(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態1に係る路面状態判別システム1の構成を示す機能ブロック図で、W
1〜W
Nは車両で、各車両W
k(k=1〜N)は、車載センサとしての加速度センサ11,圧力センサ12、及び、車輪速センサ13と、GPS装置14と、Web情報取得手段15と 路面状態推定手段16と、車両情報収集手段17と、送信機18と、受信機19とを備える。
20は受信機21と、データ記憶手段22と、送信機23とを備えたサーバーで、30は所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面の状態を判別する路面状態判別装置である。
サーバー20と路面状態判別装置30とは、路面状態管理センター2に設けられる。
路面状態推定手段16、車両情報収集手段17、及び、路面状態判別装置30は、例えば、コンピュータのソフトウェアにより構成される。
加速度センサ11は、
図2に示すように、タイヤ40のインナーライナー部41のタイヤ気室42側のほぼ中央部に配置されて、路面からタイヤ40のトレッド43に入力する振動(タイヤ振動)を検出し、圧力センサ12は、リム44に設置されて、タイヤ気室42内の圧力であるタイヤ内圧を計測する。また、車輪速センサ13は、車軸の回転角度を検出して車輪の回転速度を算出する。車輪速センサ13としては、周知の電磁誘導型の車輪速センサなどを用いることができる。
【0015】
GPS装置14は、図示しないGPSアンテナと受信機とを備え、当該車両W
kの位置データを取得するとともに、車両の位置データから当該車両の走行速度を算出する。なお、本例では、後述するように、車両情報として、車輪速センサ13で算出した車輪の回転速度を用いている。
Web情報取得手段15は、図外のインターネットに接続して、天候,気温,降雨量,風速,日照時間などの気象情報(車外情報)を取得する。また、Web情報取得手段15は、必要に応じて、地形情報,交通情報,道路管理情報などの道路情報などを取得することができる。道路管理情報としては、除雪や融雪剤散布などが挙げられる。
なお、Web情報取得手段15をサーバー20に設け、サーバー20にて気象情報や道路情報を取得するようにしてもよい。
路面状態推定手段16は、加速度センサ11で検出したタイヤ振動の時系列波形を用いて、走行中の路面が、DRY路面,WET路面,SNOW路面,ICE路面のいずれかであるかを推定する。このような路面状態推定手段16としては、例えば、
図3(a)に示すような、加速度センサ11からタイヤ振動の時系列波形を抽出する振動波形抽出手段161と、窓掛け手段162と、特徴ベクトル算出手段163と、4つの路面モデルを記憶する記憶手段164と、カーネル関数算出手段165と、路面状態判別手段166とを備え、
図3(b)に示すような、タイヤ振動の時系列波形に所定の時間幅Tの窓関数をかけて抽出した時間窓毎の時系列波形から、それぞれ複数の特定周波数帯域の振動レベル(a
k1〜a
km)を成分とした特徴ベクトルX
k(a
k1,a
k2,……,a
km)を算出し、これらの特徴ベクトルと予め求めておいた路面状態毎の特徴ベクトルとからカーネル関数を算出し、このカーネル関数を用いた識別関数の値から路面状態がDRY路面,WET路面,SNOW路面,ICE路面のいずれかであるかを推定する構成の路面状態推定装置などが挙げられる。なお、路面特徴ベクトルは、試験車両をDRY路面,WET路面,SNOW路面,ICE路面上でそれぞれ走行させたときの複数の特定周波数帯域の振動レベルを成分とした特徴ベクトルである。
なお、路面状態推定手段16はタイヤ40内に設けてもよいし、車体側に設けてもよい。車体側に設ける場合には、タイヤ40側から加速度センサーで検出した加速度波形のデータを車体側に送るのではなく、タイヤ40側に演算装置を設けて、路面状態の推定に用いる帯域値(加速度波形から検出される特定周波数帯域の振動レベル)、もしくは、帯域値の演算値を算出し、これを路面状態推定手段16に送る構成とすることが好ましい。
【0016】
車両情報収集手段17は、路面状態推定手段16で推定された路面状態(以下、推定路面状態という)と、圧力センサ12で計測したタイヤ内圧と、車輪速センサ13で算出した車輪速と、GPS装置14で取得した車両の位置データと、Web情報取得手段15で取得した気象情報とを収集して、当該車両を識別するための車両IDとともに、当該車両の車両情報として、送信機18に送る。車両情報には、車両IDと車両情報の取得時刻のデータ(時刻データ)も含まれる。なお、時刻データとしては、加速度の時系列波形の抽出時刻、位置データの取得時刻あるいは、データ送信時刻などを用いればよい。これらの時刻は、ほぼ同時刻なので、どの時刻を時刻データとしても問題はない。
送信機18は、前記車両情報を、車両情報収集手段17により収集された、推定路面状態,タイヤ内圧,車輪速,車両の位置データ,気象情報、及び、当該車両を識別するための車両IDとともに、図示しない送信アンテナから、路面状態管理センター2のサーバー20に送信する。
