【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。まず実施例における各種物性の測定法を下記する。
[MFRの測定]
メルトフローレイト(MFR)は、東洋精機製作所社製「セミオートメルトインデクサー2A」を用いて測定し、JIS K7210:1999「プラスチック−熱可塑性プラスチックのメルトフローレイト(MFR)及びメルトボリュームフローレイト(MVR)の試験方法」B法に記載のb)ピストンが所定の距離を移動する時間を測定する方法に準拠して測定する。具体的には、測定条件は、試料3〜8g、予熱270秒、ロードホールド30秒、試験温度300℃、試験荷重11.77N、ピストン移動距離(インターバル):25mmとする。試料の試験回数は3回とし、その平均をメルトフローレイト(g/10min)の値とする。なお、測定試料は、真空乾燥機にて120℃で5時間の条件で乾燥を行い測定する。
【0027】
[平均粒子径の測定]
平均粒子径とはD50で表現される値である。
具体的には、ロータップ型篩振とう機(飯田製作所製)を用いて、篩目開き26.5mm、22.4mm、19.0mm、16.0mm、13.2mm、11.20mm、9.50mm、8.80mm、6.70mm、5.66mm、4.76mm、4.00mm、3.35mm、2.80mm、2.36mm、2.00mm、1.70mm、1.40mm、1.18mm、1.00mm、0.85mm、0.71mm、0.60mm、0.50mm、0.425mm、0.355mm、0.300mm、0.250mm、0.212mm及び0.180mmのJIS標準篩(JIS Z8801)で試料約25gを10分間分級し、篩網上の試料重量を測定する。得られた結果から累積重量分布曲線を作成し、累積重量が50%となる粒子径(メディアン径)を平均粒子径とする。
【0028】
[発泡粒子の未発泡領域の確認及び長径の割合の測定]
発泡粒子を、その長径に対して直交するように2分割する。分割面(断面)をマイクロスコープ又は電子顕微鏡で撮影する。画像から未発泡領域が存在することを確認する。
ここで未発泡領域とは、樹脂の連続層の長さが50μm以上存在する領域を意味する。樹脂の連続層の長さは、気泡と気泡の端から端を直線で結んだ際の長さとする。この長さが未発泡領域の長径に対応する。
任意に5個の発泡粒子を採取し、発泡粒子の断面の長径及び未発泡領域の長径のそれぞれの平均値を算出して未発泡領域の長径の割合を以下にて算出する。
未発泡領域の長径の割合(%)=未発泡領域の長径の平均値/発泡粒子の断面の長径の平均値×100
【0029】
[発泡成形体の未発泡領域の確認及び長径の割合の測定]
発泡成形体から、100×40×(発泡成形体厚み)を連続して3枚切り出し、表層より粒子1層以上の部分を1〜3mmにスライスすることにより確認用サンプルを採取する。
採取したサンプルのスライス面中の発泡粒子中に未発泡領域の存在するものが1つ以上あれば、有芯である発泡成形体とする。
未発泡領域の長径は、未発泡領域が確認できた任意の5個の発泡粒子についてそれぞれ測定し、それらの平均値を意味する。未発泡領域の確認できる発泡粒子が5個に満たない場合は、確認できる1個以上の値を未発泡領域の長径とする。
任意に5個の発泡粒子を採取し、発泡粒子の断面の長径及び未発泡領域の長径のそれぞれの平均値を算出して未発泡領域の長径の割合を以下にて算出する。
未発泡領域の長径の割合(%)=未発泡領域の長径の平均値/発泡粒子の断面の長径の平均値×100
【0030】
[発泡粒子の嵩密度の測定]
発泡粒子約1000cm
3を、メスシリンダー内に1000cm
3の目盛りまで充填する。なお、メスシリンダーを水平方向から目視し、発泡粒子が1つでも1000cm
3の目盛りに達していれば、その時点で発泡粒子のメスシリンダー内への充填を終了する。次に、メスシリンダー内に充填した発泡粒子の重量を小数点以下2位の有効数字で秤量し、その質量をWgとする。そして、下記式により発泡粒子の嵩密度は求められる。
嵩密度(g/cm
3)=W/1000
嵩倍数は嵩密度の逆数にポリカーボネート系樹脂の密度(g/cm
3)を積算した値である。
ポリカーボネート系樹脂の密度はISO1183に規定した方法で測定する。
【0031】
[2次発泡比の測定]
1次発泡粒子を内圧付与した後、直ちに0.34MPaの蒸気を導入しながら30秒間保持し2次発泡させ、乾燥した後に得られた2次発泡粒子の嵩倍数を測定する。
得られた2次発泡粒子の嵩倍数と1次発泡粒子の嵩倍数を用いて以下の式にて2次発泡比を算出する。発泡粒子の嵩倍数の測定は上記記載の方法にて測定された発泡粒子の嵩倍数を意味する。
2次発泡比=(2次発泡粒子の嵩倍数)/(1次発泡粒子の嵩倍数)
2次発泡性比が1.5以上である場合、発泡粒子間の隙間を十分に埋めることが可能となり、外観良好な成形体が得られる。
