特許第6392632号(P6392632)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392632
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】整髪剤組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20180910BHJP
   A61Q 5/06 20060101ALI20180910BHJP
   A61K 8/86 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   A61K8/81
   A61Q5/06
   A61K8/86
【請求項の数】8
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2014-223917(P2014-223917)
(22)【出願日】2014年11月4日
(65)【公開番号】特開2016-88876(P2016-88876A)
(43)【公開日】2016年5月23日
【審査請求日】2017年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000166683
【氏名又は名称】互応化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】成澤 友里
【審査官】 進士 千尋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−316435(JP,A)
【文献】 特開2011−26304(JP,A)
【文献】 特開2011−251930(JP,A)
【文献】 特開2012−97160(JP,A)
【文献】 特開2012−107166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)及び(B)を含有し、成分(B)と成分(A)の質量比(B)/(A)が、0.03以上1以下である整髪剤組成物。
(A) モノマー(a-1)及びモノマー(a-2)を含有するモノマー成分を共重合して得られるポリマー
(a-1) 一般式(1)で表される(メタ)アクリレート系モノマー;35質量%以上50質量%以下
【化1】
〔式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は炭素数1〜8のアルキル基を示す。〕
(a-2) 一般式(2)で表されるエチレンオキシド基含有(メタ)アクリレート系モノマー;50質量%以上65質量%以下
【化2】
〔式中、R3は水素原子又はメチル基を示し、R4は炭素数1〜4のアルキル基を示し、pは20〜90の整数を示す。〕
(B) 次の(b-1)及び(b-2)からなる群より選ばれる1種又は2種以上
(b-1) (メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルと(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの共重合体
(b-2) (メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル及び(メタ)アクリル酸ジアルキルアミドの共重合体
【請求項2】
成分(A)の含有量が、0.1質量%以上3質量%以下である請求項1記載の整髪剤組成物。
【請求項3】
成分(B)の含有量が、0.05質量%以上3質量%以下である請求項1又は2記載の整髪剤組成物。
【請求項4】
成分(B)が(b-1)と(b-2)の双方を含む請求項1〜3のいずれかに記載の整髪剤組成物。
【請求項5】
(b-1)に対する(b-2)の質量比(b-2)/(b-1)が0.01以上10以下である請求項4記載の整髪剤組成物。
【請求項6】
更に成分(C)非イオン界面活性剤を含む請求項1〜5のいずれかに記載の整髪剤組成物。
【請求項7】
成分(C)がポリオキシアルキレン付加型非イオン界面活性剤である請求項1〜6のいずれかに記載の整髪剤組成物。
【請求項8】
更に水を含有する請求項1〜7のいずれかに記載の整髪剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整髪剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
整髪料の分野では、髪を望む形に固定し、維持するために様々な粘着性ポリマーや被膜を形成するセット用ポリマーが使われている。
【0003】
例えば、特許文献1では、炭素数4〜30のアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル型モノマーと、特定のポリオキシアルキレン基と(メタ)アクリル酸とのエステル型モノマーを構成モノマーとして含有し曇点を有するコポリマーが開示されている。このコポリマーを配合した整髪料は、疎水性の被膜を形成し、整髪力の持続性に優れることが記載されている。また、特許文献2では、毛髪容積を改善することができる整髪料として、ペンダントポリ(アルキレンオキシ)置換基を含むモノマー単位を含むポリマーを含有する整髪料が提案されている。このようなポリマーとして、実施例にはポリ(ノナエチレングリコールメチルエーテルアクリレート)ホモポリマーが開示されている。
【0004】
ところで、ヘアスタイルのセット保持力を高めたい場合、粘着性ポリマーや強固な被膜を形成するセット用ポリマーの配合量を増やし、ポリマーの粘着性やポリマー被膜の強度を高めるのが一般的である。一方で近年の整髪料では、髪を望む形に固定させ維持させると同時に、髪をごわつかせたりべたつかせたりせず、自然な感触に保つことが求められている。
