(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の排気消音装置では、排気バルブの開弁時に、メイン通路を流れる排気ガスと、バイパス通路を流れる排気ガスとが下流側の膨張室で合流し、合流した排気ガスが排出管から外方に排出される。この排出管の径が大きいと、排気バルブの閉弁時の消音効果が十分得られない可能性がある。また、排出管の径が小さいと、開弁時のエンジン出力が抑えられたり、開弁時の下流側の膨張室の内圧が過剰になったりする恐れがある。
【0005】
本発明は、排気バルブの閉弁時にも十分な消音効果が得られるとともに、開弁時のエンジン出力を確保することができるエンジンの排気消音装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の排気消音装置は、エンジンの排気ガスが流入する膨張室を有する排気消音装置であって、前記膨張室を通って前記排気ガスを排気消音装置の外部に排出する排気通路と、前記膨張室に隣接して配置された消音室と、前記排気ガスを前記消音室から排気消音装置の外部に排出する排出通路と、前記膨張室と前記消音室との間の隔壁に設けられて、前記膨張室内の圧力が予め定める値よりも大きくなったときに開弁する排気バルブとを備えている。
【0007】
この明細書において、「膨張室」とは、排気通路の一部を形成し、排気通路の断面積の急激な拡大により排気ガスを膨張・回折・分散させ、膨張室の壁にぶつけて乱反射させて減衰させる空間をいう。また、「共鳴室」とは、排気通路の一部を形成する膨張室とは異なり、排気通路との間で排気ガスの音波を行き来させながら,そのエネルギーを音波の干渉によって減衰して熱エネルギーに変換する空間をいう。共鳴室は、音波の移動ができるように実質的に行き止まり空間であればよく、他の部屋に連通する部分が形成されていてもよい。さらに、「消音室」は、これら膨張室および共鳴室の両方を含む。
【0008】
上記構成によれば、膨張室内の圧力が高くなると、排気バルブが開いて排気ガスの一部が消音室に流入する。これにより、排気消音装置が高圧の排気ガスから保護される。このとき、排気ガスの一部が消音室および排出通路を介して外部に排出され、排気ガスの残部が排気通路を通って外部に排出される。つまり、排気バルブが閉じている低圧時には、排気ガスは排気通路を通って外部に排出され、排気バルブが開いている高圧時には、排出通路と排気通路の両方を通って排気ガスが外部に排出される。これにより、排気通路の径を大きくしなくても、高圧時においても排気ガスを効果的に排出できる。その結果、排気バルブの閉弁時にも十分な消音効果が得られるとともに、開弁時に大きなエンジン出力を確保することができる。
【0009】
本発明において、前記排気通路の下流端部は前記膨張室から前記消音室を貫通して外部に連通する第1排出管で構成され、前記第1排出管の周壁に、前記消音室と連通する連通孔が形成されていることが好ましい。この構成によれば、閉弁時には、消音室を共鳴室として用いることができる。その結果、低圧時の消音効果が向上する。
【0010】
本発明において、2つ以上の前記膨張室を備える場合、前記共鳴室は、前記エンジンからの前記排気ガスが流入する上流側膨張室に隣接して配置され、前記排気通路における下流端部に連通していることが好ましい。この構成によれば、排出通路の上流端と下流端とが共鳴室を介して連通するので、下流側の膨張室をバイパスするバイパス効果が高い。
【0011】
前記共鳴室が前記排気通路の下流端部に連通する場合、前記2つ以上の膨張室および前記共鳴室が内部に形成されたケーシングを備え、前記ケーシングは長手方向を有する筒状で、長手方向の一端側から前記排気ガスが流入され他端側から前記排気ガスが排出され、長手方向一端側から他端側に向かって徐々に断面積が大きくなるように形成され、前記共鳴室は、長手方向の他端に位置していることが好ましい。この構成によれば、共鳴室の長手方向寸法を大きくすることなく、共鳴室の容積を大きくできる。その結果、排気消音装置の長手方向寸法が大きくなるのを抑制しつつ、共鳴室の共鳴効果が高くなる。
【0012】
本発明において、前記排気バルブは、前記共鳴室に配置されていることが好ましい。この構成によれば、排気バルブの弁体が高温の排気ガスにさらされるのを防ぐことができる。
【0013】
本発明において、前記排気バルブの一部が、排気消音装置のケーシングの外部に位置していることが好ましい。この構成によれば、排気バルブが温度上昇するのを抑制できる。
