(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記水添加工程の前及び/又は後に、及び/又は前記水添加工程と同時に、前記液状のグリセリン誘導体変性シリコーン又はその組成物に液状油剤を添加する液状油剤添加工程を更に含む、請求項1乃至4のいずれかに記載の製造方法。
前記液状のグリセリン誘導体変性シリコーン又はその組成物が、酸性水溶液によって処理されており、該酸性水溶液の処理によって発生した臭気物質及び水が加熱又は減圧することにより取り除かれている、請求項1乃至8のいずれかに記載の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の第1の態様は、液状のグリセリン誘導体変性シリコーン又はその組成物に水を添加する水添加工程を含む、液状の透明乃至半透明のグリセリン誘導体変性シリコーン組成物の製造方法である。
【0034】
以下、本発明の第1の態様について詳細に説明する。
【0035】
[グリセリン誘導体変性シリコーン]
本発明を適用できるグリセリン誘導体変性シリコーンは、グリセリン誘導体で変性されたシリコーン化合物であって、液状のものであり、好ましくは少なくとも100℃で液体である。そして、この条件を満たすものであればその化学構造等に制限は無い。
【0036】
本発明において「液状」又は「液体」であるとは、所定の容器内のオルガノポリシロキサンの液面を水平とした後、当該容器を傾斜させ、1時間後、好ましくは30分後、より好ましくは10分後に、当該液面が再度水平となりうることを意味する。ここで、「水平」とは、重力の作用方向に対して直角に交差する平面を形成することを意味する。前記グリセリン誘導体変性シリコーンは、少なくとも100℃において液体であることが好ましいが、100℃以下〜室温の範囲でも液状を呈することがより好ましい。具体的には、好ましくは80℃においても液体であり、より好ましくは40℃においても液体であり、更により好ましくは室温(25℃)においても液体である。なお、100℃以上で液状であるものは当然であるが、室温(25℃)以下の温度において流動性を呈さない半ゲル状或いは軟質固形状であっても、例えば、100℃に加温すれば液状を呈するグリセリン誘導体変性シリコーンは、液状のグリセリン誘導体変性シリコーンの範囲内に包含される。
【0037】
グリセリン誘導体変性シリコーンは、下記一般式(1):
【化5】
{式中、R
1は一価有機基(但し、R
2、L及びQを除く)、水素原子又は水酸基を表し、R
2は炭素原子数9〜60の、置換若しくは非置換の、直鎖状若しくは分岐状の一価炭化水素基、又は、下記一般式(2−1);
【化6】
(式中、R
11はそれぞれ独立して置換若しくは非置換の炭素原子数1〜30の一価炭化水素基、水酸基又は水素原子であり、R
11のうち少なくとも一つは前記一価炭化水素基である。tは2〜10の範囲の数であり、rは1〜500の範囲の数である)若しくは下記一般式(2−2);
【化7】
(式中、R
11及びrは上記のとおりである)で表される鎖状のオルガノシロキサン基を表し、L
1はi=1のときの下記一般式(3);
【化8】
(式中、R
3はそれぞれ独立して炭素原子数1〜30の、置換若しくは非置換の、直鎖状若しくは分岐状の一価炭化水素基を表し、R
4はそれぞれ独立して炭素原子数1〜6のアルキル基又はフェニル基を表し、Zは二価有機基を表し、iはL
iで示されるシリルアルキル基の階層を表し、該シリルアルキル基の繰り返し数である階層数がkのとき1〜kの整数であり、階層数kは1〜10の整数であり、L
i+1はiがk未満のときは該シリルアルキル基であり、i=kのときはR
4であり、h
iは0〜3の範囲の数である)で表される、シロキサンデンドロン構造を有するシリルアルキル基を表し、Qはグリセリン誘導体基を表し、
a 、b 、c及びdは、それぞれ、1.0≦a≦2.5、0≦b≦1.5、0≦c≦1.5、0.0001≦d≦1.5の範囲にある数である}で表される、グリセリン誘導体変性シリコーンであることができる。
【0038】
ここで、一般式(1)で表わされるグリセリン誘導体変性シリコーンが、上記のR
2で表わされる長鎖型の有機基又は鎖状のオルガノシロキサン基を有する場合、bは0より大きい数であり、0.0001≦b≦1.5であることが好ましく、0.001≦b≦1.5であることがより好ましい。同様に、一般式(1)で表わされるグリセリン誘導体変性シリコーンが上記のL
1で表わされるシロキサンデンドロン構造を有するシリルアルキル基を有する場合、cは0より大きい数であり、0.0001≦c≦1.5であることが好ましく、0.001≦c≦1.5であることがより好ましい。
【0039】
前記グリセリン誘導体変性シリコーンとしては、Qであるグリセリン誘導体基と共に、R
2で表わされる長鎖型有機基若しくは鎖状のオルガノシロキサン基又はL
1で表わされるシロキサンデンドロン構造を有するシリルアルキル基を有することが好ましい。
このとき、好適なb及びcの値は、必須とする官能基により以下のように表わされる。
(1)R
2で表わされる基を有する場合:0.001≦b≦1.5であり、かつ0≦c≦1.5
(2)L
1で表わされる基を有する場合:0≦b≦1.5であり、かつ0.001≦c≦1.5
(3)R
2で表わされる基とL
1で表わされる基を両方有する場合:0.001≦b≦1.5であり、かつ0.001≦c≦1.5
【0040】
一般式(1)のR
1である一価有機基は互いに同一でも異なっていてもよく、R
2、L
1及びQに該当する官能基でない限り、特に限定されるものではないが、炭素原子数1〜8の、置換若しくは非置換の、直鎖状若しくは分岐状の一価炭化水素基、−R
5O(AO)
nR
6(式中、AOは炭素原子数2〜4のオキシアルキレン基を表し、R
5は炭素原子数3〜5の、置換若しくは非置換の、直鎖状若しくは分岐状の二価炭化水素基を表し、R
6は水素原子、炭素原子数1〜24の、置換若しくは非置換の、直鎖状若しくは分岐状の一価炭化水素基、又は、炭素原子数2〜24の、置換若しくは非置換の、直鎖状若しくは分岐状のアシル基を表し、n=1〜100である)で表される(ポリ)オキシアルキレン基、アルコキシ基、水酸基、水素原子であることが好ましい。但し、R
1が全て水酸基、水素原子、前記アルコキシ基又は前記(ポリ)オキシアルキレン基になることはない。
【0041】
炭素原子数1〜8の一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基;及び、これらの基の炭素原子に結合した水素原子が少なくとも部分的にフッ素等のハロゲン原子、又は、エポキシ基、グリシジル基、アシル基、カルボキシル基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基等を含む有機基で置換された基(但し、総炭素原子数は1〜8)が挙げられる。一価炭化水素基は、アルケニル基以外の基であることが好ましく、メチル基、エチル基、又は、フェニル基が特に好ましい。また、アルコキシ基は、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等低級アルコキシ基や、ラウリルアルコキシ基、ミリスチルアルコキシ基、パルミチルアルコキシ基、オレイルアルコキシ基、ステアリルアルコキシ基、ベへニルアルコキシ基等高級アルコキシ基等が例示される。
【0042】
特に、R
1は脂肪族不飽和結合を有しない炭素原子数1〜8の一価炭化水素基又は一価フッ化炭化水素基であることが好ましい。R
1に属する脂肪族不飽和結合を有しない一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基のようなアラルキル基が例示され、一価フッ化炭化水素基は、トリフルオロプロピル基、ペンタフルオロエチル基等のパーフルオロアルキル基が例示される。工業的には、R
1がメチル基、エチル基、又は、フェニル基であることが好ましく、特に、全てのR
1の90モル%〜100モル%が、メチル基、エチル基、又は、フェニル基から選択される基であることが好ましい。
【0043】
前記グリセリン誘導体変性シリコーンは、更なる機能性の付与を目的として、親水性基(−Q)以外の変性基、特に短鎖又は中鎖炭化水素ベースの基、をR
1として導入し、或いは設計することが可能である。すなわち、R
1が置換の一価炭化水素基である場合、置換基を、付与したい特性及び用途に合わせて適宜選択することができる。例えば、化粧料や繊維処理剤原料として使用する場合に、使用感、感触や持続性の向上等を目的として、アミノ基、アミド基、アミノエチルアミノプロピル基、カルボキシル基等を一価炭化水素基の置換基として導入することができる。
【0044】
一般式(1)のR
2の、炭素原子数9〜60の、置換若しくは非置換の、直鎖状若しくは分岐状の一価炭化水素基は長鎖炭化水素基又は上記一般式(2−1)若しくは(2−2)で表される鎖状のオルガノシロキサン基であり、ポリシロキサンの主鎖及び/又は側鎖に導入されることにより、外用剤又は化粧料中に配合される油剤、粉体等の各種成分に対する親和性、乳化性及び分散性、更に、使用感をより改善することができる。更に、前記一価長鎖炭化水素基又は鎖状のオルガノポリシロキサン基は疎水性官能基であるために、アルキル基の含有量の多い有機油に対する相溶性・配合安定性がより改善される。R
2は、全部が前記一価長鎖炭化水素基又は鎖状のオルガノポリシロキサン基であってもよく、これら両方の官能基であってよい。前記グリセリン誘導体変性シリコーンにおいては、特に、R
2の一部又は全部が、一価長鎖炭化水素基であることが好ましく、かかる一価長鎖炭化水素基を分子中に有することにより、前記グリセリン誘導体変性シリコーンは、シリコーン油だけでなく、アルキル基含有量の多い非シリコーン油に対してもより優れた相溶性を示し、例えば、非シリコーン油からなる熱安定性、経時安定性に優れた乳化物、分散物を得ることができる。
【0045】
一般式(1)のR
2で表される、ケイ素原子に結合した、炭素原子数9〜60の、置換若しくは非置換の、直鎖状若しくは分岐状の一価炭化水素基は、互いに同一でも異なっていてもよく、更に、その構造は、直鎖状、分岐状、部分分岐状の中から選択される。本発明においては、特に、非置換且つ直鎖状の一価炭化水素基が好適に用いられる。非置換一価炭化水素基としては、例えば、炭素原子数9〜60、好ましくは炭素原子数9〜30、より好ましくは炭素原子数10〜25のアルキル基、アリール基又はアラルキル基が挙げられる。一方、置換一価炭化水素基としては、例えば、炭素原子数9〜30、好ましくは炭素原子数9〜30、より好ましくは炭素原子数10〜24のパーフルオロアルキル基、アミノアルキル基、アミドアルキル基、エステル基が挙げられる。また、前記一価炭化水素基の炭素原子の一部がアルコキシ基で置換されていてもよく、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が例示される。このような一価炭化水素基は、特に、炭素原子数9〜30のアルキル基であることが好ましく、一般式:−(CH
2)
v−CH
3(vは8〜29の範囲の数)で表される基が例示される。炭素原子数10〜24のアルキル基が特に好ましい。
【0046】
一般式(2−1)又は(2−2)で示される鎖状のオルガノシロキサン基は、シロキサンデンドロン構造を有するシリルアルキル基とは異なり、直鎖状のポリシロキサン鎖構造を有する。一般式(2−1)又は(2−2)において、R
11は各々独立に、置換若しくは非置換の炭素原子数1〜30の一価炭化水素基、水酸基又は水素原子である。置換若しくは非置換の炭素原子数1〜30の一価炭化水素基は、好ましくは、炭素原子数1〜30のアルキル基、炭素原子数6〜30のアリール基、炭素原子数6〜30のアラルキル基、炭素原子数6〜30のシクロアルキル基であり、メチル基,エチル基,プロピル基,ブチル基,ペンチル基,ヘキシル基,ヘプチル基,オクチル基,デシル基等のアルキル基;シクロペンチル基,シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基が例示され、これらの基の炭素原子に結合した水素原子が少なくとも部分的にフッ素等のハロゲン原子、又は、エポキシ基、アシル基、カルボキシル基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基等を含む有機基で置換されていてもよい。R
11として特に好適には、メチル基,フェニル基又は水酸基が上げられ、R
11の一部がメチル基であり、一部が炭素原子数8〜30の長鎖アルキル基であるような形態も好適である。
【0047】
一般式(2−1)又は(2−2)において、tは2〜10の範囲の数であり、rは1〜500の範囲の数であり、rが2〜500の範囲の数であることが好ましい。かかる直鎖状のオルガノシロキサン基は疎水性であり、各種油剤との相溶性の観点から、rは1〜100の範囲の数であることが好ましく、2〜30の範囲の数であることが特に好ましい。
【0048】
一般式(3)で示される、シロキサンデンドロン構造を有するシリルアルキル基は、カルボシロキサン単位がデンドリマー状に広がった構造を包含し、高撥水性を呈する官能基であり、親水性基との組み合わせのバランスに優れ、前記グリセリン誘導体変性シリコーンを配合した外用剤又は化粧料の使用時に、不快なベトツキ感を抑え、さっぱりした、自然な感触を与えることができる。更に、前記シロキサンデンドロン構造を有するシリルアルキル基は、化学的に安定であるために幅広い成分と組み合わせて使用することができるという有利な特性を付与する官能基である。
