特許第6392601号(P6392601)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6392601非鉄金属の電解採取方法およびそれに用いるアノードの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392601
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】非鉄金属の電解採取方法およびそれに用いるアノードの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C25C 7/02 20060101AFI20180910BHJP
   C25C 1/16 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   C25C7/02 306
   C25C1/16 A
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-187217(P2014-187217)
(22)【出願日】2014年9月16日
(65)【公開番号】特開2016-60917(P2016-60917A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年7月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000224798
【氏名又は名称】DOWAホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504409543
【氏名又は名称】国立大学法人秋田大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107548
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 浩一
(72)【発明者】
【氏名】田口 正美
【審査官】 萩原 周治
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−234384(JP,A)
【文献】 特開2008−210685(JP,A)
【文献】 特公昭49−033816(JP,B1)
【文献】 特開2006−066173(JP,A)
【文献】 特開2009−064563(JP,A)
【文献】 特開2008−210698(JP,A)
【文献】 特開2000−110000(JP,A)
【文献】 米国特許第06210550(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25C 1/00−7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Pbを含むアノードを使用して、非鉄金属の硫酸塩を含む電解液から非鉄金属を電解採取する方法において、PbまたはPb合金を鋳造した後に圧延して得られた鋳造圧延板の表面に、PbとRuOの粉末を圧延して得られた粉末圧延板が形成されたアノードを使用することを特徴とする、非鉄金属の電解採取方法。
【請求項2】
前記PbとRuOの粉末が0.1〜3質量%のRuOを含むことを特徴とする、請求項1に記載の非鉄金属の電解採取方法。
【請求項3】
前記鋳造圧延板の表面に前記粉末圧延板を圧接することにより、前記鋳造圧延板の表面に前記粉末圧延板を形成することを特徴とする、請求項1または2に記載の非鉄金属の電解採取方法。
【請求項4】
前記Pb合金がPb−Ag合金であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の非鉄金属の電解採取方法。
【請求項5】
前記非鉄金属が亜鉛であり、前記非鉄金属の硫酸塩が硫酸亜鉛であることを特徴とする、請求項1乃至のいずれかに記載の非鉄金属の電解採取方法。
【請求項6】
PbまたはPb合金を鋳造した後に圧延して得られた鋳造圧延板の表面に、PbとRuOの粉末を圧延して得られた粉末圧延板を形成することにより、アノードを製造することを特徴とする、非鉄金属の電解採取用アノードの製造方法。
【請求項7】
