(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
非磁性基板の主表面に対して垂直な側壁面、および、前記主表面と前記側壁面とを接続する介在面からなる端面を研磨する端面研磨処理を有する非磁性基板の製造方法であって、
前記端面研磨処理は、溝を備えた部材の前記溝内に研磨砥粒を含む磁気機能性流体を配置し、磁場発生手段を用いて前記溝の溝幅方向に磁力線が進むように磁場を形成し、前記非磁性基板の端面を、前記溝に配置した前記磁気機能性流体と接触させた状態で前記磁気機能性流体に対して相対移動させることにより、前記非磁性基板の端面を研磨する処理であり、
前記溝は、溝断面において、溝の溝深さ方向に進むにつれて溝幅が狭くなる領域を備える、ことを特徴とする非磁性基板の製造方法。
さらに、前記側壁面における、前記非磁性基板の厚さ方向の中心位置から前記溝底面までの距離L1に対する、前記介在面における、前記非磁性基板の厚さ方向の中心位置から前記溝傾斜壁面までの距離L2の比L2/L1が1.0以下となるように、前記非磁性基板の端面は前記溝に配置される、請求項2に記載の非磁性基板の製造方法。
前記側壁面の前記非磁性基板の厚さ方向の長さL3に対する、前記溝底面の前記溝幅方向の長さL4の比L4/L3は、6以下である、請求項2〜4のいずれか1項に記載の非磁性基板の製造方法。
非磁性基板の主表面に対して垂直な側壁面、および、前記主表面と前記側壁面とを接続する介在面からなる端面を研磨する端面研磨処理を有する非磁性基板の製造方法であって、
前記端面研磨処理は、溝を備えた部材の前記溝内に研磨砥粒を含む磁気機能性流体を配置し、磁場発生手段を用いて前記溝の溝幅方向に磁力線が進むように磁場を形成し、前記非磁性基板の端面を、前記溝に配置した前記磁気機能性流体と接触させた状態で前記磁気機能性流体に対して相対移動させることにより、前記非磁性基板の端面を研磨する処理であり、
前記端面研磨処理では、前記側壁面の研磨レートに対する前記介在面の研磨レートの比を0.7以上に調整し、
前記端面研磨処理を行うとき、前記介在面が前記磁気機能性流体から受ける押付力を、溝深さ方向に沿って溝幅が一定の溝を用いる場合に比べて大きくする、ことを特徴とする非磁性基板の製造方法。
前記溝を備えた部材は非磁性体からなるスペーサであって、前記スペーサを介してN極の面とS極の面が互いに対向するように離間した状態で前記磁場発生手段が配置される、
請求項10に記載の研磨装置。
【背景技術】
【0002】
今日、パーソナルコンピュータ、ノート型パーソナルコンピュータ、あるいはDVD(Digital Versatile Disc)記録装置等には、データ記録のためにハードディスク装置が内蔵されている。特に、ノート型パーソナルコンピュータ等の可搬性を前提とした機器に用いられるハードディスク装置では、磁気ディスク用基板に磁性層が設けられた磁気ディスクが用いられる。磁気ディスクの面上では、この面から僅かに浮上させた磁気ヘッドで磁気ディスクの磁性層に磁気記録情報が記録され、あるいは読み取られる。この磁気ディスクの基板には、ガラス基板やアルミニウム合金基板などの非磁性基板としてガラス基板が好適に用いられている。
【0003】
今日、ハードディスク装置における記憶容量の増大の要請を受けて、磁気記録の高密度化が図られている。これに伴って、磁気ヘッドの磁気記録面からの浮上距離を極めて短くして磁気記録情報エリアを微細化することが行われている。このような磁気ディスク用基板においては、基板の表面凹凸は可能な限り小さく作製されている。
ハードディスク装置に用いる磁気ヘッドにおいては、磁気ディスクの表面に微小な凹凸があると、公知のサーマルアスペリティ(Thermal Asperity)障害を生じ、再生に誤動作を生じ、あるいは再生が不可能になる虞がある。このサーマルアスペリティ障害の原因は、基板上の異物によって磁気ディスクの表面に形成された凸部が磁気ディスクの高速回転によりヘッドの近傍の空気の断熱圧縮および断熱膨張を発生させ、磁気ヘッドが発熱することに起因する。すなわち、サーマルアスペリティ障害は、磁気ヘッドが磁気ディスクに接触しない場合においても発生し得る。
したがって、このサーマルアスペリティ障害を防止するためには、磁気ディスクの表面は、極めて平滑で、かつ、異物の無い高清浄化された面に仕上げておく必要がある。
【0004】
磁気ディスク用基板の表面に異物が付着する原因としては、基板の表面形状のみならず、基板の端面の表面形状が考えられている。すなわち、磁気ディスク用基板の端部が尖鋭な場合、若しくは端面の表面形状が平滑でない場合には、端部が樹脂製ケースの壁面などを擦過し、この擦過によって樹脂やガラスの微粒子(パーティクル)が発生する。そして、このような微粒子や雰囲気中の微粒子は、磁気ディスク用基板の端面に捕捉され蓄積されてしまう。磁気ディスク用基板の端面に蓄積された微粒子は、後工程において、あるいは、ハードディスク装置に搭載された後において、発塵源となり、ディスク基板の表面に異物が付着する原因となっている。このため、磁気ディスク用基板を製造するときには、円形状の基板の主表面と側壁面に間に介在面を形成し、さらに側壁面と介在面とを研磨する処理が行われている。側壁面は、基板の主表面に対して垂直な面であり、介在面は、主表面と側壁面とを接続する、主表面に対して傾斜した面である。
