(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392615
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】トランスミッション用台上試験機
(51)【国際特許分類】
G01M 13/02 20060101AFI20180910BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20180910BHJP
G01M 17/007 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
G01M13/02
F16F15/08 E
G01M17/007 Z
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-203586(P2014-203586)
(22)【出願日】2014年10月2日
(65)【公開番号】特開2016-70895(P2016-70895A)
(43)【公開日】2016年5月9日
【審査請求日】2017年7月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】寺田 賢二
【審査官】
伊藤 幸仙
(56)【参考文献】
【文献】
特開2000−105171(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0126889(US,A1)
【文献】
特開2006−023085(JP,A)
【文献】
実用新案登録第2564129(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/02
F16F 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
供試体たるトランスミッションを取付ける取付治具と、トランスミッションの入力軸に連結される駆動モータと、取付治具及び駆動モータを搭載する定盤とを備えるトランスミッション用台上試験機であって、
取付治具と定盤との間にV型のゴムマウントを介設させることを特徴とするトランスミッション用台上試験機。
【請求項2】
前記取付治具を前記弾性体を介して支持する上ベースと、上ベースの下側で前記定盤上に載置される下ベースと、少なくとも3箇所に配置され下ベースに対し上ベースを上下方向に位置調整する上下調整機構とを設けることを特徴とする請求項1記載のトランスミッション用台上試験機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トランスミッションの性能試験を行うトランスミッション用台上試験機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のトランスミッション用台上試験機として、供試体たるトランスミッションを取付ける取付治具と、トランスミッションの入力軸に連結される駆動モータと、取付治具及び駆動モータを搭載する定盤とを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、トランスミッションは、エンジンとともにゴムマウントを介して車体フレームに搭載される。そのため、実車ではトランスミッションが弾性支持されることになり、トランスミッションを試験する際もトランスミッションの弾性支持状態を再現することが望まれる。ここで、上記従来例のものでは、地面の震動の影響をなくすために、定盤の下に弾性体を設けており、この弾性体によりトランスミッションの弾性支持状態をある程度は再現できる。
【0004】
然し、このものでは、取付治具は駆動モータと共に定盤に固定されているため、駆動モータの振動が定盤と取付治具を介してトランスミッションに伝わってしまい、ギアノイズ等の試験の測定精度に悪影響を与える虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−105171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、駆動モータの振動が試験の測定精度に悪影響を与えることを防止できるようにしたトランスミッション用台上試験機を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、供試体たるトランスミッションを取付ける取付治具と、トランスミッションの入力軸に連結される駆動モータと、取付治具及び駆動モータを搭載する定盤とを備えるトランスミッション用台上試験機であって、取付治具と定盤との間に
V型のゴムマウントを介設させることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、駆動モータの振動は定盤を介して弾性体に伝わるが、弾性体により振動が吸収される。そのため、駆動モータの振動が取付治具を介してトランスミッションに伝わることを防止できる。従って、駆動モータの振動がギアノイズ等の試験の測定精度に悪影響を与えることを防止できる。
【0009】
ここで、トランスミッションの取付誤差や弾性体の変形が生ずると、トランスミッションが所定の試験姿勢とならず、トランスミッションの入力軸が駆動モータの回転軸に対して芯ずれしてしまう。そして、この芯ずれによりトランスミッションの過大な振動やトルクリップルを生ずることがある。そこで、本発明においては、取付治具を弾性体を介して支持する上ベースと、上ベースの下側で定盤上に載置される下ベースと、少なくとも3箇所に配置され下ベースに対し上ベースを上下方向に位置調整する上下調整機構とを設けることが望ましい。これによれば、全ての上下調整機構により上ベースを上下方向に位置調整すると、取付治具が上下方向に位置調整され、トランスミッションの高さが調整される。また、一部の上下機構により上ベースの一部分を上下方向に位置調整すると、取付治具の一部分が上下方向に位置調整され、トランスミッションの傾きが調整される。そのため、上下調整機構により上ベースを上下方向に位置調整することで、トランスミッションの姿勢を調整できる。その結果、トランスミッションの過大な振動やトルクリップル等の試験結果への悪影響を無くすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態のトランスミッション用台上試験機の平面図。
