(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、従来から、回転するアンテナによってマイクロ波の送信を行うとともに、物標からの反射波(エコー)を受信して、レーダ映像を生成するレーダ装置が知られている。
【0007】
このレーダ装置は、船舶の航行を支援するための機能として、TT(Target Tracking:目標追尾)機能を有することがある。TT機能とは、レーダ映像の推移に基づいて、自船周囲に存在する他船等の物標(目標)の位置及び速度を検出し、目標の今後の予想進路や最接近距離等をシミュレーション計算し、自船と衝突する危険性が高い場合には警報を発生するものである。
【0008】
TT機能を有するレーダ装置のユーザは、レーダ映像に現れている特定の物標エコーを目標として追尾させたい場合に、ポインティングデバイスを用いてカーソルを操作し、当該エコーを指示する。しかし、レーダのエコーは、位置、大きさ、形が様々であり、かつ、リアルタイムで位置や大きさ等が変化する。また、レーダ装置が設置されている船舶の揺れにより、ユーザの手元が不安定になる場合もある。従って、ユーザが希望するエコーをカーソルで指定する操作が難しい場合がある。
【0009】
この点、上記の特許文献1は、表示画面において予め決められた位置に一定の大きさで表示され、基本的に移動することがないアイコンをユーザが選択する場合について開示するにとどまっている。即ち、特許文献1の構成は、レーダ映像のようなエコー画面において、不定のタイミングで出現及び消滅し、形も位置も不規則で時間とともに変化するエコーを選択することは全く考慮していない。
【0010】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、エコー画面に現れるエコーを容易で素早くかつ確実にカーソルで指示することができ、操作性が良好な操作装置を提供することにある。
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0012】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の操作装置が提供される。即ち、この操作装置は、表示部と、カーソル操作部と、制御部と、を備える。前記表示部は、
レーダアンテナから入力されたエコー情報に基づき、
エコーをエコー画面
にリアルタイムで表示する。前記カーソル操作部は、前記エコー画面に表示されたカーソルを操作する。前記制御部は、前記エコー画面に前記カーソルを表示させるように前記表示部を制御する。前記制御部は、エコー表示位置取得部と、カーソル表示位置決定部と、を備える。前記エコー表示位置取得部は、前記エコー画面における
前記エコーの表示位置であるエコー表示位置をリアルタイムで取得する。前記カーソル表示位置決定部は、前記カーソル操作部の操作に基づいて、前記エコー画面における前記カーソルの表示位置であるカーソル表示位置を決定する。前記カーソル表示位置決定部は、前記カーソル操作部の操作で前記カーソルが移動した後の前記カーソル表示位置を移動判定位置としたときに、前記移動判定位置から所定範囲内に前記エコー表示位置がある場合、又は、前記エコー表示位置から所定範囲内に前記移動判定位置がある場合に、
前記エコーのサイズが所定の大きさ以下であるときは、前記カーソル表示位置を当該エコー表示位置に移動させ
、前記エコーのサイズが所定の大きさを上回るときは、前記カーソル表示位置を当該エコー表示位置に移動させない。
【0013】
これにより、位置、大きさ、形が様々であり、かつ、リアルタイムで位置や大きさ等が変化するエコーに対し、カーソルの表示位置を自動的に合わせることができる。従って、多様なエコーが複雑に変化するエコー画面において、特定のエコーをカーソルで指示する操作が容易になる。
【0014】
前記の操作装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記制御部は、前記カーソルの移動する向きを検出するカーソル移動向き検出部を備える。前記カーソル表示位置決定部は、前記移動判定位置から所定範囲内に複数の前記エコー表示位置がある場合、又は、複数の前記エコー表示位置から所定範囲内に前記移動判定位置がある場合に、前記移動判定位置からみて、前記カーソル移動向き検出部によって検出された前記カーソルの移動向きに最も近い向きにある前記エコー表示位置に前記カーソル表示位置を移動させる。
【0015】