【0005】
ところで、磁気ディスク用基板となる基板の端面を研磨する際、安定した品質の磁気ディスク用基板を廉価に大量に提供できるようにするとともに、磁気ディスクにおけるサーマルアスペリティ障害やヘッドクラッシュを防止する磁気ディスク用基板の製造方法が知られている(特許文献1)。当該製造方法では、基板の中心部の円孔の内周端面を研磨する工程において、上記円孔の内周側に磁場を形成し、この円孔内において磁場により磁性粒子と研磨砥粒とを含む研磨剤を保持させ、磁場を円孔の内周側端面に対して移動させることにより、研磨剤を円孔の内周側端面に対して移動させて円孔の内周側端面を研磨する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記磁気ディスク用基板の製造方法では、安定した品質の磁気ディスク用基板を廉価に大量に提供できるようにするとともに、磁気ディスクにおけるサーマルアスペリティ障害やヘッドクラッシュを防止することができる。しかし、側壁面と介在面の研磨レートに差があるため、側壁面と介在面において、希望する研磨取代量を同時に達成することはできなかった。このため、側壁面の研磨が終了しても、介在面の研磨は終了しておらず、介在面に研磨残りが生じる場合がある。この場合、介在面をさらに研磨するとき側壁面も同時に研磨されるため、側壁面の寸法が研磨によって変化し目標とする端面の形状を達成することができない。さらに、研磨の終了した側壁面に余分な研磨を行なうため、磁性スラリを余分に用いることとなり、製造上の無駄が多い。
【0008】
そこで、本発明は、ガラス基板等の非磁性基板の端面研磨処理において、非磁性基板の側壁面の研磨レートに対する介在面の研磨レートの比(介在面の研磨レート/側壁面の研磨レート)を大きくすることができる
非磁性基板の製造方法
及び研磨装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願の発明者は、磁気機能性流体を用いてガラス基板の端面研磨処理を連続的に行う場合に、ガラス基板の端面の側壁面と介在面の研磨レートが異なる原因を鋭意検討した。その結果、側壁面と介在面の研磨レートが異なる原因は、以下の通りに推定された。すなわち、上記端面研磨処理における研磨レートは、基板の被加工部に対する磁気機能性流体の押圧力に依存し、押圧力が大きいほど、研磨レートは大きい。具体的には、磁気機能性流体中の磁性粒子は磁力線に沿ってライン状に並び、この磁性粒子のラインを横切るようにガラス基板の端面が磁気機能性流体中に進入すると、この進入により、磁性粒子のラインは変形する。この変形を元に戻そうとする力を、側壁面は側壁面の法線方向から受けるので、この力が磁気機能性流体のガラス基板への押付力となっている。一方、介在面は、側壁面に対して傾斜し、上記磁性粒子のラインに対して傾斜しているので、介在面が、介在面の法線方向から受ける押付力は、介在面が傾斜するぶんだけ低下する。このため、押付力の違いによって側壁面と介在面の研磨レートは異なる、と推定される。
このため、本願の発明者は、介在面でも側壁面と同程度の押付力を磁気機能性流体から受けることができる形態を種々検討した結果、以下の形態を見出し、本発明を想到した。
【0010】
本発明の一形態は、非磁性基板の主表面に対して垂直な側壁面、および、前記主表面と前記側壁面とを接続する介在面からなる端面を研磨する端面研磨処理を有する
非磁性基板の製造方法である。当該製造方法における前記端面研磨処理は、溝を備えた部材の前記溝内に研磨砥粒を含む磁気機能性流体を配置し、磁場発生手段を用いて前記溝の溝幅方向に磁力線が進むように磁場を形成し、前記非磁性基板の端面を、前記溝に配置した前記磁気機能性流体と接触させた状態で前記磁気機能性流体に対して相対移動させることにより、前記非磁性基板の端面を研磨する処理であり、
前記溝は、溝断面において、溝の溝深さ方向に進むにつれて溝幅が狭くなる領域を備える。
【0011】
前記溝の前記溝幅が狭くなる領域は、前記溝幅方向及び前記溝深さ方向に対して傾斜した一対の溝傾斜壁面、を備えることが好ましい。
【0012】
さらに、前記側壁面における、前記非磁性基板の厚さ方向の中心位置から前記溝底面までの距離L1に対する、前記介在面における、前記非磁性基板の厚さ方向の中心位置から前記溝傾斜壁面までの距離L2の比L2/L1が1.0以下となるように、前記非磁性基板の端面は前記溝に配置される、ことが好ましい。
【0013】
前記側壁面に対する前記介在面の傾斜角度は、20度〜70度であり、前記一対の溝傾斜壁面の形状は、溝断面においていずれも直線であり、前記直線同士の成す角度は50度〜130度である、ことが好ましい。
【0014】
前記側壁面の前記非磁性基板の厚さ方向の長さL3に対する、前記溝底面の前記溝幅方向の長さL4の比L4/L3は、6以下である、ことが好ましい。
【0015】