【0014】
本発明において、前記排気通路の下流端部は前記膨張室から前記共鳴室を貫通して外部に連通する第1排出管で構成され、前記排出通路は、前記共鳴室と排気消音装置の外部とを連通する第2排出管で構成され、前記第1排出管の周壁に、前記共鳴室と連通する連通孔が形成され、前記第2排出管は、前記第1排出管を径方向外側から覆って形成され、前記第2排出管の入口が、前記第1排出管における前記連通孔よりも下流側に位置していることが好ましい。この構成によれば、第1排出管と第2排出管との二重パイプ構造により、排出通路をコンパクトに構成できる。また、第2排出管の入口が第1排出管における連通孔よりも下流側に位置しているので、第1排出管を通る排気ガスの速度が低いとき、連通孔から共鳴室に導入された排気が急速に第2排出管から外部に排出されにくくなり、共鳴室内での共鳴効果が維持される。
【発明の効果】
【0015】
本発明のエンジンの排気消音装置によれば、排気バルブが閉じている低圧時には、排気ガスは排気通路を通って外部に排出され、排気バルブが開いている高圧時には、排出通路と排気通路の両方を通って排気ガスが外部に排出される。これにより、排気通路の径を大きくしなくても、高圧時においても排気ガスを効果的に排出できる。その結果、排気バルブの閉弁時にも十分な消音効果が得られるとともに、開弁時に大きなエンジン出力を確保することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。この明細書中の左右方向は、自動二輪車に乗車したライダーから見た左右を言う。
図1は本発明の一実施形態に係るエンジンの排気消音装置を備えた自動二輪車の後部の側面図である。この自動二輪車の車体フレームFRは、前半部を構成するメインフレーム1と、メインフレーム1の後部に連結されて車体フレームFRの後半部を構成するリヤフレーム2とを有している。メインフレーム1の前端部に図示しないフロントフォークを介して前輪が支持されている。
【0018】
メインフレーム1の後端下部にスイングアームブラケット4が設けられ、このスイングアームブラケット4にピボット軸5を介してスイングアーム6が上下揺動自在に支持されている。スイングアーム6の後端部に後輪8が支持されている。メインフレーム1の中央下部にはエンジンEが支持されており、このエンジンEによりチェーンのような動力伝達部材10を介して後輪8を駆動する。エンジンEは例えば並列多気筒4サイクルエンジンである。
【0019】
本実施形態のエンジンEは、過給機12を搭載している。詳細には、エンジンEのクランクケース14の後部の上方に過給機12が配置されており、この過給機12により加圧された吸気が、過給機12の上方に配置された吸気チャンバ16に貯留されたのち、スロットルボディ18を介して、エンジンEのシリンダヘッド20の後面に形成された吸気ポート22からエンジンEに供給される。
【0020】
エンジンEのシリンダヘッド20の前部の排気ポート24に接続された複数の排気管26が、エンジンEの下方の集合管25で集合されたのち、排気チャンバ27および入口管35を介して排気消音装置28に接続されている。排気消音装置28は後輪8の外側方、例えば右側方に配置されており、排気チャンバ27および排気消音装置28はカバー31により外側方から覆われている。
【0021】
図2に示すように、排気消音装置28は、前後方向に長手方向を有する筒状のケーシング30を有し、ケーシング30の長手方向の一端側である前側から排気ガスGが流入され、他端側である後側から排気ガスGが排出される。ケーシング30は、前端から後端に向かって長手方向と直交する横断面積が徐々に大きくなるように形成されている。
【0022】
ケーシング30の内部には、排気ガスGが流入する上流側膨張室である第1膨張室32と、第1膨張室32の下流側の第2膨張室34と、第1膨張室32に隣接して配置された共鳴室36とが形成されている。第1膨張室32は、排気消音装置28の前後方向中央部に形成され、第2膨張室34および共鳴室36が、第1膨張室32の前側および後側にそれぞれ隣接して配置されている。つまり、排気消音装置28の後端部に共鳴室36が配置され、前端部に第2膨張室34が配置され、その間に第1膨張室32が配置されている。
【0023】
詳細には、ケーシング30は、流入口38が形成された前壁40と、周壁42と、排出口44,44が形成された後壁46とを有している。第1膨張室32と第2膨張室34との間に第1隔壁48が配置され、周壁42に溶接により固着されている。第1膨張室32と共鳴室36との間に第2隔壁50が配置され、周壁42に溶接により固着されている。