【0049】
一般式(3)のR
3で表される、炭素原子数1〜30の、置換若しくは非置換の、直鎖状若しくは分岐状の一価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基等のアラルキル基;及び、これらの基の炭素原子に結合した水素原子が少なくとも部分的にフッ素等のハロゲン原子、又は、エポキシ基、グリシジル基、アシル基、カルボキシル基、アミノ基、メタクリル基、メルカプト基等を含む有機基で置換された基(但し、総炭素原子数は1〜30)が挙げられる。
【0050】
一般式(3)のR
4で表される、炭素原子数1〜6のアルキル基又はフェニル基のうち、炭素原子数1〜6のアルキル基としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、s−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、シクロペンチル、ヘキシル等の直鎖状、分岐状或いは環状のアルキル基が挙げられる。
【0051】
一般式(3)において、i=kのとき、R
4はメチル基又はフェニル基であることが好ましい。特に、i=kのときはメチル基であることが好ましい。
【0052】
階層数kは、工業的には1〜3の整数であることが好適であり、より好適には、1又は2である。各階層数において、L
1で示される基は以下のように表される。式中、R
3、R
4及びZは前記と同様の基である。
【0053】
階層数k=1である場合、L
1は下記一般式(3−1)で表される。
【化9】
【0054】
階層数k=2である場合、L
1は下記一般式(3−2)で表される。
【化10】
【0055】
階層数k=3である場合、L
1は下記一般式(3−3)で表される。
【化11】
【0056】
階層数が1〜3の場合における一般式(3−1)〜(3−3)で示される構造において、h
1、h
2及びh
3は各々独立に0〜3の範囲の数である。これらのh
iは特に0〜1の範囲の数であることが好ましく、h
iが0であることが特に好ましい。
【0057】
一般式(3)及び(3−1)〜(3−3)において、Zは、各々独立に、二価有機基であり、具体的には、ケイ素結合水素原子と、アルケニル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基等の不飽和炭化水素基を末端に有する官能基を付加反応させることにより形成される二価の有機基が挙げられるが、シロキサンデンドロン構造を有するシリルアルキル基の導入法に応じて、これらの官能基に限らず、適宜選択することができる。好ましくは、Zは、各々独立に、下記一般式:
【化12】
で示される二価の有機基から選ばれる基である。特に、L
1におけるZは、好適には、ケイ素結合水素原子と、アルケニル基の反応により導入される一般式−R
7−で示される2価の有機基である。同様に、Zはケイ素結合水素原子と、不飽和カルボン酸エステル基との反応により導入される−R
7−COO−R
8−で示される2価の有機基が好適である。
【0058】
一方、階層数kが2以上であり、L
2〜L
kであるL
iで示されるシリルアルキル基において、Zは炭素原子数2〜10のアルキレン基または−R
7−COO−R
8−で示される2価の有機基であることが好ましく、エチレン基,プロピレン基,メチルエチレン基又はヘキシレン基、−CH
2C(CH
3)COO−C
3H
6−から選択される基であることが特に好ましい。
【0059】
上記一般式中、R
7は、各々独立に、置換若しくは非置換の、直鎖状若しくは分岐鎖状の、炭素原子数2〜22のアルキレン基若しくはアルケニレン基、又は、炭素原子数6〜22のアリーレン基を表す。より具体的には、R
7はエチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基等の直鎖状アルキレン基;メチルメチレン基、メチルエチレン基、1−メチルペンチレン基、1,4−ジメチルブチレン基等の分岐状アルキレン基が例示され、R
8は、エチレン基、プロピレン基、メチルエチレン基又はヘキシレン基から選択される基であることが好ましい。
【0060】
上記一般式中、R
8は、下記式で示される二価の有機基から選択される基である。
【化13】
【0061】
一般式(1)において、Qはグリセリン誘導体基であり、前記グリセリン誘導体変性シリコーンの親水性部位を構成する。Qはグリセリン誘導体部位を有する限りその構造は限定されるものではないが、二価有機基を介してグリセリン誘導体残基がケイ素原子に結合することが好ましい。
【0062】
ここで、グリセリン誘導体残基は、(ポリ)グリセリン構造を有する親水基であり、モノグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン及び5量体以上のポリグリセリン構造を有する親水基である。また、その末端水酸基の一部がアルキル基により封鎖されていても良い。更に、(ポリ)グリセリン構造は、直鎖状でも分岐状でもよく、樹状に分岐した構造であってもよい。
【0063】
このようなグリセリン誘導体基(Q)は、二価以上の連結基を介してケイ素原子に結合し、かつ下記構造式(3―3)〜(3−6)で表される親水性単位から選択される少なくとも1種以上の親水性単位を含有してなるグリセリン誘導体基であることが好ましい。ただし、Qを構成する親水性単位が下記構造式(3−6)のみからなることは無い。
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
(rは1〜6の範囲の数)
【0064】
式(3−3)〜(3−5)中、Wは水素原子又は炭素原子数1〜20のアルキル基であり、水素原子であることが好ましい。特に、Wが水素原子である場合、空気下で酸化され難く、保存中にホルムアルデヒド等のアルデヒド類、ギ酸エステル類等のアレルギー抗原性化合物を経時的に生成し難いので環境適合性が高いという利点がある。
【0065】
上記構造式(3−3)〜(3−5)で示される親水性単位は、主としてグリセリンを含む多価アルコール類、ポリグリセリン類(ポリグリセロール類ともいう)、ポリグリシジルエーテル類又はこれらの末端水酸基を部分的に炭化水素基により封鎖した化合物から選択される親水性化合物から誘導される親水性基に含まれる親水性単位である。なお、本発明に係るグリセリン誘導体基(Q)は、更に、上記構造式(3−6)で示されるオキシアルキレン単位(例えば、オキシエチレン単位やオキシプロピレン単位)からなる親水性構造(ポリエーテル構造)を任意で含む親水基であっても良い。ただし、化粧料又は外用剤の処方全体としてPEG−FREE処方(=ポリオキシエチレン(PEG)構造を有する化合物を含有しない処方)を実現する場合には、2以上のオキシアルキレン単位からなるオキシアルキレン構造を分子中に有しないことが好ましい。
【0066】
一般式(1)において、Qは、例えばモノグリセリン変性基やジグリセリン変性基のような分岐構造を有しない親水性基であってもよいが、ポリグリセロール基又はポリグリシジルエーテル基のように、当該官能基中の一部に分岐構造を有する親水性基であってもよい。
【0067】
より詳細には、Qは、二価以上の連結基を介してケイ素原子に結合し、上記構造式(3―3)〜(3−6)で表される親水性単位から選択される少なくとも1種以上の親水性単位が直鎖状に結合してなるグリセリン誘導体基{ただし、Qを構成する親水性単位が前記構造式(3−6)のみからなることは無い}であってもよい。同様に、Qは二価以上の連結基を介してケイ素原子に結合し、かつ上記構造式(3―3)〜(3−6)で表される親水性単位から選択される少なくとも1種以上の親水性単位を2以上含有してなり、かつ下記構造式(3−7)〜(3−9)で表される基から選択される分岐単位を有するグリセリン誘導体基でもよい。
【0069】
上記構造式(3−7)〜(3−9)の2つの酸素原子には、各々独立に、上記一般式(3−3)〜(3−6)で表される親水性単位から選択される、少なくとも1種以上の親水性単位が結合する。当該親水性単位は、更に、構造式(3−7)〜(3−9)で表される基から選択される分岐単位に結合してもよく、親水性単位が多階層に分岐してなる樹状のポリエーテル構造、ポリグリセロール構造又はポリグリシジルエーテル構造を形成していても良い。一例として、構造式(3−7)で示される一つの分岐単位及び構造式(3−9)で示される二つの分岐単位を有し、樹状に分岐してなる親水基Qの構造を以下に示すが、樹状のポリグリセロール構造がこれに限定されるものではないことは言うまでもない。
【0070】
【化21】
(式中、mは0〜50の範囲の数であるが、全てのmが0となることはない。)
【0071】
二価以上の連結基は、Qである親水性基に含まれる、ケイ素原子への結合部位であって、その構造は特に限定されるものではないが、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基等のアルキレン基;エチレンフェニレン基、プロピレンフェニレン基等のアルキレンフェニレン基、エチレンベンジレン基等のアルキレンアラルキレン基;エチレノキシフェニレン基、プロピレノキシフェニレン基等のアルキレノキシフェニレン基;メチレノキシベンジレン基、エチレノキシベンジレン基、プロピレノキシベンジレン基等のアルキレノキシベンジレン基、更には以下に示される基が例示される。なお、二価以上の連結基中のエーテル結合は、0〜3個までが好ましく、0又は1個がより好ましい。
【0073】
Qは、より好適には、下記構造式(4−1)〜(4−4)で示される親水性基であり、これらは一般に、ポリグリセリン系の化合物から誘導されてなる親水性基である。
【化23】
【0074】
式(4−1)〜(4−4)において、R
9は(p+1)価の有機基であり、pは1以上3以下の数である。かかるR
9として、前記の二価以上の連結基と同一の基を例示することができる。
【0075】
特に好適には、pは1であり、好適なR
9として下記一般式で示される2価の有機基から選択される基が例示できる。
【化24】
(式中、R
12は、各々独立に、置換基を有していてもよい、炭素数2〜22の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基、アルケニレン基又は炭素数6〜22のアリーレン基である。)
【0076】
X
1は各々独立に、下記一般式(3−3−1)〜(3−5−1)で表される親水性単位から選択される少なくとも1種以上の親水性単位であり、mは1〜5の範囲の数であり、特に好適には1〜4である。
【化25】
【化26】
【化27】
【0077】
X
2は、Qが含有しても良い任意の(ポリ)オキシエチレン単位でありqは0〜100の範囲の数である。qは0〜50の範囲の数であることが好ましく、0〜30であることが好ましい。なお、X
2が(ポリ)オキシエチレン単位と共に(ポリ)オキシプロピレン単位及び/又は(ポリ)オキシブチレン単位を含むこともできる。この場合、X
2は式:−(C
2H
4O)
t1(C
3H
6O)
t2(C
4H
8O)
t3−で示される単位(式中、t1、t2及びt3は、0≦t1≦100、0≦t2≦100、及び、0≦t3≦50の数であり、好ましくは0≦t1≦50、0≦t2≦50、及び、0≦t3≦30の数であり、より好ましくは0≦t1≦30、0≦t2≦30、及び、0≦t3≦10の数である)で示される(ポリ)オキシアルキレン単位としてQに含まれることもできる。ただし、化粧料又は外用剤の処方全体としてPEG−FREE処方を実現する場合には、オキシアルキレン単位の繰り返し数の平均値が2以上のオキシアルキレン構造を分子中に有しないことが好ましい。
【0078】
ここで、X
1及びX
2の結合の形式は、ブロック状であってもランダム状であってもよい。すなわち、Qである親水基は、上記一般式(3−3−1)〜(3−5−1)で表される親水性単位がブロック状に結合してなる親水性セグメントと、ポリオキシアルキレン単位からなる親水性セグメントが結合してなる親水性基であってもよく、これらを構成する単位がランダムに結合してなる親水性基であってもよい。例えば、−(X
2)
m1−X
1−(X
2)
m2−X
1−のような結合形式が例示できる。
【0079】
R
10は水素原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、アシル基及びグリシジル基からなる群から選択される基である。
【0080】
本発明に係るグリセリン誘導体変性シリコーンの油剤成分に対する増粘効果・ゲル化能の点、及び乳化・分散安定性等の界面活性能の点から、好適な親水性基Qは、下記構造式(4−1−1)で表される(ポリ)グリセリンから誘導されてなる親水性基である。
【化28】
【0081】
式中、R
9’は2価の有機基であり、前記同様の基が例示できる。X
1,及びR
10は前記同様の基であり、mは1〜5の範囲の数である。
【0082】