本発明の他の一態様も、非磁性基板の主表面に対して垂直な側壁面、および、前記主表面と前記側壁面とを接続する介在面からなる端面を研磨する端面研磨処理を有する非磁性基板の製造方法である。
前記端面研磨処理は、溝を備えた部材の前記溝内に研磨砥粒を含む磁気機能性流体を配置し、磁場発生手段を用いて前記溝の溝幅方向に磁力線が進むように磁場を形成し、前記非磁性基板の端面を、前記溝に配置した前記磁気機能性流体と接触させた状態で前記磁気機能性流体に対して相対移動させることにより、前記非磁性基板の端面を研磨する処理であり、
前記端面研磨処理では、前記側壁面の研磨レートに対する前記介在面の研磨レートの比を0.7以上に調整し、
前記端面研磨処理を行うとき、前記介在面が前記磁気機能性流体から受ける押付力を、溝深さ方向に沿って溝幅が一定の溝を用いる場合に比べて大きくする。
【0016】
前記磁気機能性流体は、分散剤を含み、
前記分散剤は、結晶セルロース系分散剤又はリン酸系分散剤を含む、ことが好ましい。
【0017】
前記端面研磨処理では、前記磁気機能性流体に研磨砥粒を含むスラリを供給して、前記非磁性基板の端面を研磨する、ことが好ましい。
【0018】
前記端面研磨処理では、前記側壁面の研磨レートに対する前記介在面の研磨レートの比を0.7以上に調整する、ことが好ましい。
さらに、本発明の一態様は、非磁性基板の端面を研磨する端面研磨処理に用いる研磨装置である。当該研磨装置は、
非磁性基板の端面を接触させる磁気機能性流体を配置するための溝を備えた部材と、
前記溝の溝幅方向に磁力線が進むように磁場を形成し得る磁場発生手段と、を有し、
前記溝は、溝の溝深さ方向に進むにつれて溝幅が狭くなる領域を備える。
このとき、前記溝を備えた部材は非磁性体からなるスペーサであって、前記スペーサを介してN極の面とS極の面が互いに対向するように離間した状態で前記磁場発生手段が配置される、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
上述の
非磁性基板の製造方法によれば、ガラス基板等の非磁性基板の側壁面の研磨レートに対する介在面の研磨レートの比を大きくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の
非磁性基板の製造方法の一実施形態として、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法について詳細に説明する。なお、以下の説明では、非磁性基板として磁気ディスク用ガラス基板を用いる場合について説明するが、それに限られずアルミニウム合成基板であってもよい。
本実施形態でいう磁気機能性流体は、磁場に応答する機能性流体である。例えば、粒径が数μmの磁性粒子(純鉄等)を溶媒に分散させた磁気粘性流体(Magneto-rheological Fluid;MRF)、粒径が数nmの磁性微粒子(フェライト等)を溶媒に分散させた磁性流体(Magnetic Fluid;MF)、粒径が数μmの磁性粒子および粒径が数nmの磁性微粒子を混合した状態で溶媒に分散させた磁気混合流体(Magnetic Compound Fluid;MCF)を含む。
【0022】
(磁気ディスクおよび磁気ディスク用ガラス基板)
本実施形態の磁気ディスクは、円板形状の中心部分が同心円形状にくり抜かれたリング状を成し、リングの中心の周りに回転するものである。この磁気ディスクは、ガラス基板と磁性層を少なくとも備える。なお、磁性層以外には、例えば、付着層、軟磁性層、非磁性下地層、垂直磁気記録層、保護層および潤滑層等がガラス基板上に成膜される。
磁気ディスクに用いるガラス基板も円板形状の中心部分が同心円形状にくり抜かれたリング状を成している。ガラス基板の内周側端面及び外周側端面は、側壁面及び介在面を含む。側壁面は、断面視において、ガラス基板の主表面に対して垂直に延びる面である。介在面は、断面視において、側壁面と主表面との間に2つ設けられ、側壁面及び主表面に対して傾斜し、主表面に向かって略直線状に延びる面である。
【0023】
本実施形態における磁気ディスク用ガラス基板の材料として、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラスなどを用いることができる。特に、化学強化を施すことができ、また主表面の平面度及び基板の強度において優れた磁気ディスク用ガラス基板を作製することができるという点で、アルミノシリケートガラスを好適に用いることができる。
【0024】
本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の組成を限定するものではないが、アルミノシリケートガラスとして、酸化物基準に換算した際に、モル%表示で、SiO
2を50〜75%、Al
2O
3を1〜15%、Li
2O、Na
2O及びK
2Oから選択される少なくとも1種の成分を合計で12〜35%、MgO、CaO、SrO、BaO及びZnOから選択される少なくとも1種の成分を合計で0〜20%、及び、ZrO
2、TiO
2、La
2O
3、Y
2O
3、Ta
2O
5、Nb
2O
5及びHfO
2から選択される少なくとも1種の成分を合計で0〜10%、有する組成からなるアルミノシリケートガラスを用いることが好ましい。