【0024】
このように、前壁40、周壁42および第1隔壁48により第2膨張室34が形成され、第1隔壁48、周壁42および第2隔壁50により第1膨張室32が形成され、第2隔壁50、周壁42および後壁46により共鳴室36が形成されている。
【0025】
ここで、「膨張室」とは、後述の排気通路55の一部を形成し、排気通路55の断面積の急激な拡大により排気ガスGを膨張・回折・分散させ、膨張室の壁にぶつけて乱反射させて減衰させる空間をいう。また、「共鳴室」とは、排気通路55の一部を形成する膨張室とは異なり、排気通路55との間で排気ガスGの音波を行き来させながら,そのエネルギーを音波の干渉によって減衰して熱エネルギーに変換する空間をいう。共鳴室は、音波の移動ができるように実質的に行き止まり空間であればよく、他の部屋に連通する部分が形成されていてもよい。さらに、「消音室」は、これら膨張室および共鳴室の両方を含む。
【0026】
集合管25(
図1)の後端に連なる入口管35が、流入口38から排気消音装置28内部に挿入され、第2膨張室34に連通することなく第2膨張室34を通過して、第1隔壁48を貫通したのち、第1膨張室32に連通している。入口管35は、第1隔壁48に溶接で固着される。第1隔壁48に、第1膨張室32と第2膨張室34とを連通する貫通孔52が形成されている。
【0027】
第1隔壁48に、第2膨張室34と外部とを連通させる2本の第1排出管54A,54Bが設けられている。第1排出管54A,54Bは、第1隔壁48を貫通して第1膨張室32に連通することなく第1膨張室32を通過したのち、さらに、第2隔壁50を貫通し、共鳴室36を通過して、排気消音装置28の外部に連通している。第1排出管54A,54Bは、第1隔壁48および第2隔壁50に溶接で固着される。上側である一方の第1排出管54Aは直管で構成され、下側である他方の第1排出管54Bは曲管で構成されている。ただし、第1排出管54A,54Bの形状はこれに限定されない。
【0028】
第1膨張室32、貫通孔52、第2膨張室34、および第1排出管54A,54Bの内部空間により、排気消音装置28の前記排気通路55を形成している。第1排出管54A,54Bの周壁には、共鳴室36と連通する複数の連通孔56が形成されている。つまり、共鳴室36は、排気通路55における下流端部に連通している。
【0029】
第1膨張室32と共鳴室36との間の第2隔壁50に、排気バルブ58が設けられている。排気バルブ58は、第1膨張室32内の圧力が予め定める値よりも大きくなったときに開弁する。本実施形態では、排気バルブ58は、第1膨張室32と、ほぼ大気圧である共鳴室36との差圧が所定値以上となったときに開弁するように設定された背圧バルブで構成されている。
【0030】
排気バルブ58は、その大部分が、第2隔壁50の後方、つまり共鳴室36内に配置されており、排気バルブ58の一部が、ケーシング30の外部に位置している。排気バルブ58は、その弁口60が入口管35の出口と対向しない位置に配置されている。詳細には、入口管35の軸心C1と排気バルブ58の軸心C2がずれるように配置されている。また、排気バルブ58は、2本の第1排出管54A,54Bの間に配置されている。これにより、共鳴室36内のスペースを有効に活用できる。
【0031】
排気バルブ58は、第2隔壁50に形成された弁口60と、弁口60を開閉する弁体62と、第2隔壁50に設けられて閉弁時の弁体62が着座する弁座64と、弁体62を弁座
64に押圧するばね体66とを有している。ばね体66は、コイル状の圧縮ばねであり、前端部で弁体62を弁座64に押圧し、後端部が、後述する閉塞部材76に当接して、後方への移動が規制されている。鋼製のリングからなる弁座64は、第2隔壁50に溶接により固着され、閉弁時に弁体62と協働して弁口60をシールする。
【0032】
このように、本実施形態の排気バルブ58は機械式であり、構造が単純で、高温・高圧下での信頼性が高い。さらに、排気バルブ58が共鳴室36側に配置されているので、ばね体66が第1膨張室32内の高温の排気ガスGから保護される。
【0033】
排気バルブ58は、さらに、内部にばね収容室68を形成するばねケース70と、内部を弁体62が移動する弁ケース69とを有している。ばね収容室68は、内部にばね体66を収容する。弁ケース69は、ばねケース70と同心で、ばねケース70よりも外径が大きく形成されている。
