特許第6392623号(P6392623)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392623
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】路面状態判別システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20180910BHJP
   G08G 1/13 20060101ALI20180910BHJP
   G01W 1/00 20060101ALI20180910BHJP
   B60C 19/00 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   G08G1/00 J
   G08G1/13
   G01W1/00 J
   B60C19/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-205999(P2014-205999)
(22)【出願日】2014年10月6日
(65)【公開番号】特開2016-76085(P2016-76085A)
(43)【公開日】2016年5月12日
【審査請求日】2017年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100080296
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】花塚 泰史
【審査官】 白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/175567(WO,A1)
【文献】 特開2009−053153(JP,A)
【文献】 特開2010−097339(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
B60C 19/00
G01W 1/00
G08G 1/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ内に配置されて路面から前記タイヤに入力するタイヤ振動の時系列波形を検出する加速度センサと、前記時系列波形の情報を当該車両外部に送信する送信手段とを備えた複数台の車両と、
前記各車両の送信手段から送信され時系列波形の情報を蓄積するサーバーと、
前記蓄積された時系列波形の情報を用いて路面状態の判別を行う路面状態判別装置とを備えた路面状態判別システムであって、
前記時系列波形の情報が、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における前記複数台の車両からのタイヤ振動の時系列波形の情報であり、
前記路面状態判別装置は、
前記各車両から送られてきたタイヤ振動の時系列波形を用いて前記各車両の走行する路面の路面状態が予め設定された複数の路面状態のいずれであるかを推定する路面状態推定手段と、
前記推定された推定路面状態を前記複数の路面状態毎に集計した実統計マップを作成する統計データ作成手段と、
前記実統計マップにおける前記推定路面状態の出現割合を算出し、前記出現割合の最も大きい推定路面状態を、前記所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態であると判別する路面状態判別手段とを備える、ことを特徴とする路面状態判別システム。
【請求項2】
タイヤ内に配置されて路面から前記タイヤに入力するタイヤ振動の時系列波形を検出する加速度センサと、前記時系列波形を用いて当該車両の走行する路面の路面状態が予め設定された複数の路面状態のいずれであるかを推定する路面状態推定手段と、前記推定された路面状態である推定路面状態を当該車両外部に送信する送信手段とを備えた複数台の車両と、
前記各車両の送信手段から送信された前記推定路面状態を蓄積するサーバーと、
前記蓄積された各車両の推定路面状態を用いて、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態の判別を行う路面状態判別装置とを備えた路面状態判別システムであって、
前記推定路面状態が、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における前記複数台の車両からの推定路面状態であり、
前記路面状態判別装置は、
前記各車両から送られてきた前記所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における推定路面状態を前記予め設定された複数の路面状態毎に集計した実統計マップを作成する統計データ作成手段と、
前記実統計マップにおける前記推定路面状態の出現割合を算出し、前記出現割合の最も大きい推定路面状態を、前記所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態であると判別する路面状態判別手段とを備える、ことを特徴とする路面状態判別システム。
【請求項3】
前記統計データ作成手段では、前記所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における定路面状態を、タイヤ状態、車両走行状態、気象情報、道路情報、車種、及び、当該車両の推定確度のうちの少なくとも1つを用いて、重み付けすることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の路面状態判別システム。
【請求項4】
前記路面状態判別手段は、
試験車両を、前記予め設定された複数の路面状態の路面をそれぞれ多数回走行させて推定した時の推定路面状態を前記予め設定された複数の路面状態毎に集計して作成した、路面状態毎の基準マップを記憶する記憶部と、
前記実統計マップにおける出現割合と複数の路面状態毎の前記基準マップにおける推定路面状態の出現割合である基準出現割合とを用いて、前記所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態を判別する判別部とを備えることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の路面状態判別システム。
【請求項5】