また、本実施形態のガラス基板は、例えば特開2009−99239号公報に開示されるように、質量%表示にて、SiO
2を57〜75%、Al
2O
3を5〜20%、(ただし、SiO
2とAl
2O
3の合計量が74%以上)、ZrO
2、HfO
2、Nb
2O
5、Ta
2O
5、La
2O
3、Y
2O
3およびTiO
2を合計で0%を超え、6%以下、Li
2Oを1%を超え、9%以下、Na
2Oを5〜18%(ただし、質量比Li
2O/Na
2Oが0.5以下)、K
2Oを0〜6%、MgOを0〜4%、CaOを0%を超え、5%以下(ただし、MgOとCaOの合計量は5%以下であり、かつCaOの含有量はMgOの含有量よりも多い)、SrO+BaOを0〜3%、有する組成からなるアモルファスのアルミノシリケートガラスであってもよい。
【0025】
(端面研磨処理)
図1(a)〜(c)は、本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法のうちの一処理である端面研磨処理に用いる装置10を説明する図であり、
図2は、本実施形態の端面研磨処理を説明する図である。
図1(a)に示すように、ガラス基板11の内周端面を研磨する場合、ガラス基板11の中心に設けられた円孔内に後述する一対の磁石12,14と、スペーサ16を通し、スペーサ16の周上に設けられた磁気機能性流体の塊20内に、ガラス基板11の内周端面を押し込み、磁気機能性流体と接触させる。また、ガラス基板11の外周端面を研磨する場合、
図1(a)に示すように、スペーサ16の周上に設けられた磁気機能性流体の塊20に向けてガラス基板11の外周端面を近づけて、ガラス基板11の外周端面を塊20内に押し込み、磁気機能性流体と接触させる。
端面研磨を行う装置10の概要を説明すると、
図1(a)に示すように、装置10は、永久磁石である一対の磁石12,14と、スペーサ16と、を含み、一方向に延びた回転体形状をなしている。磁石12と磁石14の間にスペーサ16が設けられている。端面研磨を行うガラス基板11は、図示されない保持具によって把持されている。保持具に把持されたガラス基板11の端面を、研磨砥粒を含む磁気機能性流体の塊20(
図1(c),
図2参照)の内部に押し込んで、磁気機能性流体と接触させる。塊20は、スペーサ16の周りで円環形状を形成している。このとき、ガラス基板11の中心軸11aと装置10の磁石12,14及びスペーサ16の中心軸10aが同じ向きに向くようにガラス基板11は配置される。装置10及びガラス基板11のそれぞれを保持する図示されない保持具は、図示されない駆動モータと機械的に接続されている。回転体形状の装置10とガラス基板11の保持具が、それぞれの中心軸10a,11aの周りに回転してガラス基板11の端面と塊20とを相対的に移動させる。これにより、ガラス基板11の端面を研磨することができる。
【0026】
ガラス基板11の端面を研磨するとき、装置10の中心軸10aの周りの回転によって磁気機能性流体の塊20は回転し、一方ガラス基板11も中心軸11a周りに回転する。このとき、ガラス基板11と塊20の接触位置におけるガラス基板11の、磁気機能性流体の塊20に対する周速度の相対速度は、効率よく端面研磨をするために例えば50〜500m/分であることが好ましく、より好ましくは、上記相対速度は200〜400m/分である。
【0027】
ガラス基板11の回転方向と磁気機能性流体の塊20の回転方向はガラス基板11と磁気機能性流体の接触位置において逆方向であることが、端面研磨処理を効率よく行なう点で好ましい。一方、端面研磨処理後の端面の表面凹凸を小さくする点からは、ガラス基板11の回転方向と磁気機能性流体の回転方向は、ガラス基板11と磁気機能性流体の接触位置において同方向であることが好ましい。なお、ガラス基板11の端面と塊20とを相対的に移動させることができれば、塊20を回転させずガラス基板11を回転させてもよい。
【0028】
端面研磨をより具体的に説明すると、磁石12と磁石14は、互いに近接して、磁場発生手段として機能し、
図1(b)に示すような磁力線19を形成する。この磁力線19は、スペーサ16の溝の溝幅方向に沿って、すなわち、ガラス基板11の厚さ方向に進む。
図1(b)に示す例では、スペーサ16の溝幅方向において、N極の面とS極の面が互いに対向するように離間した状態で配置されている。面が互いに対向するとは、面と面が平行に向き合うこと、すなわち正対することをいう。磁石12,14との間には、磁石12のN極の端面と磁石14のS極の端面との間の離間距離を予め定めた距離とするために、非磁性体からなるスペーサ16が設けられる。
【0029】
スペーサ16は、
図1(b)に示すように、溝17を備える。溝17には、
