特許第6392690号(P6392690)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ KDDI株式会社の特許一覧

特許6392690同期装置、基地局装置、ネットワークノード、制御方法、及びプログラム
<>
  • 特許6392690-同期装置、基地局装置、ネットワークノード、制御方法、及びプログラム 図000002
  • 特許6392690-同期装置、基地局装置、ネットワークノード、制御方法、及びプログラム 図000003
  • 特許6392690-同期装置、基地局装置、ネットワークノード、制御方法、及びプログラム 図000004
  • 特許6392690-同期装置、基地局装置、ネットワークノード、制御方法、及びプログラム 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6392690
(24)【登録日】2018年8月31日
(45)【発行日】2018年9月19日
(54)【発明の名称】同期装置、基地局装置、ネットワークノード、制御方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 56/00 20090101AFI20180910BHJP
   H04L 7/00 20060101ALI20180910BHJP
   G04G 7/00 20060101ALI20180910BHJP
【FI】
   H04W56/00 110
   H04L7/00 990
   G04G7/00
【請求項の数】11
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-55311(P2015-55311)
(22)【出願日】2015年3月18日
(65)【公開番号】特開2016-178379(P2016-178379A)
(43)【公開日】2016年10月6日
【審査請求日】2017年8月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(74)【代理人】
【識別番号】100131886
【弁理士】
【氏名又は名称】坂本 隆志
(74)【代理人】
【識別番号】100170667
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 浩次
(72)【発明者】
【氏名】村上 隆秀
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 葉子
【審査官】 桑原 聡一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2011/043413(WO,A1)
【文献】 特開2005−204265(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24−7/26
H04W 4/00−99/00
G04G 7/00
H04L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同期装置であって、
それぞれ時刻の基準を与える複数の基準装置の、それぞれの運用予定を示す情報を取得する取得手段と、
前記情報に基づいて、前記複数の基準装置のうちのいずれと時刻の同期を確立するか、前記複数の基準装置のうちのいずれが送信した基準信号に基づいて前記同期を確立するか、前記複数の基準装置のそれぞれから前記同期装置までの基準信号の到来経路のうちのいずれの到来経路で到来した基準信号に基づいて前記同期を確立するか、の少なくともいずれかを選択する選択手段と、
前記選択の結果に応じて、前記複数の基準装置のいずれかと前記同期を確立する確立手段と、
を有し、
前記情報は、前記同期装置と前記複数の基準装置との間の経路におけるメンテナンスの情報を含み、
前記選択手段は、前記確立手段が前記複数の基準装置に含まれる運用中の基準装置の1つとの間で前記同期を確立するように、前記選択を行う、
ことを特徴とする同期装置。
【請求項2】
前記情報は、前記複数の基準装置のそれぞれが信号を配信しない期間に関する情報を含み、
前記選択手段は、前記同期を確立している第1の基準装置が信号を配信しない期間がある場合、当該期間において信号を配信する、前記第1の基準装置と異なる第2の基準装置との間で、前記確立手段が前記同期を確立するように、前記選択を行う、