【0005】
しかし、粘着性ポリマーを用いた場合は、セット保持力を高めようとするとべたつきが強く発現し、髪を自然な感触に保つことが困難になってしまうという問題があった。一方、強固な被膜を形成するポリマーを用いた場合は、べたつきは少ないものの、髪がごわつくことが多く自然な感触が得らないという問題や、一旦形成された被膜が破損されると髪型を維持できないという問題があった。
【0006】
これに対し、例えば、特許文献3では、べたつかず、さらさらした質感でスタイルを保持することに優れる整髪料として、アクリル酸ヒドロキシエチルとアクリル酸メトキシエチルとの共重合体と、多価アルコールとを特定の比率で配合した整髪料が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-316435号公報
【特許文献2】特表2009-503191号公報
【特許文献3】特開2011-251930号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
最近の調査により、近年では立体感やボリュームのあるヘアスタイルに求められるものが更に変化し、従来のように不自然な束感やツヤ感のある状態で毛髪の根元部分を立ち上げたり、単に毛束の容積を増大させたりしたヘアスタイルではなく、洗髪後の何も付けていないような自然でサラサラした感触でありながら、整髪時には適度な束感で髪を根元から立ち上げることができ、かつ整髪後には全体にふんわりとした丸みのあるヘアスタイルとすることができ、更には経時でもそのヘアスタイルが持続することが求められていることが分かってきた。
【0009】
しかしながら、特許文献1や2の整髪料では、仕上がり後の感触が良好となる程度にポリマー等の配合量を抑えた場合、十分なふんわりとした立体感、ボリュームを作ることができず、仮に一時的に根元を立ち上げることができたとしても、経時での持続性が不十分であった。また、十分な立体感、ボリュームを付与し、経時での良好な持続性を付与する場合、ポリマー等の配合量を増やさざるを得ず、整髪時に手移り感が強く、整髪後も束感が強く、また毛髪上にポリマーの被膜が存在しているような外観やべたつきの強い感触となり、自然でサラサラした仕上がり感とは言い難い。
【0010】
また、特許文献3の整髪料では、毛束全体に立体感やボリュームを出すことができても全体に丸みのあるスタイルを作ることができなかった。また、根元から十分に立ち上げることができるまでポリマーの配合量を増やした場合は、整髪時に手移り感が強く、整髪後には束感が強く、毛髪上にポリマーの被膜が存在しているような外観になり、髪のコシが強くなりすぎて、髪の感触がごわついてしまい、自然でサラサラした仕上がり感とは言い難い。また、特許文献3の整髪料も、仕上がり後の感触が良好となる程度にポリマー等の配合量を抑えた場合、十分なふんわりとした立体感、ボリュームを作ることができず、仮に一時的に根元を立ち上げることができたとしても、経時での持続性が不十分であるという問題があった。
【0011】
したがって、本発明は、整髪後に自然な外観、自然な手触りとなる程度のポリマーの配合量であっても、整髪時には適度な束感で根元から立ち上げることができ、整髪後にポリマー被膜が毛髪上に存在しないような自然な外観で、ふんわりとした立体感と丸みのあるスタイルを作ることができ、かつそのスタイルを経時で持続させることができる整髪剤組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、特定の(メタ)アクリレート系モノマーとエチレンオキシド基含有(メタ)アクリレート系モノマーとの共重合体と、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルモノマーと(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルモノマーを含む特定の共重合体は、それぞれ単独で整髪剤に使用した場合には毛髪上で粘着性を有しないにも拘わらず、これらを特定の比率で併用した場合には塗布時に毛髪上で粘着性を発現し、その一方で、整髪後には毛髪上で粘着性が無くなる被膜を形成し、上記要求を全て満たす整髪剤組成物が得られることを見出した。
【0013】
本発明は、次の成分(A)及び(B)を含有し、成分(B)と成分(A)の質量比(B)/(A)が、0.03以上1以下である整髪剤組成物を提供するものである。
(A) モノマー(a-1)及びモノマー(a-2)を含有するモノマー成分を共重合して得られるポリマー
(a-1) 一般式(1)で表される(メタ)アクリレート系モノマー;35質量%以上50質量%以下
【0014】
【化1】
【0015】
〔式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は炭素数1〜8のアルキル基を示す。〕
(a-2) 一般式(2)で表されるエチレンオキシド基含有(メタ)アクリレート系モノマー;50質量%以上65質量%以下
【0016】
【化2】
【0017】
〔式中、R3は水素原子又はメチル基を示し、R4は炭素数1〜4のアルキル基を示し、pは20〜90の整数を示す。〕
(B) 次の(b-1)及び(b-2)からなる群より選ばれる1種又は2種以上
(b-1) (メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルと(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの共重合体
