲル)が形成され、異物が多くなる。そのため、前記式(2)で表される構成単位は、特定量含有させることが必要であり、それによって色相、特に黄色度を悪化させることなく、耐アルカリ性だけを向上させることが可能である。
【0029】
本発明のポリカーボネート樹脂は、熱処理の条件により前記式(2)で表される構成単位の含有量を制御することが可能である。具体的には、高温でのせん断が必要であり、可塑化と混錬部分が別であり、混錬部分に内部帰還型スクリューを有する高せん断加工機を使用する方法等が、好ましく挙げられる。
なお、前記式(2)の量は、温度を上げる、せん断を高くする、時間を長くするなどによって増やすことが出来る。
【0030】
高せん断加工機を使用した場合の好ましい条件は、以下の通りである。熱処理温度としてはポリカーボネート樹脂温度として260℃〜350℃が好ましく、280℃〜340℃がより好ましく、290℃〜330℃がさらに好ましく、300℃〜320℃が最も好ましい。樹脂温度が低すぎると、前記式(2)で表される構成単位の割合が少なくなり、耐アルカリ性が劣るため好ましくない。樹脂温度が高すぎると前記式(2)で表される構成単位の割合が多くなり、ポリカーボネート樹脂の色相が悪化するため好ましくない。
【0031】
熱処理時間としては、10〜〜60秒が好ましく、より好ましくは15〜45秒、さらに好ましくは20〜30秒である。熱処理時間が10秒より短すぎると、前記式(2)で表される構造単位の割合が少なくなり、耐アルカリ性が劣ることがある。60秒より長い場合、前記式(2)で表される構成単位の割合が多くなり、ポリカーボネート樹脂の色相が悪化することがある。
【0032】
本発明のポリカーボネート樹脂が含有する、前記式(2)で表される構成単位の含有量は、本発明のポリカーボネート樹脂を後述の方法により、反応熱分解ガスクロマトグラフィー(以下GC/MSと略することがある)法にて測定された値で定義される。
【0033】
・式(2)で表される構成単位の例示
本発明のポリカーボネート樹脂は、前記式(2)で表される構成単位を有する。式(1)が2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(以下、BP−Cと略することがある)である場合を例にとると、下記一般式(3)〜(6)で表される構成単位が例示される。
【0034】
【化9】
【0035】
【化10】
【0036】
【化11】
【0037】
【化12】
【0038】
前記式(2)で表される構成単位から選ばれる少なくとも1種の構成単位の含有量は、本発明のポリカーボネート樹脂を反応熱分解GC/MSにて測定された値で定義される。その測定方法としては、ポリカーボネート樹脂0.3mgを、反応試薬である水酸化テトラメチルアンモニウム25%メタノール溶液5μLに溶解させ、内部標準としてステアリン酸メチルを用いて、反応熱分解GC/MSにて400℃、6秒間加熱した際の発生ガスを定性分析し、内部標準を使用して定量した。
【0039】
反応熱分解GC/MSによる分析において、例えば以下の条件で可能である。
(反応熱分解GC/MS分析の条件)
・ガスクロマトグラフ:Agilent6890N GC
(アジレント・テクノロジー社製)
・質量分析計:Agilent5975 inertMSD
(アジレント・テクノロジー社製)
・熱分解装置:Double Shot Pyrolyzer PY−2010iD
(フロンティア・ラボ社製)
・温度:400℃、6秒間加熱
【0040】
また、より具体的に、式(1)で表される化合物がBP−Cである場合を例にとると、前記式(3)〜(6)で表される構造単位より誘導される化合物は、上記反応熱分解GC/MS条件にて、各保持時間における質量分析によって定性され、内部標準によって定量可能である。
【0041】
<ポリカーボネート樹脂の物性>
本発明のポリカーボネート樹脂は、JIS K5600に準拠した鉛筆硬度が、H以上であることが好ましい。より好ましくは、2H以上である。但し、通常、3H以下である。鉛筆硬度がH未満のポリカーボネート樹脂では耐擦傷性が劣るため、好ましくない。
本発明のポリカーボネート樹脂は、その樹脂0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液を20℃で測定した比粘度(以下、ηSPと略することがある)が0.2〜2.0のものが好ましく、0.3〜0.9の範囲のものがより好ましい。比粘度が0.2未満では樹脂としての強度が弱く、比粘度が2.0を超えると溶融流動性が低下し、成形性に劣る。比粘度は20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求めることができる。
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
【0042】