これにより、複数のエコーが密集して表示されている部分にカーソルを移動させた場合でも、移動判定位置に至ったカーソルの移動向きに基づいてユーザの意図を推測して、ユーザが希望している可能性が高いエコーにカーソル表示位置を合わせることができる。従って、直感的なカーソル操作を実現できる。
【0016】
前記の操作装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記制御部は、前記移動判定位置から所定範囲内に複数の前記エコー表示位置がある場合、又は、複数の前記エコー表示位置から所定範囲内に前記移動判定位置がある場合に、前記エコーを順に並べたリストを作成する。前記カーソル表示位置決定部は、ユーザの操作に応じて、前記カーソル表示位置の移動先である前記エコーを、前記リストに従って順次切り替える。
【0017】
これにより、複数のエコーが密集して表示されている部分にカーソルを移動させた場合に、カーソルを移動させる移動先のエコーを、ユーザの明示的な操作によって決定することができる。従って、ユーザの意図と異なるエコーにカーソルが移動することを防止できる。
【0018】
前記の操作装置においては、前記カーソル表示位置決定部は、前記カーソル表示位置を前記エコーに移動させた後に当該エコー表示位置が移動した場合には、前記カーソル表示位置を前記エコー表示位置の移動に追尾させることが好ましい。
【0019】
これにより、カーソル表示位置をエコーに移動させた後に当該エコーが動いても、再びカーソルをエコーに合わせる必要がなくなる。従って、操作性を一層高めることができる。
【0020】
前記の操作装置においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記制御部は、前記カーソルの移動速度を検出するカーソル移動速度検出部を更に備える。前記カーソル表示位置決定部は、前記カーソル移動速度検出部が検出した前記カーソルの移動速度が所定値以下になった場合に、当該カーソルの表示位置を前記移動判定位置とする。
【0021】
これにより、カーソルを大きく動かしているときは近くエコーにカーソルが移動するのを防止できると同時に、意図するエコーの近くでカーソルを静止させることで、当該エコーにカーソルを移動させることができる。
【0022】
前記の操作装置においては、以下の構成とすることができる。即ち、前記カーソル表示位置決定部は、前記移動判定位置を基準としてエコー検知範囲を設定する。前記カーソル表示位置決定部は、前記エコー検知範囲内に前記エコーがある場合に、前記カーソル表示位置を当該エコー表示位置に移動させる。
【0023】
これにより、カーソルを基準として設定される範囲にエコーがあるか否かを判定する単純な処理で、カーソル表示位置をエコーに移動させるか否かを判定することができる。
【0024】
前記の操作装置においては、前記エコー検知範囲の輪郭は、前記カーソルの移動速度及び移動向きのうち少なくとも何れかに基づいて変化するように設定されることが好ましい。
【0025】
これにより、カーソルの移動状況に応じてエコー検知範囲を柔軟に変化させることで、ユーザのカーソル操作の意図に沿って、カーソル表示位置をエコーに移動させることができる。
【0026】
前記の操作装置においては、以下の構成とすることもできる。即ち、前記カーソル表示位置決定部は、前記エコー表示位置を基準としてカーソル検知範囲を設定する。前記カーソル表示位置決定部は、前記カーソル検知範囲内に前記移動判定位置がある場合に、前記カーソル表示位置を当該エコー表示位置に移動させる。
【0027】
これにより、それぞれのエコーを基準として設定される範囲にカーソルがあるか否かに基づいて、カーソル表示位置をエコーに移動するか否かを判定するので、個々のエコーの特徴に応じて、カーソル表示位置のエコーへの移動処理を柔軟に行うことができる。
【0028】
前記の操作装置においては、前記カーソル検知範囲の輪郭は、前記エコーのサイズに基づいて変化するように設定されることが好ましい。
【0029】
これにより、エコーのサイズに応じて、適合なカーソル検知範囲を設定することができ、カーソルをエコーと容易に合わせることができる。
【0030】
前記の操作装置においては、前記カーソル検知範囲の輪郭は、エコーサイズが大きなものより小さなものの方が、当該エコーの輪郭から大きく膨らむように設定されていることが好ましい。
【0031】
これにより、通常はカーソルを合わせることが困難な小さなエコーに関して、カーソルを特に容易に合わせることができる。
【0032】
前記の操作装置においては、前記カーソル検知範囲の輪郭は、前記エコーの移動速度又は移動向きの少なくとも何れかに基づいて変化するように設定されることが好ましい。
