(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392593
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】保護スイッチ回路、充電回路、電子機器
(51)【国際特許分類】
H03K 17/30 20060101AFI20180910BHJP
H02J 7/10 20060101ALI20180910BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
H03K17/30 E
H02J7/10 A
H03K17/687 G
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-180392(P2014-180392)
(22)【出願日】2014年9月4日
(65)【公開番号】特開2016-54453(P2016-54453A)
(43)【公開日】2016年4月14日
【審査請求日】2017年8月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】吉松 勇作
【審査官】
及川 尚人
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0034139(US,A1)
【文献】
特開2009−106072(JP,A)
【文献】
特開2003−075477(JP,A)
【文献】
特開2008−293206(JP,A)
【文献】
特開2014−107970(JP,A)
【文献】
特開2011−181626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K 17/00−17/70
H02J 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流の入力電圧を受ける入力端子と、
出力端子と、
前記入力端子と前記出力端子の間に設けられたスイッチと、
前記入力電圧をN個(Nは自然数)のしきい値電圧と比較する判定回路と、
前記判定回路の比較結果にもとづいて前記スイッチを制御するゲートコントローラと、
を備え、
前記判定回路は、
前記N個のしきい値電圧それぞれを指示するN個の設定データがソフトウェア制御により書き込み可能なOTP(One Time Programmable)ROM(Read Only Memory)と、
前記入力電圧を、前記OTPROMに書き込まれたN個の設定データに応じた前記N個のしきい値電圧それぞれと比較する比較回路と、
を含み、
前記OTPROMには、前記スイッチをオンすべき正常電圧範囲の上限および下限に対応する第1しきい値電圧と第2しきい値電圧の設定データが書き込み可能であり、
前記比較回路は、前記入力電圧を、前記第1しきい値電圧および前記第2しきい値電圧それぞれと比較可能に構成されることを特徴とする保護スイッチ回路。
【請求項2】
前記比較回路は、
前記N個の設定データに対応づけられるN個の分圧回路であって、それぞれが、前記入力電圧を対応する設定データに応じた分圧比にて分圧するN個の分圧回路と、
前記N個の設定データに対応づけられるN個のコンパレータであって、それぞれが対応する前記分圧回路の出力電圧を、所定の基準電圧と比較するコンパレータと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の保護スイッチ回路。
【請求項3】
前記分圧回路は、
前記入力端子と接地ラインの間に直列に接続された複数の抵抗と、
前記複数の抵抗と並列に設けられた複数のバイパススイッチと、
を含み、
対応する設定データに応じて前記複数のバイパススイッチのオン、オフが設定されることを特徴とする請求項2に記載の保護スイッチ回路。
【請求項4】
ひとつの半導体基板に一体集積化されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の保護スイッチ回路。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の保護スイッチ回路を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項6】
外部DC電源により二次電池を充電するとともに、負荷に電力を供給する充電回路であって、
DC電源からのDC電圧を受けるDC入力端子と、
二次電池が着脱可能に接続される電池端子と、
前記負荷が接続されるシステム端子と、
前記システム端子と前記電池端子の間に設けられた充電用トランジスタと、
前記充電用トランジスタのゲート電圧を制御する充電コントローラと、
