特許第6392602号(P6392602)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ シマノコンポネンツ マレーシア エスディーエヌ.ビーエッチディー.の特許一覧

<>
  • 特許6392602-スピニングリール 図000002
  • 特許6392602-スピニングリール 図000003
  • 特許6392602-スピニングリール 図000004
  • 特許6392602-スピニングリール 図000005
  • 特許6392602-スピニングリール 図000006
  • 特許6392602-スピニングリール 図000007
  • 特許6392602-スピニングリール 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392602
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】スピニングリール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/01 20060101AFI20180910BHJP
【FI】
   A01K89/01 B
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2014-187331(P2014-187331)
(22)【出願日】2014年9月16日
(65)【公開番号】特開2016-59284(P2016-59284A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2017年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】503230070
【氏名又は名称】シマノコンポネンツ マレーシア エスディーエヌ.ビーエッチディー.
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チャン イック フイ
【審査官】 田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−039272(JP,U)
【文献】 特開2007−151410(JP,A)
【文献】 特開2004−180648(JP,A)
【文献】 特開2001−258435(JP,A)
【文献】 特開2004−180586(JP,A)
【文献】 米国特許第06286772(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体と、
周方向に延びる溝部を有し、前記リール本体から第1方向に延びるスプール軸と、
前記スプール軸が貫通する貫通孔を有し、前記スプール軸上において前記溝部よりも前記リール本体側に位置する保持部材と、
少なくとも一部が径方向の外側に突出するように前記溝部内に配置され、前記保持部材の前記第1方向への移動を規制するように構成された規制部材と、
前記保持部材の外周面上に取り付けられる軸受部材と、
前記軸受部材によって回転可能に支持されるスプールと、
を備え、
前記規制部材は、前記第1方向を向く面において前記スプールと非接触であり、前記第1方向と反対方向を向く面において前記保持部材の前記第1方向への移動を規制する、
スピニングリール。
【請求項2】
前記規制部材は、C字状である、
請求項1に記載のスピニングリール。
【請求項3】
前記規制部材は、弾性を有する、
請求項1又は2に記載のスピニングリール。
【請求項4】
前記保持部材は、筒状である、
請求項1から3のいずれかに記載のスピニングリール。
【請求項5】
前記保持部材は、前記スプール軸と相対回転不能である、
請求項1から4のいずれかに記載のスピニングリール。
【請求項6】
前記規制部材は、線条部材から構成される、
請求項1から5のいずれかに記載のスピニングリール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピニングリールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スピニングリールは、リール本体と、リール本体から延びるスプール軸と、スプールと、ロータとを備えている。スプールは、スプール軸に対して、軸受部材を介して取り付けられている(例えば特許文献1)。ドラグ機構によるドラグ力を弱めることによって、スプールは、スプール軸に対して回転可能となる。
【0003】
軸受部材は、スプール軸に取り付けられた筒状の保持部材に取り付けられている。この保持部材は、径方向に貫通する貫通孔を有している。また、保持部材の貫通孔と連通するねじ孔がスプール軸に形成されている。この貫通孔とねじ孔とを固定ピンが貫通することによって、スプール軸に対する保持部材の軸方向の移動が規制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−204640号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、保持部材をスプール軸に取り付ける際、保持部材の貫通孔と、スプール軸のねじ孔とを位置合わせする必要があり、生産効率がよくない。
【0006】
本発明の課題は、効率的に生産することのできるスピニングリールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある側面に係るスピニングリールは、リール本体と、スプール軸と、保持部材と、規制部材と、軸受部材と、スプールとを備えている。スプール軸は、周方向に延びる溝部を有する。スプール軸は、リール本体から第1方向に延びる。保持部材は、スプール軸が貫通する貫通孔を有する。保持部材は、スプール軸上において溝部よりもリール本体側に位置する。規制部材は、少なくとも一部が径方向の外側に突出するように溝部内に配置される。規制部材は、保持部材の第1方向への移動を規制するように構成されている。軸受部材は、保持部材の外周面上に取り付けられる。スプールは、軸受部材によって回転可能に支持される。