【0033】
これにより、エコーの移動状況に適したカーソル検知範囲を設定することができるので、エコーが殆ど動いていない場合、大きく移動している場合の何れにおいても、当該エコーのエコー表示位置にカーソル表示位置を容易に合わせることができる。
【0034】
前記の操作装置においては、それぞれの前記エコーの前記カーソル検知範囲は、他のエコーを含まないように設定されることが好ましい。
【0035】
これにより、あるエコーの上に重ねられているカーソルが、他のエコーへ自動的に移動してしまうのを防止することができる。
【0036】
前記の操作装置においては、複数の前記エコーの前記カーソル検知範囲同士が互いに重ならないように設定されることが好ましい。
【0037】
これにより、複数のエコーが密集している領域にカーソルを移動させた場合でも、カーソル検知範囲同士が重なっていないため、カーソルの移動先のエコーを容易に決定することができる。
【0038】
本発明の第2の観点によれば、表示部と、カーソル操作部と、を備える操作装置において、以下のようなカーソル移動制御方法が提供される。前記表示部は、
レーダアンテナから入力されたエコー情報に基づき、
エコーをエコー画面
にリアルタイムで表示する。前記カーソル操作部は、前記エコー画面に表示されるカーソルを移動するために操作される。このカーソル移動制御方法は、エコー表示位置取得工程と、カーソル表示位置決定工程と、表示工程と、を含む。前記エコー表示位置取得工程では、前記エコー画面における
前記エコーの表示位置であるエコー表示位置をリアルタイムで取得する。前記カーソル表示位置決定工程では、前記カーソル操作部の操作に基づいて、前記エコー画面における前記カーソルの表示位置であるカーソル表示位置を決定する。前記表示工程では、前記エコー画面において、前記カーソル表示位置に前記カーソルを表示する。前記カーソル表示位置決定工程において、前記カーソル操作部の操作で前記カーソルが移動した後の前記カーソル表示位置を移動判定位置としたときに、前記移動判定位置から所定範囲内に前記エコーの前記エコー表示位置がある場合、又は、前記エコーの前記エコー表示位置から所定範囲内に前記移動判定位置がある場合に、
前記エコーのサイズが所定の大きさ以下であるときは、前記カーソル表示位置を当該エコー表示位置に移動させ
、前記エコーのサイズが所定の大きさを上回るときは、前記カーソル表示位置を当該エコー表示位置に移動させない。
【0039】
これにより、位置、大きさ、形が様々であり、かつ、リアルタイムで位置や大きさ等が変化するエコーに対し、カーソルの表示位置を自動的に合わせることができる。従って、多様なエコーが複雑に変化するエコー画面において、特定のエコーをカーソルで指示する操作が容易になる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の一実施形態に係る情報表示装置1の構成を示す概略的な斜視図、
図2は本実施形態の情報表示装置1の電気的な構成を示す機能ブロック図である。
【0042】
本実施形態の情報表示装置(操作装置)1は、船舶に関する様々な情報を表示可能な装置である。この情報表示装置1はレーダ映像表示機能を有しており、レーダアンテナ(エコー検出装置)2から取得したレーダエコー(エコー情報)を、ユーザが確認できるように表示部10にリアルタイムで表示することができる。
【0043】
レーダアンテナ2は、情報表示装置1に電気的に接続されている。このレーダアンテナ2は、水平面内で360°回転できるように構成され、自船周囲の他船や島等の物標をスキャンすることができる。レーダアンテナ2は、指向性の強い電磁波を送信するとともに、各物標からの反射波を受信することにより、物標の情報を取得し、得られた情報を情報表示装置1に出力する。情報表示装置1は、レーダアンテナ2からの情報に基づいて、物標の距離、大きさ及び存在方位を求めてレーダ映像を作成し、表示部10に表示させることができる。
【0044】
この情報表示装置1は上述のTT機能を有しており、移動物標のエコー(ユーザが特別に指定したエコーを含む)について、その移動方向や速度等を計算して表示することができる。
【0045】
次に、情報表示装置1の詳細な構成を説明する。情報表示装置1は、
図1に示すように、表示部10と、操作部20と、制御部30と、を備える。
【0046】
表示部10は、液晶ディスプレイ等で構成されており、ユーザの操作に応じて、上記のレーダエコーを表示したレーダ映像(エコー画面)を表示することができる。