前記基準マップを、天候毎に設けたことを特徴とする請求項4に記載の路面状態判別システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行中の路面の状態を判別するシステムに関するもので、特に、所定の時間内に同じ箇所を走行する複数台の車両の推定した路面状態のデータや車両情報を用いて、路面状態を判別する路面状態判別システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の走行安全性を高めるため、走行中の路面の状態を精度良く推定し、車両制御へフィードバックすることが求められている。走行中の路面の状態を推定することができれば、制駆動や操舵といった危険回避の操作を起こす前に、例えば、ABSブレーキのより高度な制御等が可能になり、安全性が一段と高まることが予想される。
【0003】
走行中の路面の状態を推定する方法としては、例えば、走行中のタイヤの振動を検出し、この検出されたタイヤの振動の時系列波形から路面状態を推定する方法(例えば、特許文献1〜3参照)や、タイヤから発生するタイヤ発生音を検出し、この検出されたタイヤ発生音の音圧レベルから路面状態を推定する方法(例えば、特許文献4参照)が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−35279号公報
【特許文献2】特開2011−242303号公報
【特許文献3】特開2003−182476号公報
【特許文献4】特開平8−261993号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来は、1台の車両の情報から走行中の路面状態を推定しているため、路面状態の判別精度が必ずしも十分とはいえなかった。
【0006】
本発明は、従来の問題点に鑑みてなされたもので、路面状態の判別精度を向上させることのできる路面状態判別システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、タイヤ内に配置されて路面から前記タイヤに入力するタイヤ振動の時系列波形を検出する加速度センサと、前記時系列波形の情報を当該車両外部に送信する送信手段とを備えた複数台の車両と、前記各車両の送信手段から送信され時系列波形の情報を蓄積するサーバーと、前記蓄積された時系列波形の情報を用いて路面状態の判別を行う路面状態判別装置とを備えた路面状態判別システムであって、前記時系列波形の情報が、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における前記複数台の車両からのタイヤ振動の時系列波形の情報であり、前記路面状態判別装置は、前記各車両から送られてきたタイヤ振動の時系列波形を用いて前記各車両の走行する路面の路面状態が予め設定された複数の路面状態のいずれであるかを推定する路面状態推定手段と、前記推定された推定路面状態を前記複数の路面状態毎に集計した実統計マップを作成する統計データ作成手段と、前記実統計マップにおける前記推定路面状態の出現割合を算出し、前記出現割合の最も大きい推定路面状態を、前記所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態であると判別する路面状態判別手段とを備える、ことを特徴とする。
このように、複数台の車両からの車両情報を用いて路面状態の判別を行うようにすれば、路面状態の判別精度を向上させることができる。
ここで、車両情報は、車載センサの検出値、前記検出値を演算した演算値、車速、車両IDなどを指す。
なお、「所定の時間」は、車両の走行する区間や走行している時刻に応じて、長く設定したり、短く設定したりするなど、変更可能である。
また、「所定の時間」を、所定の範囲内の場所を、予め設定された台数(例えば、5台)の車両が通過する時間としてもよい。この場合も、予め設定する車両の台数は、走行する区間や走行している時刻に応じて、変更可能とする。
【0008】
また、本発明は、タイヤ内に配置されて路面から前記タイヤに入力するタイヤ振動の時系列波形を検出する加速度センサと、前記時系列波形を用いて当該車両の走行する路面の路面状態が予め設定された複数の路面状態のいずれであるかを推定する路面状態推定手段と、前記推定された路面状態である推定路面状態を当該車両外部に送信する送信手段とを備えた複数台の車両と、前記各車両の送信手段から送信された前記推定路面状態を蓄積するサーバーと、前記蓄積された各車両の推定路面状態を用いて、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態の判別を行う路面状態判別装置とを備えた路面状態判別システムであって、前記推定路面状態が、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における前記複数台の車両からの推定路面状態であり、前記路面状態判別装置は、前記各車両から送られてきた前記所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における推定路面状態を前記予め設定された複数の路面状態毎に集計した実統計マップを作成する統計データ作成手段と、前記実統計マップにおける前記推定路面状態の出現割合を算出し、前記出現割合の最も大きい推定路面状態を、前記所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態であると判別する路面状態判別手段とを備える、ことを特徴とする。
このように、各車両に路面状態推定手段を設けて路面状態を推定し、この推定した各車両の路面状態を用いて前記所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態を判別するようにしても同様の効果を得ることができる。
【0011】
また、本発明は、前記統計データ作成手段にて、前記所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における定路面状態を、タイヤ状態、車両走行状態、気象情報、道路情報、車種、及び、当該車両の推定確度のうちの少なくとも1つを用いて、重み付けしたものである。
ここで、タイヤ状態とは、タイヤ内圧,摩耗量,荷重,タイヤ温度などを指し、車両走行状態とは、車両が加減速しているか否かを指す。また、気象情報としては、天候,気温,降雨量,風速,日照時間等があり、道路情報としては、地形情報,交通情報,除雪・融雪剤散布などの道路管理情報等がある。
このように、各車両の推定路面状態に対して重み付けを行えば、推定路面状態の出現割合の精度が向上するので、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態を更に精度よく判別することができる。
また、重み付けとして用いる情報としては、他の所定の範囲内の場所の路面状態の推定結果などがある。具体的には、過去の条件(天候、交通量、路面状態の推定結果)において、所定の範囲内の場所Aと相関がある他の所定の範囲内の場所Bの路面状態の推定結果を用いて、所定の範囲内の場所Aでの推定結果を補正することができる。