前記PbとRuOの粉末が0.1〜3質量%のRuOを含むことを特徴とする、請求項に記載の非鉄金属の電解採取用アノードの製造方法。
【請求項8】
前記鋳造圧延板の表面に前記粉末圧延板を圧接することにより、前記鋳造圧延板の表面に前記粉末圧延板を形成することを特徴とする、請求項6または7に記載の非鉄金属の電解採取用アノードの製造方法。
【請求項9】
前記Pb合金がPb−Ag合金であることを特徴とする、請求項乃至のいずれかに記載の非鉄金属の電解採取用アノードの製造方法。
【請求項10】
前記非鉄金属が亜鉛であることを特徴とする、請求項乃至のいずれかに記載の非鉄金属の電解採取用アノードの製造方法。
【請求項11】
PbまたはPb合金を鋳造した後に圧延して得られた鋳造圧延板の表面に、PbとRuOの粉末を圧延して得られた粉末圧延板が形成されていることを特徴とする、非鉄金属の電解採取用アノード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非鉄金属の電解採取方法およびそれに用いるアノードの製造方法に関し、特に、鉛を含むアノードを使用して硫酸亜鉛や硫酸銅などの非鉄金属の硫酸塩を含む電解液から亜鉛や銅などの非鉄金属を電解採取する方法およびそのアノードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アノードとして硫酸に不溶なPb板またはPb−Ag合金板を使用して、硫酸亜鉛や硫酸銅などの非鉄金属の硫酸塩を含む電解液から亜鉛をカソード上に析出または付着させて、亜鉛や銅などの非鉄金属を電解採取する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。このような非鉄金属の電解採取方法では、アノードとして、PbまたはPb−Ag合金を鋳造した後に圧延して得られる鋳造圧延板が使用されている。
【0003】
非鉄金属の電解採取において電力コストを低減させるためには、電解採取に要する電力を低減させる必要がある。この所要電力P(Ws)は、槽電圧V(V)と電気量i(A)×t(s)との積、すなわち、P(Ws)=V(V)×i(A)×t(s)であるから、所要電力Pを低減させるためには、槽電圧Vを低減させる必要がある。この槽電圧Vは、理論分解電圧E(=1.229V)とオーム損Eとアノード過電圧ηとカソード過電圧ηの和(V=E+EIR+η+η)であるから、槽電圧Vを低減させるためには、アノード過電圧ηを低減させるのが好ましい。このアノード過電圧ηの大部分が酸素過電圧であるから、アノード過電圧ηを低減させるためには、酸素過電圧を低減させるのが好ましい。
【0004】
しかし、従来の非鉄金属の電解採取方法のように、アノードとしてPbまたはPb−Ag合金の鋳造圧延板を使用する方法では、アノード過電圧の大部分を占める酸素過電圧が比較的高く、槽電圧が比較的高いため、所要電力が高く、電力コストが高くなるという問題があった。
【0005】
このような問題を解消するため、本発明者は、Pbを含むアノードを使用して、非鉄金属の硫酸塩を含む電解液から非鉄金属を電解採取する方法において、Pb粉末とRuOなどの金属酸化物の粉末とを圧延して得られた粉末圧延板をアノードとして使用することを提案している(特願2013−056645号)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−20989号公報(段落番号0002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、RuOなどの金属酸化物は、PbまたはPb合金と比べて非常に高価であるため、Pbと金属酸化物の粉末を圧延して得られた粉末圧延板を使用すると、アノードの製造コストが高くなる。
【0008】