(b-2) (メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル及び(メタ)アクリル酸ジアルキルアミドの共重合体
【発明の効果】
【0018】
本発明の整髪剤組成物は、整髪時には毛髪上で適度な粘着性を有し、毛髪を適度な束感で根元から立ち上げることができ、かつべたつかない。また、整髪後には毛髪上で粘着性が消え、毛束がばらけるので、ポリマー被膜が毛髪上に存在しないような自然な外観、自然な手触りとなる。また、整髪後には適度に硬い被膜となり、毛束がばらけるにも拘わらず髪の根元の立ち上がった、ふんわりとした立体感と丸みのあるスタイルを作ることができ、かつそのスタイルを経時で持続させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔成分(A):モノマー(a-1)及びモノマー(a-2)を共重合してなるポリマー〕
成分(A)は毛髪上で粘着性の無い被膜形成ポリマーであり、整髪性能に寄与する成分である。
本発明で使用されるモノマー(a-1)は、一般式(1)で表される(メタ)アクリレート系モノマーである。
【0020】
【化3】
【0021】
一般式(1)中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は炭素数1〜8のアルキル基を示す。アルキル基は、直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよく、具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基等の直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert-ブチル基、イソヘキシル基等の分岐鎖アルキル基が挙げられる。R2としては、毛髪の弾力性、キープ力、再整髪性の点から、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜4の直鎖又は分岐鎖のアルキル基が更に好ましい。具体的なモノマー(a-1)としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert-ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸イソブチル等が挙げられ、メタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸tert-ブチル、メタクリル酸イソブチルが好ましい。なお、モノマー(a-1)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0022】
本発明で使用されるモノマー(a-2)は、一般式(2)で表されるエチレンオキシド基含有(メタ)アクリレート系モノマーである。
【0023】
【化4】
【0024】
一般式(2)中、R3は水素原子又はメチル基を示し、R4は炭素数1〜4のアルキル基を示す。具体的なアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基等の直鎖アルキル基が挙げられ、特にメチル基が好ましい。pはエチレンオキシド基の付加モル数を表し、良好な毛髪のセット性、キープ力及び再整髪性を得る点から、20〜90の整数であり、好ましくは23〜90の整数である。具体的なモノマー(a-2)としては、アクリル酸メトキシPEG(23)、メタクリル酸メトキシPEG(23)、メタクリル酸メトキシPEG(45)、メタクリル酸メトキシPEG(90)等が挙げられる。モノマー(a-2)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができ、メタクリル酸メトキシPEG(23)が好ましい。モノマー(a-2)は、例えば、アクリル酸クロリド又はメタクリル酸クロリドとポリエチレングリコールメチルエーテルを反応させて得ることができる。
【0025】
本発明で使用される成分(A)のポリマーは、モノマー(a-1)及びモノマー(a-2)を含有するモノマー成分を共重合させて得られるノニオン性ポリマーである。モノマー成分中のモノマー(a-1)の含有量は、優れた毛髪のコンディショニング性、セット性、キープ力及び再整髪性を得る点から、モノマーの総量を基準として、35質量%以上、好ましくは38質量%以上であり、また、50質量%以下、好ましくは47質量%以下である。同様にモノマー成分中のモノマー(a-2)の含有量は、優れた毛髪のコンディショニング性、セット性、キープ力及び再整髪性を得る点から、モノマーの総量を基準として、50質量%以上、好ましくは53質量%以上であり、また、65質量%以下、好ましくは62質量%以下である。モノマー(a-1)及びモノマー(a-2)の含有量をこれらの範囲とすることにより、得られたポリマーを配合する本発明の整髪剤が優れた効果を発揮することが可能となる。モノマー(a-1)及びモノマー(a-2)以外のモノマーであっても、共重合が可能で、かつ本発明の効果を損なわない範囲であればモノマー成分中に適宜含有させても構わないが、本発明では、モノマー(a-1)とモノマー(a-2)の合計量を、好ましくはモノマー総量の85質量%以上100質量%以下、より好ましくは90質量%以上100質量%以下、更に好ましくは95質量%以上100質量%以下とする。また、成分(A)のポリマーは、ノニオン性ポリマーであり、モノマー(a-1)及びモノマー(a-2)以外のモノマー成分として、イオン性モノマーを含まないことが好ましい。
【0026】