また、本発明は、前記路面状態判別手段が、試験車両を、前記予め設定された複数の路面状態の路面をそれぞれ多数回走行させて推定した時の推定路面状態を前記予め設定された複数の路面状態毎に集計して作成した、路面状態毎の基準マップを記憶する記憶部と、前記実統計マップにおける出現割合と複数の路面状態毎の前記基準マップにおける推定路面状態の出現割合である基準出現割合とを用いて、前記所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態を判別する判別部とを備えることを特徴とする。
また、本発明は、前記基準マップを、天候毎に設けたことを特徴とする。

【0012】
なお、前記発明の概要は、本発明の必要な全ての特徴を列挙したものではなく、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となり得る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施の形態1に係る路面状態判別システムの構成を示す図である。
図2】加速度センサの配置例を示す図である。
図3】路面状態推定手段の一例と特徴ベクトルの算出方法を示す図である。
図4】サーバーのデータ記憶手段に分類・保存されるデータを示す図である。
図5】推定路面状態の分布を示す図である。
図6】本実施の形態1に係る路面状態の判別方法を示すフローチャートである。
図7】本実施の形態2に係る路面状態判別システムの構成を示す図である。
図8】路面状態毎の基準マップの一例を示す図である。
図9】天候毎に作成した路面状態毎の基準マップの一例を示す図である。
図10】天候毎に作成した路面状態毎の基準マップを用いた判別方法の一例を示す図である。
図11】天候モデルを用いた判別方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態1に係る路面状態判別システム1の構成を示す機能ブロック図で、W1〜WNは車両で、各車両Wk(k=1〜N)は、車載センサとしての加速度センサ11,圧力センサ12、及び、車輪速センサ13と、GPS装置14と、Web情報取得手段15と 路面状態推定手段16と、車両情報収集手段17と、送信機18と、受信機19とを備える。
20は受信機21と、データ記憶手段22と、送信機23とを備えたサーバーで、30は所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面の状態を判別する路面状態判別装置である。
サーバー20と路面状態判別装置30とは、路面状態管理センター2に設けられる。
路面状態推定手段16、車両情報収集手段17、及び、路面状態判別装置30は、例えば、コンピュータのソフトウェアにより構成される。
加速度センサ11は、図2に示すように、タイヤ40のインナーライナー部41のタイヤ気室42側のほぼ中央部に配置されて、路面からタイヤ40のトレッド43に入力する振動(タイヤ振動)を検出し、圧力センサ12は、リム44に設置されて、タイヤ気室42内の圧力であるタイヤ内圧を計測する。また、車輪速センサ13は、車軸の回転角度を検出して車輪の回転速度を算出する。車輪速センサ13としては、周知の電磁誘導型の車輪速センサなどを用いることができる。
【0015】
GPS装置14は、図示しないGPSアンテナと受信機とを備え、当該車両Wkの位置データを取得するとともに、車両の位置データから当該車両の走行速度を算出する。なお、本例では、後述するように、車両情報として、車輪速センサ13で算出した車輪の回転速度を用いている。
Web情報取得手段15は、図外のインターネットに接続して、天候,気温,降雨量,風速,日照時間などの気象情報(車外情報)を取得する。また、Web情報取得手段15は、必要に応じて、地形情報,交通情報,道路管理情報などの道路情報などを取得することができる。道路管理情報としては、除雪や融雪剤散布などが挙げられる。
なお、Web情報取得手段15をサーバー20に設け、サーバー20にて気象情報や道路情報を取得するようにしてもよい。
路面状態推定手段16は、加速度センサ11で検出したタイヤ振動の時系列波形を用いて、走行中の路面が、DRY路面,WET路面,SNOW路面,ICE路面のいずれかであるかを推定する。このような路面状態推定手段16としては、例えば、図3(a)に示すような、加速度センサ11からタイヤ振動の時系列波形を抽出する振動波形抽出手段161と、窓掛け手段162と、特徴ベクトル算出手段163と、4つの路面モデルを記憶する記憶手段164と、カーネル関数算出手段165と、路面状態判別手段166とを備え、図3(b)に示すような、タイヤ振動の時系列波形に所定の時間幅Tの窓関数をかけて抽出した時間窓毎の時系列波形から、それぞれ複数の特定周波数帯域の振動レベル(ak1〜akm)を成分とした特徴ベクトルXk(ak1,ak2,……,akm)を算出し、これらの特徴ベクトルと予め求めておいた路面状態毎の特徴ベクトルとからカーネル関数を算出し、このカーネル関数を用いた識別関数の値から路面状態がDRY路面,WET路面,SNOW路面,ICE路面のいずれかであるかを推定する構成の路面状態推定装置などが挙げられる。なお、路面特徴ベクトルは、試験車両をDRY路面,WET路面,SNOW路面,ICE路面上でそれぞれ走行させたときの複数の特定周波数帯域の振動レベルを成分とした特徴ベクトルである。
なお、路面状態推定手段16はタイヤ40内に設けてもよいし、車体側に設けてもよい。車体側に設ける場合には、タイヤ40側から加速度センサーで検出した加速度波形のデータを車体側に送るのではなく、タイヤ40側に演算装置を設けて、路面状態の推定に用いる帯域値(加速度波形から検出される特定周波数帯域の振動レベル)、もしくは、帯域値の演算値を算出し、これを路面状態推定手段16に送る構成とすることが好ましい。
【0016】
車両情報収集手段17は、路面状態推定手段16で推定された路面状態(以下、推定路面状態という)と、圧力センサ12で計測したタイヤ内圧と、車輪速センサ13で算出した車輪速と、GPS装置14で取得した車両の位置データと、Web情報取得手段15で取得した気象情報とを収集して、当該車両を識別するための車両IDとともに、当該車両の車両情報として、送信機18に送る。車両情報には、車両IDと車両情報の取得時刻のデータ(時刻データ)も含まれる。なお、時刻データとしては、加速度の時系列波形の抽出時刻、位置データの取得時刻あるいは、データ送信時刻などを用いればよい。これらの時刻は、ほぼ同時刻なので、どの時刻を時刻データとしても問題はない。