受信機19は、路面状態管理センター2の路面状態判別装置30で判別され、サーバー20の送信機から送信された所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態のデータを受信する。なお、この受信された路面状態のデータを車内に設けられたモニター上に表示することで、運転者は前記所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態を知ることができる。
【0017】
サーバー20は、各車両W
k(k=1〜N)から送られてくる推定路面状態のデータと車両情報とを受信機21で受信し、これらのデータを、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における推定路面状態のデータと車両情報とに分類して、データ記憶手段22に保存するとともに、送信機23から、路面状態判別装置30で判別された所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態のデータを登録車両に送信する。
各車両W
kの推定路面状態のデータと車両情報は、データ記憶手段22に分類・保存される。具体的には、
図4に示すように、データ記憶手段22の記憶領域22aには、所定の場所P
aにおいて、複数の車両W(a)
j(j=1〜na)で取得されたデータが保存され、領域22bには、所定の場所P
bにおいて複数の車両W(b)
j(j=1〜nb)で取得されたデータが保存される。ここで、na+nb+……=Nである。
ここで、所定の時間は、例えば、予め設定された判別時刻を含む1分〜5分の範囲を指し、所定の範囲とは、例えば、予め設定された道路地図上の場所を含む範囲を指す。路面状態の予測は場所毎に行うが、以下では、場所P
aにおける路面状態を予測する場合について説明するので、場所P
aを通過する車両をW
j(j=1〜n)とするなど、場所P
aを示す添字を省略する。
また、所定の範囲の指定は、例えば、
図4に示す、ナビゲーション用の道路地図上の所定の大きさ枠のグリットを用いれば、各車両W
kとサーバー20とで位置の整合性を取り易いので好ましい。
また、登録車両は、前記の路面状態推定手段16を搭載した車両W
kだけではなく、サーバー20と通信により接続されている車両も含まれる。
【0018】
路面状態判別装置30は、統計データ作成手段31と、路面状態判別手段32とを備え、部前記分類された車両情報を用いて、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態の判別を行う。
統計データ作成手段31は、各車両W
j(j=1〜n)から送られてくる、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所におけるn個の推定路面状態のデータに、当該車両の車両情報に基づく重み付けを行った後、DRY路面と推定した車両数,WET路面と推定した車両数,SNOW路面と推定した車両数,及び、ICE路面と推定した車両数をそれぞれカウントし、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における推定路面状態の出現割合を、推定路面状態R(R;DRY路面,WET路面,SNOW路面,ICE路面)毎に集計したマップ(ここでは、分布図)を作成する。なお、1台の車両が、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所において複数のデータを送ってくる場合には、別車両からのデータとして処理する。この場合、車両数は「のべ車両数」となる。なお、データが同一車両のデータであるか否かは車両IDにより区別できる。
すなわち、1台の車両W
jから送られてくる推定路面状態のデータは、通常であれば、1個とカウントするが、統計データ作成手段31では、車両情報により各推定路面状態のデータの重み付けを行い、各データをw
k個(0≦w
k≦1)とカウントする。以下、このw
kを車両確度という。具体的には、車両W
kの推定した推定路面状態がDRY路面であり、車両確度w
kが0.7である場合には、DRY路面のデータ数が0.7個であるとカウントする。
あるいは、1台の車両W
kのカウント数を1個に固定し、DRY路面のデータ数を0.7個、WET路面のデータ数を0.2個、SNOW路面のデータ数を0.1個、ICE路面のデータ数を0個とするなど、1個のカウント数を、各路面状態に振り分けるようにしてもよい。
【0019】
車両確度w
kとしては、タイヤ内圧による確度w
kpや走行状態による確度w
ktを用いることができる。例えば、タイヤ内圧が所定の圧力であれば、w
kp=1とし、所定圧力よりも低い場合にはw
kp=0.7などとすればよい。また、車両W
kが一定速度で走行中であればw
kt=1とし、加速もしくは減速状態にある(車輪速が変化している場合)にはw