したがって、本発明は、このような従来の問題点に鑑み、Pbを含むアノードを使用して、非鉄金属の硫酸塩を含む電解液から非鉄金属を電解採取する方法において、Pbと金属酸化物の粉末を圧延して得られた粉末圧延板をアノードとして使用する場合と比べて安価なアノードを使用して、アノード過電圧の大部分を占める酸素過電圧を低減させて槽電圧を低減させることによって所要電力を低減させることができる、非鉄金属の電解採取方法およびそれに用いるアノードの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、Pbを含むアノードを使用して、非鉄金属の硫酸塩を含む電解液から非鉄金属を電解採取する方法において、PbまたはPb合金を鋳造した後に圧延して得られた鋳造圧延板の表面に、Pbと金属酸化物の粉末を圧延して得られた粉末圧延板が形成されたアノードを使用することにより、Pbと金属酸化物の粉末を圧延して得られた粉末圧延板をアノードとして使用する場合と比べて安価なアノードを使用して、アノード過電圧の大部分を占める酸素過電圧を低減させて槽電圧を低減させることによって所要電力を低減させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明による非鉄金属の電解採取方法は、Pbを含むアノードを使用して、非鉄金属の硫酸塩を含む電解液から非鉄金属を電解採取する方法において、PbまたはPb合金を鋳造した後に圧延して得られた鋳造圧延板の表面に、Pbと金属酸化物の粉末を圧延して得られた粉末圧延板が形成されたアノードを使用することを特徴とする。
【0011】
この非鉄金属の電解採取方法において、Pbと金属酸化物の粉末が0.1〜3質量%の金属酸化物を含むのが好ましい。また、金属酸化物が、RuO、IrO、AgO、MoO、MnO、PtO、Co、TiO、WOおよびペロブスカイト型酸化物からなる群から選ばれる1種以上の金属酸化物であるのが好ましい。また、鋳造圧延板の表面に粉末圧延板を圧接することにより、鋳造圧延板の表面に粉末圧延板を形成するのが好ましい。さらに、Pb合金がPb−Ag合金であるのが好ましく、非鉄金属が亜鉛であり、非鉄金属の硫酸塩が硫酸亜鉛であるのが好ましい。
【0012】
また、本発明による非鉄金属の電解採取用アノードの製造方法は、PbまたはPb合金を鋳造した後に圧延して得られた鋳造圧延板の表面に、Pbと金属酸化物の粉末を圧延して得られた粉末圧延板を形成することにより、アノードを製造することを特徴とする。
【0013】
この非鉄金属の電解採取用アノードの製造方法において、Pbと金属酸化物の粉末が0.1〜3質量%の金属酸化物を含むのが好ましい。また、金属酸化物が、RuO、IrO、AgO、MoO、MnO、PtO、Co、TiO、WOおよびペロブスカイト型酸化物からなる群から選ばれる1種以上の金属酸化物であるのが好ましい。また、鋳造圧延板の表面に粉末圧延板を圧接することにより、鋳造圧延板の表面に粉末圧延板を形成するのが好ましい。さらに、Pb合金がPb−Ag合金であるのが好ましく、非鉄金属が亜鉛であるのが好ましい。
【0014】
また、本発明による非鉄金属の電解採取用アノードは、PbまたはPb合金を鋳造した後に圧延して得られた鋳造圧延板の表面に、Pbと金属酸化物の粉末を圧延して得られた粉末圧延板が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、Pbを含むアノードを使用して、非鉄金属の硫酸塩を含む電解液から非鉄金属を電解採取する方法において、PbまたはPb合金を鋳造した後に圧延して得られた鋳造圧延板の表面に、Pbと金属酸化物の粉末を圧延して得られた粉末圧延板が形成されたアノードを使用することにより、Pbと金属酸化物の粉末を圧延して得られた粉末圧延板をアノードとして使用する場合と比べて安価なアノードを使用して、アノード過電圧の大部分を占める酸素過電圧を低減させて槽電圧を低減させることによって所要電力を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明による非鉄金属の電解採取用アノードの実施の形態を概略的に示す断面図である。
図2A】実施例および比較例で作製した試験用アノードを概略的に示す断面図である。
図2B図2Aの試験用アノードの平面図である。
図3A】実施例1で作製した試験用アノードの構造を説明する図である。
図3B】実施例2で作製した試験用アノードの構造を説明する図である。
図3C】比較例で作製した試験用アノードの構造を説明する図である。
図4】実施例および比較例で使用した定電流電解システムの概略図である。
図5】実施例および比較例の定電流電解試験におけるアノード電位の経時変化を示す図である。
図6】実施例および比較例の電解試験における電流密度に対するアノード電位の変化を示す図である。