送信機18は、前記車両情報を、車両情報収集手段17により収集された、推定路面状態,タイヤ内圧,車輪速,車両の位置データ,気象情報、及び、当該車両を識別するための車両IDとともに、図示しない送信アンテナから、路面状態管理センター2のサーバー20に送信する。
受信機19は、路面状態管理センター2の路面状態判別装置30で判別され、サーバー20の送信機から送信された所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態のデータを受信する。なお、この受信された路面状態のデータを車内に設けられたモニター上に表示することで、運転者は前記所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態を知ることができる。
【0017】
サーバー20は、各車両Wk(k=1〜N)から送られてくる推定路面状態のデータと車両情報とを受信機21で受信し、これらのデータを、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における推定路面状態のデータと車両情報とに分類して、データ記憶手段22に保存するとともに、送信機23から、路面状態判別装置30で判別された所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態のデータを登録車両に送信する。
各車両Wkの推定路面状態のデータと車両情報は、データ記憶手段22に分類・保存される。具体的には、図4に示すように、データ記憶手段22の記憶領域22aには、所定の場所Paにおいて、複数の車両W(a)j(j=1〜na)で取得されたデータが保存され、領域22bには、所定の場所Pbにおいて複数の車両W(b)j(j=1〜nb)で取得されたデータが保存される。ここで、na+nb+……=Nである。
ここで、所定の時間は、例えば、予め設定された判別時刻を含む1分〜5分の範囲を指し、所定の範囲とは、例えば、予め設定された道路地図上の場所を含む範囲を指す。路面状態の予測は場所毎に行うが、以下では、場所Paにおける路面状態を予測する場合について説明するので、場所Paを通過する車両をWj(j=1〜n)とするなど、場所Paを示す添字を省略する。
また、所定の範囲の指定は、例えば、図4に示す、ナビゲーション用の道路地図上の所定の大きさ枠のグリットを用いれば、各車両Wkとサーバー20とで位置の整合性を取り易いので好ましい。
また、登録車両は、前記の路面状態推定手段16を搭載した車両Wkだけではなく、サーバー20と通信により接続されている車両も含まれる。
【0018】
路面状態判別装置30は、統計データ作成手段31と、路面状態判別手段32とを備え、部前記分類された車両情報を用いて、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態の判別を行う。
統計データ作成手段31は、各車両Wj(j=1〜n)から送られてくる、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所におけるn個の推定路面状態のデータに、当該車両の車両情報に基づく重み付けを行った後、DRY路面と推定した車両数,WET路面と推定した車両数,SNOW路面と推定した車両数,及び、ICE路面と推定した車両数をそれぞれカウントし、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における推定路面状態の出現割合を、推定路面状態R(R;DRY路面,WET路面,SNOW路面,ICE路面)毎に集計したマップ(ここでは、分布図)を作成する。なお、1台の車両が、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所において複数のデータを送ってくる場合には、別車両からのデータとして処理する。この場合、車両数は「のべ車両数」となる。なお、データが同一車両のデータであるか否かは車両IDにより区別できる。
すなわち、1台の車両Wjから送られてくる推定路面状態のデータは、通常であれば、1個とカウントするが、統計データ作成手段31では、車両情報により各推定路面状態のデータの重み付けを行い、各データをwk個(0≦wk≦1)とカウントする。以下、このwkを車両確度という。具体的には、車両Wkの推定した推定路面状態がDRY路面であり、車両確度wkが0.7である場合には、DRY路面のデータ数が0.7個であるとカウントする。
あるいは、1台の車両Wkのカウント数を1個に固定し、DRY路面のデータ数を0.7個、WET路面のデータ数を0.2個、SNOW路面のデータ数を0.1個、ICE路面のデータ数を0個とするなど、1個のカウント数を、各路面状態に振り分けるようにしてもよい。
【0019】
車両確度wkとしては、タイヤ内圧による確度wkpや走行状態による確度wktを用いることができる。例えば、タイヤ内圧が所定の圧力であれば、wkp=1とし、所定圧力よりも低い場合にはwkp=0.7などとすればよい。また、車両Wkが一定速度で走行中であればwkt=1とし、加速もしくは減速状態にある(車輪速が変化している場合)にはwkt=0.8とする。また、タイヤ内圧と走行状態の両方で重み付けする場合には、車両確度wkを、確度wkpと確度wktとの積とすればよい。すなわち、複数の車両情報により重み付けする場合には、車両確度wkを複数の確度wktの積、もしくは、複数の確度wkの演算式とすればよい。
確度wkpや確度wktは、タイヤ内圧を変えた試験車両を各路面にて一定速度で多数回走行させたり、標準タイヤを装着した試験車両を加減速させて得られた推定路面状態のデータから求められる。
なお、これらの重み付けを、Web情報取得手段15で取得した気象情報により変更してもよい。気象情報としては、天候,気温,降雨量,風速,日照時間などの情報のいずれか一つまたは複数を用いることができる。例えば、天候の場合には、天候が晴れで推定路面状態がDRY路面ならば確度wkh=1、天候が曇りで推定路面状態がDRY路面ならば確度wkh=0.7、天候が雨で推定路面状態がDRY路面ならば確度wkh=0.1などとすればよい。上記のように、wkh=0.7なら、DRY路面のデータ数を0.7個とカウントする。
あるいは、天候が曇りで推定路面状態がDRY路面ならば、DRY路面のデータ数を0.7個、WET路面のデータ数を0.2個、SNOW路面とICE路面のデータ数をそれぞれ0.05個とするなど、1個のカウント数を、各路面状態に振り分けるようにしてもよい。