kt=0.8とする。また、タイヤ内圧と走行状態の両方で重み付けする場合には、車両確度w
kを、確度w
kpと確度w
ktとの積とすればよい。すなわち、複数の車両情報により重み付けする場合には、車両確度w
kを複数の確度w
ktの積、もしくは、複数の確度w
kの演算式とすればよい。
確度w
kpや確度w
ktは、タイヤ内圧を変えた試験車両を各路面にて一定速度で多数回走行させたり、標準タイヤを装着した試験車両を加減速させて得られた推定路面状態のデータから求められる。
なお、これらの重み付けを、Web情報取得手段15で取得した気象情報により変更してもよい。気象情報としては、天候,気温,降雨量,風速,日照時間などの情報のいずれか一つまたは複数を用いることができる。例えば、天候の場合には、天候が晴れで推定路面状態がDRY路面ならば確度w
kh=1、天候が曇りで推定路面状態がDRY路面ならば確度w
kh=0.7、天候が雨で推定路面状態がDRY路面ならば確度w
kh=0.1などとすればよい。上記のように、w
kh=0.7なら、DRY路面のデータ数を0.7個とカウントする。
あるいは、天候が曇りで推定路面状態がDRY路面ならば、DRY路面のデータ数を0.7個、WET路面のデータ数を0.2個、SNOW路面とICE路面のデータ数をそれぞれ0.05個とするなど、1個のカウント数を、各路面状態に振り分けるようにしてもよい。
また、Web情報取得手段15で、地形情報や交通情報、あるいは、除雪や融雪剤散布などの道路管理情報を取得し、これらの情報により重み付けを変更してもよい。
図5(a),(b)は統計データである実統計マップの一例を示す図で、(a)図は重み付けを行う前の実統計マップMであり、マップの横軸は推定路面状態、縦軸は推定路面状態の出現割合である。路面状態Rの出現割合S
Rは、S
R=(推定路面状態Rのカウント数)/(総カウント数)により算出される。また、(b)図は重み付け後の実統計マップM
Wで、出現割合S
RWは、S
RW=(重み付け後の推定路面状態Rのカウント数)/(総カウント数)により算出される。
図5(a),(b)から明らかなように、(b)図の重み付け後の実統計マップM
Wの方が、(a)図の実統計マップMに比較して、推定路面状態の出現割合の差が大きい。
【0020】
路面状態判別手段32は、
図5(b)の重み付け後の実統計マップM
Wを用いて、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態がDRY路面,WET路面,SNOW路面,ICE路面の内のいずれの路面状態であるかを判別する。具体的には、実統計マップM
Wの内の出現割合S
RWが最も高い推定路面状態R(ここでは、WET路面)を、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態である、と判別する。
なお、
図5(a)でも、路面状態の判別は可能であるが、重み付けを行ったほうが、判別精度は向上する。
この路面状態の判別を、予め設定された時刻毎に、予め設定された複数の箇所を含む領域毎に行えば、道路地図上における各時刻における路面状態を精度よく推定することができる。
【0021】
次に、路面状態判別システム1の動作について、
図6のフローチャートを参照して説明する。
まず、各車両W
k(k=1〜N)にて、推定路面状態、タイヤ内圧、車輪速、及び、車両位置などの車両情報と、気象情報のデータなどの車外情報を取得し(ステップS10)、これらの情報を、車両ID及び取得時刻のデータとともに、路面状態管理センター2のサーバー20に送信する(ステップS11)。
次に、サーバー20にて、推定路面状態のデータ及び車両情報を、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所毎に分類して保存(ステップS12)する。そして、統計データ作成手段31にて、各車両W
j(j=1〜n)から送られてくる、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所におけるn個の推定路面状態のデータに、当該車両の車両情報に基づく重み付けを行った(ステップS13)後、DRY路面と推定した車両数,WET路面と推定した車両数,SNOW路面と推定した車両数,及び、ICE路面と推定した車両数をカウントした統計データを作成する(ステップS14)。
ステップS15では、ステップS14で重み付け後の統計データの内の出現割合S
RWが最も高い推定路面状態Rを、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態である、と判別する(ステップS15)。
最後に、判別した路面状態の情報を、登録車両に送信する。
なお、別の場所の路面状態の判別を行う場合には、ステップS13に戻って、別の箇所の路面状態の判別を続行する。
【0022】
このように、実施の形態1では、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所を走行している複数台の車両W