図7】実施例および比較例の電解試験における平均アノード電位を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明による非鉄金属の電解採取方法の実施の形態では、Pbを含むアノードを使用して、非鉄金属の硫酸塩を含む電解液から非鉄金属を電解採取する方法において、PbまたはPb合金を鋳造した後に圧延して得られた鋳造圧延板の表面に、Pbと金属酸化物の粉末を圧延して得られた粉末圧延板が形成されたアノードを使用する。
【0018】
このようにPbと金属酸化物の粉末を圧延して得られた粉末圧延板をアノードの表面に形成すると、従来の鋳造圧延板では内部に混入させるのが困難な金属酸化物が内部に分散した粉末圧延板が表面に形成されたアノードを製造することができ、このアノードを使用することにより、アノード電位を大幅に低下させることができる。また、RuOなどの金属酸化物は、PbまたはPb合金と比べて非常に高価であるが、PbまたはPb合金の鋳造圧延板の表面にPbと金属酸化物の粉末圧延板を形成したアノードを使用すれば、Pbと金属酸化物の粉末を圧延して得られた粉末圧延板をアノードとして使用する場合と比べて、アノードの製造コストを大幅に削減することができる。
【0019】
この非鉄金属の電解採取方法において、Pbと金属酸化物の粉末が0.1〜3質量%の金属酸化物を含むのが好ましく、0.2〜2質量%の金属酸化物を含むのがさらに好ましい。また、金属酸化物として、RuO、IrO、AgO、MoO、MnO、PtO、Co、TiO、WOおよびペロブスカイト型酸化物からなる群から選ばれる1種以上の金属酸化物を使用することができ、RuO、IrOおよびAgOのいずれかを使用するのが好ましく、RuOを使用するのがさらに好ましい。また、鋳造圧延板の表面に粉末圧延板を圧接することにより、鋳造圧延板の表面に粉末圧延板を形成するのが好ましい。また、Pb合金がPb−Ag合金であるのが好ましい。さらに、非鉄金属が亜鉛であり、非鉄金属の硫酸塩が硫酸亜鉛であるのが好ましい。
【0020】
また、本発明による非鉄金属の電解採取用アノードの製造方法の実施の形態では、PbまたはPb合金を鋳造した後に圧延して得られた鋳造圧延板の表面に、Pbと金属酸化物の粉末を圧延して得られた粉末圧延板を形成することにより、アノードを製造する
【0021】
この非鉄金属の電解採取用アノードの製造方法において、Pbと金属酸化物の粉末が0.1〜3質量%の金属酸化物を含むのが好ましく、0.2〜2.0質量%の金属酸化物を含むのがさらに好ましい。また、金属酸化物として、RuO、IrO、AgO、MoO、MnO、PtO、Co、TiO、WOおよびペロブスカイト型酸化物からなる群から選ばれる1種以上の金属酸化物を使用することができ、RuO、IrOおよびAgOのいずれかを使用するのが好ましく、RuOを使用するのがさらに好ましい。なお、Pbと金属酸化物の粉末として、平均粒径1〜500μmのPbおよび金属酸化物の粉末を使用することができる。また、鋳造圧延板の表面に粉末圧延板を圧接することにより、鋳造圧延板の表面に粉末圧延板を形成するのが好ましい。さらに、Pb合金がPb−Ag合金であるのが好ましく、非鉄金属が亜鉛であるのが好ましい。
【0022】
また、図1に示すように、本発明による非鉄金属の電解採取用アノード10の実施の形態では、PbまたはPb合金を鋳造した後に圧延して得られた(例えば、略矩形の平板状の)鋳造圧延板12の表面を取り囲むように、Pbと金属酸化物の粉末を圧延して得られた粉末圧延板14が形成されている。
【実施例】
【0023】
以下、本発明による非鉄金属の電解採取方法およびそれに用いるアノードの製造方法の実施例について詳細に説明する。
【0024】
[実施例1]
図2A図2Bおよび図3Aに示すように、Pbを鋳造して得られた鋳片の表層を平面研削盤で切削除去した後、圧延装置(日本精機社製のK−2−324)を用いて圧延して、直径10mm、厚さ3.2mmの円筒形の純Pbからなる3.34gの鋳造圧延板22を得るとともに、金属酸化物として1.0質量%のRuOを含む(Pb粉末と金属酸化物の粉末の)混合粉末1.07gに圧力39.2MPaを120秒間加えて成形し、直径10mm、厚さ1.0mmの円筒形のPbと金属酸化物の粉末圧延板24を得た後、この粉末圧延板24の一方の面に鋳造圧延板22の一方の面を圧着して、直径10mm、厚さ4.2mmの(鋳造圧延板22と粉末圧延板24からなる)アノード(クラッドアノード)20を作製し、鋳造圧延板22の他方の面にCuからなる導線26を半田付けし、粉末圧延板24の他方の面(面積87.5mm)を露出させたまま、アノード20とこのアノード20と導線26の接合部を取り囲むようにエポキシ樹脂28に埋め込んで、試験用アノードを作製した。