本発明に係るグリセリン誘導体変性シリコーンにおいて、油剤成分に対する増粘効果及びゲル化能、界面活性剤(乳化剤)、保湿剤、各種処理剤(粉体分散剤又は表面処理剤)としての使用、特に粉体処理剤としての使用及び化粧料原料としての使用の観点から、親水性基Qは、(ポリ)グリセリン系化合物から誘導されてなる親水性基であり、(ポリ)グリセリンから誘導されてなる親水性基であることが最も好ましい。具体的には、(ポリ)グリセリンモノアリルエーテル,(ポリ)グリセリルオイゲノールであって、モノグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン又はテトラグリセリン構造を有する(ポリ)グリセリン系化合物から誘導されてなる親水性基が好適である。
【0083】
なお、本発明に係る液状オルガノポリシロキサンにおいて、油剤に対する親和性及びPEG−FREE処方を実現可能な優れた乳化特性、及び優れた粉体分散特性の見地からは、グリセリン誘導体基は、ジグリセリン誘導体基であることが特に好ましい。
【0084】
特に好適な親水性基Qは、前記構造式(4−1−1)におけるグリセリン単位の繰り返し数mが平均して1.1〜2.9の範囲にあり、好適には繰り返し数の平均値が1.5〜2.4の範囲であり、より好適には、1.8〜2.2の範囲であり、最も好適には平均2である。このとき、式中、R
9’は2価の有機基であり、前記同様の基が例示できる。X
1,及びR
10も前記同様の基である。親水性単位の繰り返し数の平均値が前期範囲にあると、乳化粒子径が細かく、幅広い油剤系に対して長期間に亘って安定な油中水型エマルション組成物を得ることができる利点がある。
【0085】
グリセリン単位の繰り返し数は、平均値であってよく、グリセリン単位の繰り返し数が2であるジグリセリン誘導体基が、他のグリセリン誘導体基に対して、全体の25質量%を超える量であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、80質量%以上であることが特に好ましい。最も好ましいものは、ジグリセリン誘導体基の純度が98質量%を超える純品である。また、PEG−FREE処方を目的とする場合、同官能基中にオキシアルキレン単位の繰り返し数の平均値が2以上のオキシアルキレン構造を有しないことが必要である。
【0086】
ジグリセリン誘導体基は、より好適には、下記構造式(5):
−R−O−X
m−H (5)
で表わされるジグリセリン誘導体基である。
式中、Rは二価有機基であり、上記の2価の連結基と同様の基が例示される。好適には、Rはオキシアルキレン単位の繰り返し数の平均値が2以上のオキシアルキレン構造を含有しない2価の連結基である。Xは前記の構造式(3−3―1)〜(3−5−1)で表される親水性単位から選択される少なくとも1種以上のグリセリン単位である。mはグリセリン単位の繰り返し数であり、平均して1.5〜2.4の範囲の数である。なお、各グリセリン単位の繰り返し数の好適範囲は、前記同様である。
【0087】
最も好適には、ジグリセリン誘導体基は、下記一般式(5−1)
【化29】
(式中、R
5はオキシアルキレン単位の繰り返し数の平均値が2以上のオキシアルキレン構造を有しない二価有機基を表す)、又は、下記一般式(5−2)
【化30】
(式中、R
5は上記のとおりである)で表わされるジグリセリン誘導体基である。
【0088】
本発明に係る液状オルガノポリシロキサンにおいて、ジグリセリン誘導体基は、ジグリセリンモノアリルエーテル,ジグリセリルオイゲノールから誘導されてなる親水性基が好適である。
【0089】
前記グリセリン誘導体基(−Q)の結合位置は、主鎖であるポリシロキサンの側鎖又は末端のいずれであってもよく、グリセリン誘導体変性シリコーン1分子中に2以上のグリセリン誘導体基を有する構造であってもよい。更に、これらの2以上のグリセリン誘導体基は、同一又は異種のグリセリン誘導体基であってもよい。これらの2以上のグリセリン誘導体基は、主鎖であるポリシロキサンの側鎖のみ、末端のみ又は側鎖及び末端に結合する構造であってよい。
【0090】
一般式(1)で表される、グリセリン誘導体基(−Q)を有するグリセリン誘導体変性シリコーンは、少なくとも100℃において液体であるものが好ましい。また、そのポリシロキサン主鎖は、直鎖状、分岐鎖状、網状(微架橋及びエラストマー状を含む)のいずれであってもよい。本発明の製造方法により、低粘度のグリセリン誘導体変性シリコーンだけでなく、高粘度〜室温では固体状(可塑度を有し、流動性に乏しいガム状を含む)のグリセリン誘導体変性シリコーンであっても、その不透明な外観を簡便に改善し、半透明〜透明均一液状に安定化することが可能である。
【0091】
本発明に係るグリセリン誘導体変性シリコーンは、特に、下記構造式(1−1):
【化31】
式中、
R
2、L
1及びQは、各々独立に、上記のとおりであり、
Xはメチル基、R
2、L
1及びQからなる群から選択される基であり、
n1、n2、n3及びn4は、それぞれ独立して、0〜2,000の範囲の数であり、n1+n2+n3+n4は0〜2,000の範囲の数である。但し、n4=0のとき、Xの少なくとも一方はQである)で表される直鎖状のポリシロキサン構造を有するグリセリン誘導体変性シリコーンであることが好ましい。
【0092】
式(1−1)中、(n1+n2+n3+n4)は10〜2,000の範囲の数であることが好ましく、25〜1500の範囲がより好ましく、50〜1000の範囲の数であることが特に好ましい。n1は10〜2,000の範囲の数であることが好ましく、25〜1500の範囲がより好ましく、50〜1000の範囲であることが更により好ましい。n2は、0〜250の範囲の数であることが好ましく、0〜150の範囲の数であることがより好ましい。
【0093】
R
2が前記の長鎖アルキル基である場合、界面活性及びシリコーン以外の油剤との相溶性の点から、特にn2>1であることが好ましい。n3は0〜250の範囲の数であることが好ましく、特にn3>1であって側鎖部分に、シロキサンデンドロン構造を有するシリルアルキル基(−L
1)を1以上有することが特に好ましい。n4は0〜100の範囲の数であり、0〜50の範囲の数であることが好ましい。但し、n4=0のとき、Xの少なくとも一方はQであることが必要である。
【0094】
上記構造式(1−1)において、Qは各々独立に上記一般式(4−1)〜一般式(4−4)のいずれかにより表されるグリセリン誘導体基であることが好ましく、前記グリセリン誘導体変性シリコーンにおいては、Qが全て一般式(4−1)〜一般式(4−4)のいずれかにより表される1種類のグリセリン誘導体基であってもよく、一分子中のQの一部が上記一般式(4−1)〜一般式(4−4)のいずれかによりで表されるグリセリン誘導体基であり、残りのQが、その他のグリセリン誘導体基であってもよい。
【0095】
更に、前記グリセリン誘導体変性シリコーンは、上記一般式(1)で示される1種類又は2種類以上のグリセリン誘導体変性シリコーンの混合物であってもよい。より具体的には、シロキサン主鎖の重合度や変性率、変性基の種類の異なる2種類以上のグリセリン誘導体変性シリコーンの混合物であってもよい。
【0096】
前記グリセリン誘導体変性シリコーンとしては、下記構造式(1−1−1):
【化32】
(式中、
R
2、Q、X、Z、n1、n2、n3及びn4は上記のとおりである)、又は、下記構造式(1−1−2):
【化33】
(式中、
R
2、Q、X、Z、n1、n2、n3及びn4は上記のとおりである)で表されるグリセリン誘導体変性シリコーンがより好ましい。
【0097】
グリセリン誘導体基によるオルガノポリシロキサンの変性率は、主鎖であるポリシロキサンに結合した全ての官能基のうち0.001〜50モル%の範囲であることが好ましく、0.01〜30モル%の範囲であることがより好ましく、0.1〜10モル%の範囲であることが更により好ましい。なお、構造式(1−1)で示されるグリセリン誘導体変性シリコーンにおいて、グリセリン誘導体基による変性率(モル%)は下式:
変性率(モル%)=(1分子あたりの珪素原子に結合したグリセリン誘導体基の数)/{6+2×(n1+n2+n3+n4)}×100
で示される。例えば、10個のグリセリン誘導体基含有有機基(GLY基)を有するドデシルシロキサンからなるグリセリン誘導体変性シリコーン{MD
GLY10Mの構造式で表される}の場合には、26個の珪素原子結合官能基のうち、10個がグリセリン誘導体基含有有機基により変性されているから、グリセリン誘導体基含有有機基による変性率は、38.5モル%である。
【0098】
(グリセリン誘導体変性シリコーン及びそれを主成分として含む混合物の製造)
前記グリセリン誘導体変性シリコーンは、例えば、ヒドロシリル化反応触媒の存在下において、(a1)反応性不飽和基を1分子中に1つ有するグリセリン誘導体、(b1)ケイ素原子結合水素原子を有するオルガノポリシロキサン、及び、(c1)反応性不飽和基を1分子中に1つ有する有機化合物、更に必要に応じて(d1)反応性不飽和基を1分子中に1つ有するシロキサンデンドロン化合物、及び/又は(e1)反応性不飽和基を1分子中に1つ有する長鎖炭化水素化合物又は鎖状オルガノポリシロキサン化合物、を反応させることにより、得ることができる。上記の反応性不飽和基は、好適には、炭素−炭素二重結合を有する不飽和性の官能基である、アルケニル基又は不飽和脂肪酸エステル基が例示できる。成分(c1)により上記の−R
1が導入され、成分(d1)により上記の−L
1が導入され、成分(e1)により上記の−R
2が導入される。
【0099】
前記グリセリン誘導体変性シリコーンは、例えば、更に具体的には、以下のように得ることができる。
【0100】
前記グリセリン誘導体変性シリコーンは、ケイ素−水素結合を有するオルガノポリシロキサンに対して、分子鎖の片末端に炭素−炭素二重結合を有する不飽和有機化合物、及び、分子中に炭素−炭素二重結合を有するグリセリン誘導体の不飽和エーテル化合物を付加反応させることにより得ることができる。なお、分子鎖の片末端に炭素−炭素二重結合を有するシロキサンデンドロン化合物、及び/又は、分子鎖の片末端に炭素−炭素二重結合を有する不飽和長鎖炭化水素化合物又は分子鎖の片末端に炭素−炭素二重結合を有する鎖状オルガノポリシロキサンを更に付加反応させてもよい。
【0101】
上記の場合、前記グリセリン誘導体変性シリコーンは、前記不飽和有機化合物、及び、前記グリセリン誘導体の不飽和エーテル化合物、並びに、任意に、前記シロキサンデンドロン化合物、及び/又は、不飽和長鎖炭化水素化合物又は分子鎖の片末端に炭素−炭素二重結合を有する鎖状オルガノポリシロキサンとSiH基含有シロキサンとのヒドロシリル化反応生成物として得ることができる。これにより、有機基及びグリセリン誘導体基、並びに、任意に、シロキサンデンドロン構造を有するシリルアルキル基、及び/又は、長鎖炭化水素基又は鎖状オルガノポリシロキサン基、を前記グリセリン誘導体変性シリコーンのポリシロキサン鎖に導入することができる。この反応は、一括で行うこともできるし、逐次反応の形式をとることもできるが、逐次反応の方が安全面や品質管理の側面から好ましい。
【0102】
例えば、前記グリセリン誘導体変性シリコーンは、ヒドロシリル化反応触媒の存在下において、下記一般式(1’):
【化34】
(式中、
R
1、a 、b、c及びdは上記のとおりである)で表される(b2)オルガノハイドロジェンシロキサンと、(a2)反応性不飽和基を1分子中に1つ有するグリセリン誘導体を少なくとも反応させて得ることができる。(d)反応性不飽和基を1分子中に1つ有するシロキサンデンドロン化合物、及び/又は、(e)反応性不飽和基を1分子中に1つ有する炭化水素化合物又は反応性不飽和基を1分子中に1つ有する鎖状オルガノポリシロキサンを更に反応させることが好ましい。
【0103】
前記グリセリン誘導体変性シリコーンは、(a2)反応性不飽和基を1分子中に1つ有するグリセリン誘導体、及び、任意に、(d)反応性不飽和基を1分子中に1つ有するシロキサンデンドロン化合物、及び/又は、(e)反応性不飽和基を1分子中に1つ有する炭化水素化合物又は反応性不飽和基を1分子中に1つ有する鎖状オルガノポリシロキサンが共存する状態として、前記(a2)成分、前記(d)成分及び/又は前記(e)成分、並びに、(b2)上記一般式(1’)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサンを一緒に反応させるか、或いは、前記(b2)オルガノハイドロジェンシロキサンと任意に前記(d)成分、及び/又は、前記(e)成分とを逐次付加反応させた後、前記(a2)成分を更に付加反応させること等により、好適に製造することができる。
【0104】
前記グリセリン誘導体変性シリコーンの合成に用いる、(b2)オルガノハイドロジェンシロキサンとしては、例えば、下記構造式(1−1)’:
【化35】
(式中、
R
1は、各々独立に、上記のとおりであり、
X’はR
1又は水素原子から選択される基であり、
n1、n2、n3及びn4は上記のとおりである。但し、n2+n3+n4=0のとき、X’の少なくとも一方は水素原子である)で表されるオルガノハイドロジェンシロキサンが好ましい。
【0105】