jにそれぞれ設けられた加速度センサ11により検出した走行中のタイヤの振動の時系列波形の情報から、所定の範囲内の場所の路面状態をそれぞれ推定するとともに、これらの推定された路面状態のデータである推定路面状態を蓄積し、この蓄積された複数の推定路面状態のデータから、前記所定の範囲内の場所の路面状態を判別するようにしたので、路面状態の判別精度を向上させることができる。
【0023】
なお、前記実施の形態1では、推定路面状態の統計データを、DRY路面,WET路面,SNOW路面,ICE路面の4つの状態に分類したが、滑りやすい路面であるSNOW路面とICE路面とをまとめて危険路面とし、この危険路面の発生確率を判別してもよい。
また、前記実施の形態1では、圧力センサ12で検出したタイヤ内圧、あるいは、車輪速センサ13で計測した車輪速により検出された走行状態により、推定路面状態のデータに重み付けを行ったが、車両に、走行中のタイヤの温度を測定する温度センサなどの他の車載センサを設け、タイヤ温度などの車両情報を取得し、この取得された車両情報を用いて重み付けを行ってもよい。
また、荷重やタイヤの摩耗状態を検出して重み付けを行ってもよいし、車載センサからの車両情報ではなく、車種や、以下に述べる車両による重み付けを行ってもよい。
車両による重み付けとは、各車両で推定した推定路面状態の推定確度により重み付けすることをいう。推定路面状態の推定確度は、各車両毎に、推定路面状態の推定結果が路面状態の判別結果と一致しているか否かを判定したデータを集積することて求めることができる。すなわち、車両W
kの推定確度w
kwは、w
kw=(車両W
kで推定した路面状態の推定結果が路面状態の判別結果と一致した回数)/(車両W
kの推定路面状態の推定回数)により求めることができる。
したがって、サーバー20に、当該車両W
kの車両IDと推定確度w
kwとを予め記憶しておけば、統計データ作成手段31における推定路面状態の出現割合の算出に、車両W
kの推定確度w
kwを用いることができる。なお、車両W
kの推定確度w
kwは、車両W
kにおける推定路面状態の推定回数が所定回数(例えば、50回)以上になってから用いる方が、精度上好ましい。
【0024】
実施の形態2.
前記実施の形態1では、推定路面状態の出現割合から路面状態を判別したが、路面状態の出現割合を予め求めておき、この出現割合のマップ(以下、基準マップという)と実際に収集した推定路面状態の統計データ(以下、実統計マップという)とから、路面状態を判別するようにすれば、路面状態の判別精度を更に向上させることができる。
図7は、本実施の形態2に係る路面状態判別システム3の構成を示す機能ブロック図で、路面状態判別システム3は、加速度センサ11、圧力センサ12、車輪速センサ13、GPS装置14、Web情報取得手段15 路面状態推定手段16、車両情報収集手段17、送信機18、及び、受信機19を備えた複数の車両W
k(k=1〜N)と、路面状態管理センター2に設けられるサーバー20及び路面状態判別装置30Pとを備える。
以下に、路面状態判別装置30Pについて説明する。なお、車両W
k、及び、サーバー20の構成及び動作については、前記実施の形態1と同様であるので、説明を省略する。
【0025】
路面状態判別装置30Pは、統計データ作成手段31Pと、路面状態判別手段32Pとを備え、サーバー20に分類されて記憶された車両情報を用いて、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態が、DRY路面,WET路面,SNOW路面,ICE路面のいずれであるかを判別する。
統計データ作成手段31Pは、所定の範囲内の場所を通過する各車両W
j(j=1〜n)から送られてくるn個の推定路面状態のデータを用いて、DRY路面と推定した車両数,WET路面と推定した車両数,SNOW路面と推定した車両数,及び、ICE路面と推定した車両数をカウントした統計データ(
図5(a)に示した、重み付けを行う前の統計データ)である実統計マップMを作成する。
【0026】
路面状態判別手段32Pは、記憶部35と判別部36とを備える。
記憶部35は、
図8(a)〜(d)に示すような、路面状態毎の基準マップM
D0,M
W0,M
S0,M
I0を保存する。
基準マップM
D0は、標準タイヤを装着した試験車両をDRY路面にて一定速度で多数回走行させて得られた推定路面状態の統計データで、DRY路面を走行したときに、路面がDRY路面であると推定した割合P
DD0と、路面がWET路面であると推定される割合P
DW0と、路面がSNOW路面であると推定される割合P
DS0と、路面がICE路面であると推定される割合P
DI0とをマップ化したものである。
また、基準マップM
W0は、試験車両がWET路面を走行したときに、路面がDRY路面であると推定した割合P
WD0と、路面がWET路面であると推定される割合P
WW0と、路面がSNOW路面であると推定される割合P
WS0と、路面がICE路面であると推定される割合P