【0025】
[実施例2]
図2A図2Bおよび図3Bに示すように、厚さを3.7mmの3.96gの鋳造圧延板22を使用し、厚さを0.5mmの0.54gの粉末圧延板24を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、試験用アノードを作製した。
【0026】
[比較例]
図2A図2Bおよび図3Cに示すように、粉末圧延板24を圧着せずに、厚さ4.2mm4.5gの鋳造圧延板22を使用した以外は、実施例1と同様の方法により、試験用アノードを作製した。
【0027】
実施例1〜2および比較例において作製したアノード板を使用して定電流電解試験を行うために、図4に示す定電流電解システム100を作製した。なお、図4において、参照符号102はアノード板、104はカソード板、106は恒温水槽、108は参照電極、110は電解液、112はエレクトロメータ、114はガルバノスタット、116はパーソナルコンピュータを示している。
【0028】
この定電流電解システム100において、アノード102として実施例1〜2および比較例の試験用アノードをそれぞれ使用するとともに、カソード104としてAlからなるカソード板を使用し、極間距離を50mmとし、参照電極108としてAg/AgCl電極を使用し、70g/Lの亜鉛と150g/Lの硫酸を含む電解液(電解液110)から、40℃において電流密度60mA/cmで定電流電解を5時間行った。これらの定電流電解試験において、エレクトロメータ112から得られた槽電圧(=理論分解電圧+オーム損+アノード過電圧+カソード過電圧)の経時変化、ガルバノスタット114から得られたアノード電位の経時変化、エレクトロメータ112から得られたカソード電位の経時変化を求めた。これらの定電流電解試験により得られた実施例1〜2および比較例のアノード電位の経時変化を図5に示す。
【0029】
また、電流密度を5〜100mA/cmの間で変化させて同様の電解を行った。これらの電解試験により得られた実施例1〜2および比較例の電流密度に対するアノード電位の変化を図6に示し、平均アノード電位を図7に示す。
【0030】
上述した実施例および比較例の結果から、Pbを含むアノードを使用して、非鉄金属の硫酸塩を含む電解液から非鉄金属を電解採取する方法において、実施例のように、PbまたはPb合金を鋳造した後に圧延して得られた鋳造圧延板の表面に、Pbと金属酸化物の粉末を圧延して得られた粉末圧延板が形成されたアノードを使用すれば、比較例のように、Pbと金属酸化物の粉末を圧延して得られた粉末圧延板をアノードとして使用する場合と同様に、アノード電圧を低くすることができるので、アノード過電圧の大部分を占める酸素過電圧を低減させて槽電圧を低減させることによって所要電力を低減させることができることがわかる。特に、実施例1のように、鋳造圧延板の表面に形成する粉末圧延板をある程度厚くすれば、比較例のように、Pbと金属酸化物の粉末を圧延して得られた粉末圧延板をアノードとして使用する場合とほぼ同じアノード電圧まで低減することができることがわかる。
【0031】
また、実施例のように、PbまたはPb合金を鋳造した後に圧延して得られた鋳造圧延板の表面に、Pbと金属酸化物の粉末を圧延して得られた粉末圧延板が形成されたアノードを使用すれば、比較例のように、Pbと金属酸化物の粉末を圧延して得られた粉末圧延板をアノードとして使用する場合と比べて、アノードの製造コストを大幅に削減することができる。
【符号の説明】
【0032】
10、20 アノード
12、22 鋳造圧延板
14、24 粉末圧延板
26 導線
28 エポキシ樹脂
100 定電流電解システム
102 アノード
104 カソード
106 恒温水槽
108 参照電極
110 電解液
112 エレクトロメータ
114 ガルバノスタット
116 パーソナルコンピュータ
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図4
図5
図6
図7