本発明のポリカーボネート樹脂は、成形温度300℃における射出成形により形成される3段型プレート(幅50mm、長さ90mm、厚みがゲート側から3.0mm(長さ20mm)、2.0mm(長さ45mm)、1.0mm(長さ25mm)、算術平均粗さ(Ra):0.03μm)の厚み2.0mm部において、JIS K7373に準拠して測定した色相(YI)が1.5以下が好ましく、1.0以下がより好ましい。また、成形温度300℃における15分間シリンダ内で滞留させた後、射出成形により形成される3段型プレートの厚み2.0mm部における色相変化(ΔYI)が0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましい。
【0043】
本発明のポリカーボネート樹脂は、成形した引張試験片(ダンベル片)を用いたソルベントクラック試験において、pH9〜14のアルカリ性試験溶液を使用し、24時間後における限界歪みが1%以上であることが好ましく、1.2%以上であることがより好ましく、1.5%以上であることがさらに好ましい。
【0044】
<ポリカーボネート樹脂の製造方法>
本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法について説明する。本発明のポリカーボネート樹脂の製造方法に特に制限は無く、前記式(1)で表される構成単位を有し、更に、前記式(2)で表される構成単位を、特定量含むものとなるように製造可能であれば、如何なる方法で製造しても構わない。
【0045】
通常ポリカーボネート樹脂は二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものである。反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。ポリカーボネート樹脂はいかなる製造方法によって製造されたものでもよく、界面重縮合の場合は通常一価フェノール類の末端停止剤が使用される。芳香族ポリカーボネート樹脂は前記二価フェノールに加えて、3官能以上の例えば3官能フェノール類の如き多官能フェノール類を重合させた分岐ポリカーボネートであってもよい。更に、脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸、ポリオルガノシロキサン成分、並びにビニル系単量体を共重合させた共重合ポリカーボネートであってもよい。
【0046】
カーボネート前駆物質として例えばホスゲンを使用する反応では、通常酸結合剤および溶媒の存在下に反応を行う。酸結合剤としては例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。溶媒としては例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また反応促進のために例えば第三級アミンまたは第四級アンモニウム塩等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃であり、反応時間は数分〜5時間である。
【0047】
カーボネート前駆物質として例えば炭酸ジエステルを用いる溶融エステル交換反応は、不活性ガス雰囲気下所定割合の芳香族ジヒドロキシ成分を炭酸ジエステルと加熱しながら撹拌して、生成するアルコールまたはフェノール類を留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノール類の沸点等により異なるが、通常120〜300℃の範囲である。反応はその初期から減圧にして生成するアルコールまたはフェノール類を留出させながら反応を完結させる。また反応を促進するために通常エステル交換反応に使用される触媒を使用することもできる。前記エステル交換反応に使用される炭酸ジエステルとしては、例えばジフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート等が挙げられる。これらのうち特にジフェニルカーボネートが好ましい。
【0048】
末端停止剤として通常使用される単官能フェノール類を使用することができる。殊にカーボネート前駆物質としてホスゲンを使用する反応の場合、単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られたポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。かかる単官能フェノール類としては、ポリカーボネート樹脂の末端停止剤として使用されるものであればよく、前記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。
【0049】
(添加剤)
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、より好適には以下の離型剤、熱安定剤、酸化防止剤などを配合することにより、前記式(2)で表される化合物に由来する構造単位から選ばれる少なくとも1種の構造単位の含有量を制御することが可能である。特に、酸化防止剤を組み合わせることでより熱分解の初期を制御可能なものとなる場合がある。例えば、ラジカル連鎖を防止するヒンダードフェノール系酸化防止剤と主鎖切断を抑制するリン系熱安定剤との組み合わせが挙げられる。