【0047】
操作部20は、表示部10の近傍に配置されており、トラックボール(カーソル操作部)21、ボタン22、キーボード23、ダイアル24等から構成されている。ユーザは、操作部20を操作することにより、情報表示装置1に様々な指示を行うことができる。
【0048】
トラックボール21は、表示部10に表示されるカーソル5を移動させるために操作されるポインティングデバイスである。トラックボール21はボールを備えており、情報表示装置1のユーザは、ボールを指で回転させることにより、その回転方向や速さに応じてカーソル5を移動させることができる。
【0049】
制御部30は、
図1に示すように、情報表示装置1に内蔵されたコンピュータとして構成されている。制御部30は、
図2に示すように、エコー表示位置取得部31と、カーソル表示位置決定部32と、カーソル移動向き検出部33と、カーソル移動速度検出部34と、を備える。
【0050】
具体的に説明すると、制御部30は、CPU等の演算部と、ROMやRAM等からなる記憶部と、を備えている。また、記憶部には、表示部10に表示されるカーソル5を制御するためのカーソル移動制御プログラムが記憶されている。そして、上記のハードウェアとソフトウェアとが協働することにより、制御部30を、エコー表示位置取得部31、カーソル表示位置決定部32、カーソル移動向き検出部33、及びカーソル移動速度検出部34等として動作させることができる。
【0051】
エコー表示位置取得部31は、レーダアンテナ2から入力されたレーダエコーを解析することにより、当該エコーをレーダ映像に表示する位置をリアルタイムで計算して取得する。これにより、表示部10に表示されるエコー情報が常にリアルタイムで更新されるので、自船周囲の環境の変化や他船の動き等を表示内容に忠実に反映させることができる。また、上記制御部30はカーソル5の位置をエコーの位置に自動的に合わせる機能を有しているが(詳細は後述)、このカーソル5の位置を合わせる対象となるエコーの位置についても、最新の状況を反映したものとすることができる。
【0052】
カーソル表示位置決定部32は、トラックボール21の操作を検出して、レーダ映像にカーソル5が表示される位置であるカーソル表示位置を決定する。具体的には、トラックボール21のボールがユーザによって転がされると、カーソル表示位置決定部32は、回転するボールの向き及び速度に応じてカーソル5の位置を変化させるように、新しいカーソル表示位置を決定する。
【0053】
カーソル移動向き検出部33は、カーソル5の移動履歴を分析することにより、カーソルの移動向きを検出することができる。具体的には、カーソル移動向き検出部33は、直近の過去のカーソル位置を記憶可能に構成されており、現在のカーソル位置と、過去のカーソル位置との位置関係に基づいて、現在のカーソル5の移動向きを計算により取得する。ただし、上記に限らず、例えば、トラックボール21におけるボールの回転の向きからカーソル5の移動向きを求めるように構成することもできる。
【0054】
カーソル移動速度検出部34は、ユーザの操作によるカーソルの移動速度を検出する。本実施形態では、カーソル移動速度検出部34により、ユーザがカーソル操作中であるのか、それともカーソル操作が完了したのかを検出している。具体的には、カーソル5の移動速度が所定値を上回る場合はカーソル操作中であると判定し、カーソル5の移動速度が所定値以下(殆どゼロ)である場合はカーソル操作が完了したと判定する。
【0055】
次に、
図3から
図9を参照して、本実施形態の情報表示装置1のカーソル表示位置決定部32によるカーソル自動移動処理について説明する。
【0056】
図3に示すようなレーダ映像が表示部10に表示されている状況において、ユーザが、レーダ映像に現れている特定のエコーE1を対象として、何らかの指示をしたい場合を考える。なお、情報表示装置1に与える指示としては、例えば、上記のTT機能によるエコーの追尾の指示を挙げることができる。この場合、ユーザはトラックボール21を操作して、
図3に示す位置P1にあるカーソル5を、エコーE1に重なる位置(例えば位置P3)に移動させ、その状態で例えばボタン22を押す必要がある。しかしながら、船舶に揺れが生じて手元が不安定になり、上記のようなカーソル操作が難しいことがある。また、物標が小さいためにエコーE1の表示自体が小さい可能性があり、更には、エコーE1を含んだレーダ映像はリアルタイムで刻々と変化する。従って、カーソル5を動かしてエコーE1に正確に合わせることが困難な場合がある。
【0057】