ことを特徴とする請求項1に記載の同期装置。
【請求項3】
前記複数の基準装置は放送局を含み、
前記情報は前記放送局が放送する番組に関する電子番組表であり、
前記選択手段は、前記電子番組表に基づいて、番組を放送している放送局との間で前記確立手段が前記同期を確立するように、前記選択を行う、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の同期装置。
【請求項4】
前記取得手段は、前記複数の基準装置の少なくともいずれかが送信する信号から前記情報を取得する、
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の同期装置。
【請求項5】
ネットワークに接続する接続手段をさらに有し、
前記取得手段は、前記ネットワークを介して前記情報を取得する、
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の同期装置。
【請求項6】
前記選択手段は、さらに、前記確立手段が前記同期を確立する基準装置を変更する場合、前記同期装置が同期信号を供給する他の装置の稼働状況に応じて、前記変更のタイミングを選択する、
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の同期装置。
【請求項7】
前記選択手段は、前記複数の基準装置に含まれる運用中の基準装置が複数ある場合、当該運用中の基準装置との間で前記同期を確立した場合の当該同期の精度に基づいて、複数の前記運用中の基準装置のうちの1つとの間で前記確立手段が前記同期を確立するように、前記選択を行う、
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の同期装置。
【請求項8】
無線通信ネットワークに含まれる基地局装置であって、
請求項1から7のいずれか1項に記載の同期装置を有する、
ことを特徴とする基地局装置。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載の同期装置を有する、
ことを特徴とするネットワークノード。
【請求項10】
同期装置の制御方法であって、
取得手段が、それぞれ時刻の基準を与える複数の基準装置の、それぞれの運用予定を示す情報を取得する取得工程と、
選択手段が、前記情報に基づいて、前記複数の基準装置のうちのいずれと時刻の同期を確立するか、前記複数の基準装置のうちのいずれが送信した基準信号に基づいて前記同期を確立するか、前記複数の基準装置のそれぞれから前記同期装置までの基準信号の到来経路のうちのいずれの到来経路で到来した基準信号に基づいて前記同期を確立するか、の少なくともいずれかを選択する選択工程と、
確立手段が、前記選択の結果に応じて、前記複数の基準装置のいずれかと前記同期を確立する確立工程と、
を有し、
前記情報は、前記同期装置と前記複数の基準装置との間の経路におけるメンテナンスの情報を含み、
前記選択工程では、前記確立工程において前記複数の基準装置に含まれる運用中の基準装置の1つとの間で前記同期が確立されるように、前記選択が行われる、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項11】
同期装置に備えられたコンピュータに、
それぞれ時刻の基準を与える複数の基準装置の、それぞれの運用予定を示す情報を取得する取得工程と、
前記情報に基づいて、前記複数の基準装置のうちのいずれと時刻の同期を確立するか、前記複数の基準装置のうちのいずれが送信した基準信号に基づいて前記同期を確立するか、前記複数の基準装置のそれぞれから前記同期装置までの基準信号の到来経路のうちのいずれの到来経路で到来した基準信号に基づいて前記同期を確立するか、の少なくともいずれかを選択する選択工程と、
前記選択の結果に応じて、前記複数の基準装置のいずれかと前記同期を確立する確立工程と、
を実行させるプログラムであって、
前記情報は、前記同期装置と前記複数の基準装置との間の経路におけるメンテナンスの情報を含み、
前記選択工程では、前記確立工程において前記複数の基準装置に含まれる運用中の基準装置の1つとの間で前記同期が確立されるように、前記選択が行われる、
ことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時刻同期を確立するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信ネットワークでは、複数の基地局装置が面的に分散して配置されて、それぞれの基地局装置は、自身の無線通信可能な範囲(電波が所定の電力レベルで届く範囲)に存在する端末との間で無線通信を行う。このとき、複数の基地局装置と、無線通信ネットワークにおけるネットワークノードは、時刻の基準を与える基準装置と時刻または周波数の同期を確立する。なお、同期を確立するのは、基地局装置及びネットワークノード自身でなくともよく、これらと物理的または論理的に異なる同期装置であってもよく、また、基地局装置及びネットワークノードは、この同期装置を内包し得る。この場合、基地局装置及びネットワークノードは、この同期装置に従って時刻同期を確立する。なお、基準装置は、例えば、ネットワーク内に配置され、基地局装置及びネットワークノード(同期装置)に対して有線通信を介して時刻の基準を与える専用の装置でありうる。また、基準装置は、例えばGPSの衛星、放送用の同期基準となる装置、電波時計の同期基準となる装置などの、無線によって時刻の基準を与える装置であってもよい。
【0003】
特許文献1には、複数の基準装置からの信号を直接受信して同期を確立することができる基地局装置において、例えば1つの基準装置との同期に障害が生じた場合であっても、他の基準装置との間で同期を確立する技術が記載されている。特許文献1に記載の技術によれば、複数の基準装置のいずれかとの間で同期が確立されるため、基地局装置が同期を確立できないという事象が生じるのを防ぐことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−217359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
同期装置は、例えば、高速大容量のバックボーンネットワークに接続されておらず、通信速度や伝送ジッタなど品質に制限がある回線に接続されている屋内基地局装置に内包されうる。このような同期装置では、ネットワーク内の基準装置からの同期の基準を与える基準信号を安定して受信できず、かつ、GPSの電波を受信できないことが想定される。しかしながら、このような場合であっても、同期装置は、テレビやラジオの放送局からの電波を受信できる場合があると考えられる。この場合、同期装置は、放送局を基準装置として同期を確立することができる。しかしながら、テレビやラジオは、深夜などの時間帯において停波することが想定され、その度に同期装置が同期を確立できない状況となりうる。また、同様に、例えばネットワーク内の基準装置など、放送局以外の基準装置においても、その運用によっては一時的にその運用を停止する場合が生じうるため、同期装置が同期を確立できない状況となり得る。そして、同期装置が同期を確立できない状況では、その同期装置から同期信号の供給を受ける基地局装置の動作にも影響が出てしまい、ひいては、無線通信ネットワーク全体の動作に影響が生じてしまいうるという課題があった。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、基準装置との間で同期を確立する同期装置において、その基準装置の運用状況に応じて、適切に同期先の基準装置を切り替えるための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明による同期装置は、それぞれ時刻の基準を与える複数の基準装置の、それぞれの運用予定を示す情報を取得する取得手段と、前記情報に基づいて、前記複数の基準装置のうちのいずれと時刻の同期を確立するか、前記複数の基準装置のうちのいずれが送信した基準信号に基づいて前記同期を確立するか、前記複数の基準装置のそれぞれから前記同期装置までの基準信号の到来経路のうちのいずれの到来経路で到来した基準信号に基づいて前記同期を確立するか、の少なくともいずれかを選択する選択手段と、前記選択の結果に応じて、前記複数の基準装置のいずれかと前記同期を確立する確立手段と、を有し、前記情報は、前記同期装置と前記複数の基準装置との間の経路におけるメンテナンスの情報を含み、前記選択手段は、前記確立手段が前記複数の基準装置に含まれる運用中の基準装置の1つとの間で前記同期を確立するように、前記選択を行う、ことを特徴とする。