【0050】
(i)離型剤
離型剤としては公知のものが使用できる。例えば、脂肪酸エステル、ポリオレフィン系ワックス(ポリエチレンワックス、1−アルケン重合体など。酸変性などの官能基含有化合物で変性されているものも使用できる)、シリコーン化合物、フッ素化合物(ポリフルオロアルキルエーテルに代表されるフッ素オイルなど)、パラフィンワックス、蜜蝋などを挙げることができる。これらの中でも入手の容易さ、離型性および透明性の点から脂肪酸エステルが好ましい。かかる離型剤は芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、好ましくは0.005〜0.2重量部、より好ましくは0.007〜0.1重量部、更に好ましくは0.01〜0.06重量部である。添加量が前記範囲の下限未満では、離型性の改善が十分ではなく、上限を超える場合、ブリードアウトなど外観不良を起こしやすい。
【0051】
上記の中でも好ましい離型剤として脂肪酸エステルが挙げられる。かかる脂肪酸エステルは、脂肪族アルコールと脂肪族カルボン酸とのエステルである。かかる脂肪族アルコールは1価アルコールであっても2価以上の多価アルコールであってもよい。また該アルコールの炭素数としては、好適には3〜32の範囲、より好適には5〜30の範囲である。かかる一価アルコールとしては、例えばドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、エイコサノール、テトラコサノール、セリルアルコール、およびトリアコンタノールなどが例示される。かかる多価アルコールとしては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ポリグリセロール(トリグリセロール〜ヘキサグリセロール)、ジトリメチロールプロパン、キシリトール、ソルビトール、およびマンニトールなどが挙げられる。本発明で好ましく使用される脂肪酸エステルにおいては多価アルコールがより好ましい。
【0052】
一方、脂肪族カルボン酸は炭素数3〜32であることが好ましく、特に炭素数10〜22の脂肪族カルボン酸が好ましい。該脂肪族カルボン酸としては、例えばデカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸(パルミチン酸)、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸(ステアリン酸)、ノナデカン酸、イコサン酸、およびドコサン酸(ベヘン酸)などの飽和脂肪族カルボン酸、並びにパルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エイコセン酸、エイコサペンタエン酸、およびセトレイン酸などの不飽和脂肪族カルボン酸を挙げることができる。上記の中でも脂肪族カルボン酸は、炭素原子数14〜20であるものが好ましい。なかでも飽和脂肪族カルボン酸が好ましい。かかる脂肪族カルボン酸は通常、動物性油脂(牛脂および豚脂など)や植物性油脂(パーム油など)などの天然油脂類から製造されるため、これらの脂肪族カルボン酸は、通常炭素原子数の異なる他のカルボン酸成分を含む混合物である。したがって本発明で好ましく使用される脂肪族カルボン酸の製造においてもかかる天然油脂類から製造され、他のカルボン酸成分を含む混合物の形態からなる。脂肪酸エステルにおける酸価は、20以下(実質的に0を取り得る)であることが好ましい。しかしながら全エステル(フルエステル)の場合には、離型性を向上させるため、少なくからず遊離の脂肪酸を含有することが好ましく、この点においてフルエステルにおける酸価は3〜15の範囲が好ましい。また脂肪酸エステルのヨウ素価は、10以下(実質的に0を取り得る)が好ましい。これらの特性はJIS K 0070に規定された方法により求めることができる。
【0053】
上記脂肪酸エステルは、部分エステルおよびフルエステルのいずれであってもよい。本発明においてより好ましくは良好な離型性および耐久性の点で部分エステルである。中でもグリセリンモノエステルが好ましい。グリセリンモノエステルは、グリセリンと脂肪酸のモノエステルが主成分であり、好適な脂肪酸としてはステアリン酸、パルチミン酸、ベヘン酸、アラキン酸、モンタン酸、およびラウリン酸等の飽和脂肪酸やオレイン酸、リノール酸、およびソルビン酸等の不飽和脂肪酸が挙げられ、特にステアリン酸、ベヘン酸、およびパルチミン酸のグリセリンモノエステルを主成分としたものが好ましい。尚、かかる脂肪酸は、天然の脂肪酸から合成されたものであり、上述のとおり混合物となる。グリセリンモノエステルは、他の離型剤、殊に脂肪酸フルエステルとの併用が可能であるが、併用した場合でもグリセリンモノエステルを主成分とすることが好ましい。即ち、離型剤100重量%中、60重量%以上とすることが好ましい。
【0054】