WI0とをマップ化したもので、基準マップM
S0は、試験車両がSNOW路面を走行したときに、路面がDRY路面であると推定した割合P
SD0、路面がWET路面であると推定される割合P
SW0、路面がSNOW路面であると推定される割合P
SS0、路面がICE路面であると推定される割合P
SI0をマップ化したものである。
また、基準マップM
I0は、試験車両がICE路面を走行したときに、路面がDRY路面であると推定した割合P
ID0、路面がWET路面であると推定される割合P
IW0、路面がSNOW路面であると推定される割合P
IS0、路面がICE路面であると推定される割合P
II0をマップ化したものである。
当然のことながら、基準マップM
D0では割合P
DD0が最も高く、基準マップM
W0では割合P
WW0が最も高く、基準マップM
S0では割合P
SS0が最も高く、基準マップM
I0では割合P
II0が最も高い。
以下、前記の割合P
RR’0を基準出現割合という。ここで、R,R’は、D,W,S,Iのうちのいずれかを指す。
【0027】
判別部36では、
図8(a)〜(d)に示した路面毎の基準マップM
D0〜M
I0と、
図5(b)に示した実統計マップMとから、路面状態を判別するための判定値K
R(R;DRY,WET,SNOW,ICE)をそれぞれ算出し、これら算出された4つの判定値K
D〜K
Iに基づいて、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態が、DRY路面,WET路面,SNOW路面,ICE路面のいずれかであるかを判別する。
DRY判定値K
Dは、実統計マップMにおける各推定路面の出現割合S
R=(推定路面状態Rのカウント数)/(総カウント数)と、上述した、基準マップM
D0における基準出現割合P
DD0,P
DW0,P
DS0,P
DI0とを用いて、以下の式(1)により算出される。
K
D=|S
D−P
DD0|+|S
D−P
DW0|+|S
D−P
DS0|+|S
D−P
DI0| …(1)
ここで、|S
D−P
DR0|は、S
DとP
DR0(R;DRY,WET,SNOW,ICE)との差の絶対値で、K
Dは差の絶対値の和である。
同様に、WET判定値K
W、SNOW判定値K
S、ICE判定値K
Iは、それぞれ、以下の式(2)〜(4)により算出される。
K
W=|S
W−P
WD0|+|S
W−P
WW0|+|S
W−P
WS0|+|S
W−P
WI0| …(2)
K
S=|S
S−P
SD0|+|S
S−P
SW0|+|S
S−P
SS0|+|S
S−P
SI0| …(3)
K
I=|S
I−P
ID0|+|S
I−P
IW0|+|S
I−P
IS0|+|S
I−P
II0| …(4)
そして、4個の判定値K
D〜K
Iの大きさを比較し、値が最も小さな判定値K
Rに対応する路面状態を、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態である、と判別する。例えば、K
D=0.15,K
W=0.35、K
S=0.9、K
I=0.95であれば、路面がDRY路面である、と判別し、K
D=0.7,K
W=0.3、K
S=K
I=0.9であれば、路面はWET路面である、と判別する。
【0028】
このように、本実施の形態2では、各車両W
k(k=1〜n)から送られてくるn個の推定路面状態のデータを用いて、DRY路面と推定した車両数,WET路面と推定した車両数,SNOW路面と推定した車両数,及び、ICE路面と推定した車両数をカウントした統計データである実統計マップMを作成するとともに、この実統計マップMにおける各推定路面の出現割合S
R(R;DRY,WET,SNOW,ICE)と、予め作成しておいた路面状態毎の基準マップM
R0における基準出現割合P
RD0,P
RW0,P
RS0,P
RI0とを用いて、路面状態を判別するための判定値K
Rをそれぞれ算出し、これら算出された判定値K
D〜K
Iに基づいて、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態が、DRY路面,WET路面,SNOW路面,ICE路面のいずれかであるかを判別するようにしたので、路面状態の判別精度を更に向上させることができる。
【0029】
前記実施の形態2では、実統計マップMにおける推定路面状態の出現割合S
D,S
W,S
S,S
Iと、基準マップM
R0における基準出現割合P
RD0,P
RW0,P
RS0,P
RI0との差の絶対値の和を用いて判定値K
D〜K
Iを求めたが、差の二乗和や二乗和の平方根を判定値K
D〜K
Iとしてもよい。あるいは、差の絶対値の逆数などの、差から求められる演算値を用いてもよい。差の絶対値の逆数から求めた判定値k
D〜k
Iで路面状態を判別する場合には、値が最も大きな判定値k
Rに対応する路面状態を、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態である、と判別することはいうまでもない。
【0030】
実施の形態3.