モノマー(a-1)及びモノマー(a-2)の共重合は、常法に従って行えばよく、例えば、モノマー(a-1)及びモノマー(a-2)を適当な溶媒に溶解させたモノマー溶液を、適当な重合開始剤の存在下で加熱し、重合反応させることにより実施することができる。重合開始剤としては、例えば2,2'-アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。また、成分(A)として、市販されている原料を使用することも可能であり、例えばプラスサイズL-188K(互応化学工業社製)が挙げられる。
【0027】
本発明の整髪剤組成物中における成分(A)の含有量は、整髪中の束の形のつけやすさ、及び整髪後に根元の立ち上がったふんわりとした丸みのあるスタイルを維持する観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.2質量%以上であり、また、整髪後の良好な感触と整髪性及び持続性をすべて満たす観点から、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1.8質量%以下、更に好ましくは1.6質量%以下である。
【0028】
〔成分(B):(b-1)及び(b-2)からなる群より選ばれる共重合体〕
成分(B)は毛髪上で粘着性が無く、柔らかい被膜を形成する被膜形成ポリマーである。
成分(B)は、(b-1) (メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルと(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの共重合体、及び(b-2) (メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル及び(メタ)アクリル酸ジアルキルアミドの共重合体から選ばれる1種又は2種以上である。
【0029】
(b-1)、(b-2)のモノマーである(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルとしては、アルキル基が炭素数1以上4以下のアルキル基である化合物が好ましく、より具体的には、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等が挙げられ、その中でも(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、更にはアクリル酸ヒドロキシエチルが好適である。
【0030】
(b-1)、(b-2)のモノマーである(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、アルキル基が炭素数1以上4以下のアルキル基であり、アルコキシ基が炭素数1以上4以下のアルコキシ基である化合物が好ましい。炭素数1以上4以下のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基が挙げられ、炭素数1以上4以下のアルコキシ基としてはメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基が挙げられる。より具体的には(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸イソプロポキシエチル、(メタ)アクリル酸n-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸sec-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソブトキシエチル、(メタ)アクリル酸tert-ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-メトキシブチル等が挙げられ、その中でも(メタ)アクリル酸メトキシエチル、更にはアクリル酸メトキシエチルが好適である。
【0031】
(b-2)のモノマーである(メタ)アクリル酸ジアルキルアミドとしては、アルキル基が炭素数1以上4以下のアルキル基である化合物が好ましく、より具体的には、(メタ)アクリル酸ジメチルアミド、(メタ)アクリル酸ジエチルアミド、(メタ)アクリル酸ジプロピルアミド、(メタ)アクリル酸ジイソプロピルアミド、(メタ)アクリル酸ジn-ブチルアミド、(メタ)アクリル酸ジtert-ブチルアミド等が挙げられ、その中でも(メタ)アクリル酸ジメチルアミド、更にはアクリル酸ジメチルアミドが好適である。
【0032】
好ましい(b-1)の共重合体としては、アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸メトキシエチル共重合体が挙げられ、その市販品の具体例としては、プラスサイズL-222、同L-2200(互応化学工業社製)が挙げられる。また、好ましい(b-2)の共重合体としては、ジメチルアクリルアミド・アクリル酸ヒドロキシエチル・アクリル酸メトキシエチル共重合体が挙げられ、その市販品の具体例としては、プラスサイズL-2700、同L-2714(互応化学工業社製)が挙げられる。
【0033】
成分(B)は、いずれかを単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができるが、整髪後における根元の立ち上がりをより向上させ、よりふんわりとした丸みのあるスタイルをつくることができる観点から、(b-1)と(b-2)の双方を含むことがより好ましい。
【0034】