尚、部分エステルは、熱安定性の点ではフルエステルに対して劣る場合が多い。かかる部分エステルの熱安定性を向上するため、部分エステルは、好ましくは20ppm未満、より好ましくは5ppm未満、更に好ましくは1ppm未満のナトリウム金属含有量とすることが好ましい。ナトリウム金属含有量が1ppm未満の脂肪酸部分エステルは、脂肪酸部分エステルを通常の方法で製造した後、分子蒸留などにより精製して製造することができる。
【0055】
具体的には、スプレーノズル式脱ガス装置によりガス分および低沸点物質を除去した後に流下膜式蒸留装置を用い蒸留温度120〜150℃、真空度0.01〜0.03kPaの条件にてグリセリン等の多価アルコール分を除去し、更に遠心式分子蒸留装置を用いて、蒸留温度160〜230℃、真空度0.01〜0.2Torrの条件にて高純度の脂肪酸部分エステルを留出分として得る方法などがあり、ナトリウム金属は蒸留残渣として除去できる。得られた留出分に対し、繰り返し分子蒸留を行うことにより、更に純度を上げ、ナトリウム金属含有量の更に少ない脂肪酸部分エステルを得ることもできる。また前もって適切な方法にて分子蒸留装置内を十分に洗浄し、また気密性を高めるなどにより外部環境からのナトリウム金属成分の混入を防ぐことも肝要である。かかる脂肪酸エステルは、専門業者(例えば理研ビタミン(株))から入手可能である。
【0056】
(ii)リン系熱安定剤
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、その成形加工時の熱安定性を向上させることを主たる目的として各種のリン系熱安定剤が更に配合されることが好ましい。かかるリン系熱安定剤としては、亜リン酸、リン酸、亜ホスホン酸、ホスホン酸およびこれらのエステルなどが例示される。更にかかるリン系熱安定剤は第3級ホスフィンを含む。
【0057】
具体的にはホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられる。
【0058】
更に他のホスファイト化合物としては二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイトなどを挙げることができる。
【0059】
ホスフェート化合物としては、トリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクロルフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルクレジルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどを挙げることができ、好ましくはトリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェートである。
【0060】
ホスホナイト化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,3’−ビフェニレンジホスホナイト、テトラキス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3,3’−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−n−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−4−フェニル−フェニルホスホナイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)−3−フェニル−フェニルホスホナイト等が挙げられ、テトラキス(ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましく、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトがより好ましい。かかるホスホナイト化合物は前記アルキル基が2以上置換したアリール基を有するホスファイト化合物との併用可能であり好ましい。
【0061】
ホスホネイト化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、およびベンゼンホスホン酸ジプロピル等が挙げられる。
第3級ホスフィンとしては、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィン、トリアミルホスフィン、ジメチルフェニルホスフィン、ジブチルフェニルホスフィン、ジフェニルメチルホスフィン、ジフェニルオクチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリナフチルホスフィン、およびジフェニルベンジルホスフィンなどが例示される。特に好ましい第3級ホスフィンは、トリフェニルホスフィンである。
【0062】
前記リン系熱安定剤は、1種のみならず2種以上を混合して用いることができる。前記リン系熱安定剤の中でも、ホスファイト化合物またはホスホナイト化合物が好ましい。殊にトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイトおよびビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−フェニル−フェニルホスホナイトが好ましい。またこれらとホスフェート化合物との併用も好ましい態様である。