【0008】
この構成によれば、規制部材が径方向の外側に突出しているため、保持部材が前方に移動することを規制することができる。このため、保持部材をスプール軸に取り付ける際に、位置合わせする必要が無く、この結果、スピニングリールを効率的に生産することができる。
【0009】
好ましくは、規制部材は、C字状である。
【0010】
好ましくは、規制部材は、弾性を有する。
【0011】
好ましくは、保持部材は、筒状である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、スピニングリールを効率的に生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】スピニングリールの側面図。
図2】スピニングリールの断面図。
図3】スプールの正面図。
図4図3のD−D線断面図。
図5図4の拡大図。
図6】保持部材の斜視図。
図7】規制部材の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るスピニングリールの実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1はスピニングリールの側面図であり、図2はスピニングリールの断面図である。なお、以下の説明において、「前」とは釣糸を繰り出す方向を示し、具体的には図1及び図2の左が「前」である。また、軸方向とは、スプール軸が延びる方向を意味する。
【0015】
図1に示すように、スピニングリール100は、釣糸を前方に繰り出す。スピニングリール100は、リール本体110、ロータ120、スプール130、及びハンドル140を備えている。また、図2に示すように、スピニングリール100は、駆動機構150、オシレーティング機構160、ピニオンギア170、及びスプール軸180をさらに備えている。
【0016】
図1に示すように、リール本体110は、ケース部111と、蓋部112とを有している。蓋部112は、ケース部111に対して取り外し可能である。また、ケース部111は、前後方向に延びる装着部113を有している。装着部113は、釣竿に装着される部分である。
【0017】
図2に示すように、リール本体110は、ケース部111と蓋部112とによって画定される内部空間を有しており、内部空間内に種々の機構を収容している。詳細には、駆動機構150、及びオシレーティング機構160がリール本体110内に収容されている。
【0018】
駆動機構150は、駆動軸151、及び駆動ギア152を備えている。駆動軸151は、ハンドル軸141と連結されており、ハンドル軸141と一体的に回転する。
【0019】
駆動ギア152は駆動軸151に連結されており、駆動軸151と一体的に回転する。駆動ギア152は、フェースギアであり、ピニオンギア170のギア部171と噛み合っている。リール本体110の側面に装着されたハンドル140を回転させることによって、駆動軸151及び駆動ギア152が回転し、ピニオンギア170も回転する。
【0020】
スプール軸180は、リール本体110から第1方向に延びている。詳細には、スプール軸180は、リール本体110内から前方に延びている。スプール軸180は、ハンドル140を回転させることによって、前後方向に往復移動する。詳細には、ハンドル140の回転が、駆動ギア152を介して、ピニオンギア170を回転させる。このピニオンギア170の回転に伴い、オシレーティング機構160がスプール軸180を前後方向に往復移動させる。
【0021】
図3はスプールの正面図、図4図3のD−D線断面図、図5図4の拡大図である。なお、図3はドラグつまみ51が取り外された状態を示している。図5に示すように、スプール軸180は、溝部181を有している。この溝部181は、周方向に延びる。すなわち、溝部181は、スプール軸180の外周面上に環状に形成されている。
【0022】
図3〜5に示すように、スプール軸180は、その前部において、互いに平行に延びる一対の取り付け面182を有している。各取り付け面182は、平坦な面であって、軸方向に延びている。なお、上述した溝部181は、各取り付け面182には形成されていないが、特にこれに限定されない。すなわち、溝部181は、各取り付け面182に形成されていてもよい。
【0023】
図2に示すように、スプール130は、釣糸が巻きつけられる部材である。スプール130は、後述するように、スプール軸180の先端部に軸受部材4(図4参照)などを介して支持されている。スプール130は、スプール軸180と一体的に前後方向に往復移動する。
【0024】
ピニオンギア170は、リール本体110に設けられている。詳細には、ピニオンギア170は、リール本体110内から前方に延びている。ピニオンギア170は、スプール軸180周りに回転可能に配置されている。ピニオンギア170は筒状に形成されており、ピニオンギア170の内部をスプール軸180が延びている。なお、ピニオンギア170は複数の軸受部材を介してリール本体110に支持されている。
【0025】
ロータ120は、スプール130に釣糸を巻きつけるための部材である。ロータ120は、ピニオンギア170の前部に固定されており、ピニオンギア170と一体的に回転する。すなわち、ロータ120はピニオンギア170と相対回転不能である。
【0026】
ロータ120は、ロータ本体部121と、第1及び第2ロータアーム122,123とを備えている。ロータ本体部121は、円筒状である。第1及び第2ロータアーム122、123は、ロータ本体部121の外周面から前方に向かって延びている。第1ロータアーム122と第2ロータアーム123とは、ロータ本体部121の周方向において、反対側の位置に配置されている。
【0027】