また、Web情報取得手段15で、地形情報や交通情報、あるいは、除雪や融雪剤散布などの道路管理情報を取得し、これらの情報により重み付けを変更してもよい。
図5(a),(b)は統計データである実統計マップの一例を示す図で、(a)図は重み付けを行う前の実統計マップMであり、マップの横軸は推定路面状態、縦軸は推定路面状態の出現割合である。路面状態Rの出現割合SRは、SR=(推定路面状態Rのカウント数)/(総カウント数)により算出される。また、(b)図は重み付け後の実統計マップMWで、出現割合SRWは、SRW=(重み付け後の推定路面状態Rのカウント数)/(総カウント数)により算出される。
図5(a),(b)から明らかなように、(b)図の重み付け後の実統計マップMWの方が、(a)図の実統計マップMに比較して、推定路面状態の出現割合の差が大きい。
【0020】
路面状態判別手段32は、図5(b)の重み付け後の実統計マップMWを用いて、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態がDRY路面,WET路面,SNOW路面,ICE路面の内のいずれの路面状態であるかを判別する。具体的には、実統計マップMWの内の出現割合SRWが最も高い推定路面状態R(ここでは、WET路面)を、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態である、と判別する。
なお、図5(a)でも、路面状態の判別は可能であるが、重み付けを行ったほうが、判別精度は向上する。
この路面状態の判別を、予め設定された時刻毎に、予め設定された複数の箇所を含む領域毎に行えば、道路地図上における各時刻における路面状態を精度よく推定することができる。
【0021】
次に、路面状態判別システム1の動作について、図6のフローチャートを参照して説明する。
まず、各車両Wk(k=1〜N)にて、推定路面状態、タイヤ内圧、車輪速、及び、車両位置などの車両情報と、気象情報のデータなどの車外情報を取得し(ステップS10)、これらの情報を、車両ID及び取得時刻のデータとともに、路面状態管理センター2のサーバー20に送信する(ステップS11)。
次に、サーバー20にて、推定路面状態のデータ及び車両情報を、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所毎に分類して保存(ステップS12)する。そして、統計データ作成手段31にて、各車両Wj(j=1〜n)から送られてくる、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所におけるn個の推定路面状態のデータに、当該車両の車両情報に基づく重み付けを行った(ステップS13)後、DRY路面と推定した車両数,WET路面と推定した車両数,SNOW路面と推定した車両数,及び、ICE路面と推定した車両数をカウントした統計データを作成する(ステップS14)。
ステップS15では、ステップS14で重み付け後の統計データの内の出現割合SRWが最も高い推定路面状態Rを、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態である、と判別する(ステップS15)。
最後に、判別した路面状態の情報を、登録車両に送信する。
なお、別の場所の路面状態の判別を行う場合には、ステップS13に戻って、別の箇所の路面状態の判別を続行する。
【0022】
このように、実施の形態1では、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所を走行している複数台の車両Wjにそれぞれ設けられた加速度センサ11により検出した走行中のタイヤの振動の時系列波形の情報から、所定の範囲内の場所の路面状態をそれぞれ推定するとともに、これらの推定された路面状態のデータである推定路面状態を蓄積し、この蓄積された複数の推定路面状態のデータから、前記所定の範囲内の場所の路面状態を判別するようにしたので、路面状態の判別精度を向上させることができる。
【0023】
なお、前記実施の形態1では、推定路面状態の統計データを、DRY路面,WET路面,SNOW路面,ICE路面の4つの状態に分類したが、滑りやすい路面であるSNOW路面とICE路面とをまとめて危険路面とし、この危険路面の発生確率を判別してもよい。
また、前記実施の形態1では、圧力センサ12で検出したタイヤ内圧、あるいは、車輪速センサ13で計測した車輪速により検出された走行状態により、推定路面状態のデータに重み付けを行ったが、車両に、走行中のタイヤの温度を測定する温度センサなどの他の車載センサを設け、タイヤ温度などの車両情報を取得し、この取得された車両情報を用いて重み付けを行ってもよい。
また、荷重やタイヤの摩耗状態を検出して重み付けを行ってもよいし、車載センサからの車両情報ではなく、車種や、以下に述べる車両による重み付けを行ってもよい。
車両による重み付けとは、各車両で推定した推定路面状態の推定確度により重み付けすることをいう。推定路面状態の推定確度は、各車両毎に、推定路面状態の推定結果が路面状態の判別結果と一致しているか否かを判定したデータを集積することて求めることができる。すなわち、車両Wkの推定確度wkwは、wkw=(車両Wkで推定した路面状態の推定結果が路面状態の判別結果と一致した回数)/(車両Wkの推定路面状態の推定回数)により求めることができる。
したがって、サーバー20に、当該車両Wkの車両IDと推定確度wkwとを予め記憶しておけば、統計データ作成手段31における推定路面状態の出現割合の算出に、車両Wkの推定確度wkwを用いることができる。なお、車両Wkの推定確度wkwは、車両Wkにおける推定路面状態の推定回数が所定回数(例えば、50回)以上になってから用いる方が、精度上好ましい。
【0024】
実施の形態2.
前記実施の形態1では、推定路面状態の出現割合から路面状態を判別したが、路面状態の出現割合を予め求めておき、この出現割合のマップ(以下、基準マップという)と実際に収集した推定路面状態の統計データ(以下、実統計マップという)とから、路面状態を判別するようにすれば、路面状態の判別精度を更に向上させることができる。
図7は、本実施の形態2に係る路面状態判別システム3の構成を示す機能ブロック図で、路面状態判別システム3は、加速度センサ11、圧力センサ12、車輪速センサ13、GPS装置14、Web情報取得手段15 路面状態推定手段16、車両情報収集手段17、送信機18、及び、受信機19を備えた複数の車両Wk(k=1〜N)と、路面状態管理センター2に設けられるサーバー20及び路面状態判別装置30Pとを備える。