図1(b)に示すように、磁気機能性流体が配置される。したがって、スペーサ16は、磁石12,14の間に挟むように設けられているので、溝17の溝幅方向に磁力線が進むように磁場が形成されている。このため、溝17には、磁気機能性流体の塊20が形成され、塊20内では、磁気機能性流体の磁性体のラインが磁力線19に沿って、すなわち、溝幅方向に沿って形成される。溝17は、溝断面において、溝の溝深さ方向に進むにつれて溝幅が狭くなる領域を溝底の側に備えている。このため、磁気機能性流体が介在面11cに与える押付力を高め、側壁面11bの研磨レートに対する介在面11cの研磨レートの比を大きくすることができ、例えば1に近づけることができる。
【0030】
図2に示す形態のように、溝17は、溝幅方向に延びる溝底面17aを備える。さらに、溝17の溝幅が狭くなる領域は、溝底面17aの溝幅方向の両端と接続して溝底面17aに対して傾斜した、いいかえると、溝17の溝幅方向及び溝深さ方向に対して傾斜した一対の溝傾斜壁面17bを備えることが好ましい。すなわち、溝17は、溝深さ方向において、溝17の開口部から一定の溝幅の第1の領域と、この第1の領域より溝底面17aまで、溝幅が徐々に狭くなる第2の領域を有する。第2の領域に、溝傾斜壁面17bが形成される。この場合、ガラス基板11の側壁面11bは溝底面17aに向き、ガラス基板11の介在面11cは溝傾斜壁面17bに向くように、ガラス基板11の端面は溝17に配置されることが好ましい。
【0031】
このように、溝17が溝傾斜壁面17bを備えるのは、ガラス基板11の介在面11cに対する磁気機能性流体の押付力を高くし、側壁面11bの研磨レートに対する介在面11cの研磨レートの比を大きくするためである。溝17が溝傾斜壁面17bを備えず、溝の壁が、溝底面17aに対して垂直に立設する垂直溝壁面により構成された溝、すなわち、溝深さ方向において溝幅が一定の溝である場合、磁気機能性流体の押付力は低く、側壁面11bの研磨レートに対する介在面11cの研磨レートの比は0.5程度である。このように、溝傾斜壁面17bを用いることにより、磁気機能性流体の押付力を高くできるのは、ガラス基板11の端面を溝17に進入させたとき、ガラス基板11の進入によって介在面11c近傍の磁気機能性流体が押し出される空間を狭くして、磁気機能性流体が介在面11cに与える圧力を高くすることができるからである。
したがって、本実施形態では、溝17にガラス基板11の端面を配置して端面研磨処理を行うとき、介在面11cが磁気機能性流体から受ける押付力を、溝深さ方向に沿って溝幅が一定の溝を用いる場合に比べて大きくすることにより、介在面11cの研磨レートを向上させることができ、側壁面11bの研磨レートに対する介在面11cの研磨レートの比を大きくすることができ、例えば1に近づけることができる。
端面研磨処理では、側壁面11bの研磨レートに対する介在面11cの研磨レートの比を0.6以上、さらには0.7以上に調整することが、端面研磨処理で側壁面11bと介在面11cの研磨を同時に終えることができる点から好ましい。研磨レートの比の上限は特に設けられないが、例えば1.3である。このように、研磨レートの比は1.0を超えてもよい。
なお、端面研磨処理では、磁気機能性流体に研磨砥粒を含むスラリを供給して、ガラス基板11の端面を研磨することが、端面研磨処理を効率よく行なう上で好ましい。
【0032】
図3は、本実施形態の端面研磨処理における各寸法及び角度を説明する模式図である。
端面研磨処理では、
図2に示すように、ガラス基板11の側壁面11bは、溝深さ方向の溝幅が狭くなる領域の位置まで溝17内に挿入される。
図3では、側壁面11bにおける、ガラス基板11の厚さ方向の中心位置P1から、側壁面11bの中心位置P1における法線方向に沿った溝底面17aまでの距離をL1と定め、介在面11cにおける、ガラス基板11の厚さ方向の中心位置P2から、介在面11cの中心位置P2における法線方向に沿った溝傾斜壁面17bまでの距離をL2と定めている。さらに、側壁面11bのガラス基板11の厚さ方向の長さをL3と定め、溝底面17aの溝幅方向の長さをL4と定めている。また、
図3では、溝傾斜壁面17bにおける溝断面の長さをL5と定めている。溝傾斜壁面17bより溝底面17aと反対側の壁面は、溝断面において溝底面17aに対して垂直に立設した面である。このとき、比L2/L1が1.0以下となるようにガラス基板11を溝17に配置することが好ましい。比L2/L1の下限は、特に制限されないが、例えば0.3である。このような比L2/L1の限定により、側壁面11bの研磨レートに対する介在面11cの研磨レートの比を0.7以上にすることができる。なお、距離L1は、中心位置P1から溝底面17aまでの最短の長さである。
また、溝17において、比L4/L3は、6以下であることが好ましい。これにより、上記研磨レートの比を0.7以上にすることが容易にできる。比L4/L3の下限は0である。すなわち、L4=0であってもよい。
また、比L5/L3は、2.5〜4であることが好ましい。これにより、上記研磨レートの比を0.7以上にすることが容易にできる。
また、ガラス基板11の側壁面11bに対する介在面11cの傾斜角度は、20度〜70度である場合、一対の溝傾斜壁面17bの形状は、溝断面においていずれも直線であり、直線同士の成す角度θ(
図3参照)は50度〜130度であることが好ましい。角度θは、