この点を考慮して、本実施形態の情報表示装置1が備えるカーソル表示位置決定部32は、カーソル5の位置を上記のように決定するとともに、トラックボール21の操作でカーソル5が移動した後の位置(以下、この位置を「移動判定位置」と呼ぶことがある)と、各エコーとの位置関係を監視し、あるエコーにカーソル5の位置が近いことを検出した場合に、カーソル5の位置を当該エコーの表示位置に自動的に移動させることができる。なお、以下では、この処理を「カーソル自動移動処理」と呼ぶことがある。これにより、ユーザは、カーソル5の位置をエコーE1に対して厳密に合わせる必要がなくなる。即ち、位置P1にあるカーソル5をエコーE1に近い位置(例えば、位置P2)に移動させるだけで、当該エコーE1の表示位置と一致する位置P3にカーソル5を自動的に移動させることができる。
【0058】
なお、上述のカーソル5の位置の自動的な移動(補正)を実現する処理としては、例えば、以下に説明する2通りの方法が考えられる。
【0059】
最初に、第1の方法を、
図3から
図6までを参照して説明する。この第1の方法は、カーソル5の表示位置を基準にしてエコー検知範囲51を設定し、このエコー検知範囲51内にエコーが存在する場合に、当該エコーの位置にカーソル5の位置を一致させるものである。
図3には、位置P2にあるカーソル5を中心として設定されるエコー検知範囲51が示されている。なお、このエコー検知範囲51は制御部30の内部で定められているものであり、実際に表示部10に表示されることはない。
【0060】
図3の例では、エコー検知範囲51は円形の範囲として定義されているが、任意の形状、例えば矩形であっても良い。なお、エコー検知範囲51を円形又は矩形とすると、エコー検知範囲51内にエコーがあるか否かを、カーソル5の座標と、エコーの座標(具体的には、エコー表示位置取得部31で取得されるエコーの表示位置)と、を用いて計算する簡単な処理で判定することができる点で好ましい。
【0061】
ところで、カーソル5をユーザが移動させる際に上記のカーソル自動移動処理を常に実行させると、カーソル5の移動過程で意図しないエコーにカーソル5が飛んでしまって、操作性をかえって低下させるおそれがある。これを防止するため、情報表示装置1の制御部30は、上記のカーソル移動速度検出部34で検出されるカーソル5の移動速度が所定値以下である場合(具体的に言えば、カーソル5の移動速度がほぼゼロになり、カーソル操作が完了したと判定された場合)にのみ、そのときのカーソル5の位置を上記の移動判定位置としてカーソル自動移動処理を行うように構成されている。これにより、カーソル5の移動操作中は近くのエコーにカーソル5の位置が飛ばないので、操作性を良好に維持することができる。一方で、ユーザが指示したいエコーE1の近く(例えば、位置P2)にカーソル5を移動させて静止させることで、カーソル自動移動処理を行わせて、当該エコーE1に一致する位置P3にカーソル5の位置を容易かつ正確に合わせることができる。
【0062】
上記の例は1つのエコーE1がエコー検知範囲51内に入っている場合であるが、例えばエコーが混み合って表示されている場合、上記のエコー検知範囲51内に複数のエコーが存在する場合も考えられる。
図4には、2つのエコーE1,E2がエコー検知範囲51内に入っている例が拡大図で示されている。この場合に、複数のエコーE1,E2のうち何れにカーソル5の表示位置を合わせるべきかを判断するため、情報表示装置1の制御部30は、カーソル移動向き検出部33を更に備えている。カーソル移動向き検出部33は、ユーザがカーソル5を静止させた時点で、それまでにカーソル5が移動した向きを検出して、カーソル表示位置決定部32に出力する。
【0063】
図4において、位置P1にあったカーソル5を位置P2に移動させ、静止させた場合を考える。カーソル5の移動速度がほぼゼロになったことをカーソル移動速度検出部34が検出すると、カーソル移動向き検出部33は、位置P2(移動判定位置)に至るまでにカーソル5が移動した向きを、過去のカーソル5の位置の推移から検出する。そして、カーソル表示位置決定部32は、カーソル5が静止した位置P2を基準にして、検出されたカーソル5の移動向きに最も近い向きに位置しているエコーに、カーソル5の位置を自動的に移動させる。
【0064】
図4の例では、カーソル移動向き検出部33により、位置P2に到達するまでにカーソル5はほぼ真上に移動していたと検出される。従って、カーソル表示位置決定部32は、カーソル5の位置(移動判定位置)P2から見て右下に位置するエコーE2ではなく、ほぼ真上に位置するエコーE1を選択して、当該エコーE1にカーソル5の表示位置を一致させる。この結果、カーソル5は位置P3へ自動的に移動する。