【0034】
弁ケース69とばねケース70は単一の鋼材からなる筒形状で、弁ケース69とばねケース70との間に段部72が形成されている。弁ケース69側の端部、つまり前側端部に、鍔状のフランジ部74が形成され、弁ケース69はフランジ部74で
第2隔壁50に溶接により固着されている。ばねケース
70側の端部、つまり後側端部に閉塞部材76が溶接により固着されている。つまり、ばね収容室68の後端部は閉塞されている。ばね体66の後端部は閉塞部材76に固定され、保持されている。
【0035】
ばね収容室68は、排気消音装置28の外部に露出している。本実施形態では、ばね収容室68のほぼ全体が排気消音装置28の外部に露出しているが、ばね収容室68の少なくとも一部が排気消音装置28の外部に露出していればよい。
【0036】
図4に示すように、弁体62は、前端部に設けられて弁座64に着座して弁口60を閉止する弁座当接板78と、ばね体66側の後端部に設けられたばね体当接板80とを有し、これら弁座当接板78とばね体当接板80とが、円筒状の連結部材82により連結されている。換言すれば、連結部材82は、ばね体66と同軸の筒形状で、連結部材82の両端が弁座当接板78およびばね体当接板80により閉塞されている。
【0037】
ばね体当接板80は、連結部材82の外径およびばねケース70の外径よりも大きく、かつ弁ケース69の内径よりも若干小さな外径を有している。つまり、ばね体当接板80は、ばね収容室68に排気ガスGが流入するのを防ぐ流入防止部材85を構成している。流入防止部材85は、弁ケース69の内部に配置され、少なくとも開弁時にばね収容室68に排気ガスが流入するのを防ぐ。本実施形態の流入防止部材85は、閉弁時においても、ばね収容室68に排気ガスGが流入するのを防いでいる。ばね体当接板80は、弁体62の動作時に弁ケース69の内周面に案内されて移動する。
【0038】
ばね体66の前端部に、ばねケース70よりも外径の大きなばね受け板84が設けられ、断熱材86を介して弁体62のばね体当接板80に当接している。断熱材86は、例えば、セラミックファイバである。つまり、弁体62のばね体当接板80は、断熱材86およびばね受け板84を介して間接的にばね体66に当接し、ばね受け板84は、断熱材86を介して弁体62と当接する。ばね受け板84も、ばね体当接板80とともに流入防止部材85を構成している。ただし、ばね受け板84とばね体当接板80は、一方が省略されてもよい。
【0039】
第2隔壁50における弁座64の周囲に、開弁時に弁口60を通った排気ガスGを共鳴室36内に導入する複数の導入通路88が形成されている。導入通路88は、第2隔壁50に形成した溝からなり、弁口60から径方向外側に向かって後方に傾斜する傾斜面を有している。
図5に示すように、本実施形態では、導入通路88は周方向に並んで4つ配置されている。
【0040】
第2隔壁50における導入通路88の間に、弁ケース69が固着される、凹入していない弁ケース固定部90が形成されている。
図5では、弁ケース固定部90をクロスハッチングで示してある。
図4の弁ケース69のフランジ部74が、第2隔壁50の弁ケース固定部90に取り付けられている。弁ケース固定部90は、導入通路88から後方に隆起しているので、弁体62の径方向の移動を規制する規制部材としても機能する。
【0041】
排気消音装置28は、
図2の第1膨張室32から排気バルブ58を通って共鳴室36に流入した排気ガスGを外部に排出する排出通路92を有している。排出通路92は、共鳴室36と外部とを連通する第2排出管94で構成されている。第2排出管94は、排気消音装置28の後壁46を貫通している。共鳴室36が、排気消音装置28の後壁46に隣接して配置されているので、第2排出管94が短くて済む。このように、共鳴室36は第2排出管94を介して外部と連通しているので、ほぼ大気圧に保たれる。したがって、第1膨張室32とほぼ大気圧の共鳴室36との圧力差が大きくなり、差圧が大きくなりやすい。
【0042】
第2排出管94は、第1排出管54A,54Bと同心に配置され、第1排出管54A,54Bを径方向外側から覆って形成されている。つまり、第2排出管94と第1排出管54A,54Bにより二重パイプが構成されている。このような二重パイプとすることで、排気出口がコンパクトになる。第2排出管94の上流端である排出管入口94aは、第1排出管54A,54Bにおける連通孔56よりも下流側(後側)に位置している。
【0043】