図3に示すように、溝断面において一対の溝傾斜壁面17bの直線を延長した延長線同士の交差角度をいう。これにより、上記研磨レートの比を0.7以上にすることができる。なお、上記介在面11cの傾斜角度は、介在面11cが丸みを有する場合、ガラス基板11の断面における介在面11Cの厚さ方向の中心位置P2における接線の側壁面11bに対する傾斜角度をいう。特に、角度θを60〜90度にすることにより、側壁面11bにおける研磨レートも向上する。この場合、研磨レートは、例えばガラス基板の外周端面を研磨するときの直径換算で0.8μmφ/秒以上になる(片側の側壁面11bにおける研磨レートは0.4μm/秒以上になる)。
【0033】
以上のように溝17は、溝底面17aの両端に接続する溝傾斜壁面17bを備えればよいので、
図1(a),(b)、
図2に示す溝に代えて、溝17は、溝17の開口部から溝底面17aまで、溝幅が徐々に狭くなる構成であってもよい。すなわち、本実施形態では、
図1(b)に示す溝断面を有する溝17に代えて、
図4に示すような溝の開口部から溝底面17aまで溝幅が徐々に狭くなるように、溝の開口部と溝底を溝傾斜壁面17bが接続する構成の溝17であってもよい。
図4は、本実施形態の溝17の他の例を説明する図である。この場合、溝17には、溝底面17aは設けられなくてもよく、溝傾斜壁面17b同士が溝底で接続してもよい。
【0034】
本実施形態のガラス基板の端面研磨では、ガラス基板11の端面は塊20の内部に磁力線と直交する方向に押し付けられて研磨されることが、研磨レートを高める点で好ましい。本実施形態のガラス基板11の端面は、磁気機能性流体の塊20内部の、磁石12のN極と磁石14のS極とを接続する磁力線、すなわち、磁力線がN極からあるいはS極から延びてS極あるいはN極で終了する磁力線に沿って保持される磁性粒子のラインと接触するように、塊20の内部に押し込まれることが好ましい。磁石12のN極と磁石14のS極とを接続する磁力線に沿って保持される磁性粒子のラインの部分は、磁力線が磁石の極で終了しない部分に比べて剛性が高まり高い研磨レートを実現する。
【0035】
上述したように側壁面11bと介在面11cが研磨されるように、ガラス基板11の端面を塊20の内部に押し込むが、このとき、ガラス基板11の主表面のうち磁気機能性流体に接触する部分は、磁性粒子のラインによって主表面の法線方向から磁気機能性流体の押付力を受けないので、実質的に研磨されない。
【0036】
なお、
図1(a)〜(c)及び
図2に示す例では、磁場発生手段として永久磁石を用いるが、電磁石を用いることもできる。
【0037】
端面研磨に用いる磁気機能性流体として、例えば、0.1〜10μmの平均粒径(D50)のFe(鉄)元素を含む磁性粒子を3〜5g/cm
3含む非極性オイル、および界面活性剤を含んだ流体が用いられる。非極性オイルは、例えば、室温(20℃)において100〜1000(mPa・秒)の粘度を有する。
磁石12から磁石14に磁力線が向かう磁場によって磁気機能性流体は比較的高い弾性特性を有する塊20となるので、ガラス基板11の端面を磁気機能性流体に押しつけることにより効率よく研磨することができる。
【0038】
磁気機能性流体に含まれる研磨砥粒として、酸化セリウム、コロイダルシリカ、酸化ジルコニア、アルミナ砥粒、ダイヤモンド砥粒等の公知のガラス基板の研磨砥粒を用いることができる。研磨砥粒の平均粒径(D50)については、例えば0.5〜10μmである。この範囲の研磨砥粒を用いることにより、ガラス基板の端面を良好に研磨することができる。研磨砥粒は、磁気機能性流体中に、例えば3〜15[Vol%]含まれる。
なお、平均粒径(D50)とは、体積分率で計算した累積体積頻度が粒径の小さいほうから計算して50%となる粒径を意味している。
【0039】
磁気機能性流体の粘度は室温(20℃)で1000〜2000[mPa・秒]であることが、磁気機能性流体の塊20を形成させ、端面研磨を効率よく行う点で好ましい。粘度が低いと塊20を形成し難くなり、ガラス基板11の端面に押された状態で相対運動させて研磨することは難しい。一方、磁気機能性流体の粘度が過度に高い場合、側壁面11bと介在面11cにおける押付力の差が大きくなり易い。また、磁場発生手段によって発生する磁場の磁束密度は、磁気機能性流体の塊20を形成させ、端面研磨を効率よく行う点で、0.3〜0.9[テスラ]であることが好ましい。また、磁気機能性流体の降伏応力は、0.4[テスラ]の磁場を印加した状態で30kPa以上であることが好ましく、30〜60kPaであることがより好ましい。
【0040】
ここで、磁気機能性流体の降伏応力(降伏せん断応力)は、 例えば次の方法により求めることができる。回転粘度計に、0.4[テスラ]の磁場を印加可能な磁場発生手段(永久磁石、電磁石等)を組込んだ装置を用いて、磁気機能性流体のせん断速度とせん断応力の関係を求め、得られたせん断速度とせん断応力の関係を公知のCassonの式を用いて近似することよって、磁気機能性流体の降伏応力を求めることができる。