以下に、路面状態判別装置30Pについて説明する。なお、車両Wk、及び、サーバー20の構成及び動作については、前記実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0025】
路面状態判別装置30Pは、統計データ作成手段31Pと、路面状態判別手段32Pとを備え、サーバー20に分類されて記憶された車両情報を用いて、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態が、DRY路面,WET路面,SNOW路面,ICE路面のいずれであるかを判別する。
統計データ作成手段31Pは、所定の範囲内の場所を通過する各車両Wj(j=1〜n)から送られてくるn個の推定路面状態のデータを用いて、DRY路面と推定した車両数,WET路面と推定した車両数,SNOW路面と推定した車両数,及び、ICE路面と推定した車両数をカウントした統計データ(図5(a)に示した、重み付けを行う前の統計データ)である実統計マップMを作成する。
【0026】
路面状態判別手段32Pは、記憶部35と判別部36とを備える。
記憶部35は、図8(a)〜(d)に示すような、路面状態毎の基準マップMD0,MW0,MS0,MI0を保存する。
基準マップMD0は、標準タイヤを装着した試験車両をDRY路面にて一定速度で多数回走行させて得られた推定路面状態の統計データで、DRY路面を走行したときに、路面がDRY路面であると推定した割合PDD0と、路面がWET路面であると推定される割合PDW0と、路面がSNOW路面であると推定される割合PDS0と、路面がICE路面であると推定される割合PDI0とをマップ化したものである。
また、基準マップMW0は、試験車両がWET路面を走行したときに、路面がDRY路面であると推定した割合PWD0と、路面がWET路面であると推定される割合PWW0と、路面がSNOW路面であると推定される割合PWS0と、路面がICE路面であると推定される割合PWI0とをマップ化したもので、基準マップMS0は、試験車両がSNOW路面を走行したときに、路面がDRY路面であると推定した割合PSD0、路面がWET路面であると推定される割合PSW0、路面がSNOW路面であると推定される割合PSS0、路面がICE路面であると推定される割合PSI0をマップ化したものである。
また、基準マップMI0は、試験車両がICE路面を走行したときに、路面がDRY路面であると推定した割合PID0、路面がWET路面であると推定される割合PIW0、路面がSNOW路面であると推定される割合PIS0、路面がICE路面であると推定される割合PII0をマップ化したものである。
当然のことながら、基準マップMD0では割合PDD0が最も高く、基準マップMW0では割合PWW0が最も高く、基準マップMS0では割合PSS0が最も高く、基準マップMI0では割合PII0が最も高い。
以下、前記の割合PRR’0を基準出現割合という。ここで、R,R’は、D,W,S,Iのうちのいずれかを指す。
【0027】
判別部36では、図8(a)〜(d)に示した路面毎の基準マップMD0〜MI0と、図5(b)に示した実統計マップMとから、路面状態を判別するための判定値KR(R;DRY,WET,SNOW,ICE)をそれぞれ算出し、これら算出された4つの判定値KD〜KIに基づいて、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態が、DRY路面,WET路面,SNOW路面,ICE路面のいずれかであるかを判別する。
DRY判定値KDは、実統計マップMにおける各推定路面の出現割合SR=(推定路面状態Rのカウント数)/(総カウント数)と、上述した、基準マップMD0における基準出現割合PDD0,PDW0,PDS0,PDI0とを用いて、以下の式(1)により算出される。
D=|SD−PDD0|+|SD−PDW0|+|SD−PDS0|+|SD−PDI0| …(1)
ここで、|SD−PDR0|は、SDとPDR0(R;DRY,WET,SNOW,ICE)との差の絶対値で、KDは差の絶対値の和である。
同様に、WET判定値KW、SNOW判定値KS、ICE判定値Kは、それぞれ、以下の式(2)〜(4)により算出される。
W=|SW−PWD0|+|SW−PWW0|+|SW−PWS0|+|SW−PWI0| …(2)
S=|SS−PSD0|+|SS−PSW0|+|SS−PSS0|+|SS−PSI0| …(3)
I=|SI−PID0|+|SI−PIW0|+|SI−PIS0|+|SI−PII0| …(4)
そして、4個の判定値KD〜KIの大きさを比較し、値が最も小さな判定値KRに対応する路面状態を、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態である、と判別する。例えば、KD=0.15,KW=0.35、KS=0.9、K=0.95であれば、路面がDRY路面である、と判別し、KD=0.7,KW=0.3、KS=K=0.9であれば、路面はWET路面である、と判別する。
【0028】
このように、本実施の形態2では、各車両Wk(k=1〜n)から送られてくるn個の推定路面状態のデータを用いて、DRY路面と推定した車両数,WET路面と推定した車両数,SNOW路面と推定した車両数,及び、ICE路面と推定した車両数をカウントした統計データである実統計マップMを作成するとともに、この実統計マップMにおける各推定路面の出現割合SR(R;DRY,WET,SNOW,ICE)と、予め作成しておいた路面状態毎の基準マップMR0における基準出現割合PRD0,PRW0,PRS0,PRI0とを用いて、路面状態を判別するための判定値KRをそれぞれ算出し、これら算出された判定値KD〜KIに基づいて、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態が、DRY路面,WET路面,SNOW路面,ICE路面のいずれかであるかを判別するようにしたので、路面状態の判別精度を更に向上させることができる。
【0029】
前記実施の形態2では、実統計マップMにおける推定路面状態の出現割合SD,SW,SS,SIと、基準マップMR0における基準出現割合PRD0,PRW0,PRS0,PRI0との差の絶対値の和を用いて判定値KD〜KIを求めたが、差の二乗和や二乗和の平方根を判定値KD〜KIとしてもよい。あるいは、差の絶対値の逆数などの、差から求められる演算値を用いてもよい。差の絶対値の逆数から求めた判定値kD〜kIで路面状態を判別する場合には、値が最も大きな判定値kRに対応する路面状態を、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態である、と判別することはいうまでもない。
【0030】
実施の形態3.