【0065】
このように、本実施形態の情報表示装置1は、ユーザの操作によってカーソル5を移動させた向きに基づいてユーザの意図を推測して、ユーザが希望している可能性が高いエコーE1にカーソル5の表示位置を合わせることができる。従って、エコーが密集して表示されていても、ユーザは、希望するエコーに対し、直感的な操作でカーソルを合わせることができる。
【0066】
ただし、複数のエコーから、ユーザが希望するエコーを明示的に選択させるように構成することもできる。この例を
図5に示す。
図5の例では、位置P2にあるカーソル5を基準として定義されるエコー検知範囲51の内部に、4つのエコーE1,E2,E3,E4が存在している。この場合、カーソル表示位置決定部32は、エコー検知範囲51の内部に存在するエコーを、カーソル5を静止させた位置P2から近い順に並べたリスト40を作成する。このリスト40には、それぞれのエコーを一意に識別する識別番号と、エコーの位置(座標)と、当該エコーを選択するために自動的に割り当てられた番号である選択番号と、が含まれている。上記のとおり、リスト40においてエコーはカーソル5の位置P2に近い順に並べられるので、当該リスト40に記述される順番は、エコーE3、エコーE4、エコーE1、エコーE2となる。なお、このリスト40は制御部30の内部で作成されるものであり、表示部10に実際に表示されることはない。
【0067】
そして、カーソル表示位置決定部32は、上記のリスト40に基づき、それぞれのエコーE1,E2,E3,E4に割り当てられた上記の選択番号を、当該エコーの近くに表示する。
図5には、選択番号がカーソル5の位置P2に近い順に1番から割り当てられ、当該選択番号が丸付き数字の1〜4で表示される例が示されている。当初の状態では、最もカーソル5の位置に近いエコーE3に対応する「1」の選択番号がハイライト表示されており、この状態でユーザがボタン22を短く押して離すと、当該「1」の選択番号が付されたエコーE3に、カーソル5の位置が移動する。一方、ユーザがボタン22を押した状態を継続すると、ハイライト表示される選択番号が、「1」、「2」、「3」、「4」、「1」、・・・というように、所定時間毎に循環的に切り換わる。そして、所望のエコーの選択番号がハイライト表示されたタイミングでユーザがボタン22を離すと、当該選択番号に対応するエコーにカーソル5の位置が移動する。このように、ユーザの操作により、カーソル5の位置を合わせる対象のエコーをリストの順に従って切り替えることができる。この構成によれば、多数のエコーが密集している場合でも、カーソル5を移動させる移動先のエコーを、ユーザの明示的な操作によって決定することができる。従って、ユーザの意図と異なるエコーにカーソル5が移動してしまうことを防止できる。
【0068】
上記のリスト40では、4つのエコーE1,E2,E3,E4は、カーソル5(位置P2)との距離が近い順に並べられる。しかしながら、リスト40でのエコーの並び順は上記に限定されない。例えば、カーソル5が移動した向きをカーソル移動向き検出部33によって上記と同様に検出し、上記の位置P2から見て、検出されたカーソル5の移動向きに近い向きにある順にエコーE1,E2,E3,E4を並べても良い。
【0069】
なお、上記の例では、カーソル自動移動処理はカーソル5が静止した時点で行われる。即ち、トラックボール21によってカーソル5を操作している途中においては、カーソル自動移動処理は行われない。しかしながらこれに代えて、トラックボール21によるカーソル5の操作中も常にカーソル自動移動処理を行うようにした上で、エコー検知範囲51の大きさを状況に応じて柔軟に変化させるような処理を行うこともできる。
【0070】
図6には、エコー検知範囲51の大きさを、カーソル5の移動速度に応じて変化させる例が示されている。なお、
図6においては、静止しているカーソル5の位置だけでなく、トラックボール21の操作により動いているときのカーソル5の位置も、上記の移動判定位置となる。
図6の例では、カーソル5の高速移動時にはエコー検知範囲51が小さくなり、低速移動時や静止時にはエコー検知範囲51が大きくなる。従って、カーソル5を高速で移動させているときはカーソル位置が近くのエコーE1,E2に飛んでしまうことはない一方で、やがてカーソル5を減速させて静止させると、カーソル位置が、静止させた位置に近いエコーE3の位置に自動的に合わせられることになる。このように、ユーザのカーソル操作の意図に沿って、カーソル5の表示位置をエコーE3に移動させることができる。