前記DC入力端子と前記システム端子の間に設けられたスイッチと、
前記DC入力端子の入力電圧をN個(Nは自然数)のしきい値電圧と比較する判定回路と、
前記判定回路の比較結果にもとづいて前記スイッチを制御するゲートコントローラと、
を備え、
前記判定回路は、
前記N個のしきい値電圧それぞれを指示するN個の設定データがソフトウェア制御により書き込み可能なOTP(One Time Programmable)ROM(Read Only Memory)と、
前記入力電圧を、前記OTPROMに書き込まれたN個の設定データに応じた前記N個のしきい値電圧それぞれと比較する比較回路と、
を含み、
前記OTPROMには、前記スイッチをオンすべき正常電圧範囲の上限および下限に対応する第1しきい値電圧と第2しきい値電圧の設定データが書き込み可能であり、
前記比較回路は、前記入力電圧を、前記第1しきい値電圧および前記第2しきい値電圧それぞれと比較可能に構成されることを特徴とする充電回路。
【請求項7】
前記比較回路は、
前記N個の設定データに対応づけられるN個の分圧回路であって、それぞれが、前記入力電圧を対応する設定データに応じた分圧比にて分圧するN個の分圧回路と、
前記N個の設定データに対応づけられるN個のコンパレータであって、それぞれが対応する前記分圧回路の出力電圧を、所定の基準電圧と比較するコンパレータと、
を含むことを特徴とする請求項6に記載の充電回路。
【請求項8】
前記分圧回路は、
前記入力端子と接地ラインの間に直列に接続された複数の抵抗と、
前記複数の抵抗と並列に設けられた複数のバイパススイッチと、
を含み、
対応する設定データに応じて前記複数のバイパススイッチのオン、オフが設定されることを特徴とする請求項7に記載の充電回路。
【請求項9】
前記スイッチは、トランジスタを含み、
前記ゲートコントローラは、前記システム端子の電圧が所定の目標電圧に近づくように、前記トランジスタのゲート電圧を調節可能に構成されることを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載の充電回路。
【請求項10】
前記OTPROMは、前記目標電圧の設定データがソフトウェア制御により書き込み可能であることを特徴とする請求項9に記載の充電回路。
【請求項11】
前記ゲートコントローラは、前記トランジスタに流れる電流が過電流しきい値を超えないように、前記トランジスタのゲート電圧を調節可能に構成されることを特徴とする請求項9または10に記載の充電回路。
【請求項12】
前記OTPROMは、前記過電流しきい値の設定データがソフトウェア制御により書き込み可能であることを特徴とする請求項11に記載の充電回路。
【請求項13】
前記OTPROMは、前記入力電圧がパワーオンリセット用のしきい値電圧より低くなると、前記OTPROMのメモリセルをリセットするパワーオンリセット回路を含むことを特徴とする請求項6から12のいずれかに記載の充電回路。
【請求項14】
ひとつの半導体基板に一体集積化されることを特徴とする請求項6から13のいずれかに記載の充電回路。
【請求項15】
二次電池と、
前記二次電池を充電する請求項6から14のいずれかに記載の充電回路と、
を備えることを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護スイッチ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
ある端子(入力端子)に直流電圧が供給されているとき、直流電圧の電圧レベルに応じて、入力端子と別の端子(出力端子)の間の電気的な導通、遮断を切りかえたい場合がある。かかる用途に、保護スイッチ回路が用いられる。
図1は、本発明者が検討した保護スイッチ回路の回路図である。
【0003】
保護スイッチ回路100rは、入力(IN)端子、出力(OUT)端子を有する。保護スイッチ回路100rは、IN端子に入力される入力電圧V
INが所定の電圧範囲に含まれているとき、IN−OUT端子間が導通する。保護スイッチ回路100rは、スイッチ102、ゲートコントローラ104、過電圧保護回路110a、低電圧ロックアウト回路110b、を備える。
【0004】
スイッチ102は、IN端子とOUT端子の間に設けられる。過電圧保護回路110aは、入力電圧V
INを、電圧範囲の上限に対応する過電圧保護用のしきい値V
OVPと比較する。低電圧ロックアウト回路110bは、入力電圧V
INを、電圧範囲の下限に対応する低電圧ロックアウト用のしきい値V
UVLOと比較する。ゲートコントローラ104は、過電圧保護回路110a、低電圧ロックアウト回路110bの出力にもとづき、V