前記グリセリン誘導体変性シリコーンは、好適には、(a)分子鎖の末端に炭素−炭素二重結合を有するグリセリン誘導体と、(b)オルガノハイドロジェンポリシロキサン とをヒドロシリル化反応させることにより合成されるものであり、この際、成分(b)であるオルガノハイドロジェンシロキサンは、逐次付加反応により、前記(d1)成分、及び/又は、前記(e1)成分と反応させて得たオルガノハイドロジェンシロキサンが好ましい。この際、成分(a)と反応させる直前(その他の成分との逐次反応後)のオルガノハイドロジェンシロキサンは、好適には、下記構造式(1−1A)で示される。
【化36】
(式中、
R
2及びL
1は、各々独立に、上記のとおりであり、
Xはメチル基、R
2、L
1及び水素原子(H)からなる群から選択される基であり、
n1、n2、n3及びn4は、それぞれ独立して、0〜2,000の範囲の数であり、n1+n2+n3+n4は0〜2,000の範囲の数である。但し、n4=0のとき、Xの少なくとも一方は水素原子である。)
【0106】
前記グリセリン誘導体変性シリコーンの合成に用いる、反応性不飽和基を1分子中に1つ有するグリセリン誘導体は、好適には、(a)分子鎖の末端に炭素−炭素二重結合を有するグリセリン誘導体である。これらは、アリル(ポリ)グリセロール、アリルポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンモノアリルエーテル等の分子鎖末端にアルケニル基等の反応性官能基を有する(ポリ)グリセリン誘導体であり、公知の方法により合成することができる。
【0107】
本発明に係るグリセリン誘導体変性シリコーンにおいて、油剤成分に対する増粘効果及びゲル化能、界面活性剤(乳化剤)、各種処理剤(粉体分散剤又は表面処理剤)としての使用、及び化粧料原料としての使用の観点から、成分(a)は、具体的には、(ポリ)グリセリンモノアリルエーテル,(ポリ)グリセリルオイゲノールであって、モノグリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン又はテトラグリセリン構造を有する(ポリ)グリセリン系化合物である。
【0108】
かかる成分(a)として、下記構造式(4−1´)〜(4−4´)で示される分子鎖の末端に炭素−炭素二重結合を有するグリセリン誘導体が例示できる。式中のX
1,X
2,R
10は前記同様の基であり、m,qは前記同様の数である。R´は末端に炭素−炭素二重結合を有する不飽和有機基であり、炭素原子数3〜5の、置換若しくは非置換の、直鎖状若しくは分岐状の不飽和炭化水素基が好ましい。炭素原子数3〜5の不飽和炭化水素基としては、アリル基、ブテニル基、メタリル基等のアルケニル基を挙げることができる。好適には、アリル基である。
【化37】
【0109】
本発明に係るグリセリン誘導体変性シリコーンの合成に用いる、(d)反応性不飽和基を1分子中に1つ有するシロキサンデンドロン化合物としては、下記一般式(3’):
【化38】
{式中、
R
3及びR
4は上記のとおりであり、R
Dは水素原子又はメチル基であり、
Z´は二価有機基を表し、
h
1は0〜3の範囲の数であり、
L´
1は、R
4、又は、j=1のときの下記一般式(3’’):
【化39】
(式中、R
3及びR
4は上記のとおりであり、
Zは二価有機基を表し、
jはL
jで示されるシリルアルキル基の階層を表し、該シリルアルキル基の繰り返し数である階層数がk´のとき1〜k´の整数であり、階層数k´は1〜9の整数であり、L
j+1はjがk´未満のときは該シリルアルキル基であり、j=k´のときはR
4である。
h
jは0〜3の範囲の数である)で表されるシリルアルキル基を表す}で表される分子鎖末端に1個の炭素−炭素二重結合を有するシロキサンデンドロン構造を有する化合物が好ましい。
【0110】
本発明に係るグリセリン誘導体変性シリコーンの合成に用いる、(e)反応性不飽和基を1分子中に1つ有する炭化水素化合物又は反応性不飽和基を1分子中に1つ有する鎖状オルガノポリシロキサンとしては、下記一般式:(2’)
【化40】
(式中、R’は上記のとおりであり、
R
2’は炭素原子数7〜58の、置換若しくは非置換の、直鎖状又は分岐状の一価炭化水素基を表す)、又は下記一般式(2−1);
【化41】
(式中、R
11、t及びrは上記のとおりである)若しくは下記一般式(2−2);
【化42】
(式中、R
11及びrは上記のとおりである)で表されるモノ不飽和有機化合物が好ましい。
【0111】
(e)反応性不飽和基を1分子中に1つ有する炭化水素化合物としては、炭素原子数9〜30のモノ不飽和炭化水素が好ましく、1−アルケンがより好ましい。1−アルケンとしては、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン等が例示される。反応性不飽和基を1分子中に1つ有する鎖状オルガノポリシロキサンとしては、片末端ビニル基封鎖ジメチルポリシロキサン、片末端ビニル基封鎖メチルフェニルポリシロキサン等が例示される。
【0112】
グリセリン誘導体変性シリコーン又はそれを含む組成物を合成するためのヒドロシリル化反応は、溶媒の存在下又は不存在下、公知の方法にしたがって行うことができる。ここに、反応溶媒としては、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;ジオキサン、THF等のエーテル系溶剤;n−ヘキサン、シクロヘキサン、n−ヘプタン、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤;四塩化炭素等の塩素化炭化水素系の有機溶剤を挙げることができる。
【0113】
ヒドロシリル化反応は、触媒の不存在下で行ってもよいが、触媒の存在下に行うことにより低温かつ短時間で反応が進行するので好ましい。かかる触媒としては、白金、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム等の化合物を挙げることができ、その触媒活性が高いことから白金化合物が特に有効である。白金化合物の例としては、塩化白金酸;金属白金;アルミナ、シリカ、カーボンブラック等の坦体に金属白金を坦持させたもの;白金−ビニルシロキサン錯体、白金−ホスフイン錯体、白金−ホスファイト錯体、白金アルコラート触媒等の白金錯体を挙げることができる。触媒の使用量は、白金触媒を使用する場合、金属白金として0.0001〜0.1質量%程度であり、0.0005〜0.05質量%の範囲が好適であるが、これに限定されない。
【0114】
ヒドロシリル化反応の反応温度としては、通常30〜120℃であり、反応時間は、通常10分間〜24時間、好ましくは1〜10時間である。
【0115】
上記のヒドロシリル化反応を行う際に、[グリセリン誘導体基含有化合物中の炭素−炭素二重結合の物質量/オルガノハイドロジェンポリシロキサン中の、前記グリセリン誘導体基含有化合物の炭素−炭素二重結合に付加させたい珪素結合水素原子の物質量]の比は0.8〜1.5となる範囲が好ましく、1.0〜1.3となる範囲がより好ましい。すなわち、本発明に係るグリセリン誘導体変性シリコーン又はグリセリン誘導体変性シリコーン含有組成物を合成する場合には、グリセリン誘導体基含有化合物を若干過剰に使用することがより好ましい。上記の比が1.5を超える仕込みも可能であるが、残存原料の割合が増えるために非経済的である。なお、ヒロドシリル化反応中にグリセリン誘導体基含有化合物中の末端炭素−炭素二重結合が内部転移して不活性化する副反応が同時に起こるため、上記の比が0.8〜1.0の場合にはヒドロシリル化反応によって消費される珪素結合水素原子は理論値である0.8〜1.0の範囲よりも若干少ない範囲内に落ち着き、従って0〜0.2よりも若干多い比率で珪素結合水素原子が残存する。しかし、反応条件により、グリセリン誘導体基中に含まれる水酸基や反応溶媒のアルコール性水酸基等との脱水素反応を生じさせ、当該残存珪素結合水素原子を消費することも可能である。
【0116】
一方、上記の比が0.8未満では、未反応のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが残存するおそれがある。このようなグリセリン誘導体変性シリコーン又はグリセリン誘導体変性シリコーン含有組成物を外用剤又は化粧料原料として用いた場合には、残存するオルガノハイドロジェンポリシロキサンが他の原料と反応し、水素ガスが発生する原因となり、配合先の外用剤又は化粧料の変質、火災の原因、容器の膨張等の好ましくない影響をもたらしうる。また、上記の比が0.8未満の状況下で、脱水素反応により残存した珪素結合水素原子を消費しようとした場合、Si−O−C架橋結合の割合が増えるため製造中にゲル化する危険が高まる。したがって、安全にオルガノハイドロジェンポリシロキサンを完全消費できるように、上記の比が0.8を超える、すなわち、グリセリン誘導体基含有化合物を0.8当量より多い条件で反応させることが好ましい。
【0117】
[水添加工程]
本発明に係る透明乃至半透明の液状のグリセリン誘導体変性シリコーン組成物の製造方法は、液状のグリセリン誘導体変性シリコーン又はその組成物に水を添加する水添加工程を含む。
【0118】
前記水添加工程における水の添加量は特に限定されるものではないが、前記液状のグリセリン誘導体変性シリコーン又はその組成物100質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜5重量部、より好ましくは0.5〜3重量部の水を添加することができる。後述する混合均質化後の当該組成物の光透過率が最大値(ピーク値)を示す量が好ましい。最適な水の添加量の近傍では、当該組成物が液状を呈する温度において、当該組成物の外観は透明乃至半透明の均一液状となり、当該組成物の安定性も最良となる。
【0119】
本発明の製造方法に使用される水は、人体に有害な成分を含有せず、清浄であればよく、水道水、精製水、ミネラルウォーター、海洋深層水等が例示される。水添加後の組成物全体の0.09〜9重量%、好ましくは0.1〜5重量%、より好ましくは0.4〜3重量%の範囲が添加された水であることができる。
【0120】
前記水添加工程においては、前記液状のグリセリン誘導体変性シリコーン又はその組成物及び前記水を混合して均質化することが好ましい。
【0121】
混合均質化は、機械力を用いた混合により行うことが好ましく、例えばパドルミキサーやプロペラ撹拌機、撹拌羽根を備えた反応器や容器内で行うことができ、必要に応じて乳化機や混練機等も利用できる。また、混合均質化は必ずしも常温下で行う必要は無く、組成や流動性等に応じて温度を加減できる。通常は0〜70℃付近までの範囲内で行うことが好ましい。なお、本発明に係るグリセリン誘導体変性シリコーン組成物を得るための前記グリセリン誘導体変性シリコーン又はその組成物と後述する液状油剤との混合均質化に関しても同様である。
【0122】
前記水添加工程後の前記透明乃至半透明の液状のグリセリン誘導体変性シリコーン組成物の可視光透過率は50%以上であることが好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上が更により好ましい。前記水添加工程前の液状のグリセリン誘導体変性シリコーン組成物の可視光透過率は50%未満であることが好ましく、25%未満がより好ましく、5%未満が更により好ましい。可視光としては、360〜830nmの波長の光が好適であるが、400〜760nmの波長の光がより好ましい。例えば、750nmの波長光を使用することができる。また、透過率測定は1〜30mmの光路長が好適であるが、5〜20mmの光路長がより好ましい。例えば、10mmの光路長にて行うことができる。本発明により得られた前記水添加工程後の前記透明乃至半透明の液状のグリセリン誘導体変性シリコーン組成物は、特に、波長750nmの光を用いて、光路長10mmで測定される光透過率が50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上が更により好ましい。かかるグリセリン誘導体変性シリコーン組成物は、目視により、透明乃至半透明であり、実質的に透明な外観を呈する。
【0123】
前記水添加工程後の前記透明乃至半透明の液状のグリセリン誘導体変性シリコーン組成物におけるグリセリン誘導体変性シリコーンの含有率は特には限定されるものではないが、組成物の全重量を基準として、50〜99.99重量%が好ましく、70〜99.9重量%が好ましく、90〜99重量%がより好ましい。
【0124】
[液状油剤添加工程]
本発明の製造方法では、前記水添加工程前及び/又は後に、及び/又は前記水添加工程と同時に、前記液状のグリセリン誘導体変性シリコーン又はその組成物に液状油剤を添加する液状油剤添加工程を更に含むことができる。ここで、「液状」とは既述のとおりの意味である。
【0125】
前記液状油剤は前記液状のグリセリン誘導体変性シリコーンと親和性を有することが好ましい。好適には、5〜100℃で液状であるシリコーンオイル、非極性有機化合物又は低極性〜高極性有機化合物から選択される1以上の油剤であり、非極性有機化合物及び低極性〜高極性有機化合物としては、炭化水素油及び脂肪酸エステル油及び液状脂肪酸トリグリセライドが好ましい。これらは、特に化粧料の基材として広く用いられている成分であるが、これらの油剤には、公知の植物性油脂類、動物性油脂類、高級アルコール類、脂肪酸トリグリセライド、人工皮脂、フッ素系油から選択される1種類又は2種類以上を併用しても良い。本発明のグリセリン誘導体により変性されたグリセリン誘導体変性シリコーンを含む組成物は、これらの非シリコーン系油剤に対しても優れた相溶性・分散性を示すので、炭化水素油及び脂肪酸エステル油を安定に化粧料に配合でき、これらの非シリコーン系油剤による保湿特性をも活かすことができる。したがって、前記グリセリン誘導体により変性されたグリセリン誘導体変性シリコーンを含む組成物は、これら非シリコーン系油剤の化粧料中における配合安定性を改善することができる。