【0063】
(iii)ヒンダードフェノール系酸化防止剤
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、その成形加工時の熱安定性、および耐熱老化性を向上させることを主たる目的としてヒンダードフェノール系酸化防止剤を配合することができる。かかるヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、例えば、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n−オクタデシル−β−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェル)プロピオネート、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが例示される。これらはいずれも入手容易である。前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
【0064】
前記(ii)リン系安定剤および/または(iii)ヒンダードフェノール系酸化防止剤の量は、ポリカーボネート樹脂100重量部に対して、好ましくは0.0001〜1重量部、より好ましくは0.001〜0.1重量部、さらに好ましくは0.005〜0.1重量部である。前記範囲よりも少なすぎる場合には良好な安定化効果を得ることが難しく、前記範囲を超えて多すぎる場合は、逆に材料の物性低下や、ブリードアウト等の外観不良を起こす場合がある。
【0065】
本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、適宜前記ヒンダードフェノール系酸化防止剤以外の他の酸化防止剤を使用することができる。かかる他の酸化防止剤としては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、およびグリセロール−3−ステアリルチオプロピオネートなどが挙げられる。これら他の酸化防止剤の使用量は、芳香族ポリカーボネート樹脂100重量部に対して0.001〜0.05重量部が好ましい。
【0066】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、他にも、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、熱線吸収剤、難燃剤、加水分解改良剤、無機充填材、抗菌剤、光触媒系防汚剤、光拡散剤、および光高反射用白色顔料などを含有することができる。これらは、本発明の効果に支障のない剤および配合量を適宜選択して含有することができる。
【実施例】
【0067】
以下、実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限
定されるものではない。なお、実施例で使用したポリカーボネート樹脂並びに組成物の物
性は、下記の方法により評価した。
【0068】
(1)比粘度
比粘度(ηSP)は20℃で塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求めることができる。
比粘度(ηSP)=(t−t)/t
[tは塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
【0069】
(2)前記式(3)〜(6)で表される構造単位の定性と定量
ポリカーボネート樹脂0.3mgを反応試薬として、水酸化テトラメチルアンモニウム25%メタノール溶液5μLに溶解させ、内部標準としてステアリン酸メチルのクロロホルム溶液を用いて、反応熱分解GC/MSにて分析し、各保持時間における質量分析によって化合物を定性し、内部標準によって定量した。測定は、以下の条件で実施した。
(分析条件)
・ガスクロマトグラフ:Agilent6890N GC
(アジレント・テクノロジー社製)
・質量分析計:Agilent5975 inertMSD
(アジレント・テクノロジー社製)
・熱分解装置:Double Shot Pyrolyzer PY−2010iD
(フロンティア・ラボ社製)
・温度:400℃、6秒間加熱
【0070】
(3)ポリカーボネート樹脂の異物量
ポリカーボネート樹脂を、あらかじめ目開き0.05μmのフィルターで濾過した塩化メチレンに溶解させ、この試料を目開き15μmのフィルターにて濾過し、フィルター捕集物を得、目視にて異物個数を数えた。
【0071】
(4)射出成形体の鉛筆硬度
算術平均粗さ(Ra)が0.03μmとしたキャビティ面を持つ金型を使用し、日本製鋼所製射出成形機J−75E3を用いて、シリンダ温度300℃、金型温度80℃の条件で、保圧時間10秒および冷却時間20秒にて幅50mm、長さ90mm、厚みがゲート側から3mm(長さ20mm)、2mm(長さ45mm)、1mm(長さ25mm)である3段型プレートを成形した。かかる3段型プレートの厚み2mm部における鉛筆硬度をJIS K5600に則して測定した。