【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、基準装置との間で同期を確立する同期装置において、その基準装置の運用状況に応じて、適切に同期先の基準装置を切り替えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】同期確立のためのシステムの構成例を示す図。
図2】同期装置のハードウェア構成例を示すブロック図。
図3】同期装置の機能構成例を示すブロック図。
図4】処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0011】
(システム構成)
図1は、本実施形態に係る同期確立のためのシステムの構成例を示す図である。本システムは、例えば、基地局装置、ネットワークノード及び端末を含む無線通信ネットワークにおける、同期確立に係る部分でありうる。なお、ここでの同期は、時刻同期のことを指す。本システムは、同期の基準となる信号をそれぞれが配信する複数の基準装置と、基準装置から配信された信号を受信してその基準装置との同期を確立する同期装置とを含む。ここで、同期装置は、無線通信ネットワークにおける基地局装置(基地局装置の設備内)又はネットワークノード内に含まれてもよいし、基地局装置又はネットワークノードとは別個に存在してもよい。基地局装置又はネットワークノードは、同期装置が確立した時刻同期に従って、同期装置から供給される同期信号に基づいて動作する。
【0012】
ここで、第1基準装置111〜第3基準装置113は、例えば、ラジオ又はテレビの放送局でありうる。第1基準装置111〜第3基準装置113は、それぞれ別個のロケーションから放送電波を送信することによって、同期装置に時刻同期のための基準信号を配信してもよいし、1つの電波塔などの同一ロケーションからそれぞれの基準信号を配信してもよい。なお、第1基準装置111〜第3基準装置113は、同一ロケーションから基準信号を配信する場合であっても、基準信号はそれぞれが個別に送信するものとし、共通の基準信号が配信されるわけではないものとする。同期装置は、複数の基準装置のいずれか1つが配信した基準信号に基づいて、その1つの基準装置との間で時刻同期を確立する。なお、基準となる時刻は一定であるため、正確に同期が確立される限りにおいては、同期装置は、いずれの基準装置と同期してもよい。また、同期装置は、(例えば有線の)ネットワークを介して基準信号を配信する不図示の基準装置との間で時刻同期を確立してもよい。
【0013】
以下では、第1基準装置111〜第3基準装置113が、ラジオ又はテレビの放送局であるものとして説明する。第1基準装置111〜第3基準装置113は、例えば夜間などの所定の期間において、その放送を停止する(電波を停波する)場合がある。同期装置は、自身の同期の確立先の基準装置が放送を停止すると、時刻基準を与える基準信号が受信されなくなることから、時刻同期を確立できない状態となってしまう。
【0014】
しかしながら、ラジオ又はテレビの放送局は、番組を放送する期間は電波の送信を停止せず、番組を放送しない期間に電波の送信を停止するのであって、放送を停止する期間などは予め定められていることが多い。このため、本実施形態に係る同期装置は、放送局の放送スケジュールなどの運用予定に係る情報を予め取得し、運用中の(電波を送信している)放送局を、同期を確立する基準装置として選択して、選択した基準装置との間で同期を確立するようにする。なお、運用予定に係る情報は、例えば電子番組表であり、同期装置は、番組を放送している放送局を、運用中の放送局と判定し得る。
【0015】
なお、同期装置は、同様の処理を放送局以外の基準装置との間での同期の確立に適用し得る。すなわち、同期装置は、例えばネットワーク上の基準装置などが、その基準装置自身が運用を停止しているか否かを示す、又は、その基準装置までのネットワーク上の経路のメンテナンスなどがないかを示す、運用予定の情報を取得し得る。そして、例えば、ある基準装置が停止する期間又はその基準装置との間でネットワークのメンテナンスが行われる期間など、その基準装置との間で正確な時刻同期を確立できない可能性がある場合、同期装置は、他の基準装置に同期先の装置を切り替えうる。
【0016】