UVLO<V
IN<V
OVPのときスイッチ102をオンし、V
IN<V
UVLOまたはV
OVP<V
INのときスイッチ102をオフする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−108017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図1の保護スイッチ回路100rにおいて、しきい値V
UVLO,V
OVPを調節したい場合がある。保護スイッチ回路100rに、入力電圧V
INとは別に電源電圧が常時供給されるシステムでは、保護スイッチ回路100rにしきい値V
UVLO,V
OVPの設定データを格納するレジスタを内蔵し、外部のプロセッサから設定データを書き込むようにすることで、しきい値V
UVLO,V
OVPを調節することができる。
【0007】
ところが、入力電圧V
INが保護スイッチ回路100rの電源電圧として使用されるシステムでは、入力電圧V
INが供給されない状態では、レジスタを読み書きすることができない。こうしたシステムにおいては、ハードウェア加工によりしきい値V
UVLO,V
OVPを調節する方法が採られる。ハードウェア加工としては、レーザカットによるヒューズトリミングや、電流によるアルミニウム配線の溶断によるザッピングなどが例示される。
【0008】
ハードウェア加工は、保護スイッチ回路100rの製造コストが高くなる要因となる。また、ハードウェア加工は、製造工程においてのみ可能であり、保護スイッチ回路100rのユーザ、言い換えれば、保護スイッチ回路100rを搭載するセット機器の製造者は、しきい値を調節できない。
【0009】
本発明は係る状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、ハードウェア加工によらずにしきい値を調節可能な保護スイッチ回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のある態様は、保護スイッチ回路に関する。保護スイッチ回路は、直流の入力電圧を受ける入力端子と、出力端子と、入力端子と出力端子の間に設けられたスイッチと、入力電圧をN個(Nは自然数)のしきい値電圧と比較する判定回路と、判定回路の比較結果にもとづいてスイッチを制御するゲートコントローラと、を備える。判定回路は、N個のしきい値電圧それぞれを指示するN個の設定データがソフトウェア制御により書き込み可能なOTP(One Time Programmable)ROM(Read Only Memory)と、入力電圧を、OTPROMに書き込まれたN個の設定データに応じたN個のしきい値電圧それぞれと比較する比較回路と、を含む。
【0011】
この態様によると、ソフトウェア制御によりしきい値電圧を設定できるため、ハードウェア加工が不要となり、コストを下げることができる。また出荷前における製造者(チップベンダー)による設定に加えて、出荷後におけるユーザによる設定も可能となる。
【0012】
OTPROMには、スイッチをオンすべき正常電圧範囲の上限および下限に対応する第1しきい値電圧と第2しきい値電圧の設定データが書き込み可能であってもよい。比較回路は、入力電圧を、第1しきい値電圧および第2しきい値電圧それぞれと比較可能に構成されてもよい。
【0013】
比較回路は、N個の設定データに対応づけられるN個の分圧回路であって、それぞれが、入力電圧を対応する設定データに応じた分圧比にて分圧するN個の分圧回路と、N個の設定データに対応づけられるN個のコンパレータであって、それぞれが対応する分圧回路の出力電圧を、所定の基準電圧と比較するコンパレータと、を含んでもよい。
【0014】
分圧回路は、入力端子と接地ラインの間に直列に接続された複数の抵抗と、複数の抵抗と並列に設けられた複数のバイパススイッチと、を含んでもよい。対応する設定データに応じて複数のバイパススイッチのオン、オフが設定されてもよい。
【0015】
保護スイッチ回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。
「一体集積化」とは、回路の構成要素のすべてが半導体基板上に形成される場合や、回路の主要構成要素が一体集積化される場合が含まれ、回路定数の調節用に一部の抵抗やキャパシタなどが半導体基板の外部に設けられていてもよい。回路を1つのチップ上に集積化することにより、回路面積を削減することができるとともに、回路素子の特性を均一に保つことができる。
【0016】
本発明の別の態様は電子機器に関する。電子機器は、上述のいずれかの保護スイッチ回路を備える。
【0017】