【0072】
(5)射出成形体の初期色相(YI
上述した成形体の厚み2mm部において、日本電飾製分光色差計SE−2000にて透過法、C光源、視野角2°におけるYI値(YI)を測定した。
【0073】
(6)溶融滞留した射出成形体の色相変化(ΔYI)
射出成形機(日本製鋼所製J−75E3)を用い、シリンダ温度300℃、金型温度80℃の条件下にて、30分間シリンダ内で溶融樹脂を滞留させたあと、成形を開始し、2ショット目の成形体の厚み2mm部における日本電飾製分光色差計SE−2000にて透過法、C光源、視野角2°におけるYI値(YI)を測定し、色相変化値(ΔYI=YI−YI)を算出した。
【0074】
(7)ソルベントクラック試験
射出成形機(日本製鋼所製J−75E3)を用い、シリンダ温度300℃、金型温度80℃の条件下にて、引張試験片を成形した。ストレスクラック性評価方法を図2に示す。引張試験片の中央にたわみσを与えて、24時間後に試験片下面の最大応力の発生する面におけるクラック発生の有無を観察し、クラックが発生しない最大歪みを限界歪みとした。限界歪みの算出は、歪みε[%]=6hy/(L)にて算出した。限界歪み1%以上を「○」、1%未満を「×」とした。試験薬品としてアルカリ洗剤花王社製アタック原液(pH=10.2)を用いた。
【0075】
[実施例1]
温度計、撹拌機および還流冷却器の付いた反応器に、48重量%水酸化ナトリウム水溶液3844部およびイオン交換水18210部を仕込み、窒素流量10m/hrで15分間、溶液をバブリングした後、反応器内に流量5m/hrで窒素を気相部に吹き込みながら、これに2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(以下、「BPC」と略す、本州化学工業製)3984部、およびハイドロサルファイト8.0部(和光純薬製)を溶解した後、塩化メチレン13,950部を加え、撹拌下、15〜25℃でホスゲン2,000部を約60分かけて吹き込んだ。ホスゲンの吹き込み終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液640部およびp−tert−ブチルフェノール70.56部を加え、撹拌を再開、乳化後トリエチルアミン3.94部を加え、さらに28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了時に、窒素吹き込みを停止した。
【0076】
反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈して水洗した後、塩酸を添加してpH1〜3にして水洗し、さらに水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになるまで水洗を繰り返し、ポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液を得た。次いで、この溶液を目開き0.3μmのフィルターに通過させ、さらに軸受け部に異物取り出し口を有する隔離室付きニーダー中の温水に滴下、塩化メチレンを留去しながらポリカーボネート樹脂をフレーク化し、引続き該含液フレークを粉砕・乾燥してパウダーを得た。得られたポリカーボネート樹脂パウダーの比粘度は0.39であった。
得られたポリカーボネート樹脂パウダーを用いて、該パウダー100重量部に対して、ホスファイト系熱安定剤であるアデカスタブPEP−36(ADEKA製)を0.07重量部、およびヒンダードフェノール系酸化防止剤であるIrganox1010(日産チバガイギー製)を0.03重量部添加し、かかるパウダーを予備可塑化部と高せん断混錬部および内部帰還式スクリューを具備した高せん断加工機(ニイガタマシンテクノ社製NHSS8−28)を使用し、可塑化温度280℃、帰還穴径2mmφ、スクリュー回転数2,500rpm、混錬時間15秒の条件にて溶融混錬した後、加工機の出口からストランド状に押し出し、水で冷却固化させた後、回転式カッターでペレット化し、ポリカーボネート樹脂ペレットを得た。このポリカーボネート樹脂を上記の手順に従い、測定を行った。結果を表1に示す。
【0077】
[実施例2]
混錬時間を30秒とした以外は、実施例1と同様に操作を行い、樹脂ペレットを得た。このポリカーボネート樹脂を上記の手順に従い、測定を行った。結果を表1に示す。
【0078】
[実施例3]
攪拌機および蒸留塔を備えた反応器に、BPC(本州化学工業製)56.3部(0.22モル)、ジフェニルカーボネート(バイエル社製)49.2部(0.23モル)および触媒として水酸化ナトリウム0.000005部とテトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.0016部を仕込み、窒素置換した。この混合物を180℃まで加熱しながら溶解させた。その後、撹拌機を回転させ、反応器の内温を220℃に保った。副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて反応器内の圧力を101.3kPaから13.3kPaまで減圧した。続いて、反応器内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールをさらに留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った。