【0126】
また、炭化水素油及び/又は脂肪酸エステル油をシリコーンオイルと併用することにより、シリコーンオイル特有のさっぱりとした感触に加えて、肌上の水分を保持し、化粧料に肌や毛髪が潤うような保湿感(「しっとりした感触」ともいう)や滑らかな感触を付与することができ、しかも、化粧料の経時安定性を損なわないという利点がある。更に、炭化水素油及び/又は脂肪酸エステル油とシリコーンオイルを含有する化粧料は、これらの保湿成分(炭化水素油及び/又は脂肪酸エステル油)を肌上又は毛髪上により安定かつ均一な状態で塗布することができるので、保湿成分の肌上の保湿効果が向上する。したがって、非シリコーン系油剤(炭化水素油、脂肪酸エステル油等)のみを含む化粧料に比して、非シリコーン系油剤と共にシリコーンオイルを含む化粧料は、より滑らかでしっとりした感触を付与することができるという利点がある。
【0127】
これらの油剤は、出願人らが上記の特許文献11(国際公開特許 WO2011/049248号公報)の段落0130〜0135、段落0206等に開示したものと共通である。なお、フッ素系油としては、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタン等が挙げられる。
【0128】
前記液状油剤添加工程における液状油剤の添加量は特に限定されるものではないが、前記液状のグリセリン誘導体変性シリコーン又はその組成物100質量部に対して5〜1000質量部、好ましくは10〜500重量部、より好ましくは50〜200重量部の液状油剤を添加することができる。
【0129】
前記液状油剤添加工程においては、前記液状のグリセリン誘導体変性シリコーン又はその組成物及び前記液状油剤を、上記のとおり、混合して均質化することが好ましい。
【0130】
本発明のグリセリン誘導体変性シリコーン組成物は、従来のポリエーテル変性シリコーン等とは異なり、空気中の酸素により酸化されて変質する傾向が本質的に少なく安定である。したがって、酸化劣化を防止するためフェノール類、ヒドロキノン類、ベンゾキノン類、芳香族アミン類、又はビタミン類等の酸化防止剤を入れ、酸化安定性を増加させる操作は必須ではない。しかしながら、このような酸化防止剤、例えば、BHT(2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール)、ビタミンE等を添加すると更に安定性が向上する。このとき、使用する酸化防止剤の添加量は、その重量(質量)において、前記グリセリン誘導体変性シリコーンに対し10〜1000ppm、好ましくは50〜500ppmとなる範囲である。
【0131】
前記液状油剤添加工程後の前記透明乃至半透明の液状のグリセリン誘導体変性シリコーン組成物の可視光透過率は50%以上であることが好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上が更により好ましい。可視光としては、360〜830nmの波長の光が好適であるが、400〜760nmの波長の光がより好ましい。例えば、750nmの波長光を使用することができる。また、透過率測定は1〜30mmの光路長が好適であるが、5〜20mmの光路長がより好ましい。例えば、10mmの光路長にて行うことができる。特に、波長750nmの光を用いて、光路長10mmで測定される光透過率が50%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上が更により好ましい。
【0132】
前記液状油剤添加工程後の前記透明乃至半透明の液状のグリセリン誘導体変性シリコーン組成物におけるグリセリン誘導体変性シリコーンの含有率は特には限定されるものではないが、組成物の全重量を基準として、10〜99重量%が好ましく、40〜95重量%が好ましく、80〜90重量%がより好ましい。
【0133】
(グリセリン誘導体変性シリコーン又はその組成物の酸処理及び臭気低減)
本発明の製造方法において、前記グリセリン誘導体変性シリコーン又はその組成物(混合物)が、酸性水溶液によって処理されており、当該酸性水溶液の処理によって発生した臭気物質及び水が、加熱又は減圧により取り除かれている場合は、より高品質のグリセリン誘導体変性シリコーン又はその組成物を得ることができる。
【0134】
前記酸性水溶液に含まれる酸性物質については任意に選択可能であるが、25℃で固体であり、水溶性であり、かつ、50gをイオン交換水1Lに溶解させたときの水溶液の25℃におけるpHが4以下であることを特徴とする1種類以上の酸性無機塩を用いるのが最適である。
【0135】
また、前記酸性水溶液による処理は、前記グリセリン誘導体変性シリコーンがヒドロシリル化反応により合成された場合に最も好適に実施することができる。したがって、ここでは、グリセリン誘導体変性シリコーン又はそれを含む混合物の酸処理及び臭気低減方法として、ヒドロシリル化反応により合成されたグリセリン誘導体変性シリコーンの場合を例として説明する。
【0136】
好適には、酸処理は、
(ax)分子鎖の末端に炭素−炭素二重結合を有するグリセリン誘導体、及び
(bx)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
をヒドロシリル化反応させることにより、グリセリン誘導体変性シリコーン又はそれを主成分として含む反応混合物を合成する工程〔V〕;及び
上記合成工程〔V〕と共に、又は、上記合成工程〔V〕の後に、
グリセリン誘導体変性シリコーン又はそれを主成分として含む反応混合物を、
(cx)25℃で固体であり、水溶性であり、かつ、50gをイオン交換水1Lに溶解させたときの水溶液の25℃におけるpHが4以下である、1種類以上の酸性無機塩の存在下で処理する工程〔W〕
を含む。また、前記酸性無機塩を用いた処理工程は臭気原因物質の発生を伴うため、工程〔W〕の後に、加熱又は減圧することにより、臭気原因物質を除去する工程を含むことが、臭気低減の実効の観点からより好ましい。
【0137】
一例として、工程〔V〕において、(ax)(ポリ)グリセリンモノアリルエーテル等のグリセリン誘導体、(bx)前記構造式(1−1A)で示される直鎖状のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを使用し、成分(bx)中の珪素結合水素原子に対して、成分(ax)の物質量が過剰となる量で上記のヒドロシリル化反応を行った場合、構造式(1−1)で示されるグリセリン誘導体変性シリコーンが合成され、該グリセリン誘導体変性シリコーン及び未反応の成分(ax)を含有する、前記グリセリン誘導体変性シリコーンを主成分として含む反応混合物の粗製品が得られる。
【0138】
工程(W)は、特定の酸性無機塩を用いて該粗製品の加水分解処理を行うことにより、ポリシロキサンの主鎖を構成するケイ素−酸素結合や側鎖部分の炭素−酸素結合の切断がほとんど起こらず、該組成物を高いレベルで低臭化し、経時における臭気の発生を有効に抑制するための工程である。
【0139】
前記工程(W)は、具体的には、加水分解により、グリセリン誘導体変性シリコーンを主成分として含む反応混合物の粗製品から、臭気原因物質を除去する工程であり、(cx)25℃で固体であり、水溶性であり、かつ、50gをイオン交換水1Lに溶解させたときの水溶液の25℃におけるpHが4以下であることを特徴とする1種類以上の酸性無機塩の存在下で処理を行うことを特徴とする。なお、本発明におけるpHの値は、室温(25℃)下、試料水溶液をガラス電極を用いたpH計を用いて測定したpH値であり、本願におけるpH測定には、具体的には、東亜電波工業株式会社製「HM−10P」を用いた。
【0140】
成分(cx)である酸性無機塩としては、25℃で固体であり、水溶性であり、かつ、50gをイオン交換水1Lに溶解させたときの水溶液のpHが4以下であることが必要であり、より好適にはpHが3.5以下であることが好ましく、2.0以下であることが特に好ましい。かかる水溶性の酸性無機塩を用いて該組成物の加水分解処理を行うことにより、C−O結合やSi−O結合の切断をほとんど生じることなく、該組成物を高いレベルで低臭化し、経時での着臭を有効に抑制することができる。
【0141】
酸性無機塩は例えば、二価以上の無機酸の少なくとも一価の水素原子が塩基により中和された酸性無機塩を用いることが出来る。二価以上の無機酸としては例えば、硫酸、亜硫酸等が挙げられる。塩基としては、アルカリ金属、アンモニア等が挙げられる。
【0142】
成分(cx)はより具体的には、硫酸水素イオン(HSO
4−)又は亜硫酸水素イオン(HSO
3−)及び1価の陽イオン(M
+)からなる1種以上の酸性無機塩であることが好適であり、1価の陽イオン(M
+)として、アルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンが例示される。特に好適には、ナトリウムイオン、カリウムイオン及びアンモニウムイオンからなる群から選択される1種類以上の1価の陽イオンが好ましい。また、これらの酸性無機塩は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組合せて使用してもよい。更に、これらの酸性無機塩は室温(25℃)で固体であるため、処理後にろ過により容易に除去することができる。また水溶性であるため、製造後の洗浄工程においても水で容易に洗い流すことができる。
【0143】
一方、上記の(cx)成分の条件を満たさない酢酸塩やリン酸塩等による加水分解処理では、加水分解後の該組成物を十分に低臭化することができない。一方、塩酸等の強酸による加水分解処理や硫酸ジルコニア等の公知の固体酸による加水分解処理では、一定の低臭化は実現できるが、加水分解時に該組成物のC−O結合やSi−O結合の切断が生じやすい。
【0144】
成分(cx)である酸性無機塩としては、硫酸水素リチウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硫酸水素ルビジウム、硫酸水素セシウム、硫酸水素アンモニウム、亜硫酸水素ナトリウム又は、これらの水和物が具体的に例示される。かかる酸性無機塩50gをイオン交換水1Lに溶解させたときの水溶液のpHは下表に示す通りである。低臭化という技術的効果から、pHが2.0以下の水溶性の酸性無機塩として、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム及び硫酸水素アンモニウムからなる群から選択される1種以上の酸性無機塩の使用がもっとも好適である。
【表1】
【0145】
前記の酸性無機塩存在下の処理は、例えば、(1)ヒドロシリル化反応により合成されたグリセリン誘導体変性シリコーンを主成分として含む反応混合物の反応系(例えば、フラスコ等の反応容器)中に、上記の酸性無機塩を添加して、撹拌する分解処理、(2)酸性無機塩と水若しくは酸性無機塩と水と親水性溶媒を添加して、撹拌する加水分解処理等を意味する。酸性無機塩を用いた処理工程は、水及び/又は親水性媒体の存在下に行うことが好ましい。
【0146】
特に、前記工程〔V〕の後、グリセリン誘導体変性シリコーンを主成分として含む反応混合物の粗製品を含む反応系中に、少なくとも酸性無機塩と水とを添加して、場合により相溶性を改善し処理効率を高める目的で更に他の親水性溶媒を追加して、更に機械力を用いて撹拌する加水分解処理が好ましい。加水分解処理は任意の温度、処理時間を選択して行うことができ、0〜200℃、より好ましくは50〜100℃の温度条件で、0.1〜24時間、より好ましくは0.5〜10時間程度の反応時間で行うことが好ましい。酸性無機塩の使用量は処理装置及び処理時間に応じて適宜選択することができるが、グリセリン誘導体変性シリコーンを主成分として含む反応混合物に対して50〜10,000ppmの範囲が好ましく、100〜5,000ppmの範囲がより好ましい。
【0147】
前記酸処理後に、臭気の原因物質である低沸分(プロピオンアルデヒド等)を除去するストリッピング工程を含むことが好ましい。また、ストリッピング後に、再び酸性無機塩存在下の処理を行うことでより多くのプロペニルエーテル基含有グリセリン誘導体等を加水分解することができ、臭気原因物質であるプロピオンアルデヒド等を除去することができる。このとき、酸性無機塩が残存しているので、新たに酸性無機塩を追加する必要はなく、水に代表される親水性溶媒のみを添加すればよいという利点がある。すなわち、上記の工程〔W〕及びストリッピング工程は、低臭化の程度を高める目的等で2回以上繰り返し行うことができる。
【0148】
なお、ストリッピング工程によって留去される「低沸物」には、臭気の原因物質であるプロピオンアルデヒドのほか、ヒドロシリル化反応(工程〔V〕)に使用した反応溶媒、低臭化処理工程で使用した水、その他の親水性溶媒等が含まれる。
【0149】