この場合、(b-1)に対する(b-2)の質量比(b-2)/(b-1)は、整髪中のべたつき感のなさ、及び整髪後の被膜形成ポリマーの存在感のなさを両立する観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上であり、また、整髪中の束の形のつけやすさ、整髪中のべたつきのなさ、及び整髪後に根元の立ち上がったふんわりとした丸みのあるスタイルを維持する観点から、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは1以下、更に好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.3以下である。
【0035】
本発明の整髪剤組成物中における成分(B)の含有量は、整髪中の束の形のつけやすさの観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは、0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、また、整髪中の束の形のつけやすさ、整髪後のポリマーの存在感の無さ、及び整髪後に根元の立ち上がったふんわりとした丸みのあるスタイルを維持する観点から、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下である。
【0036】
本発明では、成分(A)と成分(B)を併用することで整髪中は毛髪上で粘着性を有する一方で整髪後は毛髪上での粘着力のない整髪剤組成物となる。この結果、整髪中は根元から立ち上げるように毛束を作ることができ、整髪後には作った毛束の根元が立ち上がった状態のまま、一本一本の毛髪がばらけていくため、自然な外観で、ふんわりとした立体感と丸みのあるヘアスタイルを実現することができる。
【0037】
本発明の整髪剤組成物中における成分(A)に対する成分(B)の質量比(B)/(A)は、整髪中の束の形のつけやすさの観点から、0.03以上であって、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.3以上であり、また、整髪中の束の形のつけやすさ、整髪後のポリマーの存在感の無さ、及び整髪後に根元の立ち上がったふんわりとした丸みのあるスタイルを維持する観点から、1以下であって、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.7以下、更に好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.5以下である。
【0038】
また、本発明の整髪剤組成物中における成分(A)と成分(B)との合計含有量は、整髪後における根元の立ち上がりをより向上させ、よりふんわりとした丸みのあるスタイルをつくることができる観点から、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、更に好ましくは1.7質量%以上であり、また、整髪後のポリマーの存在感の無さ、整髪後の束感の無さ、及び整髪後に根元の立ち上がったふんわりとした丸みのあるスタイルを維持する観点から、好ましくは3.5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である。
【0039】
〔成分(C):非イオン界面活性剤〕
本発明の整髪剤組成物には、更に成分(C)として、非イオン界面活性剤を含有することが好ましい。
【0040】
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、高級脂肪酸ショ糖エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、高級脂肪酸モノ又はジエタノールアミド、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、アルキルサッカライド系界面活性剤、アルキルアミンオキサイド、アルキルアミドアミンオキサイド等が挙げられる。
【0041】
これらのうち、ポリオキシアルキレン付加型非イオン界面活性剤が好ましく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油がより好ましい。
【0042】
成分(C)は、単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。本発明の整髪剤組成物中における成分(C)の含有量は、整髪後の毛束のばらけ感の向上の観点から、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下である。
【0043】
〔媒体〕
本発明の整髪剤組成物は、水を媒体とする。媒体としては、水に加え、必要により上記特定有機溶剤以外の有機溶剤を使用することもできる。このような有機溶剤としては、エタノール、2-プロパノール等の低級アルカノール類、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン等のポリオール類、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ベンジルセロソルブ等のセロソルブ類、エチルカルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類が挙げられる。
【0044】
〔その他の成分〕
本発明の整髪剤組成物には、通常整髪剤に使用される各種成分、例えば、キレート剤、ビタミン類、蛋白質、アミノ酸類、生薬類、冷涼感付与剤(メントール等)、防腐剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色剤、香料等を、目的に応じて配合することができる。
【0045】
〔剤型〕
本発明の整髪剤組成物の形態は、泡状、液状、霧状、ゲル状、ペースト状、クリーム状等、適宜選択できる。
【0046】