前記実施の形態2においては、各車両が走行している時刻及び場所の天候を考慮していなかったが、
図9に示すように、予め、各路面状態における基準マップを天候毎に作成しておき、これらの基準マップと実統計マップMとから、路面状態を判別するための判定値K
R(R;DRY,WET,SNOW,ICE)をそれぞれ算出し、これら算出された4つの判定値K
D〜K
Iに基づいて、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態が、DRY路面,WET路面,SNOW路面,ICE路面のいずれかであるかを判別すれば、路面状態の判別精度を更に向上させることができる。
具体的には、天候を「1;晴れ」、「2;曇り」、「3;雨」、「4;雪」の4つに分類し、各天候m(m=1〜4)において試験車両が路面状態がRの路面を走行したときに、路面状態がDRYであると推定した割合P
RDmと、路面がWET路面であると推定される割合P
RWmと、路面がSNOW路面であると推定される割合P
RSmと、路面がICE路面であると推定される割合P
RImとをマップ化した、天候mにおける基準マップM
Rmを作成する。この場合、基準マップM
Rmの数は16枚となる。
【0031】
路面状態判別手段32Pでは、所定の範囲内の場所を各車両W
kのWeb情報取得手段15で取得し、サーバー20に送信された時刻(車両W
kが路面状態を推定している時刻)における天候状態に対応する基準マップM
Rmを取出して実統計マップMと比較して路面状態を判別するための判定値K
R(R;DRY,WET,SNOW,ICE)を算出する。
例えば、天候が「曇り」の場合のDRY判定値K
Dは、
図10に示すように、実統計マップMにおける各推定路面の出現割合S
Rと、上述した、曇り状態の基準マップM
D2における基準出現割合P
DD2,P
DW2,P
DS2,P
DI2とを用いて、以下の式(5)により算出される。
K
D=|S
D−P
DD2|+|S
D−P
DW2|+|S
D−P
DS2|+|S
D−P
DI2| …(5)
同様に、WET判定値K
W、SNOW判定値K
S、ICE判定値K
Iは、それぞれ、以下の式(6)〜(8)により算出する。
K
W=|S
W−P
WD2|+|S
W−P
WW2|+|S
W−P
WS2|+|S
W−P
WI2| …(6)
K
S=|S
S−P
SD2|+|S
S−P
SW2|+|S
S−P
SS2|+|S
S−P
SI2| …(7)
K
I=|S
I−P
ID2|+|S
I−P
IW2|+|S
I−P
IS2|+|S
I−P
II2| …(8)
また、天候が「晴れ」の場合のDRY判定値K
Dは、実統計マップMにおける各推定路面の出現割合S
Rと、晴れ状態の基準マップM
D1における基準出現割合P
DD1,P
DW1,P
DS1,P
DI1とを用いて、以下の式(9)により算出される。
K
D=|S
D−P
DD1|+|S
D−P
DW1|+|S
D−P
DS1|+|S
D−P
DI1| …(9)
天候が「晴れ」の場合のWET判定値K
W、SNOW判定値K
S、ICE判定値K
Iの算出方法も、天候が「曇り」の場合と同様である。
また、天候が「雨」及び「雪」の場合のDRY判定値K
D、WET判定値K
W、SNOW判定値K
S、ICE判定値K
Iについても上記と同様に算出すればよい。
そして、前記実施の形態2と同様に、4個の判定値K
D〜K
Iの大きさを比較し、値が最も小さな判定値K
Rに対応する路面状態を、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態である、と判別すれば、天候状態を考慮に入れた路面判別を行うことができるので、路面状態の判別精度を更に向上させることができる。
【0032】
なお、前記実施の形態3は、実統計マップMにおける各推定路面の出現割合S
Rと、各天候状態の基準マップM
Rmにおける基準出現割合P
RR’m(R,R’;DRY,WET,SNOW,ICE、m=1〜4)との差の絶対値の和(Σ|S
R−P
RR’m|)を用いて判定値K
Rを求めたが、差の二乗和、もしくは、差の平均二乗和などの差から求められる他の演算値を用いてもよい。