なお、同期装置は、運用予定を示す情報を、例えば、基準装置が送信する信号から取得しうる。例えば、同期装置は、放送局が送信する電波を介して、電子番組表を取得してもよいし、ネットワークを介して、電子番組表や、ネットワークメンテナンス情報などの運用予定を示す情報を取得してもよい。また、同期装置は、例えば昼間における複数の放送局など、複数の基準装置から同時に基準信号を受信することができる期間においては、例えば同期の精度が所定のレベルより高い又は最も高い基準装置との間で同期を確立し得る。また、同期装置は、同等の精度が得られる複数の基準装置から同時に基準信号を受信することができる期間においては、それらの基準装置のうち、より後まで運用を停止しない方の基準装置を、同期の確立先の装置として選択してもよい。
【0017】
以上により、同期装置は、第1の基準装置と同期を確立している際に、その後、第1の基準装置が基準信号を配信しない期間がある場合、その期間において基準信号を配信する第2の基準装置との間で同期を確立することとなる。これにより、同期装置において時刻同期が確立されていない状態が発生することを防ぐこと、又はそのような状態となる期間を短縮することが可能となる。なお、同期装置における同期先の装置の変更は、例えば、その同期装置が同期信号を供給する先の装置である、基地局装置やネットワークノードなどの稼働状況に応じたタイミングで行われうる。すなわち、同期装置は、例えば、基地局装置に接続中の端末が少ない期間など、同期信号の供給先の装置の稼働状況が低負荷状況の期間に、同期先の装置を変更しうる。これにより、同期先の装置の変更処理中で同期が確立されていない可能性がある期間においても、同期信号の供給先の装置に対する影響を低減することが可能となる。
【0018】
続いて、上述のような、本実施形態に係る同期装置の構成及び動作について詳細に説明する。
【0019】
(同期装置の構成)
図2に、同期装置のハードウェア構成例を示す。同期装置は、例えば、CPU201、ROM202、RAM203、外部記憶装置204、及び通信装置205を有する。同期装置では、例えばROM202、RAM203及び外部記憶装置204のいずれかに記録された同期装置の各機能を実現するプログラムがCPU201により実行される。
【0020】
そして、同期装置は、例えばCPU201により通信装置205を制御して、基準装置や他の同期装置との通信を行う。なお、図2では、同期装置は、1つの通信装置205を有するとしているが、これに限られず、複数の通信装置を有していてもよい。例えば、同期装置は、複数の放送局からの信号を並行して受信できる複数のチューナー(通信装置)を有しうる。また、同期装置は、例えば有線通信又は無線通信のネットワークに接続するための通信装置をさらに有していてもよい。この場合、同期装置は、ネットワークを介して、ネットワーク上の基準装置との間で同期を確立することもできる。同期装置は、例えば、放送局が全て停止している期間などに、同期精度が十分でなかったとしても、ネットワークを介して基準信号を受信して同期を確立することができる。
【0021】
なお、同期装置は、各機能を実行する専用のハードウェアを備えてもよいし、一部の機能をハードウェアで実装し、プログラムを動作させるコンピュータでその他の機能を実行するようにしてもよい。また、全機能がコンピュータとプログラムにより実装されてもよい。
【0022】
図3に、同期装置の機能構成例を示す。同期装置は、例えば、その機能構成として、同期確立部301、情報取得部302、及び基準装置選択部303を有する。なお、同期装置は、これらの機能構成の全てを有しなければならないわけではなく、これらの機能構成のいくつかは省略されてもよい。また、同期装置は、これらの機能構成以外の機能を有していてもよい。
【0023】
同期確立部301は、例えば放送局などの基準装置と時刻同期を確立する。具体的には、基準装置から配信される、時刻同期用の基準信号を受信して、その基準信号との同期を確立するように装置内のクロックの制御を行う。
【0024】
情報取得部302は、例えば各放送局の運用予定の情報を、各放送局が放送した電波を通じて、又は、例えば有線または無線の通信ネットワークに接続して、その通信ネットワークを介して、取得する。情報取得部302は、例えば、各放送局の運用予定の情報として、各放送局が放送する番組に関する電子番組表を取得し得る。また、情報取得部302は、放送局以外の基準装置についての運用予定の情報を取得してもよい。この場合の運用予定の情報は、例えば、基準装置のメンテナンスのための停止期間など、その基準装置が基準信号を配信しなくなる期間に関する情報でありうる。
【0025】