図4に示すように、スピニングリール100は、保持部材2と、規制部材3と、軸受部材4と、をさらに備えている。また、スピニングリール100は、ワッシャ5、及び受け部材6などもさらに備えている。
【0028】
保持部材2は、筒状であり、貫通孔24を有している。この貫通孔24をスプール軸180が貫通する。すなわち、保持部材2は、径方向において、スプール軸180を囲むように配置されている。
【0029】
図5に示すように、保持部材2は、スプール軸180上において溝部181よりもリール本体110側に位置する。すなわち、保持部材2は、軸方向において、溝部181の後方に位置する。
【0030】
図6は、保持部材2の斜視図である。図6に示すように、保持部材2は、円筒状の保持本体部21と、フランジ部22とを有している。フランジ部22は、保持本体部21から径方向の外側に突出している。フランジ部22は、円板状である。保持本体部21とフランジ部22とは、1つの部材によって形成されている。
【0031】
保持本体部21は、前部21a、中央部21b、及び後部21cを有している。前部21a、中央部21b、及び後部21cは、軸方向において、前方からこの順で配置されている。前部21aの外径は、中央部21bの外径よりも大きく、後部21cの外径よりも小さい。
【0032】
図4に示すように、保持部材2の外周面上には、軸受部材4が取り付けられている。詳細には、保持本体部21の後部21cに軸受部材4が取り付けられている。なお、この軸受部材4が、本発明の軸受部材に相当する。
【0033】
スプール130は、軸受部材4によって回転可能に支持されている。すなわち、スプール130は、軸受部材4を介して、保持部材2に支持されている。
【0034】
図6に示すように、保持部材2は、対向する一対の対向面23を有する。一対の対向面23は、互いに平行に延びている。この対向面23は、スプール軸180の取り付け面182と係合する。このため、保持部材2は、スプール軸180と相対回転不能である。
【0035】
図4に示すように、保持本体部21の中央部21bには、少なくとも1つのワッシャ5が取り付けられている。ワッシャ5は、円板状であって、中央に非円形の貫通孔を有している。このワッシャ5の貫通孔を、保持本体部21が貫通している。
【0036】
受け部材6は、スプール軸180に固定されている。受け部材6は、円板状である。保持部材2は、受け部材6と接触することによって、後方への移動が規制される。すなわち、保持部材2は、リール本体110側への移動を受け部材6によって規制されている。
【0037】
本実施形態に係るスピニングリール100は、保持部材2とスプール軸180とを径方向に貫通する固定ピンを備えていない。すなわち、保持部材2は、径方向に延びる貫通孔を有していない。また、スプール軸180は、固定ピンが貫通するねじ孔を有していない。
【0038】
規制部材3は、保持部材2の第1方向への移動を規制するように構成されている。すなわち、規制部材3は、保持部材2の前方への移動を規制するように構成されている。規制部材3は、スプール軸180の溝部181内に配置されている。
【0039】
規制部材3が溝部181内に配置された状態において、規制部材3の少なくとも一部が径方向の外側に突出している。詳細には、周方向において、規制部材3の一部が溝部181内に配置され、規制部材3の他の部分が溝部181から径方向の外側に突出する。この規制部材3の突出部分が、保持部材2の前面と当接するように構成されている。この規制部材3の突出部分が保持部材2の前面と当接することによって、保持部材2が前方に移動することを規制することができる。なお、軸方向視において、規制部材3の少なくとも一部は、保持部材2の貫通孔24よりも径方向の外側に位置する。
【0040】
図7に示すように、規制部材3は、環状である。詳細には、規制部材3は、隙間部31を有する環状である。すなわち、規制部材3は、一部が途切れた環状であって、実質的にC型のリングである。本実施形態に係る規制部材3は多角形状であるが、規制部材3は円形状であってもよい。
【0041】
規制部材3は、弾性を有している。このため、スプール軸180に取り付けるために規制部材3の径を広げても、規制部材3をスプール軸180に取り付け終わると元の径に戻ろうとする弾性力が働く。
【0042】
本実施形態に係るスピニングリール100によれば、規制部材3がスプール軸180の溝部181から外側に突出しているため、保持部材2が前方に移動することを規制することができる。このため、保持部材2をスプール軸180に取り付ける際に、位置合わせする必要が無く、その結果、スピニングリール100を効率的に生産することができる。
【0043】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0044】
変形例1
上記実施形態では、規制部材3は、保持部材2と接触しているが、特にこれに限定されない。例えば、軸方向において、規制部材3と保持部材2との間において、他の部材が配置されていてもよい。この場合であって、規制部材3は、他の部材を介して、保持部材2の第1方向への移動を規制することができる。
【0045】
変形例2
規制部材3は、保持部材2の第1方向への移動を規制することができればよく、その形状は特に限定されない。例えば、規制部材3は、環状でなくてもよい。
【0046】
変形例3
上記実施形態では、1つの軸受部材4が保持部材2に取り付けられているが、2つ以上の軸受部材が保持部材2に取り付けられていてもよい。すなわち、スプール130が、2つの軸受部材を介して、保持部材2に回転可能に支持されていてもよい。例えば、1つの軸受部材が保持部材2の前部21aに取り付けられており、別の軸受部材が保持部材2の後部21cに取り付けられていてもよい。
【符号の説明】
【0047】
2 保持部材
24 貫通孔
3 規制部材
4 軸受部材
110 リール本体
130 スプール
180 スプール軸
181 溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7