また、
図11に示すような、各天候m(m=1〜4)における各路面状態Rの出現割合P
Rmををマップ化した、天候モデルM
mを作成し、実統計マップMにおける推定路面の出現割合S
Rと、基準マップM
R0における基準出現割合P
RR’mとの差の絶対値の和、もしくは、差の二乗和である差の演算値を求めた後、この差の演算値の逆数Z
Rと、天候モデルM
mにおける各路面状態Rの出現割合P
Rmとの積を求めて、これを新たな判定値F
D〜F
Iとし、これらの判定値F
D〜F
Iを用いて路面状態を判別してもよい。ここで、F
D=Z
D・P
Dm、F
W=Z
W・P
Wm、F
S=Z
S・P
Sm、F
I=Z
I・P
Imである。
この場合には、判定値F
D〜F
Iが最も大きな路面状態を所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態であると判別する。
このように、実統計マップMにおける推定路面の出現割合S
D,S
W,S
S,S
Iと、基準マップM
R0における基準出現割合P
RD0,P
RW0,P
RS0,P
RI0との差の演算値の逆数に、各天候モデルM
mにおける各路面状態Rの出現割合P
Dm,P
wm,P
Sm,P
Imでそれぞれ重み付けしたものを判定値F
D〜F
Iとして路面状態を判別しても、天候状態を考慮に入れた路面判別を行うことができる。
【0033】
また、前記実施の形態3では、各車両が走行している時刻及び場所の天候の情報により判定値K
Rを変更したが、判定値K
Rを車両情報により変更してもよい。
車両情報としては、車両ID,車種,タイヤ種,タイヤ内圧,タイヤ温度,荷重などが挙げられる。なお、車両IDの情報とは、前述した各車両で推定した推定路面状態の推定確度の情報を指す。
判定値K
Rを車両情報により変更する方法としては、前記実施の形態3と同様に、予め、各路面状態における基準マップを車両情報毎に作成しておき、これらの基準マップM
Rn(nは特定の車両情報を指す)と実統計マップMとから、路面状態を判別するための判定値K
R(R;DRY,WET,SNOW,ICE)をそれぞれ算出し、これら算出された4つの判定値K
D〜K
Iに基づいて、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態が、DRY路面,WET路面,SNOW路面,ICE路面のいずれかであるかを判別する方法と、実統計マップMにおける推定路面の出現割合S
D,S
W,S
S,S
Iと、路面状態毎の基準マップM
R0における基準出現割合P
RD0,P
RW0,P
RS0,P
RI0との差の絶対値の和、もしくは、差の二乗和である差の演算値を求めた後、この差の演算値の逆数と、車両情報毎の基準マップM
nにおける基準出現割合P
Dn,P
Wn,P
Sn,P
Inとの積を求めて、これらの積を新たな判定値F
D〜F
Iとし、判定値F
D〜F
Iを用いて路面状態を判別する方法のいずれを用いてもよい。
【0034】
また、判定値K
Rを各車両が走行している時刻及び場所の天候の情報と車両情報の両方により変更すれば、路面状態の判別精度を更に向上させることができる。
この場合には、予め各路面状態における基準マップを天候及車両情報毎に作成しておき、これらの基準マップM
Rmn(mは天候、nは特定の車両情報を指す)と実統計マップMとから、路面状態を判別するための判別値K
R(R;DRY,WET,SNOW,ICE)をそれぞれ算出し、これら算出された4つの判定値K
D〜K
Iに基づいて、所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態が、DRY路面,WET路面,SNOW路面,ICE路面のいずれかであるかを判別する。
あるいは、実統計マップMにおける推定路面の出現割合S
D,S
W,S
S,S
Iと、車両情報毎の基準マップM
Rnにおける基準出現割合P
RDn,P
RWn,P
RSn,P
RInとの差の絶対値の和、もしくは、差の二乗和である差の演算値を求めた後、この差の演算の逆数と、天候mにおける基準マップM