つぎに、本発明の排気消音装置28の動作について説明する。
図1のエンジンEが始動すると、排気ガスGが、排気管26、集合管25、排気チャンバ27および入口管35を通って、
図2の排気消音装置28の第1膨張室32内に流入して、膨張、消音される。さらに、第1膨張室32内に流入した排気ガスGは、貫通孔52を通って第2膨張室34内に流入して、膨張、消音される。このとき、排気ガスGは、第1膨張室32に流入する流れ方向に対して、第2膨張室34へ流出する流れ方向が反対向きになっている。これにより、消音効果が向上する。
【0044】
第2膨張室34内に流入した排気ガスGは、第1排出管54A,54Bを通って外部に排出される。このとき、排気ガスGは、第2膨張室34に流入する流れ方向に対して、第1排出管54A,54Bへ流出する流れ方向が反対向きになっている。これにより、消音効果が向上する。第1排出管54A,54B内を流れる排気ガスGの一部は、連通孔56から共鳴室36内に流入する。共鳴室36では、連通孔56から流入した排気ガスGが共鳴により消音される。
【0045】
エンジンEの出力が高くなり、第1膨張室32と共鳴室36の内部圧力差が所定の値を超えると、排気バルブ58の弁体62が、
図4に2点鎖線で示すように弁座64から離れるように後方へ移動し、開状態となる。排気バルブ58が開状態となると、
図2の第1膨張室32内の排気ガスGが弁口60を通って共鳴室36内に流入する。共鳴室36内に流入した排気ガスGは、共鳴室36内で膨張により消音されたのち、第1排出管54A,54Bと第2排出管94との間の排出通路92を通って外部に排出される。
【0046】
上記構成によれば、第1膨張室32内の圧力が高くなると、排気バルブ58が開いて排気ガスGの一部が共鳴室36に流入する。これにより、排気消音装置28が高圧の排気ガスGから保護される。このとき、排気ガスGの一部が共鳴室36および排出通路92を介して外部に排出され、排気ガスGの残部が排気通路55を通って外部に排出される。つまり、排気バルブ58が閉じている低圧時には、排気ガスGは排気通路55を通って外部に排出され、排気バルブ58が開いている高圧時には、排出通路92と排気通路55の両方を通って排気ガスGが外部に排出される。
【0047】
また、第1排出管54A,54Bの周壁に、共鳴室36と連通する連通孔56が形成されているので、閉弁時には、消音室を共鳴室として用いることができる。その結果、低圧時の消音効果が向上する。
【0048】
このように閉弁時に共鳴室36として利用している空間を、高圧時に膨張室およびリリーフ通路として利用することで、第1排出管54A,54Bの径を大きくすることなく、高圧時でも排気ガスGを効果的に排出できる。その結果、排気バルブ58の閉弁時に十分な消音効果が得られるとともに、開弁時に大きなエンジン出力を確保することができる。
【0049】
共鳴室36は、
図2の排気通路55における下流端部に連通している。これにより、
開弁時に排気通路55の上流端と下流端とが共鳴室36を介して連通されることになるので、第2膨張室34をバイパスすることができる。
【0050】
排気消音装置28は、前端から後端に向かって徐々に断面積が大きくなるように形成されているので、共鳴室36を排気消音装置28の後端に配置することで、共鳴室36の前後方向寸法を大きくすることなく、共鳴室36の容積を大きくできる。その結果、排気消音装置28の前後方向寸法が大きくなるのを抑制しつつ、共鳴室36の共鳴効果が高くなる。
【0051】
排気バルブ58は、第1膨張室32側ではなく、共鳴室36側に配置されているので、排気バルブ58の弁体62が、第1膨張室32内の高温の排気ガスにさらされるのを防ぐことができる。
【0052】
排気バルブ58の一部が、排気消音装置28の外部に位置しているので、排気バルブ58の温度上昇を抑制できる。
【0053】
共鳴室36が、排気消音装置28の後壁46に隣接して配置され、排出通路92が後壁46を貫通して形成されているので、排出通路92を短くできるとともに、排気消音装置28の構造も簡潔になる。
【0054】
排出通路92が、第1排出管54A,54Bと第2排出管94との二重管で構成されているので、排出通路92をコンパクトに構成できる。
図2に示すように、排出通路92が2つ設けられ、その間に排気バルブ58が配置されているので、開弁時に排出通路92へ排気ガスGがスムーズに導かれる。
【0055】