前記実施の形態2においては、各車両が走行している時刻及び場所の天候を考慮していなかったが、図9に示すように、予め、各路面状態における基準マップを天候毎に作成しておき、これらの基準マップと実統計マップMとから、路面状態を判別するための判定値KR(R;DRY,WET,SNOW,ICE)をそれぞれ算出し、これら算出された4つの判定値KD〜KIに基づいて、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態が、DRY路面,WET路面,SNOW路面,ICE路面のいずれかであるかを判別すれば、路面状態の判別精度を更に向上させることができる。
具体的には、天候を「1;晴れ」、「2;曇り」、「3;雨」、「4;雪」の4つに分類し、各天候m(m=1〜4)において試験車両が路面状態がRの路面を走行したときに、路面状態がDRYであると推定した割合PRDmと、路面がWET路面であると推定される割合PRWmと、路面がSNOW路面であると推定される割合PRSmと、路面がICE路面であると推定される割合PRImとをマップ化した、天候mにおける基準マップMRmを作成する。この場合、基準マップMRmの数は16枚となる。
【0031】
路面状態判別手段32Pでは、所定の範囲内の場所を各車両WkのWeb情報取得手段15で取得し、サーバー20に送信された時刻(車両Wkが路面状態を推定している時刻)における天候状態に対応する基準マップMRmを取出して実統計マップMと比較して路面状態を判別するための判定値KR(R;DRY,WET,SNOW,ICE)を算出する。
例えば、天候が「曇り」の場合のDRY判定値KDは、図10に示すように、実統計マップMにおける各推定路面の出現割合SRと、上述した、曇り状態の基準マップMD2における基準出現割合PDD2,PDW2,PDS2,PDI2とを用いて、以下の式(5)により算出される。
D=|SD−PDD2|+|SD−PDW2|+|SD−PDS2|+|SD−PDI2| …(5)
同様に、WET判定値KW、SNOW判定値KS、ICE判定値Kは、それぞれ、以下の式(6)〜(8)により算出する。
W=|SW−PWD2|+|SW−PWW2|+|SW−PWS2|+|SW−PWI2| …(6)
S=|SS−PSD2|+|SS−PSW2|+|SS−PSS2|+|SS−PSI2| …(7)
I=|SI−PID2|+|SI−PIW2|+|SI−PIS2|+|SI−PII2| …(8)
また、天候が「晴れ」の場合のDRY判定値KDは、実統計マップMにおける各推定路面の出現割合SRと、晴れ状態の基準マップMD1における基準出現割合PDD1,PDW1,PDS1,PDI1とを用いて、以下の式(9)により算出される。
D=|SD−PDD1|+|SD−PDW1|+|SD−PDS1|+|SD−PDI1| …(9)
天候が「晴れ」の場合のWET判定値KW、SNOW判定値KS、ICE判定値KIの算出方法も、天候が「曇り」の場合と同様である。
また、天候が「雨」及び「雪」の場合のDRY判定値KD、WET判定値KW、SNOW判定値KS、ICE判定値KIについても上記と同様に算出すればよい。
そして、前記実施の形態2と同様に、4個の判定値KD〜KIの大きさを比較し、値が最も小さな判定値KRに対応する路面状態を、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態である、と判別すれば、天候状態を考慮に入れた路面判別を行うことができるので、路面状態の判別精度を更に向上させることができる。
【0032】
なお、前記実施の形態3は、実統計マップMにおける各推定路面の出現割合SRと、各天候状態の基準マップMRmにおける基準出現割合PRR’m(R,R’;DRY,WET,SNOW,ICE、m=1〜4)との差の絶対値の和(Σ|SR−PRR’m|)を用いて判定値KRを求めたが、差の二乗和、もしくは、差の平均二乗和などの差から求められる他の演算値を用いてもよい。
また、図11に示すような、各天候m(m=1〜4)における各路面状態Rの出現割合PRmををマップ化した、天候モデルMmを作成し、実統計マップMにおける推定路面の出現割合SRと、基準マップMR0における基準出現割合PRR’mとの差の絶対値の和、もしくは、差の二乗和である差の演算値を求めた後、この差の演算値の逆数ZRと、天候モデルMmにおける各路面状態Rの出現割合PRmとの積を求めて、これを新たな判定値FD〜FIとし、これらの判定値FD〜FIを用いて路面状態を判別してもよい。ここで、FD=ZD・PDm、FW=ZW・PWm、FS=ZS・PSm、FI=ZI・PImである。
この場合には、判定値FD〜FIが最も大きな路面状態を所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態であると判別する。
このように、実統計マップMにおける推定路面の出現割合SD,SW,SS,SIと、基準マップMR0における基準出現割合PRD0,PRW0,PRS0,PRI0との差の演算値の逆数に、各天候モデルMmにおける各路面状態Rの出現割合PDm,Pwm,PSm,PImでそれぞれ重み付けしたものを判定値FD〜FIとして路面状態を判別しても、天候状態を考慮に入れた路面判別を行うことができる。
【0033】
また、前記実施の形態3では、各車両が走行している時刻及び場所の天候の情報により判定値KRを変更したが、判定値KRを車両情報により変更してもよい。
車両情報としては、車両ID,車種,タイヤ種,タイヤ内圧,タイヤ温度,荷重などが挙げられる。なお、車両IDの情報とは、前述した各車両で推定した推定路面状態の推定確度の情報を指す。
判定値KRを車両情報により変更する方法としては、前記実施の形態3と同様に、予め、各路面状態における基準マップを車両情報毎に作成しておき、これらの基準マップMRn(nは特定の車両情報を指す)と実統計マップMとから、路面状態を判別するための判定値KR(R;DRY,WET,SNOW,ICE)をそれぞれ算出し、これら算出された4つの判定値KD〜KIに基づいて、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態が、DRY路面,WET路面,SNOW路面,ICE路面のいずれかであるかを判別する方法と、実統計マップMにおける推定路面の出現割合SD,SW,SS,SIと、路面状態毎の基準マップMR0における基準出現割合PRD0,PRW0,PRS0,PRI0との差の絶対値の和、もしくは、差の二乗和である差の演算値を求めた後、この差の演算値の逆数と、車両情報毎の基準マップMnにおける基準出現割合PDn,PWn,PSn,PInとの積を求めて、これらの積を新たな判定値FD〜FIとし、判定値FD〜FIを用いて路面状態を判別する方法のいずれを用いてもよい。