基準装置選択部303は、情報取得部302が取得した運用予定の情報に基づいて、基準信号の配信を行っている基準装置を、同期先の装置として選択する。例えば、基準装置選択部303は、運用予定の情報に基づいて、現在同期を確立している基準装置が基準信号の配信を停止する期間を特定し、その期間において基準信号の配信を行っている別の基準装置を選択する。なお、基準装置選択部303は、同期先の基準装置を変更するタイミングを併せて選択し得る。基準装置選択部303は、同期装置が同期信号を供給する供給先の装置(例えば基地局装置、又はネットワークノードなど)の稼働状況に応じて、そのタイミングを選択し得る。基準装置選択部303は、例えば、同期信号の供給先の基地局装置に接続中の端末が所定数より少なくなる期間を、基準装置の変更タイミングとして選択し得る。この場合、基地局装置に接続中の端末が所定数より少なくなる期間は、例えば、その基地局装置における過去の端末の接続数の時間ごとの統計値に基づいて特定されうる。例えば、ある基地局装置が展開するエリアにおける端末の滞在数の平均値が所定数未満である期間が、同期先の基準装置の変更タイミングとして選択される。すなわち、例えばオフィス街など深夜に極端に滞在数が減って所定数以下となるエリアでは、深夜の間に同期先の基準装置の変更が行われるように、変更タイミングが選択されうる。
【0026】
なお、基準装置選択部303は、運用中であり、基準信号を配信している基準装置が複数存在する期間においては、その複数の基準装置のそれぞれの同期精度に基づいて、いずれか1つの基準装置を選択し得る。例えば、基準装置選択部303は、運用中の複数の基準装置のうち、最も同期精度が高くなる基準装置を選択し、又は、同期精度が所定レベル以上となる(基準装置と同期装置との間のクロック誤差が所定値以下となる)基準装置のうちのいずれかを選択し得る。このとき、同期精度が所定レベル以上の複数の基準装置が存在する場合、基準装置選択部303は、同期信号の供給先の装置の稼働状況によって、同期先の基準装置の変更を行い得るタイミングまでの間に、基準信号の配信を停止しない基準装置を選択し得る。また、同期先の基準装置の変更を行い得るタイミングまでの間に、基準信号の配信を停止しない基準装置が存在しない場合は、基準装置選択部303は、例えば、基準信号の配信を停止するまでの期間が最も長いものを選択し得る。
【0027】
その後、基準装置選択部303は、選択の結果を同期確立部301に通知して、同期先の基準装置の制御を行う。そして、同期確立部301は、選択された基準装置との間で時刻同期を確立する。
【0028】
なお、基準装置の選択は、複数の基準装置が送信して同期装置において受信される基準信号のうち、同期装置が同期を確立するための基準信号を選択することによって行われうる。この場合、基準装置選択部303は、例えば、複数の基準装置から基準信号を受信し、複数の基準装置のうちの選択された基準装置が送信した基準信号を受信した複数の基準信号の中から選択して、同期を確立するように、同期確立部301を制御する。また、基準装置の選択は、例えば複数の放送局を基準装置の候補として取り扱う場合など、基準信号を受信するチャネル(基準信号の到来経路)の選択によって行われうる。すなわち、同期装置は、複数の到来経路で(それぞれの到来経路に対応する基準装置から)基準信号を受信し得る状況において、その複数の到来経路のうち、どの到来経路で受信された基準信号を、同期確立に用いるかを選択し得る。この場合、基準装置選択部303は、複数の到来経路のうちの選択された到来経路を介して受信される基準信号に基づいて、同期を確立するように、同期確立部301を制御する。なお、到来経路は、例えば放送局が放送波を送信する周波数によって特定されることができ、例えば有線ネットワークにおいて基準信号が基準装置から同期装置へと伝送されるまでの経路によって特定されることができる。また、基準装置の選択は、基準装置自体の選択、基準装置がそれぞれ送信する基準信号のいずれに基づいて同期を確立するかの選択、そして、基準装置から同期装置までの基準信号の到来経路の選択、の少なくともいずれかの選択によって行われうる。すなわち、いずれか1つのみを用いなければならないわけではなく、複数のものを並行して(組み合わせて)取り扱うことによって、上述の選択が行われてもよい。
【0029】