【0071】
次に、第2の方法を、
図7及び
図8を参照して説明する。この方法は、カーソル5を基準としてエコー検知範囲51を設定するのではなく、
図7に示すように、個々のエコーE1,E2を基準としてカーソル検知範囲61,62をそれぞれ設定するものである。カーソル表示位置決定部32は、決定されたカーソル5の位置P2(上記の移動判定位置)が何れかのエコーのカーソル検知範囲に入っていることを検出すると、当該カーソル検知範囲61に対応するエコーE1の位置にカーソル5の表示位置を一致させるように、カーソル5の表示位置を自動的に位置P3に移動させる。
【0072】
この第2の方法では、個々のエコーに対してカーソル検知範囲61を柔軟に設定することで、多種多様な状況下でエコーに対してカーソル5を適切に合わせることができる。
図8には、様々なエコーE1〜E8に対して設定されるカーソル検知範囲61〜68の例が示されており、以下、詳細に説明する。
【0073】
図8のエコーE1とエコーE2とを比較するとわかるように、サイズが小さいエコーE1については、カーソル検知範囲61の輪郭はエコーE1の輪郭から大きく膨らむように設定され、サイズが大きいエコーE2については、カーソル検知範囲62の輪郭はエコーE2の輪郭からあまり膨らまないように設定されている。これにより、カーソル5を合わせることが難しい小さなエコーE1について、カーソル5を合わせることが特に容易になる。また、大きなエコーについてはカーソル5を合わせるのが容易であることから、エコーE3のように所定の大きさを上回るサイズのエコーについてはカーソル検知範囲を設定しない(言い換えれば、カーソルの自動移動が無効になる)ようにすることも考えられる。
【0074】
図8に示すエコーE4は、矢印で示すように、表示画面を横方向に移動している。これに伴って、エコーE4のカーソル検知範囲64を、当該エコーE4の進行方向後方に延びる細長い形状(例えば、楕円)の形に設定することが考えられる。この楕円の形状は、エコーE4の移動速度が大きくなるにつれて更に細長くすることが好ましい。このように、エコーの移動速度や移動向きに基づいてカーソル検知範囲64の輪郭を変化させることにより、高速で移動しているエコーE4をカーソル5で後方から追い掛けるような状況でも、当該エコーE4にカーソル5の位置を容易に合わせることができる。
【0075】
図8に示すエコーE5は、大きなエコーE3と隣接している。この場合、当該エコーE5のカーソル検知範囲65は、大きなエコーE3を含まないように定められる。このようにすることで、ユーザが大きなエコーE3を指示しようとして当該エコーE3にカーソル5を重ねている状況において、他のエコーE5にカーソル5が自動的に移動してしまうのを回避することができる。
【0076】
図8に示す3つのエコーE6,E7,E8は、互いに近接している。このとき、それぞれのエコーE6,E7,E8のカーソル検知範囲66,67,68は、隣接するエコーに近い側にはあまり膨らまず、隣接するエコーから遠い側には大きく膨らむようにして、カーソル検知範囲66,67,68同士が互いに重ならないように設定される。これにより、カーソル表示位置決定部32は、カーソル5の表示位置を自動的に合わせる対象であるエコーを容易に決定することができる。
【0077】
なお、
図8の例では、複数のカーソル検知範囲61〜68同士が重なってはいないが、互いに重なるように設定されても良い。複数のカーソル検知範囲同士が重複した部分にカーソル5を移動させた場合、当該カーソル5を自動的に移動させる先のエコーは、
図4と同様にカーソルを移動させた向きに応じて決定したり、
図5と同様にユーザに明示的に選択させたりすることができる。
【0078】
以上、カーソル5の位置を自動的にエコーの位置に合わせる2つの方法を説明したが、何れの方法を採用するかは、装置の用途等を考慮して自由に定めることができる。なお、第1の方法(
図3)によれば、カーソル5の周囲にエコー検知範囲51を設定してエコーE1が入るか否かを決定すれば良いので、処理を単純化することができる。第2の方法(
図7)によれば、それぞれのエコーE1,E2の特徴に応じてカーソル検知範囲61,62を柔軟に定めることができるので、状況に応じて操作性を的確に向上させることができる。
【0079】
カーソル表示位置決定部32は、上記のようにしてカーソル5の位置をエコーの位置に合わせた後、当該エコーの動きを監視して、カーソル5の表示位置を当該エコーの表示位置に常に一致させるようにリアルタイムで変更する。従って、例えば