【0032】
[発泡成形体外観の評価]
得られる発泡成形体から任意に50mm×50mmの表皮付き試験片を切り出し,試験片表面(表皮面)の粒子間の個数を計測する。計測する粒子間とは発泡粒子が3個以上で接している接点のことをいう。次に粒子間のピンホール(くぼみ)の個数を計測する。
発泡成形体のノビ=(1−粒子間ピンホール個数/全粒子間個数)×5
発泡成形体のノビが4以上を外観が良好、4未満を不良とする。
【0033】
[発泡成形体の密度の測定]
発泡成形体(成形後、40℃で20時間以上乾燥させたもの)から切り出した試験片(例75×300×30mm)の質量(a)と体積(b)をそれぞれ有効数字3桁以上になるように測定し、式(a)/(b)により発泡成形体の密度(g/cm
3)を求める。
倍数は密度の逆数にポリカーボネート系樹脂の密度(g/cm
3)を積算した値である。
【0034】
<実施例1>
(含浸工程)
ポリカーボネート系樹脂粒子(帝人社製パンライトL−1250Y、密度1.2g/cm
3、MFR8g/10min、平均粒子径3mm)100重量部を密閉可能な10Lの圧力容器に投入し、炭酸ガスを用いて圧力容器内をゲージ圧3MPaまで昇圧させ、10℃の環境下で12時間保持して発泡性粒子を得た。
(発泡工程)
含浸終了後、圧力容器内の炭酸ガスをゆっくりと除圧し内部の発泡性粒子を取出した。直ちに結合防止剤としての0.3重量部の炭酸カルシウムと発泡性粒子とを混合した。その後、撹拌機付きの高圧発泡機に発泡性粒子を投入し、撹拌しながら0.34MPaの水蒸気を用いて発泡させることで、嵩倍数8.7倍(嵩密度0.14g/cm
3)の発泡粒子を得た。発泡粒子の断面写真を
図2に示す。
図2には、未発泡領域が見られる。
【0035】
(第2の含浸工程:内圧付与工程)
得られた発泡粒子の表面を0.01N−塩酸を用いて洗浄し乾燥させた後、10Lの圧力容器に投入し、密閉した。窒素ガスを用いて密閉した圧力容器内をゲージ圧1MPaまで昇圧させ24時間放置することで内圧付与した。
【0036】
(成形工程)
内圧付与を実施した圧力容器内の窒素ガスをゆっくり除圧し、発泡粒子(1次発泡粒子)を取出し、直ちに高圧成形機を用いて発泡成形を実施した。縦400mm×横300mm×厚さ30mmの内寸の成形用金型内に発泡粒子を充填し、0.30〜0.35Mpaの水蒸気を50秒導入して加熱し、冷却することで倍数8倍の発泡成形体を得た。得られた発泡成形体を30℃の乾燥室で8時間程度乾燥させた。
更に、取出した1次発泡粒子は別途2次発泡比の測定を所定の手段を用いて実施した。
【0037】
<実施例2>
含浸温度を20℃に変更すること以外は実施例1と同様にして発泡性粒子を得た。
発泡性粒子から実施例1同様にして発泡粒子及び発泡成形体を得た。得られた発泡粒子の嵩倍数は11.0倍(嵩密度0.11g/cm
3)であり、発泡成形体の倍数は10倍であった。
【0038】
<実施例3>
含浸温度を20℃に、水蒸気圧を0.40MPa変更すること以外は実施例1と同様にして発泡粒子を得た。得られた発泡粒子の嵩倍数は16.2倍(嵩密度0.06g/cm
3)であった。
発泡粒子から実施例1同様にして発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の倍数は15倍であった。
【0039】
<比較例1>
含浸圧力を4MPaに、含浸温度を30℃に、含浸時間を36時間に、水蒸気圧を0.36MPa変更すること以外は実施例1と同様にして発泡粒子を得た。得られた発泡粒子の嵩倍数は9.5倍(嵩密度0.11g/cm
3)であった。発泡粒子の断面写真を
図3に示す。
図3には、未発泡領域が見られず、中心部まで気泡が位置している。
発泡粒子から実施例1同様にして発泡成形体を得た。得られた発泡成形体の倍数は9倍であった。
【0040】
<比較例2>
含浸圧力を4MPaに、含浸温度を30℃に、含浸時間を36時間に変更すること以外は実施例1と同様にして発泡性粒子を得た。
発泡性粒子から実施例1同様にして発泡粒子及び発泡成形体を得た。得られた発泡粒子の嵩倍数は10.2倍(嵩密度0.10g/cm
3)であり、発泡成形体の倍数は9倍であった。
実施例及び比較例の発泡粒子及び発泡成形体の未発泡領域の有無、未発泡領域の長径の割合、2次発泡比及び外観評価を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
また、実施例1〜3、比較例1の発泡成形体の断面写真を
図4〜7に示す。実施例1〜3に対応する
図4〜6では、集合した発泡粒子の中心部に未発泡領域が見られる。比較例1に対応する
図6では、集合した発泡粒子の中心部に未発泡領域が見られない。
上記表及び
図4〜7から、集合した発泡粒子の中心部に未発泡領域が見られる発泡成形体は、外観が良好であることが分かる。