ストリッピング工程(低沸物の留去)は、工程〔W〕の前工程として、グリセリン誘導体変性シリコーンを主成分として含む反応混合物の粗製品に対して実施してもよいし、工程〔W〕の後工程として、グリセリン誘導体変性シリコーンを主成分として含む反応混合物に対して実施してもよい。また、工程〔W〕の前工程及び後工程としてそれぞれ実施することもできる。好適には、上記の工程〔W〕に次いで、加水分解反応により生成した臭気原因物質であるプロピオンアルデヒドを除去する目的で行うことが好ましい。
【0150】
除去方法としては、常圧下或いは減圧下でのストリッピングが好ましく、120℃以下で行うことが好ましい。効率よくストリッピングするためには、減圧下で行うか、例えば窒素ガスのような不活性ガス注入下で行うことが好ましい。低沸物の留去操作の一例を具体的に示せば、低沸物が含まれているグリセリン誘導体変性シリコーンを主成分として含む反応混合物の粗製品を、還流冷却管、窒素挿入口等を備えたフラスコに仕込み、窒素ガスを供給しながら内部を減圧して昇温し、圧力と温度を一定に保持することにより軽質物を留去させる。ここに減圧条件としては、0.1〜10.0KPaとされ、加熱温度としては40〜120℃とされ、処理時間としては10分間〜24時間とすることが一般的である。
【0151】
更に、前記酸処理工程後に、塩基性物質によってグリセリン誘導体変性シリコーンを主成分として含む反応混合物を中和処理してもよい。塩基性物質としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、アンモニア水、炭酸水素ナトリウム等の無機塩基、各種アミン類、塩基性アミノ酸等の有機塩基等を挙げることができる。塩基性物質の量はグリセリン誘導体変性シリコーンを主成分として含む反応混合物を含む反応系を中和する量が好ましいが、必要に応じて、弱酸性又は弱アルカリ性となるよう添加量を加減することもできる。
【0152】
なお、前記酸処理工程後に得られたグリセリン誘導体変性シリコーンを主成分として含む反応混合物に対して、更に、100ppm〜50000ppmに相当する量のアルカリ性緩衝剤を添加してもよい。前記グリセリン誘導体変性シリコーンを主成分として含む反応混合物は、中和や濾過工程を経ても微量の酸が局所的に溶存している場合がある。アルカリ性緩衝剤を添加しておくことにより、当該グリセリン誘導体変性シリコーンを配合した化粧料等の液性がアルカリ側に保たれるため、グリセリン誘導体変性シリコーンの不純物に由来する着臭発生のリスクを減らすことができる。有用なアルカリ性緩衝剤は、強塩基と弱酸の組み合わせからなるアルカリ性緩衝剤であれば特に制限されるものではないが、リン酸3ナトリウム,リン酸3カリウム,クエン酸3ナトリウム,酢酸ナトリウム等のアルカリ性緩衝剤が例示される。なお、これらのアルカリ性緩衝剤は、グリセリン誘導体変性シリコーン、ないしはそれを主成分として含む混合物からなる化粧料原料等に添加しても良く、その他の化粧料原料や水を含むグリセリン誘導体変性シリコーン組成物や化粧料の調製段階や配合後の組成物に添加しても良い。これにより、経時での処方中の着臭を、更に有効に抑制することができる。
【0153】
前記グリセリン誘導体変性シリコーン又はそれを主成分として含む混合物に対して、工程〔W〕にかかる酸性無機塩存在下の処理の前工程又は後工程として、水素添加処理を行うこともできる。水素添加反応による無臭化処理は、上記の工程〔W〕にかかる酸性無機塩存在下の処理後に、水素添加反応による処理を行ってもよいし、一方、水素添加反応による処理を行った後に、上記の工程〔W〕にかかる酸性無機塩存在下に処理してもよい。ただし、水素添加処理は、一般的には製品製造時のコスト増につながる場合がある。
【0154】
本発明の第2の態様は、本発明の製造方法により得られたグリセリン誘導体変性シリコーン組成物を含む外用剤若しくは化粧料又は工業用材料である。
【0156】
本発明の製造方法により得られるグリセリン誘導体変性シリコーン組成物は、外用剤又は化粧料に好適に配合することができ、本発明の外用剤又は化粧料を構成することができる。また、本発明の製造方法で得られるグリセリン誘導体変性シリコーン組成物を含む外用剤及び化粧料用の原料を製造し、外用剤又は化粧料に配合することもできる。
【0157】
特に、本発明の製造方法で得られるグリセリン誘導体変性シリコーン組成物は、透明性が高く、透明性が温度環境によらず安定であるので、透明又は半透明な外観が求められる外用剤又は化粧料に好適に配合することができる。また、本発明の製造方法で得られるグリセリン誘導体変性シリコーン組成物の粘度は温度環境によらず安定であるので、取り扱い性に優れており、また、これを配合した外用剤又は化粧料の粘度を安定化することができる。しかも、本発明の製造方法で得られるグリセリン誘導体変性シリコーン組成物は低臭性であり、処方中や経時による着臭もほとんどない。しかも、グリセリン誘導体変性シリコーンの主鎖を構成し得るケイ素−酸素結合及び側鎖を構成し得る炭素−酸素結合がほとんど切断されないという利点がある。したがって、本発明の製造方法で得られるグリセリン誘導体変性シリコーン組成物は人体に使用される外用剤及び化粧料の原料として好適に利用することができる。
【0158】
外用剤又は化粧料用の原料中に占める、前記グリセリン誘導体変性シリコーン組成物の割合は、原料の全重量(質量)を基準にして、10〜100重量(質量)%が好ましく、20〜100重量(質量)%がより好ましく、30〜100重量(質量)%が更により好ましい。外用剤又は化粧料に配合される原料の割合は特に限定されるものではないが、例えば、外用剤又は化粧料の全重量(質量)を基準にして、0.1〜40重量(質量)%、好ましくは1〜30重量(質量)%、より好ましくは2〜20重量(質量)%、更により好ましくは3〜10重量(質量)%の範囲とすることができる。
【0159】
本発明の製造方法で得られるグリセリン誘導体変性シリコーン組成物は、その構造及び所有する官能基の種類に応じて、特許文献11(国際公開特許 WO2011/049248号公報)、特許文献12(国際公開特許 WO2011/049247号公報)及び特許文献14(特開2012−046507号公報)に記載された共変性オルガノポリシロキサン、又は、特許文献13(国際公開特許 WO2011/049246号公報)に記載された新規オルガノポリシロキサン共重合体と共通の用途に適用することが可能である。また、本発明の製造方法により得られるグリセリン誘導体変性シリコーン組成物は、任意の化粧料原料成分との組み合わせ、外用剤、特に化粧料の剤形、種類及び処方例においても、特許文献11、特許文献12及び特許文献14に記載された共変性オルガノポリシロキサン、又は、特許文献13に記載された新規オルガノポリシロキサン共重合体と同様に使用でき、各種化粧料等に配合することができる。
【0160】
本発明に係る外用剤は、化粧料又は医薬として人体に適用される組成物であれば、特にその制限はない。本発明の化粧料は、具体的な製品としては、皮膚洗浄剤製品、スキンケア製品、メイクアップ製品、制汗剤製品、紫外線防御製品等の皮膚用化粧品;毛髪用洗浄剤製品、整髪料製品、毛髪用着色料製品、養毛料製品、ヘアリンス製品、ヘアコンディショナー製品、ヘアトリートメント製品等の頭髪用化粧品;浴用化粧品が例示される。本発明の医薬は、発毛剤、育毛剤、鎮痛剤、殺菌剤、抗炎症剤、清涼剤、皮膚老化防止剤が例示されるが、これらに限定されない。
【0161】
外用剤は人体の皮膚、爪、毛髪等に適用されるものであり、例えば、医薬有効成分を配合して各種疾患の治療に使用することができる。化粧料も人体の皮膚、爪、毛髪等に適用されるものであるが、美容目的で使用されるものである。外用剤又は化粧料としては、制汗剤、皮膚洗浄剤、皮膚外用剤若しくは皮膚化粧料、又は、毛髪洗浄剤、毛髪外用剤又は毛髪化粧料が好ましい。
【0162】
本発明に係る制汗剤、皮膚洗浄剤、皮膚外用剤又は皮膚化粧料は、本発明の製造方法で得られるグリセリン誘導体変性シリコーン組成物を含有しており、その形態は特に限定されないが、溶液状、乳液状、クリーム状、固形状、半固形状、ペースト状、ゲル状、粉末状、多層状、ムース状、油中水型或いは水中油型の乳化組成物(エマルジョン組成物)のいずれであってもよい。具体的には、本発明に係る皮膚外用剤又は皮膚化粧料等として、化粧水、乳液、クリーム、日焼け止め乳液、日焼け止めクリーム、ハンドクリーム、クレンジング、マッサージ料、洗浄剤、制汗剤、脱臭剤等の基礎化粧品;ファンデーション、メークアップ下地、頬紅、口紅、アイシャドー、アイライナー、マスカラ、ネールエナメル等のメーキャップ化粧品等が例示される。
【0163】
同様に、本発明に係る毛髪洗浄剤、毛髪外用剤又は毛髪化粧料は、本発明の製造方法で得られるグリセリン誘導体変性シリコーン組成物を含有しており、様々な形態で使用できる。例えば、それらをアルコール類、炭化水素類、揮発性環状シリコーン類等に溶解又は分散させて用いてもよいし、更には乳化剤を用いて水に分散させてエマルジョンの形態で用いることもできる。また、プロパン、ブタン、トリクロルモノフルオロメタン、ジクロルジフルオロメタン、ジクロルテトラフルオロエタン、炭酸ガス、窒素ガス等の噴射剤を併用してスプレーとして用いることもできる。この他の形態としては、乳液状、クリーム状、固形状、半固形状、ペースト状、ゲル状、粉末状、多層状、ムース状等が例示される。これらの様々な形態でシャンプー剤、リンス剤、コンディショニング剤、セットローション剤、ヘアスプレー剤、パーマネントウエーブ剤、ムース剤、染毛剤等として使用できる。
【0164】
その他の本発明に係る化粧料又は外用剤組成物の種類、形態及び容器は、特許文献11の段落0230〜0233等に開示されたものと共通である。
【0165】
本発明の外用剤又は化粧料は、本発明の効果を妨げない範囲で通常の外用剤又は化粧料に使用される成分、水、粉体又は着色剤、アルコール類、水溶性高分子、皮膜形成剤、油剤、油溶性ゲル化剤、有機変性粘土鉱物、界面活性剤、樹脂、紫外線吸収剤、塩類、保湿剤、防腐剤、抗菌剤、香料、塩類、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤、清涼剤、抗炎症剤、美肌用成分(美白剤、細胞賦活剤、肌荒れ改善剤、血行促進剤、皮膚収斂剤、抗脂漏剤等)、ビタミン類、アミノ酸類、核酸、ホルモン、包接化合物等、生理活性物質、医薬有効成分、香料を添加することができ、これらは特に限定されるものではない。
【0166】
本発明に係る化粧料又は外用剤に用いることのできる水は、人体に有害な成分を含有せず、清浄であればよく、水道水、精製水、ミネラルウォーター、海洋深層水等が例示される。
【0167】
(油剤)
本発明に係る化粧料又は外用剤に用いることのできる油剤は、好適には、5〜100℃で液状であるシリコーンオイル、非極性有機化合物又は低極性〜高極性有機化合物から選択される1以上の油剤であり、非極性有機化合物及び低極性〜高極性有機化合物としては、炭化水素油及び脂肪酸エステル油及び液状脂肪酸トリグリセライドが好ましい。これらは、特に化粧料の基材として広く用いられている成分であるが、これらの油剤には、公知の植物性油脂類、動物性油脂類、高級アルコール類、脂肪酸トリグリセライド、人工皮脂、フッ素系油から選択される1種類又は2種類以上を併用しても良い。
【0168】
また、炭化水素油及び/又は脂肪酸エステル油をシリコーンオイルと併用することにより、シリコーンオイル特有のさっぱりとした感触に加えて、肌上の水分を保持し、化粧料に肌や毛髪が潤うような保湿感(「しっとりした感触」ともいう)や滑らかな感触を付与することができ、しかも、化粧料の経時安定性を損なわないという利点がある。更に、炭化水素油及び/又は脂肪酸エステル油とシリコーンオイルを含有する化粧料は、これらの保湿成分(炭化水素油及び/又は脂肪酸エステル油)を肌上又は毛髪上により安定かつ均一な状態で塗布することができるので、保湿成分の肌上の保湿効果が向上する。したがって、非シリコーン系油剤(炭化水素油、脂肪酸エステル油等)のみを含む化粧料に比して、非シリコーン系油剤と共にシリコーンオイルを含む化粧料は、より滑らかでしっとりした感触を付与することができるという利点がある。
【0169】
これらの油剤は、特許文献11の段落0130〜0135、段落0206等に開示されたものと共通である。なお、フッ素系油としては、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタン等が挙げられる。
【0170】
(粉体又は着色剤)
本発明に係る化粧料又は外用剤に用いることのできる粉体又は着色剤は、化粧料の成分として一般に使用されるものであり、白色及び着色顔料、並びに、体質顔料を含む。白色及び着色顔料は化粧料の着色等に使用され、一方、体質顔料は、化粧料の感触改良等に使用される。本発明における「粉体」としては、化粧料に通常使用される白色及び着色顔料、並びに、体質顔料を特に制限なく使用することができる。本発明において、1種類又は2種類以上の粉体を配合することが好ましい。粉体の形状(球状、棒状、針状、板状、不定形状、紡錘状、繭状等)、粒子径(煙霧状、微粒子、顔料級等)、及び、粒子構造(多孔質、無孔質等)は何ら限定されるものではないが、平均一次粒子径が1nm〜100μmの範囲にあることが好ましい。特に、これらの粉体又は着色剤を顔料として配合する場合、平均粒子径が1nm〜20μmの範囲にある無機顔料粉体、有機顔料粉体、樹脂粉体から選択される1種類又は2種類以上を配合することが好ましい。