図9に示すように、カーソル5の表示位置がエコーE4にいったん合わされた後は、当該カーソル5は、エコーE4の位置の動きを追尾することになる。上述のカーソル5によるエコーE4の追尾は、エコーE4が消失するか、エコーE4がレーダ映像外に去るか、ユーザがトラックボール21の操作を開始するまで継続される。これにより、カーソル5を合わせた後にエコーE4がすぐに移動しても、トラックボール21を再び操作してカーソル5を合わせ直す必要がなくなるので、エコーE4を指示する操作が更に容易になる。
【0080】
以上に説明したように、本実施形態の情報表示装置1は、表示部10と、トラックボール21と、制御部30と、を備える。表示部10は、レーダアンテナ2から入力されたエコー情報に基づき、レーダ映像をリアルタイムで表示する。トラックボール21は、レーダ映像に表示されるカーソル5を移動するために操作される。制御部30は、レーダ映像にカーソル5を表示させるように表示部10を制御する。制御部30は、エコー表示位置取得部31と、カーソル表示位置決定部32と、を備える。エコー表示位置取得部31は、レーダ映像におけるエコーの表示位置であるエコー表示位置をリアルタイムで取得する。カーソル表示位置決定部32は、トラックボール21の操作に基づいて、レーダ映像におけるカーソル5の表示位置であるカーソル表示位置を決定する。カーソル表示位置決定部32は、トラックボール21の操作でカーソル5が移動した後の位置P2を移動判定位置としたときに、
図3のように、移動判定位置(位置P2)から所定範囲であるエコー検知範囲51内にエコーE1の表示位置がある場合に、カーソル5の表示位置を位置P3に移動させてエコーE1の表示位置と一致させる。あるいは、カーソル表示位置決定部32は、
図7のように、エコーE1の表示位置から所定範囲であるカーソル検知範囲61内に移動判定位置(位置P2)がある場合に、カーソル5の表示位置を位置P3に移動させてエコーE1の表示位置と一致させる。
【0081】
これにより、位置、大きさ、形が様々であり、かつ、リアルタイムで位置や大きさ等が変化するエコーに対し、カーソル5の表示位置を自動的に合わせることができる。従って、多様なエコーが複雑に変化するレーダ映像において、特定のエコーE1をカーソル5で指示する操作が容易になる。
【0082】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0083】
上記の実施形態では、カーソル5を静止させることによりカーソル自動移動処理が行われる。あるいは、カーソル5の動静に関係なく、カーソル自動移動処理が常に行われる。しかしながら、上記に限らず、例えば特別なスイッチを操作部20に設けて、このスイッチを操作することによりカーソル自動移動処理が行われるように構成することもできる。
【0084】
カーソル5は、トラックボール21に限らず、例えばマウス、ジョイスティック、又はタッチパッド等によって操作するように構成することができる。また、後述の矢印キーでカーソル5を操作しても良い。
【0085】
上記の実施形態では、TT機能を用いるためにユーザがエコーを指示する場合を示したが、カーソル自動移動機能は、TT機能に限らず、レーダ映像の中で特定のエコーを指示する必要がある場合に広く利用することができる。
【0086】
上記の実施形態では、カーソル5の位置を自動的に移動させる構成を開示しているが、変形例として、カーソル5の表示位置は画面の中央に固定し、エコーが現れているレーダ映像を全体的にスクロールすることによってカーソル表示位置を実質的にエコーに移動させる構成も考えられる。
【0087】
本発明は、
図1に示すような構成の情報表示装置1に限定せず、
図10に示すような小型の情報表示装置1xにも適用することができる。
図10の例の情報表示装置1xは、表示部10xと、操作部20xと、を備えており、操作部20xは、カーソル5を操作するための矢印キー21xを備えている。
【0088】
本発明の操作装置は、レーダアンテナと接続されるレーダ専用の情報表示装置として構成することもでき、また、各種の情報を統合して表示可能なマルチファンクションディスプレイとして構成することもできる。
【0089】
本発明は、レーダのエコー画面を表示する装置に限定されない。例えば、ソナーや魚群探知機のエコー画面を表示する装置に適用することができる。
【0090】
本発明は、船舶に設置されて使用される操作装置に限らず、例えば、飛行機や、陸上の施設に設置して使用される操作装置に適用することができる。