【0034】
また、判定値KRを各車両が走行している時刻及び場所の天候の情報と車両情報の両方により変更すれば、路面状態の判別精度を更に向上させることができる。
この場合には、予め各路面状態における基準マップを天候及車両情報毎に作成しておき、これらの基準マップMRmn(mは天候、nは特定の車両情報を指す)と実統計マップMとから、路面状態を判別するための判別値KR(R;DRY,WET,SNOW,ICE)をそれぞれ算出し、これら算出された4つの判定値KD〜KIに基づいて、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態が、DRY路面,WET路面,SNOW路面,ICE路面のいずれかであるかを判別する。
あるいは、実統計マップMにおける推定路面の出現割合SD,SW,SS,SIと、車両情報毎の基準マップMRnにおける基準出現割合PRDn,PRWn,PRSn,PRInとの差の絶対値の和、もしくは、差の二乗和である差の演算値を求めた後、この差の演算の逆数と、天候mにおける基準マップMmにおける基準出現割合PDm,PWm,PSm,PImとの積を求めて、これらの積を新たな判定値FD〜FIとし、判定値FD〜FIが最も大きい路面状態を所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態である、と判別する。
あるいは、実統計マップMにおける推定路面の出現割合SD,SW,SS,SIと、天候mにおける基準マップMRmにおける基準出現割合PRDm,PRWm,PRSm,PRImとの差の絶対値の和、もしくは、差の二乗和である差の演算値を求めた後、この差の演算の逆数と、車両情報毎の基準マップMnにおける基準出現割合PDn,PWn,PSn,PInとの積を求めて、これらの積を新たな判定値FD〜FIとし、判定値FD〜FIが最も大きい路面状態を所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態である、と判別してもよい。
または、実統計マップMにおける推定路面の出現割合SD,SW,SS,SIと、基準マップMR0における基準出現割合PRD0,PRW0,PRS0,PRI0との差の絶対値の和KR、もしくは、差の二乗和である差の演算値を求めた後、この差の演算の逆数と、天候mにおける基準マップMmにおける基準出現割合PDm,PWm,PSm,PImとの積を求め、更に、この積と、車両情報毎の基準マップMnにおける基準出現割合PDn,PWn,PSn,PInとの積を求めて、これらの積を新たな判定値FD〜FIとし、判定値FD〜FIが最も大きい路面状態を所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態である、と判別してもよい。
【0035】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【0036】
例えば、前記実施の形態1〜3では、路面状態推定手段16として、カーネル関数を用いた識別関数の値から路面状態がDRY路面,WET路面,SNOW路面,ICE路面のいずれであるかを推定する構成の路面状態推定装置を用いたが、加速度センサ11で検出した加速度の時系列波形を周波数分析して得られた振動スペクトルの振動レベルと、予め求めておいた路面摩擦係数μと振動レベルとの関係を示すG−テーブルとを比較して、路面摩擦係数μを推定する構成の路面状態推定装置や、タイヤもしくはリムに取付けられた加速度センサの時系列波形から路面状態を推定する構成の路面状態推定装置など、他の構成の路面状態推定手段を用いてもよい。
あるいは、走行中のタイヤから発生するタイヤ発生音を検出し、この検出されたタイヤ発生音の設定周波数範囲内の音圧レベルの平均値と基準音圧レベルと比較することにより、路面がかなり濡れたアスファルト路か、やや濡れたアスファルト路か、乾いたアスファルト路か、もしくは、氷路かを推定する構成の路面状態推定手段を用いてもよい。
また、本発明は、推定路面状態の統計データを、DRY路面,WET路面,SNOW路面,ICE路面の4つの状態について求めることに限定されるものではなく、路面摩擦係数μによりに分けたり、「高μ路(μ≧0.7)」、「中μ路(0.3<μ<0.7)」、「低μ路(μ≦0.3)」などに分けてもよい。
【0037】
また、前記実施の形態1〜3では、路面状態推定手段16を車両Wk毎に設けたが、路面状態推定手段16を路面状態管理センター2に設け、車両Wkからは、路面状態の推定に用いる複数の帯域値(加速度波形から検出される特定周波数帯域の振動レベル)、もしくは、帯域値の演算値を路面状態管理センター2に送る構成としてもよい。
これにより、タイヤ40内に路面状態推定手段16を設けた場合に比較して、タイヤ40から送信するデータ量が少なくてすむので、送信機やタイヤ内発電装置を小型化できる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上説明したように、本発明によれば、前記所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態を精度よく判別することができるので、この判別結果を、所定の範囲内の場所を走行する車両に通知するなどすれば、車両の走行安全性を向上させることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 路面状態判別システム、2 路面状態管理センター、
11 加速度センサ、12 圧力センサ、13 車輪速センサ、14 GPS装置、
15 Web情報取得手段、16 路面状態推定手段、17 車両情報収集手段、
18 送信機、19 受信機、20 サーバー、21 受信機、22 データ記憶手段、
23 送信機、30,30P 路面状態判別装置、31,31P 統計データ作成手段、
32,32P 路面状態判別手段、35 記憶部、36 判別部、
40 タイヤ、41 インナーライナー部、42 タイヤ気室、43 トレッド、
44 リム、W1〜Wn 車両。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11