本発明の別の態様は、外部DC電源により二次電池を充電するとともに、負荷に電力を供給する充電回路に関する。充電回路は、DC電源からのDC電圧を受けるDC入力端子と、二次電池が着脱可能に接続される電池端子と、負荷が接続されるシステム端子と、システム端子と電池端子の間に設けられた充電用トランジスタと、充電用トランジスタのゲート電圧を制御する充電コントローラと、DC入力端子とシステム端子の間に設けられたスイッチと、DC入力端子の入力電圧をN個(Nは自然数)のしきい値電圧と比較する判定回路と、判定回路の比較結果にもとづいてスイッチを制御するゲートコントローラと、を備える。判定回路は、N個のしきい値電圧それぞれを指示するN個の設定データがソフトウェア制御により書き込み可能なOTP(One Time Programmable)ROM(Read Only Memory)と、入力電圧を、OTPROMに書き込まれたN個の設定データに応じたN個のしきい値電圧それぞれと比較する比較回路と、を含む。
【0018】
OTPROMには、スイッチをオンすべき正常電圧範囲の上限および下限に対応する第1しきい値電圧と第2しきい値電圧の設定データが書き込み可能であってもよい。比較回路は、入力電圧を、第1しきい値電圧および第2しきい値電圧それぞれと比較可能に構成されてもよい。
【0019】
比較回路は、N個の設定データに対応づけられるN個の分圧回路であって、それぞれが、入力電圧を対応する設定データに応じた分圧比にて分圧するN個の分圧回路と、N個の設定データに対応づけられるN個のコンパレータであって、それぞれが対応する分圧回路の出力電圧を、所定の基準電圧と比較するコンパレータと、を含んでもよい。
【0020】
分圧回路は、入力端子と接地ラインの間に直列に接続された複数の抵抗と、複数の抵抗と並列に設けられた複数のバイパススイッチと、を含んでもよい。対応する設定データに応じて複数のバイパススイッチのオン、オフが設定されてもよい。
【0021】
スイッチは、トランジスタを含んでもよい。ゲートコントローラは、システム端子の電圧が所定の目標電圧に近づくように、トランジスタのゲート電圧を調節可能に構成されてもよい。
【0022】
OTPROMは、目標電圧の設定データがソフトウェア制御により書き込み可能であってもよい。
【0023】
ゲートコントローラは、トランジスタに流れる電流が過電流しきい値を超えないように、トランジスタのゲート電圧を調節可能に構成されてもよい。
【0024】
OTPROMは、過電流しきい値の設定データがソフトウェア制御により書き込み可能であってもよい。
【0025】
OTPROMは、入力電圧がパワーオンリセット用のしきい値電圧より低くなると、OTPROMのメモリセルをリセットするパワーオンリセット回路を含んでもよい。
【0026】
充電回路は、ひとつの半導体基板に一体集積化されてもよい。
【0027】
本発明の別の態様は電子機器に関する。電子機器は、二次電池と、二次電池を充電する上述のいずれかの充電回路と、を備える。
【0028】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ハードウェア加工によらずにしきい値を調節できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明者が検討した保護スイッチ回路の回路図である。
【
図2】実施の形態に係るスイッチ回路の回路図である。
【
図3】判定回路の具体的な構成例を示す回路図である。
【
図6】保護スイッチ回路を備える充電回路の回路図である。
【
図7】
図6の充電回路を備える電子機器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0032】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合や、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0033】
図2は、実施の形態に係る保護スイッチ回路100の回路図である。保護スイッチ回路100は、入力(IN)端子、出力(OUT)端子を有し、IN端子の入力電圧V
INに応じて、IN−OUT端子間の導通、遮断が切りかえ可能に構成される。すなわち、入力電圧V
INが所定の正常電圧範囲に含まれるときには導通(オン)し、正常電圧範囲から逸脱すると遮断(オフ)されて保護スイッチ回路100の内部の回路素子や、OUT端子に接続される負荷を保護する。
【0034】