<1> 次の成分(A)及び(B)を含有し、成分(B)と成分(A)の質量比(B)/(A)が、0.03以上1以下である整髪剤組成物。
(A) モノマー(a-1)及びモノマー(a-2)を含有するモノマー成分を共重合して得られるポリマー
(a-1) 一般式(1)で表される(メタ)アクリレート系モノマー;35質量%以上50質量%以下
【0047】
【化5】
【0048】
〔式中、R1は水素原子又はメチル基を示し、R2は炭素数1〜8のアルキル基を示す。〕
(a-2) 一般式(2)で表されるエチレンオキシド基含有(メタ)アクリレート系モノマー;50質量%以上65質量%以下
【0049】
【化6】
【0050】
〔式中、R3は水素原子又はメチル基を示し、R4は炭素数1〜4のアルキル基を示し、pは20〜90の整数を示す。〕
(B) 次の(b-1)及び(b-2)からなる群より選ばれる1種又は2種以上
(b-1) (メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルと(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルの共重合体
(b-2) (メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル及び(メタ)アクリル酸ジアルキルアミドの共重合体
【0051】
<2> 成分(A)の含有量が、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、更に好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.2質量%以上であり、また、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1.8質量%以下、更に好ましくは1.6質量%以下である<1>記載の整髪剤組成物。
【0052】
<3> 成分(B)の含有量が、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは、0.2質量%以上、更に好ましくは0.5質量%以上であり、また、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、更に好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、0.05質量%以上、3質量%以下である<1>又は<2>記載の整髪剤組成物。
【0053】
<4> 成分(A)に対する成分(B)の質量比(B)/(A)が、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、更に好ましくは0.2以上、更に好ましくは0.3以上であり、また、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.7以下、更に好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.5以下である<1>〜<3>のいずれかに記載の整髪剤組成物。
【0054】
<5> 好ましくは、成分(B)が(b-1)と(b-2)の双方を含む<1>〜<4>のいずれかに記載の整髪剤組成物。
【0055】
<6> (b-1)に対する(b-2)の質量比(b-2)/(b-1)が、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.05以上、更に好ましくは0.1以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、更に好ましくは1以下、更に好ましくは0.5以下、更に好ましくは0.3以下である<5>記載の整髪剤組成物。
【0056】
<7> 好ましくは、更に成分(C)非イオン界面活性剤を含む<1>〜<6>のいずれかに記載の整髪剤組成物。
【0057】
<8> 好ましくは、成分(C)がポリオキシアルキレン付加型非イオン界面活性剤である<1>〜<7>のいずれかに記載の整髪剤組成物。
【0058】
<9> 好ましくは、更に水を含有する<1>〜<8>のいずれかに記載の整髪剤組成物。
【0059】
<10> 成分(A)で使用するモノマー(a-1)が、好ましくはメタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸tert-ブチル、アクリル酸メチル及びアクリル酸イソブチルから選ばれる1種又は2種以上であり、より好ましくはメタクリル酸メチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸tert-ブチル及びメタクリル酸イソブチルから選ばれる1種又は2種である<1>〜<9>のいずれかに記載の整髪剤組成物。
【0060】
<11> 成分(A)で使用するモノマー(a-2)が、好ましくはアクリル酸メトキシPEG(23)、メタクリル酸メトキシPEG(23)、メタクリル酸メトキシPEG(45)及びメタクリル酸メトキシPEG(90)から選ばれる1種又は2種上であり、より好ましくはメタクリル酸メトキシPEG(23)である<1>〜<10>のいずれかに記載の整髪剤組成物。
【0061】
<12> 好ましくは、成分(A)がノニオン性ポリマーである<1>〜<11>のいずれかに記載の整髪剤組成物。
【0062】
<13> 成分(A)におけるモノマー成分中のモノマー(a-1)の含有量が、モノマーの総量を基準として、好ましくは38質量%以上であり、また、好ましくは47質量%以下である<1>〜<12>のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【0063】