排出通路92が設けられることで、共鳴室36内の圧力が高くなり過ぎるのを防ぐことができる。これにより、第1膨張室32と共鳴室36との差圧が大きくなるので、差圧で開弁する排気バルブ58を好適に採用できる。
【0056】
図4に示すばね体66を収容するばね収容室68の少なくとも一部が、排気消音装置28の外部に露出している。これにより、ばね体66が高温にさらされるのが抑制され、外気で冷却される。その結果、ばね体66の材料の選択肢が増えて設計の自由度が向上する。特に、ばね収容室68におけるばね体66が保持される部位、ばね体66が直接接している部分が、排気消音装置28の外部に露出しているので、ばね体の温度上昇を効果的に抑制できる。
【0057】
弁体62とばね体66との間に、ばね収容室68に排気ガスが流入するのを防ぐ流入防止部材85が設けられている。これにより、ばね収容室68に高温の排気ガスGが流入するのを防ぐことができるので、ばね体66が高温にさらされるのが抑制される。さらに、流入防止部材85が弁ケース69の内部に配置されて、弁ケース69に覆われているので、流入防止部材85が共鳴室36内の排気ガスGに直接さらされることがない。
【0058】
図4に2点鎖線で示すように、開弁時にばね受け板84が、ばねケース70と弁ケース69との段差72に当接して弁体62のストッパとして機能する。このように、簡単な構造でストッパを形成できる。
【0059】
また、連結部材82を介してばね体当接板80と弁座当接板78とが間隔をあけて配置されているので、ばね体当接板80に排気ガスGからの熱が伝わるのを抑制できる。その結果、ばね体当接板80からばね受け板84を介してばね体66に伝わる熱も抑制されるので、ばね体66の温度上昇を抑制できる。さらに、連結部材82は筒形状で、その両端がばね体当接板80および弁座当接板78により閉塞されている。これにより、連結部材82の内部に空気層が形成されるので、ばね体当接板80に排気ガスからの熱が伝わるのを一層抑制できる。
【0060】
しかも、ばね受け板84とばね体当接板80との間に、断熱材86が介装されているので、ばね体66の温度上昇をさらに抑制できる。さらに、ばね体当接板80は、ばね収容室68に排気ガスGが流入するのを防ぐ流入防止部材85を兼用しているので、簡単な構造で、前記流入防止部材85を実現できる。
【0061】
弁ケース69が第2隔壁50に固着され、連結部材82およびばね体当接板80が弁ケース69の内周面に案内されて移動している。このように、弁ケース69を弁体62のガイドとして機能させることで、弁体62の開閉動作が円滑になる。
【0062】
第2隔壁50における弁座64の周囲に、開弁時に弁口60を通った排気ガスGを共鳴室36内に導入する複数の導入通路88が形成されている。これにより、排気ガスGが円滑に共鳴室36内に導入され、排出通路92に導かれる。
【0063】
図5に示す4つの導入通路88が周方向に並んで配置され、第2隔壁50における4つの導入通路88の間に、前記弁ケース69が固着される弁ケース固定部90が形成されている。これにより、弁ケース固定部90が弁体62の径方向の移動を規制する規制部材として機能するので、簡単な構造で、弁体62の径方向への移動を規制する規制部材90と、排気ガスGを共鳴室36内に導入する導入通路88とを形成できる。
【0064】
図6は、本発明の第2実施形態に係る排気消音装置28Aの排気バルブ58Aを示す縦断面図である。第2実施形態に係る排気消音装置28Aの排気バルブ58Aは、断熱材86を備えていない点で
図1〜5の第1実施形態と異なり、それ以外の構造は同じである。具体的には、
図6の排気消音装置28Aでは、ばね体当接板80が、ばね受け板84を兼用しており、ばね体66がばね体当接板80に当接している。第2実施形態においても、前述の第1実施形態と同様の効果を奏する。さらに、第2実施形態によれば、排気バルブ58Aの構造が簡単になる。
【0065】
本発明は、以上の実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。例えば、排気バルブ58,58Aの構造は上記実施形態のものに限定されず、排気バルブは差圧弁でなくてもよく、また、弁体62が連結部材82を有さない円盤状のものであってもよい。その場合、弁体がコンパクトになる。また、第1排出管54A,54Bに連通孔56を設けなくてもよい。本発明は、エンジンの出力が高くなる過給エンジンに好適に用いられる。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。