【
図2】実施形態のトランスミッション用台上試験機の正面図。
【
図3】実施形態のトランスミッション用台上試験機の要部の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至
図3を参照して、1は、トランスミッションTの性能試験を行う本発明の実施形態のトランスミッション用台上試験機を示している。尚、図示のトランスミッションTは、FF式自動車に用いられるトランスアクスルであるが、FR式自動車用のトランスミッションであってもよい。台上試験機1は、トランスミッションTを取付ける取付治具2と、トランスミッションTの入力軸に連結装置3により連結される駆動モータ4と、取付治具2及び駆動モータ4を搭載する定盤5と、トランスミッションTの第1と第2の一対の出力軸Ta1,Ta2に夫々連結される図示省略した動力計とを備えている。尚、
図1で6は、動力計の軸を示している。
【0012】
取付治具2と定盤5との間には、弾性体たるV型のゴムマウント7が複数(例えば、4個)介設されている。
図4乃至
図5も参照して、更に、取付治具2をゴムマウント7を介して支持する複数(例えば、2個)の上ベース81と、上ベース81の下側で定盤5上に載置される下ベース82と、各上ベース81の所定の2箇所に夫々配置され下ベース82に対し上ベース82を上下方向に位置調整する上下調整機構たるジャッキボルト83とが設けられている。各ジャッキボルト83は、その下端が下ベース82の上面に当接するように上ベース81に螺挿されている。そして、ジャッキボルト83を回転させて、下ベース82に対し上ベース81を上下方向に位置調整し、ジャッキボルト83に螺合させたナット83aを締め付けてジャッキボルト83を所要の調整位置に固定するようにしている。
【0013】
各上ベース81は、下ベース82上に設けられた左右のブラケット84,84間に挟まれており、各ブラケット84に形成した上下方向に長手の長穴84aを通じて上ベース81に螺合するボルト85を設けて、長穴84aが各上ベース81を上下方向に位置調整する際のガイドとして機能し、更に、ボルト85により各上ベース81がブラケット84を介して下ベース82に固定されるようにしている。また、上ベース81とブラケット84との間及びブラケット84とボルト85の頭部との間には、凹状のリング86aと凸状のリング86bとから構成される球面座金86が夫々介設されており、リング86aの凹面とリング86bの凸面とが摺接して、上ベース81が傾いていても上ベース81を下ベース82に固定できるようにしている。
【0014】
また、台上試験機1には、下ベース82を水平方向に位置調整する複数(例えば、6個)の調整ねじ87が設けられている。各調整ねじ87は、その先端が下ベース82の側面に当接するように定盤5上に配置されている。そして、調整ねじ87を回転させて、下ベース82を水平方向に位置調整して、上ベース81を水平方向に位置調整するようにしている。
【0015】
ところで、トランスミッションTは、エンジンとともにゴムマウントを介して車体フレームに搭載される。そのため、実車ではトランスミッションTが弾性支持されることになり、トランスミッションTを試験する際もトランスミッションTの弾性支持状態を再現することが望まれる。そして、これを再現するために、定盤5の下にゴムマウントを設けることも可能である。然し、そのように再現したのでは、取付治具2を駆動モータ4と共に定盤5に固定することになり、駆動モータ4の振動が定盤5と取付治具2を介してトランスミッションTに伝わってしまい、ギアノイズ等の試験の測定精度に悪影響を与える虞がある。
【0016】
それに対し、本実施形態によれば、駆動モータ4の振動は定盤5を介してゴムマウント7に伝わるが、ゴムマウント7により振動が吸収される。そのため、駆動モータ4の振動が取付治具2を介してトランスミッションTに伝わることを防止できる。従って、駆動モータ4の振動がギアノイズ等の試験の測定精度に悪影響を与えることを防止できる。
【0017】
ここで、トランスミッションTの取付誤差やゴムマウント7の変形が生ずると、トランスミッションTが所定の試験姿勢とならず、トランスミッションTの入力軸が駆動モータ4の回転軸に対して芯ずれしてしまう。そして、この芯ずれによりトランスミッションTの過大な振動やトルクリップルを生ずることがある。
【0018】
本実施形態によれば、全てのジャッキボルト83により上ベース81を上下方向に位置調整すると、取付治具2が上下方向に位置調整され、トランスミッションTの高さが調整される。また、一部のジャッキボルト83により上ベース81の一部分を上下方向に位置調整すると、取付治具2の一部分が上下方向に位置調整され、トランスミッションTの傾きが調整される。そのため、ジャッキボルト83により上ベース81を上下方向に位置調整することで、トランスミッションTの姿勢を調整できる。その結果、トランスミッションTの過大な振動やトルクリップル等の試験結果への悪影響を無くすことができる。
【0019】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、V型のゴムマウント7を用いたが、丸型等他の形状を有するゴムマウントを用いてもよく、また、弾性体はゴムマウントに限定されない。
【符号の説明】
【0020】
T…トランスミッション、1…台上試験機、2…取付治具、4…駆動モータ、5…定盤、7…ゴムマウント(弾性体)、81…上ベース、82…下ベース、83…ジャッキボルト(上下調整機構)。