【0171】
粉体としては、例えば、無機粉体、有機粉体、界面活性剤金属塩粉体(金属石鹸)、有色顔料、パール顔料、金属粉末顔料等が挙げられ、これらを複合化したものを使用することができる。更に、これらの表面に撥水化処理を行ったものを挙げることができる。
【0172】
これらの具体例は、特許文献11の段落0150〜0152等に開示された粉体又は着色剤と共通である。
【0173】
例示された粉体のうち、シリコーンエラストマー粉体について特に説明する。シリコーンエラストマー粉体は、主としてジオルガノシロキシ単位(D単位)からなる直鎖状ジオルガノポリシロキサンの架橋物であり、側鎖若しくは末端に珪素結合水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと側鎖若しくは末端にアルケニル基等の不飽和炭化水素基を有するジオルガノポリシロキサンを、ヒドロシリル化反応触媒下で架橋反応させることによって好適に得ることができる。シリコーンエラストマー粉体は、T単位及びQ単位からなるシリコーン樹脂粉体に比して、柔らかく、弾力があり、また、吸油性に優れるため、肌上の油脂を吸収し、化粧崩れを防ぐことができる。そして、前記本発明の製法により得られるグリセリン誘導体変性シリコーン組成物により表面処理を行うと、処理効率がよく均質な処理が可能であるため、シリコーンエラストマー粉体のスエード調の感触を減じることなく、当該グリセリン誘導体変性シリコーンの種類に応じた特有の効果や感触を付与することができる。更に、シリコーンエラストマー粉体と共に前記グリセリン誘導体変性シリコーン組成物を化粧料に配合する場合は、化粧料全体における当該粉体の分散安定性が改善され、経時的に安定な化粧料を得ることができる。
【0174】
シリコーンエラストマー粉体は、球状、扁平状、不定形状等種々の形状を取りうる。シリコーンエラストマー粉体は油分散体の形態であってもよい。本発明の化粧料には、粒子形状を有するシリコーンエラストマー粉体であり、電子顕微鏡を用いた観察による一次粒子径及び/又はレーザー回析/散乱法で測定された平均一次粒子径が0.1〜50μmの範囲に入り、且つ、一次粒子の形状が球状のシリコーンエラストマー粉体を好適に配合することができる。シリコーンエラストマー粉体を構成するシリコーンエラストマーは、JIS K 6253「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」のタイプAデュロメータによる硬さが80以下のものが好ましく、65以下のものがより好ましい。
【0175】
かかるシリコーンエラストマー粉体のうち、特にシリコーンエラストマー球状粉体の具体例は、特許文献11の段落0168に開示されたものと共通であり、同段落0150〜0152にも例示される通り、撥水化等各種表面処理を行ったシリコーンエラストマー粉体でもよい。
【0176】
本発明の化粧料又は外用剤には、更に、その他の界面活性剤を配合することができる。これらの界面活性剤は、皮膚や髪の洗浄成分或いは油剤の乳化剤として機能する成分であり、化粧料の種類及び機能に応じて所望のものを選択しうる。より具体的には、他の界面活性剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び、半極性界面活性剤からなる群より選択することができるが、特に、シリコーン系のノニオン性界面活性剤を併用することが好ましい。
【0177】
これらの界面活性剤は、特許文献11の段落0162,0163,0195〜0201等に開示されたものと共通である。本発明にかかるグリセリン誘導体変性シリコーンは分子内に極性基と非極性基とを有するため、分散剤としての機能を有する。このため、ノニオン性界面活性剤と併用した場合に、ノニオン性界面活性剤の安定性を向上させる助剤として機能して、製剤全体としての安定性を改善できる場合がある。特に、本発明の製法により得られるグリセリン誘導体変性シリコーン組成物は、各種変性シリコーンとの相溶性・親和性が改善されているため、ポリオキシアルキレン変性シリコーン、ポリグリセリル変性シリコーン、グリセリル変性シリコーン、糖変性シリコーン、糖アルコール変性シリコーンと併用することが可能であり、これらのシリコーン系のノニオン性界面活性剤は、アルキル分岐、直鎖シリコーン分岐、シロキサンデンドリマー分岐等が親水基と同時に必要に応じ施されていているものも好適に用いることができる。
【0178】
本発明の化粧料又は外用剤には、その目的に応じて、1種又は2種以上の多価アルコール及び/又は低級一価アルコールを用いることができる。これらのアルコール類は、特許文献11の段落0159,0160等に開示されたものと共通である。
【0179】
本発明の化粧料又は外用剤には、その目的に応じて、1種又は2種以上の無機塩類及び/又は有機酸塩を用いることができる。これらの塩類は、出願人らが特許文献11の段落0161等に開示されたものと共通である。
【0180】
本発明の化粧料又は外用剤には、その目的に応じて、架橋性オルガノポリシロキサン、オルガノポリシロキサンエラストマー球状粉体、シリコーン樹脂、アクリルシリコーンデンドリマーコポリマー、シリコーン生ゴム、ポリアミド変性シリコーン、アルキル変性シリコーンワックス、アルキル変性シリコーンレジンワックスからなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。これらのシリコーン系成分は、特許文献11の段落0162〜0194等に開示されたものと共通である。
【0181】
本発明の化粧料又は外用剤には、その目的に応じて、1種又は2種以上の水溶性高分子を用いることができる。これらの水溶性高分子は、特許文献11の段落0201等に開示されたものと共通である。
【0182】
本発明の化粧料又は外用剤には、その目的に応じて、1種又は2種以上の紫外線防御成分を用いることができる。これらの紫外線防御成分は、特許文献11の段落0202〜0204等に開示された有機系及び無機系の紫外線防御成分と共通であるが、特に、好適に使用できる紫外線防御成分は、微粒子酸化チタン、微粒子酸化亜鉛、パラメトキシケイ皮酸2−エチルヘキシル、4−tert−ブチル−4’−メトキシジベンゾイルメタン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤及び2,4,6-トリス[4−(2−エチルヘキシルオキシカルボニル)アニリノ]1,3,5−トリアジン」{INCI:オクチルトリアゾン}、2,4−ビス{[4−(2−エチル−ヘキシルオキシ)−2−ヒドロキシ]フェニル}−6−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン {INCI:ビス−エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、商品名:登録商標チノソルブS}等のトリアジン系紫外線吸収剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である。これらの紫外線防御成分は、汎用されており、入手が容易で、かつ紫外線防御効果が高いため好適に使用することができる。特に、無機系と有機系の紫外線防御成分を併用することが好ましく、UV−Aに対応した紫外線防御成分とUV−Bに対応した紫外線防御成分を併用することが更に好ましい。
【0183】
本発明の化粧料又は外用剤において、前記グリセリン誘導体変性シリコーン組成物と紫外線防御成分を併用することにより、化粧料全体の感触及び保存安定性を改善しつつ、紫外線防御成分を化粧料中に安定に分散させることができるので、化粧料に優れた紫外線防御機能を付与することができる。
【0184】
本発明の化粧料又は外用剤には、上記の各成分の他に、油溶性ゲル化剤、有機変性粘土鉱物、防菌防腐剤、生理活性成分、美肌用成分、pH調整剤、酸化防止剤、溶媒、キレート剤、保湿成分、香料等の各種成分を、本発明の目的を損なわない範囲で使用することができる。これらの化粧品用任意成分は、特許文献11の段落0207,0208,0220〜0228等に開示されたものと共通である。
【0185】
また、本発明に係る化粧料又は外用剤が制汗剤である場合、或いは、その目的に応じて、制汗活性成分、デオドラント剤を配合することができる。これらの制汗成分、デオドラント成分は、特許文献11の段落0209〜0219等に開示されたものと共通である。同様に、本発明に係る化粧料又は外用剤が制汗剤組成物である場合、各種制汗剤組成物の調製、用法等については、特許文献11の段落0234〜0275等に開示されたものと共通である。
【実施例】
【0189】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0190】
なお、以下の実施例、比較例においては「グリセリン誘導体変性シリコーンNo.Xの製造」等と便宜的に記述しているが、得られた生成物は、主成分の他に少量の未反応原料等をも含有する混合物の形態となっている。試料の粘度は、25℃における粘度(mPa.s)の値であり、E型回転粘度計により測定した。また、得られた各試料の光透過率は以下に述べる方法で、室温(25℃)において測定した。
[光透過率]
光透過率計[島津製作所製,UV−265FW]を用いて、波長750nm、セル厚10mmにおける光透過率(%)を測定した。なお、対照としては精製水を使用した。
【0191】
下記組成式において、Meはメチル(−CH
3)基を表し、Me
3SiO基(又は、Me
3Si基)を「M」、Me
2SiO基を「D」、MeHSiO基を「D
H」と表記し、M及びD中のメチル基をいずれかの置換基によって変性した単位を「M
R」及び「D
R」と表記する。また、製造例中、IPAはイソプロピルアルコールを示す。
【0192】
[製造例1]
<グリセリン誘導体変性シリコーンNo.1の合成>
ステップ1:反応器に平均組成式 MD
43.4D
H7.4M で表されるメチルハイドロジェンポリシロキサン401.1g、平均組成式CH
2=CH−Si(OSiMe
3)
3で表されるビニルトリストリメチルシロキシシラン3.5g、ヘキサデセン(αオレフィン純度=91.7%)75.0g(1回目)を仕込み、窒素流通下で攪拌しながら30℃まで加温した。白金−1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のヘキサメチルジシロキサン溶液(Pt濃度0.45重量%)を0.4ml添加し、55−75℃で1時間反応を行なった。反応液を採取し、アルカリ分解ガス発生法(残存したSi−H基をKOHのエタノール/水溶液によって分解し、発生した水素ガスの体積から反応率を計算する)により確認したところ反応率は予定通りであった。
【0193】
ステップ2:反応液にジグリセリンモノアリルエーテル45.7g、天然ビタミンEを0.07g、IPAを340g添加し、上記と同じ白金触媒溶液を0.67ml追加投入した。45〜60℃で2.5時間反応を行ない、同様の方法で確認したところ、反応率は予定どおりであった。
【0194】
ステップ3:反応液にヘキサデセン(αオレフィン純度=91.7%)75.1g(2回目)を仕込み、上記と同じ白金触媒溶液を0.27ml追加投入した。50〜60℃で1.5時間反応を行ない、同様の方法で確認したところ、反応は完結していた。次いで、反応液を減圧下で加熱して低沸分を溜去した。
【0195】
ステップ4:反応器の内容物に対し、硫酸水素ナトリウム一水和物0.09gを精製水7.5gに溶かした水溶液を仕込み、窒素流通下で攪拌しながら70〜80℃で20分間の酸処理を行った。その後、70℃で減圧し、水その他の低沸分の溜出が止まったところで復圧した(酸処理1回目)。次いで、水7.5gを添加して同様に処理を行った後、水その他の低沸分の溜出が止まったところで復圧した(酸処理2回目)。再度同じ操作を繰り返し、水その他の低沸分の溜出が止まってから1時間加熱減圧状態を維持し、系内の水滴が消失した後に復圧した(酸処理3回目)。
【0196】
ステップ5:反応器の内容物に対し、重曹0.06gを精製水3gに溶解した水溶液を添加し、窒素流通下で攪拌しながら60〜70℃で30分間の中和処理を行った。その後、70℃で減圧し、水その他の低沸分の溜出が止まってから1時間加熱減圧状態を維持し、系内の水滴が消失した後に復圧することにより、平均組成式MD
43.4D
R*114.91D
R*310.1D
R*212.07D
OR0.32M で表されるグリセリン誘導体変性シリコーンを含む組成物597gを、灰褐色不透明均一液体として得た。(収率=100×597/600=99.5%)
【0197】
ここで、R
*11及びR
*21及びR
*31は下記のとおりである。また、D
ORはD
H とアルコール性水酸基又は水分との脱水素反応により生成した構造単位であり、Si−O−C 結合又はSi−O−H結合を含むMe(OR)SiO基である。
R
*11= −C
16H
33
R
*21= ―C
3H
6O−X {Xはジグリセリン部で、(C
3H
6O
2)
n−H,n=1.7}
R
*31= ―C
2H
4Si(OSiMe
3)
3【0198】
[比較例1]
<グリセリン誘導体変性シリコーンNo.1を含む比較用組成物RE−1>
製造例1で得られた灰褐色不透明均一液体(グリセリン誘導体変性シリコーンを主成分として含む反応混合物)を、そのまま試料として用いた。