保護スイッチ回路100は、スイッチ102、ゲートコントローラ104、判定回路110を備え、ひとつの半導体基板に集積化される。スイッチ102は、IN端子とOUT端子の間に設けられる。たとえばスイッチ102は、逆直列接続された2個のNチャンネルMOSFETを含む双方向スイッチであってもよい。これにより、OUT端子からIN端子への逆流が阻止される。またNチャンネルMOSFETを用いることで、そのゲート電圧が接地電圧であるときにノーマリオフとすることができ、安全性を高めることができる。
【0035】
判定回路110は、IN端子の入力電圧V
INをN個(Nは自然数)のしきい値電圧それぞれと比較し、比較結果に応じた検出信号S1を生成する。たとえば判定回路110は、入力電圧V
INが正常電圧範囲に含まれるか否かを判定し、正常電圧範囲に含まれるとき、判定回路110は、検出信号S1をアサート(たとえばハイレベル)する。本実施の形態ではN=2であり、判定回路110は、入力電圧V
INを、正常電圧範囲の上限電圧(過電圧保護用のしきい値電圧)V
OVP、正常電圧範囲の下限電圧(低電圧ロックアウト用のしきい値電圧)V
UVLOそれぞれと比較するウィンドウコンパレータの機能を有する。
【0036】
ゲートコントローラ104は、判定回路110の比較結果、すなわち検出信号S1にもとづいてスイッチ102を制御する。具体的には、検出信号S1がアサートされるとき、スイッチ102をオンし、ネゲートされるときスイッチ102をオフする。スイッチ102をオンするためには、そのゲートに、V
IN+V
THNより高いゲート電圧V
Gを印加する必要がある。V
THNは、NチャンネルMOSFETのゲートソース間しきい値電圧である。ゲートコントローラ104は、入力電圧V
INよりも高い電圧V
Gを生成するために、入力電圧V
INを昇圧するチャージポンプ回路を含んでもよい。
【0037】
なお、保護スイッチ回路100はIN端子の入力電圧V
INを電源電圧として動作するものである。したがって、判定回路110、ゲートコントローラ104は、IN端子に入力電圧V
INが供給されると直ちに動作可能となり、入力電圧V
INのレベル判定および判定結果にもとづくスイッチ102をオン、オフ制御を行う必要がある。
【0038】
判定回路110は、OTP(One Time Programmable)ROM(Read Only Memory)112および比較回路114を含む。
OTPROM112には、N個のしきい値電圧V
TH1〜V
THNそれぞれを指示するN個の設定データD1〜DNがソフトウェア制御により書き込み可能である。本実施の形態ではN=2であり、V
TH1、V
TH2はそれぞれ、V
OVP,V
UVLOそれぞれに対応する。
【0039】
図3は、判定回路110の具体的な構成例を示す回路図である。OTPROM112は、複数のメモリセル120、複数のリードバッファ122、メモリコントローラ124、パワーオンリセット(POR)回路126を備える。
図3には、設定データD1に対応に対応する構成のみが示されており、実際には、設定データD2に対応する同様の構成が設けられる。
【0040】
メモリセル120は、しきい値電圧V
OVPの設定データD1を構成するバイナリデータを格納する。メモリセル120の書き込みは、1回のみ可能であり、電源端子POWに書き込み用の電源電圧を供給した状態で、メモリコントローラ124が、複数のメモリセル120それぞれに格納すべき値(1/0)を与えることにより、設定データD1が書き込まれる。OTPROM112に対するデータ書き込みについては、公知技術を利用すればよい。
【0041】
比較回路114は、N個の設定データに対応づけられるN個の分圧回路116と、N個の設定データに対応づけられるN個のコンパレータ118を含む。
図3には、設定データD1に対応する1組の分圧回路116とコンパレータ118のみが示される。
【0042】
分圧回路116は、入力電圧V
INを対応する設定データD1に応じた分圧比にて分圧する。コンパレータ118は、対応する分圧回路116の出力電圧を、所定の基準電圧V
REFと比較する。
【0043】
i番目の設定データDiに関して、それに対応する分圧比がα
i(<1)であるとき、コンパレータ118は、V
IN×α
iをV
REFを比較する。これは、入力電圧V
INを、V
REF/α
iなるしきい値電圧V
THiと比較することと等価である。
【0044】
分圧回路116は、IN端子と接地ライン119の間に直列に接続された複数m個の抵抗R1_1〜R1_mと、複数の抵抗R1_1〜R1_mと並列に設けられた複数のバイパススイッチM1_1〜M1_mと、を含む。
複数のバイパススイッチM1_1〜M1_mのオン、オフは、OTPROM112に書き込まれた設定データに応じて設定される。
【0045】
パワーオンリセット回路126は、入力電圧V