mにおける基準出現割合P
Dm,P
Wm,P
Sm,P
Imとの積を求めて、これらの積を新たな判定値F
D〜F
Iとし、判定値F
D〜F
Iが最も大きい路面状態を所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態である、と判別する。
あるいは、実統計マップMにおける推定路面の出現割合S
D,S
W,S
S,S
Iと、天候mにおける基準マップM
Rmにおける基準出現割合P
RDm,P
RWm,P
RSm,P
RImとの差の絶対値の和、もしくは、差の二乗和である差の演算値を求めた後、この差の演算の逆数と、車両情報毎の基準マップM
nにおける基準出現割合P
Dn,P
Wn,P
Sn,P
Inとの積を求めて、これらの積を新たな判定値F
D〜F
Iとし、判定値F
D〜F
Iが最も大きい路面状態を所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態である、と判別してもよい。
または、実統計マップMにおける推定路面の出現割合S
D,S
W,S
S,S
Iと、基準マップM
R0における基準出現割合P
RD0,P
RW0,P
RS0,P
RI0との差の絶対値の和K
R、もしくは、差の二乗和である差の演算値を求めた後、この差の演算の逆数と、天候mにおける基準マップM
mにおける基準出現割合P
Dm,P
Wm,P
Sm,P
Imとの積を求め、更に、この積と、車両情報毎の基準マップM
nにおける基準出現割合P
Dn,P
Wn,P
Sn,P
Inとの積を求めて、これらの積を新たな判定値F
D〜F
Iとし、判定値F
D〜F
Iが最も大きい路面状態を所定の時間内かつ所定の範囲内の場所における路面状態である、と判別してもよい。
【0035】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に記載の範囲には限定されない。前記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者にも明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲から明らかである。
【0036】
例えば、前記実施の形態1〜3では、路面状態推定手段16として、カーネル関数を用いた識別関数の値から路面状態がDRY路面,WET路面,SNOW路面,ICE路面のいずれであるかを推定する構成の路面状態推定装置を用いたが、加速度センサ11で検出した加速度の時系列波形を周波数分析して得られた振動スペクトルの振動レベルと、予め求めておいた路面摩擦係数μと振動レベルとの関係を示すG−テーブルとを比較して、路面摩擦係数μを推定する構成の路面状態推定装置や、タイヤもしくはリムに取付けられた加速度センサの時系列波形から路面状態を推定する構成の路面状態推定装置など、他の構成の路面状態推定手段を用いてもよい。
あるいは、走行中のタイヤから発生するタイヤ発生音を検出し、この検出されたタイヤ発生音の設定周波数範囲内の音圧レベルの平均値と基準音圧レベルと比較することにより、路面がかなり濡れたアスファルト路か、やや濡れたアスファルト路か、乾いたアスファルト路か、もしくは、氷路かを推定する構成の路面状態推定手段を用いてもよい。
また、本発明は、推定路面状態の統計データを、DRY路面,WET路面,SNOW路面,ICE路面の4つの状態について求めることに限定されるものではなく、路面摩擦係数μによりに分けたり、「高μ路(μ≧0.7)」、「中μ路(0.3<μ<0.7)」、「低μ路(μ≦0.3)」などに分けてもよい。
【0037】
また、前記実施の形態1〜3では、路面状態推定手段16を車両W
k毎に設けたが、路面状態推定手段16を路面状態管理センター2に設け、車両W
kからは、路面状態の推定に用いる複数の帯域値(加速度波形から検出される特定周波数帯域の振動レベル)、もしくは、帯域値の演算値を路面状態管理センター2に送る構成としてもよい。
これにより、タイヤ40内に路面状態推定手段16を設けた場合に比較して、タイヤ40から送信するデータ量が少なくてすむので、送信機やタイヤ内発電装置を小型化できる。