【0199】
[比較例2]
<グリセリン誘導体変性シリコーンNo.1を含む比較用組成物RE−2の調製>
製造例1で得られた灰褐色不透明均一液体500gに対して、濾過助剤としてハイフロースーパーセル(セライト社、融剤焼成品珪藻土)10gを使用し、濾紙としてADVANTEC No.424(直径110mm、東洋濾紙社)を使用して加圧濾過器によって室温で濾過(2パス)を行ったところ、灰褐色不透明均一液体471gが得られた。(収率=99.5×471/500=93.7%)このものは、製造例1で得られた組成物(比較例1)と比較して、外観上の透明性は全く改善されていなかった。
【0200】
[比較例3]
<グリセリン誘導体変性シリコーンNo.1を含む比較用組成物RE−3の調製>
【0201】
次に、比較例2で得られた灰褐色不透明均一液体455gに対して、吸着剤として白鷺WH2C20/48SS(日本エンバイロケミカルズ社、活性炭)9gを混合し、比較例2で形成した濾層を利用して室温で加圧濾過(2パス)を行ったところ、灰褐色不透明均一液体445gが得られた。(収率≒99.5×445/455=97.3%)このものは、製造例1で得られた組成物(比較例1)と比較して、外観上の透明性は全く改善されていなかった。
【0202】
[比較例4]
<グリセリン誘導体変性シリコーンNo.1を含む比較用組成物RE−4の調製>
次に、比較例3で得られた灰褐色不透明均一液体430gを、ゼータプラスフィルター30C(直径90mm、スリーエム社、ゼータ電位式吸着ろ過フィルター)により、専用のカートリッジ式濾過器を用いて加圧濾過(2パス)した。この時、室温では濾過が非常に遅かったため、40〜50℃に保温して実施したが、それでも濾過速度は比較例2,3と比べてかなり遅かった。1パス目の最初の濾液50g程度は半透明な外観に改善されていたが、その後は濁りが漏れ出てきたため、最終的に得られた濾液の全量を均質になるよう混合した結果、灰淡褐色不透明均一液体393gが得られた。(収率≒99.5×393/430=90.9%)このものは、製造例1で得られた組成物(比較例1)と比較して、外観上の透明性の改善は僅かであった。
【0203】
[比較例5]
<グリセリン誘導体変性シリコーンNo.1を含む比較用組成物RE−5の調製>
次に、比較例4で得られた灰淡褐色不透明均一液体380gに対して3.8gのキョーワード600Sと3.8gのキョーワード500SH(協和化学工業社、合成ハイドロタルサイト型吸着剤)を混合し、比較例3で形成した濾層を利用して同様に加圧濾過を試みた。ところが、室温ではほとんど濾液が出てこなかった為、濾過器をオーブン内に移し60−70℃まで加温して実施したが、キョーワードの目詰まりにより濾液の回収量は100g程度(灰淡褐色半透明濁り液体)にとどまったため、2パス目を実施できなかった。(収率<99.5×100/380=26.2%)
【0204】
[実施例1]
<グリセリン誘導体変性シリコーンNo.1を含む実施例組成物1の調製>
製造例1で得られた灰褐色不透明均一液体(グリセリン誘導体変性シリコーンを主成分として含む反応混合物)24.0475gを35mlガラス瓶に採取し、精製水0.3679g(当該反応混合物に対して1.53重量%相当)を添加した。ステンレス製スパチュラで約5分間、全体をよくかき混ぜて均質化を試みたところ、驚いたことに、ほぼ透明な淡褐色均一液体が生成しているのを見出した。
【0205】
[実施例2]
<グリセリン誘導体変性シリコーンNo.1を含む実施例組成物2の調製>
実施例1で得られたほぼ透明な淡褐色均一液体12.2gを35mlガラス瓶に採取し、FZ−3196(東レ・ダウコーニング社製、カプリリルメチコン)12.2g(上記実施例組成物1に対して100重量%相当)を添加した。振り混ぜて全体の均質化を試みたところ、驚いたことに、低粘度で微褐色のほぼ透明均一液体が生成していた。
【0206】
[比較例6]
<グリセリン誘導体変性シリコーンNo.1を含む比較例組成物RE−6の調製>
製造例1で得られた灰褐色不透明均一液体(グリセリン誘導体変性シリコーンを主成分として含む反応混合物)24.0118gを35mlガラス瓶に採取し、1,3−ブチレングリコールを少量ずつ添加、及びステンレス製スパチュラで全体を良くかき混ぜて均質化を試みた。当該反応混合物に対して1,3−ブチレングリコールの添加量が1.0重量%、1.5重量%、2.0重量%、3.0重量%、4.1重量%、5.1重量%、6.2重量%、7.2重量%、8.2重量%、10.1重量%となる条件で混合を行ったが、外観の白濁は改善されなかった。なお、実施例1との比較のため、1,3−ブチレングリコールの添加量を1.5重量%とした混合物を比較例組成物RE−6とした。
【0207】
[比較例7]
<グリセリン誘導体変性シリコーンNo.1を含む比較例組成物RE−7の調製>
製造例1で得られた灰褐色不透明均一液体(グリセリン誘導体変性シリコーンを主成分として含む反応混合物)12.4gを35mlガラス瓶に採取し、FZ−3196(東レ・ダウコーニング社製、カプリリルメチコン)12.4g(上記実施例組成物1に対して100重量%相当)を添加した。振り混ぜて全体の均質化を試みたところ、低粘度で灰褐色の不透明均一液体が得られた。
【0208】
上記の方法で調製された、本発明に係るグリセリン誘導体変性シリコーンを含む安定化された組成物である「グリセリン誘導体変性シリコーンNo.1を含む実施例組成物1〜2」、比較例に係る「グリセリン誘導体変性シリコーンNo.1を含む比較用組成物RE−1〜RE−7」の内容を、以下の表1及び表2に示す。
【0209】
【表2】
注*1)ロス%=「100−収率」%により計算され、廃棄物発生量の目安となる。
注*2)主成分であるグリセリン誘導体変性シリコーンの化学構造を平均組成式により示す。
【0210】
表中、官能基の構造及びその分類は、以下の通りである。なお、D
ORはD
H とアルコール性水酸基又は水分との脱水素反応により生成した構造単位であり、Si−O−C 結合又はSi−O−H結合を含むMe(OR)SiO基である。
<シロキサンデンドロン構造を有する基:R
*3>
R
*31= ―C
2H
4Si(OSiMe
3)
3
<グリセリン誘導体基:R
*2>
R
*21= ―C
3H
6O−X {Xはジグリセリン部で、(C
3H
6O
2)
n−H,n=1.7}
<その他の有機基:R
*1>
R
*11= −C
16H
33【0211】
【表3】
注*3)グリセリン誘導体変性シリコーンを主成分として含む反応混合物の、試料中の濃度(重量%)を示す。
注*4)試料の室温における光透過率T%(波長750nm、セル厚10mm)を示す。
注*5)試料の25℃における粘度(mPa.s)の値であり、E型回転粘度計により測定した数値を示す。
注*6)試料調製時の濾過に要した時間(hr)を示したもので、生産効率の目安となる。
注*7)比較例5の製造法では組成物の全量を濾過することができず、少量得られた濾液は組成物全体の外観を代表しないことから、光透過率の測定は行わなかった。
【0212】
[安定性試験1]
実施例1、実施例2、比較例1及び比較例7の試料各12gを35mlガラス瓶に入れて密栓した。これらを50℃恒温槽中に入れて1ヶ月間静置した。その後、50℃における試料外観を観察した後、恒温槽から取り出して室温に戻し、各試料の外観を観察し、光透過率及び粘度の測定を行った。結果を表3に示す。
【0213】
【表4】
注*8)試料の室温における光透過率T%(波長750nm、セル厚10mm)を示す。
注*9)粘度の初期値からの変化率%を示す。
【0214】
[安定性試験2]
実施例1、実施例2、比較例1及び比較例7の試料各12gを35mlガラス瓶に入れて密栓した。これらを−5℃冷蔵庫中に入れて1ヶ月間静置した。その後、−5℃における試料外観を観察した後、冷蔵庫から取り出して室温に戻し、各試料の外観を観察し、光透過率及び粘度の測定を行った。但し、室温に戻した後、外観上若干の相分離が認められた試料が多かったため、全試料について、ステンレス製スパチュラで約1〜3分間混合して均質化した後に、光透過率及び粘度を測定した。結果を表4に示す。
【0215】
【表5】
注*8)試料の室温における光透過率T%(波長750nm、セル厚10mm)を示す。
注*9)粘度の初期値からの変化率%を示す。
注*10)比較例1、比較例7のサンプルとは異なり、分離した上相と下相の親和性が良好かつ流動特性も近く、軽い撹拌で容易に半透明〜透明のほぼ均一液体に回復した。一方で、両比較例サンプルは上相と沈殿物の相溶性が悪く流動性にも差があり、撹拌による均質化に時間を要した。
【0216】
以上の結果より、実施例の試料は比較例の試料よりも、外観上の透明性と均質性という点で遥かに優れており、高温でも低温でもその優位性は変わらないことが確認された。
【0217】
また、実施例の試料の粘度は、高温及び低温の履歴を経た後でも±10%未満の変動範囲内に安定しており、実用上の問題がないことも確認できた。
【0218】
以下、本発明に係る化粧料及び外用剤についてその処方例を示して説明するが、本発明に係る化粧料及び外用剤はこれらの処方例に記載の種類、組成に限定されるものではない。
【0219】
本発明に係るグリセリン誘導体変性シリコーンを含む安定化された組成物は、様々な外用剤、化粧料に用いることができる。その具体的な処方例としては、例えば、特許文献11(国際公開特許 WO2011/049248号公報)に記載された各種化粧料・外用剤の処方例1〜43中のシリコーン化合物No.1〜No.16に相当する成分及び/又は各種ポリエーテル変性シリコーンを、本発明に係るグリセリン誘導体変性シリコーンを含む安定化された組成物(グリセリン誘導体変性シリコーンNo.1を含む実施例組成物1〜2)で置き換えたものが挙げられる。
【0220】
また、特許文献12(国際公開特許 WO2011/049247号公報)に開示された各種化粧料・外用剤の処方例1〜24中のシリコーン化合物No.1〜No.14に相当する成分及び/又は各種ポリエーテル変性シリコーンを、本発明に係るグリセリン誘導体変性シリコーンを含む安定化された組成物(グリセリン誘導体変性シリコーンNo.1を含む実施例組成物1〜2)で置き換えたものが挙げられる。
【0221】
また、特許文献13(国際公開特許 WO2011/049246号公報)に開示された各種化粧料・外用剤の処方例1〜10中に含まれるAB型オルガノポリシロキサン共重合体P1〜P6に相当する成分(合成例1〜12)及び/又は各種ポリエーテル変性シリコーンを、本発明に係るグリセリン誘導体変性シリコーンを含む安定化された組成物(グリセリン誘導体変性シリコーンNo.1を含む実施例組成物1〜2)で置き換えたものが挙げられる。
【0222】
また、特許文献14(特開2012−046507号公報)に開示された各種化粧料・外用剤の処方例中に含まれるシリコーン化合物No.1〜No.8に相当する成分及び/又は各種ポリエーテル変性シリコーンを、本発明に係るグリセリン誘導体変性シリコーンを含む安定化された組成物(グリセリン誘導体変性シリコーンNo.1を含む実施例組成物1〜2)で置き換えたものが挙げられる。
【0223】
その他、例えば、本発明のグリセリン誘導体変性シリコーンNo.1を含む実施例組成物1を用いて、以下の炭化水素系の化粧料基材を主体とする処方も可能である。なお、下記ポリエーテル変性シリコーンの全量を実施例組成物1で置換すれば、PEG−FREE処方も可能である。下記において「部」は(重量)質量部を表す。
【0224】
[処方例:リキッドファンデーション(W/O )]
(成分)
1. イソドデカン 20部
2. イソヘキサデカン 10部
3. イソノナン酸イソトリデシル 3部
4. トリカプリルカプリン酸グリセリル 2部
5. ポリエーテル変性シリコーン(注1) 1.0部
6. グリセリン誘導体変性シリコーンNo.1を含む実施例組成物1 1.0部
7. 有機変性粘土鉱物(ベントン38V) 1.5部
8. メトキシケイ皮酸オクチル 5部
9. オクチルシラン処理酸化チタン 8.5部
10.オクチルシラン処理赤酸化鉄 0.4部
11.オクチルシラン処理黄酸化鉄 1部
12.オクチルシラン処理黒酸化鉄 0.1部
13.ジメチコン、ジメチコンクロスポリマー(注2) 2部
14.イソドデカン/(アクリレーツ/メタクリル酸ポリトリメチルシロキシ)コポリマー(注3) 1部
15.トリメチルシロキシケイ酸 1部
16.1,3−ブチレングリコール 5部
17.グリセリン 3部
18.塩化ナトリウム 0.5部
19.防腐剤 適量
20.精製水 残量
21.香料 適量
注1)東レ・ダウコーニング社製ES−5300
注2)Dow Corning社製DC9045
注3)東レ・ダウコーニング社製FA−4002ID
【0225】
(製造方法)
工程1: 成分1、2、5、6、7、8、13、14、15を撹拌混合する。
工程2: 成分3、4、9〜12を、3本ロールを用いて混練混合する。
工程3: 撹拌下、工程1で得られた混合物に工程2の混合物を加え、更に撹拌混合する。
工程4: 成分16〜21を均一に溶解した水相を、工程3で得られた混合物に加えて乳化し、容器に充填して製品を得る。
【0226】
得られたW/O型リキッドファンデーションは、不快な着臭がなく、使用時に、乳化安定性に優れ、耐水性、化粧持続性に優れ、肌理、シワが目立ちにくく、軽い感触を持ち、密着性に優れている。