INをパワーオンリセット用のしきい値電圧V
PORと比較し、V
IN<V
PORを検出すると、パワーオンリセット(POR)信号をアサートする。POR信号がアサートされると、メモリコントローラ124は、OTPROM112のメモリセル120をリセットし、その後、たとえば入力電圧V
INがしきい値電圧V
PORを超えると、あるいはある時間が経過すると、リセットを解除して、プログラムされた値を読み出し可能な状態とする。メモリセル120が読み出し可能となると、バイパススイッチM1_1〜M1_mのオン、オフが設定データに応じてセットされる。
【0046】
以上が保護スイッチ回路100の構成である。続いてその使用について説明する。
【0047】
(第1の使用形態)
ある使用形態では、OTPROM112へのN個のしきい値電圧V
THの設定データD1〜DNの書き込みは、保護スイッチ回路100の製造者(チップベンダー)が出荷前の製造工程において行う。設定データD1〜DNは、半導体プロセスばらつきに起因するしきい値電圧の変動をキャンセルするように定めることができる。あるいは、保護スイッチ回路100の供給先のメーカーからの要望にもとづいて、設定データD1〜DNを定めることができる。
【0048】
保護スイッチ回路100によれば、従来のハードウェア加工が不要となり、製造コストを下げることが可能となる。
またハードウェア加工によらず、ソフトウェア制御により、しきい値電圧V
THを設定、調整できることから、第1の使用形態のみでなく、第2の使用形態も可能となる。
【0049】
(第2の使用形態)
ある使用形態では、OTPROM112へのN個のしきい値電圧V
THの設定データD1〜DNの書き込みは、保護スイッチ回路100の出荷後に、保護スイッチ回路100の供給先(購入者、ユーザ)が行う。この場合、設定データD1〜DNは、ユーザが保護スイッチ回路100を使用するプラットフォーム、用途に応じて自由に定めることができる。
【0050】
このように保護スイッチ回路100は、第1の使用形態に加えて、従来提供できなかった第2の使用形態を提供するものであり、保護スイッチ回路100の購入者(ユーザ)からみた保護スイッチ回路100の商品価値を高めることができる。
【0051】
続いて保護スイッチ回路100の変形例を説明する。
【0052】
(第1変形例)
図4は、第1変形例に係る比較回路114_iの回路図である。比較回路114_iは、入力電圧V
INをi番目(1≦i≦N)のしきい値電圧V
THiと比較する。比較回路114_iは、コンパレータ118、可変電圧源130、分圧回路132を含む。分圧回路132は、入力電圧V
INを所定の分圧比β(<1)で分圧する。可変電圧源130は、OTPROM112に書き込まれた対応する設定データDiに応じた電圧Viを生成する。コンパレータ118は、分圧回路132の出力電圧β×V
INを、電圧Viと比較する。β×V
INをViと比較することは、V
INをVi/βと比較することと等価である。つまり比較回路114_iによれば、入力電圧V
INを、Vi/βなるしきい値電圧V
THiと比較でき、OTPROM112に書き込んだ設定データDiに応じてしきい値電圧V
THiを調節できる。
【0053】
(第2変形例)
スイッチ102は、NチャンネルMOSFETに代えて、PチャンネルMOSFETで構成してもよい。
【0054】
(用途)
続いて実施の形態に係る保護スイッチ回路の用途を説明する。保護スイッチ回路100は、二次電池を充電する充電回路とともに、電子機器に搭載される。
【0055】
図5は、電子機器1の回路図である。電子機器1は、保護スイッチ回路100、充電回路10、二次電池20、電源回路22、CPU24および複数の周辺回路26を備える。二次電池20は、リチウムイオン電池やニッケル水素電池などであり、電池電圧V
BATを出力する。
【0056】
複数の周辺回路26は、メモリ(RAM:Random Access Memory)、ハードディスク、ディスプレイなどを含む。電子機器1の外部電源(EXT)端子には、ACアダプタやUSBホストなどのDC電源2が着脱可能となっており、DC電圧V
DCが供給される。
【0057】
保護スイッチ回路100のIN端子には、EXT端子にDC電源2が接続されているときには、DC電圧V
DCが入力される。保護スイッチ回路100は、DC電圧V
DCが正常電圧範囲に含まれるとき、導通状態となり出力端子OUTから出力し、充電回路10および電源回路22に供給する。充電回路10は、保護スイッチ回路100を経由したDC電圧V
DCを受け、二次電池20を充電する。
【0058】