なお、同期装置が個別に基準装置の変更をする代わりに、同期装置とは別の制御装置が用いられてもよい。この場合、制御装置は、基準装置の運用情報や同期装置の統計値を収集し、システム全体又はある基準装置が運用停止した場合に、影響を受けうる同期装置における、その影響を最小限又は所定のレベル以下に抑えるように、同期先の変更を制御しうる。より具体的には、制御装置が、情報取得部302及び基準装置選択部303を有する。そして、制御装置は、情報取得部302によって例えば各放送局の運用予定の情報を取得し、基準装置選択部303によって、その取得された情報に基づいて、基準信号の配信を行っている基準装置のいずれかを、同期装置における同期先の装置として選択する。なお、情報取得部302及び基準装置選択部303の他の動作は、上述の通りでありうる。
【0030】
制御装置の基準装置選択部303による各同期装置のための選択結果は、それぞれ対応する同期装置へ伝えられる。このため、制御装置は、このような選択結果の通知のための情報通知機能を有し得る。制御装置が存在する場合、同期装置は、制御装置から通知された基準装置の選択結果に応じて、同期を確立する基準装置を選択して、場合によっては切り替える。ここで、制御装置は、どのタイミングで基準装置を切り替えるかについての同期装置への通知を行ってもよく、同期装置は、通知されたタイミングで同期先の装置の切替を行い得る。なお、この場合であっても、同期先の装置の選択は、その一類型として、複数の同期先の候補の装置から受信した基準信号のうちの、いずれを同期確立のための基準装置として用いるかの選択によって行われうる。また、同期先の装置の選択は、別の一類型として、基準信号の複数の到来経路のうち、いずれの到来経路において基準信号を受信して同期を確立するかの選択によって行われてもよい。
【0031】
なお、制御装置の情報取得部302は、例えば、各同期装置において信号を受信することができる放送局の情報を取得してもよい。制御装置は、例えば、九州に存在する同期装置は、関東に存在する放送局からの放送波を受信できないため、その同期装置の位置で放送波を受信できる、九州に存在する放送局のみを同期先の装置の候補として特定する。また、制御装置の情報取得部302は、各同期装置から、受信できている放送波の送信元の放送局に関する情報を取得してもよい。なお、制御装置の情報取得部302は、放送局以外の基準装置の情報をも取得することができる。そして、制御装置の情報取得部302は、候補に含まれている基準装置について、上述のような情報を収集する。
【0032】
(処理の流れ)
続いて、同期装置が実行する処理の流れについて図4を参照して説明する。まず、同期装置は、例えば起動時において、又は定期的に、複数の基準装置(例えば放送局)の運用予定を示す情報(例えば電子番組表)を取得する(S401)。同期装置は、例えば放送電波を介して、又は、自身が接続しているネットワークを通じて、運用予定を示す情報を取得する。その後、同期装置は、取得した運用予定に基づいて、同期先の基準装置を選択する(S402)。この選択では、例えば、同期先の基準装置を変更するタイミングを併せて選択し得る。そして、同期装置は、選択した同期先の基準装置との間で、時刻同期を確立する(S403)。このとき、同期装置は、S402で選択した同期先の基準装置の変更タイミングが到来していない場合は、そのタイミングとなるまで待った上で、時刻同期の確立を行う。
【0033】
なお、同期装置は、例えば放送受信用のチューナーを複数有している場合は、電子番組表に基づいて、同期先の放送局の変更に先立って、現在同期している放送局と、その放送局とは異なる放送局とによる放送を受信し、並行して同期確立を試行してもよい。これにより、例えば、第1の放送局との間での時刻同期を確立している間に、第2の放送局との間でも時刻同期を確立し、第1の放送局との間の時刻同期の解除と同時に、第2の放送局との時刻同期への変更を完了することができる。
【0034】
このように、本実施形態の同期装置は、基準装置の運用予定の情報を取得して、運用中の基準装置との間で同期を確立する。これにより、同期装置が、基準装置が基準信号を配信しない期間を予め特定し、事前に同期先の基準装置を変更することができるため、同期装置の発振器及び時計の動作における精度劣化を防ぐことが可能となる。また、同期装置が、その同期信号の供給先の装置における稼働状況に応じたタイミングで、同期先の基準装置を変更する(又は同期処理を行う)ことにより、その供給先の装置に対する影響をも十分に低く抑えることが可能となる。
図1
図2
図3
図4