上記降伏応力は、磁場によって保持された磁気機能性流体とガラス基板11の端面とが相対移動する際に、ガラス基板11が磁気機能性流体から受けるせん断応力に影響を与える。したがって、磁気機能性流体の降伏応力が高い程(磁気機能性流体の流動時のせん断応力が高い程)、研磨砥粒とガラス基板11との接触による研磨が効率的に行われ、端面研磨の研磨レートを向上させることができる。
【0041】
このような磁気機能性流体を、溝底面17a及び溝傾斜壁面17bを備える溝17に配置した状態で、ガラス基板11の側壁面11b及び介在面11cを、磁気機能性流体と接触させた状態で磁気機能性流体に対して相対移動させることにより、ガラス基板11の端面を研磨する。
【0042】
なお、本実施形態では、
図2に示すように、溝17に溝傾斜壁面17bを備える形態であるが、溝傾斜壁面17bは、溝断面において直線でなく、曲線の形状であってもよい。この場合、溝傾斜壁面17bは、溝空間中に凸状に突出した凸形状であってもよく、溝空間中に対して凹んだ凹形状であってもよい。また、溝17は、溝断面において、溝壁面が溝断面においてU字形状をした溝であってもよい。この場合においても、溝17は、溝17の開口部から一定の溝幅の第1の領域と、この第1の領域より溝底面17aまで、溝幅が徐々に狭くなる第2の領域を有する。
【0043】
さらに、本実施形態では、磁気機能性流体に、分散剤を含ませることが好ましい。この場合、分散剤は、結晶セルロース系分散剤又はリン酸系分散剤を含むことが好ましい。結晶セルロース系分散剤は例えば多糖類誘導体であり、多糖類誘導体を構成するモノマーは、カルボキシメチル基、ヒドロキシエチル基、又はヒドロキシプロピル基を有することが好ましい。また、多糖類誘導体はグルカン誘導体であり、グルカン誘導体を構成するモノマーは、D−グルコースのヒドロキシル基の少なくとも一部にカルボキシメチル基がエーテル結合したモノマーであることが好ましい。
また、リン酸系分散剤は、メタリン酸の無機塩である。メタリン酸の無機塩は、例えば、メタリン酸のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩であることが好ましい。メタリン酸のアルカリ金属塩は、例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウムであることが好ましい。これにより、磁気機能性流体中の磁性粒子の凝集を抑制することができ、この結果、側壁面11bの研磨レートに対する介在面11cの研磨レートの比を上昇させることができる。
【0044】
(磁気ディスク用ガラス基板の製造方法)
次に、本実施形態の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法を説明する。先ず、一対の主表面を有する板状の磁気ディスク用ガラス基板の素材となるガラスブランクをプレス成形により作製する(プレス成形処理)。なお、本実施形態ではガラスブランクをプレス成形で作製するが、周知のフロート法、リドロー法、あるいはフュージョン法でガラス板を形成し、ガラス板から上記ガラスブランクと同じ形状のガラスブランクを切り出してもよい。次に、作製されたガラスブランクの中心部分に円孔を形成しリング形状(円環状)のガラス基板とする(円孔形成処理)。次に、円孔を形成したガラス基板に対して形状加工を行う(形状加工処理)。これにより、ガラス基板が生成される。次に、形状加工されたガラス基板に対して端面研磨を行う(端面研磨処理)。端面研磨の行われたガラス基板の主表面に研削を行う(研削処理)。次に、ガラス基板の主表面に第1研磨を行う(第1研磨処理)。次に、必要に応じてガラス基板に対して化学強化を行う(化学強化処理)。次に、化学強化されたガラス基板に対して第2研磨を行う(第2研磨処理)。その後、第2研磨処理後のガラス基板に対して超音波洗浄を行う(超音波洗浄処理)。以上の処理を経て、磁気ディスク用ガラス基板が得られる。以下、各処理について、詳細に説明する。
【0045】
(a)プレス成形処理
熔融ガラス流の先端部を切断器により切断し、切断された熔融ガラス塊を一対の金型のプレス成形面の間に挟みこみ、プレスしてガラスブランクを成形する。所定時間プレスを行った後、金型を開いてガラスブランクが取り出される。
【0046】
(b)円孔形成処理
ガラスブランクに対してドリル等を用いて円孔を形成することにより円形状の孔があいたディスク状のガラス基板を得ることもできる。
【0047】
(c)形状加工処理
形状加工処理では、円孔形成処理後のガラス基板の端部に対する面取り加工を行う。面取り加工は、研削砥石等を用いて行なわれる。面取り加工により、ガラス基板の端面に、ガラス基板の主表面に対して垂直に延びる基板の側壁面と、この側壁面と主表面の間に設けられ、主表面及び側壁面に対して傾斜して延びる介在面とを有する端面が形成される。
【0048】
(d)端面研磨処理
端面研磨処理では、ガラス基板の内側端面及び外周側端面に対して、上述した磁気機能性流体を用いて
図1に示す端面研磨処理により鏡面仕上げを行う。このとき、磁気機能性流体には、磁性粒子の他に、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、ダイヤモンド等の研磨砥粒が含まれる。
【0049】
(e)研削処理