<14> 成分(A)におけるモノマー成分中のモノマー(a-2)の含有量が、モノマーの総量を基準として、好ましくは53質量%以上であり、また、好ましくは62質量%以下である<1>〜<13>のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【0064】
<15> 成分(A)におけるモノマー成分中のモノマー(a-1)及びモノマー(a-2)の合計量が、モノマーの総量を基準として、好ましくは85質量%以上100質量%以下、より好ましくは90質量%以上100質量%以下、更に好ましくは95質量%以上100質量%以下である<1>〜<14>のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【0065】
<16> 成分(A)と成分(B)との合計含有量が、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上、更に好ましくは1.7質量%以上であり、また、好ましくは3.5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、更に好ましくは2.5質量%以下、更に好ましくは2質量%以下である<1>〜<15>のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【0066】
<17> 成分(C)の含有量が、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上、更に好ましくは0.1質量%以上であり、また、好ましくは2質量%以下、より好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下である<1>〜<16>のいずれかに記載の毛髪化粧料。
【実施例】
【0067】
実施例1〜12、比較例1〜5
表1及び2に示す整髪剤組成物を調製し、ミスト噴霧器(ヘッド部は吉野製作所製YSR)に入れて、以下の評価を行った。この結果を表1及び2に併せて示す。
【0068】
<整髪中の毛束根元付近の形のつけやすさの評価>
アジア人毛、ショートカットヘアのウィッグの乾燥した毛髪に対し、各処方の毛髪化粧料をウィッグ全体に1.0g噴霧し、根元に指を入れ、根元を立ち上げるように指を通しながらふんわり感をつくり、表面の髪を握りながらさらに立体感を作るように整髪を行った。この際、整髪中の毛束根元付近の形のつけやすさを観点とし、7名のパネラーに、「形付けやすい」/「どちらともいえない」/「形付けにくい」のいずれであるかを択一的に選択させた。「形付けやすい」/「どちらともいえない」/「形付けにくい」と答えたパネラーの人数を順に示す。
【0069】
<整髪中のべたつき感のなさ>
形のつけやすさを評価した方法と同様の操作を行った。この際、べたつき感のなさを観点とし、7名のパネラーが髪の感触について評価した。「べたつきを感じなかった」/「どちらともいえない」/「べたつきを感じた」のいずれであるかを択一的に選択させた。「べたつきを感じなかった」/「どちらともいえない」/「べたつきを感じた」と答えたパネラーの人数を順に示す。
【0070】
<仕上がり直後のふんわりとした立体感と丸み>
形のつけやすさを評価した方法と同様の操作を行い、整髪直後のふんわり感のあるスタイルができているかを観点とし、7名のパネラーに、「ふんわりとした立体感と丸みがあるスタイルができた」/「どちらともいえない」/「ふんわりとした立体感と丸みがあるスタイルができなかった」のいずれであるかを択一的に選択させた。「ふんわりとした立体感と丸みがあるスタイルができた」/「どちらともいえない」/「ふんわりとした立体感と丸みがあるスタイルができなかった」と答えたパネラーの人数を順に示す。
【0071】
<仕上がり直後のポリマーの存在感のなさ>
ふんわり感のあるスタイルを作った後のウィッグを用いて、7名のパネラーが髪の感触について評価した。「毛髪上のポリマーの存在感がない」/「どちらともいえない」/「毛髪上のポリマーの存在感がある」のいずれであるかを択一的に選択させた。「毛髪上のポリマーの存在感がない」/「どちらともいえない」/「毛髪上のポリマーの存在感がある」と答えたパネラーの人数を順に示す。
【0072】
<仕上がり直後の毛束のばらけ感>
整髪後の毛束にばらけ感があることで、ポリマー被膜が毛髪上に存在しないような自然な外観であるように見えるため、毛束のばらけ感を用いて評価を行った。ふんわり感のあるスタイルを作った後のウィッグを用いて、7名のパネラーに「毛束のばらけ感がある」/「どちらともいえない」/「毛束のばらけ感がない」のいずれであるかを択一的に選択させた。毛束のばらけ感がある」/「どちらともいえない」/「毛束のばらけ感がない」と答えたパネラーの人数を順に示す。
【0073】
<10分後のふんわり感>
ふんわり感のあるスタイルを作った後のウィッグを用いて、10分間静置したときにふんわり感のあるスタイルが残っているかを観点とし、7名のパネラーに「ふんわり感が残っている」/「どちらともいえない」/「ふんわり感が残っていない」のいずれであるかを択一的に選択させた。「ふんわり感が残っている」/「どちらともいえない」/「ふんわり感が残っていない」と答えたパネラーの人数を順に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
*1:プラスサイズL-188K(互応化学工業社製)
*2:プラスサイズL-2200(互応化学工業社製)
*3:プラスサイズL-2714(互応化学工業社製)
*4:プラスサイズL-6466(互応化学工業社製)
*5:エマノーンCH-60(花王社製)