【0079】
内圧を絶対圧で13.3kPaから2kPaまで減圧し、さらに260℃まで温度を上げ、留出するフェノールを系外に除去した。さらに、昇温を続け、反応器内が0.3Pa以下に到達後、内圧を保持し、重縮合反応を行った。反応器内の最終的な内部温度は295℃とした。反応器の攪拌機が予め定めた所定の攪拌動力となったときに、重縮合反応を終了した。反応器での重合反応時間は120分であった。次に溶融状態のままで、触媒中和剤としてドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩を0.0023部(4×10−5モル/ビスフェノール1モル)添加して295℃、10Torr以下で10分間反応を継続し、得られたポリマ−をギアポンプでベント式二軸押出機[(株)神戸製鋼所製KTX−46]に送った。押出機の途中で、ホスファイト系熱安定剤であるIrgafos168(日産チバガイギー製)を0.05重量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤であるIrganox1010(日産チバガイギー製)を0.05重量部を加え、入口のバレル温度230℃、出口のバレル温度270℃、ポリカーボネート樹脂出口温度285℃、脱気しながら溶融混錬押出し、2軸押出機の出口からストランド状に押し出し、水で冷却固化させた後、回転式カッターでペレット化し、ポリカーボネート樹脂ペレットを得た。得られたポリカーボネート樹脂の比粘度は0.41であった。かかるペレットを予備可塑化部と高せん断混錬部および内部帰還式スクリューを具備した高せん断加工機(ニイガタマシンテクノ社製NHSS8−28)を使用し、可塑化温度280℃、帰還穴径2mmφ、スクリュー回転数2,500rpm、混錬時間15秒の条件にて溶融混錬した後、加工機の出口からストランド状に押し出し、水で冷却固化させた後、回転式カッターでペレット化し、ポリカーボネート樹脂ペレットを得た。このポリカーボネート樹脂を上記の手順に従い、測定を行った。結果を表1に示す。
【0080】
[実施例4]
混錬時間を30秒とした以外は、実施例3と同様に操作を行い、樹脂ペレットを得た。このポリカーボネート樹脂を上記の手順に従い、測定を行った。結果を表1に示す。
【0081】
[比較例1]
実施例1と同様の操作で得られたポリカーボネート樹脂パウダーを用いて、該パウダー100重量部に対して、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト(イルガフォス168、日産チバガイギー製)を0.05重量部添加し、かかるパウダーをベント式二軸押出機[(株)神戸製鋼所製KTX−46]により脱気しながら溶融混錬押出し、2軸押出機の出口からストランド状に押し出し、水で冷却固化させた後、回転式カッターでペレット化し、ポリカーボネート樹脂ペレットを得た。その際の入口のバレル温度230℃、出口のバレル温度280℃、ポリカーボネート樹脂出口温度281℃にて実施した。このポリカーボネート樹脂を上記の手順に従い、測定を行った。結果を表1に示す。
【0082】
[比較例2]
高せん断加工機を使用しないこと以外は実施例3と同様に操作を行い、ポリカーボネート樹脂ペレットを得た。このポリカーボネート樹脂を上記の手順に従い、測定を行った。結果を表1に示す。
【0083】
[比較例3]
可塑化温度320℃、混錬時間を120秒とした以外は、実施例1と同様に操作を行い、樹脂ペレットを得た。このポリカーボネート樹脂を上記の手順に従い、測定を行った。結果を表1に示す。
【0084】
[比較例4]
可塑化温度320℃、混錬時間を180秒とした以外は、実施例3と同様に操作を行い、樹脂ペレットを得た。このポリカーボネート樹脂を上記の手順に従い、測定を行った。結果を表1に示す。
【0085】
【表1】
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明によれば、簡便な方法により、表面硬度が高く、色相が良好で、更に耐アルカリ性に優れたポリカーボネート樹脂組成物及び成形品を得ることができ、携帯電話・パソコン等の電気・電子機器分野、ヘッドランプレンズ・車両用窓等の自動車分野、照明・エクステリア等の建材分野等の、特には耐アルカリ性、表面硬度を要求される用途への利用分野の拡大が可能となる。
【符号の説明】
【0087】
1:引張試験片
2:ガーゼ(試験薬品を5mlスポイトで染み込ませる)
3:スパン間距離(=150mm)
4:1/2L(=75mm)
5:たわみ(=y:実測値、単位mm)
h:試験片幅(=4.0mm)
図1
図2