研削処理では、遊星歯車機構を備えた両面研削装置を用いて、ガラス基板の主表面に対して研削加工を行う。具体的には、ガラスブランクから生成されたガラス基板の外周側端面を、両面研削装置の保持部材に設けられた保持孔内に保持しながらガラス基板の両側の主表面の研削を行う。両面研削装置は、上下一対の定盤(上定盤および下定盤)を有しており、上定盤および下定盤の間にガラス基板が狭持される。そして、上定盤または下定盤のいずれか一方、または、双方を移動操作させ、ガラス基板と各定盤とを相対的に移動させることにより、ガラス基板の両主表面を研削することができる。研削処理は、場合によっては行なわれなくてもよい。
【0050】
(f)第1研磨処理
次に、研削のガラス基板の主表面に第1研磨が施される。具体的には、ガラス基板を、両面研磨装置の研磨用キャリアに設けられた保持孔内に保持しながらガラス基板の両側の主表面の研磨が行われる。第1研磨は、研削処理後の主表面に残留したキズや歪みの除去、あるいは微小な表面凹凸(マイクロウェービネス、粗さ)の調整を目的とする。
【0051】
第1研磨処理では、固定砥粒による研削処理に用いる両面研削装置と同様の構成を備えた両面研磨装置を用いて、研磨スラリを与えながらガラス基板が研磨される。第1研磨処理では、遊離砥粒を含んだ研磨スラリが用いられる。第1研磨に用いる遊離砥粒として、例えば、酸化セリウム砥粒、あるいはジルコニア砥粒などが用いられる。両面研磨装置も、両面研削装置と同様に、上下一対の定盤の間にガラス基板が狭持される。下定盤の上面及び上定盤の底面には、全体として円環形状の平板の研磨パッド(例えば、樹脂ポリッシャ)が取り付けられている。そして、上定盤または下定盤のいずれか一方、または、双方を移動操作させることで、ガラス基板と各定盤とを相対的に移動させることにより、ガラス基板の両主表面を研磨する。
【0052】
(g)化学強化処理
ガラス基板を化学強化する場合、化学強化液として、例えば硝酸カリウムと硫酸ナトリウムの混合熔融液等を用い、ガラス基板を化学強化液中に浸漬する。化学強化処理は、場合によって行なわれなくてもよい。
【0053】
(h)第2研磨処理
次に、ガラス基板に第2研磨が施される。第2研磨処理は、主表面の鏡面研磨を目的とする。第2研磨においても、第1研磨に用いる両面研磨装置と同様の構成を有する両面研磨装置が用いられる。具体的には、ガラス基板を、両面研磨装置の研磨用キャリアに設けられた保持孔内に保持させながら、ガラス基板の両側の主表面の研磨が行われる。第2研磨処理が第1研磨処理と異なる点は、遊離砥粒の種類及び粒子サイズが異なることと、樹脂ポリッシャの硬度が異なることである。例えばコロイダルシリカを遊離砥粒として含む研磨液が両面研磨装置の研磨パッドとガラス基板の主表面との間に供給され、ガラス基板の主表面が研磨される。
本実施形態では、化学強化処理を行なうが、必要に応じて化学強化処理は行なわなくてもよい。第1研磨処理及び第2研磨処理の他にさらに別の研磨処理を加えてもよく、2つの主表面の研磨処理を1つの研磨処理で済ませてもよい。また、上記各処理の順番は、適宜変更してもよい。
【0054】
(実施例)
本実施形態の効果を確かめるために、ガラス基板11の端面研磨処理を、種々の溝断面形状の溝17を有するスペーサ16を用いて行なった。作製したガラス基板11の外径は65mmであり、厚さは0.8mmであり、形状加工処理で、ガラス基板の厚さ方向で0.15mmの介在面11bを主表面に対して45度の傾斜角度で形成した。
磁性粒子は平均粒径(D50)が1.25μmのFeを用い、研磨砥粒は平均粒径(D50)が1.0μmの酸化セリウムを用いた。研磨砥粒及び磁性粒子を含む磁気機能性流体は、室温(20℃)において1000(mPa・秒)の粘度を有していた。
【0055】
従来例では、溝幅が溝深さ方向において溝底まで一定の溝を備えたスペーサを用いた。
実施例では、
図2に示す溝断面を有する溝17を用い、距離L1を1.0mmに固定して、溝17の角度θを種々変化させた。また、溝17の角度θを90度に固定して比L2/L1を種々変化させた。
研磨レートは、
図3に示す側壁面11b及び介在面11cの中心位置P1及びP2における研磨取代量と研磨時間から研磨レートを求めた。介在面の研磨レートは、2つの介在面11cの平均値とした。
【0056】
距離L1を1.0mmに固定して、溝17の角度θを種々変化させた場合、角度θを180度未満とすることで、角度θが180度の場合と較べて研磨レートの比に上昇が見られた。角度θを120、100、60度とした場合、研磨レートの比はそれぞれ0.6、0.7、0.8となった。なお、角度θが180度の場合(従来例)の研磨レートの比は0.5であった。
一方、溝17の角度θを100度、L1を0.5mmに固定して比L2/L1を種々変化させた場合、比L2/L1を1.5、1.0、0.5としたとき、研磨レートの比はそれぞれ0.6、0.7、0.9となった。
これより、本実施形態の効果は明らかである。
【0057】
以上、本発明の
非磁性基板の製造方法
及び研磨装置について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。