DC電源2が接続されていない場合、あるいは接続されていても正常電圧範囲から逸脱している場合、保護スイッチ回路100は遮断状態となる。このとき、充電回路10は、二次電池20からの電池電圧V
BATを電源回路22に供給する。
【0059】
電源回路22は、保護スイッチ回路100からのDC電圧V
DCまたは充電回路10からの電池電圧V
BATを受け、それを昇圧または降圧して電源電圧V
DDを生成し、負荷であるCPU24や周辺回路26に供給する。電源回路22は、DC/DCコンバータやチャージポンプ回路、リニアレギュレータ(LDO:Low Drop Output)などを含む。
【0060】
図5の保護スイッチ回路100を、充電回路10に一体集積化してもよい。
図6は、保護スイッチ回路100を備える充電回路10aの回路図である。外部のDC電源2により二次電池20を充電するとともに、負荷である電源回路22に電力を供給する。
【0061】
充電回路10aは、保護スイッチ回路100、充電用トランジスタ200、充電コントローラ202を備え、ひとつの半導体基板に集積化された機能ICである。
【0062】
DC入力(DCIN)端子には、DC電源2からのDC電圧V
DCが入力される。電池(BAT)端子には、二次電池20が着脱可能に接続される。システム(SYS)端子には、負荷である電源回路22が接続される。
【0063】
スイッチ102は、DCIN端子とSYS端子の間に設けられる。判定回路110は、DCIN端子の入力電圧V
DCINをN個(Nは自然数)のしきい値電圧V
TH1〜V
THNと比較する。ゲートコントローラ104は、判定回路110の比較結果にもとづいてスイッチ102を制御する。スイッチ102、ゲートコントローラ104、判定回路110は、上述の保護スイッチ回路100に対応する。判定回路110の構成については既に説明したため省略する。
【0064】
スイッチ102は、トランジスタを含む。スイッチ102は逆直列接続された2個のNチャンネルMOSFETを含んでもよい。ゲートコントローラ104は、DCIN端子の電圧V
DCINが所定の正常電圧範囲に含まれる期間、すなわちスイッチ102を導通すべき期間において、SYS端子のシステム電圧V
SYSが所定の目標電圧に近づくように、トランジスタ102のゲート電圧を調節可能に構成される。つまりゲートコントローラ104およびスイッチ102は、リニアレギュレータを構成する。
【0065】
またゲートコントローラ104は、トランジスタ102に流れる電流I
DCが過電流しきい値I
OCPを超えないように、トランジスタ102のゲート電圧を調節可能に構成される。
【0066】
システム電圧V
SYSの目標電圧を、判定回路110のOTPROMにソフトウェア制御により書き込み可能としてもよい。また過電流しきい値I
OCPの設定データを、判定回路110のOTPROMにソフトウェア制御により書き込み可能としてもよい。
【0067】
充電用トランジスタ200は、SYS端子とBAT端子の間に設けられる。充電コントローラ202は、DC電源2が接続され、正常なDC電圧V
DCが供給されているとき、充電用トランジスタ200のゲート電圧V
Gを制御する。
【0068】
図7は、
図6の充電回路10を備える電子機器500の斜視図である。電子機器500はたとえばタブレット端末やスマートホンである。筐体520には、CPU24、RAM、SSD(Solid State Drive)などの周辺回路26、二次電池20、電源回路22、充電回路10が内蔵される。電源回路22は、CPU24やRAM、SSDに加えて、ディスプレイパネル510や、そのドライバ、オーディオ回路などに電源電圧を供給してもよい。なお電子機器500は、ノートPCやコンソールゲーム機器、ポータブルゲーム機器、ウェアラブルPC、ポータブルオーディオプレイヤ、デジタルカメラなどであってもよい。
【0069】
実施の形態にもとづき、具体的な用語を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【符号の説明】
【0070】
1…電子機器、2…DC電源、20…二次電池、22…電源回路、24…CPU、26…周辺回路、10…充電回路、100…保護スイッチ回路、102…スイッチ、104…ゲートコントローラ、110a…過電圧保護回路、110b…低電圧ロックアウト回路、110…判定回路、112…OTPROM、114…比較回路、116…分圧回路、118…コンパレータ、119…接地ライン、120…メモリセル、122…リードバッファ、124…メモリコントローラ、126…パワーオンリセット回路、130…可変電圧源、132…分圧回路、200…充電用トランジスタ、202…充電コントローラ、S1…検出信号。